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冷延鋼板第1種・3種の成形性試験値の比較

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(1)

冷延鋼板第1種・3種の成形性試験値の比較

湯本 誠治* *・中沢 清一* * *

1. ま え が き

同 じ厚さの冷間圧延鋼板第 1 種 と第 3 種の S( 標準詞質のもの)及びA ( 焼なましのままの もの)のそれぞれについて,エ リクセ ソ値 ( 以下 E, . V. と記す)及び コニカルカ ップ値 ( 以下

C . C . Ⅴ. と記す)を求め,比較 ・検討 した.また, 同 じ板厚の 場合 ,E, . Ⅴ. が増せば C . C . V. は演ず ることは 当然であるが, 前記の 4 種炉の倍を用い, 両者の定量的関係にも言 及 した.

周知のとお り,エ リクセン試験は薄板材の張出し性を調べ るもので,球頭 ポンチで板を押 し, 板に割れが入った ときの張出し高さを E, . V. としている. コニカルカ ップ試験は,莱 出し性 と深絞 り性の複合成形性を調べるものである. 600 の円すい ダイスに試験片 ( 円板形) をセ ッ トし,先端が半球面のポンチで押 し, カ ップ形になった板の底が破断 した ときのカ ッ

プ上縁部外径を測 り, これ を C . C . Ⅴ. としている.ェ リクセソ試験方法は J I SZ 2 24 7 , 同試験横は J I SB 7 7 29 , コニカルカ ップ試験方法は J I SZ 2 2 4 9に規定 されている.

なお ,J I SG 31 41冷間圧延鋼板 には, 板厚 T ごとに E, . V. の 規定値 E, . V. ‑ ‑5 . 5 l og T+K( K は1 , 2,3 種により 9 . 6,1 0 . 0,1 0 . 4) があ り,改正前の J I S熱間圧延軟鋼板に も規定

されていた.

参考 までに,冷延板第 1 種 と3 位 の比較を, T‑0 . 8 mm 場合について,表 1 に示 してお く.

表 1 1 種 ・3 種の桟枕的性質及び化学成分 ( J I SG 3 1 4 1 )

放 きH v は , S は 1 1 5 以下 , A は 1 0 5 以下

2 . 実験の方法及び装置

供託材 :公称板厚 T‑0 . 8 mm. 実際板厚は, 1 種 Sが 0 . 7 6 mm, 1 種 A が 0 . 79 mm, 3 種 S が 0 . 8 4mm, 3 種 Aが 0 . 8 4 mm.

* 昭和 5 3 年 1 0 月 日本機械学会,山梨地方講演会において先 安 ( No .3 0 6 )

* * 機械工学科 教授

* * *機械工学科 技官

原稿受付 昭和 5 4 年 9 月 1 8 日

(2)

1 2 長野工業高等専門学校紀要 ・ 節1 0 号

エ リクセン試験 : J I SZ 2247 に準拠. 試験方法は A 方法 ( ダイスとしわ押えの問には,枚 厚のほかに 0.05mm のすきまを設けた状態で行 う方法) . 試験片は 1号 ( 幅 90mm の帯) . 試験鵜は手動式,東京試験戟製.

コニカルカップ試験 : J I SZ 2249 に準拠.試験片直径は,公称板厚 T で定められ , 0 . 8≦

T < 1 .0 のときは 50mm とすべきであるが. 工具の都合上 , 0.5 ≦T <0.8 のときの 36mm とした. したが って, ポンチ直径は 1 2.7mm. 工具は自作品で, 手動式油圧 プレスに取付 汁.

3 . 実験結果 と考察 3・ 1 収穫による試験値の差

実験の結果を表 2 に示す. ここで ,C.C.Ⅴ. の,:ラツキが E , .Ⅴ. のものより小さいの は,さきの報告1 )と一致するので,今回は触れない.

表 2 E‑ .Ⅴ. 及び C . C . Ⅴ . ( 単位 :mm)

E r . Ⅴ.,C. C. V. とも,バラツキは 1 種の方が大きくみえるので,分散の違いを検定する と ,E. . Ⅴ .,C. C. Ⅴ. は,共に 1 種 A の母分散が 3 種 A の母分散 よりも大きい ( 危険率 5%) が,他の組合せの比較では,差があるとはいえなかった.

表 2か ら, 平均値の差を求めた ものを, 表 3に示す. すなわち, 試料でみる限 りでは, E‑ . Ⅴ. ,C. C. Ⅴ. とも , 3 種は 1 種 よりも良い値を示す ( J I SG 31 41 では ,E r . Ⅴ. の差は

表3 試料 平均値 の 差d ( 単位 ' .mm) 試駄可 3種 と1種の差 I sとAの差

3S ‑1S‑0 . 5 3 * 3 A ‑1 A‑0 . 8 3 *

1 A‑1S‑0 . 1 6.

3A‑3S‑0 . 4 7 * 1 S ‑ 3 S‑0 . 6 3 *

l A ‑ 3 A‑0 . 5 2 *

lS‑1 A‑0 . 3 5 * 3S‑3 A‑0 . 2 3 *

*危険率5% で有意( 後述)

0.8mm である) .また,同じ板超では, A はSに勝 るが,その程度は,坂槙の 差の約 1 /2 である.

表 3 について , J I SZ 9048 「 二つ

の平均値の差の検定 ( ♂未知,片側) 」

により,有意差を検定する.必要事項

を表 4に,また,得 られた結果を表 5

に示す ( ただし,分散が異なる lA と

3A については, 「 標準偏差が異なる

(3)

冷延鋼板 那 1 位 ・3 種の成形性試駄値の比較 と思われ る場 合」の手法を用いた).

Ef . Ⅴ. の 1 S と 1A については , i o <t となるか ら,焼 なましの ものは,標準調 質の もの より勝 っているとはいえないが, その他の ものについては, 3 種は 1 種 よ

りも,及び A は Sよ りも勝 るといえる.

次に,有意 とな った もの に つ い て, J I S Z 9053 に よ り,二つの平均値の差 の 区間推定を行 った結果を,表 6 に示す.

上下 の信頼限界は

d ± i ( I,α) ノ( S l +S2 ) / n( n‑1 ) となる. ここに

′‑2 ( 乃‑1 ) ‑1 0 ,

l ( I , a) ‑i ( 1 0 ,0. 05) ‑2. 228 である ( ただ し , 3A と 1A については

「 げが異 なる と思われ る場合」 の手法を 用いた).

表 6 か ら,次のことがいえる.

( 1 ) 標準偏差の違 いか ら,当然のこと なが ら ,C. C. Ⅴ. の方が信頼限界の幅が 狭い.

( 2 ) 分散に有意差 のある 3A と 1A の 差 の信頼限界 の幅が ,Er . Ⅴ . , C. C. Ⅴ.

の両者 とも,最 も広い.

( 3 ) C. C. Ⅴ. の ,S と A の差 の信頼限 界 の幅は狭い.

参考 までに,供試材 の機械的性質を, 6 個 の試験片 の平均値を もって,表 7 に 示す.いずれ も,表 1 の J I S に合格 して いる.成形性の 目安 の一つである伸びを み ると , 3 種 は 1 種 よ りも優れ,同種材 では ,A は S よ りも 優れているのは, Er . Ⅴ. 及び C. C. Ⅴ. と同 じ傾 向である.

そ こで,表 2 の Er . Ⅵ 及び C. C. Ⅴ. の 平均値 4個 と,伸び 1( %)との回帰直線 と相関係数 rを求めると図 1 のよ うにな り,相関の強 さは,余 り変わ らない.

表 4 平 方 和 S

1 3

サ ソ プ 故 n‑6

I‑2( n‑I) ‑1 0 a : 平均値の差 危険率 α‑5%

10‑

J 露

i ( I,2α) ‑ I ( 1 0,2×0. 05 ) ‑ 1 . 81 2 L ( 1 0 ,2×0. 01 ) ‑2. 7 64

表 5 1 0の 倍

(*は危険率 5% で有意 , 1% でも同じことがい える)

表 6 平均値の差の信顕区間

試駄値 l

象 Ldi 2 ・ 2

2

8 ㍉ 碧 一倍笥 謬 3S‑1S

3A‑1 A 3A‑3S

0. 5 3 0±0 . 32 4 一心. 21 ‑0. 8 5 0. 8 3 4±0. 42 8 ‑ ナ 0 . 41 ‑1 . 2 6 0. 4 6 7±0 . 21 2 ー0. 2 5‑0. 6 8

C. C. Ⅴ.

1S‑3S IA‑3A IS‑1A 3S‑3A

0 . 6 3 4= ヒ0 . 1 3 9 → 0. 50‑0. 7 7 0. 51 7±0 . 1 8 4 → 0. 3 3‑0. 7 7 0. 3 5 0; ±0 . 0 9 0 一心. 26‑0. 4 4 0. 2 3 3= ヒ0 . 0 8 5 一心. 1 5‑0. 3 2

表 ア 引張故さ及び硬さ試験

種 別 l 唱/ 9 盈引 仲 % び I硬

(4)

1 4

00r 当 糾 刈 最 . 当 糾 よ 叫 は 「叫 = T川.叫 鳩 2 2 2 1 1一l l ^H 仙 瞥 (p tqJ aq )' o 叫 ぶ

TB (且 ・^ ・U ・o (・zl)+^・ 占

長野工業高等専門学校紀要 ・第 1 0 号

4 5 4 6 4 7 4 8 4 9 5 0 伸 び Å( %)

図1 伸びと各測定値の関係 ( T‑0 . 8)

2 8 . 0 2 7 . 8 2 7 . 6 2 1 . 4 2 7 . 2 2 7 . 0 2 6 . 8

王 l 毒9 3 i 3 ‑1 2 6 0

C . C. VF2 9. 2 7 ‑0 . 0 0 1 9 6 3 P.

. . ( r ‑‑0 . 3 5 ) . ○r c. C. V. ‑2 9 . 5 1 ‑0 . 0 0 1 9 6 7 P

・ . 了 で 両 二

. f J 究 x , ≡x 上 , i

l o o 1 0 0 0 1 1 O O 1 2 0 0 1 3 0 0 1 4 ) 0

破 断荷 重 P( k g L ) 図 2 荷重と C. C . Ⅴ. の関係

( T‑0. 8mm , ブ ラ ンク径36mm)

2 8 . 0 号 ≒ O O . 2 2 7 7 . . 5 0

2 6 . 5

'一 ‑ ‑ 1 (tm ). ^ ' 占 勺 も 蒜 佃壁 仰

: ; ヒ = = 芋

≡ ; ;= ' ‑ I : ・ L : ̲ I ̲ :

放なまし温度̀ C

図3 調質材に対する焼なましの影響 ( γ‑0. 8mm ,2h 保持後炉冷)

図において打点の位置が , q Eと H v は 似ているので,両者の相関係数を求めると, r‑0. 81となる( H v‑3.49 OL ‑1 3) .

3・ 2 破断荷重 と C . C . V

l種 S 及び 3 種 S のそれぞれを,性質に 幅を持たせるため,後掲図 3 の各温度で焼 なましを行い,破断荷重 と C . C . Ⅴ の関係 を詞べたのが図 2 である.諸数値の比較は 表 8 に示す.これか ら,次のことがいえる.

表8 各種温度でS 材を焼なましした比較 l ( 1 )1* 2 )3 種l差 匡 ( 2 ) / ( I )

:き …3 : ド : ・ … …

( 1 ) 3 塩は 「 相関あ り 」 ,1 種は 「 やや相 関あ り」で,前者の方が相関は強い.

( 2 ) 3 種は ,C. C . Ⅴ. の 0.29mm の向 上に対 し, 所要荷重が二百数十 kgf も増 加す る.

( 3 ) 方向係数はほとん ど同 じ ( これは, 偶然の一致か もしれない) .

( 4 ) 1 種は C . C. V. のバラツキが大で, 3 種は荷重のバラツキが大.

3・ 3 調質桝 こ対する焼なま しの影響 S 材は,冷間圧延後に焼なましを経 て, ス トレッチ ャス トレイン防止のための調質 圧延が施 されている.焼なまし温度は六百 数十 oC と比較的低 く,調質の圧下率は 1 . 5

%程度 と推測され る.そ こで,更に焼なま し温度を上げ,その影響を調べた.供試材 は , 3・ 1 項 のものと同 じであるが,表 2 の 試験後, 1年以上 も経過 しているので,時 効 の影響を受けているものと思われる.

各 6 個の試験値の平均を,図 3 に示す.

引張強さが変化 しているので,焼なましの

影響は出た ものと思われるが,伸びについ

(5)

冷延鋼板第 1 種 ・3 種の成形性試験値の比較 1 5 ては,明らかな差はみ られなか った.

焼なまし温度の上昇につれ ,C. C. V. の向上が うかがわれるが ,E, . Ⅴ. はその傾向が小 さい.なお , C. C. V. については,焼なまし温度の影響は , 1 種 の方が大きい ようである.

3 ・ 4 E. . Ⅴ. と C. C. Ⅴ. の関係

材料の グレー ドが同じときは,板厚の増加 とともに E r . Ⅴ .,C. C. Ⅴ. とも増加 し,かつ, その増え方は ,E , . V. のみな らず , C. C. V. も片対数方限紙上で 板厚 ( 対数 目盛 り) と直 線関係になる 1 ) . したが って , Er . Ⅴ. と C. C. Ⅴ. のグラフは, 右上が りの直線で表わせる.

一万,本研究のように,板厚が同じで グレー ドが異 なるときは,成形性のよい板ほ ど E, . V.

は増すが , C. C. Ⅴ. は減ずるか ら, 減少関数 となるはず である. しか し, その減少の仕方 についての報告は余 り見当た らない.

1 1 . 81 2 . 01 2 . 21 2 . 41 2 . 61 2 . 8 Er . V. ( m J n )

図 4 E‑ . Ⅴ. と C. C. Ⅴ. の関係 ( C. C. Ⅴ. プラソクは ¢3 6 )

I J A .U .U

Er . Ⅴ . ー

図5 E, . Ⅴ. と C. C. V. の関係の予改T J

図 4 は,表 2 の平均値同士を打点 した ものであって,下に凸な関係を示す.板厚 ごとの最 大値 と最少値の差の平均値は ,E. . Ⅴ. については 0 . 4mm ,C. C. Ⅴ. については 0 .3 mm で あるか ら,曲線の左右‑は 肴o . 2 mm , 上下へは各 0 . 1 5 mm のバラツキを持つ.

なお,図 4 を直線関係で示す と

C . C. Ⅴ. ‑3 7 . 2 ‑ 0 . 8 1Er . Ⅴ.

で , r ニ ー0 . 9 6 とな り,強い負の相関を示す.

図 5の( むの 曲線は, 図 4を写 した ものである. ここで, 例えば T‑0 . 6 mm のときは, E r . Ⅴ .,C. C. Ⅴ. とも値が小さくなるので, 曲線は左下に移動して②のようになることが予 測される.板厚が同じ 0 . 8 mm で,正規の 5 0 mm ブランクを使えば,一般に C. C. Ⅴ. は ブラ ンク径の 7 割強 となるので 1 0 mm 程度 も増えるのに対 し ,E‑ . Ⅴ. は全 く同 じか ら, 曲線は

③のように上方に移 る. また,板厚が例えば 1 . 0 mm になれば , Er . Ⅴ. は 0. 5 mm 程度の微 増に とどまるのに対 し , C. C. Ⅴ. は一躍 2 0 mm 弱 も増えて 4 0 数 mm となるであろ うか ら, 曲線は④のように,右上方 とはいえ,かな り上方寄 りに移るであろ う. ブランク径が 60 mm か ら 7 8 mm ( 1 . 3 ≦T ≦ 1 .6) に移 るときも,同 じことがいえる.

4 .

( 1 ) 3 種 S は 1 種 Sよ りも優れていて,母平均の差は ,Er . Ⅴ. が区間 ( 0 . 2 mm , 0 . 9 mm)

(6)

1 6 長野工業高等専門学校紀要 ・第1 0 号

内に ,C. C. Ⅵ が区間 ( 0 . 5 mm,0 . 8 mm) 内にあるといえる ( 信顔率 9 5 %) . 焼なましした A 材は , S材 よ りも優れてはいるが,試料平均値の差では,板種による違いの 1 / 2 程度であ る.

( 2 ) E' . Ⅴ . ,C . C. Ⅴ. とも,バラツキは 3 種の方が小 さいようである. 特に ,A 材では有 意差が認められ る.

( 3 ) S材を焼なましすれば ,7 5 0o C か らその影響が表れ るが, その傾向は C. C. Ⅴ. の方 が明らかであ り,かつ,処理温度 の上昇につれ , 3 種 と 1 種の差が少な くなる傾向がみ られ る.

( 4 ) コニカルカップ試験におけ る破断荷重は , 3 種の方が 3 割弱 も大きい.また,破断荷 重 と C. C. Ⅴ. は負の相関関係にあるが , 3 種の方が強い相関を示す ( l r Iは約 2 倍).

( 5 ) E r . Ⅴ. と C. C. Ⅴ. は下に凸な負の相関がある. 板厚の変化で少し変わ り, ブランク 径の変化で大 きく変わ る.

地方在住者は,希望す るグレー ドの板の購入が困難である. 4 種類の鋼板を ご提供下さっ た新 日鉄,君津製作所,技術研究室に厚 く御礼申しあげ ます.

参 考 文 献 ・、

( 1 ) 粉本 ・中沢,冷延板のコニカルカップ合格値に関する‑提案,機詩論( 日立地方) , ( 昭 5 3 19) .

参照

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