緑内障の負荷試験とマリオ．ト盲点の変化

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313 緑内障の負荷試験とマリオ．ト盲点の変化

第10報総括

金沢大学医学部眼科学教室（主任習知教授）

畠山靖

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（昭和27年2月29日受附）

余は前報迄に記述した如く，潜伏緑内障の疑と診断したもの9例，18眼，潜伏緑内障と診断したもの14例，27眼，箪純緑内障と診断したもの4例，8眼並に慢性線内障と診断したもの2 例，3眼に，各種負荷試験，即ち不安定試験，

暗室試験，飲水試験，散瞳試験，高張食塩水結膜下見射法，読書試験，須田氏加圧墨痕に眼圧の日差測定などを行い，同時にとの際にマリオット盲点が如何なる変化を呈するかを追究して

みた．

先ず眼圧の変動に関する成績をみるに，各負荷試験を陽性と判定する基準に関しては現在号令学者の意見は必ずしも一・致していないが，今不安定試験及び須田氏加圧法では提唱者の判定

基準に從い，その他の試験では5mmHg以上

の上昇を陽性とすれば，不安定試験では56眼中 44眼（78．6％），須田氏加圧法では10眼申3 fi艮（30

％），飲水試験では32眼中5眠（15．6％），暗室試験では50眼中6眼（12％），散瞳試験験では19眼中1眼のみ（6．3％）が陽性であり，読書試験（8 眼）及び高張食塩水結膜下注射法（5眼）ではすべてが陰性であった．而して眼圧の日差測定で

は最大日差5mmHg以上のものは39眼申33眼

（84．6％）であった．

同時に槍したマ盲点の変化は，その軽微なものをも採用すれば，高張食塩水結膜下山射法では5眼中4眼（80％），散瞳試験では16眼中10眼

（625％），飲水試験では32眼中18眼（56．3％），不

安定試験では48眼中20眼（43．8％），暗室試験では：42眼中12眼（28．6％）に認められた．ま：た何等の負荷試験をも行わない所の日中に於けるマ盲点の変動は32眼中24眼（75％）の多数に認められた．上記の両者が同時に陽性であった場合，即ち眼圧変動が陽性でマ盲点にも変化の現れπ場合は勿論，何れか一方が陽性であった場合をも負荷試駝陽性と判定することにすれば，不安定試験では56眼中48眼（85．7％），高張食塩：水結膜下注射法では5赫々4眼（80％），飲水試験では 32眼中21眼（65．6％），散瞳試験では16眼中10眼

（52．6％），暗室試験では50眼中15眼（30％），須田氏加圧法では10眼中3眼（30％）が陽性であり，

読書試験の際には何れも陰性であった．而して眼圧の日差及び日中に於ける盲点の変動では40 眼中39眼（97．5％）が陽性であった．との中実験例も少く，且負荷試験としては価値の甚だ小さい高張食塩水結膜下注射法を除けば，以上の成績よりして緑内障の負荷試験としては，その陽性率は不安定試験が最も高く，次で飲水試験及び散瞳試験であらう．而して前者では眼圧に著明な上昇がおこり，後二者ではマ盲点に著明な変化が認められた．然し緑内障の早期診断に当って：は，これらの負荷試験よりも眼圧日差及び同時に計測せるマ盲点に有意義な変動が更に高率に認められるtとを忘れてはならなNへ：Bloomfieldは同室試験，コーヒー一試験，散瞳試験，飲水試験，不安定試験及び眼圧の日差を

［ 189 ）

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314 畠山

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［ 190 ］

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緑内障の貢荷試験とマリオット盲点の変化 315

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［ 191 ］

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緑内障の頁荷試験とマリオット盲点の変化 317

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(6)

318 畠山

比較実験して，不安定試験が最：も良く，次で飲水試験，眼圧の日差，曙室試験，コーヒー試験の順で，散瞳試験は緑内障の負荷試験としては殆んど価値がなV・と述べ，Sugarは飲水試験，

コーヒー試験散瞳試験不安定試験及び飲水試験と不安定試験を併用した場合とを比較しらて，ヒの併用試駿が最も優秀であり，次で不安

定試験，飲水試験の順によく，コーヒー試験は槍査成績が不安定であり，散瞳試験は独隅角線内障の検査にのみ役立つと述べている．

マ盲点の変動の成因に関しては，古く：Bjerrum 一派及び：Peter等は上昇せる眼内圧のため，覗騨痛心は硯神経と網膜が直接に損傷されるためと考えたが，とれはピ八議ルビン点眼に急速に反応する事実よりしても肯かれす，草聞は静脈の圧迫に基くと考えSamojloff， Wegnerは実験的研究よりして軍なる眼圧の上昇によるものではなく，血管淋巴腔の霧積に因るとし，中島教授も亦ザイデル暗点を有するか或は盲点の拡大している緑内障に，血管暗点検査法を行って，

盲点附近の血管暗点の拡大を証明し，その成因に関しては，血管周囲淋巴腔の面積に，更に網膜組織内圧の上昇による機能障碍が加わるためであろうと述べ：一（ NAる．更にEvans及びその一派は脈管由來：読に於て，血管周囲並に祠1経周囲の淋巴腔の轡積によりの浮腫を生するため，一過性の血管暗点の拡大を來たすととがあり，ザイデル盛土もこの様な機転により生するものだろうと述べてV、る．

余の実験に於ても，各試験の際の眼圧の変化は表示した如く，たとえ陽性であっても，不安定試験を除けば，5〜10mmHg位の軽度の上昇であり，多くは数mmHgの一過性の変化に過

ぎないのに，暗点の出現，拡大或はマ盲点の拡大を認め，更にこれが短時間のうちに動揺し，或は浩失する点よりして，〜二の現象はSamojloff，

Wegner， Evans，中島敏授等の主張する如く，

血管周囲淋巴腔の鰐積に基くものと考えざるを得ない．第1報所載の余の所謂マ盲点の拡大現象も恐らく注覗なる一・A条件により，血管周囲淋巴腔の璽積を來たすととに由來するものではあ

るまV・かと思われる．

以上の見地より，再び各試験に於けるマ盲点の変化の歌態を比較観察する1（（，飲水試験，高張食塩水結膜下注射法等の比較的持続的に眼内の水分早歌態の変化をもたらす試験，或は散瞳試験の如く，眼内液の前部流出路を障碍して，

後部流出路の機能増大を負荷する試験では，血管周囲淋巴腔の欝積櫃態が著明になり得ると考えられるから，マ盲点の変化に顯著になり易いし叉その出現頻度も比較的高くなるものと思考される．また〜これらの変化が負荷試験開始後30

〜60分にして最も著明になる症例が多い事実は，との考えを裏書するものと思う．

要するに，緑内障の早期診断のために負荷試験並に眼圧の日差測定を行う場合には，眼圧のみを目標とするヒとなく，同時に中心覗野，とくにマリオット盲点の変化をも併せて観察すべきで，仮令眼圧に陽性とすべき変動が現れなくても，盲点或はその附近に余がこれ迄に述べて來た様な変化が現れるならば，とれを陽性資料

として重視すべきであると思う．言うまでもなく，最も早期に緑内障の診断を下すためには諸種の自覚並並に他覚的症駄の綜合判断が必要であって，ただ一種の而もただ一一・一回の負荷試験の如きで速断すべきではなV・．

欄筆に際し，恩師倉知敢授の御指導亜に御校閲を深謝します．

（和知教授就任十周年記念論文）

文

1） Bloomfield： Amer． J． Ophthalm． 30， 869，

1947． 2） Evans ： An intreduction to clinical scotometry・ 1938・ 3）畠山靖：第1報より第9報に至る． 4）草間要：日眼，27，493，

大．12・ 5）申島実書中眼，24，1，昭．7・

献

6） Samoj loff： Klin． Mb］． Augenhk． 69， 59，

1922． 7） Samojloff： Zschr． Augenhk．

58， 214， 1926． 8） Sugar：Amer． J．

Ophthalm． 31， 1193， 1948・ 9） Wegner：

Zschr． Augenhk． 56， 48， 1925．

［ 194 1

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