弘 前 医 学 56:37‑44,2005 総 説
条虫の石灰小体の性状 とその機能
長 内 理 大 神 谷 晴 夫
抄録 すべての条虫類は,石灰小体 と呼ばれ るミネ ラル を多量 に含む構造物 を持 っている. これが条虫の生存 ・寄生適応 に深 くかかわっている可能性が強 く示唆されている. しか しなが ら,その機能につ いては分子生物学的な側面か らの知見 も含め未 知の部分が多 い. この総説では, これ までの知見 を基 に,今後,石灰小体 に係わるタンパ ク質や遺伝子発現な どの研究が どの よ うに進んでい くか考察 した.
弘前医学 56:37‑44,2005 キーワー ド:条虫;エキ ノコックス;石灰小体;機能.
REVIEW
PROPERTIESAND FUNCTIONS OF CESTODE CALCAREOUS CORPUSCLES
ArihiroOsanaiand HaruoKamiya
Abstract Allcestodescontainmineralconcretionstermedcalcareouscorpusclesandtheseconcretionsarelikely tobeinvolvedintheparasitesurvivalinhostenvironment.Nevertheless,theprecisefunctionofcalcareouS corpusclesisstillunclearandhasnotbeenstudiedfrom theview ofbiochemistryandmolecularbiology.This review intendstosummarizethepublishedliterturesabouttheproperties,formationandfunctionofcalcareous corpusclesandtodiscusshow thebiochemicalandmolecularbiologicalapproachesoncalcareouscorpusclesWill beconcernedinthehost‑parasiterelationship.
HirosakiMed.J. 56:37‑44,2005
Ⅸeywords:cestode;Echinococcusspp.;calcareouscorpuscles;function.
1.緒 昌
石灰小体 (Calcareouscorpuscles)は,m を 特徴付ける構造物である.古 くは,18世紀 にすで に石灰小体 に関す る記述が あるが1',実 際 に生物 学的な研究 が始 まった のは1950年以降で,構成 成分,形態,形成過程,化学的性状な どについて の報告がな されてきた. しか し,石灰小体が,条 虫の寄生 ・生存 にいかなる役割 を果 た しているの か,つま りその機能 につ いてはほ とん ど明 らかに
されて いない.今後, エキ ノコックス症な ど難治 性幼条虫症 の駆虫薬開発 のために,条虫の巧みな 寄生戦略 を解析 し,そ の機能 を明 らか にす る過程 は避 けて通れない. この総説 にお いては, これ ま での石灰小体 に関わ る情報 を整理 し, また最近少 しずつ報告 され るよ うになってきた石灰小体 とタ ンパ ク質 との係わ りについて まとめ, さ らに石灰 小体 とい う条虫特有な構造 を標的 とした駆虫薬 の 開発 の可能性 を探 りた い.なお,石灰小体 の生理 学的研究 に関 しては,簡潔 にかつ網羅的 にまとめ
DepartmentofParasitology,Hirosaki UniversitySchoolofMedicine
Correspondence:H.Kamiya
Receivedforpublication,January20,2005 Acceptedforpublication,Janurary31,2005
弘前大 学 医学部 医学科 寄 生虫学講 座 別刷請求先 :神谷晴夫
平成17年 1月20日受付 平成17年1月31日受理
cS
30 0 6
琴o o
@勤
Q @
O
cttJ0
○
㊥
メ
⑳ 1
l・O
C l
o℃ ㌦
亀
管1? m@ '
o
A
23Lme
j p
図1 多包虫よ り精製 され
た石灰小体.
(A)さまざまな大きさや形状
の石灰小体が見 られ る.
(B)層状の膜構造が見 られ るもの (▲),形成途 中と思われ るもの (
I),内部が層状 ではな く空洞様 に見
えるもの (△)な どさまざまな構造 の石灰小体が見 られ る.
られた総説があるので
そ ち らも参考 に して いただ きたい12.石).
灰小体の性状 2‑1 石灰小体の大
きさと形
石灰 小体 の大 きさにつ いては,異な る
条虫種 間 で, あるいは同 じ種 の中で あって も,地
域や宿主 の違 いな どによ り変異が ある
とされ るが,一般 的 に 7‑ 3
4〟mで あ る2'. た だ し , 有 鈎 嚢 虫 (Cysticercuscellulosae)の石灰 小
体 は小 さ く1.5‑
6〟mで あ り, これ は後 述す
るそ の形成過程 の違 い にも関連がある と考 え られ
る3).
形状 につ いては,球形 または卵形で あ
るが,す べてが平滑な表面ではな く,で こぼ こや突起
が あ るもの もある2‑ 2・4・5)(図1).
2 石灰小体の形成過程 石灰 小体 の形成 につ いて
は,幾種類かの条虫 に つ いて詳細 に研 究 されて いる
これ は,後 に機 能 の項 で述 べ るよ うに,石灰 小 体 に蓄 え られた リン酸が幼虫の発育の際 に利用 さ れている, という説 を支持す る結果である.von Brandら2)は, このあ と種 々の条虫類 の石灰小体 について リン酸含有量 を調べているが,ネ コ条虫 の成虫の場合,感染 したネ コの個体 によって石灰 小体 の リン酸含有量が異なるという結果があ り, 石灰小体 の構成成分 に宿主 の栄養状態 との関連が 強 く示唆 されている.
ただ し, 石 灰 小体 の無機 成分 につ いて は種 間 で少 しず つ異 な って い る.例 えば, 大複殖 門条 虫Diplogonoporusgrandisでは,カル シウム に富ん だ石灰小体 と鉄 に富んだ石灰小体がある ことが,
Ⅹ線解析 によって示 されて いる し18',Trilocularia acanthiaevulgarisではカル シウムに富んでいるがマ
グネシウムはな く,硫黄 が含 まれ る という報告 も ある6'. ただ し,それぞれ の金属が存在す る意義 については これか らの課題であ り, また,各条虫 においてすべての石灰小体が同 じ金属イオ ン組成 を持つのか,別 の金属イオ ン組成 を持つ石灰小体 が混在す るのか も検討す る必要がある.
2‑3‑2 有機成分
ネコ条虫石灰小体 の有機成分 に関 しては,ガ ラ ス製ホモジナイザー を用 いて機械的 に組織 を破砕 した後,遠心 とろ過 を繰 り返 して精製 した石灰小 体 を用 い,常法 に したが って各成分の含量が検討 されて いる14).炭水化物 に関 しては, ム コ多糖類 は確認 され るが グ リコーゲ ン様 の糖質 は確認 され て いない. ただ し,水溶性 の多糖類は石灰小体 の 調製過程で失われた可能性があ り実際 にどのよ う な多糖類が含 まれるかは検討 されていない14)
脂質 につ いては,680mgの石灰小体 か ら477〃g の脂 質 が抽 出 され た とい う記述 が あ り,含 有 量 0.07%とい う数字 は,条虫全体 の比率 に比べ小さ い. また,その内訳では,通常細胞 を構成す る脂 質二重膜 の主構成成分である リン脂質が全脂質の 19%で あ り, 虫体細胞 にお ける50%に比べて少 ない. これ は,石灰小体 が細胞膜で囲まれていな いことに起 因すると考え られている14).
タンパ ク質 については,窒素含量 に して0.29‑
0.61%であ り, これ もまた微量である. アミノ酸 組成 を調べ ると,虫体 の細胞 の組成 とよ く似てい るが,カル シウム と相互作用 し骨 を形成す る基盤
となるコラーゲ ンに含 まれ るヒ ドロキ シプロ リン が検 出されず, コラーゲ ンは存在 しな い とされて いる.最近,筆者 らは多包虫の石灰小体 に存在す るタ ンパ ク質 を酸 によって抽 出 し, さ らに濃縮 し たサ ンプル を用 いてSDSポ リアク リル アミ ドゲル 電気泳動 を行 い,バ ン ドパター ンを調べた.その 結果,包虫組織全体 か ら抽 出 したタ ンパ ク質 を電 気泳動 した場合 と異な り,特 に分子量,64kDa, 16kDa,10kDa,8.5kDa付近 に特 に濃 いバ ン ド が検 出された (長 内 ら,投稿準備 中, 図 2). これ
らのタ ンパ ク質の機能 については,現在進展 して いるアミノ酸配列 の解析や,分子生物学的手法 に よ り明 らか になってい くと期待 される.
2‑ 4 Mesocestoidescortiについて
これ まで は, ネ コ条 虫 を用 いた研 究 を中心 に 石灰小体 の構造 ・構成成分 について述べてきたが 最後 にMesocestoidescortiを用 いて行われた実験 に つ いて簡単 に触れ る.基本的な構造や構成成分 は 変 わ りな いが,重要 な点 は,M.cortiの幼 虫型 テ トラチ リジウム を感染 させたマ ウスの飲み水 に, プロー ブとしてス トロンチウム を添加す ると,石 灰小体 の成分 にス トロンチウムが検 出 され る こと である16'. これは,invitroで培地 に加 えた場合 に も同様で,他 に批素,ベ リリウム,カ ドミウム, 鉛, ウ ラ ンな どを プ ロー ブ と して用 いた場 合 も 同様 に石灰小体 に取 り込 まれ る17'. この ことは, 条虫が石灰小体 の形成 に必要な金属 を,宿主 もし
くは環境 中か ら取 り込 んで いる ことを示唆す る非 常 に興味深 い実験結果である. これ と関連 して, 当研究室で も多包虫 を感染 させたマ ウスでは血清 中のカル シウム濃度が高い という知見 を得てお り (塩谷 ら,未発表),エキ ノコ ックス虫体 が宿主 に 働 きかけてカル シウム を供給 させ取 り込み を促進
している可能性 を推測 させる.
3.石灰小体の機能の考察
これ まで述べたよ うに,石灰小体 は特徴的な構 成 を してお り, また一部 の吸虫,線虫 に類似 の構 造 物 が兄 いだ され る ものの, す べて の条 虫 に必 須 の構造物であ り,条虫の生存 に重要 な役割 を果 た している ことが予想 され る. しか し石灰小体 の 機能 に関す る研究は,構成成分が解 明されてか ら 50年近 く経 った現在で もほとん ど皆無 に等 しい.
(A)12.5%ゲルを用いたSDS‑PAGE (B)トリスー トリシンSDS‑PAGE
1 2 3 4 5 6
0005055075211 0750553221図2多 包虫石灰小体に存在するタンパク質.レーン1,4包虫由来のタンパク質レーン2,5原頭節由来のタンパク質レーン3,6石灰小体由来のタンパク質石灰小体に特
徴的なタンパ ク質 (‑)が存在する.
ただ し,そ
の機能 については間接的な実験 によっ て, い くつ
かの推測 がな されている. ここでは, 石灰小体 の
機能 を示唆す る研究 について,筆者 ら のグルー プ
の知見 も含めて考察 したい.
石灰 小体 の性 状 と同様 , 機 能 につ いて もネ コ 条虫 を用 いた研究が行 われて いる10). さまざまな
培養系でネ コ条虫の成虫,幼虫 を培養 し,その中 で,石灰小体
の数が いか に変動す るかが検討 され て いる.幼虫形 につ いて
は,培地 のpHと酸 素濃 度 につ いて, 弱酸 性 ・弱
アル カ リ性 ,通常酸 素 濃度 ・低酸素を組み合わせ
た培養 を行な った とこ ろ,弱 アル カ リ性 よ り弱酸性
,通常の酸素濃度 よ り低酸 素濃度 の方が石灰小体
の消費が速 い ことが 明 らか にされている. この結
果 よ り,石灰小体 が 酸 の中和 に使われてお り, ま
た,低酸素濃度 で消 費量が速 い ことは,嫌気的なエネ
ルギー産生で生 じた コハ ク酸や酢酸 な どの酸 を中和す るの
に,石 灰小体 が使われている可能
性が考 え られ る. さ ら に,ネ コ条虫 に感染 したマウス にRI標識 した
リン 酸 を投与す ると,それ らが石灰小体 に取
り込 まれ るとい う知見 もある12'. これ らをまとめる と,石
灰小体 は,幼虫の発育期な どでに リン酸 を迅速 に供給す るた ATPが必要な時期
虫
図3 多包(条)虫の生活環.
日本では北海道 において,主 に終宿主 としてキタキツネ と中間宿 主 としてエ ゾヤチネズ ミの間で生活環が保たれている.
図4 多包虫によ り侵 されたスナネズ ミ肝病巣の組織切片 (H
.‑E.染色). 石灰小体 (▲)が多数見
受 け られる.
granulosus)が ある. こ
こでは,特 に国内 にお い て も多発す る多包虫症 につ いてのみ述べ る.多包
条虫はキツネやイ ヌな どを終宿主, 自然界 に生息して いるエ ゾヤチネズ ミClethrionomysrufoc anus bedfordiaeな どを中間宿主 と
して生活環が成立 して いる (図3).キツネやイ
ヌの糞便 中に排 出された 虫卵 を, ヒ トが何 らかの
形で経 口摂取す る ことに よ り感染がお こる. 中間
宿主であるヒ トでは,成 虫ではな く包虫化,つ ま り幼虫
の状態で増殖 を続 け,極端な例では肝臓 の大半 を
占めるまで に発育
す る場合 もある.現在,治療は外科的な病巣の切 除 に依存 してお り,有 41 効な化学療法剤 の開発が待 たれている寄生虫症の
1つである20・21)
このエキ ノコックス の
増殖,分化 にお いて石灰 小体 はいか に関わ って いる
のだろうか ?石灰小体 は,腔芽層,繁殖胞 な らびに
原頭節で認め られ る が (図4),形成は腔芽層な らびに
繁殖胞で起 こる
8).肱芽層 な らび に繁殖胞 に存在す る
石灰小体 は 大 きさが30〟mと大 き く (図1),
原頭節に存在す る ものはそれ に比 して小 さい2息22).ェキ
条虫の場合 と同様,石灰小体が縮 小す る. これ は 片節形成 を伴 って成虫になる場合で も,包虫化す る場合で も共 に見 られ る現象である23).以上 を考 える と,エキ ノコ ックス において も発育期 の栄養 の供給源 としてはた らいて いる可能性が強 く示唆 され る.
5.石灰小体の機能 に関与するタンパ ク質
これ まで述 べ た よ うに,石 灰 小体 の研 究 は結 晶学 的解 析 を用 いた構 成成分 の研 究, 顕微 鏡 を 用 いた形態 学 的 な研 究 に限 られ て いたが, 最 近 にな って,石灰 小体 に何 らか の係 わ りを持 つ タ ンパ ク質が同定 され始 めている.単包虫症患者血 清 を用 いたcDNAライ ブラリーのス ク リーニ ング によ ってEF‑handと呼 ばれ るカル シウム結合 モ チー フを持 ったタ ンパ ク質のcDNAが単離 され, 組み換 えタ ンパ ク質 を用 いて作製 された抗体で, 単包虫の原頭節の切片 に対 し免疫染色 をお こな っ た ところ,石灰小体 が染色 された24). このタ ンパ ク質 につ いてはアミノ酸 の部分配列のみ示 されて いるが,16個 のEF㌧handモチー フを持 ち,実 際 にSDS‑PAGE後 ,45caを用 いた実験 にお いて, カル シウムに結合す る ことが示 されて いる24'. こ のタ ンパ ク質 につ いては,患者血清 を用 いたス ク リーニ ングで とられてきた と言 う点 も興味深 く, 生理的な機能が明 らかになる ことが期待 され る.
また, マ ンソン裂頭条虫の幼虫 (マ ンソン孤虫, Sparganum mansoni)抽 出物か らも,疎水性相互作 用 を利用 したクロマ トグラフィー によってカル シ ウムに結合す る10kDaのタ ンパ ク質が精製 され, 前述 の実験 と同様,抗体 を作製 して幼虫内の石灰 小体 に局在す ることが兄 いだされている24).
さ らに, マ ンソン孤 虫の石灰小体 をFicollを用 いて精 製 し, これ と同幼 虫抽 出物 とを反応 させ て,結合す るタ ンパ ク質 の存在 を調べ る実験 も行 われて いる26'. これ によって,マ ンソン孤虫の抽 出物の中に,石灰小体 と結合す るタ ンパ ク質が複 数存在す る こと, さ らにマ ンソン孤虫以外で も, 有鈎嚢 虫や ウ ェステル マ ン肺 吸虫 (paragonimus westermanii)な どの抽 出物 の中にもマ ンソン孤 虫
由来 の石灰小体 に結合す るタ ンパ ク質が存在す る ことが明 らか にな った26). このよ うに種 を越 えて 石灰小体 に結合す るタ ンパ ク質が存在す る ことは
系統発 生学的に石灰 小体が普遍的 に何 らかの重要 な機能 を果た している ことを推測 させ る.
筆者 らは,多包虫の石灰小体 な らびに原頭節抽 出物 を用 いて 同様 の実験 を行 い,確か に原頭節 に は石灰小体 に結合す るタ ンパ ク質が存在す る こと を示 している (投稿準備 中).
最近 になって,単包虫でEgA31というタンパ ク 質が石灰 小体 にも存在す る ことが報告 された27'.
このタ ンパ ク質が,単包虫の中で どのよ うな機能 を果た しているかは興味深 い.
多包 虫の石灰小体 には,2‑3‑2の項で述べ たよ うに,特異的な タ ンパ ク質が存在す る (投稿 準備 中 ;図2). これ らのタンパ ク質は,石灰小体 に存在す る全タ ンパ ク質 に対す る割合が非常 に高 く何 らかの役割 を担 う可能性が推測 され るが,莱 際 どのよ うな機能 を持つタ ンパ ク質か,現在 アミ ノ酸配列解析な どによって解析が進んでいる.
これ まで,石灰小体 はタ ンパ ク質のかかわ りか らの研究 ・議論が され る ことは少なかった.それ は 「タ ンパ ク質含有量は少ない」とい う結果が, 生化学的な研究 を遅 らせた原 因か もしれない. し か し, このよ うに石灰小体 に局在す るタ ンパ ク質 が発見 されてきてお り, これ らのタ ンパ ク質 の性 状 を分子生物学的 に詳細 に調べ る ことは,新たな 石灰小体関連 タ ンパ ク質の探索 とあわせて,重要 な発展的課題 となって くるととらえている.
6.今後の方向性
エキ ノコ ックス には効 果 的 な既 存 の殺 虫薬 は な い. そ の一 因 と して包 虫 の最 外 層 が クチ ク ラ 成分 で構 成 され,構 造 的 に薬剤 が包 虫 の 内部 に 浸透 しな い ことによ るとも考 え られて いる20). た だ,アルベ ンダゾール (albendazole)な どのベ ン ズイ ミダ ゾール 系薬剤 は包 虫病 巣 を縮 小 させ る 28'.ェキ ノコ ツクス は,不顕性感染時期 を経て発 症す るが,その時 には病巣が大 き くなってお り, 唯一 の完 治法 と して の外 科 的手術 によ る侵襲 も 大 き い. このよ うな背 景 か ら, 病 巣 を効 果 的 に 小 さ くす る, あ る いは完 全 に死 滅 させ る抗 エ キ ノコ ックス薬 の開発 が切望 され る.化 学 療 法剤 の開発 で は, まず ,標 的分子 を定 め る ことが望 まれ る. したが って,石 灰 小体 の機 能 に必 須 な タ ンパ ク質 を同定で きれば,そのタ ンパ ク質 の阻
害剤が抗エキ ノコ ックス薬 の候補 とな る可能性 は 高 い.現在 では, コンピューター を用 いたSBDD (StructureBased Drug Design)によって, タ ンパ ク質 の3次元構造 か ら薬剤 の設計 をお こな う 技術 が進 展 し,活 用 され て いる29). また, タ ン パ ク質 が あ る程度 しぼ られ, またそ のタ ンパ ク 質 の遺伝子 クローニ ングができればRNAi(RNA interference,RNA干渉法)を用 いて,求めるタ ンパ ク質の遺伝子 の発現 を抑 え,そのタンパ ク質 の生体内での機能 を予想す る ことも可能である.
エキ ノコ ックスの場合,RNAiに関 しては方法論 が確立 して いないが,住血吸虫や線虫な どではす で に報告 が あ り3034), この系はエキ ノコ ックス に も応用可能であろう.
石灰小体 の機能の解 明は,宿主 一寄生虫相互関 係 という観点か ら生物学的 にとらえて も非常 に興 味深 い し,治療 とい う視点か ら医学的 にとらえて もとて も魅 力的 で あ る.今後 ,石灰 小体 の研 究 が,分子 レベルで進展す る ことを大 いに期待 した い.
本総説 は,2003年第2回弘前医学会優秀発表 賞受賞対象の研究 を敷宿 し考察 した.
文 献
1)Vargas‑Parada L,Laclette JP. Roleof calcareouscorpusclesincestodephysiology:A review.RevLatinoam Microbiol1999;41:303‑7.
2)Yon Brand T,Nylen MU,Martin GN, ChurchwellFK,StitesE.Cestodecalcareous corpuscles:Phosphate relationships, Crystallizationpatternsandvariationsinsize andshape.ExpParasitol1969;25:291‑310.
3)Vargas‑ParadaL,MerchantMT,WillmsK, LacletteJP.Formationofcalcareouscorpuscles inthelumenofexcretorycanalsofTaenElasolium cysticerci.ParasitoIRes1999;85:88‑92.
4)PawlowskiID,YapKW,Thompson RCA.
Observationsonthepossibleorigin,formation andstructureofcalcareouscorpusclesin taeniidcestodes.ParasitoIRes1988;74:293‑6.
5)SmithSA,RichardsKS.Ultrastructureand microanalysesofthecalcareouscorpusclesof
theprotoscolecesofEchinococcusgranulosus, ParasitoIRes1993;79:245‑50.
6)McCulloughS,Fairweather,Ⅰ.Thestructure, composition,formationandpossiblefunctions ofcalcareouscorpusclesinTrt'locularia acanthiaevulgarisOIsson1867(Cestoda, Tetraphyllidea).ParasitoIRes1987;74:175‑82.
7)YamaneY,BylundG,AbeK,OsakiY,Hirai K,ToriiM.X‑raymicroanalysisofcalcareous corpusclesand traceelementcontentin diphyllobothriid cestodes. ParasitoIRes 1988;74:498‑500.
8)OhnishiK,KutsumiH.Possibleformationof calcareouscorpusclesbythebroodcapsulein secondaryhepaticmetacestodesofEchinococcus multilocularis.ParasitoIRes1991:77:60011. 9)Chowdhury N,DeRyckePH. Structure,
formation and functionsofcalcareous corpusclesinHymenolepismicrostoma.Z parasitenk1977;53:159‑69.
10)YonBrandT,MercadoTI,NylenMU,Scott DB.Observationsonfunction,composition,
andstructureofcestodecalcareouscorpuscles. ExpParasitol1960;9:205‑14.
ll)ScottDB,Nylen MU,Yon Brand T,Pugh MH. Themineralogicalcompositionofthe calcareouscorpusclesofTaem'ataeniaeformis. ExpParasitol1962;12:445‑58.
12)vonBrandT,WeinbachEC.Incorporationof phosphateintothesofttissuesandcalcareous corpusclesoflarvalTaeniataeniaeformis.Comp Biochem Physiol1965;14:11‑20.
13)NielandML,YonBrandT.ElectronMicroscopy ofcestodecalcareouscorpuscleformation.Exp Parasito11969;24:279‑89.
rJ
14)vonBrandT,NylenMU.Organicmatrixof Cestodecalcareouscorpuscles.ExpParasitol 1970;28:566‑76.
15)Kegley LM,Brown BW,Berntzen AK.
Mesocestoidescorti:Inorganiccomponents in calcareouscorpuscles. Exp Parasitol 1969;25:85‑92.
16)Kegley LM,Baldwin∫,Brown BW,Berntzen AK.Mesocestoidescorti:Environmentalcation concentrationin calcareouscorpuscles.Exp Parasitol1970;27:88‑94.
17)Baldwin JL,Berntzen AK,Brown BW . Mesocestoidescorti:Cation concentration in calcareouscorpusclesoftetrathyridiagrownf〝 vity10.ExpParasitol1978;44:190‑6.
18)IshiiAI.Fe‑rich corpusclesinDiplogonoporus grandisdetectedusingX‑raymicroanalysis.Z parasitenk1984;70:199‑202.
19)神 谷 晴 夫 , 神 谷 正 男 , 大 林 正 士 . 多 包 虫感 染 に 対 す る宿主抵抗性 因子 の解析2.補体 による多包 虫 ・多包条 虫 に対 す る溶解作用 とそ の作用機序.
寄生虫学雑誌 1980;29:169‑79.
20)山下 次 郎 . エ キ ノ コ ックス‑ そ の正 体 と対 策 . 増補版. 北海道 :北海道 大学 図書刊行会 ;1997.
p.56‑158.
21)Thom pson RCA, Lym bery A J.
EchinococcusandhydatiddiseaseUK:CAB INTERNATIONAL;1995.p1‑47.
22)Sakamoto T,KotaniT.Studies on echinococcosisXX.Preliminaryobservations on theinvivocultivation oflarvaltissueof Echinococcusmultilocularisinculture‑chamberof porousmembrane.Jpn∫Vetres1967;15:165‑9.
23)坂 本 司. エ キ ノコ ックス のす べ て一 包 虫 学 ダ イ ジェス ト 岩手 :雀羅書房 :1997.p.52‑5.
24)RodriguesJJS,FerreiraHB,FariasSE,Zaha A. A protein with novelcalcium‑binding domainassociatedwithcalcareouscorpuscles inEchinococcusgranulosus.Biochem BiophysRes Commun1997;237:451‑6.
25)Chung YB,Kong Y,Cho SY,Yang HJ.
Purification and localization ofa lOkDa calcareouscorpuscle binding protein of Spirometramansoniplerocercoid. ParasitoIRes 2003;89:235‑7.
26)YangHJ.Separationofcalcareouscorpuscles
from plerocercoidsofspirometramansoni and theirbinding proteins. ParasitoIRes 2000;86:781‑2.
27)SaboulardD,LahmarS,Petavy AF,Bosquet G. TheEchinococcusgranulosusantigen EgA31:localizationduringdevelopmentand immunogenicproperties. Parasitelmmuno1 2003;25:489‑501.
28)StettlerM,R。ssignoIJF,Fink R,Walker M,Gottstein B,MerliM,TheurillatR, etal. Secondary and primary murine alveolar echinococcosis:combined albendazole/rlitazoxanide chemotherapy exhibitsprofoundantトparasiticactivity.Int∫
Parasito12004;34:615‑24.
29)AndersonAC.Theprocessofstructure‑based drugdesign.Chem Bio12003;10:787‑97.
30)FireA,Ⅹu S,Montogomery MK,KostasSA, DriverSE,Mello CC. Potentand specific geneticintereferenceby double‑Stranded RNA in Caenorhabditiselegans. Nature
1998;391:806‑ll.
31)Montogomery MK,Ⅹu S,FireA. RNA as atargetofdouble‑stranded RNA一mediated geneticintereferencein CaenorhabdF'tiselegans. ProcNatlAcadSciUSA 1998;95:15502‑7.
32)Hussein AS,Kichenin K,Selkirk ME.
Suppressionofsecretedacetylcholinesterase expression in Nippostrongylusbrasiensisby RNA interference. MoIBiochem Parasito1 2002;122:9ト4.
33)BoyleJP,Wu XJ,ShoemakerCB,Yoshino TP. UsingRNA interferencetomanipulate endogenousgeneexpression in Schistosoma mansonisporocysts. MoIBiochem Parasito1 2003;128:205‑15.
34)Skelly PJ,Da'daraA,HarmDA.Suppression ofcathepsin B expression in Schistosoma mansoTu'by RNA interference.IntJParasito1 2003;33:363‑9.