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Academic year: 2021

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北海道医療大学学術リポジトリ

キトサンナノ粒子およびバイオアクティブガラスを 用いたエナメル質の再石灰化に関する研究

著者 石川 里奈

学位名 博士(歯学)

学位授与機関 北海道医療大学

学位授与年度 令和元年度

学位授与番号 30110甲第318号

URL http://id.nii.ac.jp/1145/00064827/

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キトサンナノ粒子およびバイオアクティブガラスを用いた エナメル質の再石灰化に関する研究

【緒論】

マルチブラケット装置のエナメル質へのボンディングでは,エッチング 処理による 歯質の脱灰が必要となることに加え,ブラケット周囲のプラークの停滞や口腔衛生環 境の悪化により,齲蝕のリスクが高まる.したがって,プラークコントロールを中心と した齲蝕予防やエナメル質の再石灰化促進が重要となる.生体活性セラミックスの医 療分野における開発研究が進められている. なかでもバイオアクティブガラス は,高 い生体親和性と骨誘導能を有し,再石灰化反応においてイオンの供給源になりうるこ とから,人工骨,骨補填材,歯科用インプラントへの表面処理および歯磨剤等への応用 が試みられてきた.一方,キトサンは,生分解性や生体適合性に優れ,齲蝕予防効果を 有する歯科用生体材料への応用が期待されている.近年,ナノテクノロジーの技術の 進歩に伴い,バイオアクティブガラスやキトサンについてもナノ粒子化による サイズ 依存効果や機能性の付与が期待できる.

本研究ではキトサンナノ粒子とバイオアクティブガラス を含有するゲル状材料のエ ナメル質再石灰化促進効果について詳細に調べることを目的とした.

【材料と方法】

1. キトサンナノ粒子の作製

キトサン(Chitosan,シグマアルドリッチ)を酢酸に溶解した後,水酸化ナトリウム

用いて pH を 4.6~4.8 に調整した.キトサン溶液にトリポリリン酸を添加し,遠心分

離によりキトサンナノ粒子ゲル(以下 C)を得た.

2. バイオアクティブガラスの作製

二酸化ケイ素,酸化カルシウム,一酸化二ナトリウムおよび五酸化二リンを瑪瑙製 の乳鉢と乳棒で混合し,バッチを作製した. 白金坩堝と高温電気炉を用いてバッチを

1550℃に加熱し,溶融したガラスを急冷して,ナノジェットマイザーにて粒径 10 μm

以下まで粉砕しバイオアクティブガラス粉末(以下 BG)を得た.

3. 材料の特性評価

C においては透過電子顕微鏡(JSM-2100F,JEOL) (以下 TEM),フーリエ変換赤外分

光装置(LX10-8873,パーキンエルマー) (以下 FTIR)を用いてナノ粒子の形態と構造

の確認を行った.BG に関しては,走査電子顕微鏡(JMS-6610LA, JEOL) (以下 SEM),

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X 線回折装置( Rint-2500 VHF+,リガク)(以下 XRD)を用いて形態と結晶構造を確認 行った.

4. XRD による試料の結晶構造および結晶形成能の評価

純水(以下 PW)または人工唾液(以下 AS)中に,それぞれ BG あるいは CBG を加 えた溶液を調製した(以下 BGPW,CBGPW,BGAS,CBGAS).それぞれの溶液から得ら れた粉末の結晶構造および結晶形成能を SEM,XRD から評価した.

5. エナメル質の再石灰化試験

ヒト抜去歯からエナメル質をブロック状に切り出した後,エポキシ樹脂(Epofix,ス トルアス)に包埋した.包埋後の試料は,小型平面研磨機(ML-110N,マルトー)によ り鏡面研磨を行った.市販のフッ化物配合歯磨剤(Check-Up,ライオン)(以下 F),C ゲル, BG 粉末および CBG ゲル状材料の 4 種類を,エナメル質試料に適用する材料とし て用いた.エナメル質試料を脱灰溶液(pH4.2)に 3 日間浸漬した後,再石灰化溶液

(pH6.8)に 28 日間浸漬した.脱灰溶液と再石灰化溶液には,Ca/PO

4

=1.67 に調整し た人工唾液を用いた.浸漬期間中に 1 日 2 回,タフトブラシ( EX onetuft systema,ラ イオン)によるエナメル質表面への各材料(F,C ゲル,BG 粉末,CBG)のすり込みを 30 秒間行い,その後水洗した.コントロールとして,脱灰溶液および再石灰化溶液へ の浸漬のみの試料も用意した(以下 Con).

6. エナメル質試料の硬さと弾性係数の評価

各エナメル質試料に対して,脱灰前,脱灰後および再石灰化試験後( 28 日後)にお いて,ナノインデンテーション試験(ENT-1100A,エリオニクス)により機械的特性(硬 さ,弾性係数)を評価した.押し込み荷重は, 10 mN(押し込み深さ約 400 nm)と 100

mN(押し込み深さ約 1200 nm)の 2 条件とした.

各エナメル質試料の断面に対してナノインデンテーション試験による解析を行った . 再石灰化試験前後のエナメル質試料をダイヤモンドディスク(IsoMet,Buehler;ダイ ヤモンドブレード使用)を用いて,低速・水冷下で切断した.切断した試料を再度エポ キシ樹脂に包埋し,鏡面研磨を行った.断面のナノインデンテーション試験は,押し込 み荷重 2 mN で,表層から 1.0~98.5 μm の深さについて 2.5 μm の間隔で圧痕を形成し た.

各群 5 つのサンプルを用意し,各サンプルに対して 3 カ所の計測を行い,n=15 とし た.統計分析には一元配置分散分析を用い,その後の多重比較には Tukey 検定を用い た(p < 0.05).

7. SEM によるエナメル質試料の観察

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再石灰化試験前後のエナメル質試料について,金蒸着を行った後, SEM により観察 した.

8. XRD によるエナメル質試料の結晶構造の評価

再石灰化試験前後のエナメル質表面の結晶構造を明らかにするため,試料の表面を XRDにて分析した.

【結果および考察】

特性評価の結果,C については FTIR によりキトサンの構造が維持され,TEM より

約 30~40 nm 程度の類円形の粒子であることが確認された.BG については, XRD に

より非晶質構造を有しており,また SEM により粒径およそ 2~5 μm の不定形であるこ とが確認された.

人工唾液に CBG を加えた試料では,XRD においてアパタイト様構造の形成を示すピ ークが認められ、SEM においては棒状の構造物が一方向に成長している様子が確認さ れた.

すべてのエナメル質試料において脱灰溶液への浸漬により表面の機械的特性が大き く低下した.その後 F,C,BG および CBG をすり込んだ試料では, Con と比較して優 れた機械的特性を示した. CBG については, F と比較して有意に高い回復を示した.断 面解析をした各試料については,脱灰後の試料で表層から約 20 µm の深さまで機械的 特性の低下が認められた.各材料間での機械的特性の有意差は確認されなかった.

SEM 観察では,脱灰前の試料が滑沢な表面を示したのに対し,脱灰後の試料は粗造 かつ蜂巣状の表面を示した. F, C,BG および CBG をすり込んだ試料の表面には,再石 灰化様構造物が観察された.

再石灰化試験前後のエナメル質試料における XRD 解析では,CBG をすり込んだ試料 において,アパタイト様構造の形成と結晶構造の有意な回復が認められ た.

【結論】

キトサンナノ粒子とバイオアクティブガラス 含有ゲルは,エナメル質の再石灰化促

進作用を示すことが明らかとなった.

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