3D テンプレートを用いた膝窩筋腱・
外側側副靭帯大腿側付着部と TKA インプラントの位置関係評価
日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系整形外科学専攻
田窪 明仁 修了年 2019 年
指導教員 長岡 正宏
目次
概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 対象と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 図表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 研究業績目録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56
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概要
背景: 膝窩筋腱(popliteus tendon: PT)および外側側副靭帯(lateral collateral
ligament: LCL)は膝関節の後外側の安定性に重要な役割を担っている。解剖学
的にPTおよびLCLの大腿骨付着部から大腿骨遠位関節面までの距離は短い。
そのため人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA)の術中、大腿骨 を骨切りした際にPTおよびLCL大腿側付着部を損傷することが懸念される。
PTおよびLCL大腿骨付着部とTKAにおける大腿骨遠位骨切りの関係につい
3D-CTを用いて3次元的に位置的評価を行った報告はない。
目的: 3次元的テンプレートシステム(3Dテンプレート)を用いて、屍体膝に おけるPTおよびLCL大腿側付着部とTKA術中の大腿骨骨切り位置との関係 を正確に評価すること。
対象と方法: ホルマリン固定された18屍体、18肢を用いた(平均年齢80.3 歳、右下肢15肢、左下肢3肢)。大腿骨頭から足関節までを含む下肢全体を骨 盤から離断した。PTとLCLを含む膝関節内の靭帯を残し、離断した下肢から 軟部組織を除去した。PTおよびLCLの大腿側付着部を注意深く同定し、大腿 骨から切離した。1.5mm K-wireを用いて付着部の辺縁を2mm間隔で骨に垂直 にマーキングし、下肢全体をComputed Tomography scanning(CT)で撮影し
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た(Aquilion OneTM. Canon Medical System, Tokyo, Japan)。撮影したCTデ ータを3Dテンプレートシステム(Zedknee software: LEXI co., Ltd. Tokyo,
Japan)を用いて解析を行った。TKAのシミュレーションを行う際に用いた
TKAの機種はJOURNEY Ⅱ BCS(Smith and Nephew Co., Ltd.)とPersona PS(Zimmer-Biomet Co., Ltd)を用いた。解析項目は、PTおよびLCL大腿側 付着部の面積、大腿骨の膝関節面における最遠位点と最後方点からPTおよび LCL大腿側付着部までの最短距離、3Dテンプレートを用いて大腿側のインプラ
ントを3D-CT上に設置した際に、大腿骨の骨切りラインがPTおよびLCL大
腿側付着部を通過するか、通過しなかった膝関節の大腿骨の骨切りラインとPT およびLCL大腿側付着部との最短距離、その最短距離はJOURNEY Ⅱ BCS群 とPersona PS群で統計学的有意差があるか、とした。
結果: PT およびLCL大腿側付着部は全ての膝で同定可能であった。PT お よびLCL大腿側付着部面積は、PT; 38.7±17.7mm2、LCL; 58±24.6mm2であっ た。大腿骨膝関節面の最遠位点、最後方点からPT大腿側付着部までの最短距離 は、それぞれ10.3±2.4mm、14.2±2.8mmであった。大腿骨膝関節面の最遠位点、
最後方点から LCL 大腿側付着部までの最短距離は、それぞれ 16.3±2.3mm、 15.5±3.3mm であった。3Dテンプレート上で TKA をシミュレーションした際 に、PT大腿側付着部はJOURNEY Ⅱ BCSの骨切りラインが3膝で通過し、
Persona PSの骨切りラインは9膝でPT付着部を通過した。PT付着部を通過
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しない膝の中で、JOURNEY Ⅱ BCSとPersona PSにおける大腿側インプラン トとPT大腿側付着部までの最短距離は、それぞれ4.3±2.5mm、3.2±2.9mmで あった。LCL大腿側付着部は両機種ともに1例も骨切りラインは通過しなかっ た。また、JOURNEY Ⅱ BCSとPersona PSにおける大腿側インプラントと LCL 大腿側付着部までの最短距離は、それぞれ 7.2±2.3mm、5.6±2.1mm であ った。PT大腿側付着部から大腿側インプラントまでの最短距離は、JOURNEY
Ⅱ BCSとPersona PSの機種間で有意差は認められなかった(P=0.86)。LCL 大腿側付着部からインプラントまでの最短距離は、Persona PSで有意に短い結 果となった(*P=0.04)。
結語:3Dテンプレートを用いてTKAのシミュレーションを正確に行った際に、
PT大腿側付着部は大腿骨の骨切りを行う際に損傷する可能性があり、LCL大腿 側付着部は損傷する可能性が低いことが示唆された。TKA における患者満足度 をさらに向上していくために、手術中にPT大腿側付着部を損傷させないことは 重要である。PT大腿側付着部の損傷を回避するために骨切り量の少ないインプ ラントを使用することや、大腿骨遠位骨切り時に外反角を大きくしすぎないこ と等に注意を払う必要がある。
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緒言
1. 人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA)
人工膝関節全置換術(TKA)は、膝関節内側・外側の軟骨をすべて切除し人 工関節のインプラントに置き換え、大腿骨側インプラントと脛骨側インプラン ト間にポリエチレンインサートを挿入することで完成する手術である(図 1)。 TKA は高度な疼痛や機能障害を伴う変形性膝関節症およびリウマチ性膝関節炎 に対して優れた効果を発揮し、良好な長期成績が報告されている(1-5)。さら に、TKAにおける人工関節の手術器具、リハビリテーション技術など様々な要 因でその成績は向上している。本邦における変形性膝関節症の有病率は、2010 年の報告では2530万人と推定されており、これらの患者の治療法として今後も 重要な手術であると考えられる(6)。
TKA は機種によりデザインが多種多様に存在する。機種によって手術手技、
インプラントの厚さ、大きさ等が異なっており、症例ごとに最適なインプラン トを選択し使用することが重要である。
TKA は現在、大きく分けて前十字靭帯切除・後十字靭帯温存型(posterior cruciate retaining:CR) typeと前十字靭帯・後十字靭帯切除型(posterior stabilized: PS)typeがある。選択の基準は、後十字靭帯:(posterior cruciate ligament:PCL) が機能している場合は CR型を選択し、伸展制限や変形が強く PCLを切除して バランスを整える必要がある場合はPS型を選択する。
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TKAを行う際には、インプラントを設置するために、大腿骨遠位関節面をイ ンプラントの形通りに骨切りする必要がある。大腿骨骨切り面と脛骨骨切り面 の間にできたスペースはjoint gapと呼ばれる。伸展位でのjoint gapは伸展 gap と、屈曲位でのjoint gapは屈曲 gapと呼ばれる。伸展gapと屈曲gapが等しく なるように骨切りを行うことが大事である(7)(図 2)。Gap が等しくない場合 は、関節不安定性や膝可動域制限の原因となる。TKA の重大な術後合併症の 1 つとして膝関節脱臼が挙げられる。報告によると脱臼は0.2%~0.49%とまれな 合併症ではある(8,9)。原因としては、大腿四頭筋の筋力低下、外傷やポリエチ レンの摩耗による不安定性、不良位置でのインプラント設置、不良な靭帯バラ ンス、深屈曲・内反位姿勢の継続による後外側部の弛みが報告されている。伸 展位屈曲位での gap が等しくなるように骨切りを行い、靭帯や軟部組織のバラ ンスを整えることが大事である。
2.膝関節後外側支持機構
膝関節後外側は、外側側副靭帯、腸脛靭帯、大腿二頭筋、ファベラ腓骨靭帯、
弓状靭帯、外側冠状靭帯、後方関節包、膝窩筋腱、膝窩腓骨靭帯から構成され
ている(10,11)。主な静的・動的支持構造物は、外側側副靭帯、膝窩筋腱、膝
窩腓骨靭帯である。
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3.膝窩筋腱(popliteus tendon: PT)
膝窩筋腱は大腿骨外側上顆の遠位にある膝窩筋腱溝の前方1/2から起始し、膝 関節外側で外側側副靭帯の深層を遠位後方に斜めに走行し、脛骨後外側で膝窩 筋腱移行部となり膝窩筋に移行する(12)。膝窩筋は、脛骨近位内側に付着する
(図3)。PTは、屈曲位で膝窩筋腱溝内を走行し、下腿外旋・脛骨後方移動を制 御する動的な支持構造物と考えられている(13-18)。
4.外側側副靭帯(lateral collateral ligament: LCL)
LCLは、大腿骨外側上顆のわずかに近位後方の小さな陥凹に付着している。遠 位に走行し腓骨頭の外側に停止している(図3)。Lapradeらによるの屍体の研 究では、起始は大腿骨外側上顆の1.4mm 近位、3.1mm 後方に位置し、停止は 腓骨頭の前縁から 8.2mm 後方、腓骨茎状突起から 28.4mm 遠位に位置してい ると報告している(19)。LCLは軽度屈曲位で内反を制御する第一に働く静的な 支持構造物とされている(18,20)。
5.研究の背景
TKAの骨切りの際、大腿骨の骨切り面のラインを骨切りラインとすると、PT およびLCL大腿側付着部は、遠位の骨切りラインと干渉する可能性があり、術 中に損傷が危惧される。TKA 術中に PT 損傷を発生した報告は散見される
(13,15,16,20-23)。Tantavisutらは、PS-TKA術中に生じるPTの完全断裂は
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伸展時のjoint gap・屈曲時のjoint gapを共に増大させると報告しており(23)、 Simoneらは、TKA術中の医原性PT損傷は術後2~3年後のInternational Knee Society(IKS)functional scoresを低下させると報告している(15)。IKS scores は患者立脚型評価方法で、functional scoresは活動性の評価項目であり、歩行、
階段昇降、杖や車いすを使用するかの項目を患者自身で評価し点数化したもの である(24)。PT 損傷による具体的な症状についての報告はなく、評価法も確 立されていない。一方で、Ghosh らによれば、PS-TKA 術中の PT 単独損傷は 膝関節屈曲0°から90°では膝関節の不安定性は生じないが、膝関節屈曲90° 以上では内反外反動揺性が生理的な膝に対して有意に生じる。臨床では、スク ワット動作や膝関節深屈曲での荷重時に動揺性は著明となるが歩行時には顕著 にならないと報告した(21)。しかし、手術技術やインプラントの向上により TKA後の膝関節可動域は改善され、深屈曲も行えるようになってきている。我々 は、あぐらをかいていた状態から起き上がった際にTKAが後方脱臼した症例を 1 例経験した。長時間の深屈曲と内反ストレスがかかり脱臼したと考えられる。
今後は深屈曲時の内反動揺性も問題となると考えられ、膝関節機能低下の予防、
脱臼のリスク回避のためにもTKA術中のPT損傷は避けるべきである。
また、Unnanuntana らは、LCL 損傷は内反動揺性を生じると報告し、LCL の損傷により内反を制御できず、TKAの脱臼を生じた症例を報告している(20)。 TKA 術中の LCL 損傷をきたした症例の具体的な症状についての報告はない。
TKA 術中の LCL 損傷の評価についても確立はされていないが、内反ストレス
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テストで外側関節裂隙が開くことが予想される。TKA術中のLCL損傷もTKA 後脱臼につながると考えられ、LCL 損傷も避けなければならない合併症と考え られる。
TKA術中のPTおよびLCL損傷の報告がされているが、それらの大腿骨側付 着部と TKA の際の骨切りラインとの関係を評価している報告は少ない。
Takahashiらは系統解剖用屍体を用いて2次元的に評価した。PT大腿側付着部 を同定し色を付けた状態で大腿骨機能軸と垂直に大腿骨外側顆部の側面像をカ メラで撮影し、その写真と大腿骨インプラントをPC上で重ね合わせた。PT付 着部とインプラントの重なりがあるものは、TKA の手技における骨切りで PT の損傷が起こりうると報告した(22)。これは大腿骨顆部側面の2次元の写真に テンプレートをし、PT 損傷の可能性を評価したものである。3 次元で作成した
3D-CTなどを用いて大腿骨インプラントを予想される位置に設置を行い、PTお
よびLCL大腿側付着部と大腿骨インプラントとの関係を調査した報告はない。
6.研究の目的
3次元的テンプレートシステム(3Dテンプレート)を用いて大腿骨インプラ
ントを3D-CT上に設置することにより、一般的な手術手技での骨切りラインと
PTおよびLCL大腿側付着部との関係を正確に評価することが可能であると考 えた。過去に、3Dテンプレートを用いて大腿骨インプラントを3D-CT上に設
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置し、PTおよびLCL大腿側付着部と大腿骨インプラントの骨切りラインとの 関係を評価した報告はない。本研究の目的は、一般的な手技でTKAを行った際 のPTおよびLCL大腿側付着部の損傷する可能性について3Dテンプレートを 用いて正確に評価することである。
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対象と方法
1. 対象
日本大学医学部に献体されたご遺体を用いて研究を実施した。ホルマリン固 定された18屍体(男性9体、女性9体)を用いた。 (日本大学医学部倫理委員 会承認番号29-15-0)
右下肢を用いて観察を行い、解剖中に股関節から足関節のいずれかに骨疾患 や手術歴があると判明した膝は左下肢を選択した。右下肢15体、左下肢3体を 用いた。死亡時平均年齢は、80.3 歳(54~90歳)であった。
大腿骨頭と足関節を含めた片側下肢全体を骨盤から離断した。PTと膝関節の 靭帯を除く全ての軟部組織を下肢骨から切除した。注意深くPTとLCL大腿側 付着部を同定し、大腿側付着部から切除した。1.5mm K-wireを用いてPTおよ びLCL大腿側付着部の周囲を2mm間隔で骨に垂直にマーキングを行った(図 5)。下肢全体をComputed Tomography scanning(CT)で撮影した(Aquilion OneTM. Canon Medical System, Tokyo, Japan)。撮影したデータを3Dテンプ レートシステム(Zedknee software: LEXI co., Ltd. Tokyo, Japan)を用いて解 析を行った(25,26)(図6)。
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2. シミュレーションに用いた機種選択
TKAのシミュレーションを行った人工膝関節の機種は、JOURNEY Ⅱ BCS
(Smith and Nephew Co., Ltd.)とPersona PS(Zimmer-Biomet Co., Ltd) を用いた。多種多様な人工関節の機種があるが、人工関節を設置する際には、
使用するインプラント分の厚さを大腿骨遠位関節面から切除し、人工関節イン プラントに置換する手技は変わらない。インプラントと同じ厚み分を切除して インプラントを設置する場合、大腿骨遠位部と後顆部の骨を切る厚さは、イン プラントの遠位部と後顆部の厚さといえる。様々な機種を比較すると、大腿骨 遠位の骨切りの厚さは 7mm から 9.0mm であり、大腿骨後顆は 7.4mm から 10mm である。JOURNEY Ⅱ BCS は大腿骨遠位の骨切り量は 7mm、後顆は 7.4mm と骨切り量は最も少ない。Persona PS は大腿骨遠位関節面の骨切り量
は9.0mm、大腿骨後顆の骨切りの厚さは10mmと骨切り量は最も大きい。この
厚みはインプラントによって変化しない。骨切り量の最も少ない JOURNEY
Ⅱ BCSと骨切り量の最も大きいPersona PSの2機種を用いて検証することと した(図7)。
3. JOURNEY Ⅱ BCSとPersona PS
両機種ともに前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament: ACL)切除、PCL 切除型の人工関節であり、大腿骨と脛骨の骨切り後にインプラントを設置する ものである。生理的な膝では膝を屈曲していくと大腿骨回転中心は脛骨に対し
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て後方に移動していくroll backという運動を起こす。PCLはroll backを引き 起こす靭帯として知られており、その機能を代償するために PS 型人工関節は
post-cam機構と呼ばれるシステムをインプラントに持たせている(図8)。膝関
節を屈曲していくとcamがpostにあたり、さらに屈曲していくと回転中心は後 方に移動していく機構である(図9)。Persona PSはこれと同様の機構を有して いる。しかし、この機構では膝関節屈曲時に生理的な膝とは違う運動をするこ とがわかってきた。
JOURNEY Ⅱ BCS は ACL、PCL 機能を代償する Bi-Cruciate Stabilized
Knee Systemを導入し、生理的な膝の運動を再現することを目標とした新しい
コンセプトの人工膝関節である(図10)。術後短期成績は報告されているが、新 しい機種であり長期成績の報告はまだない(27)。大腿側インプラントのサイズ バリエーションは1から7まで7種類あり、前後径は3mm単位(1と2の間は 2mm)で横径は3mm単位(1から3は1mm)である。遠位、後方の厚みはサ イズによらず一律で7.0mm、7.4mmである。
Persona PSは体格や性別だけでなく人種間の相違も考慮に入れた解剖学的デ
ザインを目的として開発されている。前後径では2mm単位で12サイズ、横径で はスタンダードとナローの2 種類の形状をもち(サイズ3-11のみ)、合計21種 類の大腿骨コンポーネントからなっている(図10)。遠位、後方の厚みはサイ ズによらず9mm、10mmである。また、脛骨側インプラントは健常人の脛骨形 状に近く関節面の内外側で非対称性のデザインがなされており、本邦では2013
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年から使用可能な新しいインプラントである。サイズバリエーションは
JOURNEY Ⅱ BCSよりも多く、手術する膝に合った大腿骨インプラントを選
択しやすいと考えられており、脛骨側はインプラントが非対称なため設置する 際に回旋異常をきたす可能性が少ないと考えられている。術後短期成績は報告 されているが、新しい機種であり長期成績の報告はまだない(28)。
それぞれの機種における合併症の頻度は報告されていないが、術後短期成績 を考えると従来の人工膝関節のものと同等かそれ以下であることが予想される。
筆者らの TKA 施行時における機種選択は、PCL 機能が残存している場合は CR型を選択し、PCL機能破綻例や屈曲拘縮のある膝にはJourney Ⅱ BCSも しくはPersona PSを用いている。JOURNEY Ⅱ BCSかPersona PSの選択 は、3Dテンプレートを施行し大腿骨および脛骨がインプラントと解剖学的に合 っている機種を選択することとしている。
4. 3Dテンプレートを用いたシミュレーションにおけるインプラントの 設置位置
CT前額断では機能軸(大腿骨頭中心と膝関節中心を結んだ線)に垂直に骨切 りを行った(図11)。実際の手術では、大腿骨頭は触知不可能なので、解剖学的 軸を参照する。解剖学的軸と機能軸のなす角は約5°~7°である(7)。機能軸 は解剖学的軸から 5°~7°外反していることになる。解剖学的軸から術前に測 定した外反角に合わせて大腿骨遠位を骨切りし、機能軸に垂直になるよう骨切
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りを行うこととなる。
水平断では、大腿骨の回旋アライメントを決定する。大腿骨外上顆と大腿骨 内側上顆の陥凹を結ぶ線はSurgical Epicondylar Axis; SEAと呼ばれている。
SEAは大腿機能軸に直角であり、また膝90°屈曲位で脛骨機能軸と直角である ことよりSEAに平行に大腿骨インプラントを挿入することが正しいとされてい る。SEA は、後顆軸(内顆外顆の最後方点を結んだ線)から 3°外旋と平行に なるといわれており水平断では、後顆軸に3°外旋で設置した(7)(図11)。 TKAを行う膝では内側の変形をきたしていることが多く、骨成分が保たれてい る外側顆の後方がインプラントの後方と同部位になるように設置した。
矢状断では、後顆をインプラントで置き換えた際に大腿骨骨幹端部前方の皮 質骨を損傷しないサイズを選択し、前方の骨皮質とインプラント前方骨切り面 が直線になるようにした(図11)。
大腿骨遠位の骨切り量は、大腿骨外側顆の関節面最遠位からの骨切りの厚さ とし、その厚さは、それぞれのインプラントの外側顆の厚さと同じであり、
JOURNEY Ⅱ BCS を使用した際は 7.0mm、Persona PS を使用した際は 9.0mmとした。
大腿骨後方の骨切りの厚さは、インプラントを後顆軸から3°外旋で設置した 際に、それぞれのインプラントの外側顆の後方の厚さと同じとした。JOURNEY
Ⅱ BCSでは7.4mm、Persona PSでは10.0mmである(2,29)(図12)。 大腿骨遠位、大腿骨後顆の厚さはサイズによらず一定である。サイズの決定
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は、矢状断で、後顆をインプラントと近似した際に、大腿骨前方骨皮質と前方 のインプラントの距離が最小になるようにした。
5. 解析項目
3Dテンプレートシステムを用いて以下の項目を検討した。
① PTおよびLCLの大腿側付着部面積。
② 大腿骨の膝関節面における最遠位・最後方点からそれぞれの付着部まで の最短距離。
③ 大腿側のインプラントを上記条件で3D-CT上に設置した際に、大腿骨の 骨切りラインがPTおよびLCL大腿側付着部を通過するか。
④ 大腿骨の骨切りラインがPTおよびLCL大腿側付着部を通過しなかった 場合に、PTおよびLCL大腿側付着部とJOURNEY Ⅱ BCSとPersona PSを用いた際の大腿骨の骨切りラインとの最短距離。
⑤ PTおよびLCL大腿側付着部と大腿骨インプラントとの最短距離につい てJOURNEY Ⅱ BCS群とPersona PS群で統計学的有意差があるか。
6、項目の抽出方法
PTおよびLCL大腿側付着部面積は、ImageJ software(National Institutes of Health, Bethesda, Maryland, USA)を用いて算出した(30)(図13)。
膝関節面の最遠位からPTおよびLCL大腿側付着部までの距離は、CTの冠
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状断において算出した。算出方法は、まず関節面の最遠位に機能軸と垂直にな るような接線を引いた。PTおよびLCLにマーキングした最遠位点のあるスラ イスで、その接線からPTおよびLCL大腿側付着部最遠位点に垂線を引きその 距離を計測した。最後方点からそれぞれの付着部までの最短距離は、CTの水平 断上において算出した。関節面の最後方点にSEAと水平になるよう接線を引い た。PTおよびLCLにマーキングした最後方点のあるスライスで、その接線か らPTおよびLCL大腿側付着部最後方点に垂線を引きその距離を計測した(図 14)。
大腿側のインプラントを3D-CT上に設置し、大腿骨顆部の外側側面像におい て大腿骨の骨切りラインがPTおよびLCL大腿側付着部を通過するかを調査し た(図13)。
大腿骨の骨切りラインがPTおよびLCL大腿側付着部を通過しない膝に関し ては、PTおよびLCL大腿側付着部とインプラントまでの最短距離を測定した
(図15)。
7、統計解析
測定値は、平均値±標準偏差で表記した。PTおよびLCL大腿側付着部と大 腿骨インプラントとの距離をJOURNEY Ⅱ BCS群とPersona PS群で
Man-Whitney’s U testを用いて比較した。すべての測定値はSPSS ver.19
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(SPSS Inc., IBM, Chicago, IL, USA)を用いて解析し、実験群間の統計的有意 性は、p<0.05を有意とした。
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結果
PTおよびLCL大腿側付着部は全ての膝で同定可能であった。
① PT および LCL の大腿側付着部の面積は、PT; 38.7±17.7mm2 (21.3~ 79.8mm2)、LCL; 58±24.6mm2 (26.6~117.4 mm2)であった(図16)(表 1)。
② 大腿骨最遠位点と大腿骨最後方点からPT 大腿側付着部までの距離は、それ ぞれ10.3±2.4mm(5.7~12.8mm)、14.2±2.8mm(7.2~17.8mm)であった。
大腿骨最遠位点と大腿骨最後方点から LCL 大腿側付着部までの距離は、そ れぞれ16.3±2.3mm(11.0~19.4mm)、15.5±3.3mm(10.5~21.0mm)であ った(図14)(表1)。
③ 3Dテンプレートを用いてTKAのシミュレーションを行った際、大腿側にお ける骨切りラインがPT大腿側付着部を通過するかを調査した。JOURNEY
Ⅱ BCSでは18膝のうち3膝で(17%)骨切りラインがPT大腿側付着部を 通過し、Persona PSでは9膝(50%)で通過した(図13)(表1)。大腿側 における骨切りラインはLCL大腿側付着部を通過しなかった。
④ 大腿骨における骨切りラインがPTおよびLCL大腿側付着部を通過しなかっ た場合に、PT大腿側付着部から骨切りラインまでの最短距離は、JOURNEY
Ⅱ BCSとPersona PSでそれぞれ、4.3±2.5mm(0~6.9mm)、3.2±2.9mm
(1.4~4.4mm)であった。LCL 大腿側付着部と大腿骨の骨切りラインまで
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の最短距離はJOURNEY Ⅱ BCSとPersona PSでそれぞれ、7.2±2.3mm
(3.2~11.7mm)、5.6±2.1mm(3.31~10.55mm)であった(図17)(表2)。
⑤ PT大腿側付着部から大腿側インプラントまでの最短距離は、JOURNEY Ⅱ BCSとPersona PSの機種間で有意差は認められなかった(P=0.86)。LCL 大腿側付着部からインプラントまでの最短距離は、Persona PS で有意に短 い結果となった(*P=0.04)(表2)。
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考察
本研究の結果から、3Dテンプレートを用いてPTおよびLCL大腿側付着部と TKA大腿側インプラントとの関係性を正確に評価し、TKA術中にPT 大腿側付 着部を損傷する可能性が明白となった。インプラントの関節面は骨切りライン と一致している。JOURNEY Ⅱ BCSの17%で大腿骨の骨切りラインがPT大 腿側付着部を通過し、Persona PSの50%で大腿骨の骨切りラインがPT大腿骨 付着部を通過した。大腿側付着部を骨切りラインが通過する膝では、TKAを行 う際にPT の大腿側付着部を医原性に損傷することが懸念される。PT の損傷は 膝関節の不安定性を生じ、術後の成績を低下させる可能性があり、手術手技で PTを損傷しないように注意する必要がある。
PT および LCL 大腿骨付着部の解剖学的な報告は過去にも散見され、靭帯付 着 部 の 形 態 や 位 置 関 係 は 様 々 な variation が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る
(16,17,18,22)。手術時におけるPTおよびLCL大腿側付着部の損傷を評価する にあたり、まず付着部の解剖学的構造を明らかにする事を目的として面積の検 討を行った。Takedaらは3D-CTを用いた評価で、PTおよびLCL大腿側付着 部の平均面積は、PT; 55.8±25.0 mm2、LCL; 52.5±24.2 mm2 と報告している
(18)。LaPradeらはビデオモーションキャプチャーシステムを用いて、PTお よびLCL大腿側付着部の平均面積は、PT; 59mm2(53~62mm2)、LCL; 48mm2
(43~52mm2)であったと報告している(16)。Takahashi らは PT 大腿側付
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着部の平均面積は、51.4±12.0mm2 (30.8~70.2 mm2)と報告している(22)。 本研究では、PTおよびLCLの大腿側付着部の面積は、PT; 38.7±17.7mm2 (21.3
~79.8mm2)、LCL; 58±24.6mm2 (26.6~117.4 mm2)であり、諸家らの報告 と比較して PT の面積は小さい傾向にあり、LCL の面積は同等であった。これ はPT付着部の認識の違いや、面積の評価方法の違いによるものと考えられた。
TKAを施行する際の骨切り量とPTおよびLCLの損傷の関係を考慮するため に膝関節面遠位と膝関節面後方からのPTおよびLCLまでの距離を測定した。
Takahashi らの報告によると、遠位関節面からと後方関節面からの PT 大腿側
付着部までの距離は、それぞれ10.2 mm(6.5~16.2mm)、 15.1mm (11.7 ~ 19.0mm)であった(22)。Tantavisut らの報告によると、PT 大腿側付着部の 最遠位点から大腿骨外顆の最遠位までの平均距離は、8.9mm(6.4 ~10.5mm) であり、PT 大腿側付着部の後方点から大腿骨外顆の最後方までの距離は 11.5mm(9.5 ~14.0mm) であった(23)。本研究では、大腿骨の膝関節におけ る最遠位点、最後方点からPT大腿側付着部までの距離は、それぞれ10.3±2.4mm、
14.2±2.8mmである。過去の解剖学的な報告と比較して、日本人の解剖体を用い
たものとは同等であるが、Tantavisut らのタイ人における遠位・後方関節面か らPT大腿側付着部までの距離は短い傾向にあった。これは人種間による差が考 えられた。
PTとLCLの詳細な解剖学的研究は散見されるが、PTおよびLCL大腿側付 着部と TKA のインプラントとの関係について研究された報告はまれである
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(22)。JOURNEY Ⅱ BCSを用いてTKAを施行した際、大腿骨遠位の骨切り 量は7.0mm、後方の骨切り量は7.4mmであり、Persona PSでは大腿骨遠位の 骨切り量は9mm、後方の骨切り量は10mm である(2,5,29)。この骨切りの厚 さはインプラントのサイズによらず一定であり、今回の研究は大腿骨遠位から PT および LCL 大腿側付着部までの距離を考慮すればよく、体格や大腿骨の長 さによる補正は行っていない。PT 大腿側付着部の位置を考えると、一般的な TKA手技で大腿骨の骨切りを施行した際、大腿骨遠位の骨切りで損傷する可能 性があることがわかる。一方、LCLの大腿側付着部は、PTよりも近位かつ前方 に位置しており、TKAの一般的な手技での骨切り量では、LCLの大腿側付着部 を損傷する可能性は低いと考えられる。本研究では、PT 大腿側付着部は JOURNEY Ⅱ BCS のインプラントと3膝(17%)で重複しており、Persona PS とは9膝(50%)で重複していた。対照的に、LCL大腿側付着部とは両機種と も1膝も重複している例はなかった。Takahashiらは、21屍体を用いTKA の 大腿骨側インプラントとPT付着部までの距離を評価した。彼らは、大腿骨外側 顆の側面の写真を用いて 6 機種のインプラントと PT 付着部の関係を 2 次元的 に評価した。LCS(Depuy Co., Ltd)のみPTとインプラントの重なりは見られ ず、その他の5機種のインプラントではPTとインプラントの重なりが見られた。
そして、primary TKAではTKAの手技にかかわらず、PTの大腿側付着部の損 傷は避けられないことがあると結論づけた(22)。実際の臨床では、Akiらは275 膝のNexGen(Zimmer-Biomet Co., Ltd)を使用したTKAにおいて、PT大腿
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側付着部の部分的損傷は34.2%、全断裂は17.8%に確認されたと報告している。
一般的な手技で大腿骨を骨切りする際に、PT大腿側付着部は損傷する可能性が あり、注意するべきであると述べられている(13)。Simoneらの報告によれば、
retrospectiveな研究でHLS Noetos PS(Tornier, Inc)を用いたTKAの681膝 の中で 15 膝に医原性に PT の完全断裂を起こしていたと報告している(15)。 PT損傷の報告はあるが、JOURNEY Ⅱ BCS、Persona PSを用いてPTおよ びLCL付着部を損傷したという報告はない。今回用いた屍体はすべて日本人で あり、欧米人と比べ膝関節面からPTおよびLCL大腿側付着部までの距離は短 い可能性がある。そのため、PT や LCL 損傷などの合併症を減らすために、ア ジア人の膝に合った人工関節の開発が進められている。本研究のPT大腿側付着 部とインプラントの関係性のデータを活用し、PT損傷のリスクの低い人工関節 の開発に貢献できると考える。
Tantavisutらは、PS-TKA術中に生じるPTの完全断裂は伸展gap・屈曲gap 共に増大させると報告した(23)。Simoneらは、TKA術中の医原性PT損傷は 術後2~3年後のInternational Knee Society(IKS)functional scoresを低下さ せると報告した(15)。IKS scoresは患者立脚型評価方法で、functional scores は活動性の評価項目である。一方で、Ghosh らによれば、PS-TKA 術中の PT 単独損傷は膝関節屈曲 0°から 90°では関節の不安定性は生じないが、膝関節 屈曲 90°以上では内反外反動揺性が生理的な膝に対して有意に生じる。臨床で は、スクワット動作や膝関節深屈曲での荷重時に動揺性は著明となるが歩行時
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には顕著にならないと報告した(21)。しかし、今後は TKAの成績向上、耐久 性向上に伴いTKAの適応は拡大してきており、高い活動性を保つことが必要と されてきている。TKA 術中のPT 損傷の影響に関しては、まだ議論の残すとこ ろであるが、脱臼などの重篤な合併症の予防、満足度向上のためにもPT損傷は 避けるべきと考えられる。
JOURNEY Ⅱ BCSを用いた膝はPersona PSを用いた膝に対し骨切りライ ンがPT 大腿側付着部を通過する数は少ない。JOURNEY Ⅱ BCS のインプラ ントの厚さはPersona PSよりも遠位、後方においてそれぞれ2.0mm、2.4mm 薄い。使用する機種により大腿骨遠位、後方のインプラントの厚さは1mm以下 の単位で異なる。われわれのインプラントサイズの決定法では、手術する膝に 合ったインプラントのサイズ選択をした際、大腿骨遠位と後顆の厚さはサイズ を変更しても変わらない。今回の結果から、損傷を避けるには術前プランニン グの際に PT 損傷が予想される膝の場合には骨切り量の少ないインプラントの TKA 機種の使用を 考慮すること が可能 であると考え られた 。本研究でも JOURNEY Ⅱ BCS ではPT の損傷率は低い傾向にあった。また、大腿骨遠位 の骨切りでは、解剖学的軸からの外反角を大きくしていくと、外側顆の骨切り は厚くなる(図18)。外側顆を関節面から厚く切らないようにインプラントの設 置角度を調整することも大切である。
大腿骨骨切りラインとLCL大腿側付着部が重複するという報告はない。本研 究では、大腿骨最遠位点および最後方点から LCL 大腿側付着部までの距離は、
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それぞれ16.3±2.3mm、15.5±3.3mmであった。TKA における大腿骨遠位、後 方の骨切りは通常10mm以下であることを考慮すると、LCL大腿側付着部を損 傷する可能性は低い。骨切り後のインプラントから LCL までの最短距離は JOURNEY Ⅱ BCSとPersona PS でそれぞれ、7.2±2.3mm(3.2~11.7mm)、 5.6±2.1mm(3.31~10.55mm)である。Persona PS群で有意に短い結果となっ た。特に大腿骨遠位、後顆の厚いインプラントを使用する場合は、重度の外反 膝や、外顆の低形成のある膝においてLCLを損傷する可能性を考えなくてはな らないと考える。
本研究では、2つのlimitationがある。1つ目は、膝数が少ないこと。2つ目 は、屍体の身長を評価できておらず、PT および LCL 大腿側付着部の損傷リス クと身長に相関関係があるかもしれないこと。2つ目は、CTを基にした3D テ ンプレートシステムを用いており、関節面にある軟骨の高さを評価していない こと。臨床的には、実際の骨切り量はCTでのシミュレーションよりも少ない可 能性がある。これらのlimitationは今後の課題である。
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まとめ
当研究では、PTおよびLCLの大腿側付着部とTKAにおける大腿側インプラ ントの位置関係について3Dテンプレートシステムを用いて詳細に検討した。3D テンプレートを用いて TKA のシミュレーションを正確に行った際に、PT 大腿 側付着部は大腿骨の骨切りを行う際に損傷する可能性があり、LCL 大腿側付着 部は損傷する可能性が低いことが示唆された。TKA における患者満足度をさら に向上していくために、手術中にPT大腿側付着部を損傷させないことは重要で ある。PT大腿側付着部の損傷を回避するために、TKA施行時に大腿骨側には骨 切り量の少ないインプラントを使用することや、大腿骨遠位骨切り時に外反角 をつけすぎないこと等に注意を払う必要がある。
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謝辞
本研究に関し、利益相反はありません。
本研究に関して、研究、国際学会発表、ならびに学位論文の御指導、御校閲を 直接賜りました、龍啓之助先生に深謝いたします。また、研究の御指導を賜り ました入内島崇紀先生に深謝いたします。
本研究の御指導を賜りました日本大学医学部機能形態学系生体構造医学分野、
相澤信教授、日本大学医学部外科学系整形外科学分野、長岡正宏教授、德橋泰 明教授に深謝いたします。
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図 1
A. 変形性膝関節症の下肢の3D-CT画像。
B. TKAを設置するために骨切りをしたシミュレーション画像。
C. TKAを設置した像。
A B C
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図 2
A. 大腿骨脛骨を骨切り後の膝関節90°屈曲位 斜線部の大腿骨脛骨間の距離は屈曲gap B. 大腿骨脛骨骨切り後の膝関節伸展位
斜線部の大腿骨脛骨間の距離は伸展gap 図は(31)より引用
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図 3
A. 膝関節外側。 B. 膝関節後方。
a. 膝窩筋腱 b. 膝窩筋 c. 外側側副靭帯 d. 腓骨膝窩靭帯 e. 外側半月板 f. 後十字靭帯 ➡. 大腿骨外側上顆
⇢
. 腓骨頭- 31 -
図 4
膝関節外側面の写真。
a. LCL b. 大腿骨外側上顆 c. 腓骨茎状突起
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図 5
A. 右下肢を骨盤から離断し大腿部は軟部組織を切除。
B. PTと膝関節周辺の靭帯と半月板を残し膝関節外側からみた図。
C. PTとLCL付着部周囲に黒いマーキングを行い、K-wireを挿入した。
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図 6
A. 3D-CTの側面外側像。黒矢印は、マーキング部。
B. 3D-CT上にインプラントを設置した側面外側像。
C. CT前額断。
D. CT矢状断。
E. CT水平断。
青線は設置したインプラント。
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図 7
A. 人工膝関節大腿側インプラントJOURNEY Ⅱ BCS。
JOURNEY Ⅱ BCSの大腿骨遠位の厚さは7.0mm、後顆の厚さは7.4mm。 B. 人工膝関節大腿側インプラントPersona PS。
Persona PSの大腿骨遠位の厚さは9.0mm、後顆の厚さは10.0mm。
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図 8
A. 大腿骨インプラントを遠位からみた図。矢印はcam。 B. インサートの正面の写真。
C. インサートの側面の写真。
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図 9
A. 膝関節伸展位での大腿骨インプラントとインサートを中央で縦割した側面。
B. 屈曲していくとpostがcamにあたりさらに屈曲していくとroll backを起こ す。
図は(32)より引用。
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図 10
A. JOURNEY Ⅱ BCS の大腿骨インプラントとインサートを中央で縦割した
側面図。Anterior camによりACL機能を代償し前後不安定性を得る特徴が ある。
B. Persona PS の正面図、内外側のサイズバリエーションとして standard と narrowの2種類がある。
C. Persona PSの側面像、12種類のサイズバリエーションがあり、2mm幅であ る。
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図 11
A. 冠状断。大腿骨遠位は機能軸(a)と直行するラインで骨切りしている(赤 線)。大腿骨の解剖学的軸(b)から5°~7°内反させた線は大腿骨機能軸と ほぼ一致する。
B. 水平断。大腿骨の内側外側後顆を結ぶ線(後顆軸と呼ばれる;c)より3°外 旋のラインと平行に骨切りする(赤線)。骨切りは大腿骨外側上顆と内側上 顆にある陥凹を結ぶ線(SEAと呼ばれる;d)とほぼ平行である。
C. 矢状断。大腿骨前方骨皮質の前縁とインプラント骨切り面が直線となるよう に骨切りを行う(赤線)。
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図 12
A. 冠状断でJOURNEY Ⅱ BCSを設置した。赤線は大腿骨遠位の骨切りライン である。遠位の矢印はインプラントの厚みであり、骨切りをする長さである。
B. 矢状断でJOURNEY Ⅱ BCSを設置した。赤線は大腿骨後方の骨切りライン である。後方の矢印はインプラントの後顆の厚みであり、骨切りする長さであ る。
C. A,Bを3Dで図示、画像は膝関節外側面。
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D. 冠状断でPersona PSを設置。赤線は大腿骨遠位の骨切りラインである。遠
位の矢印はインプラントの厚みであり、骨切りをする長さでもある。
E. 矢状断でPersona PSを設置した。赤線は大腿骨後方の骨切りラインである。
後方の矢印はインプラントの後顆の厚みであり、骨切りする長さである。
F. D,Eを3Dで図示、画像は膝関節外側面。
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図 13
A. 3D-CTでみた膝関節外側。赤色部は LCL大腿側付着部、黄色部はPT 大腿 側付着部。
B. TKAを3D-CTに設置。PT付着部とインプラントは重複している(黒色部)。
ImageJ softwareを用いて面積を計算した。インプラントの厚さは決まって
おり、その距離をもとにPT付着部、LCL付着部の面積を算出した。
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図 14
A. CT前額断。最遠位の接線からPT付着部最遠位マーキング(a)までの距離。
B. CT水平断。最後方の接線からPT付着部最後方マーキング(b)までの距離。
C. CT前額断。最遠位の接線からLCL付着部最遠位マーキング(c)までの距離。
D. CT水平断。最後方の接線からLCL付着部最後方マーキング(d)までの距
離。
PT、LCLの付着部のマーキングは3D-CTをもとに同定した。
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図 15
3D-CTにインプラントを設置した側面像。LCL付着部(赤色部)、PT大腿側付 着部(黄色部)とインプラントは重複していない。黒矢印はインプラントから PT大腿側付着部までの最短距離。
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図 16
ImageJ softwareを用いて面積を算出した。基準となる距離を測定しておき、PT
およびLCL付着部の周囲をマークすると面積が計算される。
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図 17
骨切りラインがPTおよびLCL付着部を通過しない場合、インプラントからそ れぞれの付着部までの最短距離。
この場合は、PT大腿側付着部までの最短距離は4.55mmであり、LCL大腿側 付着部までの最短距離は、7.43mmである。
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図 18
外反角を大きくすると(図では外反9°の黄色線)大腿骨外側顆の骨切り量は大 きくなり、外反角を小さくすると(図では外反3°の黄色線)大腿骨外側顆の骨 切り量は小さくなる。
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表1
PTおよびLCL大腿側付着部の面積、膝関節面最遠位からのPTおよびLCL大 腿側付着部までの距離、関節面最後方点からPTおよびLCL大腿側付着部まで の距離、骨切りラインが大腿側付着部を通過する膝数。
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表 2
骨切りラインが大腿側付着部を通過しない場合の骨切りラインと大腿側付着 部までの最短距離。それぞれの最短距離をJOURNEY Ⅱ BCS群とPersona PS 群でMan-Whitney’s U testを用いて比較した。実験群間の統計的有意性は、
p<0.05を有意とした。インプラントからPTまでの最短距離に有意差は認めな かった。インプラントからLCLまでの最短距離は有意にPersona PS群が短い
(*P=0.04)。
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