• 検索結果がありません。

斜角探傷用アレイ探触子を用いた金属内部 の欠陥の再構成

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "斜角探傷用アレイ探触子を用いた金属内部 の欠陥の再構成"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

全波形サンプリング処理 (FSAP) 方式による固体中の欠陥形状の再構成

愛媛大学大学院 学生員 ○川村 郡 愛媛大学大学院 正 員  中畑和之

1.

はじめに

アレイ探触子を用いた超音波探傷法が,非破壊検 査で導入されつつある.著者らはこれまで,アレイ探 触子を用いた内部欠陥のイメージング方法として全 波形サンプリング処理(FSAP)方式による画像化を 提案している1).FSAP方式は,一般的な電子スキャ ン装置に搭載されているような遅延回路を必要とせ ず,コンピュータ上できずエコーを重ね合わせる.過 去の研究では,アレイ探触子を被検体に直接設置し た場合の欠陥再構成を提案し,その有用性を検証し てきた.ここでは,実際の現場への適用を見据えて,

斜角探傷用のアレイ探触子を用いた場合の金属中の 欠陥と,低周波探触子を用いた場合のコンクリート 等の非均質材料中の欠陥についてFSAP方式による 再構成を試みる.計測されたきずエコー(原波形)を そのまま画像化に用いるのではなく,散乱振幅2)を 原波形から抽出し,これを再構成に用いる.散乱振 幅は空洞欠陥の場合,矩形状波形となるため3),低 周波数域の探触子や帯域が狭い探触子を用いた場合 でも,比較的高い分解能で欠陥像を再構成できる.

2. FSAP

方式による映像化原理

一般的な電子スキャン装置のように遅延回路によっ てビームを制御するのではなく,FSAP方式ではコン ピュータのメモリ上の演算でビームを合成する.総素 子数が4個のリニアアレイ探触子の場合のFSAP方 式による超音波の送受信を図–1に示す.素子番号1 で送信した超音波は欠陥で散乱し,きずエコーは1か ら4番の素子で受信される.このとき,4つのエコー

V11(t),V12(t),V13(t),V14(t))が波形記憶マトリク スに保存される.次に送信素子を変えて,同様に各々 の素子で受信していくと,波形記憶マトリクスの要 素が全て埋まることになる.アレイ探触子の素子の 総数がN 個ならば,組み合わせはN2パターン存在 する.波形記憶マトリクスから必要な波形パターン を選択し,これにコンピュータメモリ上でディレイを 設定して,映像化したい領域の1画素にビームが集 束するように波形を合成する.その画素とアレイの 中心までの路程から計算された到達時間に相当する 集束ビームの振幅値Fkをプロットすることで,欠陥 像の再構成を行う.

FSAP方式の特徴として,原波形を保存している

Ἴᙧグ᠈

䝬䝖䝸䜽䝇 (Vij)

V11 V12 V13 V14

V21 V22 V23 V24 V31 V32 V33 V34 V41 V42 V43 V44

1 2 3 4 1 2 3 4

1 2 3 4

㏦ಙ⣲Ꮚ No.

ཷಙ⣲Ꮚ No.

図– 1 FSAP方式によるきずエコーの記録

ために後処理で任意の波形処理・合成が実行できるの が特徴である.ここでは,きずエコーから抽出した 散乱振幅を欠陥の画像化に利用する.空洞欠陥から の散乱の場合,散乱振幅は理論的には負方向の矩形 状の波形3)となる.また,き裂状欠陥の場合は負と 正方向のパルス状の波形となるため,これを用いれ ば高分解能な画像化が期待できる.本論文では,各 被検体の参照波を用いてきずエコーから散乱振幅を 抽出している.

3.

斜角探傷用アレイ探触子を用いた金属内部 の欠陥の再構成

斜角探傷用のアレイ探触子は,くさびと呼ばれる 三角形のポリスチレンの上にアレイ探触子を設置し たものである.くさび中を縦波が伝搬し,くさび–金 属界面でモード変換した固体内横波を用いて欠陥の 再構成を行う.実験で用いたくさび中の縦波音速は 2323m/s,密度は1.00×103kg/m3であり,くさびの 傾きは22である.アレイ探触子として,公称中心周 波数3MHz,総素子数64のものを使用した.アレイ 探触子の素子幅は0.7mm,素子中心間距離は0.8mm である.人工欠陥として,アルミニウム被検体(横波 音速=3131m/s,密度2.70×103kg/m3)の裏面に作成 したスリットを再構成対象とした.アルミニウム被検 体の厚さは40mmであり,くさびの中心とスリットの 水平距離は22mm程度である.画素サイズは0.05mm で,スリットを中心とした10mm×10mmの範囲を再 構成した.ここでは,くさびと同じ材質の直方体底 面からの反射エコーを参照波として用いている.

スリット高さが2mmの場合の再構成結果を図–2に 示す.左図は原波形による再構成図であり,波形が尾 引いているためにスリット先端の正確な位置を識別

キーワード:非破壊検査,超音波,アレイ探触子,欠陥再構成,FSAP方式

790-8577 愛媛県松山市文京町3,E-mail: nakahata.kazuyuki@ehime-u.ac.jp 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑1245‑

Ⅰ‑623

(2)

䝇䝸䝑䝖 䠄㧗䛥㻞㼙㼙㻕

40mm 2mm

0.2mm 䛟䛥䜃 22mm

䜰䝺䜲᥈ゐᏊ

0.6 0.3

-0.3

-0.6 0

ཎἼᙧ ᩓ஘᣺ᖜ

䝇䝸䝑䝖

⿕᳨యᗏ㠃

10mm

10mm

F

k

2mm

図– 2 裏面スリットの再構成結果

することが難しい.一方,右図のように散乱振幅を 用いるとスリット端部の識別が可能となり,スリット 高さも2mmと読み取れる.スリットのようなき裂の 場合,散乱振幅は負方向のパルスの次に正方向のパ ルスが微小時間遅れた波形となるため3),先端部は 負の値(白)と正の値(黒)が強く現れているのが特徴 である.散乱振幅を用いる場合,スリットの高さが小 さくてもスリット端部とコーナ部を分離できており,

高精度なサイジングが可能であることがわかる.

4.

低周波探触子を用いた非均質材料内部の欠 陥の再構成

ここでは低周波探触子による縦波を用いて,非均 質材料内部の空洞欠陥の再構成を行う.被検体とし て,セメントペースト (縦波音速=3584m/s,密度 1.97×103kg/m3)とモルタル(縦波音速=4122m/s,密 度2.17×103kg/m3)の被検体を2つ作成した.作成し たセメントペーストとモルタル中の空洞欠陥の直径は それぞれ10.8mmと10.6mmである.画素サイズは 0.1mmで,空洞を中心とした80mm×80mmの範囲 を再構成の対象とした.ここでは,アレイ素子を模擬 した低周波探触子(振動子のサイズ5.1mm×40.1mm) を2つ用いて,手動でその位置を切り替えることで,

全波形パターンを計測した(素子ピッチは10mmに相 当).使用した探触子の中心周波数は0.4MHzである.

合計8×8=64の波形パターンを計測した.欠陥が無 い位置で被検体の底面エコーを参照波として用いて いる.なお,事前の検討で,今回使用した周波数帯域 において両被検体中で波動分散は見られず,位相速 度は一定であることを確かめている.

図–3にセメント中の空洞欠陥,図–4にモルタル中 の空洞空洞の再構成図を示す.両図とも,原波形を用

-1.0 -0.5 0 0.5 1.0

10.8mm

⣲Ꮚ䝢䝑䝏10mm

ᩓ஘᣺ᖜ ప࿘Ἴ᥈ゐᏊ

80mm

80mm

Fk

ཎἼᙧ

⿕᳨యᗏ㠃

䚷䚷䚷✵Ὕ 䠄┤ᚄ10.8mm䠅

66.85mm 100.73mm

図– 3 セメントペースト中の円形空洞の再構成結果

80mm

80mm

䚷䚷䚷✵Ὕ 䠄┤ᚄ10.6mm䠅

10.6mm

65.4mm 102.15mm

-1.0 -0.5 0 0.5 1.0

ᩓ஘᣺ᖜ

Fk

ཎἼᙧ

⿕᳨యᗏ㠃

ప࿘Ἴ᥈ゐᏊ

⣲Ꮚ䝢䝑䝏10mm

図– 4 モルタル中の円形空洞の再構成結果

いた場合には正確な空洞の位置が再現できていない.

一方,散乱振幅を利用すれば,空洞の境界部を精度 よく評価できる.

参考文献

1) 中畑和之,平田正憲,廣瀬壮一:全波形サンプリング 処理方式を利用した散乱振幅からの欠陥再構成,非破 壊検査,Vol.59, No.6, pp.277–283, 2010.

2) 高堂谷正樹,野竹正義,北原道弘: 定量的非破壊評価へ のニューラルネットワークの適用,非破壊検査, Vol.42, No.5, pp.230–236, 1993.

3) Schmerr, L.W.: Fundamentals of Ultrasonic Nonde- structive Evaluation, Plenum Press, New York, 1998.

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑1246‑

Ⅰ‑623

参照

関連したドキュメント

電子制御の要領は、まず 32 素子を同時励振し集束させ、リニ アスキャン(同時の励振可能な 32 素子でパルス発生後に、同時 駆動素子群を1素子、Y方向へずらしパルスを発生させる。これ

近年,超音波探傷 (UT) の 1 つの方法として,長尺 材料に対してガイド波 1) の適用が精力的に試みられ

レール探傷車が出力する傷のうち,シェリング傷に関係する傷には表層部水平裂,頭部水平裂および頭部 横裂がある.これらの傷は,探傷車に搭載された 3

処置不要と判定されたBスコープ画像について、軌道構造、線形、天候、探触子等に着目し、類似画像を抽出

1.はじめに 東京地下鉄では、195.1 ㎞の営業路線中、約 85%がトンネル区間を占めており、レールに発生する損傷の

探触子の形状とレール頭部の接触状況(図-3)に着目 し、探触子を FC 側へ拡幅する案を検討した。拡幅すること で GC 側の探傷範囲を保持しつつ

開発したシステムの概念を図1に示す.図1 のとおり,魚群探知機により測深された水深情 報は GPS の位置情報とともに“μCube”と呼ば れる装置を介して Web

 板型欠陥埋設供試体では距離 240〜400mm では欠陥部の振幅 値よりも小さくなった。これは前述のとおり、表面縦弾性波 と欠陥で反射する縦弾性波が干渉したものであると考えられ る。しかし、