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https://dspace.jaist.ac.jp/

Title COVID‑19に関する米中の国際共同研究についての分析

Author(s) 松本, 久仁子

Citation 年次学術大会講演要旨集, 35: 447‑451

Issue Date 2020‑10‑31 Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/17275

Rights

本著作物は研究・イノベーション学会の許可のもとに 掲載するものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Research Policy and Innovation Management.

Description 一般講演要旨

(2)

2C03

COVID-19 に関する米中の国際共同研究についての分析

○松本久仁子(文科省・NISTEP)

1.はじめに 1.1.背景

新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の発生による世界的危機に直面する中、国際協調の 必要性が増している。世界保健機関(WHO)では国際協力体制の構築推進への取組が進められており [1]、G20 においても国際的協力の必要性の声明が出されている[2]。学術界でも同様に国際的協力の必 要性の声明が出されている[3],[4]。他方で、米中対立の加速を背景に国連安全保障理事会の決議案採択 の長期化、G7 開催延期など、主要国間で足並みが揃っていない面も伺える。国家間の政治的対立が生 じている中で、科学技術活動の国際協力状況がどうなっているのか明らかにしていくことは、今後の科 学技術政策を考える上で重要な分析の視点の1つとなる。

1.2.先行研究の状況

COVID-19の研究状況を把握するため、既に書誌分析が国内外の研究者によって進められており、国

際共著状況についての分析も行われている[5],[6],[7]。これらの先行研究では、中国と米国による国際共 著の文献数が他国間の国際共著文献数と比較して多いことが確認されており、国際共著量の大きさから、

米中の国際共著関係の強さが指摘されている。

計量書誌学の分野において、国際共著状況について把握するには、国際共著文献数のような共著量を 示す絶対的指標だけでは不十分であり、共著国の研究規模を考慮した相対的指標を用いることが必要と の指摘がある[8]。例えば、絶対的指標の1つである国際共著文献数は、文献数の多い国ほど大きくなり やすく、各国の文献数の規模の影響を受けてしまう。そこで、国際共著の強さをより厳密に測るには、

各国の文献数の規模を考慮した上での相対的な国際共著の強度を測る指標を併用する必要がある。

1.3.目的

本研究では、国際共著に関する複数の指標を用いて、2020年4月末までのCOVID-19文献における 米中の国際共著状況に関する分析を通じ、昨今の米中対立が加速する中での、両国間の国際共同研究状 況をみていく。

2.分析データ・分析手法 2.1.分析データ

COVID-19文献を特定するにあたり、2つの文献データを用いた。1つはWHOから公開されている

COVID-19の文献データ(以下、WHO文献データ)であり、2020年4月26日時点までに公開された

9,664件の文献から構成されている。もう1つはElsevier社から提供されている論文データベースであ

るScopusからElsevier社のCOVID-19文献の検索条件1に基づき抽出した文献データ(以下、Scopus 文献データ)で、2020年4月28日時点に取得した6,273件の文献2から構成されている。

本分析の対象とするCOVID-19文献は、WHO文献データの中からScopus文献データに収録されて いる文献を抽出後、WHO文献データに含まれていないCOVID-19のScopus文献データの文献を補充 することにより特定した。なお、補充する文献は、Scopus文献データのうち、COVID-19, 2019-nCoV の単語がタイトル、抄録、キーワードのいずれかで確認された文献とした。

分析対象となる2020年4月28日時点におけるCOVID-19文献は4,753件となる。WHO文献デー タ由来の文献数は3,707件、Scopus文献データから補充した文献数は1,046件である。

1 次の単語がタイトル・抄録・キーワードのいずれかに含まれる文献

COVID-19/Coronavirus/Coronavirus/Coronaviruses/2019-nCoV/SARS-CoV/MERS-CoV/Severe Acute Respiratory Syndrome/Middle East Respiratory Syndrome

2 著者データ、タイトル、出版年、出版物、所属機関のデータに不備のある文献は除いている。

2C03

(3)

2.2.分析手法

本分析では、共著量を示す絶対的指標と国・地域の論文数規模を考慮した相対的指標を併用すること により、米中間の国際共著状況の把握を試みる。

まず、国際共著文献数割合を用いて、COVID-19文献全体の国際共著状況の中での米国と中国の国際 共著状況を把握していく。

次に、米中間の国際共著状況と米中の他国・地域との共著状況の比較分析を通じて、両国間の国際共 著状況の強さをみていく。具体的には、国・地域別国際共著文献数を用いて、米国と中国の主要な国際 共著相手国・地域を特定する。そして、COVID-19文献の国際共著関係の強い国・地域ペアを特定する

ため、COVID-19文献の国際共著文献数に占める国際共著文献数シェア(絶対的指標)及びペア国の論

文規模を考慮した指標Salton’s measure[9],[10]3(相対的指標)を用いた分析を行なう。

3. COVID-19文献の産出状況

COVID-19文献は2019年以前に300件程度出版されており、2020年以降は、第9週目から第13週 目にかけて、約200件から約800件と大きく増加している(図1参照)。2020年第16週目(4月末)

時点において、COVID-19文献を産出している国・地域数は117になり、239の全ての国・地域の49.0%

と、半数近くにのぼっている(図2参照)。COVID-19文献数の多い国・地域をみると(図3参照)、中 国が最も多く、25.5%のシェアを占めている。続いて、米国が15.7%、イタリアが7.1%、英国が6.5%

となっており、これら上位4つの国・地域で半数以上のシェアを占めている。

図1. COVID-19文献の発行時期別文献数の状況 図2. 国・地域別のCOVID-19文献数(上位20)

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900

2019年以前 2020年第1週目 2週目 3週目 4週目 5週目 6週目 7週目 8週目 9週目 10週目 11週目 12週目 13週目 14週目 15週目 16週目以降

COVID-19文献数

25.5%

15.7%

7.1%6.5%

0.9%

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

中国 米国 英国 ラン ラン ナダ 香港 ドイ オーラリ 大韓民国 台湾 ラジ 日本 オラン ーデン

COVID-19文献数

図3. COVID-19文献数別の国・地域の地理的分布状況:2020年第16週目(4月末)時点

全エリア 7 31

50 29

122 アジア

3 9

8 4

9

中東 3

10 1

3

EU 3

10 9

6

欧州

(EU除)

1 2 3 14

北米 1

1 1

2 中南米

3 8

31 6

大洋州 2

27

アフリカ 2 12

36 9

【エリア別の国・地域数】

3 対象となる2国・地域の国際共著文献数を各国の文献数の積数の平方根で除して算定される指標。

(4)

4. COVID-19文献の国際共著状況 4.1.世界の国際共著状況

COVID-19文献の国際共著状況をみると(図4(a)参照)、26.9%の文献が国際共著している。COVID-19 文献を数多く産出している主要な国・地域の国際共著状況をみると(図 4(b)参照)、中国は 26.7%、米

国は47.9%、イタリアは46.6%、英国は51.8%の文献が国際共著しており、特に中国の国際共著率が低

いことがわかる。

図4. COVID-19文献の国際共著状況

(a) 全文献 (b) 主要な国・地域(文献数上位20)

単国・地域, 73.1%

2か国・地域, 18.8%

3か国・地域以上, 8.1%

国際共著状況

26.7%

47.9%

46.6%

51.8%

50.7%

0 400 800 1200 1600

中国 米国 英国 ラン ナダ 香港 オーラリ ラン 大韓民国 ラジ 台湾 オラン 日本 ーデン

COVID-19文献数

国際共著 単国・地域

4.2.米中の国際共著状況

米中の主要な国際共著相手国・地域をみると(図表5)、米国の場合は中国、英国、イタリアが、中国 の場合は米国、香港、英国が挙げられる。米中両国ともに双方との国際共著文献数が最多となっている。

また、COVID-19 文献の国際共著文献に占める米中の国際共著文献の割合は 13.4%となっており(図

6(a)参照)、米国・中国は最も国際共著文献数の多い国・地域ペアとなっている。このことから、米中間 の国際共著量は他国・地域間と比較して多いことが伺える。ただし、米国と中国のCOVID-19文献の産 出量は、他国・地域と比較して多く、両国・地域で約40%を占めるほどであることから、論文数規模が 大きいために国際共著文献数が多くなっている可能性がある。

国・地域の論文数規模を考慮した国際共著度(Salton’s measure)をみると(図 5(b)参照)、米中の 国際共著度は0.129となっており、他の国・地域間の国際共著度と比較して、上位5の値となっている。

国際共著度の最も高い国・地域ペアは英国・オーストラリアで0.149である。続いて、米国・オースト

ラリアで0.138、中国・香港および米国・英国で0.133となっている。このことから、米国ではオース

トラリアや英国の方が中国よりも、中国では香港の方が米国よりも国際共著を強くしていることが伺え る。

図5. 米中のCOVID-19文献の国際共著相手国・地域の状況(上位16)

(a) 米国 (b) 中国

31.3%

18.6% 18.2%

3.8%

0 30 60 90 120 150 180

中国 英国 オーラリ ナダ ドイ ラン 香港 ラジ オラン 日本

COVID-19国際共著文献数

41.3%

16.6%

12.6%

3.4%

0 30 60 90 120 150 180

米国 香港 英国 オーラリ ナダ ラン 日本 ドイ オラン 台湾

COVID-19国際共著文献数

(5)

図6. COVID-19文献の国際共著関係の強い国・地域ペア(シェア上位10)

(a) 国際共著文献数シェア (b) 国際共著度(Salton’s measure)

0.0%

4.0%

8.0%

12.0%

16.0%

米国-中国 米国-英国 米国-タリ 中国-香港 英国-タリ 米国-ストラ 米国-カナ 英国-中国 英国-ストラ 英国-カナ

0.00 0.04 0.08 0.12 0.16 0.20

英国-ストラ 米国-ストラ 中国-香港 米国-英国 米国-中国 米国-タリ 英国-タリ 英国-カナ 米国-カナ 英国-中国

5.おわりに

本研究では、昨今の米中対立が加速する中での両国間の国際共同研究状況をみるため、2020 年4 月 末までに公開されたCOVID-19文献を対象に、共著量を示す国際共著文献数および当該シェア(絶対的 指標)と国・地域の論文数規模を考慮した国際共著度(相対的指標)を併用することにより、米中間の 国際共著状況の把握を試みた。

その結果、米中両国ともに双方との国際共著文献数が他国・地域と比較して最多となっており、また、

米中は最も国際共著文献数の多い国・地域のペアとなっていることから、先行研究と同様に、米中間の 国際共著量は他国・地域間と比較して多いことが伺えた。一方で、両国の論文数規模を考慮した国際共

著度(Salton’s measure)をみると、米中間の国際共著度は他の国・地域間の国際共著度と比較して、

必ずしも高くないことが示された。また、米国ではオーストラリアや英国の方が中国よりも、中国では 香港の方が米国よりも国際共著を強くしていることが伺えた。以上の結果から、米中間の COVID-19 文献の国際共著量の多さは両国・地域のCOVID-19文献の産出量の大きさに起因する面があることが示 唆される。

本分析では、2020年4月末までに公開されたCOVID-19文献を対象に、米中の国際共著状況につい て見てきたが、今後、COVID-19 の発生以降の米中間の国際共著関係をより詳細に把握していくには、

COVID-19発生以前の国際共著状況との比較等、さらに深堀した分析が必要である。

(6)

参考文献

[1] 「Commitment and call to action: Global collaboration to accelerate new COVID-19 health technologies」(WHO)

https://www.who.int/news-room/detail/24-04-2020-commitment-and-call-to-action-global-colla boration-to-accelerate-new-covid-19-health-technologies (2020年9月アクセス)

[2] 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するG20首脳テレビ会議首脳声明(3月26日開 催)」(外務省)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page6_000383.html (2020年9月アクセス)

[3] 「新型コロナウイルス感染症の世界的流行に係る国際協力の緊急的必要性について G サイエン ス学術会議共同声明」(Gサイエンス学術会議2020)

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-gs2020-1j.pdf (2020年9月アクセス)

[4] Holmes, E. A. et al. (2020). Multidisciplinary research priorities for the COVID-19 pandemic:

a call for action for mental health science. The Lancet Psychiatry.

[5] Dehghanbanadaki, H., Seif, F., Vahidi, Y., Razi, F., Hashemi, E., Khoshmirsafa, M., & Aazami, H. (2020). Bibliometric analysis of global scientific research on Coronavirus (COVID-19).

Medical Journal of The Islamic Republic of Iran (MJIRI), 34(1), 354-362.

[6] Zhang, L., Zhao, W., Sun, B., Huang, Y., & Glänzel, W. (2020). How scientific research reacts to international public health emergencies: a global analysis of response patterns.

Scientometrics, 1.

[7] 松本久仁子, 伊神正貫. (2020). COVID-19研究に関する国際共著状況:2020年4月末時点のデー タを用いた分析, Discussion Paper No.185, 科学技術・学術政策研究所

[8] Luukkonen, T., Tijssen, R., Persson, O., & Sivertsen, G. (1993). The measurement of international scientific collaboration. Scientometrics, 28(1), 15-36.

[9] Salton, G., & Bergmark, D. (1979). A citation study of computer science literature. IEEE Transactions on Professional Communication, (3), 146-158.

[10] Glänzel, W. (2000). Science in Scandinavia: A bibliometric approach. Scientometrics, 48(2), 121-150.

参照

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︽参考文献︾ ①  Ellis ,  S tephen  2 0 0 9 .  W est  A

︵ 龍谷大学国文学論叢・三十号・一九八六年八月︶に 詳しい︒ このように ﹁菊=星﹂とする見立ては ︑本朝漢詩文 において︑

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