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公訴時効の起算点

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(1)

公訴時効の起算点ー熊本水俣病刑事事件上告審決定ー(虫明)

9 9 9 ,

 

r

,

9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 ,

判 例 批 評

r, ' , , , ,' , 

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L

r,

9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 , '  

公 訴 時 効 の 起 算 点

ー熊本水俣病刑事事件上告審決定—

最古同裁昭相ぃハ:•一年:月q五九[第:·_小法廷決定(昭和五七年囚―五几五号業務じ過失致死、

︵判

例時

. . .  

六六口勺:・白︑判例タイムズ六六二巧五九貞︶

︹事

実の

概要

︺ 本件は︑日本窒素肥料株式会社︵後にチッソ株式会社に商号 変更︶の代表取締役社長であった

X

および同社水俣工場の

L場

長であった

Y

の両名が︑同工場の排水を魚介類を汚染するおそ れのある海域に排出しない措置を講ずべき業務上の注意義務が

七 九

同傷専被告事件︶

あるのに︑これを怠り︑なんら適切な措置を講ずることなく︑

昭和三﹃一年九月初め以降昭和三五年八月ごろ(‑︑二審認定で

は六月末ごろ︶までの間連日︑同工場のアセトアルデヒド製造 工程において副生した塩化メチル水銀を含有する排水を水俣川 河口海域に排出させた過失の競合により︑同海域の魚介類を右

8 ‑ 2 ‑257 (香法'88)

(2)

J

につ

き︑

第審

塩化メチル水銀によって汚染させ︑よって同海域で漁獲された 魚介類を摂食したA.B•D.E.Fの五名をして水俣病に、

その母親が妊娠中に同魚介頷を摂食した

C.G

の.一名をして胎 児性水俣病に︑それぞれ罹病させて傷害を負わせ︑うち

Cを除

<六名をして同病に基因する疾病により死亡させたとして︑昭 れたものである︒なお︑各被害者の発病と死亡時期の関係︵発

報^

.巻

1

.1

六八

貞︶

は ︑

EおよびG

に対する業務

t

過失致 死罪の成立を認め︑被告人両名をそれぞれ禁錮一生年執行猶予1

( 熊 本 地 判 昭 和 五 四 年 二

. 月

1

一 日 刑 裁

  F E D C  B  A  3

. 

5  3

4  3

4  3

. . . . 

4  34  34  34 

1() 

,  ,  ,  , 

. . . . 

. . 

発 28  15  27  ljl  12  11  6 

~

胎 胎 店

性 性

~

48  34  46  34  34  34 

. . . .  . . 

死 6 1

. . 

1  1

2  1

.  . . 

1  12  7  10  28  16  27  5  14  亡

51 

. 

起 5 

. 

4  訴

病順

は次表の通りである︒

和五一年五月四日︑業務上過失致死罪︑同傷害罪により起訴さ

年に処したのであるが︑

失致死傷罪については︑公訴時効の完成を認めて免訴とした︒

る業務上過失傷害罪は︑

いずれも適法な上告理由に

A.B.C.D.F

に対する業務上過 これに対しては︑弁護人から︑本件において

EおよびGに関す

G

に関する傷害の結果が発生した昭和 三五年八月二八日から三年の公訴時効期間の経過した昭和三八

年八月一一七日限りで公訴時効が完成しているのであるから︑そ

の後の同人等に関する業務上過失致死罪に対しては︑これにつ き免訴の判決をなすべきものとして控訴の申立がなされたが︑

検察官からの控訴はなされていない︒しかし︑第二審︵福岡高

判昭和五七年九月六日高集一一^五巻二号八五頁︶

一審の判断を認め︑控訴を棄却したのである︒

︹決

定要

旨︺

本決定は︑弁護人の

t

告趣

意を

は︑結論的に第 当たらないとし︑

t

告を棄却したのであるが︑公訴時効完成の 有無について︑次のような職権判断を示している︒

﹁公訴時効の起算点に関する刑訴法二五三条一項にいう﹃犯罪

行為﹄とは︑刑法各本条所定の結果をも含む趣旨と解するのが

相当であるから︑G

を被害者とする業務上過失致死罪の公訴時 効は︑廿該犯罪の終了時である同人死亡の時点から進行を開始 するのであって︑出生時に同人を被害者とする業務上過失傷害

八 〇

(3)

公訴時効の起算点ー熊本水俣病刑事事件上告審決定ー(虫明)

罪が成立したか否か︑

そし

て︑

その後同罪の公訴時効期間が経 過したか否かは︑前記業務上過失致死罪の公訴時効完成の有無 を判定するに当たっては︑格別の意義を有しないものというべ きである︒したがって︑同人死亡の時点から起算して公訴時効

る前記業務上過失致死罪につき︑

た原判断の結論は︑正当である︒﹂

その公訴時効の完成を否定し

﹁観念的競合の関係にある各罪の公訴時効完成の有無を判定

︵最高裁昭和四

0

年困第一三一八号同

四一年四月ニ︱日第一小法廷判決・刑集︱

‑ 0

巻四号︱︱七五頁参

が経過していない以上︑本件各業務上過失致死傷罪の全体につ

いて

︑ その公訴時効はいまだ完成していないものというべきで ある︒したがって︑原判決が

G及びE

を被害者とする各業務上 過失致死罪について公訴時効の完成を否定した点は︑その結論 において正当であり︑他方︑右二名以外の五名を被害者とする 各業務上過失致死傷罪について公訴時効の完成を肯定した点

は︑法令の解釈適用を誤ったものであるが︑

その部分について は︑第一審判決の理由中において公訴時効完成による免訴の判

断が示され︑同判決に対しては検察官による控訴の申立がなか 照 ︶ ︑

G

の死亡時から起算して業務上過失致死罪の公訴時効期間

するのが相当であるから するに当たっては︑

その全部を一体として観察すべきものと解

期間が満了する前の昭和五一年五月四日に公訴が提起されてい

傷後期間を経て死亡した場合における業務上過失致死罪の公訴 ⁝⁝︑結局︑原判決の右誤りは︑判決に影饗を及ぼさない︒﹂ は攻防の対象からはずされていたものとみることができるから ったものであって︑右部分は︑原審当時既に当事者間において

熊本水俣病事件での争点は多岐にわたり︑本決定でも︑

公訴提起の遅延と迅速な裁判の保障との関係︑および︑胎児に 病変を発生させ出生後死亡させた場合︵胎児性致死︶における 業務上過失致死罪の成否についても︑重要な判断が下されてい るが︑ここでは︑公訴時効に関する判示のみをとりあげる︒そ して︑この公訴時効の問題について︑本決定は三つの点で注目 すべき判断を示している︒すなわち︑第一に︑公訴時効の起算 点に関する刑訴法二五三条一項にいう﹁犯罪行為﹂の意義につ き︑結果をも含む趣旨と解した点であり︑第二に︑被害者が受 時効は︑被害者の死亡の時点から進行を開始すると解した点で

あり︑第三に︑結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷 罪が観念的競合の関係にある場合の公訴時効については︑その 全部を一体として観察すべきものであり︑最後の結果発生時か ら起算して公訴時効期間が経過していない以上︑各業務上過失

致死傷罪の全体について︑その公訴時効はいまだ完成していな ︹

評 釈

8 ‑2 ‑259 (香法'88)

(4)

七条四項にいう行為

( H

a n

d l

u n

g )

一 九

とは可罰的行為

( s t r

a f b a

r e

これは不合理であるとされ︑旧刑法六 いとした点である︒以下では︑これら三点につき順次検討する︒

公訴時効の起算点に関する刑訴法二五三条一項は︑﹁時効

は︑犯罪行為が終った時から進行する﹂と規定する︒そしてこ

こでは︑﹁犯罪行為が終った時﹂とはいかなる時点をいうのか︑

(l ) 

すなわち︑特に結果犯について︑それは行為の終了時点をいう

︵行為時説︶︑結果の発生時点をいうのか

この問題については︑

ドイツでも古くから議論のあるところ

であり︑立法的変遷もみられる︒すなわち︑

︵結

果発

生時

説︶

旧刑法六七条四項は︑﹁時効は︑結果の発生した時点には関係な

く︑行為の行われた日から進行する﹂と規定しており︑

明らかに行為時説がとられていたといってよい︒そしてこれに

よると︑例えば過失犯のように未遂犯処罰規定のない犯罪の場 合には︑行為が可罰的となる前に時効が完成することもありう

(2 ) 

ることとなる︒しかし︑

Ha

nd

lu

ng

)を意味し︑その行為の中には結果も含まれると解す

(3 ) 

る結果発生時説が次第に有力となったのである︒そこで︑

七五年に施行された現行法では︑その七八条a

で︑

﹁時

効は

︑行

為が終了すると同時に進行する︒構成要件に属する結果が後に

J

︱九七四年までの が問題となる︒ の

なってはじめて発生したときは︑時効はこの時点から進行する﹂

つまり︑ここでは︑行為の終了

( B

e e

n d

i g

u n

g   d

e r

  T a

t )

時点と結果の発生時点の両者が考慮さ

れているのである︒ところが︑行為

( T

a t

)

の概念の中には結果

( E r f

o l g )

も含まれると一般に考えられているため︑行為の終了

( B

e e

n d

i g

u n

g   d

e r

  T a

t )

後に構成要件的結果が発生することは 考えられず︑この規定の後段の文言は全く無意味であると批判

(4 ) 

されている︒もっとも︑このように︑公訴時効の起算点につい

ては

︑ ドイツの学説上は︑結果発生時説が通説となっていると

(5 ) 

いう点は疑いない︒

方︑我国の公訴時効の起算点に関する規定にも変遷がみら れる︒すなわち︑明治一五年施行の治罪法(‑三条︶及び明治

一三年施行の旧旧刑訴法

( ‑ 0

条︶が︑﹁犯罪ノ日ヨリ﹂と規定

していたのに対し︑大正一三年施行の旧刑訴法︵二八四条一項︶

は︑﹁犯罪行為ノ終リタル時﹂と規定し︑現行刑訴法の﹁犯罪行

為が終った時﹂というのはそれを踏襲したものである︒そして

これは︑立案者が結果発生時説を封じ︑行為時説を定着させよ

(6 ) 

うと意図したことにもとづくものといわれている︒しかし︑そ れにもかかわらず︑我国の学説上は結果発生時説が圧倒的通説

(7 )

8

) 

となっており︑それは上述のドイツの議論の影響と思われる︒

ところで︑公訴時効の起算点の問題も︑ と規定されることとなった︒

その本質に関する議

(5)

公訴時効の起算点ー熊本水俣病刑事事件上告審決定一— (虫明)

題と公訴時効完成時の法的効果の問題という︑二つの異なった そその存在理由であるとするのであるが︑ここでも︑公訴時効 については︑実体法説︑訴訟法説︑競合説︑新訴訟法説に分か 論と関連させて考えるべきであろう︒そして︑公訴時効の本質

(9 ) 

れるところである︒すなわち︑実体法説は︑公訴時効の存在理

由として︑犯罪の社会的影響の微弱化による刑罰権の消滅とい

う実体法的理由をあげるものである︒もっとも︑ここでは︑公

訴時効制度は証拠の散逸による立証の困難あるいは誤判の危険

の防止という訴訟法的配慮も加えられたものとも若えられてお

( 1 0 )  

り︑公訴時効の完成は消極的訴訟条件であるともいわれている︒

1 t ,

l ) 

それに対して︑訴訟法説は︑証拠の散逸という採証上の拘束こ

の完成したときは実体法的な刑罰権も消滅すると考えられてい

( 1 2 ) ( 1 3 )  

るようである︒また︑競合説は︑公訴時効の本質につき︑可罰

性の減少と証拠の散逸によって訴訟を追行することが不当とな

るとし︑実体法説と訴訟法説の両者の観点を持ち出すものであ

( 1 4 )  

る︒さらに︑新訴訟法説は︑以上の学説がいずれも国家の側に

立った見解であるとし︑公訴時効をむしろ被告人の利益のため

の制度ととらえようとするものであり︑これによると︑公訴時

効はいわば訴追権行使に対する制約の制度と考えられることと なるのである︒このように︑公訴時効の本質に関する学説は多 岐に分かれるが︑ここには主として︑公訴時効の存在理由の問

/ ¥  

問題が存在するように思われる︒すなわち︑前者は︑時の経過

によって犯罪の社会的影饗が微弱化し︑あるいは刑罰目的が失

われるため︑処罰の必要性がなくなるという実体法的観点を重

視するか︑証拠の散逸とそれによる誤判の危険の防止という訴

訟法的観点を菫視するかという問題であり︑後者は︑実体法的

な刑罰権の消滅を認めるか︑単に訴訟法的な訴訟障害にすぎな

いかという問題である︒そこで考えてみると︑長期に及ぶ時の

経過によって︑行為者に対する応報の要求が弱まり︑

対する威嚇の必要性も減少し︑行為者の人格及び環境の変化が

5)   ,1  

予想され︑今さら処罰しても刑罰目的の達成は困難となるとい

経過によって犯罪に関する証拠が散逸するのは当然といってよ

い︒ここから︑公訴時効の存在理由としては︑実体法的観点と

訴訟法的観点の両者を持ち出す必要があるといわなければなら

ない︒もっとも︑公訴時効の存在理由を上述の一二つの観点に限

定する必要もないのであって︑さらに︑国家の怠慢の防止とい

う観点や︑捜査機関の負担の軽減という観点も含まれていると

( 1 6 )  

いってもよいのではなかろうか︒なお︑現在有力に主張されて

いる新訴訟法説は︑公訴時効を被告人の利益のための制度とと

らえようとするものであり︑この点は基本的に支持しうるであ

ろう︒しかし︑公訴時効の本質の問題は︑ う

点は

さらにその奥にある 一般的に認められるであろう︒また︑長期に及ぶ時の

一般

人に

8 ‑2‑261 (香法'88)

(6)

し ︑

Aこオカ

でも

ない

ものは何かということではなかろうか︒新訴訟法説は︑

的効果について考えてみるならば︑上述のように︑公訴時効の

あるとすると︑ 一方︑公訴時効完成時の法

存在理由として実体法的観点と訴訟法的観点のいずれも必要で

その完成時の効果も︑刑罰権の消滅という実体 の問題を考えるとき︑結果は犯罪による社会的影響の重要な要

素の1

つであるから︑公訴時効の存在理由として社会的影孵の 微弱化という点を強調するなら︑その起算点については結果発

( 1 7 )  

生時説に傾くであろう︒それに対して︑行為自体に関する証拠 も時の経過によって散逸するのは出然であるから︑存在理由と して証拠の散逸という観点を強調するなら︑起算点の問題とし

( 1 8 )  

ては行為時説に傾くように思われる︒しかし︑いずれにしても︑

公訴時効完成の効果として︑刑罰権ないし公訴権の消滅を認め る限り︑刑罰権ないし公訴権の発生しないうちにその消滅を認

めるのは妥当でない︒

そして︑例えば︑過失犯のように未遂犯 処罰規定のない結果犯については︑結果が発生してはじめて刑

罰権・公訴権が発生するのであり︑行為時説によると︑

発生する前に公訴時効が完成してしまうという不都合の生ずる

さて︑以上のような公訴時効の本質を基礎としてその起算点

認めるのが妥当であろう︒ 法的効果と︑訴訟障害でもあるという訴訟法的効果のいずれも の説明が不十分なように思われる︒ この点

この時点

( 1 9 )  

おそれがある︒従って︑結局︑公訴時効の起算点に関しては︑

結果発生時説が公訴時効制度の趣旨に合致するといってよい︒

本件第一審は︑﹁公訴時効期間の起算点について考察するに︑

これを実行行為の終了時と解すると未遂犯を処罰する規定のな い場合の結果犯については︑結果が発生しないうちに公訴時効 が完成してしまつて︑公訴の提起ができない場合が生じること になり不合理な結果を招くことになる︒公訴時効制度の存在理

由については︑種々の根拠と理由が上げられるが︑

なものの1つは犯罪の社会的影饗が平静に帰し︑微弱になると いう点にあるのだから︑結果犯については︑犯罪による社会的

影嘴の重要な要素の︱つである結果の発生をまつて︑

から公訴時効期間が進行すると解するのが︑公訴時効制度の存 在理由に合致する﹂としており︑これはいわゆる実体法説から

の帰結をホしたものと思われる︒

﹁刑

訴法

とるべきことを明示しており︑ その中心的

また︑本決定でも最高裁は︑

五三条一項にいう﹃犯罪行為﹄とは︑刑法各本条所定

の結果をも含む趣旨と解するのが相当﹂とし︑結果発生時説を

この点に大きな意義が認められ

る︒そして︑最高裁はその理由を明らかにしていないが︑上述 の意味において︑結論的に支持できるものであることはいうま

八四

(7)

ーー按彩描如 ︵写岳︶

「サ}濾濾=土喋咄`妥社砦—'罪‘撼叫 f 姦詣蹂冬 s

(‑)拙画母S密如ざ

tt

0潔に堂如二,¥'fJ心旦潔臣c~芸竺ど

~0

(N) Kohlrausch‑Lange, Strafgesetzbuch mit Erlauterungen und Nebengesetzen, 43. Aufl .. 1961, S. 240; Frank, Das Strafgesetzbuch ftir das Deutsche Reich, 18. Aufl., 1931, S. 215 ; M.E. Mayer, Der allgemeine Tei! des deutschen Strafrechts, 1923, S. 523. 

(M) Lorenz, Die Verjahrung in der deutschen Strafgesetz・ gebung, 1955. S. 81; Mos!, Strafgesetzbuch, Leipziger Kommentar, 9. Aufl., 19711974, §67, S. 42; Binding, Handbuch des Strafrechts, Bd. 1, 1885, S. 823. (..,,.) Schonke‑Schroder (Stree), Strafgesetzbuch. Kommentar, 21. Aufl., 1982, S. 779; Jahnke. Strafgesetzbuch, Leipziger Kommentar, 10. Aufl., 39. Lieferung, 1985, S. 82; Je・ scheck, Lehrbuch des Strafrechts, Alig. Tei!, 3. Aufl., 1978, S. 728. 

(i.n) Schonke‑Schroder (Stree), a.a.O., S. 779 ; Jahnke, a.a.O., S. 83; Jescheck, a.a.O., S. 728; Maurach‑Gossel‑Zipf, Strafrecht, Alig. Teii, Teilband 2, 6. Aufl., 1984, S. 686; Rudolphi, Systematischer Kommentar zum Strafgesetz・ buch, Bd. I, Alig. Tei!, 2. Aufl .. 1977, S. 574. 

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くば

(8)

いても︑結果的加重犯の公訴時効の起算点について︑中には基

(4 ) 

本的結果の発生を基準とする見解もないではないが︑通説はむ

しろ︑加重的結果発生時を基準とするものである︒おもうに︑

結果的加重犯の場合︑加重的結果は構成要件的結果に他ならな 法の変遷に対応したものといってよい︒一方︑我国の学説におたのは妥当である︒

︶のような学説の変化は︑

ドイツにおける立

が ︑

Gを﹁被害者とする業務上過失致死罪の公訴時効は︑当該 であって︑公訴時効の起算点については︑

結果的加重犯の公訴時効の起算点については︑ドイツの学説

には変遷がある︒すなわち︑ドイツにおける旧刑法六七条四項

の下では︑前述のように︑文言上は公訴時効の起算点は結果の

発生と無関係とされていたのであるが︑ここにおける結果とは︑

結果的加重犯の加重的結果を意味し︑同条項は︑結果的加重犯

の場合に加重的結果の発生とは無関係に基本犯の行為︵結果を

(2 ) 

の日から時効が進行する旨定めたものと解されていた︒

含む

それに対して︑現行法の下では︑結果的加重犯についても︑加

重的結果は構成要件的結果に他ならないとされ︑加重的結果の

発生時点から公訴時効は進行するものと解するのが通説となっ

(3 ) 

ている︒そして︑ を基準とするかという共通の問題として扱ってよい︒ いずれの犯罪の結果 合となるような結果的加里犯ではない︒しかし︑つの構成要件の充足が認められ︑それらが法条競合となる場合

いず

れも

︑ 競合となるのであるが︑︶れは傷害罪と傷害致死罪とが法条競いのであって︑加重的結果が発生してはじめて結果的加重犯が

成立するのである︒すなわち︑そうしてはじめて結果的加菫犯

としての刑罰権・公訴権が発生するのである︒この場合も︑加

重的結果の発生によって公訴時効も進行すると考えなければ︑

加重的結果の発生する前に時効が完成し︑結局処罰できなくな

ってしまうという不都合も生じうる︒こうして︑結果的加重犯

の公訴時効の起算点は︑加重的結果発生時と考えるのが妥当で

ある

そし

て︑

この理は︑本件のような︑被告人の業務上の過

失行為により被害者が傷害を負った後で死亡した場合の業務上

過失致死罪の公訴時効の起算点についても妥当する︒すなわち︑

被害者が受傷後いかに長期間経過してから死亡したとしても︑

業務

t

過失致死罪としての刑罰権・公訴権は︑被害者が死亡し

てはじめて発生するのであって︑その公訴時効もその時点から

進行すると考えるべきである︒従って︑本決定において最高裁

犯罪の終了時である同人死亡の時点から進行を開始するL

とし

ところで︑本件第一審において弁護人は︑業務上過失傷害罪

の公訴時効が完成した後︑被害者が右傷害によって死亡したと

しても︑事件の同1性を失うものではないから︑本件はその時

点で公訴時効が完成していると︑モ張し︑第二審でも︑業務上過

八六

(9)

公訴時効の起算点ー熊本水俣病刑事事件上告審決定一 (虫明)

罰されることとなるが︑J

れはその犯罪についての可罰性がそ

る犯罪に含まれる他の犯罪に関する公訴時効の完成は︑成立す る 犯 罪 の 公 訴 時 効 完 成 の 有 無 に 影 響 を 及 ぼ さ な い と い っ て

(7 ) 

よい︒つまり︑本件のように︑業務上過失傷害罪の公訴時効完 成後に被害者が死亡すれば︑改めて業務上過失致死罪として処

八 七

罪であるということから来る帰結であり︑結局︑成立す

Jのように解すると︑業務上過失傷害罪の公訴時 いるのであり︑

これは上述のことから支持できるであろう︒ 足りるのであって︑

それに含まれる業務上過失傷害罪の公訴時

失傷害罪と業務上過失致死罪とは他罪でなく︑一個の罪であり︑

公訴権も一個しか発生しないとして︑前者につき時効が完成し て公訴権が消滅することにより︑後者についても公訴権は消滅 て成立する犯罪に含まれる他の犯罪に関ずる公訴時効り完成

が︑成立する犯罪の公訴時効完成の有無に影響を及ぽすかどう かという問題である︒しかし︑法条競合の場合︑数個の構成要

(6 ) 

件に該当するが︑二個の犯罪のみが成立するのである︒この場 合︑発生する刑罰権・公訴権は成立する犯罪に関するもののみ であって︑それに含まれる犯罪の刑罰権・公訴権が発生するわ けではない︒従って︑公訴時効についても︑成立する犯罪につ いてのみ考えれば足りる︒すなわち︑本件の場合︑業務上過失 致死罪が成立する限り︑公訴時効はそれについてのみ考えれば 効を考える必要はないのである︒そしてこれは︑法条競合が本

来的 している筈であると主張した︒そして︑これは︑法条競合とし

が再びむし返されるものではない︒この意味において︑業務上 過失傷害罪と業務上過失致死罪とは︑全く別の犯罪であるとい

(8 ) 

うことも可能であろう︒本件第一審も︑上述の弁護人の主張に

答えて︑﹁業務上過失致死罪と同傷害とは同↓の条文に規定ざれ

ているけれども︑構成要件を異にする﹂ということから︑﹁同一

客体に対して業務上過失傷害罪が成立した後︑これに対する公

訴時効が完成したとしても︑

それは業務上過失傷害罪について 罪についての公訴権までも失わせるものではない﹂とし︑第二

(9 ) 

審も︑同様の理由から弁護人の主張を排斥している︒また︑本 決定でも︑最高裁は︑業務上過失致死罪の公訴時効完成の有無 については︑業務上過失傷害罪の公訴時効期間が経過したか否 かは格別の意義は有しないとして︑原判決の結論を正当として

もっ

とも

︑ 効が完成した後で被害者が死亡した場合には︑当該犯罪の公訴 時効完成時点から被害者の死亡時点までは処罰しえないことと

ことによって︑ なる︒そして︑板倉教授は︑本件においてこの点を不合理とし︑﹁水俣病のような傷害の実態は︑まさに︑継続犯である﹂とする

( 1 0 )  

その不合理を解消しようとされている︒すなわ

の公訴権を消滅させる効果を生ずるに止まり︑業務上過失致死 の時点で初めて発生するからであり︑

いったん消滅した公訴権

8‑2 ‑265 (香法'88)

(10)

できなくなるのも当然である︒

( l

)  

その空白をこと

いわゆる胎児性致死の場合に︑業務上過失致死罪が成立するかどうかについては争いがあり︑それを認める点には疑問の

あるところであるが︑本稿ではその点を無視し︑業務上過失致死罪が成立するとする最高裁の立場を前提としてその公

訴時効の問題を考える︒

( 2

)  

Hi pp e!  • De ut sc he s  S t r a f r e c h t ,   Bd

.  2

, 

1930, 

S .  

5 6

↓  0

H.   Ma ye r,   St r a f r e c h t ,   A l i g . T e i ! ,  

1953, 

S .  

354; 

Mo s! ,  a . a . O . ,  

§ 

67, 

S.

 4

2.  

さら埋めようとするのも妥当でないように思われる︒ 白が生じているように見えるかもしれないが︑

これを事後的に見ると処罰の空

なりえず︑

業 務 上 過 失 傷 害 罪 の 公 訴 時 効 が 完 成 す れ ば そ れ に よ っ て も 処 罰

それによって処罰しえないのは当然であり︑

また

︑ 思 わ れ る

︒ 被 害 者 が 死 亡 す る ま で は 業 務 上 過 失 致 死 罪 は 問 題 と

か︒従って︑ 傷

害 罪 自 体 の 公 訴 時 効 は 進 行 せ ず

︑ 上 述 の よ う な 処 罰 の 空 白 の 生 ず る 余 地 は な く な る わ け で あ る

︒ し か し

︑ 継 続 犯 と は

︑ 一 定 の法益侵害の継続する間犯罪の継続が認められるものをいうの であるが︑業務上過失傷害罪の場合︑

生 が 確 定 し た 以 上

︑ 犯 罪 は す で に 終 了 し て い る の で は な か ろ う これを継続犯と解するには若干無理があるように

一定の傷害という結果発

︑ 継 続 犯 の 場 合

︑ 犯 罪 の 継 続 し て い る 間 は 公 訴 時 効 は 進 行 し な い と 考 え ら れ て い る の で

︑ そ の よ う に 解 す れ ば

︑ 業 務 上 過 失

( 3

)  

( 4

)  

( 5

)  

( 6

)  

( 7

)  

( 8

)  

( 9

)  

Sc ho nk

e  , S

ch ro de r  ( S t r e e ) ,   a . a . O . S . ,    

7 7

9 ;  

J~hnke,

a . a . O . ,   S .   87; 

Ru do lp hi ,  a . a . O . ,   S .  

57 3.  

小野清一郎・犯罪の時及び所︵大正︱二年︶七六頁︑座談会﹁熊本水俣病刑事判決をめぐって﹂ジュリスト六九0

号︵

昭和

五四年︶一八頁における三井︑真鍋発言︒

鈴木

茂嗣

.﹁

公訴

の時

効﹂

法学

セミ

ナー

一二

三八

号︵

昭和

五八

年︶

︱︱

二頁

︑坂

倉宏

.﹁

公訴

時効

の起

算点

﹂判

例タ

イム

ズ三

七︱

︱︱

号一︱一頁︑飯田・前掲論文一三一頁︑上本武司.﹁公訴時効.胎児性致死傷︵上︶﹂警察学論集三二巻七号︵昭和五四年︶六

七頁

拙稿.﹁法条競合と包括一罪(‑)﹂香川法学二巻一号︵昭和五七年︶.一︱頁︒

もちろん︑含まれている犯罪について︑免訴の確定判決があったときは別である︒

なお︑土本・前掲ジーリスト三九頁︑板倉宏.﹁水俣病刑事裁判最高裁決定﹂法学教室九四号︵昭和六三年︶七一ご頁参照︒

なお

︑第

↓審

判決

は︑

﹁被

害者

G︑Eに関する本件公訴事実は︑

業務上過失致死を訴因とするものであるけれども︑この訴因には右被害者両名に関する業務

t

過失傷害の訴因をも︑黙示的︑予備的に包含されている﹂とし︑右被害者両名に関する

業務上過失致死罪と観念的競合の関係にあるとして起訴された他の者に関する業務上過失致死傷罪の公訴時効につい

ては

︑﹁

G︑Eに関する業務上過失傷害罪をも含めて︑これを 一体として観察して︑その期間を算定すべきもの﹂とする︒観念的競合の公訴時効の起算点については次節で述べるが︑G︑Eについて業務上過失致死罪が成立するかぎり︑業務上

過失傷害罪は成立しないのであって︑後者の犯罪の公訴時効はそもそも問題とすべきでない︒この点︑第二審が︑G︑E

\  

JI/ 

(11)

公訴時効の起算点ー熊本水俣病刑事事件上告審決定一 (虫明)

ょ ︑

, 9  

に関する業務上過失傷害罪の公訴時効完成時点をことさら考慮していないのは妥当である︒なお︑土本・前掲ジュリス

ト四

一頁

参照

( 1 0 )

板倉

宏.

﹁水

俣病

刑事

判決

をめ

ぐっ

て﹂

判例

タイ

ムズ

一一

^八

五号

︵昭

和五

四年

︶一

〇九

頁以

下︒

同旨

・飯

田・

前掲

論文

ニ︱

二頁

船山泰範•「公害犯罪と刑事責任」法学セミナーニ九九号(昭和五五年︶一七0

頁 ︒

( 1 1 )

大塚

仁・

刑法

概説

︵総

論︶

︹改

訂版

︺︵

昭和

六一

年︶

団藤

重光

・刑

法綱

要総

論︹

改訂

版︺

︵昭

和五

四年

も引用しているように︑昭和四一年四月ニ︱日の最高裁判決が

(1 ) 

ある︒これは︑観念的競合となる数個の犯罪の法定刑が異なる

とき︑いずれの犯罪を基準にして公訴時効期間を算定するかと

いう問題につき︑﹁刑法五四条一項前段のいわゆる観念的競合

一個の行為が数個の罪名に触れる場合に︑科刑上一罪とし

て取り扱うものであるから︑公訴の時効期間算定については︑

各別に論ずることなく︑これを一体として観察し︑その最も重

い罪の刑につき定めた時効期間によるを相当とする﹂とするも

のである︒しかし︑この点については︑学説はむしろ反対であ

り︑観念的競合は確かに科刑上一罪ではあるが︑本来は数罪で

あるとし︑公訴時効期間は各罪ごとに別々に観察すべきものと

(2 ) 

するのが通説である︒また︑ドイツでも︑観念的競合の公訴時

四次に︑観念的競合の公訴時効の問題については︑本決定

︱二

三頁

︱一

七頁

八 九

しているなら︑数個の公訴時効が問題となるわけである︒従っ この問題を︑公訴時効の本質に関する議論と関連させて考え

るとき︑例えば︑社会的影響の微弱化という実体法的観点に着

目すると︑観念的競合の場合︑重い罪に軽い罪が包摂され︑重

い罪が社会的忘却の基準となるものとして︑

(4 ) 

ことも可能なように思われる︒また︑証拠の散逸による採証上

の困難という訴訟法的観点に着目するならば︑観念的競合は行

為が一個の場合であり︑数罪間の証拠はむしろ共通するものが

多く︑重い罪についての証拠が散逸していないならば︑当然軽

(5 ) 

い罪についても同様と考えられることから︑これまた一体説に

そもそも観念的競合は︑刑法傾くようにも思われる︒しかし︑ 一体説を支持する

五四条一項前段によって特別に一罪的処分が認められるもので

あり︵科刑上一罪︶︑本来的には数罪の成立している場合である︒

すなわち︑もともと数個の観念的刑罰権が発生している場合で

ある︒一方︑公訴時効は︑その観念的刑罰権ないしそれに基づ

く公訴権の消滅の問題に他ならず︑数個の観念的刑罰権が発生

て︑観念的競合の場合︑公訴時効はそれぞれの観念的刑罰権・

公訴権ごとに別々に考察されなければならないのであって︑公

訴時効期間についても︑各犯罪ごとに別々に考えなければなら 効については︑

(3 ) 

れる

各別に考えようとする点で学説の一致がみら

8 ‑2‑267 (香法'88)

(12)

(6 ) 

ない

このこと

そして︑公訴時効期間を経過した犯罪については︑観念 的競合であっても︑刑罰権・公訴権が消滅したものとして︑処

罰の対象とはなりえないと考えるべきである︒また︑

は公訴時効の起算点についても妥当する︒すなわち︑本件のよ うに︑観念的競合となる各犯罪の結果発生時期が異なる場合に も︑各犯罪の公訴時効の起算点は︑それぞれの結果発生時点で あり︑各犯罪ごとに別々に公訴時効完成の有無が検討されなけ ところが︑本件第一審及び第二審は︑公訴時効完成の有無の

判断において︑原則的には一体的に観察すべきものとしつつ︑

いわゆる時効的連鎖を問題にしている︒すなわち︑第.審は︑

こと

なく

﹁観念的競合犯の公訴時効の期間算定については︑各別に論ずる

これを一体として観察すべきものであるけれども︑

.個の行為が順次数個の罪名甲罪・乙罪・丙罪に触

れる場合に︑甲罪とその公訴時効期間内に結果が発生した乙罪

とはこれを一体として観察して︑

その最終の公訴時効期間が経 過するまでの間に︑更にこれと観念的競合の関係にある丙罪に

乙罪につき公訴時効が完成し︑

その後にこれと観念的競合の関 係にある丙罪に触れる結果が発生したとしても︑既に公訴時効

期間が経過した甲・乙罪に対しては絶対的に公訴権が消滅する﹂ 触れる結果が発生しなかった場合には︑この限度において甲・

いま

仮に

ればならない︒

合する過失の結果の全部について︑これを単純に全/体として

二審

は︑

は完成していなかったことになる﹂とするのである︒

一方

︑第

として起訴されたものであるから︑公訴時効期間の算定につい と解し︑本件については︑﹁被害者全員に関する罪について観念的競合の関係にあるとして起訴されたものであるから︑A ︑B︑

D︑Fに関する業務上過失致死罪︑

罪については︑ Cに関する業務上過失傷害

G︑Eに関する業務上過失傷害罪をも含めて︑

これを一体として観察し︑Gに関する業務上過失傷害罪⁝⁝の

(7 ) 

刑を標準とする公訴時効期間:一年が経過した昭和三八年八月

七日限りで公訴時効が完成したことになる﹂が︑﹁G︑E両名に 関する業務上過失致死罪については︑観念的競合の関係にある

ては

これを一体として観察し︑Gが死亡した昭和四八年六月

1 0

日を起算点とすべきものであり︑本件起訴当時︑公訴時効

一個の行為が同時又はさほどの時間的間隔をおかない

で︑数個の罪名に触れる場合を常態とする﹁事故型過失犯﹂と︑

近時しばしば発生する薬物︵化学物質︶公害等の業務上過失犯 にみられるところの﹁構造型過失犯﹂とを区別し︑前者の場合

の観念的競合では︑単純にこれを/体的に観察して公訴時効の

期間を算定すれば足るが︑後者の場合は巽なるとする︒すなわ

ち︑﹁構造型過失犯においては過失の結果が相門の期間にわたり

又は相当の期間をおいて生起することが多いので︑観念的に競

九 〇

(13)

公訴時効の起算点ー熊本水俣病刑事事件上告審決定―‑(虫明)

年五月四日であるから︑右両名に対する関係では公訴時効の期 認められず︑分離して考察すべきところ︑本件起訴は昭和五 し ヽ

観察すると︑先行の罪に対する刑の公訴時効期間が経過しても︑

いつまで経つても︑場合によっては何卜年でも公訴時効は

完成することができないおそれがある﹂ので︑﹁構造型過失犯に

おいては観念的に競合する各罪につき無制限にこれを全^体と

して観察することは相当でなく︑時効的連鎖を有する結果の範

囲に制限することが︑公正妥当な措置というべきである﹂とし︑

﹁観念的競合にかかる各罪の公訴時効期間内に︑その結果が同時

又は順次発生せる場合においてのみ︑これを1体として観察し︑

かかる態様の連鎖が認められない場合は分割して観察すべきも

のとする原判決の解釈は︑その説示する理由は右と異なるけれ

ども︑結論的には妥当なものを有する﹂とする︒そして︑本件

の場

合︑

A ︑B ︑D︑F及びCに対する関係では︑﹁それぞれ前 者の公訴時効期間内に死亡又は傷害の結果が発生しているの

(8 ) 

で︑これらを一体として観察すると︑昭和三七年一こ月四日に

その公訴時効が完成している﹂が︑EとGの両名のみに対する

関係

では

︑﹁

E右に対する公訴時効の期間内に右Gが死亡してい るので︑これを一体として観察すべきであるが︑前記Aら五名

との関係では︑公訴時効の期間を過ぎているので時効的連鎖が 後続の罪の結果の発現によって︑右の公訴時効の完成は阻止さ

間をいまだ経過していないことになる﹂とするのである︒

そし

てこのようないわゆる時効的連鎖説は︑牽連犯の公訴時効の起

算点に関する判例の立場を︑観念的競合にも援用したものであ

る︒すなわち︑﹁牽連犯において︑目的行為がその手段行為につ

いての時効期間の満

r

前に実行されたときは︑両者の公訴時効

は不可分的に最も重い刑を標準に最終行為の時より起算すべき

(9 ) 

もの﹂とされ︑手段たる行為に関する公訴時効が完成した後で

目的たる行為が行われたときは︑手段たる行為に対する科刑権

( 1 0 )  

は消滅すると解されているのである︒そしてこのような立場は︑

一体説によると︑第二審も指摘するように︑公訴時効がいつま

でたっても完成しないこととなるような不都合の生ずることを

少しでも回避するために主張されたものといってよい︒しかし︑

牽連犯も観念的競合も︑科刑上一罪ではあるが︑本来的には数

罪であり︑数個の観念的刑罰権が発生している場合であるから︑

公訴時効も各犯罪ごとに別々に考えるべきものである︒また︑

時効的連鎖さえあればいつまでたっても時効が完成しないとい

うのも不合理であり︑個別的に考えてこそそのような不合理を

回避できるのである︒

それに対して︑本件最高裁は︑

者について公訴時効は完成していないとし︑第一審︑第二審の

結論をくつがえす重大な判示をしたのである︒そして︑これに

( 1 1 )  

一体説を貫き︑すべての被害

8‑2‑269 (香法'88)

(14)

いてのみ公訴時効は完成していないと考えるべきである︒ よ

って

︑ 今 後

︑ 特 に 本 件 の よ う な 悲 惨 な 公 害 犯 罪 に 対 す る 処 罰 要 求 が 満 た さ れ る こ と と な っ た と い っ て よ い

︒ し か し

︑ 観 念 的 競 合 の 公 訴 時 効 の 問 題 と し て は 全 く 是 認 で き な い

︒ 最 高 裁 の 結 論 は

︑ 観 念 的 競 合 の 意 義 及 び 公 訴 時 効 制 度 の 本 質 を 見 誤 っ た も の と い わ ざ る を え な い

︒ 観 念 的 競 合 の 公 訴 時 効 に つ い て は

︑ 各

E.F

六 名 に 関 す る 業 務 上 過 失 致 死 傷 罪 に つ き 公 訴 時 効 の 完 成 を認めるべきである︒

ただ

G

に 関 す る 業 務 上 過 失 致 死 罪 に つ

犯罪ごとに各別に観察し︑

本件においては︑

A.B.C.D. 

( l

) 最判昭和四;年四月ニ一日刑集こ0巻四号二七五頁︒(2)平野・前掲書一五四頁、鈴木・前掲論文――二頁、松尾•前

掲論文二0四頁︑高田・前掲書三七六頁︒

( 3

)  

Hi pp e! ,  a . a . 0 .  

` 

S .  

562 

Mo s! .  a . a . O . ,  

§67, 

S .  

4 3   ; 

Ko hl ra us ch

L an ge ,  a . a . O . ,   S .  

241; 

Ja hn ke ,  a . a . O . ,   S .   74: 

Ru do lp hi .  a . a . O . ,   S .  

572 

Sc ho nk e Sc hr od er  ( S t r e e ) .   a . a .   0;     S.

778 

Ma ur ac h' Go ss e! 'Z ip f,   a. a . O . ,   S .   6 87 . 

(4

)

青柳文雄

1 1筑間正泰.﹁観念的競合犯の公訴時効﹂法学研究四

一巻七号︵昭和四三年︶一三六頁︒

( 5

)

佐々木史朗.﹁観念的競合と公訴時効﹂刑事訴訟法判例百選

︵新版︶︵昭和四六年︶七九頁︑青柳11筑間・前掲論文一三六

頁 ︒ ( 6 )

科刑上一罪という罪数形態は︑﹁其最モ里キ刑ヲ以テ処断ス﹂

という意味で﹁科刑上﹂一罪であるといってよいが︑すべて

( 7

)  

( 8

)  

( 9

)  

( 1 0 )

 

( 1 1 )

 

の場面で一罪として扱わなければならないというものでも

ない︒そして︑公訴時効は︑刑罰権・公訴権の消滅の問題で

あるから︑本来の罪数に従って取り扱われるべきである︒

刑法ニ︱一条は︑昭和四三年に法定刑が三年以下の禁錮から

五年以下の懲役若くは禁錮に引き上げられ︑それによって公

訴時効期間も三年から五年に延長されることとなった︵刑訴

法二五0条五号︑四号︶︒そして︑本件では︑行為後に法定刑

が加重されたことになる︒このような場合︑刑法六条により

改正前の刑が適用されることは明らかであるが︑公訴時効期

間についてはいずれの刑によるかにつき︑裁判時法説︑行為

時法説︑適用法定刑説という三つの考え方がある︒しかし︑

現に適用されるべき法定刑を基準とする最後の説が通説で

あり︑判例︵最決昭和四二年五月:九日刑集一一一巻四号四九

四頁︶でもある︒本件でもこれに従っているようであり︑こ

の点は争いがない︒

第^審は︑第一一審と同しくいわゆる時効的連鎖説をとりつつ、A.B•D.F.Cに関する業務上過失致死傷罪は、昭

和一二八年八月二七日に公訴時効が完成したとする︒そして︑

それ

は︑

G.Eに関する業務上過失傷害罪をも時効的連鎖の

考慮に入れているからである︒しかし︑本件はG.Eに関し

て業務上過失致死罪が成立するとされる場合であり︑この場

合にはそもそも業務

t

過失傷害罪の公訴時効は問題になり

えない︒この点は前節注

( 9

)

で述べた通りであり︑第一審

の立場は妥当でない︒

最判昭和四七年五月10日民集二六巻四号八二六頁︒

大判大正一こ年一

月五

日刑

集一

産巻

一二

号九

ニ︱

︱頁

板倉・前掲判例タイムズニ.八五号―-.頁、同•前掲法学教

室七三頁︑上本・前掲ジュリスト四一.頁︒

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