訴因
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(2) 訴旧閂に. つ. い. て. 一八四︵ 一九六. ︶. ここにいわゆる﹃特定事件﹄とは︑検察官の提示する﹃公訴事實﹄によつて表示されるものであり︑更にその﹃公訴. 蕃﹄は︑﹃訴因﹄によつて明示苫れ喬殺喬蕊と旨關藩あゐ謹︶.すなわち︑公訴は︑公訴妻の範. 園内においてその効力を及ぼし︑審判の範園はそれによつて限界づけられる︒しかし他方︑公訴事實は訴因によつて. 示されるものであり︑從つて︑公訴は事實L訴因によつて制約されるという關係にある︒言いかえれば︑公訴とは︑ 訴因によつて表象された犯罪事實に封する國家への科刑要求であるということができる︒. しかし︑公訴・公訴事實・訴因の關係をこのように把握するという至極當然な論理は︑不可解にも多くの學者の看. 過するところとなつている︒通説は︑訴因と公訴事實との關係を切離して考察し︑訴因をば實艦法的・規範的なもの. と考えながら︑公訴事實はこれを具鰹的・自然的な︑すなわち法律的評慣を維ない歴史的事實であるとして︑公訴と ︵1︶ はこの自然的な前法律的肚會事實にむけられているものであるとしている︒しかし﹃公訴事實は︑訴因を明示してこれ. を記載しなければならない煽楚︶としている以上︑妾者の意思が駕考にあつたとしても︑公訴書は訴膠. よつて示されるのであり︑從つて︑逆に訴因によつて示された公訴事實は︑訴因たる事實︑言いかえれば法律的評憤. を維た犯罪事實と考えなけれぼならない︒それを切離して考えることは︑醤刑事訴訟法當時に影ける公訴及び公訴事. 實の観念を棄てきれず︑それはそのままとしてこれを堅持し︑不調和にも︑それに訴因の概念を積み重ねたものに外. ならないと考える︒この立揚を徹底するならば︑公訴は前法律的な具盤的事實に向けられているのであるから︑そ. の範園内において審理し︑到決をなすことが可能となり︑訴因は實髄的な意味をもたず︑軍に︑手績上において若干. の意昧を有するに止まることとなろう︒しかし︑この立場によつたと見られる學読も︑新刑事訴訟法が訴因という新 ︵2︶. たな術語を用いたことに着目し︑これに何等かの實髄的意味をもたせようとして不徹底な議論を展開している︒こ.
(3) ︵3︶. の立場の學説は︑また︑訴因をもつて公訴の限界を決定するものであるとしながら︑その訴因の限界決定の基準を國. 家に獣する刑罰要求を中心として考える立場︵後述︶と︑實質的に同じものであつて︑・ての立場に加えられる批難は︑. またそのままこの學読に當嵌まるであろう︒新刑事訴訟法の下においては︑公訴︑公訴事實及び訴因は︑同一の系列. 例えば︑團藤教授は︑控訴理山としての﹃審剣の請求を受けない事件について判決をしたこと﹄︵刑訴三七八條3號︶のうち. 例えば︑團藤・新刑事訴訟法綱要︵再訂版︶一〇三頁︑宮下・新刑事訴訟法遜條解説皿一五六頁 等︒. に属するものとして理解しなければならない︒ 謹ヨ. に︑潟訴釈に訴囚としてかかげられていない事實について判決があつた場合も含まれるものと考えているようである︵團藤︒前. 謹2. 掲三二八頁︶︒しかし︑この規定は︑元來不告不理の原則を示したものであるから︑團藤教授がさきにとられた立場︵前註参照︶. もなし得るものとしなければなるまい︒これは訴囚に何等かの實髄的な意味をもたせようとしたものであつて︑その理論の不徹. を徹底せしめるならば︑公訴の効力の及ぶ範園内の事實︵前法律的な具盤的事實︶であれぱ︑訴囚に拘束されず如何なる判決遊. 木稿六四頁参照︒. 一貫せしめた議論を展聞している︵判例タイムズニ巷三號三二頁以下︶︒. 底さを示したものである︒なお︑この問題については︑横川敏雄氏が團藤敏授とその某本的立場を同じくしながら︑その立場を. 註3. 訴因と公訴及び公訴事實との關係を以上の如くに理解する揚合︑間題はまだのこる︒訴因が表象し︑・てれに勤する. 科刑を要求している公訴事實とは︑如何なる範圏の事實であるか︑前法律的な肚會的事實であろうか︑それとも實騰 法上の構成要件に限界ずけられた︑その範團内の事實であるか︑ということである︒. 二訴因の意義. 一八五︵五七︶. 一般に︑訴因とは公訴事實を法律的に構成したものをいうとせられ︑ また︑それは︑ 英米法にいう8霞訴 を謬し. 訴囚について.
(4) 訴因について. たものであるとされている︒ここで英米法と若干比較して考察してみよう︒ ︵1︶. 一八六︵五八︶. 英米法において8q暮とは︑﹃訴の原因に關する原告の陳述﹄覧讐益晦︑;ぢ9①9・二話窮・華亀帥︵丘2を意味. するものとされている︒︒9暮とβ顎①亀帥&9とそれぞれの意義についての説明は︑これを省略する︒爾者の關. 係を以上の如く理解する場合︑89さは︑抽象的な︒讐ろ9蓉ぎ昌を支持し︑それの内容をなす具磯的概念であり︑. ︒豊零9きぎロとは︑かような899によつて.支持され︑公訴を正當ならしめ︑理由ずける抽象的概念ということ. ができよう︒しかして具驚的訴訟についていえば︑この抽象的概念たる塗霧①9きぎ冒と︑具騰的概念たる8茸叶. とが一致し︑一個の︒聾ω︒9蟄9一2内に︸個の8毒げのみが存する場合と︑それが一致しないで敷個の︒9暮が︑. 園2£臼︑ω回軸タ・b一〇葺o冒鍔ざ<9︒どづ●①〇一9. 競合して一個のε霧㊦9鷺試自を構成する揚合とがある︒ 註ー. 新刑事訴訟法における訴因とは︑前述した如く︑公訴事實を法律的に構成したもの︑すなわち杜會の秩序が破壌さ. れたという歴史的な事實を︑刑事實騰法の定める各本條の構成要件にあてはめて構成した事實を指す︑といわれてい. る︒ここにいう﹃法律的に構成された事實﹄とは︑具騰的な犯罪事實であり︑これは︑具盤的な8巨⇔に該當する. が︑しかし多くの場合には︑これが同時に當該公訴を維持し︑それを正當ならしめる公訴の原因︵すなわち︑抽象的 ︵1︶ な黛霧①9きぎεを意味し︑また形成する︒後述する軍純一罪の基本的揚合として示したものがこれであつて︑こ. の場合には︑訴因は翁莞①9き露書を意味すると共に89旨の意味をもつと解することができる︒しかし︑他の︑. 例えば法條競合の揮一關係の場合には︑訴因は8d濤に該當し︑︒聾お9曽&9の意味にぴつたりと該當しない︒ ︵2︶ このことは後に 述 べ る ︒.
(5) 註2. 本稿七四 頁 参 照 ︒. 誰ー 本稿七三頁参照︒. 想うに︑新刑事訴訟法の訴因とは︑一般に8霞昌を意味するものといわれているが︑他面︑訴因によつて公訴が支. 持せられるのであるから︑その字義の示す如く︑それは英米法における寮霧Φ9蓉ぎ目と同じく公訴の原因︵抽象. 概念︶を示す術語でなければならない︒しかし︑訴訟技術的にみて︑それに包含せらるべき事項の範園は︑必ずしも. 英米法の塗簑①9蓉ぎロと同一でなく︑また︑それは︒讐器無帥豊目の意義をもつが故に馨客臼歪さまたは8q9. とも異なるところがある︒畢寛す呑に︑訴因とは︑新刑事訴訟法の起草者がそれを意圖し若しくは意識していたか否. かは別として︑結果的には︑ドイツ法の系統をひく薔刑事訴訟法の公訴事實の概念に︑英米法の︒讐器・罫&馨及び. 8調暮の概念が附加せられたものであつて︑一種猫特の内容をもつものと考えられる︒從つて︑訴因の概念は︑わが. 國の刑事法學における特異の概念であり︑刑事實艦法學と連關し︑それを背景とする理論溝造においてこれを把握し なけれぱならない︒. なお︑刑事訴訟の基本的理論構造の把握については︑民事訴訟法學の理論に依纏すべき多くの分野があるように思. われる︒本稿もまた︑訴因をめぐる刑事訴訟法學の基本問題を︑民事訴訟法學的な考え方の下に理解せんとしたもの. である︒しかし︑民事訴訟法學の理論が︑どの程度まで︑刑事訴訟法學の理論として妥當するかは︑爾者の基木的性. 一八七︵五九︶. 格と相侯つて︑興味ある問題である︒この研究は池日に譲り︑ここには︑訴訟技術的の面から考察した私見を示すに 止める.︑. 訴因について.
(6) 訴因の概念を把握するについての立場. 訴因について. 三. 一八八︵六〇︶. 訴因とは︑奮刑事訴訟法における公訴事實を概念化したものであり︑民事訴訟法における請求原因とほぼ同一の意. 義をもつものと解することができる︒問題は︑訴因の範園︑すなわちその限界の決定である︒訴因とは既に述Rた如. く犯罪事實を法律的に構成したものであり︑犯罪構成要件に當嵌めて考えられた法律的事實である.︑しかしかような. 訴因が如何なる範團の事實についての審判請求を支持しているかは︑必ずしも明確ではない︒訴因は一面において︑. 参暴︒o欝§自若しくは請求原因と同一意義において︑訴の原因を示す抽象概念であるが︑他方において公訴犯罪事. 實を示すべき具鴨概念である︒この黙において英米法における8q9と︑その意義を同じくする︒. しかるに︑英米法の8β暮ほ︑到例・學読を通じて︑徐々に組み立てられた滑革的所與であつて︑その範園︑すな. わち︑或る︒自旨が如何なる範園の事實についての審到を可能ならしめるかは︑個別的に決定せられており︑大陸法. におけるが如く︑一定の基準によつて定められていない︒しかし︑軍に到例を通じて︑個別決定的に定められるとい. うだけでは︑その基本的構造において︑大陸法の傳統をひくわが訴訟法學の理論乏して︑満足することはできない︒. 訴因の範園は何等かの理論的基準により決定せられべきことを要請せられる︒しかし︑英米法の8=暮の概念はそれ を全面的に解決するに不充分である︒. 想うに訴因の範園使訴訟手績の面から考察しただけでは︑理論的限界を措定し難い︒更に遡つて公訴それ自艦︑. 若しくは公訴の内容を決定する刑事實髄法にその解決の根振を求める必要がある︒換言すれば︑訴因の範園︵實質的. 一個の公訴の個数決定の基準︶は︑公訴︵刑罰要求︶にその根檬を求め︑公訴の衡象たる犯罪を構成する肚會的事實.
(7) にその基準を求めるか︑或いは刑事實騰法に根嫉を求めて︑犯罪構成要件を基準として決定するかの二つの立場を考. えることができる︒ ︵1︶ この問題を民事訴訟法學の問題に韓換して考察してみよう︒民事訴訟法學においては︑﹃訴﹄︵實質的意義における︶. の個数︑すなわち﹃訴訟上の請求﹄の個数を決定するについて︑鉗瞭的な二つの方法が考えられている︒一は︑實膿. 法を中心として考える︑いわぼ實髄法的一元観によるものであり︑訴訟法上の請求の個数︑すなわち實質的意義にお. ける﹃訴﹄の個藪は︑請求の原因として示された實磯法上の請求の個敷ーそれは當該請求を構成する實艦法上の構. によつて定まるとする︒その二は︑これとは全く逆に︑訴訟法を中心. として考察する訴訟法的一元観であり︑﹃訴﹄は裁判所に封する到決の要求であるから︑いわゆる﹃椹利保護要求﹄そ. 成要件︑並びに主髄の敷により決せられる. ﹃訴﹄!灌利保護要求−ー−により﹃訴訟上の請求﹄の個数が. れ自騰︑または︑その内容と︑實質的意義における﹃訴﹄の個数とは一致するとみる︒從つて︑﹃訴﹄の個数は實膿法 ︵2︶. 上の請求の個敷により決定せられるのではなくして︑ 決定せられるという︒. 註2. この關係を最もよく表明しているのはニキッシェである︒曰く︑﹃椹利保護要求なき灌利主張は︑訴訟上の請求ではあり得な. 誰ー 中村宗雄・訴と請求並に既判力 一四六頁以下に詳細である︒. ︒鉾 o. て︑灌利保護要求の個数が請求の個歎を決定しなければならない︒原告が一個の権利保護要求をなす場合には軍数の請求が存. い︒また椹利主張なき槽利保護はその封象を駅く︒それ故︑訴訟上の請求と灌利保護要求とは相互封慮するものであり︑從つ. し︑灌利保護要求が複鐵であれば請求も複敷である﹄Z一江臣ポ野﹂︶角弓慶叶お詳騎罐2あ鼠一三一影凶ダ︵ちま︶︾り○. しかし︑第二の立場の如く︑﹃訴訟上の請求﹄の個数決定につき︑原告が訴をもつて主張する権利保護要求の個敷を. 一八九︵六一︶. 基準とすることは︑畢寛するに當該事件の具灘的事實を基準とし︑︸個の事件についそは︑實騰法上敷個の請求が併. 訴因について.
(8) 訴囚について. 存し競合する揚合であつても︑なお︑. 一九〇︵六二. ︶. ︵1︶ 一個の訴︵訴訟上の請求︶が存するとみるということであり︑これは﹃訴訟上. の請求﹄が實鰹法に依振するという事實を無視しているばかり哺︑なく︑一個の訴訟上の請求の範園が︑一個の訴にお. いてなさるべき訴訟較術的に可能かつ安當な審理範團を超える場合があることに間題がひそむ︒すなわち訴訟におけ. る本案の到決は︑原告の訴訟上の請求について︑その實艦的要件の具備︑不具備を審査してなされるものであり︑か. っそれに響する判決の既到力は︑當該請求に關する充分なる審理の充足を制度的前提要件として生ずるのである︒從. つて︑一個の請求の範園は︑當該訴訟における審理充足の可能な範園において︑これを定めるのが愛當であらねばな. らない︒この意昧において︑訴訟法上の樺利保護要求の個数によつて︑訴訟上の請求の個数を決定することは︑ひろ. きにすぎる︒この故に民事訴訟法學におけるこの立揚の學詮は︑意識的・無意識的に審理の範園並びに既到力の客観. 的限界を縮少せんと試み︑實艦法上の構成要件に從つて︑訴訟上の請求の個敷︑從つて既到力の範園を定めんとする. 趨勢にある︒ただ︑最近においてみられた司法権の撞大傾向︑特に︑ナチス訴訟理論による裁判罐鑛大強化の傾向に. おされ︑またある揚合には︑訴訟手績ヒの技術的要請におされ︑多少︑實髄法上の構成要件を離れ︑構利保護要求の. 内容によつて訴の個数を決定せんとする傾向もある︒例えば︑錨誤による無効も︑取消による無効も︑無効なること ︵2︶ において同一であるから︑その一方についてなした到決の既判力は他に及ぶという到例の如きその一例でる︒しかし︑. これらはなお例外にとどまる︒民事訴訟法學においては大醗において︑實健法の構成要件︑並びに主艦の敷によつて. 訴訟上の請求の個敷を決定する立場が墜倒的であり︑その理論は既到力の限界を定めるについても概ね安當である︒. 例えば︑蓮逡品減失の事實に某き︑債務不履行にょる損害賠償を求めると︑或いは不法行爲にょる損害賠償を求めるのは︑. 同一の訴訟上の請求であるとし︑從つて一方に封する判決の既判力は他方に及ぶとする︒. 置ー.
(9) 謹2 昭和三年八月一日大民四判決︑民集七巻六八七頁滲照︒. 以上述べた理論は︑珊事訴訟法學の分野にこれを鷹用することができる︒そして・ての結論として示されるところむ︑ 同様に妥當するように考えられる︒. 訴因についていう︒刑事實艦法中心の考え方︑また別の角度からいえば︑當事者主義的考え方によれば︑訴因の範. 圃︑實質的一個の訴の限界は︑そのよつて立つところの刑事實騰法上の犯罪の個数決定の基準によつて決せられるこ. ととなり︑また他方︑訴訟法中心の考え方︑或いは職樺主義的考え方によれば︑それは當該事件の具騰的事實關係を ︵1︶ 標準として考え︑國家に封する刑罰要求を中心として考うべきこととなる︒. 訴の効力︶は︑實質的に訴囚とは離れて︑具艦的な當該事件についてその全てに及ぶと解することとなる︒從つて︑それは︑實. 謡ー この立場では︑訴囚は或る犯罪事實を表徴するもの︑軍にその符號の意昧をもつに止まり︑その訴囚による審判の範園︵公. 質的に公訴の限界を劃するという意味をもたないこととなり︑結局前に蓮べた公訴と訴因の關係を切離して考える立場︵前述︑. 本稿五六頁︶と同一に蹄著する︒. 想うに︑訴因は︑現實的には公訴事實を法律的に構成したものであり︑實騰法に依檬するものである︒然らば訴因. の範園︵實質的公訴の範園︶は︑常然實農法上の犯罪の個敷決定の基準によつて決せられるものとしなければならな ︵1︶ い︒それは主観的には犯人により︑客観的には構成要件によつて決せられることとなる︒從つて︑訴因の範園は︑起. 訴歌に示された被告人と︑検察官の犯罪事實に封する實騰法上の評煩によつて定まる.︑從つてこの立揚では訴因と罰. 條は常に相即したもの︑一訴因︸罰條ということとなり︑同一なる反杜會的事實であつても︑法律的評憤が異なり︑. 構成要件を異にすれば︑訴因もまた異なることとなる︒例えば︑窃盗の見張行爲をなしたという事實につき︑それを. 一九一︵六三︶. 窃盗罪とする揚合と︑窃盗蓄助とする揚合とでは訴因が異なることとなる︒また目的物の占有が被害者に属していた. 訴因について.
(10) 訴因について. 一九二︵六四︶. か否か不明である揚合︑それを馨︵羅二︶と奪と︑横領︵鯉悪縞擬すると凄讐く訴因は異なる!巻 る︒. 訴因の範園を決定するにつき︑犯罪構成事件を基準とする考え方には︑刑事實燈法にその基準を求める立場からも︑當然異. 説が豫想される︒それは︑實艦法上の犯罪の個数を決定する基準をいずこに求めるかについての争いであるが︑ここには立入つ. 註ー. て考察することは省く︒反封説として豫想せられるものには︑行爲を標準として決せんとする行爲標準説︑犯罪の決意を標準と せんとする意思標準説︑或いは被害法盆を基準とせんとする結果標準説等がある︒. これに反し︑刑罰要求を基準として訴因の限界を決定するものとすれば︑當該訴因は︑その依嫁する構成要件の限. 界を超えて︑それによつて表示せられた犯罪事實︵實禮法上の構成要件に關係して把握された法律的事實︶と同一性. ある犯罪事實についての審判を可能ならしめ︑その依稼する罰條が互に異なつても同一訴因とみられる︒この見解. は︑事實上︑公訴と訴因との關係を切離して考える立場と同様であり︑訴因の制度的理念に反するばかりでなく︑前. 述の如く訴因の範園を審理充足の限度を超えて擾大する不當を内含するものである︒訴因をもつて公訴の限界を決定 するものとしながら︑この立場に立つことは無意味なことである︒. なお︑訴因の限界をもつて︑構成要件に關係して把握された法律的事實ではなく︑肚會的事實に求むべきであると. の見解も成立しうる︒しかし︑この立場において︑批含的事實を﹃事件﹄そのものと考える場合には︑前述した訴因. の個薮を刑罰要求の個数によつて決定する立揚と同一に蹄著することとなろう︒またこの杜會的事實をもつて事件を. 組成する各個の具艦的事貧と考えるならば︑結局︑それは構成要件を基準として訴因の個数を決定する學説と表裏の. 關係に立ち︑結局において同一に蹄する︒嘗つて民事訴訟法學においては請求原因に關し︑法律要件読と事實記載説 ︵1︶ とが封立したが︑それは法律事實説によつて統一せられた︒訴因に關しても︑同様でなければならない︒.
(11) 註ー. 民事訴訟法學において︑請求原囚につき事實記載説と法律要件説とが封立したのは︑奮民事訴訟法の下において︑請求原因. の漿更を極度に制限したことにょる︵奮民訴一九五條二項第三参照︶︒事實記載説にょれば︑事實關係を愛更せしめなければ︑. らないが︑この學説を徹底せしめると︑訴釈の事實記載の漿更は︑すべて請求原因の漿更となるという不合理に陥る︒現在︑こ. 法律的領値評慣の攣更︑例えぱ不法行爲による損害賠償請求を︑伎務不履行による損害賠償請求に改めるも講求原因の攣更とな. の學説は行われていない︒訴因に關しても︑この事實記載説に類する考え方にょれば︑構成要件に憂更を生じない軍純な事實の. 異同︵例えば︑目的.場所.方法.被害物件等︶も訴囚の鍵更ということとなり︑實務上行われ難い所論に蛎著する︒從つて構. 成要件を充足する事實︵法律事實︶を基準とするという外はない︒また︑かく解することは前述した構成要件墓準説を事實の側 面から立論したことになるわけである︒. 換言すれば︑訴因における犯罪の日時.場所.方法.被害品等は︑−必ずしも︑訴因そのものの概念に属するものではなく︑一. の構成要件にょつて評憤されている事件を︑特定するに必要な限度において訴因の中に示されるにすぎないものと解する︒刑訴. 二五六條二項が日時・場所・方法等は﹃できる限り﹄具燈的に記載すればたるものとしているのも︑この趣旨を示すものであ. る︒判例︑同趣旨 昭二四・二一.一六︑福岡高裁判︑高裁刑事判決特報三號八二頁︑昭二四・一二・五︑名古屋高裁判︑判決 特報四號九頁 等︒. これを要するに︑訴因の限界︵實質的公訴の範園︶は︑刑事實騰法にその根嫁を求めて︑主艦と構成要件の個敷に. よつて決定するのが妥當といわなければならない︒訴因の限界を事實に求める見解も︑結局においてこの見解に合流. すべきものであることは前段に述べた如くである︒なお︑團藤教授の訴因論は︑それに實騰的意義を認めない黙にお. いて私の立揚と異なるが︑﹃訴因とは公訴事實を法律的に構成したものをいう︒﹄といい︑一訴因一罰條︑すなわち︑. 實驚法上の構成要件︵罰條︶と訴因とは互に即鷹したものであるように説明せられており︑この黙については私の立. 揚と︸致する︒しかし︑すぐその後では︑﹃たとえば︑委託された包装物の内容を抜き取つた事實が窃盗罪か横領罪か. 一九三︵六五︶. は刑法上争いのあるところであるから︑かような事實を訴因として記載したばあいに︑刑法第二一二五條︵窃盗罪︶と. 訴囚について.
(12) 訴因について ︵1︶. 一九四︵六六︶. 第二五二條︵横領罪︶とを適用罰條としてかかげることが許される﹄とし︑一訴因に敷罰條が競合する場合のあるこ. ︵2︶. とを認めている︒後者は訴因決定の基準を當該事件の具騰的事實に求め︑國家に勤する刑罰要求を基準としたものと. みるべきであろう︒しからば前者の理論がその決定の規準を實騰法上の構成要件に求めたのと卒灰を異にする︒ま ︵3︶. た︑AとBが科刑上の一罪をなす場合︑その一部Aの訴因を掲げれば︑それは當然他のBの部分の審判をも可能なら. しめるものとしている︒しかし︑これもまた︑その決定の基準を國家に鉗する刑罰要求に求めたものとみることがで. きる︒このように訴因決定の基準を︑揚合によつて異ならしめるには︑それを愛當とするだけの根接がなければなぢ. この場合︑訴因決定の墓準を實髄法上の構成要件に求めて解するならば︑委託された包装物の内容が何人︵委任者・受任. 團藤・新別事訴訟法綱要コニ九頁︒. ない︒しかして團藤教授は何らその根櫨を示していない︒. 謡2. 謳ー. に記載さるべきものである︒團藤教授のように考えることは︑便宜の手段として許されるかどうかは別として︑理論的には一貫. 者︶の占有に腸するかによつて︑窃盗或いは横領の二つの訴囚が成立すべきであり︑その訴因が罰條と共に豫備的または揮一的. 團藤・前掲一〇四頁︑小野・新刑事訴訟法概論一三四頁等︒. しないうらみがある︒ 謳3. 刑罰要求を基準として訴因の範園を決せんとする立場を徹底せしめるときは︑訴因の概念は非常に廣いものとな. る︒例えば︑事實關係法律關係の不朋瞭な犯罪も︑ある訴因によつて一鷹表示しておけば︑審判がその訴因によって. 表示せられている事實と同︼性ある事實に向けられている限り︑その訴因はその事實に封する審到を可能ならしめ. る︒つまり︑訴因は︑前法律的な犯罪的事實に封する符號としての意味のみをもち︑訴彊側にとつては非常に有利で. あるが︑被告側にとつては不利である︒かような考え方は︑新刑事訴訟法の下に強度の職権主義的な考え方をもちこ.
(13) むものであつて︑かくては訴因制度の意義を没却することとなろう︒起訴状は︑また一面から考察した揚合︑當事者. 主義的考慮の下に︑公判請求書たると同時に︑被告人に甥する攻撃の通告歌でもある.從つて︑また起訴欣に記載さ. 訴因と公訴事實. れる訴因のもつ意義も︑被告人が相當の防禦準備をなしうる程度に固定していなければならない︒. 四. これまで述べてきたように︑訴因は公訴の内容をなし︑・ての個数を決定すべきものである︒しかして︑茅︑の訴因の. 範園決定の基準を實騰法上の犯罪の個敷決定の基準に求める場合︑それは本則として犯罪の主騰.刑事實騰法の定め. る構成要件によつて決せらるべきものである︒結局︑一人の者が︑数罪を犯した揚合︑その訴因の個敷︵實質上の訴. の個数︶は︑肚會的事實としての犯罪が︑刑法各本條の定める構成要件を何個充足しているかによつて決せられる︒. すなわち︑訴因の範園決定の基準を刑事實龍法に求める場合︑訴因は常に罰條と相即し︑相鷹じたものであり︑從っ てまた︑公訴の限界︑個数は︑この構成要件的評憤によつて決定せられるものとなる︒. 訴因をかく解する揚合︑訴因は罰條に即した事件の債値評債に外ならないのであるから︑同一事件を他の罰條に則. して憤値評債し得る揚合が存しうる︒そのゆえに検察官は︑同一の事件につき数個の訴因を豫備的または揮一的に記. 載して公訴を提起することができ︑また訴訟の進行中︑公訴事實の同一性を害しない限り︑訴因.罰條の︑攣更をなし. 得るのである・差同謄葬官織餐爵し訴因︒裡墨更器ずるこξ蕾婿誰︶・乳垂に旨. ならば︑同一の事件を数個の構成要件によつて評憤しうる場合には︑その構成要件ごとに︑實質的には敷個の公訴が. 一九五︵. 六七. ︶. 成立し︑その藪個の公訴が形式的一個の訴の内部において豫備的或いは揮一的に併合されていると解される︒また︑ 訴因について.
(14) 訴因について. 一九六︵六八︶. 審理の進行によつて事件に封する法的評債が異なつた揚合には︑訴因・罰條の追加・徹回・攣更と共に公訴自騰がそ. の同一性を害しないで攣更したとみるべきであらう︒詳言すれば公訴の効力は︑元來訴因として示された公訴事實に ︵2︶. ついて生じるのであるが︑しかし︑な痴︑その公訴事實と同一性ある範園内の事實については︑公訴はその同一性を. 害しないで︑それ自髄を攣更することができる︒また︑ある訴因による確定剣決は︑その訴因たる事實について科刑. する國家意思の宣言であるが︑なお被告人の利釜のため︑同一犯罪について提起せられた後訴に甥して既判力を及ぼ ︵3︶. すことになる︒二重起訴を禁止した憲法第三九條にいう﹃同一の犯罪﹄とは︑﹃同一の公訴事實﹄すなわち﹃公訴事實 との同一性﹄を指稻するものとみなければならない︒この黙については後に述べる︒. 囚を實燈的なものとして考え︑訴因と公訴を結びつけて考えるから︑不告不理の原期器きo言富図詮器霧ε困①を徹底せしめる. 註ー 検察官がこのような裁判官の命令に服すべき義務を負うかどうかは一つの問題である︒私は︑これまで述べてきたように訴. 限り︑検察官には裁剣官のかような命令に服すべき實艦的義務はないものと考える︒結局この場合の裁判官の命令は︑訴訟指揮. 椹に基くものであるが︑検察官はその命令に從うべき實燈的義務を負わないのであるから︑手績法上の義務もまた存しないとみ. う﹃命ずることができる﹄とは︑訴訟手績の適正な進行のため︑當事者のそれに即鷹する行爲を期待する勧告的命令に外ならな. るべきである︒訴訟指揮の命令には︑制裁を件う強制的命令と︑制裁を伴わない拗告的命令とある︒本條︵刑訴三コ一條︶にい. いと考える︒. なお︑訴因に實禮的意義を認めない立場︵公訴と訴因とを切離して考える立場︶に立ちながら︑不告不理の原則を援用して︑. 検察官は裁判官のこの命令に服すべき義務なしとする者もある︵例えば︑羽山忠弘︑訴囚に關する試論・警察研究+九巻十一號. ながら︑この原則を援用することは論理の一貫しないものがある︒この立場に立つならば︑この命令はむしろ訴訟手綾上の命令. 二九頁︶︒しかし︑不告不理とは︑﹃訴﹄についていわれることであり︑かような立場に立ち訴因をもつて訴訟技術的なものとし. として︑裁判官の訴訟指揮椹の範圃内に属すべきものと考えるべきであり︑從つてそれとの關係において︑この問題は解決せら るべきである︒.
(15) かような考え方は︑通説とは全く相反するものである︒通説によれば︑公訴の効力は︑公訴事實︵前法律的事實︶と箪一・. 同一の關係にある事實に封して︑潜在的に及び︑訴囚として示された部分について顯在的に及ぶとする︵例︑團藤・新刑事訴訟. 謹2. 法綱要一〇三頁︶︒しかし︑この考え方は︑公訴の効力の及ぶ範囲を︑既に公訴提起の際訴囚とは離れて抽象的に限界ずけ︑こ. の限界内において審判し得るものと考えるのであつて︑訴訟の實際が︑訴囚を中心として行われることに則さない︒これは蝕り. ︵公訴の効力︶は︑その訴囚たる事實について生ずるものとしなければならない︒しかして︑審理の推行κつれて︑公訴提起の. にも抽象的概念的な考え方といわなければならない︒現實的には︑公訴は訴因にょつて提起されるの不︑あク︑從つて審判の範圃. 際の訴囚とは異なる評慣を得た場合には︑靖︑の事實︵勿論︑前の公訴事賓と同一性ある︑ことを要す︶について︑公訴自身が攣更. すると考えることが穏當である︒公訴の効力が︑潜在的に或いは顯在的に及ぶとは︑言葉の上ではともかく︑實質的には一燈如. ま温存し︑それに日新らしい﹃訴拠﹄という概念を積み重ね︑しかもそれに貴艘的意味をもたせようとしたものであつて︑その. 何なることを意味するのであろうか︑この考え方は︑鼠に述べた如く︑奮刑事訴訟法時代の公訴︑及び公訴事實の概念をそのま. 相關々係の把握には不充分なものがある︒またこのよう忙考えることは︑その當然の結果として︑奮刑事訴訟法當時の強度の職. 椹主義的な考え方を脱却しえないうらみがある︒公訴︑公訴事實の概念は︑訴囚制度の新設と共に︑また新たに考え直さなけれ. 刑事訴訟法における判決の効力の間題についても︑民事訴訟法的な考え方を徹底するならば︑既鋼力は︑訴因たる事實につ. ばならない問題である︒. いて生じるものとしなければならない︒しかし︑判決確定後に︑同一犯罪事實を他の訴因を以て構成し︑訴を提起した揚合に. 謹3. も︑前訴判決は︑かような後訴を拘束するものとしなければ︑被告人の利盆を甚しく害することとなろう︒從って︑刑事訴訟に. ればならない︒かような黙については刑事訴訟法の某本的性格と祁倹つて︑民事訴訟法と同一に臨ずることはできないαこの黙. おいては︑既判力は︑訴因たる事實について生じるものでなく︑公訴事實に同一性ありとみられる後訴を拘束するものとしなけ については 後 蓮 す る ︵ 本 稿 八 七 頁 以 下 参 照 ︶ ︒. 一九七︵六九︶. 問題は︑公訴事實とは如何︑またその同一性の範園︵事件に甥する法的憤値評憤に推移のある揚合︶を如何に措定 するかにある︒. 訴因 に つ い て.
(16) 訴因について. 一九八︵七〇︶. 公訴事實とは︑これまで屡々述べてきたように︑訴因によつて把握されたものであり︑それは既に法的評贋を経た. 犯罪事實である︒それは訴因たる事實と同一ともいうことができるのであつて︑通読が解するように︑前法律的な肚. 會的事實を意味するものではない︒ここで問題となるのは︑その同一性の範園を如何に考うべきかである︒この問題. は︑また︑これを民事訴訟法が︑訴の攣更の限界基準とせる﹃請求の基礎﹄に封比し︑それに封當する概念として把 握することにより︑すべての問題が合理的・合目的的に解決せられるように思う︒. 民事訴訟法第二三二條は﹃請求ノ基礎二攣更ナキ限リロ頭辮論ノ終結二至ル迄請求叉ハ請求ノ原因ヲ攣更スルコト. ヲ得﹄と規定している︒すなわち請求の基礎に攣りのない限り﹃請求叉ハ請求ノ原因﹄︵請求の趣旨及び原因︶を攣更. することができるのであつて︑この﹃請求の基礎﹄が︑訴の攣更の前後において︑﹃請求の同一性﹄を維持するについ. ての必要條件となり︑可能なるべき訴攣更の限界基準を示している︒しかして︑それが何を指すのであるかについて. は︑民事訴訟法學者の間にも争のあるところであるが︑要するに訴の攣更の前後における﹃請求の同一性﹄を指稻す ︵1︶ べきものであるから︑それは︑訴により主張するところの利釜に外ならないものと解することができよう︒しかし. ︵上巻︶二一二頁参照︒. て︑この﹃請求の基礎の同﹈﹄を事實の側面から考察したものが刑事訴訟法における﹃公訴事實の同一性﹄とみるこ. 中村宗雄・判例民事訴訟硯究︵第一巻︶三四七頁以下︑同・民事訴訟法. とができる︒以下に詳説するであろう︒ 註ー. 公訴事實の同一性︑すなわち事件の同一性とは︑事件が訴訟手績獲展の前後の關係において︑同一性あるものとし. て取り扱われることであり︑それは犯人の同一と犯罪事實の同一性とによつて決せられる︒. 犯人の同一についてぱ別段問題はない︒澗題となるのは︑犯罪事實の同一性である︒これについては激しい學読の.
(17) 封立がある︒通読は︑犯罪事實とは︑前法律的な歴史的事實を意味するものであるとし︑前法律的な肚會的事實とし. て︑その基本的な貼において同一であれば︑その犯罪事實は︑前後同一であるという︒しかし︑訴因の限界は︑前述. した如く︑刑事實艦法上の構成要件を中心として考察すべきものとする限り︑犯罪事實の同一性の問題も︑また實騰. 法上の構成要件を離れて考察することはできない︒訴因を通じて把握された公訴事實は︑既に前法律的な肚會的事實. ではなくして︑法律的評憤に關係して把握された事實である︒すなわち︑それは輩に事實上の間題として把握したの. では不充分であつて︑そこには常に法規範的評憤の介入が必要である︒しからば公訴事實の同一性の範園は如何にし. て決せらるべきであろうか︒それは︑まず實騰法的評憤を中心として考察すべきであり︑訴因を構成する犯罪構成要. 件によつて限界ずけられるものとしなければならない︒しかしまた︑この問題は︑訴訟手績において間題とせられる. 限り︑訴訟法の立場において︑その實践的要求をもこの理論のうちに織り込む必要がある︒かくして︑犯罪事實の同. 一性︵公訴の攣更可能の限界︶の範園は︑・てれを如何に措定することが被告人の利盆を保護することとなるか︑逆に. いえば︑どの程度にまで鑛張して解しても被告人の不利釜となることはないか︑また︑事件に野する判決の既鋼力を・. どの程度にまで及ぼさしめるべきかという︑個入的及び國家的な爾面からの考慮のもとに決定せられなけれぼならな. い︒しかしてその限界は︑﹃保護法盆の同一性﹄と﹃審理の充足﹄という概念を基準とすることにより解決せられる. であろう︒すなわち︑二つの要件が︑その保護する法釜において互に同一性ありと見得られる關係にあるならば︑そ. れは︑前述した民事訴訟における﹃請求利盆の同一﹄と同様な關係において︑その構成要件によつて評贋されている. 事實相互間には同一性ありといい得るであろう︒また︑ある實膿法上の構成要件に當嵌めて考えられた事實︵訴因︶. 一九九︵七一︶. の審理が︑同時に他の構成要件の審理をも充足するような關係にある場合には︑またその揚合に限つて︑かかる構成 訴因について.
(18) 訴因に?いて. 二〇〇︵七二︶. 要件にょつて判噺される事實柑互間に同一性ありと構して妨げないであろう︒例えば︑窃盗罪と強盗罪︑横領罪と背. 任罪との間には︑その保護する法釜を同じくし︑また構成要件の重要な部分において共通なものがあるから︑ある事 ︵1︶ 件がこれ等の構成要件によつて評債される場合には︑その間に犯罪事實の同一性ありと認めることができる︒. この鮎︑英米法においては訴訟法的見地から︑誇線の同一によつて事件の同一性を判隊しようとしている︒すなわち︑判例. によれば︑後に起訴された犯罪事實を支持する詮豫と︑前に起訴された犯罪事實を立謹する謎嫁とが︑同一のものであるときは︑. 註ー. この基準も︑また︑本丈に述べた實燈法的基準の補充的基準となすことができよう︒. その爾事實は同一の犯罪であるとしている︵自○窮巴節ノく巴器さU①富ロ象一茜箇昌自霞○器曾貯ε騎鳴区頸毘〇二巳汐三〇器霧あOo密●︶︒. 審理の進行につれて︑事件に鮒する法律的評憤が攣化した場合︑客罷たる事實︵通説のいう如く前法律的な事實で. はない︒訴因によつて把握された法律的な事實である︶は︑その前後を通じて︑以上述べた意味で同一性を保たなけ. ればならない︒刑事訴訟法第三二一條が︑公訴事實の同一性を害しないで︑訴因の追加・撤回・攣更を認めるといつ. ているのも︑また︑この意味において理解すべきである︒この限界を超えて法律的評憤︵訴因︶を攣更することは許. されない︒この限界を踏み超えて︑更に別の異質的な構成要件にょつて評憤しようとする揚合には︑新たに別の公訴. を提起すべきであり︑訴因の追加・撤回・攣更の方法にょることは許されない︒例えば︑殺人豫備の訴因を︑内胤豫. 訴因の限界決定の基準を刑事實禮法におく理論の展開. 備の訴因に攣更する如きは許されない︒蓋し︑訴の同一性を破ることとなるからである︒. 五. 以下︑前述した如き立揚において︑ 各揚合の理論構成を試みるであろう︒ ︵剛︶ 軍純︸罪の揚合.
(19) ある枇會的事實としての犯罪を︑法律的に構成した場合︑その事實關係・法律關係が明瞭で︑輩に一つの構成要件. によつてのみ許憤することができ︑他の構成要件を以ては評憤しえないような揚合︑すなわち︑訴因が絶鋤的に一個. の揚合には︑その審判は︑訴因として示された事實について︑訴因のよつて立つところの構成要件を中心とし︑かつ. その限界内において行われる︒そして︑その判決の既到力は︑その訴因として示された事實について生ずることとな. る︒この場合の訴因は︑公訴事實を全面的に表示するものであつて︑その犯罪事實に封し︑訴の原因たる抽象的意味. と︑また︑その事實關係を示す具膿的な意義との二つを兼併する︒この場合の訴因は︑英米法のβ窺︒焦饗ぎpと. 8・暮の意味をもち︑また︑民事訴訟法學に當嵌めて考えれば︑﹃請求の原因﹄謝當の關係にある︒. 以上述べた場合が︑訴因︒公訴・公訴事實等︑刑事訴訟の基本概念のすべてが一致する最も基本的なものである︒. しかし︑實際に生起するのは︑かような軍純な場合ばかりでない︒例えば︑一つの客観的に確定せる事實が︑同時に. 二つ以上の構成要件によつて評憤し得るような法條競合の揚合︑また︑事實關係・法律關係が不明瞭で︑一つの事實. ︵融會的事實︶が二つ以上の構成要件によつて評憤され得るような揚合︵横の關係において公訴事實に同一性ある場 合︶或いは事實に封する法的許債が︑訴訟の進行につれて攣化した場合などがある︒. 訴因の本來的意味は前述した如くである︒しかし︑・てれも訴訟において取扱われる限り︑訴訟法理の支配をも認め. なければならない︒かくして︑かような場合には︑それぞれ刑事訴訟の實践的要請の下に︑訴因のもつ意味も多少の 攣更をうけることとなる︒以下これらにつき︑場合を分つて考察を進めることとする︒ ︵翌︶ ある客観的に確定ぜる事實が二つ以上の構成要件によつて評憤される揚合. 二〇一︵七三︶. これは︑一つの客観的に明確な事實が二つ以上の構成要件によつてそれぞれ別の方面から凋立に判断される關係に. 訴因について.
(20) 訴因について. 二〇二︵七四︶. ある場合であつて︑法條競合の揮一關係の場合がこれにあたる︒例えば︑委託された包装物の内容を抜取つたという. 書が︑窃華の墾︵躍︑一︶と︑犠罪の墾︵謬五︶との二つ条つて評憤嘉る医皇農場合募る.こ. の場合客観的事實としては︑一個存するのみであるが︑その評償する構成要件は敷個存するのであるから︑訴因も数. 個成立するものとみなければならない︒しかし︑これ等藪個の訴因が評憤しているのは︑全く同一の事實︵客観的に確 ︵ 1︶. 定せる事實︶であるから︑一個の訴因による公訴において︑他の訴因により判決するにつき︑別段訴因攣更の手績を要. しないとすべきである︒また︑一の訴因による審理は︑同時に他の訴因による審理を充足するから︵爾訴因の表示する. 公訴事實は全く同一であるから︶︑一の訴因による剣決の既到力は︑當然他の訴因による後訴に封し既判力を及ぼす︒ 註ー しかし︑それは理論的に二つの訴因が成立することを否定するものではない︒. この場合︑訴因は前段に述べた基本的な場合とやや異つた意義をもつようである︒蓋し︑この場合の競合せる訴因. は︑審到に附せられた事件を︑それぞれ異なつた面から全面的に評債し︑ただその規定の性質上︑その一方のみが適. 用せられるのであつて︑それら訴因の指向している客観的事實關係は全く同一である︒逆にいえば︑この場合︑公訴. はただ一つであり︑訴因はその内部において︑いずれもがそれを全面的に支持しながら︑その一つだけが適用される. という關係にある︒それは︑あたかも民事訴訟法の︑實質的一個の訴の内部における濁立なる攻撃方法を意昧するも. のということができ︑また︑英米法の8巨φを意味するものということができる︒從つて︑この場合︑訴因は公訴の. 個敷を決定する意味を有しないのであり︑公訴の原因は︑これ等濁立なる攻撃方法たる訴因を包撮する更に高次の段. いとみるべきで あ る ︒. 階に求められる.その故に︑また︑あ訴嬰他の訴因錘望て鍵す譲は︑訴羅更の手螺灌︶を要姦.
(21) ︵2︶. 或る肚會的事實が二つ以上の構成要件によつて評債され得る場合. ここでは︑事實關係・法律關係が不明瞭で一つの肚會的事實が︑数個の構成要件にょつて評債され得るような場合. を検討する︒この場合轍個の訴因を想定することができ︑検察官はかような数個の訴因罰條を︑豫備的或いは揮一的. に霰して公訴鼻學る︵捌攣囎︶.例えば︑或る行爲の蕃的法律的關禁不羅で︑そ紮名婁損罪窺. 定に則して構成することもでき︑或いは侮辱罪の規定に則して構成することもできるというような場合である︒︐この. 場合には︑肚會的事實としては一個存するのみであるが︑評憤する構成要件を異にするごとに数個の訴因が成立す. る︒しかし︑敷個の訴因によつて表示せられる公訴事實は嚴密には同一ではない︒ただ︑その横の關係において同一. 性ありということができるに止まる︵この黙において︑二つの訴因によつて表示される公訴事實が全く同一である前. 段の場合と異なる︶︒從つてこの場合は︑形式的一個の訴において︑實質的敷個の公訴が︑選揮的或いは揮一的に主. 張せられるという關係にあるとみるべきである.これは恰も︑民事訴訟法に存馨駕訴の併合︵唄罐︶の選霧. 併合︑及び豫備的併合の場合に封當するものと考えることができる︒しかしてこの場合︑求める到決はただ一つであ ︵1︶. るから︑裁到所はその一の主張につき有罪の判決をなすならぼ︑更に他につき到決する必要なく︑終局的には︸つの. 剣決のみがあれぼ足りる︒しかし︑その一方の訴因にρいてなされた到決は︑他の訴因による後訴を拘束する︒この. 昭和二四・一二・一四︑名古屋高裁剣︑判決特報三號六一頁等Q. ︵2︶ 馳については民事訴訟法と同一に断ずることを得ない︵後述︶︒ 註ー. 誰2 本稿八七頁以下参照︒. ︑. 二〇三︵七五︶. なお︑訴因・罰條を豫備的或いは揮一的に記載して公訴を提起するには︑数個の訴因によつて把握される公訴事實. 訴因 に つ い て.
(22) 訴囚について. 二〇四︵七六︶. 相互間に︑必ずし高涯あ髪髪必要とし塗︵翌一億六.︶.更に︑同程のな茎訴書にεて︑別個の公. 訴邊欝或陰灘糖提起す嚢と轟さ鷲.例えば︑被告人が甲奮品物喬り︵議山紳薯そ裂乙. 養却した︵諜㊥と旨蓉套合雰る.この場合︑甲と被告人との關係に漠て簸罪の釜馨貝議成す. ることができ︑また︑乙と被告人との費却の事實の中に横領罪の公訴事實を措定することができる︒しかも︑それ. は︑何れか一方のみが有罪であつて︑双方が同時に有罪となることはない關係にある︒この揚合︑公訴事實は爾者異. なるものと考えることができ︑從つて︑公訴もまた異別であり︑それら別個の公訴が︑豫備的・或いは揮一的に併合. されるということができる︒言いかえれば︑訴因の豫備的・揮一的併合の揚合には︑同一性ある公訴が︑豫備的揮一. 的に主張される場合と︑同一性のない別個の公訴が︑豫備的或いは揮一的に主張される揚合がある︒しかして︑後者. の場合には︑前者の場合とは異なり︑それぞれの訴因につき到決をなすべきであり︑また︑その一方についてなした 到決の既判力は︑他に及ばない︒蓋し︑別個の公訴とみるべきだからである︒. ︵3︶審理の進行につれて事件に甥する法律的評煩が攣化した場合. ここでは︑公訴提起の際︑ある訴因によづて評債せられた事件が︑審理の進行につれてその實膿的眞實が明かにな. り︑それに罫する評債を異にした場合が考察される︒この場合前の段階において法律的に構成された事實︵公訴事. 實︶と︑後に他の構成要件によつて評儂されている事實︵公訴事實︶とは︑同一性を保たなければならない︒この黙. につき︑刑事訴訟法第三一二條は︑公訴事實の同一性を害しない限度において︑訴因の追加・撤回・攣更を許すこと. を示している︒この公訴事實とは︑既に述べて來た如く︑訴因によつて表示せられるものであり︑それは既に法律的. 評債を経た法律的事實であつて︑前法律的な枇會的事實を指すものではない︒軍に前法律的肚會事實として前後同一.
(23) であつても︑法律的評債の面から考えて︑その間に同一性がなければ︑そこに公訴事實の同一性ありと構することは. 本稿七〇頁以下・滲照︒. できない︒これは通常︑事件の同一性の問題として論ぜられているところである︒その同一性を如何に措定すべきか ︵1︶ については︑既に蓮べたところである︒ ㎜謡耳. 一個の訴因・罰條が一個の犯. このように審理の進行につれて︑事件に封する法律的評慣が攣化した場合︑訴因は訴訟において如何なる意昧をも つものと解すべきであろうか︑︑訴訟獲展の各段階を捉えてみれば明らかであるように︑. 罪に鉗する訴追を維持しているのであるから︑その段階における訴因は︑ 最初に述べた基本的な揚合と同じく︑公訴. の原因︑民事訴訟法における﹃請求の原因﹄を意味するものと解することができる︒しかして︑この請求の原因の意. 昧をもつ訴因が︑その同一性を害しない範園内で移動するのであつて︑それは︑丁度︑民事訴訟法における訴の攣更 ︵1︶ の︑請求原因の攣更と同じ關係にあるとみることができよう︒かように︑訴訟の進行につれて訴因が攣化する場合︑. その前後の訴因の把握する公訴事實は︑同一性はあるが︑全く同一であるのではない︒しかし︑かような場合には︑ ︵2︶ 刑事訴訟の特殊性からして︑被告人の利釜のため︑後の公訴を拘束する︵後述︶︒ 謡坦 その理論構成については︑本稿六八頁及び六九頁註2滲照︒ ︸誰2 本稿八七頁以下参照︒. このように︑訴因が公訴事實の同一性を害しないで攣化する場合は数多くあるであろう︒しかし︑或る事實に封す. 二〇五︵七七︶. る訴因が︑法條競合の關係に立つ規定に則して前後評憤された揚合には︑その構成要件相互間に密接な關係があるか ら︑特にとりだして︑更に検討を加えることとする︒. 訴因について.
(24) 訴因について. 二〇六︵七八︶. の. 法條競合とは︑一の杜會的事實としての行爲が︑数個の犯罪構成要件に該當しながら︑その規定の性質上一が他を. 排斥して適用せらるべき場合である︒しかして︑それには︑鋤特別關係︑㈲補充關係︑⑥吸牧關係︑⑥揮一關係. これは︑特別規定が︑一般規定によつて憤値評憤せられる犯罪のうち︑更に特別の要件を備える. 四種があるものとされている︒揮一關係の場合は前段において述べた︒ここには特別關係︑補充關係︑吸牧關係の揚 合を考察する︒. 勧 特別關係. ものについて特にそれを評債するという場合である︒それは或る構成要件の上に︑更に特殊の構成要件が加えられた. 關係にあり︑特別法の構成要件を充足する場合は︑常に一般法の構成要件をも充足しているという關係にある︒すな. わち︑特別法の犯罪の構成要件は︑殻法の犯罪の蔑要件窪の中筍含する.例えば欝殺人罪︵躍︒︶の蔑. 吸.牧關係. これは︑全部規定が︑部分規定の豫定する犯罪を︑その中に包含して︑全部的な許債をなす場合. の關係にある︒. 要件は︑普通殺人罪︵謬九︶の襲要件を︑その中に包含し︑鴫難輻︵書三璽藩瞭感辮翠轟甲轟 襟>糊. ⑥. 補充關係. これは︑主規定の適用のない揚合︑補充規定が適用せられるという關係であつて︑例えば︑或る. である︒例えば︑窃盗正犯の構成要件は︑その中に窃盗蓄助の構成要件をも包含するとみることができる︒. @. 事實が名轡毅損の構成要件︵主規定︶を充足するに至らない場合︑侮辱罪の規定︵補充規定︶が適用されるというよ. うな揚合である︒すなわち︑主規定によつて評債し得る場合には︑常に補充規定の構成要件を充足するのであつて︑ 補充規定は主規定の構成要件中に包含せられている關係にある︒. 以上三つの法條競合の場合を概観すると︑そこに一つの共通なものが見出される︒すなわち︑特別規完の構成要件.
(25) 一方が他方の構成要件を包含ナる. は一般規定の構成要件を︑全部規定の構成要件は部分規定の構成要件を.また︑主規定の構成要件は補充規定の構成 要件を︑その巾に包含するのであつて︑それぞれその封鷹する構成要件相互間に︑ という共通の關係がある︒. これにより︑次の結論を導くことができる︒すなわち︑かように一の規定︵例︑一般規定︶の構成要件が︑他の規. 定︵例︑特別規定︶の構成要件に包含せられる場合にも︑或る事實をいずれの規定に當嵌めて構成するかにより訴因. が異なる︒しかし︑なお更に︑特別規定︑全部規定︑主規定に則する訴因を以て公訴を提起した揚合︑審理の進行に. つれて︑それらの規定の内に含まれるべき規定︵特別規完に封する一般規定︑全部規定に饗する部分規定︑主規定に. 甥する補充規定︶によつて評憤すべき場合には︑訴因攣更の手績を要することなく︑それぞれ一般規定︑部分規定︑. 補充規定によつて庭罰することがで費るであろう︑蓋し︑この場合の裁剣は︑當初豫定せられた訴因の中に包含せら. れるからである︒例えば︑自他共に親子なりと考えていた﹃子﹄が︑その﹃親﹄を殺害したという事件において︑槍. 察官が奪厨殺︵㎝雛0︶の構成要件に則した訴因をもつて公訴を提起したところ︑審理の進行と共にそれが法律上の親. 子でないことが判明したという考窮倉は︑それは普通殺人︵響九︶の訴因簑つ蕎憤嘉髪とと奮︒そ. の場合︑奪属殺人として把握された公訴事實と︑普通殺人として把握された公訴事實と・は︑全く同一ということはで. きないが︑しかし︑いわぱ︑全騰と部分の關係において同︑一性を保ちながら重なりあつているとみることができも︒ ︵1︶. 從って︑鶴殺として公訴が提起された場合︑訴因欝の識︵刑誰︶をふまず︑普嚢毒として鍵す髪とは. 二〇七︵七九︶. 許されるとしなければならない︒これはまた︑既途を未途に︑正犯を從犯に︑名轡殴損を侮辱罪と認定する揚合等に ︵2︶ ついても當嵌まるであろう︒. 訴囚について.
(26) 説ー. 訴因について. 二〇八︵八○︶. 未途︑或いは共犯等の概念は︑それ自騰が別個の犯罪構成要件を成立せしめる要素でないとして︑それは訴因を特定する意. 仙墓高裁判︑剣決特報一號一四頁︶︒しかし︑或る事實︵法的事實︶は︑. こ. 各本條の特別構成要件を基本としながらも︑な影その修正形式︵未途・共犯︶と相侯つて特定せられるものであり︑從つてま. 味をもたないとする考え方もある︵昭和二四・六・七︑. の鮎について ︑ 判 例 は 一 致 を み て い な い ︒. た︑かような修正形式も訴因を特定する意味をもつ︵同趣旨︑昭和二四・五・一二︑名古屋高裁一判︑判決特報一號六頁︶︒. 謳2 竜聡︑かような關係は法條競合の關係に立たない構成要件相互問にも認められる︒例えば︑傷害の訴因を暴行と認定する場 合の如し︒ここには法條競合の場合のみを論ずることとした︒. しかし逆の場合︑一般規定︑部分規定︑補充規定に則する訴因を以て訴追した揚合︑訴因攣更の手績を経ずして︑. それぞれ特別規定︑全部規定︑主規定に則する訴因を認定し︑それにより庭罰することは許されないとしなければな. らない︒蓋し︑最初の訴因のよつてたつ構成要件の豫想しない︑更に大きな構成要件に則する訴因によつて庭罰され. ることとなり︑最初の訴因の審到の範園以外にでると共に︑被告人に不當の不利盆をもたらすこととなるからである︒. 蓋し︑訴因は︑審到の封象を限定すると共に︑被告人への攻撃の通告状の機能をももつものであり︑被告人の防禦椹 の行使をあやまらしめてはならないからである︒ ︵1︶. しかし︑いずれの揚合でも︑一の訴因による判決の既判力は︑將來他の訴因による公訴を拘束する︒これについて. 本稿八七 頁 以 下 滲 照 ︒. は後に述べる︒ 謡ー. 以上述べたことから次のように結論することができる︒或る訴因による審判の限界は︑その訴因によつて把握され. る公訴事實︵法的事實︶について生じ︑それ以外に及ぶことはない︒公訴事實相互間に同一性ありとしても︑依壕す.
(27) る構︑灰要件を異にする毎に数個の訴因從つて数個の公訴があるとみるべきである︒この場合︑訴因は民事訴訟法にお. ける請求の原因としての意昧をもち︑英米法におけるβ額Φ焦き試霞と︑8臼昌の意味を兼ね備えているものとみ. ることができる︒しかし︑同一の公訴事實について同時に二つの構成要件にょって評憤される場合もあるのであつて. ︵法條競合の選揮的競合の場合︶︑かような場合にも︑構成要件を異にする毎に数個の訴因が威立するとみることがで. きる︒しかし︑この場合︑公訴はただ一つであり︑訴因は公訴の限界を決定する意昧をもたない︒この場合には︑訴 ︵1︶. 因は民事訴訟法における請求の原因としての意味をもたず︑むしろ︑﹃猫立なる攻撃方法﹄としての意昧をもつものと. 理論上数罪・庭分上一罪の場合. 本稿七三頁 以 下 滲 照 ︒. 解することができ よ う ︵ 前 述 ︶ ︒ 誰ー. ︵昌︶. これに該當するのは︑いわゆる科刑上一罪すなわち︑想像的競合及び牽蓮犯の場合である︒想像的競合とは︑一個. の行爲が同時に数個の構成要件に該當する場合︑例えば︑石を投じて人を傷け︑同時に器物を損壌したというような. 場合であり.牽蓮犯とは︑犯罪の手段または結果である行爲が︑他の構成要件を充足する場合で︑例えば他人の住居. に侵入し︑財物を窃取する場合などがこれにあたる︒かような場合︑訴因は科刑上の一罪に封して如何なる關係に立 つものと解すべきであろうか︒. 想うに訴因の個数決定の基準を刑事實騰法に求める限り︑この場合の訴因は︑前法律的な肚會的事實によつて決定. せられないで︑刑事實騰法が抽象的にその成立を認める各犯罪について︑その成立を認めなければならない︒從つて. 二〇九︵八一. ︶. 科刑上一罪は︑敷個の訴因の合計により表現せられるのであり︑また︑換言すれぼ︑それは本質的には敷個の公訴の 訴囚について.
(28) 訴因について. ︸二〇︵八二︶. 合計で奪の募る︵鯉竈謹瓢簾鵬蕩馳︶.しかるに從來の通説は︑以上と異馨.あ膿暴摯薩 は︑事件の軍一性の問題について︑若干立ち入つて考察する必要がある︒. 事件の箪一とは︑事件が︑訴訟法上不可分の一個の訴訟客鰹として取扱われることであり︑それは被告人の軍一. と︑犯罪の軍一とによつて限界づけられる︒事件の軍一の範園内において︑その一部を訴因とする公訴の効力はその. 全部に及び︑かつ︑その判決の既到力は全膿に及ぶのである︒犯入の軍一ということについては別段問題はない︵但. し︑共謀による共同正犯の理論を︑更に徹底せしめるならば︑共同意思主髄︑すなわち︑複数人が不可分の關係にお. いて犯罪の主騰となるのではないかとの疑間がある︶.︑ここに問題となるのは︑犯罪の輩一ということである︒犯罪. が如何なる範園において軍一であるかの限界は︑犯罪が︑刑事實艦法上の構成要件において軍一であることによつて. 決定せられる︒すなわち︑前法律的な肚會的事實としての犯罪が︑刑事實艘法上の構成要件を一個充足する場合は一. 罪とし︑訴訟法上不可分な一個の犯罪として取扱われ︑二個充足する揚合には︑二罪として訴訟法上二個の事件とし て取扱われるのである︒. この考え方に例外を認めることはできない︒しかるに從來の通説は︑この事件の箪一の概念の中に︑更に科刑上の. 一罪︑すなわち︑牽蓮犯・観念的競合犯の揚合をも含めて考えている︒例えぱ︑AとBが牽蓮犯の關係にある場合︑. その一部たるAを訴因とする公訴は︑他のかくれたBの部分をも審到の範園内に含め︑AとBとは訴訟法上不可分の. ︸個の訴訟客髄として取扱うべきものとしている︒しかし︑これは新法の下においては特に反省を要すべき事柄であ. る︒訴因は︑事件に封する法律的評憤であり︑その訴因によつて審到の封象とされる事實は︑構成要件的評憤を経た. 公訴事實であるのである︒しからば︑Aを訴因とする公訴の効力はAに止り︑Bを訴因とする公訴の効力はBに止ま.
(29) るものとしなければならない︒科刑上の一罪とは︑本來敷個の犯罪︵すなわち︑数個の構成要件を充足するもの︶で. あるものを︑庭分︵量刑︶の關係において﹇罪として取扱い︑一個の剣決をなすという場合であり︑その概念は︑構. 成要件︑または︑いわゆるその修正形式︵未遽・共犯︶のいずれにも属しない︒言いかえれば︑それは刑法典巾に規. 定されながら︑實鰹法的な意義をもたず︑むしろ︑訴訟法的な︑手績上において重要な意義をもつものということが. できる︒かような概念を以て︑犯罪が實騰的に一個なりや︑数個なりやを決すべき基準となすことは不適當であろ ︵1︶. う︒それは︑軍に刑法に第五四條及び第五〇條の規完があるからという︑ただそれだけの理由を以て是認せらるべき 問題ではない︒. 小野博士は︑﹃刑法において︑刑法五四條および五〇條が引績いて妥當する限り﹄是認すべきものとされるが︵同氏.新刑事. 訴訟法概論一三四頁︶︑これは更に︑もう一歩本質的な黙に遡つて究明する必要があろう︒. 謡ー. 要するに︑通読は︑科刑上の一罪を箪一罪として取扱い︑その一部についてなされた公訴の効力は︑その全部に及. び︑また︑判決の既到力は當然全部に及ぶものと考えている︒しかし︑この立揚は︑嘗刑事訴訟法における考察態度. を︑そのまま新刑事訴訟法の下にもち來たつたものであつて︑賛成することができない︒奮刑事訴訟法の下において. は︑事實上︑前法律的批會的事實の同一性を害しない限りにおいて︑裁到官は検察官の示した公訴事實に拘束される ︵1︶ ことなく︑自由に審理の範園を振張することができ︑また︑到決することができた︒從つて︑廣い意昧で︑前法律的. な肚會事實として一つの犯罪と見得られるならば.ワての一部を公訴事實とする公訴を以て︑他の部分︵前法律的事. 實︶をも審判しうる可能性はあつたのである︒しかるに︑新刑事訴訟法の下においては︑審判の範園は︑常に起訴欺. 二一一︵八三︶. に記載された訴因及び罰條筆つて墾嘉るの竃三謬一頸麟.︶︑その訴膠毒て示嘉て婁量實 訴一囚 に つ い て.
(30) 訴因について. 二ニズ八四︶. ︵構成要件によつて評憤されていない事實︶に封しては︑公訴の効力は及ぶべくして及び得ない︒またたとえ︑訴因と. 公訴事實を切離して考え︑公訴の効力は訴因とは離れて︑前法律的な肚會的事實に及ぶとしても︑訴因・罰條の追. 加・撤回・攣更がなければ︑それを審判することは法律上不可能である︒果して然らば︑かような審理の不能の部分. にまで︑科刑上の一罪なるの故を以て︑既判力を生ぜしめることは誤りといわざるをえない︒これに封しては次のよ. うな反論が豫想される︒かような場合には裁判官は︑訴因罰條の追加・撤回・攣更を命ずれば問題は解決するであろ. 告罪とが科刑上の一罪をなし︑非親告罪を訴因とする公訴が提起せられた揚合には︑親告罪の部分については︑被害. へ. うと︵謬︶・しかし・第天馨寝この命倉撃べき義馨−やが膿であ舞%第置馨罪と非親. ︵3︶. 者その他法定の告訴権者の告訴がない限り︑裁到官は訴因の追加を命ずべくして命じ得ない︒從つて︑この部分につ. いて審判することは︑法律上全く不可能である︒この部分に既到力を生ぜしめるとするならば︑到決確定後に告訴樺. 者が告訴をしようとしても既到力によつて封抗せられ︑告訴の實効をあげえないこととなる︒かくては被告人の利盆. を保護するに急なあまり︑被害者の利釜を不當に侵害し︑また就會の正義をも侵害するこ乏となるのではあるまいか︒. たとえ︑通説に從い潜在的には公訴の効力がその部分にまで及ぶとしても︑法律的な審判の範園は検察官の訴因罰條. に拘束されるのであつて︑それ葎逸腕した部分は審到することを許されない︒實艦的に審到の封象とならなかつたも ︵4︶ のに既到力が及ぶということは︑訴訟法的に考えられない︒既到力は︑審理の充足を前提として生ぜしめられるもの. である︒この黙に反省の鉄ける既判力理論は︑既判力の本質を理解せざるものといわなければならない︒果して然ら. ば科刑上一罪の機能は如何なるものであるかが反問せられるであろう︒私は︑科刑上の一罪は︑庭分の際の量刑にお いてのみ意義を有するものと解する︵後些︒.
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