ディカチオ、騙取金による弁済、預金の帰属者、転 用物訴権および直接訴権など』の構成(2・完)
著者 安達 三季生
出版者 法学志林協会
雑誌名 法学志林
巻 110
号 4
ページ 217‑270
発行年 2013‑03
URL http://doi.org/10.15002/00008851
試
日間
先取り特権の概念による
﹃ 価
値 の
レ イ
‑ ビ ン 円 ア ィ カチオ︑
踊取金による弁済︑
預金の帰属者︑
転用物訴
権および直接訴権など﹄ の構成
( 一 一
・
・ 完 )
安達 三季生
目次
序続本柑刑執慈の経織と目的︑防成
第 一 車 総 説 的 考 察 一先取り特権説に関する私見の特色 二 術 論 直 悼 控 訴 権 そ の 他
‑ 加 賀 山 鋭 の 紹 介 と 批 判
2鈴木線也説の紹介と批判3平野裕之説の紹介と批判
第 二 章 各 税 務 制 度 の 先 取 り 特 権 に よ る 織 成 一金銭の価値のレイ・ピンディカチオ
二回棚取金による弁済
三誤振込と収納代行者を用いた振替
預金の帰属者と山石原説(以上第二O
色三
号)
転用物訴織
保険金の直俊請求俗︑略行補助者に対する直俊諦求縮︑
使用者資任と七一五条三項
七委任契約における先取り特権│購入委託と販売委託 八 転 貸 借 に お け る 先 取 り 特 術 九三面関係における砲緩請求総 十 他 人 物 売 買 と 直 接 請 求 権 繍 論 三 者 不 当 利 得 総 の た め に
終わりに代えて(以上本号)
六 五 四
日仏
泊先
取り
特織
の煩
念に
よる
﹃倍
偵の
レイ
・ビ
ンデ
ィカ
ザォ
︑制
限金
によ
る引
語︑
的金
白川
市町
闘賞
転倒
拘訴
時制
およ
び山
健訴
山幅
広ど
﹄の
明快
(二
・3
(安
達)
一一
一七
法 学 窓 休
第
= o
巻
罰則
四号
二一
八
五
転用物訴権
( 一 )
いわゆる転用物訴掘に関して︑わが国で問題にされている重要な判例として︑問和四五年の最高裁判例(昭和
四五
年七
月一
六日
︑民
娘二
回巻
七号
九頁}と平成七年の最高裁判例(平成七年九月一九日民集四九巻八号二八O九O
五頁
)が
ある︒後者は事実上︑一定の重要な点において前者の判例を変更したものと考えられる︒前者の事案は︑念のために
詳しく紹介すると︑﹁請負人AはBの依頼によりBの持ち込んだブルドーザーを修理したが︑請負代金の弁済を受け
ずに
Bにそれを返還した︒ところがこのブルドーザーはBの所有ではなくBがCから賃借したものであった︒無資力
のた
めBが賃借料を支払わないので︑Cは賃貸借契約を解除し︑Bからブルドーザーを引き上げた︒そこでAはCに
対してブルドーザーの修理代金相当額を不当利得として返還舗求した︒但し
BC
聞では︑賃料が市場価格より安価に
設定される見返りとして︑修理代金はBが負担するという特約が結ぼれていた︒最高裁はこれを認容し︑その理由と
して﹃本件ブルドーザー修理は︑一面においてAに︑これに要した財産および労務の提供に相当する損失を生ぜしめ︑
他面においてCに︑右に相当する利得を生ぜしめたもので︑Cの利得とAの掴失のあいだに直接の因果関係ありとす
ることができるのであって︑本件においてAのした給付(修理}を受領した者がCではなくてBであることは︑右の
損失および利得の聞に直接の因果関係を認めることの妨げとなるものではない︒ただ︑右の修理はBの依頼によるも
のであり︑したがってAはBに対して修理代金債権を有するから︑AはCに対して右利得の返還翻求槌を有しないの
を原則とする(自然観耗に対する修理の場合を含めて︑その代金をB
にお
いて
負担
する
旨の
特約
があ
ると
きは
︑
BはC
に対
して
不当
利得
返還
舗求
織を
有し
ない
)が
︑
Bの無資力のため︑右修理代金債権の全部もしくは一部が無価値であるときは︑
その限度においてCの受けた利得は︑Aの財産及労務に由来したものということができ︑Aは右修理(損失)により
C
の受
けた
利得
を︑
Bに対する修理代金債権が無価値である限度において不当利得としてCに対して返還を舗求する
ことができるものと解するのが相当である(修理費用をBにおいて負担するとの特約がBとC
のあ
いだ
に存
した
とし
ても
︑
A
から
C
への
不当
利得
返還
筒求
の妨
げと
なる
もの
では
ない
三﹄
﹀︒
後者の判例の事案は︑前者のそれとかなり似ている︒すなわち﹁諦負人Aは雑居ピルの賃借入Bの依頼でピルを大
改装した︒ところがBから請負代金の一部の支払いを受けない聞に賃貸人CはBの無断転貸を理由にBとの賃貸借契
約を
解除
し︑
Bは行方不明となった︒AはCに対して残工事代金額相当額を不当利得として返還問求した︒但し
B C
閣で
は︑
BはC
に対
して
︑
Bは賃貸借に当たって権利金の支払いを免除されるが賃借ピルの改装︑修理はBが負担す
るという特約があった︒最高裁はこれを棄却する︒その理由は︑﹃Aが建物質借入Bとの契約に基づき右工事の修繕
工事をしたところ︑その後Bが無資力になったためにAのBに対する償櫛の全部もしくは一部が無価値である場合に
おいて︑右建物の所有者Cが法律上の原因なくして修理工事に要した財産および労務の提供に相当する利益を受けた
ということができるのは︑BとCの聞の賃貸借契約を全体としてみて︑Cが対価関係なしに右利益を受けた場合に限
るものと解するのが相当である︒けだしCがBとの聞の賃貸借契約において伺等かの形で右利益に相応する出損ない
し負担をしたときは︑Cの受けた右利益は接待上の原因に基づくものというべきであり︑AがCに対して右利益につ
き不当利得として返還を輔求することができるとするのは︑Cに二重の経済的負担を強いる結果になるからである︒
本件建物の所有者であるCがAのした本件工事によって受けた利益は︑・本件建物を営業用建物として賃貸するに隠し︑
通常であれば賃借入から得ることができた樹利金の支払いを免除したという負担に相当するものであって︑法律上の
原因なくして受けたものと舌守つことはできず:::これは本件賃貸借契約がBの債務不履行を理由に解除されたことに
よっ
て︑
異な
るも
ので
はな
い﹂
︒﹄
)
器先取り躍の提訴伝よる召健のレイ・ピVヂィカチォ︑踊壁民よる護預金の賃貸転開謀柏および直謀総など﹄の盤{ニ・
8{
安迫
}‑
一一
九
法 学 志 林 第 二
O巻第四号
ニ ニ
O
︿ニ
)
以上紹介したいずれの判例においても︑基本的に不当利得法理を適用し︑AのCに対する不当利得が認められ
るか否かを問題にしている︒具体的な点で両判決に共通する点を挙げると︑AのCに対する翻求はBが無資力の場合
に限られること(両判例事案はいずれもBの銀資力の場合である)︑しかし異なる点は︑
BC
聞の関係において︑前者の判
例では︑その聞に修繕費をBが負担するとの特約があったときも(したがってB
自身
が修
理し
たと
仮定
し︑
BがC
に舗
求
でき
ない
とき
も)A
からCへの請求は認められる︑とするのにの対し︑後者の判例では︑
BC
聞の契約において賃貸
人Cは賃貸借契約においてBが改装修理費を負担する代りに︑Cは権利金を免除するという負担を受ける特約があっ
た(
した
がっ
て B自身が修繕したと仮定してもBはC
に請
求で
きな
い)
から
︑
AからCへの舗求は認められないとする点で
ある
さて以上の判例は︑単純化していえば︑AとBの契約に基づいてAが出摘することによってCが利得を得た場合︑ ︒
AはCに対して不当利得返還請求をなしうるか︑の問題だといえるだろう︒さらにこれを基本的に肯定するとしたと
き︑これを認める要件としてBの無資力が要求されるか︑また
BC
聞の特約がいかなる意味を有するかが問題になる︒
この問題は従来︑三者不当利得論の一環をなす問題と考えられてきたが︑扱いに苦慮し︑判例︑学説においても
様々に議論された︒もっともその理論構成は別として︑具体的な問題の解決自体については︑前述平成七年最高張判
例の栂でほぼ固まったといってよく︑学説も概ね支持に傾いているようである(疎開﹁不当利得法﹂三八四頁参照)︒
しかし学説では︑不当利得法理から見て是認できないとする立場も有力である︿四宮﹁給付利得の当事者基単上‑一者不
当利
得の
嶋ム
ロ
l
﹂四宮鎗文集二四ニ貰以下︑内回﹁民法E償抱法﹂はど)︒筆者は不当利得制度自体が内包する︑衡平の理念による現行法制の不備を修正補充するという役割に盤みて︑不当利得晴求の要件である︑法律上の原因の有無の概念︑
損失︑利'母︑およびその聞の因果関係の諸概念が︑とかく弾力的に操作され︑暖昧な基単となりがちであることを否
めないと思う︒利得を侵害利得と給付利得に分けるいわゆる類型論は︑従来︑不当利得理論につきまとっていた暖昧
な基単を明確にするのに役立っていることは認めながらも︑三者不当利得論においては︑この類型論が果たして有効
性を
持つ
のか
︑疑
問と
いわ
ざる
を得
ない
(拙
稿﹁
振込
の全
体的
関趨
(三
﹀﹂
末尾
︑術
品沼
会一
)多
照)
︒以
上の
こと
を考
慮す
ると︑不当利得法理に頼らない︑別の理論構成によって根拠づけることを考えてよいのではなかろうか︒
(三
)
このようにして不当利得法理によらない別の理論構成が主揺されるに至っている︒鋸者自身の考えは︑結論的
にいえば︑これを直接訴備に関連する問題として考察し︑ここに先取り特栂法理を導入しようというものである︒こ
の件については前に第一章補詣で直接訴権を取り上げた際にすでに言及している︒それは野田教授からの孫引きであ
るが
︑
フランスでは︑ラベ
Fm
vZ
が直接訴掘の性質について提唱した先取り特描説は広く支持され︑﹁今もカピタ
ン・
ピカ
lルなどの有力学者によって支持されている﹂と紹介されているが︑但しマゾl富田慰霊弘教授は︑その著
替の旧判ではこの説を支持しながら︑後にこれを捨てりれた︒その理由は︑とくに直接訴掘が問題になる責任保険に
おける被害者の保険者に対する直接訴権の場合︑被害者の加害者すなわち保険契約者に対する償掘の成立する時︑保
険契約者の保険者に対する般植はまだ発生していない︑したがって存在せざる償櫛の上に先取り特権が成立するはず
がないというものであった(野図﹁フランスの責任保険法三﹂法協五六巻三号三四頁)︒これに対して筆者は前述したよう
に︑被害者が保険契約者に債権を取得するのに伴って︑保険契約者は保険者に対して︑被害者へ保険金を支払うよう
請求しうる憤植を取得し︑その債掘の上に先取り特備が成立すると解し得るのではないか︑したがって先取り特栂脱
を否定する理由にならないのではないか︑と疑問を述べた(第一軍ニ1参照﹀︒転用物訴権についても基本的にこのよ
話先取り締胞の壁一による﹃留恨のレイ・ピンヂィカチォ︑型金による弁済︑預金の語句器禁備および箇襲警丘町構成告でき︻安建ニニ‑
法学窓体
第一
一
O巻第四号
一 一
ー一
ー一
うな考えから出発し得ると考える︒もっともこれはあくまで出発点であって︑一定の改変を付け加える必要がある︒
それについては後述する︒
ところでこの問題を本格的に検討する前に︑いわば橋渡しのために︑したがって一租の思考訓練として︑前紀
最高裁判例を債権者代位栂によって根拠づける試みを検封しよう︒これは主として三宅正男教授および加藤雅信教授 ︿ 四 ﹀
の提
唱す
る説
に近
い︒
債楢者代位掘が成立するためには︑甲の乙に対する債権とともに乙の丙に対する債描が成立していることが必要で
ある︒前担平成七年最高裁判例の場合︑申の乙に対する償植は︑建物修繕代金債植であるが︑乙の丙に対する債植は
いかなるものか︒仮に乙が甲に修繕代金を支払った後においては︑(ここでは乙丙聞の特約を除いて考えると)所有者丙
が修糟によって得た利益の償還請求権であることは疑いないが︑この事例の場合︑まだ乙は甲に修繕代金を払ってい
ないから︑乙の丙に対する債権は成立していないわけである︒ここで委任及び事務管理に閲する民法六五
O
条二
項︑
および七
O
ニ条二項がに着目される(三宅﹁事務管理者の行為の本人に対する効力﹂谷口還暦こ)三三八貰以下)︒この規定によって乙は丙に対して︑丙が乙に代わって甲に修繕代金を支払うよう輔求しうる旨の代弁務硝求掘を有する︒そ
してこの代弁済崩求桶について︑甲は償拙者代位櫛に基づき︑代位行使しうることになる︒このような代弁済締求櫛
の代位行使という構成のメリットとして︑甲は丙に対し︑乙に代わって自己に直接支払えと輔求できるから︑したが
って甲以外の債権者甲ダッシュに事実上優先して弁済を受けることができる︒また︑乙の丙に対する代弁済諦求につ
いては︑甲乙聞に予め締結された特約によって︑弁済額が決まることになる︒さらに償槌者代位権という構成のため
に︑債権者代位描制度の本来の趣旨から要求される債務者乙の無資力という要件とも適合する︒そして以上のような
処理の仕方は︑前出平成七年最高裁判例による解決とも一致する︒
しかし以上のような構成にも疑問の余地がないわけではない︒とくに問題になることを挙げよう︒
第一に修繕が所有者丙の意思に反してなされたとき︑乙は丙に対して代弁済晴求掘を有しない︒したがって債権者
代位
掘の
構成
は採
用し
えな
いと
なり
そう
であ
る︒
(こ
のよ
うな
事態
の生
じる
こと
は事
実上
稀で
はあ
るに
して
も理
論上
の問
題と
して
無視
しえ
ない
Jしかし丙の意思に反してなされたときでも︑丙は現に有する利得の限度では利益の返還義務を負
う(
七O二条三項)が︑これについて代弁詩摘求から除外する必要はないのではないか︒また︑一般的にいって︑乙
が甲に債務を弁請したとき乙が丙に求償植を取得するという関係は︑委任や事務管理に相当する場合だけとは限らな
い︒この問題についてはさらに次節で︑いくつかのケlスをあげて説明するが︑これらすべての場合をも含め得るよ
うな理論構成が望ましい︒
第二に︑甲の優先弁務権についてである︒乙の丙に対する債権の内容は︑たしかに代弁務甜求権ではあるが︑債権
者平等の原則の本末の趣旨が︑丙の乙への債務履行によって乙が受けるべき利益から︑甲が独占的に満足を受けるべ
きでないとの趣旨だとすれば︑代弁済諦求権を行使したことによる利益を甲が独占することは許されないのではなか
ろうか︒代弁済の結果甲が得る利益を他の債権者に平等に分配すべきではなかろうか︒
第三に乙の無資力要件についてである︒債植者代位植の制度は︑前述したように︑債描そのものを差し押さえると
いう体制が作られていなかった古い時代に設けられ︑有体物への差押えを補充する二次的な機能を果たすものであっ
た︒このような理由から︑有体物に対する差押えでは十分な満足を得られないときに︑償掘に対する差押えが初めて
認められるということになっていたのではあるまいか︒そこから債務者の無資力要件が債権者代位権行使のための要
件として登場したのではあるまいか︒なお債務者の無資力要件は︑第三債務者の保護のためのものでは決して無いこ
話先取り抑制の患による召倒町レイ・ピyヂィ地主︑思金による弁済︑税金の露骨可保刷物語および凶器仰など﹄の農{ニ・
3(
安A S
‑ ‑ ‑
一 一 ‑ ‑
法学志林
第‑
一
O巻第四号
ニ二
回
とを付け加えておきたい︒けだし第三債務者丙はすでに弁済期の来ている債務なのであるから︑それを債務者乙に直
接払おうが︑それとも伯植者甲に払おうが︑いずれにせよ自らの債務をそれによって免れることになるのであるから︑
第三債務者にとって︑債務者の資力の有無は問題にならないからである︒(また債権者代位植は︑元来︑総償植者のため
の共
同担
保の
磁保
のた
めの
制度
であ
った
同盟
国を
考え
ると
︿ら
っと
も実
践の
運用
は︑
必ず
しも
その
よう
にな
って
いな
いが
て債
務省
の
無資
力要
件は
︑他
の償
植者
の保
護と
はな
んら
関係
がな
いは
ずで
ある
J前掲最高裁判例が︑賃借入︿修繕依頼者)の無資力を
要件としたのは︑それが不当利得法理を適用し︑賃借入に資力があれば︑修繕者の損失は生じないとしたからであろ
ぅ︒しかし革者は不当利得法理の適用によるのみでは解決の困難な問題と考えるわけである︒(後述するように︑乙の
丙に
対す
る償
梅の
上に
先取
特抱
が成
立す
ると
解す
る立
場で
は︑
乙の
幅削
資力
は要
件と
なり
えな
い)
( 五
)
以上みたように︑債植者代位栂を用いた理論構成では不十分である︒
筆者は︑最終的見解をつぎのように提示したいと考える︒甲の乙に対する債権の存続中に乙の商に対する債権がま
だ成立しておらず︑乙が甲に弁済した後初めて乙の丙に対する債描︿通常︑求償制の形をとる)が発生する場合につい
ては︑﹁仮に︑乙が甲に支払ったとき乙が再に対して取得するはずの債権(通常︑求償総)を︑現在(実際にはまだ乙か
ら甲への支払がなされていない段階で﹀乙が丙に対して取得していると見倣して︑この債権の上に甲は乙に対する債権担
保のために先取り特掘を取得する﹂と︒この構成によって︑甲が直接に丙に対して晴求し得ること︑他の償栂者甲ダ
ツシュに優先して弁済を受けることができること︑また丙の甲への支払いが︑丙の乙に対する支払いと乙の甲に対す
る支払いとのこつの意味を有すること︑さらに丙から乙への支払いが無効であること︑をすべてを説明できる︒これ
らの効力は債権の上の先取り特権を認める通常の場合の効力と変らない︒ただし厳密にいえば︑本来は乙が甲に支払
った後に乙の丙に対する求償植が成立すべきところを︑その支払いの前に求償掘が発生すると提制する構成であるか
ら︑厳密にいえば︑先取り特栂構成に単じた構成と呼ぶべきかも知れない︒
この定式は︑現行法上明文の形で定められているものではないが︑しかし民法四六四条と手形法三ニ条三項︹およ
び同法八条ニ文﹀の規定の基礎となっている語別である︒四六四条は﹁連帯債務者又は不可分債務者の一人のために
保証をなしたる者は︑他の債務者に対してその負担部分のみに付き求償を有す﹂となっているが︑例えば甲に対して
乙︑丙︑丁が九
O
万円の連帯債務を負っているとき︑戊が︑乙一人のために保証しているとき︑仮に戊が乙に代わって︑甲に九
O
万円支払ったとすると︑戊は︑他の辿帯債務者丙︑丁に対してそれぞれの負担部分三O
万円の求償樹を取得する︒以上のような関係を前提にして︑乙の保証人戊が甲に九
O
万円支払ったとき︑戊は乙に対する九O
万円
の
求償権を取得するとともに︑丙と丁に対して︑直接に︑それぞれ三
O
万円づつの求償権を取得する︒この直接請求権の基礎となっているのが︑前述した定式にほかならない︒
次に︑手形法三二条三項は︑手形保証人に関する規定であるが﹁保証人が為替手形の支払いをなしたるときは保証
せられたる者及びその者の為替手形上の債務者に対して為替手形より生ずる権利を取得す﹂と定める︒約束手形に引
き直
して
見る
と︑
Aが約束手形の振出し人︑Bが受取人かつ裏書人︑C
が世
襲曹
人で
所持
人︑
PがBのための手形保
証人である場合において︑仮にPが被保証人B
に代
わっ
て︿
手形
と引
き繰
えに
﹀支
払う
と︑
PはBに対して求償植を取
得する︒その償還義務者たるB
がこ
れに
応じ
て︑
︿手
形と
引き
換え
に)
支払
うと
︑
BはAに対して手形金額を諦求し得
る︒以上の関係を前提にして︑手形法同条号は︑所持人Cに支払った保証人P
は ︑
Bに求償植を取得するとともに︑
直接に
(B
を経
伝い
で﹀
Aに舗求することができる旨を定めている︒この直接舗求権の基礎となっているのが︑まさ
に前述した定式である︒
話先
取り
曜の
提廷
によ
る詔
恨の
レイ
・ピ
ンデ
ィカ
チォ
︑関
取金
によ
る書
︑重
詰塁
︑首
謀抱
およ
び前
諜樹
など
﹄宿
成{
二・
8
安摘
さ二
二五
法学志休
第一
一
O巻第四号
一 =一 占
ハ
いいかえれば︑前掲二つの条項は前述の方式を具体化したものであり︑前述の方式は一般的に承恕されるべき普週
的な法則ということができるのではなかろうか︒この定式は︑他にも適用されうるいくつかの事例がある︒これにつ
いては次項で取上げよう︒
なおこの定式については︑民法四六四条に関して︑すでに拙著債権総論講義一七五頁で︑また手形法三二条三項に
関しては︑同じく拙著﹁手形・小切手法の民法的基礎﹂一二九買および拙著﹁﹀=宮
g a
5 4
Z o
江田
島田
老冊
目宮
市‑
ロロ
品目
n z
n r
g n
F Z
﹂m・
8
で論じていることを指摘しておきたい︒もっともそこでは直接晴求植の関係の成立について述べているだけで︑先取特権の成立については論じていない(ただしこの点について念のために付税すると︑債縮者甲の
第三
債務
省丙
に対
する
直接
舗求
織を
恕め
るこ
とは
︑す
でに
第一
章二
で述
べて
いる
よう
に︑
甲の
乙︿
中間
債務
者)
に対
する
償抱
につ
いて
︑甲
ダッ
シュ
(乙
に対
する
甲以
外の
償継
者)
に優
先し
て︑
乙の
丙に
対す
る償
蜘拙
から
弁済
を受
け得
る御
利が
甲に
認め
られ
る︑
と
いう
意義
を有
する
︒し
たが
って
乙の
丙に
対す
る償
織の
上に
甲の
ため
に先
取り
柏村
継が
認め
られ
るこ
とと
実質
的に
なん
らを
異な
るこ
と
はな
い︒
単に
﹁先
取り
特儲
﹂と
いう
名称
を付
する
か否
か︑
だけ
の差
異に
過ぎ
ない
J︒
因みに前述の定式を前述の最高裁判例の事案に適用するとどうなるかを考察しよう︒昭和四五年判例の事案の
場合︑仮に︑賃借入すなわち修理依頼者Bが修繕者Aに修理代金を支払ったとしたとき︑Bは所有者Cに対してその
2ハ
)
額について償還請求権を取得するか︒事案では︑予め修理費をBが負担する旨の特約がBとCの問で交わされていた
ので
ある
から
︑
BからCへの求償植は成立しない︒したがって結局︑A
は ︑
Bに対して修理代金の鞘求はできても︑
Cに対して直接摘求することはできない︒その際︑Bの資力の有無は問題にする必要はない︒次に平成七年の判例の
場合︑仮に︑賃借入Bが修理者Aに修理代金を支払ったとすれば︑元来はBはCに対して償還請求権を取得するはず
であるが︑事案では︑権利金が免除される代わりに︑修繕代はBが負担するとの特約があったのであるから︑結局︑
BからCへの求償掘は成立しない︒したがってこの関係を前提にして前掲の定式をあてはめると︑結局︑AからCに
対し︑直接に請求することはできない︒ここでもBの資力の有無は問題とならない︒
なお
資力
の有
無を
問わ
ない
とす
る私
見の
根拠
につ
いて
は︑
第一
章
1イ
末尾
で︑
また
届取
金に
よる
弁済
に閲
迎し
て第
二章
‑一
繍鋭
ウで
詳し
く述
べた
︒
念の
ため
︑こ
こで
簡単
に述
べる
なら
ば︑
すべ
きで
ある
から
であ
る︒
一般
に先
取特
継の
成立
につ
いて
は︑
債務
省の
無資
力が
要件
とな
らな
いこ
とと
対応
して
廻解
頼 ん で
措 産修 動
し 保
て 存も の
ら 先
つ 1111
た り
t 詰
よ (
つ ニ . . 0 よ
る
き
と .J.I
義経 産 草
壁 郡
先
の,'‑: マ
取 い
h て
持検
権 討が し
問キ
題
t L
E c
五堕 。
落 語・
z甲 の動で産
t厄、の
正 、 話
B 人
が B
A が
に 自
修 的措 物
代 を
金 A
を に
七
支払ったとすると︑それが保存費に相当する限り︑BはCに対して︑求償櫛を取得する︒そしてこの求一償掘の満足を
得るために目的物の上に動産保存の先取り特権(三ニO条)が成立する︒この関係を前提にして︑前述の定式を適用
すれば︑次のようになる︒すなわち目的物の上の先取り特権によって担保された︑BのCに対する債権それ自体の上
に ︑
AのBに対する修繕代金債権を担保するための先取り特権を︑Aは取得する︒ここでは先取り特掘の上にさらに
先取り特掘が成立するといういわば先取り特植の二重構造の形が現れるが︑不合理なものではなく︑決して理解の困
難な形ではない︒なおAがBから頼まれて修繕した際に︑目的物をB所有の物と誤信したとき︑=二八条の適用によ
り ︑
Aは ︑
Bに対する修繕代金値掘の担保のために︑その物の上に先取り特掘を取得する︒これをAが行使してBか
ら債権の満足を得た場合については︑BがCに求償するにあたって︑その物の上の先取り特描はすでに消滅している
のであるから︑これを再び行使することはできないのはいうまでもない︒
話先
取り
福島
念に
よる
E g z ‑
ピン
ディ
カ千
三預
金に
よる
書︑
望白
川商
資器
製値
およ
び降
聾砲
など
﹄の
農三
・3
圭翠
ニニ
七
法学志体
第一
一
O巻第四号
ニ二
八
̲.̲
1'¥
保 険 金 の 直 接 請 求 権
︑ 鹿 行 補 助 者 に 対 す る 直 接 請 求 権
︑ 使 用 者 責 任 と 七 一 五 条 三 項
賀任保険とは︑被保険者が法律の規定もしくは契約により第三者に対して一定の給付をする責任を負うことに
なった場合に︑その損害の唄捕を目的とする保険をいう︑とされる︒︹有斐閣﹁新法徳学辞典﹂)したがってその本来の
趣旨からすると︑保険契約者すなわち被保険者が披害者たる第三者に給付(損容賠償)をなした後に︑その給付額に (
一 )
相当する額について保険者に対して保険給付を諦求しうる︑とするのが正当なはずである︒けだし被害者が被保険者
に対して損害賠償債権を取得したからといって直ちにこれを行使するとは限らず︑したがって被保険者に直ちに保険
金によって現捕さるべき摘曹が発生したことにはならないし︑また被害者が被保険者に対して損害賠償晴求をなした
ときでも︑その後免除する余地も無い訳ではないからである︒(もっとも近時の通説は︑波容者が彼保険者に対して捌寄贈
俄締
求を
した
時点
にお
いて
︑被
保険
者の
保険
者に
対す
る保
険金
輸求
織が
発生
する
と解
して
いる
(向
上﹁
新法
律学
辞典
﹂多
照︒
この
よう
に解
する
効果
とし
て︑
その
時点
で彼
害者
は加
審者
すな
わち
被保
険者
に対
する
債権
の満
足を
得る
ため
に︑
被保
険者
の保
険者
に対
する
保険
金請
求績
を差
し押
さえ
るこ
とが
でき
︑ま
た被
保険
者の
無資
力の
とき
には
償継
者代
位権
を行
使し
て保
険者
から
の支
払い
を求
める
こと
も可
能と
なる
J
しかしいずれにせよ第三者の側からいえば︑第三者は加害者たる被保険者に調求しうるのみで︑直接に保険者に踊
求することはできないとするのが建て前に則しているはずである︒しかし一方で︑被保険者が無資力で︑保険者に資
力のある場合を考え︑また他方で︑被害者の取得する損害賠償債権の発生と被保険者が保険者に対して取得する保険
金硝求権の発生との聞に緊密な因果関係が存在することを考慮すると︑被害者を保護するためには︑被害者の保険者
に対する直接繭求掘を招め︑また被害者が他の一般債植者に優先して保険金の支払いを受け得る処置を講じることが
必要である︒そしてこのような扱いは保険者と被保険者の聞の保険契約の趣旨に逸脱してはいない︑と言い得る︒そ
こで両法六六七条は保管者の寅任保険に関する直接請求植を規定し﹁賃借入その他他人の物を保管する者がその支払
うことあるべき損害賠償のためその物を保険に付したるときは︑所有者は保険者に対して直接にその損害の填捕を蹄
求することを得﹂と定める︒このように他人の物を保管する者の損害賠償義務については︑特別規定によって被害者
たる所有者から保険者に対する直接舗求権が認められ︑また優先弁済極も認めている︒それではこの規定を他人の物
を保管する者についての賀任保険以外の他の質任保険一一般についても拡強して適用することが可能であるか︒立法論
としては拡張適用が必要であると認めるのが学説上有力であるが︑解釈論としてこれを肯定すべきだとするのは︑ま
だ通説とはいえないと恩われる︒
迫阻l
利益
衡盤
の見
地か
らみ
て望
まれ
た︑
右の
よう
な解
決は
︑後
にあ
らた
めて
取上
げる
︑最
近の
保険
法の
改正
によ
って
実現
され
るに
至っ
た︒
しか
しそ
の理
治的
根拠
をい
かに
解し
︑い
かに
理桂
昌構
成す
るか
が︑
さら
に論
じら
れな
けれ
ばな
らな
いが
︑以
下の
説明
は
これ
を明
らか
にす
るの
に役
立つ
でを
のろ
う︒
しかし筆者は前項の転用物訴掘に閲して述べたように︑乙が甲に対する債務を支払ったときに︑その効果として︑
乙が丙に対して償逮捕求権を取得するという法体関係があるときは︑あたかも乙の甲に対する債務負担を生じるのと
同一の事実によって乙が丙に対して債権を取得する場合に捌じて扱うべきである︑と考える︒すなわち実際には乙が
申にまだ支払っていない段階において︑あたかも支払いがなされたことによって求償植が発生していると同じく扱い︑
この求償備について︑甲は直接にこれを行使することができる︑と解する︒そしてこのような甲の丙に対する直接蹄
求植の根拠として先取り特植を援用する︒すなわち甲は乙に対する債栂の担保のために乙の丙に対する債描の上に先
取り特権を取得するから︑甲は丙に対して直接輔求掘を取得する︑と解するわけである︒
話先
取り
締胞
の信
念位
よる
召儲
申レ
イ・
ピン
ヂィ
カチ
オ︑
制限
定よ
る翼
預金
の側
戚骨
守荷
物語
およ
び蹴
韓仰
など
﹄白
隠成
{ニ
・8
(安
迫}
‑一
二九
法 学 志 休 第 二
O巻第四号
二三
O
以上述べた定式を責任保険の場合に適用すると︑第三者たる被害者が加害者たる被保険者に対して損害損害賠償債
植を取得すると同時に︑それが支払われたと看倣され︑その結果被保険者の保険者に対する保険金請求権が発生する と宥倣される︒そして第三者たる被害者が被保険者に対して取得する賠償制求権の担保のために︑被保険者が保険者
に対して取得すると看倣されるところの保険金給付請求惜の上に先取り特植を取得する︒その結果第三者たる被害者
は保険者に直接請求権を取得し︑また被害者は他の債権者に優先して弁済を受けることができる︒そして責任保険の
場合︑保険者は第三者たる被害者が直接訴備を有することを当然に知っている︑もしくは知り得べきであるから︑い
わゆる不完全直接訴楢でなく︑完全直接訴掘が成立する︒したがって保険者が被保険者に支払っても無効な支払いと
なり︑改めて被害者に直接支払う義務を免れることはできない︒また直接請求権を行使する場合︑その範囲は︑
で︑被害者の被保険者に舗求しうる限度で︑また同時に被保険者が保険者に淵求しうる限度に限られる︒
方
追記2前に一言した︑最近の保険法の改正(平成ニ0・六・六制定︑平成ニニ・四・一施行)による彼害者の保険者に対する直
接請求権および先取特権の理論的根拠ないし理論構成を︑右のように解することによって︑被害者︑保険契約者︑保険者の三者聞
の具体的な法律関係の解明が容易になると思う︒
なお自動車損容賠償責任保険や原子力鍋寄陪償保険のように︑法律によって強制加入とされる責任保険においては︑それに対応して︑加害者たる被保険者には無過失責任に近い貨任が認められ︑その保険者の給付すべき保険金額については法律で一定の額が定められている︒また被害者の直篠繍求槌を差押えることはできない︑と定められている︒差押え禁止規定は︑それによって被害
者が保険金額を現実に受け取ることを可能にする趣旨であるから︑この也旨からすると︑保険者に対する被保険者以外の他の一般債櫛者からの︑保険金に対する平等な弁済を求める申し入れを被容者は拒むことができる︑と解すべきではなかろうか︒つまり被
保険者に対する他の一般償植者︑に対して優先弁済を受け得ることは︑被保険者の保険者に対する請求権の上の先取り特権の効果
として認められることはいうまでもないことであるが︑それだけでなく︑保険者に対する他の一般債権者に対しても優先弁務を受けることができると解しうる余地があるのではなかろうか︒なおこの点を特に指摘する理由は︑通常の責任保険の燭合には︑被害
者た
る第
三者
の保
険者
に対
する
直接
請求
抱に
関し
ては
︑被
保険
者に
対す
る後
書者
以外
の他
の‑
般償
継者
から
の配
当製
求に
つい
ては
︑
これ
を偲
み得
るの
は当
然で
ある
が︑
保険
者に
対す
る被
保険
者以
外の
他の
一般
償抱
者か
らの
配当
要求
は拒
むこ
とは
でき
ない
(と
いう
のは保険者に対する他の一般債継者に対して優先弁済揺を主張しうる根鎚としての一般先取り特権は認められていないからであ
る可
以上
の盟
を明
らか
にす
る必
要が
ある
と考
えた
から
であ
る︒
補 論
しかし翻って考えると︑
一般
論と
して
︑
BのCに対する債権を差押禁止債権とすることは︑それによってBに
対する償植者たるAの犠牲においてBに現実弁済の利益を与えるものであるが︑しかし他方︑BのCに対する償掘に
一般の先取り特極を認めることは︑それによってB以外の他の一般債権者たるBダッシュの犠牲においてBに優先弁
済栂を与え︑十分な弁済の利益を与えようとするものである︒このように両者はBに確実な弁済を与えようとする点
では共通するが︑しかしその方法については違いがある︒Bに両方の利益を与えることはBの保護のためには望まし
いことではあるが︑一方だけが与えられ︑他方は与えられないという解決は必ずしも背理であるとはいえない︒実定
法の規定でも︑現にそのような事例は少なからず見出だされる︒たえば給料情槌(および賞与や退職年金など)は原則
としてその四分の三に相当する額が差押禁止債権であるが︿民執法一五二条)︑他方︑闇人給料については︑最後の六
か月分について一般先取り特権が認められている(民三O
八条
(追
肥﹀
なお
この
規定
は︑
平成
十五
年に
全文
改正
され
︑﹁
庖周
関係
の取
得柏
村櫛
は︑
給与
その
他債
務省
と使
用人
らの
聞の
周周
関係
に基
づい
て生
じた
債総
につ
いて
存す
る﹂
と改
めら
れた
)︒
この
よ
うな事怖を考直すると︑自陪法で被害者の保険会社に対する直接請求権について︑これを差押禁止債権とする規定が
あるからといって︑この債権が一般の先取特描によって保瞳されなければならないと解することは︑立法論としては
ともかく︑現行法の解釈論としては︑無理であろう︒
語能り富町田霊位よる冨也君イ・ピンヂィカチォ︑側壁による弁済︑預金田富卦刊紙刷物語および鼠器削など﹄の理{ニ・
8(
安迫
}二
三一
法 学 志 林 第 二
O巻第四号
一 一 一
ー一 一 一
追記3a前に第一章二1の末尾近︿︑︿追記)として簡単に取上げたように︑岩崎稜教授(﹁フランスにおける責任保険成立過程および
被害者の直接請求権﹂)によれば︑近時のフランスの責任保険に関して︑被答者の保険者に対する直接請求織を基礎付ける有力な
理治構成として先取り特俗説と留阻義務脱が挙げられ︑その優劣が治じられている︒この問題は先取り特楢税を採る私見の立開明か
ら見て重要な問題なので︑やや詳しく紹介し︑かっ論評しよう︒先取り持椴説に対する批判として︑この立湯は﹁保険契約者が保
険金債慌の抱利者であり︑かっ被害者が保険契約者のこの権利の上の先取り特倍付き債権者であることを前提とする﹂︒けだし
﹁先取り特櫛の本体的効果は︑債務省の財産に腐する所の対象になる財貨上に︑他の償抱者に優先して︑先取り特術者に彼の抱利
を行使させる事である︒所論の濁合︑これは保険金が保険者から保険契約者に支払われたことを前提する︒この点において︑先取
り特抱説は二重の意味において成立不能である︒第一に︑保険者の支払った保険金は保険契約者の総財産に混同しさり個別不可能
となる︒この放にこそ︑法律が保険者に保険金支払いを祭止するのだ︒第二に︑この保険者の留凶義務により保険契約者の保険金
償継が不存在となるから︑被害者は保険金入手のため先取り特織を利用することができない︒﹂(以上の引用文の前段は冨富市白色︑
後段は回
S Z
E
の著書からの引用である)︒そして﹁民法二O九五条の定義する所によれば︑先取り特権とは償備の性質上︑あ
る債権者が他の悩術者に優先する御利である︒また保険金に対して排他的抱利をもっ被審者は他の償継者の競合も受けない:::︒
保険者の留国義務は被害者を彼が賠償を受ける時まで保険金債栂者たらしめる︒排他的債総省たる被害者にはいかなる競合も生じ
ない︒被害者が先取り特権者であるとの表現は︑たかだか︑この被害者に留保される排他的利益を特徴︐つける便宜上用いうるにす
ぎない(以上は回
s a
の著脅からの引用である)︒以上の引用文に続けて︑岩崎教授は次のように結翁︐つける︒﹁要するに︑先取
り特権説は他の債権者を排除するという効果の商に岡山われて︑被害者の儲利がこの効果を生じさせる機能締造の検討を怠った現象
論である︒:::保険契約者の他の償継者は保険金債権につき全く権利をもたない︒競合しえないのではなく︑抽出合問題が生じない
のである﹂と結ぷ(香川大学経済治援︑=二巻一号四一O
頁 ) ︒
b同教授は先取り特槌説(およびその他︑第三者のためにする契約説︑更改
g g
p
当説︑僚組移転説などについても)を批判し︑留置義務説が現在の遇税・判例の採る処となった︑としてこれについて次のように紹介される︒﹁直接訴植の基礎に関する理
路総成がすべて何等かの欠陥をもっ故︑この問題は結局︑法文を忠実かつ繁盛に解した留置義務0・
o v ‑
岡‑
田﹃回三恒仲恥田山向EBO03)脱
がその抽象性ないし無内容性により最も無難なものと見られ︑最近の多数説となった︒判例もまたこれに従う﹂︒この説は﹁保険
契約者が賠償義務を履行するまで︑保険者に被害者以外の者への支払いを禁止する﹂旨の一九三O年法第五三条が規定する﹁保険
者の留置義務﹂から被害者の直接請求植を締結するのであるが︑この鋭の特徴に閲する同教授自身の論評として﹁この説によれば︑五三条は被害者に固有な法定直接請求権を創設したことになるが︑その規定の間接性により︑この権利の内容・構造は全くの白紙
である︒この点はまたこの説が遇税化した原因の一でもあるが︑その継利の内在的な究明は解釈に一任されている﹂とされる(前
倒四
‑ニ
頁)
︒
Cさて以上に紹介したようなフランスにおける︑先取り特細説に対する批判の内容は︑本稿第‑章二1の中段で取上げた
宮白
NS
Eの批判と基本的には異ならず︑これを般術しただけともいえるが︑いずれにせよ先取り持組鋭の純粋な形に対する批判
としては全く正当である︒しかし筆者の主張する先取り特権説に対する批判としては当たっていない︒というのは筆者の説は︑純
粋な形での先取り特栂税を変容したものであり︑正砲には﹁準・先取り脇村梅説﹂というべき内容だからである︒ただし私見で︑仮りに被害者甲の保険契約者乙に対する賠償請求植の発生と同時に︑それが履行されたと仮定したとき︑その結果発生するべき乙の
保険者丙に対する保険金蹴求抱の上に︑甲の乙に対する賠償鏑求継の担保のために︑先取り特継が発生すると述べたが︑現実には
甲の乙に対する賠償輸求継が発生していないのだから︑現実には乙の丙に対する般榔も発生しておらず︑したがってその上の先取
り特備も発生する余地はない︿まさしくフランスの通説の批判するとうりである)︒しかし敢えて﹁仮りに:::ならば﹂と鎚宮するのは︑通常の前回緩前求抱の発生による先取り特櫛のケ1スとの関連性を明磁に袋現し︑具体的な法知関係の処理について︑通常の直後繍求憎の法律関係の処理に取じた処理の仕方を提供しうるためである︒例え
ば︑甲の丙に対する直鑓鏑求権の発生の前に︑丙が乙に対して取得した抗弁事由をもって丙は甲の直接輔求に対抗しうる︒しかし
甲の問に対する直接請求槌発生の後に丙が乙に対して取得した事由をもってしては︑丙は悶・の直接繍求権に対銃しえない︒この関係を推治するためには︑﹁仮りに:::﹂の論法が有益であり︑必要である︒具体的な事例としては︑前に引用した︑転用物綜楢に
閲する判例の事案で問題になった︑物の所有者たる賃貸人丙と賃借入乙の間で賃貸借契約にあたって締結された︑修総費用を乙が
負担するとの特約の効果として︑修締者甲は賃貸人丙に対する直僚組の行使が据まれる関係を想定されたい︒もっとも一般簡としてここで注意すべきことは︑自賠法で定める完全臨後綿求憎の場合と普通の不完全砥倭舗求砲の場合とで︑直後舗求継者甲に対抗
しうる︑丙の乙に対する対抗嚇自の発生の時期が異なることである(第一章一5イ後段︑同I前段︑第二軍四
27
参照
)︒
また
細
かいことであるが︑ここで断っておきたいことを述べると︑自賠法での直接請求搬の場合︑損害事故の発生の後に保険者丙が契約
者乙に対して反対債権を取得しても︑被害者甲の保険者丙に対する直接請求権の行使に対して相殺をもって対抗し得ないのはいうまでもないが︑これと異なって︑損害事故の発生の前に保険者丙が契約者乙に対して取得した反対債権ならば︑本来は︑直接請求
以泊先取り詰白慨念による召舗のレイ・ピyディカチォ︑摺金による語︑預金由帰属材︑開担俗および磁器砲はど﹄の護(ニム窃︹安逮)二三=一
法繁志体
第一
一O巻第四号
二三
四
継者甲に相殺をもって対抗しうることになるはずである︒しかしここで差押え禁止債織をもって受動債権となし得ないとの民法五
一O条が問題になる︒自隠法による直出償請求権は正しく差押え築止償植であるから︑これをもって受動償織となしえないわけであ
また先取り特俗説によってはじめて︑被審者甲の保険者丙に対する直後締求権の行使に対して︑丙は保険契約者乙の被害者甲に る ︒
対する抗弁事幽をもって対抗しうる理由も容易に説明し得る︿償措質に舶じて考えればよい︒前述の節回義務説では説明が困難で
はなかろうか)︒もっとも録者の主張する﹁郁・先取り特権説﹂の羽合︑前述のように︑現実には乙の丙に対する保険金請求櫛が
発生していない段階において︑それが発生すると仮定し︑その上に先取り特織を認めようとするのであるから︑現実に合わない理
論構成だと批判されるかもしれない︒このような批判に対しては︑そもそも理論構成というものは現実を解明するための手段であ
り︑観念的な機成物であって︑いわば鏡に写った平面的な現実像そのものに拘る必要はない︑と反論したい︒d岩崎教綬が指摘されるように﹁留阻義務説﹂がフランスの通説・判例だとして(もっとも同教授は︑若干の下級審判例におい
ては︑先取り特細説を保周するものもある旨を注の中で紹介される︒前倒四一一頁注一一参照)︑同教授がこれに対するコメント
として述べられているように﹁この継利の内容︑構造は全く白紙であり﹂﹁その抱利の内在的な究明は解釈に一倍されている﹂と
するならば︑このような説は︑果たして﹁理論術成﹂の名に銅応しいものといえるか︑はなはだ疑問である︒これは単に︑法規の
定めるところを言い換えただけではなかろうか︒理論櫛成といえるためには︑多かれ少なかれ︑所与の規定の内容について︑それ
が民商法の体系のなかで如何なる地位を占め︑他の法制度との如何なる関連性を有するかを︑明らかにし︑具体的な問題の処理あ
るいはその解明に有周な指針を与えるものでなければならないと恩う︒﹁この権利の内容・構造は全く白紙﹂であっては︑理論僻
成として無意味ではなかろうか︒もっとも︑理論構成にも︑妥当な正しいものとそうで無いもの︑誤ったもの︑とがあるのは当然
である︒前述したような盟鈴構成の課題により良く応えるものが侵れた国治椀成である︒e終わりに︑わたしは閣総
m
成が︑単に見たままの現実像を平面的に燦写するだけのものではなく︑現実をより正しく解明するための手段としての観念的構成物であることを再度強調したい︒この事はよ記のような直後請求継における﹁串・先取り特樹鋭﹂
についてあてはまるだけでなく︑筆者がかねてから主張している︑指図︑手形・小切手︑振込み︑債総線波における債務者の異議
なき承諾などの檎成原理としての︑﹁仮定的債指譲渡における仮定的債務者の処分綬槌﹂の概念についてもあてはまるからである︒
(もっとも翻って考えると︑既存の法制度も法概念も︑その形成の当初においては︑多かれ少なかれ︑概念的構成物として成立し
た︑というべきかも知れない)
履行補助者の故意・過失について︑債務者は債務不鹿行責任を負う︒これは判例・学説において確立された瑚 別である︒債務者が債務不履行責任を果たして︑損害賠償を支払った場合︑債務者は履行補助者との聞の関係に基づ
︿ ニ ﹀
き︑すなわち委任契約や寄託契約あるいは雇用契約に基づき償還を繭求しうると解するべきであろう︒そして前述し
たよ
うに
︑
一般的法理として︑乙が甲に対する債務を履行したときに︑乙が丙に対する求償植を行使し得るという関
係がある場合には︑甲は乙に対する債権の満足を得るために︑乙が甲に支払った場合に丙に対して取得するべき求償
描の上に先取り特植を取得する︒したがって甲は丙に対して直接硝求掘を取得し︑また甲は︑乙に対する甲以外の他
の一般債権者に対して優先して弁萌を受けることができる︑と解すべきであろう︒履行補助者の故意・過失による債
務者の債務不履行責任に関する履行補助者自体の賞佳に閲して︑﹁鹿行補助者は債務を負わないから︑賀圧を負わな
い﹂と説明する学説もあるが(平井宣雄﹁償縮総論・ニ版﹂八八頁﹀︑箪者は履行補助者たる丙自身の賀任について︑前
述したところにもとづいて︑乙の債務と丙の債務との二重の債務不履行責任が結合した結果成立する直接責任を負う︑
と表
現し
得る
と思
う︒
(三
)
被用者の故意・過失よる不法行為によって使用者は不法行為賀任を負・つが︑使用者が披答者に対して損害賠償
を支払ったとき︑使用者は被用者に対して求償植を行使し得る(七一五条三項﹀︒ここでも被害者の被用者に対する直
接請求権が問題になる︒筆者は︑履行補助者丙の故意・過失による債務者の債務不履行責任の場合と同様に︑被用者
そしてその前提として先取り特掘が成立する︑と解すべきだと考える︒すなわち
被害者甲は︑乙に対する損害賠償輔求槌の満足を得るために︑仮に使用者乙が被害者甲に賠償した場合に使用者乙が に対して直接舗求掘が発生するし︑
試論先取り誌の霊による召俄自主・ピyディカチォ︑勝器包よる護預金回帰凶弾刊紙矧謀総および直接織など﹄の農(ニ
‑ g (
安越
工言
豆
第四号
被用者丙に対しで取得すべき債務不履行にもとづく損害賠償諦求権の金額に相当する額についわ︑被用者丙から直接 法学窓枠仲第一一O巻
二 一 ‑ ヱ
ハ
蹄求し︑その支払金額について︑甲以外の他の償植者に優先して弁済を受けることができる︑と解すべきことになる︒
ここでも︑使用者責任を負うべき使用者が無資力だが︑披用者には資力があるような場合(実際には稀なケl
スで
ある
が皆無とはいえなどを考えると︑以上のような解決が妥当であることが明らかであろう︒
七
委任契約における先取り特権││購入委託と販売委託
( 一 )
甲︑乙聞の委任契約に基づいて︑乙が甲のために物品を購入するとき︑あるいは物品を販売するとき︑もし甲
が乙に代理植を与えて︑乙が甲の代理人として購入し︑あるいは阪売するならば︑乙が購入した物の所有掘は直接に
甲に帰属し︑あるいは乙が売却したとき発生する相草ム刀丙に対する代金倒掘は直接に甲に
隅するから特別の問題はm m
起きない︒しかし乙がいわゆる間接代理人として︑甲のために乙の名で取得した物の所有権は︑一旦は乙の所有に婦
属するとともに︑乙は甲に対して所有権を移転すべき債務を負う︒また同様に乙により乙の名で丙に売却されたとき
は︑丙に対する代金債権は一日一は乙に婦属するとともに︑甲に移転すべき債務を負う︒右に述べたような乙による物
︿こ
こで
はさ
しあ
たっ
て特
に動
産の
場合
を問
題に
する
Vの所有惜の取得あるいは丙に対する代金倒惜の取得と︑これらが甲
に移転するまでの聞の時点において︑乙に対する他の債植者甲ダッシ品が差し押さえた場合には︑本来︑甲は第三者
異識の訴えによって対抗することはできないはずであり︑またその聞に乙が破産したときも問機に甲は取り戻し描を
もって対抗すことはできないはずである︒そこでまず︑このような差押えや破産の前に所有権あるいは代金債権が甲
に移転したと考えることはできないか︑言い換えれば乙が所有権や代金債権を取得するのと同時にこれらの権利が甲
に移転するとして扱うことができないかが問題となった(これに閲しては︑乙による所有惚あるいは代金償織の取得と同時