『
正
法
眼
蔵
聞
書
抄
』1
坐
禅
箴
口
語
⇔
1
訳
の
試
み
南 嶽 示 日、 汝 為 学 坐 禅、 為 学 坐 仏、 是 ハ 坐 禅 カ ヤ カ テ 坐 仏 ナ ル 道 理 ヲ ノ ヘ ラ レ タ リ 、 ス ヘ テ 四 威 儀 ハ 皆 仏 行 丶、 何 ソ カ ナ ラ ス シ モ 坐 ヲ 本 ト ( 五 七 三 a ) ス ル ヤ ト 云 フ 疑 ア リ ヌ ヘ キ ヲ、 四 威 儀 ノ 中 二 、 坐 ハ コ レ 大 安 楽 ノ 法 丶 ナ ム ト 云 フ 事 ハ 、 ア タ ラ サ ル 詞 丈、 仏 法 ニ ハ 善 悪 勝 劣 ヲ タ テ 、 能 所 彼 此 ノ 差 別 ナ シ、 イ カ テ カ 四 威 儀 ノ 内 二 勝 劣 ア ル ヘ キ、 坐 禅 坐 仏 ナ リ ト 云 時、 此 凡 夫 ノ 思 力 如 ク ノ 行 住 坐 臥 ニ ド ン ハ ア ラ ネ ハ 、 無 限 ノ 坐 臥 ト 云 文 、 カ キ リ 若 − 学 − 坐 禅 禅 非 坐 臥 ト 云 ハ 、 此 禅 ハ 坐 禅 ぞ ぱ マ ナビ ハ サ セ ム ヲ セ ム ハ ア ヲ ス サ ク ワ ユ ノ 禅 ナ ル カ ユ ヘ ニ 、 坐 臥 ニ ア ラ ス 、 此 坐 臥 ハ 世 間 ノ 坐 臥 ノ ユ ヘ ニ 、 坐 禅 ノ 禅 ニ ア ラ ス、 坐 禅 ハ 坐 臥 ニ ア ラ ス ト 単 伝 ス ル ヨ リ コ ノ カ タ、 無 限 ノ 坐 臥 ハ 自 己 丶、 ( 五 七 一. 一 b ) 此 無 限 ノ 駒 澤 大 學 佛 教 學 部 研 究 紀 要 第 五 十 三 號伊
藤
秀
憲
〈 第 五 段 ( 1 ) 〉 丶 「 南 嶽 〔 ま た 〕 し め し て い は く 、 汝 為 学 坐 禅 、 為 学 坐 仏 ( 汝、 坐 禅 を 学 ば ん と せ ば、 為 れ 坐 仏 を 学 す る な り ) 。 」 こ れ は 「 坐 禅 」 が そ の ま ま 「 坐 仏 」 で あ る 道 理 を 述 べ ら れ た の で あ る 。 〈 第 六 段 〉 丶 「す
べ て 四 威儀
( 行 住 坐 臥 ) は み な 仏 行 で あ る 。 〔 そ れ な の に 〕 ど う し て 坐 を 本 と す る 必 要 が あ る の か 」 と い う疑
い が あ る に ち が い な い の に 、 四 威儀
の 中 で 、 「 坐 は こ れ 大 安 楽 の 法 な り 」 な ど と い う こ と は 、 当 た ら な い こ と ば で あ る 。 仏 法 で は善
悪 勝 劣 を た て 〔 ず 〕 、 能 所 彼 此 の 区 別 は な い 。 ど う し て 四 威 儀 の う ち 〔 坐 と 他 と の 問 に 〕 勝 劣 が あ る で あ ろ う 。坐
禅 が 坐 仏 で あ る と い う と き、 こ れ は 凡 夫 が 思 う よ う な 行 住 坐 臥 で は な い か ら 、 「 無 限 の 坐 臥 」 と い う の で あ る 。 丶 「若
学 坐 禅 、禅
非 坐 臥 」 ( 若 し 坐 禅 を 学 ぽ ん は、 禅 は 坐 臥 に 非 ず ) と い う の は 、 こ の 「禅
」 は 坐 禅 の禅
で あ る か ら 、 「 坐 臥 」 で は な い 。 こ の 「 坐 臥 」 は 世 間 の 坐 臥 で あ る か ら、 坐 禅 の禅
で は な い 。 「 坐禅
」 は 「 坐 臥 に あ. ら ず と 単 伝 す る よ り こ の か た 、 無限
の 坐 臥 は 自 己 な り 」 。 こ の 「 無 限 の 坐 臥 」 と い う の は、 仏 法 の 上 の 「 坐 不 成 七 年 三 月 二 〇 九『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 坐 臥 ト イ フ ハ 、 仏 法 ノ 上 ノ 坐 臥 ナ リ、 ユ へ ニ シ ム ソ タ ン 無一一 親 疎一 、 無一一 迷 − 悟一 、 無 二 智 断「 丶、 伽 〃 赦 鮒 辣 驍 坐 禅 ノ 坐 臥 ニ ア ラ ス ト コ ・ ロ エ ヌ サ キ ニ ハ 、 無 限 ノ 坐 臥 ア ラ バ レ サ ル カ 如 シ 、 若 学 坐 禅 ζ 非 坐 臥 ト 云 フ 、 イ マ 坐 禅 ニ ア ラ ス ト 云 ヘ ハ 、 ア シ キ 坐 ノ マ タ 別 ニ ア ル ニ ハ ア ラ サ ル ヘ シ、 ヤ カ テ 非 定 相 仏 ト 心 得 ル 丈、 今 ノ 坐 禅 ハ 戒 光 ノ 如 シ ト 可 二 心 得一 、 其 ユ ヘ ハ 、 戒 光 ロ ヨ リ イ ツ、 縁 ア リ 因 ナ キ ニ ア ラ ス、 青 黄 赤 白 黒 二 非 ス、 非 色 非 身 非 有 非 無 非 因 果 ト 云 フ 、 コ レ 縁 ソ 因 ソ 青 黄 赤 白 色 身 有 無 ヲ 劣 ニ シ テ キ ラ ヒ ス ツ ( 五 七 四 a ) ル ヲ ア ラ ス ト 仕 フ 一 = ア ハ ナ シ 、 戒 光 ヲ ヤ カ テ 縁 ト モ 因 ト モ 青 黄 赤 白 色 身 有 鉦{ ト モ ソ カ フ ヘ キ ナ リ、 整… 限 ノ 坐 臥 ト 云 ハ 、 世 間 ノ 坐 臥 ヲ 離 タ ル ヲ 無 限 ト 云 丈 、 自 己 文 ト 云 ハ 、 コ ノ 自 己 ハ 坐 禅 ノ 自 己 丶、 坐 臥 無 シ ム ソ 限 ナ ル カ ユ ヘ ニ 、 ナ ム ソ 親 疎 ノ 命 脈 ヲ 尋 ネ ム ト 云 ハ 、 無 限 ノ 坐 禅、 ζ ζ ノ 自 己 ト ナ リ ヌ ル 上 ハ 、 親 疎 ノ 命 脈 ス ヘ テ タ ッ ヌ ヘ カ ラ ス ト 丈、 智 断 ヲ モ ト メ ム ト 云 ハ 、 智 慧 ヲ 発 テ 凡 脳 ヲ 断 ス ル 事 文、 今 ノ 坐 禅 ニ ハ 智 断 ヲ モ ト メ ス ト 丈、 若 学 坐 仏 ζ 非 定 相 ト ハ 、 コ ノ 仏 非 定 相 ハ 、 ( 五 七 四
b
) タ ト ヘ ハ 若 学 大 海 ト イ ハ ・ 不 宿 死 屍 ト 云 ハ ム カ 如 ク、 坐 仏 ヲ 学 ス ル ハ 仏 非 定 相 卜 二 一 〇 臥 L で あ る 。 だ か ら 「 親疎
」 が な く 、 「 迷 悟 」 が な く 、 「智
断
」 が な い の であ
る 〈 こ れ は 父 母 未 生 前 の 意 味 あ い で あ る 〉。 「 坐 禅 」 が 〔 世 間 の 〕 「 坐 臥 に あ ら ず 」 と 理 解 し な い 前 に は 、 「 無 限 の 坐 臥 」 は現
れ な い よ う な も の で あ る 。 「 若 学 坐禅
、 禅 非 坐 臥 」 と あ る 。 こ こ で 坐 禅 で は な い と い う と 、 正 し く な い 坐 が 更 に 別 に あ る の 〈 第 七 段 ( 2 ) 〉 で は な い の で あ る 。 ま さ に 「 非 定 相 仏 」 と 理解
す る の で あ る 。今
の 坐 禅 は戒
光 の よ う で あ る と 理 解 す べ き で あ る 。 「 是 故 戒 光 従 口 出 。 有 縁 非 無 因 〔 故 〕 。 〔光
光 〕 ( 1 ) 非 青 黄 赤 白 黒、 非 色 非 心 、 非有
非
無、 非 因果
〔法
〕 」 ( 是 の ゆ え に、 戒 光 口 よ り 出 ず 。 縁 有 り、 因 無 き に 非 ざ る が 故 に 。 光 光 は 青 黄 赤 白 黒 に 非 ず 、 色 に 非 ず、 心 に 非 ず 、 有 に 非 ず、 無 に 非 ず、 因 果 の 法 に 非 ず ) と あ る 。 こ れ は、 「 縁 ・ 因 ・青
黄赤
白 〔 黒 〕 色 心 有 無 」 を 劣 で あ っ て 、 嫌 い 捨 て る の を 「 非 ず 」 と つ か う の で は な い 。「 戒
光
」 を す な わ ち 「 縁 」 と も 「 因 」 と も 「 青 黄赤
白 〔 黒 〕 色 心 有 無 」 と も 使 う べ き であ
る 。 「 無 限 の 坐臥
」 と い う の は 、 世 間 の 坐 臥 を離
れ て い る の を 「無
限 」 と い う の で あ る 。 「 自 己 な り 」 と い う の は 、 こ の 「自
己 」 は 坐 禅 の 自 己 で あ る 。 「 坐 臥 」 が 「 無限
」 で あ る か ら 。 「 な ん ぞ 親疎
の 命脈
を た ず ね ん 」 と い う の は 、無
限 の 坐禅
、 坐禅
の 自 己 と な っ た か ら に は 、 「 親 疎 の 命 脈 」 を 全 く 尋 ね る べ き で は な い と い う の で あ る 。 「 智 断 を も と め ん 」 と い う 〔 「智
断 」 〕 は 、 智 慧 を 発 し て 煩 悩 を 断 じ る こ と で あ る 。今
の 坐 禅 で は 、 「 智 断 」 を 求 め な い と い う の で あ る 。 八 第 七 段 ( 1 ) 〉 丶 「 若 学 坐 仏 、 仏 非 定 相 」 ( 若 し 坐 仏 を 学 ぽ ん は、 仏 は 定 相 に 非 ず ) と は 、 こ の 「 仏 非定
相 」 は、 例 え ば 「若
学 大 海 」 と い う な ら ば 「 不 宿 死 屍 」 と い う よ う に 、 坐 仏 を 学 ぶ ( 学 坐 仏 ) の は 「 仏 非 定 相 」 と い わ れ る の で あ る 。イ ハ ル ・ ナ リ、 坐 禅 ノ 禅 ハ 定 ナ ル ヘ シ 、 ユ ヘ ニ 坐 禅 ヲ 坐 仏 ト 云 時 ハ 、 仏 ハ 定 ト 聞 ユ ル ユ ヘ ニ 、 仏 カ ナ ラ ス 定 ニ ア ラ サ ル 所 ヲ ア ラ バ サ ム 為 二 、 仏 非 定 相 ト 云、 タ ト ヘ ハ 四 句 ノ 不 同 ヲ 云 二 、 有 門. 二 蔵 教 、 無 門 通 教 、 亦 有 亦 空 別 教、 非 有 非 空 円 教 ト 立 ツ ル ヲ 、 今 ハ 有 モ 無 モ 亦 有 亦 空 モ 非 有 非 空 モ 皆 仏 ト ・ ル、 コ レ 有 仏、 無 仏、 亦 有 亦 空 仏、 非 有 非 空 仏 ト 云 ハ ム カ 如 シ 、 非 定 相 仏 ト 云 ハ 仏 ニ ア ラ ス ト 心 得 レ ハ ア タ ラ サ ル ナ リ、 タ ・ ( 五 七 五 a ) 非 定 相 仏 ナ リ 、 仏 ノ 名 ト 可 二 心 得 噂、 定 ト 云 ヲ ハ 禅 定 ト ノ ミ 人 ハ 心 得、 禅 定 ハ 外 道 モ 修 ス 、 天 上 ニ モ 四 禅 ト 談 ス 、 是 等 ノ 禅 ハ 今 ノ 禅 ニ ハ ア ラ サ ル ヘ シ 、 ソ ウ 従 二 無 住 法 一 立一 二 切 法 一 ト 云 事 ア リ、 道 場 ヲ 不 〆 立 シ テ 威 儀 ヲ 法 界 二 偏 ス ナ ム ト 云 フ、 コ 仏 ノ 定 ナ リ レ ヲ 法 界 定 ト 云 ヘ キ 歟、 大 方 ハ 懺 悔 ヲ ト ク 普 賢 経 文 二 、 一 切 業 障 海、 皆 従 妄 想 生 ト 云 フ 、 コ ノ 文 ヲ 云 フ ニ 、 一 切 ノ 業 障 ハ 妄 想 ヨ リ 生 ス ト 云 フ 、 妄 想 ハ 又 イ ツ ク ヨ リ 生 ス ル ソ ト 云 フ ヲ、 生 ス ル 所 ナ ケ レ ハ コ ソ 妄 想 ト ハ 云 ヘ ト ニ ク ル ナ リ 、 但 又 端 坐 思 実 相 ト 云 フ 、 実 相 ヲ 尋 ヌ ( 五 七 五 b ) ル 一 一 諸 法 実 相 ト 体 脱 ス ル ト キ ニ 、 実 相 ヨ リ サ キ ノ 本 ア ル ヘ カ ラ ス 、 タ ・ 実 相 文 、 実 相 ハ 唯 仏 与 仏 文、 坐 禅 コ レ 丈、 実 相 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 丶 坐 禅 の 禅 は 定 で あ る 。 だ か ら 坐
禅
を 坐 仏 と い う と き は 、 仏 は 定 と受
け 取 ら れ る か ら 、 仏 は 必 ず し も 定 で は な い と こ ろ を あ ら わ す た め に 、 「 仏 非 定 相 」 と い う 。 た と え ぽ、 四 句 の 不 同 を 言 う の に 、 有 門 〈 三 蔵 教 〉 、 無 門 〈 通 教 〉 、亦
有 亦 空 〈 別 教 〉 、 非 有 非 空 〈 円 教 〉 と た て る の に、 こ こ で は 有 も 無 も亦
有 亦 空 も非
有
非 空 も み な 仏 と と る 。 こ れ は 有 仏 、無
仏
、 亦 有 亦空
仏 、 非 有 非 空 仏 と い う よ う な も の で あ る 。 「 非 定 相 仏 」 と い う の は 仏 に非
ず と 理 解 す る と あ た ら な い の で あ る 。 た だ 「 非 定 相 仏 」 で あ る 。 仏 の名
と 理 解 す べき
で あ る 。 定 と い う の を 禅 定 と だ け 人 は 理 解 す る。禅
定 は 外 道 も 修 行 す る 。 天 上 で も 四 禅 と 説 く 。 こ れ ら の禅
は こ こ で 説 く禅
で は な い はず
で あ る 。 ( 2 ) へ 「 従 無 住 本 、 立 一 切 法 」 ( 無 住 の 本 よ り 一 切 の 法 立 っ ) と い う こ と が あ る 。 「 道 場 を 立 て ず し て 威 儀 を 法 界 に 偏 ず 」 な ど と 言 う 。 こ れ を 法 界 定 〈 仏 の 定 で あ る 〉 と 言 う べ き か 。 大 方 は懺
悔 を 説 く の に 、 〈 『 普 賢 経 』 の 文 〉 「 一 切 業 障 海 、 皆 従妄
想 ( 3 ) 生 」 ( 一 切 の 業 障 海 は 、 皆 妄 想 よ り 生 ず ) と あ る 。 こ の 文 を 言 う と き に 、 = 切 の 業 障 は妄
想 よ り 生 ず と い う 。 妄想
は ま た 何 処 か ら 生 ず る の か と い う と 、 生 じ る と こ ろ ( 3 ) が な い の で妄
想 と い う と 逃げ
る の で あ る 。 た だ し ま た、 「 端 坐 思 実 相 」( 端 坐 し て 実 相 を 思 う ) と 言 う 。
実
相 を 尋 ね る に 諸 法実
相
と体
脱 す る と き に 、 実相
よ り 先 の 本 が あ る は ず が な い 。 た だ実
相
で あ る 。実
相
は 唯 仏 与 仏 で あ る 。 坐禅
が こ れ で あ る 。実
相 は 端 坐 で あ る 。 端 坐 は 坐 仏 で あ る 。 ま た、「 端 坐 思 実 相 」 と 言 う か ら と い っ て 、 「
実
相 」 の 外 に 「 思 」 を 置 く こ と が あ る は ず が な い 。 「 欲 知 仏 性 義 」 と い う 二二
『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 ロ 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ハ 端 坐、 ζ ζ ハ 坐 仏 丈、 又 端 坐 思 実 相 ト 云 ヘ ハ ト テ、 実 相 ノ 外 二 思 ヲ 置 事 不 レ 可 レ 有 、 欲 知 仏 性 義 ト 云 ヘ ハ ト テ、 仏 性 ノ 外 二 欲 ノ 字 モ 知 ノ 字 モ 置 事 ナ キ 丶、 実 相 ト ・ ク ト キ、 唯 仏 与 仏 乃 能 究 尽 ト 云 ヘ ハ 、 仏 ノ 実 相 ト 云 事 ヲ ハ 知 ニ テ、 衆 生 ハ 不 レ 可 レ 叶 様 二 覚 ユ 、 非 レ 爾 、 諸 法 実 相 ト 云 時 二 、 実 相 ヨ リ 外 二 又 衆 生 不 レ 可 レ 有 、 凡 夫 外 道 モ ア ル ヘ カ ラ サ レ ハ 、 唯 仏 与 仏 ノ ミ 丈 ト 云 ナ リ、 ( 五 七 六 a ) 一 仏 二 仏 ト 云 ハ 、 已 前 二 仏 ノ 一 面 出 両 面 出 ト 云 シ 程 ノ 事 丶、 何 ヲ 一 仏 ト 云 ヒ 、 何 ヲ ニ 仏 ト 云 ニ ハ ア ラ ス、 全 体 仏 ノ 事 丈、 千 仏 万 仏 ト モ 云 ヘ シ 、 汝 若 坐 仏 即 是 殺 仏 ト 云 ハ 、 坐 ス レ ハ 仏 丶、 仏 ヲ 待 ニ ア ラ ス 、 ユ ヘ ニ 殺 仏 文、 磨 墫 作 鏡 ノ 詞 ニ ツ ク リ テ ミ ル ニ 、 坐 仏 磨 墫 ナ リ、 磨 博 セ ラ レ テ 鏡 ト ナ ル ヘ カ ラ ス、 ヤ カ テ 磨 皿 墫 作 醜 蜆 ナ リ 、 ユ ヘ ニ 坐 ス レ ハ 仏 ハ コ ロ サ ル ・ 丶、 サ ラ ニ 作 仏 ヲ マ タ サ ル ユ ヘ ニ 、 殺 ト 云 事 モ ノ ・ ヲ ハ リ ニ 付 テ 云 フ 、 又 殺 ハ 生 命 不 殺 ナ ム ト 云 時 二 罪 障 二 付 タ リ、 但 仏 法 修 行 ( 五 七 六
b
) ノ 上 ニ ハ 不 ソ 然 、 生 死 輪 転 ノ 命 ヲ 止 レ ハ 、 是 ヲ モ 殺 ト ツ カ フ ヘ シ 、 仏 ハ 無 明 塵 沙 ノ 父 母 ヲ 殺 ス ト モ 云 ヘ シ、 仏 ハ 入 涅 槃 シ 御 マ ス 、 コ レ モ 殺 ノ・ む ナ ル ヘ キ カ、 又 涅 盤 小 一 二 二 ( 4 ) か ら と い っ て 、 仏 性 の 外 に 欲 の 字 も 知 の 字 も置
く こ と が な い の で あ る 。実
相 と 説 ( 5 ) く と き 、 「 唯 仏 与仏
、 乃 能 究 尽 〔 諸 法 実 相 〕 」 ( 唯 仏 と 仏 と の み、 乃 ち 能 く 諸 法 の 実 相 を 究 尽 す ) と い う と 、 仏 が実
相
と い う こ と を 知 っ て、 衆 生 は 叶 う は ず が な い よ う に 思 う 。 そ う で は な い 。 諸 法実
相 と い う と き に 、実
相 よ り外
に ま た 衆 生 も い る は ず が な い 。 凡 夫 ・ 外 道 も い る は ず が な い か ら 、 唯 仏 与 仏 の み で あ る と い う の で あ る 。 〈 第 二 段 ( 5 ) 〉 丶 二 仏 二 仏 」 と い う の は、 以 前 に 「 ほ と け の 一 面 出 ・ 両 面 出 」 と 薈 、 口 っ た く ら い の こ と で あ る 。何
か を二
仏 」 と 言 い、 何 か を 「 二 仏 」 と 言 う の で は な い 。 全 体 が 仏 の こ と で あ る 。 千 仏 万 仏 と も い う べ き で あ る 。 A 第 八 段 ( 1 ) 〉 へ 「汝
若 坐 仏、 即 是 殺 仏 」 ( 汝、 若 し 坐 仏 せ ば、 即 ち 是 れ 殺 仏 な り ) と い う の は、 坐 れ ぽ 仏 で あ る 。 仏 を待
つ の で は な い 。 だ か ら 「 殺 仏 」 で あ る 。 「 磨博
作 鏡 」 の こ と ば で表
し て み る と 、 坐 仏 が 磨 墫 で あ る 。 磨 墫 さ れ て 鏡 と な る は ず が な い 。 そ の ま ま 磨 博 が 作 鏡 で あ る 。 だ か ら 坐 れ ば 仏 は 殺 さ れ る の で あ る 。 決 し て 作 仏 を 待 た な い か ら 。 ( 6 ) へ 「 殺 」 と い う こ と は 、 も の の 終 わ り に 付 け て い う 。 ま た 「 殺 」 は 生命
不 殺 な ど と 言 う と き に 罪 障 に付
け て い る 。 た だ し、 仏 法 修行
の 上 で は そ う で は な い 。 生 死 輪 転 の 命 を 止 め れ ぽ 、 こ れ を も 殺 と つ か う べ き であ
る 。 仏 は無
明塵
沙 の 父 母 ( 惑 ) を 殺 す と も 言 う べ き で あ る 。 仏 は 入 浬槃
し な さ る 。 こ れ も 殺 の 意味
で あ る は ず か 。 ま た 、 涅槃
と い う こ と で も そ れ ぞ れ に 異 な る で あ ろ う 。 二 乗 の 涅 槃 は 、 ま たト 云 ニ モ マ チ
く
ナ ル ヘ シ、 二 垂 く ノ 涅 槃 ハ マ タ 可 ノ 生 キ 業 ノ ナ キ ヲ 涅 槃 ト 云 フ、 凡 夫 ノ 方 ニ ハ 死 ト 云 フ 、 外 道 ハ 断 ト ス 、 大 乗 ノ 涅 槃 ハ 生 死 ノ ニ ヲ 解 脱 ス 、 以 三 二 界 「 唯 心 ト ス ル、 コ レ ソ 仏 ノ 涅 槃 ナ ル ヘ キ、 不 レ 可 レ 似 二 世 間 死 一 、 殺 仏 ト 云 事 始 テ 聞、 驚 二 似 レ ト モ、 即 心 是 仏 ト 云 ト キ、 又 非 心 非 仏 ト 云、 コ レ 殺 仏 文、 メ ツ ラ シ カ ラ ヌ 事 丶、 タ ト ヘ ハ 一 方 ヲ ( 五 七 七 a ) 証 ス レ ハ 一 方 バ ク 」 フ シ ト 云 モ、 是 程 ノ 事 ニ テ コ ソ ア レ 、 仏 ハ 衆 生 ヲ コ ロ シ、 衆 生 ハ 仏 ヲ コ ロ ス ト モ 云 ヒ ツ ヘ シ 、 此 儀 ハ 実 二 靭 醐 ア リ、 然 而 今 坐 禅 ニ ム カ ヒ テ 坐 仏 ス レ ハ 、 則 殺 仏 ト 云 詞 力、 ナ ニ ・ ツ ・ キ タ リ ト モ キ コ エ ヌ キ ゲ ァ 様 二 覚 ユ 、 如 何、 答 日、 此 儀 ハ 猶 愛 措 棄 嫌 ノ 心 地 丶、 コ レ 仏 与 二 衆 生一 ヲ 能 所 ト 心 得 歟、 タ ・ 仏 ハ 仏 ヲ 殺 、 衆 生 ハ 衆 生 ヲ コ ロ ス ト 云 ヘ シ、 ソ ノ 時 ハ 坐 禅 坐 仏 殺 仏 ナ ム ト ワ ク ヘ カ ラ ス ト 云 ζ、 有 二 什 麼 形 段 一 ト 云 ハ 、 コ ノ 形 段 三 界 唯 一 心 ナ ア ワ ン ナ ム ノ キ う ウ タ ン カ リ、 唯 有 一 乗 法 ナ リ、 ( 五 七 七b
) 殺 人 未 殺 人 ト 云 ハ 、 イ マ 人 ヲ コ ロ ス ト 云 人 ハ 坐 禅 人 ナ リ、 坐 禅 ス レ ハ 坐 仏 ナ ル ユ ヘ ニ 、 人 ヲ カ サ ヌ ヘ カ ラ ス 、 コ ノ 時 人 ヲ コ ロ ス ト 云 フ、 未 殺 人 ト 云 ハ 、 坐 禅 人 ト 云 ハ ム ト キ、 人 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 生 ず べ き 業 が な い の を 涅 槃 ( 無 余 涅 槃 ) と い う 。 凡 夫 の ほ う で は 死 と い う 。外
道 は 断 と す る 。 大 乗 の 涅 槃 は 生 と 死 の 二 つ を 解 脱 す る 。 三界
を 唯 心 と す る 。 こ れ が 仏 の 浬 槃 で あ ろ う 。 世 間 の 死 に 似 る は ず が な い 。 殺 仏 と い う こ と は始
め て 聞 く 。驚
く ほ ど の こ と で あ る け れ ど も 、 〔 坐 禅 が そ の ま ま 坐 仏 で あ る か ら 「 即 心 是 仏 」 で あ り、 〕 「 即 心 是 仏 」 と い う と き、 ま た 「 非 心 非 仏 」 と い う 。 こ れ は 殺 仏 〔 に 相当
す る の 〕 で あ る 。 珍 し く な い こ と で あ る 。 た と え はコ
方 を 証 す れ ば 一 方 は く ら し 」 と い う の も こ れ く ら い の こ と で あ る 。 仏 は 衆 生 を 殺 し 、 衆 生 は仏
を 殺 す と も 言 え よ う 。 こ の こ と は 実 に 理 由 が あ る 。 そ う で あ る が 、 「今
坐 禅 に お も む い て 坐 仏 す る の で 、 す な わ ち 殺 仏 ( 坐 仏 即 是 殺 仏 ) と い う こ と ば が 、 ど う い う こ と に 続 い て い る と し て も 受 け 取 れ な い よ う に 思 わ れ る。 ど う で あ ろ う 。 」答
え て 言 っ た 。 「 こ の こ と は、 な お 愛 惜、棄
嫌 の 心 持 ち で あ る 。 こ れ は 、 仏 と 衆 生 と を 能 〔 化 〕 所 〔 化 〕 と 理 解 す る の か 。 た だ 、 仏 は 仏 を 殺 し 、衆
生 は 衆 生 を 殺 す と 言 う べ き で あ る 。 そ の と き は 、 坐 禅、 坐 仏、 殺 仏 な ど と 分 け る べ き で は な い と 、 云 々 。 」 〈 第 八 段 〔 2 ) 〉 丶 「 有 什麼
形 段 」 ( 什 麼 の 形 段 か 有 ら ん ) と い う の は 、 こ の 「 形 段 」 が 三 界 唯 一 心 で あ り、 唯有
一 乗 法 で あ る 。 〈 第 八 段 ( 3 ) 〉 丶 「 殺 人 ・ 未 殺 人 」 と い う の は 、 こ こ で 人 を 殺 す と い う 人 は 、 坐禅
人 で あ る 。 坐禅
す れ ば 坐仏
で あ る か ら 、 人 を 更 に 加 え る べ き で な い 。 こ の と き 人 を 殺 す と い う 。 「 未 殺 人 」 と い う の は、 坐 禅 人 と い う と き 、 人 が現
前 す る か ら 「 未 殺 」 と い う 。 坐 人 の と き は 殺 仏 で あ る 。 坐 仏 の と き は 「 殺 人 」 で あ る 。 「 未 殺 人 」 と い う 一 = 三『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 現 前 ス ル ユ ヘ ニ 未 殺 ト 云 フ 、 坐 人 ノ 時 ハ 殺 仏 丈、 坐 仏 ノ ト キ ハ 殺 人 ナ リ、 未 殺 人 ト ハ 、 一 心 即 三 界 ナ リ ト 云 ハ ム 未 殺 人 ナ ル ヘ シ 、 タ ト ヘ ハ 殺 未 殺 ノ 相 違、 一 二 界 唯 一 心 ト 一 心 却 一 二 界 ト 程 ノ カ ハ リ 文、 シ ウ 若 執 一 刷 坐 − 相 一 非 コ 達 其 − 理嘴 和 衙 烈 迎 洞 慚 埼 レ 遜 モ シ シ ツ セ ハ サヤ ウ ヲ 7 ラ ズ タ ス ル ニ フ ノ リ ヲ 沙 グ 琲 燵 ワ 非 ○ 所 詮 執 坐 相 ヲ 以 テ 坐 仏 ト ・ ク、 非 達 其 理 ヲ ( 五 七 八 a ) 以 テ 坐 仏 ノ 荘 厳 ト ス ヘ シ ウ シ ウ キ カ ユ ヘ ニ 、 今 ノ 執 ハ 執 心 執 著 ナ ム ト 云 同 文 字 ナ リ、 但 殺 ハ 執 二 当 ル、 非 達 ハ 今 ノ 未 殺 人 ニ ア タ ル 、 所 詮 一 方 ニ ア ツ ヘ ク ハ 、 殺 人 タ ・ ヤ カ テ 未 殺 人 ナ リ 、 非 達 ハ 又 達 ト 体 脱 ス ヘ キ 捨 歟 ( 8 ) ソ ク ナ リ、 此 執 ヲ 拾 ス ル ニ モ 可 レ 仕、 触 ス ル ニ モ フ フ ルモ 可 レ 仕 、 不 執 坐 相 ト 云 ハ 、 執 坐 相 ヲ キ ラ フ ニ 似 タ レ ト モ、 不 執 坐 相 ナ ル コ ト ヲ 得 サ ル ユ ヘ ニ ト ・ ク 、 ユ ヘ ニ 執一 坐 相 タ ト ヒ 玲 籠 丶 ト モ ト ハ 云 ハ ル ・ 丈 、 非 達 其 理 ノ 詞 ハ 、 其 理 二 達 セ ス ト 聞 ユ レ ハ 、 達 其 理 ハ ト ル ヘ キ ニ 似 タ レ ト モ、 是 ( 9 ) 又 シ カ ア ラ ス 、 非 達 其 理 ト イ ハ 、 執 坐 相 玲 籠 ナ ル ニ 、 可 レ 達 ヲ ( 五 七 八
b
) イ マ タ 達 セ サ ル カ ユ ヘ ニ 非 達 其 理 ト 云 ニ ア ラ ス 、 タ ト ヒ 玲 籠 ナ ル 執 坐 相 丈 ト モ 、 執 坐 相 ヲ キ ラ ヒ テ 非 達 其 理 ト 云 ニ ハ ア ラ ス 、 タ ト ヘ ハ 坐 仏 ヒ ト ツ カ ウ 一 二 四 の は 、 一 心 即 三 界 で あ る と い う 「 未 殺 人 」 で あ ろ う 。 た と え ば 、 殺 未 殺 の 相違
は 、 三 界 唯 一 心 と 一 心 即 三 界 と い う ほ ど の 違 い で あ る 。 八 第 九 段 ( 1 ) V 丶 「若
執 坐 相、 非 達其
理 」 ( 若 し 坐 相 を 執 す れ ば、 其 の 理 に 達 す る に 非 ず ) 〈 こ の 「 執 」 ( 7 ) の こ と ば は 斥 け る べ き で は な い 。 不 悟 至 道 の 悟 で あ ろ う 。 「 非 達 」 の 「 非 」 で あ ろ うV
結
局
「 執 坐 相 」 を 坐 仏 と 説 く 。 「非
達 其 理 」 を 坐仏
の 荘 厳 と す べ き で あ る か ら 。今
の 「 執 」 は 執 心 ・ 執 着 な ど と い う の と 同 じ 文 字 で あ る 。 た だ し 、 「 殺 」 は 「 執 」 に あ た る 。「 非 達 」 は 今 の 「 未 殺 人 」 に あ た る 。 結 局 、 も し 】 方 に あ て る べ き で あ る な ら ば 、 「 殺 人 」 が た だ そ の ま ま 「 未 殺 人 」 で あ る 。 「 非
達
」 は ま た 「 達 」 と体
脱 す べ き で あ る 。 こ の 「 執 」 を 「 捨 」 て る 〔 意味
〕 に も つ か う べ き で あ る 。 「 触 」 れ る 〔意
味 〕 に も つ か う べ き で あ る 。 〈 第 九 段 ( 2 ) 〉 へ 「 不 執 坐 相 」 と い う の は 、 「 執 坐 相 」 を嫌
っ て い る よ う であ
る け れ ど も 、 〔 坐 仏 す る と き は 執 坐 相 で あ っ て 〕 「 不 執 坐 相 な る こ と を え ざ る 〔 が 〕 ゆ え に 」 と 説 く 。 だ か ら 「 執 坐 相 は た と ひ 玲 瓏 な り と も 」 と い わ れ る の で あ る 。 「非
達 其 理 」 の こ と ば は 、 其 の 理 に 達 せ ず と 受 け 取 ら れ る の で、 〔 「 非 達 其 理 」 は 捨 て 、 〕 「達
其 理 」 は 取 る べ き で あ る よ う で あ る が 、 こ れ も ま た そ う で は な い 。 「 非 達 其 理 」 と い う の は 、 「 執 坐 相 」 ( 坐 禅 ) が 「 玲 瓏 」 ( 透 ぎ 通 っ て い て、 障 り と な る も の が な い さ ま ) で あ る の で 、達
す べ き を 、 ま だ達
し な い か ら 「 非達
其 理 」 と い う の で は な い 。 た と い 「玲
瓏 」 で あ る 「執
坐 相 」 で あ っ て も、「 執 坐 相 」 を 嫌 っ て 「 非
達
其 理 」 と い う の で は な い 。 た と え ば 、 坐 ・仏
が 一 つ で あ る 上 で 「 非達
其
理 」 ( 坐 禅 が そ の ま まヘ ニ 、 非 達 其 理 ト モ 云 ハ ム カ 如 シ 、 達 其 理 ト モ 云 ハ ム カ 如 シ 、 非 達 其 理 ト 云 ハ ム 、 タ ト ヘ ハ 大 悟 底 人 不 悟 底 人 ナ ム ト 云 ハ ム カ 如 シ 、 ス ヘ テ キ ラ フ ヘ キ ナ シ 、 非 達 其 理 ト テ 劣 ニ ナ サ ム ハ 、 執冖 坐 相 一 = ア ア ル ヘ キ 文、 サ ウ シ 坐 仏 ζ 坐 二 相 − 似 丶 ト 雖 モ ト 云 ハ 、 人 作 仏 ζ ζ 人 ト 云 事 ヲ 相 対 シ タ ル 詞 ナ リ、 タ ト ヘ ハ 晦 旧 博 作 鏡 ノ 如 シ、 人 作 仏 ト 云 ヘ ハ ト テ、 人 力 仏 ニ ナ ル ト ハ 不 ノ 可 二 心 得 嚊、 ( 五 七 九 a ) ヤ カ テ 人 力 作 仏 一 = ア ア ル 丈 、 一 切 人 作 仏 ニ ア ラ ス、 仏 ハ 一 切 人 ニ ア ラ ス ト 云 ハ 、 作 鏡 磨 鏡 ノ 如 シ 、 是 ハ 仏 与 レ 人 勝 劣 ヲ 判 ス ル ニ テ ナ シ 、 執 坐 相 ハ 作 仏 ヲ マ タ ス ト 云 力 執 坐 相 ニ テ ア ル ナ リ、 坐 ヲ 執 シ テ 作 ヲ マ タ サ ル ユ ヘ ニ 、 其 理 ノ 外 ノ 人 ナ ケ レ ハ 、 達 ソ 非 達 ソ ト 云 ヘ キ コ ト ナ シ 、 薬 山 ノ 会 二 向 来 ノ 道 取 ア リ ト 云 ハ 、 思 量 不 思 量 非 思 量 事 文、 \ ゲ ム ケ ソ ヤ ウ ノ ル ギ ヤ ク ル 還 源 返 本 ノ 様 子 ト 云 ハ 、 本 流 逆 流 ト 云 肇 ・ リ、 流 ゲ ン サ ソ ク 転 ヲ 返 心 ナ リ 、 還 作 衆 生 ト 談 ス ル 儀 ア リ 、 息 リ ロ ケ ウ ツ ウ ク ケ イ エ イ ( 五 七 九
b
) 慮 凝 寂 ノ 経 営 ト 云 ハ 、 小 乗 二 談 般 若 ニ ハ 仏 果 空 ト 云 事 モ ア リ、 レ ウ キ ノ フ ス リ ヤ ウ ス 胸 襟 無 事 了 程 ノ 事 丶、 十 地 等 覚 ノ 見 解 二 不 レ 及 、 イ カ テ カ 仏 祖 ノ 坐 禅 ヲ 単 伝 セ ム ト 云 ハ 、 息 慮 凝 寂 ノ 詞 ヲ、 世 間 ノ 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 坐 仏 で あ る か ら 達 す る 理 が な い ) と も い う よ う な も の で あ る 。 〔 ま た ] 「達
其 理 」 と も い う よ う な も の で あ る 。 「 非達
其 理 」 と い う の は、 た と え ば 「 大 悟底
人
」 「 不 悟 底 ( 10 ) 人 」 な ど と い う よ う な も の で あ る 。 け っ し て嫌
う べ き こ と で は な い 。 「 非 達 其 理 」 と い っ て 劣 っ て い る と す る の は 、 「 執 坐相
」 で あ る はず
で あ る 。 八 第 九 段 ( 4 ) 〉 丶 「 坐 仏 ・ 仏 坐 に 相 似 な り と い へ ど も 」 と い う の は 、 「 人 作 仏 」 ・ 「 作 仏 人 」 と い う こ と に 、 相 い 対 し て い る こ と ば で あ る 。 た と え ば 、 「 磨 博 作 鏡 」 ( 磨 墫 が 作 鏡 ) の よ う で あ る 。 「 人 作 仏 」 と い う か ら と い っ て 、 人 が 仏 に な る と は 理 解 し て は い け な い 。 そ の ま ま 「 人 」 が 「 作 仏 」 で あ る の で あ る 。 丶コ
切
人 〔 は 〕 作 仏 に あ ら ず 、 ほ と け は 一 切 人 に あ ら ず L と い う の は 、 「 作 鏡 」 と 「磨
鏡
」 の よ う で あ る 。 こ れ は 仏 と 人 と の 勝 劣 を判
別 す る の で は な い 。 「執
坐 相 」 は 「 作仏
」 を 待 た な い と い う の が 「 執 坐 相 」 で あ る の で あ る 。 「 坐 」 を 執 し て 「 作 」 を 待 た な い か ら 。 「 其 理 」 の 外 の 人 が い な い の で 、 「達
」 「 非達
」 と 言 う べ き こ と が な い 。 八 第 九 段 ( 6 ) 〉 丶 「 薬 山 の会
に 向 来 の 道取
あ り 」 と い う の は 、 「 思 量 ・ 不 思 量 ・ 非 思 量 」 の こ と で あ る 。 〈 第 九 段( 9 ) 〉 丶 「 還源
返 本 ( 源 に 還 り 本 に 返 る ) の 様 子 」 と は 〈 本 流 ・ 逆 流 と い う こ と が あ る 〉 、流
( 11 ) 転 を 返 す 意味
で あ る 。 「 還作
衆
生 」 ( 還 り て 衆 生 と な る ) と 説 く こ と が あ る 。 「息
慮
( り 一 ) 凝 寂 ( 慮 を 息 め 寂 を 凝 ら す ) の 経 営 」 と い う の は 、 小 乗 で 説 く 「 胸 襟 無事
了 」 ほ ど の こ と で あ る く 般 若 経 で は 仏 果 空 と い う こ と も あ るV
。 丶 「 十 地 ・等
覚
の 見 解 に は お よ ば ず、 い か で か 仏 仏 祖 祖 の 坐 禅 を 単 伝 せ ん 」 と い 一 二 五『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) グ フ ノ レ ム ク ア ン ユ 禅 僧 ノ イ フ タ ケ 、 観 練 薫 修 ノ 階 級、 十 地 等 覚 見 解 二 不 レ 及 、 但 今 ノ 坐 禅 ノ 心 地 ニ ハ 、 又 観 練 董 … 修 ノ 階 級、 十 地 幣 寸 覚 ノ 見 鯉 … モ 不 レ 可 レ 及 文、 ユ ヘ ハ 十 地 ノ 菩 薩 ヲ 立 ル ト キ、 ヲ ナ シ 十 地 ノ 韮 旦 陸 ナ カ ラ、 初 地 ノ 苙 n 薩 ハ ニ 地 ノ 苙 口 薩 ノ 挙 足 下 足 ヲ 不 レ 知 ト 云 フ 、 況 仏 祖 ノ 坐 禅 ヲ ヤ、 但 等 覚 ノ 苙 ロ 薩〜 等 ヲ イ タ ツ ラ ニ サ ク ル ニ ア ラ ス 、 我 祖 門 ノ 義 ( 五 八 〇 a ) ニ ア ラ サ ル 所 ヲ ア ケ テ シ ラ ム ヤ ト 云 ナ リ、 十 地 等 ハ 地 ζ ノ 階 級 ヲ ッ ラ ネ テ 妙 覚 ノ 位 ヲ マ ツ、 無 明 ノ 悪 ノ 不 断 ア リ、 法 性 ノ ア ラ バ レ サ ル ア リ、 祖 門 ニ ハ 行 不 レ 待 〆 証、 ζ 不 レ 待 レ 行 、 位 ノ 浅 深 ヲ 不 レ 立 、 ユ ヘ ニ コ レ ヲ 超 仏 越 祖 ノ 談 ト ナ ッ ク、 仏 向 上 ノ 事 卜 云 フ、 南 嶽 問 答 能 ζ 可 二 了 見 一、 第 五 汝 為 学 坐 禅 為 学 坐 仏 ト 云、 是 ハ 坐 禅 カ ヤ カ テ 坐 仏 ナ ル 道 理 ヲ ノ ヘ ラ ル 、 第 六 若 学 坐 禅 ζ 非 坐 臥 ト 云、 是 ハ 坐 臥 ト ハ 心 得 マ シ 、 坐 臥 ノ 自 己 即 坐 仏 ナ ル ユ ヘ ニ 、 ( 五 八 〇
b
) 第 七 若 学 坐 仏 ζ 非 定 相 ト 云、 是 ハ 定 相 ヲ キ ラ フ ニ ア ラ ス 、 ヤ カ テ 非 定 相 仏 文、 第 八 汝 若 坐 仏 却 是 殺 仏 ト 云、 是 ハ 坐 禅 ス レ ハ 殺 仏 ナ ル キ ナ リ、 第 九 若 執 坐 相 非 達 其 理 ト 云、 是 ハ 執 坐 相 ヲ キ ラ ヒ 二 一 六 う の は 、「 息 慮 凝 寂 」 の こ と ば を、 世 間 の 禅 僧 が い う ほ ど で は、 「
観
練 薫 修 の階
級 」 「 十 地等
覚
の 見解
」 に 及 ぼ な い 〔 と い う こ と で あ る 〕 。 た だ今
の 坐禅
の 意 味 あ い で は 、 ま た 「 観 練薫
修 の 階 級 」 「 十 地 等 覚 の 見 解 」 も 及 ぶ は ず が な い 。 そ の わ け は 、 十 地 の 菩 薩 を た て る と き 、 同 じ 十 地 の 菩 薩 な の に 、 初 地 の 菩 薩 は 二 地 の菩
薩 の 挙 足 下 足 ( 起 居 動 作 ) を 知 ら な い と い う 。 ま し て や 仏 祖 の 坐 禅 は な お さ ら で あ る 。 た だ し 、 等覚
の菩
薩 等 を わ け も な く 低 く す る の で は な い 。 我 が 祖 門 の 考 え で は な い と こ ろ を 挙 げ て 、 知 っ て い る の か と い う の で あ る 。 十 地 等 は 地 々 の 階 級 を 順 に 並 べ て 妙 覚 の 位 を 待 つ 。 無 明 の悪
が 断 た れ な い こ と が あ る 。 法 性 が あ ら わ れ な い こ と が あ る 。 祖 門 で は 行 は証
を待
た な い 。証
は 行 を 待 た な い 。 位 の 浅 い 深 い を 立 て な い 。 だ か ら こ れ を 超 仏 越 祖 の 談 と 名 付 け る 。 仏 向 上 の こ と と い う 。 丶 南 嶽 の 問 答 は 十 分 了 見 す べ き で あ る 。 〈 第 五 段V
「 汝 為 学 坐 禅、為
学 坐 仏 」 と あ る 。 こ れ は 坐 禅 が そ の ま ま 坐 仏 で あ る 道 理 を 述 べ ら れ る 。 へ 第 六 段 〉 「 若 学 坐禅
、 禅 非 坐 臥 」 と あ る 。 こ れ は 「 坐 臥 」 と は 理 解 す る な 。 「 坐 臥 」 の 自 己 が 即 ち 坐 仏 で あ る か ら 。 〈 第 七 段V
「 若 学 坐 仏、 仏非
定 相 」 と あ る 。 こ れ は 定 相 を 嫌 う の で は な い 。 そ の ま ま非
定 相 仏 で あ る 。 〈、 第 八 段 ▽ 「 汝 若 坐 仏 、 即 是 殺 仏 」 と あ る 。 こ れ は 坐禅
す れ ば 殺 仏 で あ る意
味 で あ る 。 〈 第 九 段 V 「 若 執 坐 相、 非 達 其 理 」 と あ る 。 こ れ は 「 執 坐相
」 を 嫌 っ て 「 非 達 其 理 」 と い う の で は な い 。 「 達 其 理 」 も 「 非 達 〔 其 理 〕 」 も 同 じ は ず で あ る 。テ 非 達 其 理 ト 云 ニ ハ ア ラ ス 、 達 其 理 モ 非 達 モ 同 カ ル ヘ シ 、 ノ ム 宏 智 禅 師 坐 禅 箴、 ン ム コ ノ 箴 ヲ 大 用 現 前 ト 云 フ 、 此 大 用 ハ 大 ノ 外 二 用 ヲ モ チ ヰ ル ニ ハ ア ラ ス 、 大 カ ヤ カ テ 用 ニ テ ア ル ナ リ 、 大 用 ト 云 ハ ( 五 八 一 a ) ヤ カ テ 坐 禅 ノ 用 ヲ サ ス ナ リ、 現 前 −・ 云 フ 、 又 ヤ カ テ ア ラ ハ ル ・ 所 ヲ サ ス 文、 用 ト 云 事 教 ニ モ 談 ス 、 但 其 ハ 大 小 用 ヲ タ テ ・ 、 日 月 ノ 光 ハ 大 用、 星 辰 ノ 光 ハ 小 用 ナ ム ト 云 フ 、 今 ノ 義 ニ ハ 異 ナ リ、 ハ ウ 莫 謗 仏 祖 好 ト 云 ハ 、 別 ノ 謗 ノ 詞 ア ル ヘ キ ニ ハ ア ラ ス 、 タ ・ 坐 禅 ノ 時 節 ハ 莫 謗 仏 祖 好 ト 云 ハ ル ・ 文、 好 ハ ヨ シ ト 云 丶、 未 免 喪 身 失 命 ト 云 ハ 、 坐 禅 人 ハ 必 喪 身 失 命 ス ル ト 心 得 ル 文、 ソ ノ ユ ヘ ハ 坐 禅 ス レ ハ 日 来 ノ 身 心 脱 落 ス ル ユ ヘ ニ 喪 身 失 命 ス ル 臆 \ 、 坐 禅 ス テ ニ 坐 仏 丶 、 人 間 界 ニ ア ル ヘ キ 事 ニ テ 坐 ( 五 八 一
b
) 禅 ハ ナ キ ユ ヘ ニ 、 タ ト ヒ 声 色 ト 云 ト モ 向 上 ノ 声 色 ナ ル ヘ シ、 日 来 ノ 見 二 不 レ ァ 歟 ( 13 ) 可 7 准 、 父 母 未 生 前 ト 云 フ イ ハ レ タ リ、 人 間 界 ヲ ハ ナ レ タ ル 坐 禅 ナ ル ユ ヘ ニ 、 莫 謗 仏 祖 好 ト 云 フ、 又 其 謂 ア リ、 今 ノ 坐 禅 仏 祖 ヲ 謗 ス ル コ 好 ト ナ キ ユ へ 二 、 莫 謗 ナ ル 所 ヲ 好 ト 云 フ 、 ヨ キ ナ リ、 未 免 喪 身 失 命 ト 云 フ、 坐 禅 坐 仏 ナ レ ハ 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 〈 第 十 段 ( 2 ) 〉 丶 宏 智 禅師
の 坐 禅 箴。 こ の 〔 坐 禅 箴 の 〕 「 箴 」 を 「 大 用 現 前 」 と 言 う 。 こ の 「 大 用 」 は 、 「 大 」 の外
に 「 用 」 を 用 い る の で は な い 。 「 大 」 が そ の ま ま 「 用 」 で あ る の で あ る 。 「 大 用 」 と い う の は そ の ま ま 坐 禅 の 用 を さ す の で あ る 。 「現
前 」 と あ る 。 ま た 、 そ の ま ま 現 れ る と こ ろ を 指 す の で あ る 。 「 用 」 と い う こ と は教
家 で も 説 く 。 た だ し 、 そ れ は 大 小 の 用 を 立 て て 、 日 月 の光
は 大 用 、 星 辰 の 光 は 小 用 な ど と い う 。 こ こ の 意 味 に は 異 な る の で あ る 。 丶 「 莫 謗 仏 祖 好 」 ( 仏 祖 を 謗 ず る こ と 莫 く ん ぽ 好 し ) と い う の は、 別 の謗
の こ と ば が あ る は ず で あ る の で は な い 。 た だ 坐 禅 の 時 節 は 「莫
謗 仏祖
( 莫 謗 の 仏 祖 ) 好 」と い わ れ る の で あ る 。 「 好 」 は 好 し と い う こ と で あ る 。 丶 「 未 免 喪
身
失
命 」 ( 未 だ 免 れ ず 喪 身 失 命 す る こ と を ) と い う の は 、 坐禅
人 は 必 ず 「 喪身
失 命 」 す る と 理 解 す る の で あ る 。 そ の わ け は 、 坐 禅 す れ ば 日 頃 の身
心 が 脱 落 す る か ら 「喪
身 失 命 」 す る の で あ る 。 \ 坐 禅 は す で に 坐 仏 で あ る 。 坐 禅 は 人 間界
に あ る べ き こ と で な い か ら 。 た と い 「 声 色 」 と い う と し て も 向 上 の 「 声 色 」 で あ ろ う 。 日 頃 の 考 え に 準ず
べ き で は な い 。 「 父 母 未 生 前 」 と い う 理 由 が あ る 。 人 間界
を は な れ て い る 坐禅
で あ る か ら 。 「 莫 謗 仏 祖 好 」 と あ る 。 ま た そ の 理 由 が あ る 。 い ま の 坐禅
は 仏 祖 を謗
る こ と が な い か ら 、 「 莫 謗 」 で あ る と こ ろ を 「 好 」 と い う 。好
い こ と で あ る 。 「未
免 喪 身 失 命 」 と あ る 。 坐 禅 が 坐 仏 で あ る か ら 喪 身 失命
す る と い う の で あ る 。 「 頭 長 三 尺頸
長 二 寸 」 と あ る 。 こ れ は ま た 、 こ の よ う な も の が い る は ず で あ る と い う の で は な 一 = 七『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ノ ゆ ヤ ウ 喪 身 失 命 ス ト 丈 、 頭 長 三 尺 頸 長 二 寸 ト 云 フ 、 コ レ 又 力 ・ ル 物 ノ ア ル ヘ キ ニ ア ラ ス 、 今 ノ 坐 禅 人 力 世 間 ノ 凡 夫 ニ コ ト ナ ル 所 ヲ 云 フ ト キ 如 ソ 此 イ ハ ル ・ ナ リ、 但 又 頭 ト 云 モ ( 五 八 二 a ) 頸 ト 云 モ 、 世 間 ノ 人 躰 二 相 対 シ テ 云 時 コ ソ ヲ ト ロ ケ 、 カ ・ ル 人 ノ ア ル 世 界 モ ア ラ バ 、 其 国 ノ 人 ハ ヲ ト ロ ク ヘ カ ラ ス 、 又 三 尺 ト 云 モ ニ 寸 ト 云 モ 、 世 間 ノ 丈 尺 ト 不 レ 可 二 心 得 一 、 モ シ 尺 ヨ リ ハ 寸 ハ ナ カ シ ト 知 ル 習 モ ア ラ バ 、 ア ナ カ チ ニ 不 〆 可 レ 驚 仏 ζ 祖 ζ ノ 間 ハ 、 要 機 ζ 要 ノ カ ハ リ 程 ナ リ、 仏 ハ 仏 ヲ 要 機 ト ス ル 丈、 要 機 ノ 現 成 ハ 坐 禅 ○ 亘 天 烈 焔 ア ル ヘ キ 歟 本 ノ マ ・ ( 14 ) 丈 、 坐 禅 ハ 坐 仏 丈、 要 機 ζ 要 ハ 烈 焔 亘 天 ○ ノ 心 地 文、 コ ノ 機 ハ ヤ カ テ 仏 ヲ 機 ト ハ ト ル ナ リ 、 機 ハ 可 発 ヲ 以 テ 機 ト ス ト 云 フ 、 物 ノ ヲ コ ル 始 ヲ ( 五 八 二
b
) コ ソ 機 ト ハ 取 ヲ 、 今 ノ 要 機 ハ 仏 ノ 機 ヲ 仏 丈 ト 云 フ 時 二 、 可 発 ト モ 不 レ 可 γ 云 、 コ レ 作 仏 ヲ 不 レ 待 ユ ヘ ナ リ、 祖 ζ 機 要 ト 云 フ、 機 ト 要 ト 前 後 シ 各 別 ス ヘ キ ナ ラ ネ ハ 、 機 } 妥 ト モ 要 機 ト モ 云 ナ リ、 先 師 無 此 語 ト 云 ハ 、 今 ノ 坐 禅 ト 云 事 力 師 ノ ヲ シ ヘ ニ ヨ リ テ ス ル コ ト ニ テ ハ ナ シ、 ユ ヘ ニ 師 ノ 語 ナ シ ト ハ 云 ナ リ、 仏 法 ヲ ト キ 法 仏 ヲ ト ク 二 → 八 い 。今
の 坐 禅 人 が 世 間 の 凡 夫 に 異 な る と こ ろ を い う と き、 こ の よ う に 言 わ れ る の で あ る 。 た だ し ま た 、 頭 と い う の も 頸 と い う の も 、 世 間 の 人体
に 相 対 し て い う と き驚
く 。 こ の よ う な 人 が い る 世 界 も あ る な ら ば 、 そ の 国 の 人 は驚
く は ず が な い 。 ま た 三 尺 と い う の も 二 寸 と い う の も 、 世 間 の丈
尺 と 理 解 す べ き で は な い 。 も し 尺 よ り は 寸 は 長 い と 知 る 習 慣 も あ る な ら ば 、 必ず
し も驚
く べ き で は な い 。 〈 十 段 ( 3 × 4 ) 〉 丶 「 仏 仏 」 と 「 祖祖
」 の 間 は 、 「 要機
」 と 「 機 要 」 の 相 違 ほ ど で あ る 。 仏 は 仏 を 「 要機
」 と す る の で あ る 。 「 要 機 」 の 「 現 成 」 は 「 坐禅
」 で あ る 。 坐 禅 は 坐仏
で あ る 。 「 要 機 」 「 機要
」 は 烈 焔 亘 天 ・ 一 旦 天烈
焔 の意
味 あ い で あ る 。 こ の 機 は そ の ま ま仏
を 機 と と る の で あ る 。W
「機
」 は 可 発 を 機 と す る と い う 。 も の が 起 こ る 始 め を機
と取
る の で あ る が 、今
の 「 要機
」 は 、 仏 の 機 を 仏 で あ る と い う と き に 、 可 発 と も 言 え な い 。 こ れ は作
仏 を待
た な い か ら で あ る 。 「 祖 祖 機 要 」 ( 祖 祉 の 機 要 ) と あ る 。 機 と 要 と が 前 後 し 、 そ れ ぞ れ 別 と す べ き で は な い か ら 、 「機
要 」 と も 「要
機
」 と も い う の で あ る 。 〈 第 十 段 ( 4 ) 〉 丶 「 先 師 無 此 語 」 と い う の は 、今
の 坐 禅 と い う こ と が、 師 の 教 え に よ っ て す る こ と で は な い 。 だ か ら 「 師 の 語 無 し 」 と い う の で あ る 。 仏 が 法 を 説 き 、 法 が 仏 を 説 く と い う ほ ど の 意味
で あ る。ト 云 程 ノ 義 ナ リ、 法 伝 衣 伝 ト 云 ハ 、 人 ノ 伝 ル ニ テ ハ ナ シ 、 法 力 伝 へ 衣 力 伝 ル 文、 是 ハ 打 任 テ ハ 伝 法 伝 衣 ト 云 ヲ、 打 チ カ ( 五 八 三 a ) ヘ テ 法 ト 伝 ト 能 所 ナ キ 所 ヲ 法 伝 衣 伝 ト 云 フ ナ ル ヘ シ、 ソ ク 不 触 事 而 知 ト 云 ハ 、 仏 ノ 正 遍 知 文、 知 ハ 不 触 事 丈 、 不 触 事 ハ 知 文 ト 、 カ ク 打 チ カ ヘ テ 云 ハ ネ ハ 、 不 触 事 力 猶 各 別 ナ ル ヤ ウ ニ 聞 ユ 、 知 ヲ ヤ カ テ 不 触 ト ハ 可 二 心 得 一 丈、 此 不 触 事 而 知 ヲ 達 磨 宗 如 ク 談 ス ル ニ ハ 、 了 ζ 常 知 ト 談 シ テ、 境 ニ カ ・ ハ ラ サ ル 知 文 ト 云 フ 、 堵湘 ニ カ ・ ハ ラ ス ヲ メ テ キ ャ ウ ニ イ モ ト を ト イ ハ 、 白 ト シ リ 黒 ト シ ル 、 於 レ 境 雖 レ 有 二 黒 白 叫 知 ノ 躰 ハ 一 丶、 故 此 知 境 ニ カ ・ バ ラ ス ト 云 フ 、 今・ ハ シ カ ニ ハ ア ラ ス 、 一 知 現 亠 削 ノ ト フ ル へ ぐ キ 事 ト シ テ 可 レ 触 ナ シ 、 タ ト ヘ ハ 三 界 ( 五 八 三
b
) 唯 一 心 ζ 外 無 別 法 ト 云 フ ト キ、 唯 心 ノ 道 理 現 前 セ ム ト キ ハ 、 三 界 二 触 セ ス ト 云 ハ ム カ 如 シ 、 タ イ グ ワ ァ 不 対 縁 而 照 ト 云 フ、 教 ニ ハ 観 照 ト 云 フ 事 ア ン ヤ ク リ、 寂 照 ト 云 事 モ ア リ、 但 何 ト モ 云 へ 、 事 理 ノ ニ 法 ヲ 立 テ 云 ハ ム ハ コ ナ タ ニ ハ ト リ カ タ シ、 寂 ニ シ テ 照 丶、 照 ニ シ テ 寂 ナ リ ト 云 モ ニ 法 ヲ 不 レ 離 ナ リ、 不 対 縁 ナ ル ヲ ヤ カ テ 照 ト 云 ヘ シ 、 破 界 不 出 頭 ト 云 ハ 、 頭 ノ 字 ハ 無一 一 別 要一 、 只 不 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 丶 「 法 伝 ・ 衣 伝 」 と い う の は 、 人 が 伝 え る の で は な い 。法
が 〔 法 を 〕 伝 え、 衣 が 〔 衣 を 〕 伝 え る の で あ る 。 こ れ は 普 通 一般
に は 伝 法伝
衣 と い う の を 、 引 っ 繰 り 返 し て 法 と 伝 と 能 所 が な い と こ ろ を 「法
伝 ・ 衣 伝 」 と い う の で あ ろ う 。 〈 第 十 段 ( 6 ) 〉 丶 「 不触
事
而 知 」 ( 事 に 触 れ ず し て 知 り ) と い う の は、 仏 の 正 遍 知 で あ る 。 「 知 は 不 触 事 な り 、 不触
事 は 知 な り 」 と、 こ の よ う に引
っ 繰 り 返 し て 言 わ な け れ ば 、 「 不 触 事 」 〔 と 「 知 」 〕 が や は り そ れ ぞ れ 別 で あ る よ う に受
け取
ら れ る 。 「 知 」 を そ の ま ま 「 不触
〔事
〕 」 と 理 解 す べ ぎ で あ る 。 こ の 「 不 触 事 而 知 」 を 、達
磨 宗 の よ う に 説 く とき
に 、 「 了 了 常 知 と 説 い て 、境
( 対 象 ) に 関 わ ら な い 知 で あ る 」 と い う 。 「 境 に 関 わ ら な い と い う の は 、 白 と 知 り 黒 と 知 る 。境
に黒
白 が 有 る け れ ど も 、知
の 体 は 一 つ で あ る 。 故 に こ の 知 は 境 に か か わ ら な い 」 と い う 。 こ こ で は そ う で は な い 。 一 つ の 知 が 現 前 す る と き 、 事 と し て触
れ る こ と が でき
る も の は な い 。 た と え ば 「 三 界 唯 一 心 、 心 外無
別 法 」 い う と き 、 「 唯 心 」 の 道 理 が 現 前 す る と き は 、 「 三 界 」 に 触 れ な い と い う よ う な も の で あ る 。 〈 第 十 段 ( 8 ) 〉 へ 「 不 対 縁 而 照 」 ( 縁 に 対 せ ず し て 照 ら す ) と あ る 。 教 家 で は 観 照 と い う こ と が あ る 。寂
照 と い う こ と も あ る 。 た だ し、 ど う と も 言 え 。 理 事 の 二 法 を 立 て て 言 う の は こ ち ら で 取 る こ と は 難 し い 。 寂 で あ っ て 照 で あ る 。 照 で あ っ て 寂 で あ る と い う の も 二 法 を 離 れ な い の で あ る 。 「 不 対 縁 」 であ
る の を そ の ま ま 「 照 」 と い う べ き で あ る 。 〈 第 卜 段 ( 9 ) 〉 丶 「 破 界 不 出 頭 」 ( 界 を 破 す る も 頭 を 出 さ ず ) と い う の は 、 「 頭 」 の 字 は 別 に 要 が な 二 一 九『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 出 ナ ル ナ リ、 サ カ ヒ ヲ 定 ム ル ト キ 入 出 ノ 義 ア ル ヘ シ 、 世 界 ヲ 坐 破 シ ヌ ル 上 ハ 不 出 頭 ト 云 ハ ル ・ ナ リ ( 五 八 四 a ) 瓢 酋 ( 照 力 ( 15 ) 証 ハ 回 ノ 義 ナ レ ト モ 、 不 対 縁 ノ 証 ナ ル ユ ヘ ニ リ コ 不 回 互 ナ リ、 ウ 龍 ヲ 作 ス ル ニ 禹 門 ノ 内 外 ニ カ ・ ワ ラ ス ト 云 フ レ ハ 、 事 二 不 レ 触 不 対 縁 ナ ル 心 地 ナ リ、 禹 門 ニ タ キ ノ ホ ラ サ ル ト キ モ 龍 ナ リ、 禹 門 ニ ハ 三 重 ノ 浪 ツ ヤ ル イ ア リ 、 コ レ ヲ 蛇 若 ハ 魚 類 ノ ホ リ テ 龍 ト ナ ル ト 云 フ、 サ キ ヨ リ 龍 ヲ 作 レ ハ 禹 門 ノ 沙 汰 ア ル ヘ カ ラ ス、 坐 r 禅 如 レ 此、 一 知 ワ ツ カ ニ 使 用 ス ト 云 ハ 、 此 知 ハ 我 等 力 見 カ ト 覚 ヘ タ レ ト モ 不 レ 然、 一 知 ト ハ 不 触 事 ナ ル 所 ヲ 一 ト 云 ナ リ、 一 知 半 解 ト 云 フ 知 ハ 、 サ キ ノ 一 知 ヲ サ ス 丈、 凡 夫 ノ 慮 知 二 非 ス 、 全 躰 知 ヨ リ 外 二 物 ナ キ ユ へ 一 二 知 ト 云 ブ、 ( 五 八 四
b
) \ ( 16 ) 分 別 思 量 ヲ ソ ク 到 来 ス ト 云 ハ 、 日 来 ノ 分 別 思 量 ニ ハ 非 ス 、 山 河 尽 界 ヲ サ ス ナ リ、 ユ へ 二 已 曾 分 別 ナ ル 仏 ζ ノ 現 成 丈、 曾 無 分 別 ト 云 無 ハ 已 曾 ナ リ、 ユ ヘ ニ 巳 曾 現 成 ス レ ハ 曾 無 分 別 ナ リ、 ス ヘ テ ア フ ヘ キ 物 ナ シ 、 不 逢 一 人 ト 云 フ 、 已 曾 分 別 ト ハ 山 河 ヲ 以 テ ス ル 文、 曾 無 已 曾 丶 、 不 逢 一 人 ハ 大 用 現 前 文 、 二 二 〇 い 。 た だ 「 不 出 」 で あ る の で あ る 。 さ か い を 定 め る と き 出 入 の 意 昧 が あ る は ず であ
る 。 世界
を 坐 破 し た か ら に は 、 「 不 出 頭 」 と 言 わ れ る の で あ る 。 へ 「 照 」 は 「 回 〔 互 〕 」 の 意 味 で あ る け れ ど も 、 「 不 対 縁 」 の 「 照 」 で あ る か ら 「 不 回 互 」 で あ る 。 〈 第 十 段( H ) 〉 へ 「 龍 を作
す る に 、 禹 門 の 内 外 に か か は ら ず 」 と い う の は 、事
に 触 れ ず 、 不 対 縁 で あ る 意 味 あ い で あ る。 禹 門 に 登 ら な い と き も 龍 で あ る 。 禹門
に は 三 段 の 滝 が あ る . こ れ を 蛇 も し く は 魚 類 が 登 っ て 龍 と な る こ と を い う 。 〔 登 る 〕 以 前 か ら龍
と な る の で 、 禹門
の 論 議 は あ る は ず が な い 〔 か ら 、「 禹 門 の 内 外 に か か は ら ず 」 と い う の で あ る 〕 。 坐
禅
は こ の よ う で あ る 。 丶二
知 わ ず か に 使 用 す 」 と い う の は 、 こ の 「 知 」 は 我 々 の考
え か と 思 わ れ る け ど も 、 そ う で は な い 。 「 一 知 」 と は 「 不 触事
」 で あ る と こ ろ をコ
」 と い う の で あ る 。 「 一 知 半 解 」 と い う 「 知 」 は 、先
の 「 一 知 」 を指
す の で あ る 。 凡 夫 の慮
知 で は な い 。 全 体 が 「 知 」 よ り ほ か に も の が な い か らコ
知 」 と い う 。 〈 第 十 段 ( 12 ) V へ 「 分 別 思 量 〔 の 〕 お そ く 来 到 す 」 と い う の は 、 日 頃 の 分 別 思 量 で は な い 。 山 河 尽 界 を さ す の で あ る 。 だ か ら 「 已曾
分 別 な る 仏 仏 」 の 「現
成 」 で あ る 。 「 曾 無 分 別 」 と い う 「 〔 曾 〕 無 は 已曾
」 で あ る 。 だ か ら 「 已曾
は 現 成 」 す る の で 「曾
無 分 別 」 で あ る 。 全 く違
う べ き も の は な い 。 「 不 逢 冖 人 」 と あ る 。 「 已曾
分 別 」 と は 山 河 を も っ て す る の で あ る 。 「 曾 無 」 は 「 巳 曾 」 で あ る 。 「 不 逢 } 人 」 は 大 用 現 前 で あ る 。其 照 自 妙 曾 毫 忽 ノ 兆 ナ シ ト 云 ハ 、 毫 忽 則 山 河 丈 尽 界 ナ ル ユ ヘ ニ 兆 ナ シ ト ハ 云 フ 、 イ マ タ 将 来 セ サ ル カ 如 シ ト 云 ハ 、 将 来 ト ハ エ、 チ キ タ ル ト ナ リ、 不 対 縁 ナ レ ハ モ チ キ タ ル モ ノ ア ル ヘ カ ラ ス、 ( 五 八 五 a ) \ ;° 三 へ ・ ; シ 〃 7 イ ニ 7 ;^ べ : 妻 ム カ テ 昌 ト ル 事 直 須 旨 外 明 二 宗 一 莫 五 向 三 言 〒 中 H 取 四 レ ノ ロ ヲ 則 三 ト 云 ハ 、 旨 外 明 宗 ト ハ 世 間 ノ 旨 外 ア キ ラ ム ヘ シ ト ナ リ 、 旨 外 ハ 仏 法 ナ ル ユ ヘ ニ 、 向 言 中 取 則 ス ル コ ト ナ カ レ ト 云 ハ 、 言 甑 叩 ニ ト ・ コ ホ ラ サ レ ト 云 心 地 ナ リ、 \ レ カ エ ツ テ か チ ヤ ク ス ン ノ 我 却 疑 著 文 ト 云 ハ 、 口 来 ノ 執 見 ヲ ハ ナ ル ・ ト 云 事 丶、 ウ タ カ ウ ヘ キ 事 ノ ア リ テ ウ タ カ フ ニ ハ ア ラ ス、 坐 禅 ヲ 坐 仏 ト ウ タ カ フ 程 ノ 事 ナ リ、 此 疑 著 ハ 如 何 是 仏 ト 云 程 ノ 事 文 、 如 何 是 仏 ノ 詞 ハ 問 二 似 タ レ ト モ ヤ カ テ 答 ト ナ ル 、 如 何 是 大 用 現 前 ト 云 ハ ム 同 カ ル ヘ シ 、 コ ・ ノ 疑 著 ハ 其 照 妙 ナ ル 所 ヲ 疑 ( 五 八 五
b
) ト 云 フ メ ウ ヘ シ 、 自 妙 ナ ル ヘ シ 、 疑 凡 悩 ト 云 事 ア リ、 今 ノ 疑 ニ ハ コ ト ナ ル ヘ シ 、 不 悟 至 道 程 ノ 疑 ナ ル ヘ シ、 \ 中 ; ノ 与 ル ソ ニ 底 涯 水 清 徹 レ 底 ト 云 ハ 、 ソ コ ナ ク キ シ ナ キ ヲ 云 文 、 物 二 対 シ テ 論 ス ヘ キ 非 ス 、 ユ ヘ ニ 坐 禅 丈 、 徹 底 ノ 行 程 挙 体 ナ ル ユ ヘ ニ 、 魚 ノ 行 コ ト ヲ ソ キ ナ リ 、 魚 ノ 行 事 ヲ ソ キ ト 云 フ 心 地 ハ 、 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 )論
簸
讎
妙
曾
無 毫 忽 之 兆 L ( 其 ・聡
自 ら 妙馨
は・ 曾 て 毫 忽 ・ 兆 無 け れ ば な り ) と い う の は 、 コ 毫 忽 」 が す な わ ち 山 河 で あ り、尽
界
で あ る か ら 「 兆 無 し 」 と い う 。 丶 「 い ま だ将
来 せ ざ る が ご と し 」 と い う の は 、 「将
来
」 と は 将 ち来
る と い う こ と で あ る 。 「 不 対縁
」 で あ る か ら 、 将 ち 来 る も の が あ る は ず が な い 。 〈 第 十 段 ( 14 ) 〉 丶 「 直 須 旨 外 明宗
、 莫 向 言中
取 則 」 ( 直 に 須 く 旨 外 に 宗 を 明 ら む べ し、 言 中 に 向 っ て 則 を 取 る こ と 莫 か れ ) と あ る 。 「 旨 外 明 宗 」 と は 、 世 間 の 「 旨 外 」 を 明 ら む べ し と い う の で あ る 。 「 旨 外 」 は 仏 法 で あ る か ら 。 「向
言 中 取 則す
る こ と 莫 か れ 」 と い う の は 、 言 語 に 滞 る な と い う 意味
あ い で あ る 。 へ 第 十 段( 15 ) V 丶 「 我 却 疑 著 ( 我 れ 却 っ て 疑 著 す ) な り 」 と い う の は 、 日 頃 の 固 執 し た見
解 を離
れ る と い う こ と で あ る 。 疑 う ぺ き こ と が あ っ て 疑 う の で は な い 。 坐 禅 を 坐 仏 と疑
う ほ ど の こ と で あ る 。 こ の 「 疑 著 」 は 「 如何
是 仏 」 と い う ほ ど の こ と で あ る 。 「 如何
是 仏 」 の こ と ぽ は 問 い の よ う で あ る け れ ど も 、 そ の ま ま 答 え と な る 。 「如
何
是大
用 現 前 」 と い う の は 同 じ で あ る 。 こ こ の 「 疑 著 」 は 「 其 照 妙 」 で あ る と こ ろ を 「疑
」 と い う べ き で あ る 。 「 自 妙 」 で あ ろ う 。 疑 煩悩
と い う こ と が あ る 。今
の 「疑
」 に は 異 な る は ず で あ る 。 「 不 悟 至 道 」 ほ ど の 「 疑 」 で あ ろ う 。 〈 第 十 段 ( 悠 ) 〉 き し へ 「 水清
徹底
」 ( 水 清 う し て 底 に 徹 り ) と い う の は 、 底 が な く 、 涯 が な い こ と を い う の で あ る 。物
に 対 し て 論 じ る べぎ
で は な い 。 だ か ら 坐 禅 で あ る 。 「徹
底
の 行 程 」 は 「 挙 体 」 で あ る か ら 、 魚 の 行 く こ と は遅
い の で あ る 。 魚 の 行 く こ と が 遅 い と い 二 二 一『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 坐 禅 人 喪 身 失 命 ス ル 義 丈、 魚 行 急 ナ リ ト モ 云 ヘ シ 、 挙 体 ノ 不 行 ト 云 フ 時 二 、 今 ハ 行 ナ キ 文、 ヒ 徹 底 ノ 行 程 ハ 挙 体 ノ 不 行 鳥 道 丈 ト 云 ハ 、 所 詮 徹 底 清 水 ハ ヤ カ テ 徹 底 清 水 ナ カ ラ 行 ナ リ、 不 触 事 不 対 縁 ヲ 以 テ 清 水 徹 底 ト 文、 知 与 レ ( 五 八 ヲ 六 a ) 照 以 テ 鳥 魚 ト イ ハ ム カ 如 シ 、 ユ ヘ ニ ( 17 ) 魚 ノ 行 コ ト ヲ ソ シ ト モ 、 マ タ 不 行 鳥 道 ト モ 云 コ ノ ァ ア 文、 挙 体 ハ 全 体 ノ 義 丈、 挙 ハ コ ソ ツ テ ト 云 義 丶、 ノ コ サ ・ ル 丈、 タ ト ヘ ハ 世 コ ソ ッ テ ナ ム ト 云 心 地 文、 不 行 ハ ア マ リ ニ ヒ ロ ク キ ハ ナ ク ナ レ ハ 、 行 ト モ イ ピ カ タ キ ヲ 不 行 ト 云 フ、 ロ 清 水 無 魚 ト 云 フ 俗 ノ 詞 ア リ 、 清 水 ヲ 談 ス ル 時、 ス ム サ ウ ヲ 珠 ヲ 入 レ ハ 水 澄 ム 、 象 入 レ ハ 水 ニ コ ル ナ ム ト 云 事 ア リ、 是 櫨 守 ハ 世 間 ノ 事 丶、 底 二 泥 ア ツ マ ル ユ ヘ ニ 」 象 入 ハ ユ コ ル 丶、 今 ノ 水 浩… 徹 底 ハ 底 ナ シ キ シ ナ シ、 ニ コ リ 何 ノ 所 ヨ リ 来 ヘ キ、 我 却 疑 著 ソ 、 徹 底 清 水 ( 五 八 六
b
) ナ ル ヘ キ 丶 、 此 清 水 ニ ハ 徹 底 云 詞 モ 無 レ 詮 ト モ 、 不 行 鳥 道 ト 結 ス ル ユ ヘ ニ 如 レ 此 云“ 丶、 法 身 遍 法 田 介 、 一 二 界 唯 心、 徹 底 清 水 ヲ ナ シ カ ル ヘ シ 、 \ヒ μ ウ メ ; ギ ハ ノ ト ア 事 ;く
空 濶 莫 レ 涯 兮 鳥 飛 杏 ζ ト 云 フ、 空 与 レ 鳥 ハ 坐 ( 空 歟 ( 18 ) 禅 坐 仏 程 ナ リ、 飛 鳥 ハ 飛 鳥 ナ リ、 \ ソ ツ カ シ コ 足 下 無 糸 去 ト 云 ハ 、 足 ノ 下 ニ フ ム 所 ナ キ ヲ 云 フ 、 ユ ヘ ニ 不 触 事 而 知、 不 対 縁 而 照 ト 云 ナ 二 二 二 う 意 味 あ い は 、 坐禅
人 が 喪 身 失 命 す る 意 味 で あ る 。 魚 〔 の 〕行
〔 く こ と が 〕急
で あ る と も い う べ き で あ る 。 〈 第 十 段 ( 17 ) 〉 丶 「徹
底 の 行 程 は 、 挙 体 の 不 行 〈 挙 体 の 不 行 と い う 時 に、 こ こ で は 行 は な い の で あ る 〉 鳥 道 な り 」 と い う の は 、 結 局 、 徹底
の 清 水 は そ の ま ま 徹 底 の清
水 の ま ま で 行 く の で あ る 。 「 不 触 事 」 「 不 対 縁 」 を 「 清 水 徹底
」 と い う の で あ る 。 知 と 照 と を 鳥魚
と い う よ う な も の で あ る 。 だ か ら 魚 が 行 く こ と が 遅 い と し て も 、 不 行 鳥 道 と も い う の で あ る 。 「 挙 体 」 は 全 体 の 意 味 で あ る 。 「 挙 」 は こ ぞ っ て と い う 意 味 で あ る 。 残 さ な い の で あ る 。 た と え ば 、 世 こ ぞ っ て な ど と い う 意 味 あ い で あ る 。 「 不 行 」 は あ ま り に ひ ろ く て際
が な く な る か ら、行
と も 言 い が た い の を 「 不 行 」 と い う 。 丶 「 清 水 無魚
」( 水 清 け れ ば 魚 な し ) と い う 俗 の こ と ぽ が あ る 。 「
清
水 」 を 説 く と き、 珠 を 入 れ る な ら ば 水 は 澄 む 、 象 を 入 れ る な ら ば 水 は濁
る な ど と い う こ と が あ る 。 こ れ ら は 世 間 の こ と で あ る 。底
に 泥 が 集 ま る か ら、 象 が 入 れ ば 濁 る の で あ る 。今
の 「 水 清徹
底
」 は底
が な く 涯 が な い 。濁
り は ど こ か ら 来 る だ ろ う 。 「 我 却 疑 著 」 ( 我 れ 却 っ て 疑 著 す る ぞ ) 〔 で あ る 〕 。 「徹
底
清 水 」 で あ る は ず で あ る 。 こ の 「 清 水 」 に は 「 徹底
」 と い う こ と ば も 無 用 で あ る け れ ど も、 「 不行
鳥 道 」 と 結 ぶ か ら こ の よ う に 言 う の で あ る 。 法身
遍 法 界 ・ 三 界 唯 心 ・徹
底
清 水 は 、 同 じ は ず で あ る 。 〈 第 十 段 ( 18 ) 〉 へ 「 空 闊 莫 涯兮
、鳥
飛 杏 杏 」 ( 空 闊 う し て 涯 り な く 、 鳥 飛 ん で 杏 杏 た り ) と あ る 。空
と 鳥 は 坐 禅 と 坐 仏 ほ ど で あ る 。 飛 鳥 は 飛 空 で あ る 。 〈 第 十 段 ( 20 ) 〉 丶 「足
下 無糸
去 」 ( 足 下 、 無 糸 に 去 く ) と い う の は 、 足 の 下 に 踏 む と こ ろ が な い の を い う 。 だ か ら 「 不 触 事 而 知 、 不 対 縁 而 照 」 と い う の で あ る 。リ 、 《 ζ ” 只 在 這 裏 ヲ キ ヲ イ 云 ト イ フ ハ 何 事 ヲ イ ハ ム モ 只 在 這 裏 ノ 道 理 二 不 レ 可 レ 背、 此 ユ ヘ ニ キ ヲ ヒ イ ・