• 検索結果がありません。

シリカナノファイバー細胞培養担体の熱処理による

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "シリカナノファイバー細胞培養担体の熱処理による"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

シリカナノファイバー細胞培養担体の熱処理による 細胞接着能および増殖能の向上

山口 哲*1 境 慎司*2 渡邉 理恵*3 多羅尾 隆*3 川上 幸衛*2

Heat Treatment of Electrospun Silicate Fiber Substrates Enhances Cellular Adhesion and Proliferation

Tetsu Yamaguchi, Shinji Sakai, Rie Watanabe, Takashi Tarao, and Koei Kawakami

静電紡糸法を用いて作製されるナノレベルの直径を持つナノファイバーは,その細さから様々な用途開発に期待 されている素材である。本研究所では,再生医療や有用たんぱく質生産ならびに各種分析用途に展開するため,本 方法で作製したナノファイバー不織布を用いた動物細胞用担体の開発を行っている。本論文では ,シリカで作製さ れたナノファイバー不織布細胞培養担体に熱処理を加えることで,動物細胞と不織布との接着率ならびに不織布上 における動物細胞の増殖率が向上することについて報告した。

1 はじめに

ゾル-ゲル反応を利用して作製されるシリカは純度 が高く, また物 理化学 的な 安定性に 富むこ とから , 様々な用途に用いられている。また,最近の研究で生 体適合性も高いことが判明しており,細胞培養担体や 骨再生置換材料など多くの生体材料への応用が期待さ れる素材である1)

一方で,近年,簡便にナノレベルの直径の繊維を作 製可能な静電紡糸法が注目されている 2)。本方法は高 粘性流体に高電圧を印加させることでサブミクロン - ナノオーダーの直径の繊維を作製することが可能な手 法である。溶融紡糸などの既存の紡糸方法と比較する と,常温常圧で紡糸することが可能であり,さらに,

可溶な素材であれば,紡糸可能であることから,高機 能性フィルターや触媒,医療材料など多くの新製品開 発が行われている。

本研究では,静電紡糸法を用いて作製されるシリカ 不織布(Silicate nonwoven fabrics: SNF)を用いて 3 次元的に動物細胞を培養可能な担体を開発している。

そのなかでも,シリカの耐熱性を利用し,熱処理とい う簡便な手法を用いることで,シリカ不織布上におけ る動物細胞の接着率,増殖率を操作可能であることを 報告する。

2 実験手法

2-1 SNFの作製

テトラエトキシシラン(TEOS),エタノール,精製水, 塩化水素をそれぞれ 1:2:2:0.01 のモル比にて混合し て得られるゾルに,10kV の電圧を印加させることで直 径約 300nm のシリカナノファイバーからなる不織布を 作製した(図 1a)。

ゾル-ゲル法を用いた生成物は,多くのシラノール 基を有していることが知られている。このシラノール 基はシリカ生成物に焼成処理を施すことにより脱水縮 合反応が進行し,Si-O-Si の組成となる。一方で動物 細胞は疎水的表面に付着しやすいとの報告があること から,本研究では未焼成の SNF(nSNF)ならびに 500℃

で 3 時間の焼成処理を施した SNF(hSNF)をそれぞれ準 備した(図 1a, b)。

2-2 細胞培養条件

それぞれのSNF上に肝細胞株HepG2を5×105cells/ml の細胞懸濁液を1ml播種した。その後,14日間の培養 実験を行い,培養1日目の細胞接着率,培養期間にお ける細胞増殖能を比較評価した。培養期間中における 細胞の形態は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いることで 観察した。

3 実験結果および考察

3-1 SNFの細胞接着率ならびに増殖能評価

図2aに培養1日目の細胞接着率,図2bに14日の培養 期間における細胞増殖能の比較を示す。SNFに焼成処 理を加えることで,未焼成のSNFと比較すると細胞接 着率は約55%から約80%に向上した(図2a)。細胞増殖

*1 生物食品研究所

*2 九州大学

*3 日本バイリーン株式会社 研究所

(2)

能については,培養7日目までは特に差異は見られな かったが,培養14日目ではnSNFはhSNFよりも2倍ほど 高い細胞増殖能を示した(図2b)。細胞形態については,

nSNF上のHepG2細胞は培養3日目から球状の細胞塊を形 成していた(図1 c,e)。対照的にhSNF上のHepG2細胞は SNFの繊維に付着し,SNF全体を覆った(図1 d,f)。

3-2 nSNFとhSNFの表面解析

肝細胞を細胞培養担体上で培養した場合,その担体 の表面の親疎水性が細胞の形態に影響するとの報告が ある3)。本研究で用いたSNFは,ゾル-ゲル反応を用い て作製している。そのため,SNF表面には未反応の水 酸基が残存しており,その水酸基がSNF表面の親疎水 性に影響を与えていると考えられる。そこで,nSNFを 加熱した際に脱離すると予測される水分子の量を昇温 熱脱離・熱分解-質量分析法(TPD-MS)を用いて分析し た。また,中和滴定法を用いてnSNFおよびhSNFの表面 水酸基量を分析した。

図3aにTPD-MS解析,図3bに中和滴定法による表面水

酸基の定量結果を示す。その結果,nSNFは加熱により 水分子の脱離が起こることがわかった(図3a)。また,

表面水酸基量については,nSNFと比較すると,hSNFの 水酸基量は5%以下に減少していた(図3b)。これらの結 果から,SNF表面水酸基の減少に伴い,表面がより疎 水的に変化することによって,HepG2細胞とSNFとの接 着性の向上,形態変化,ならびに増殖能に影響を与え たことがわかった。

4 結言

本研究では,SNF表面の水酸基に注目し,シリカナ ノファイバー不織布に熱処理を与えるという簡便な作 業によって肝細胞HepG2の接着性,増殖能,培養形態 を操作可能であることを示した。このことは,動物細 胞の3次元培養手法に関する新たな知見を得ることが できたものと考えられる。

5 参考文献

1)Ahola M S et al., Biomaterials, Vol.22: pp.2163- 2170(2001)

2)Travis J S and Horst A R, Biomaterials, Vol.29: pp.

1989-2006(2008)

3)Green J A and Yamada K M, Advanced Drug Delivery Reviews, Vol.59: 1293-1298(2007)

6 掲載論文

Journal of Bioscience and Bioengineering, Vol.109 (3): pp.

304-306(2010)

図 1 nSFN および hSNF の形態写真 図 3 TPD-MS を用いた脱離水分子の比較(a)ならびに 中和滴定法を用いた表面水酸基の定量(b)

図 2 nSFN および hSNF の細胞接着率(a) および細胞増殖能の比較

図 1 nSFN および hSNF の形態写真  図 3 TPD-MS を用いた脱離水分子の比較(a)ならびに  中和滴定法を用いた表面水酸基の定量(b)

参照

関連したドキュメント

工夫とコツ ディッシュを用いた蛋白質の大量発現

主要な研究成果

そして、 これらの基礎的研究を基に、 マクロファー

   メキシコイトスギ培養細胞がヒノキチオール(β 一一tY}ujapliciR)を生産す ることは既に報告されている1

能になる.昆虫培養細胞に関しては,AcMNPV の

ブタ胆汁酸、5 種類のコール酸(CA 、DCA 、 GCA 、GCDCA 、CDCA) 、マレイン酸、オレ

B14a8 ビスフェノール A がもたらす細胞毒性 嵯峨

すぐれた総説3)4)があるので,今回は培養糸球体内