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培養糸球体内皮細胞とメサンギウム細胞の相互作用

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Academic year: 2021

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総  説 〔東女医大誌 第63巻 第11号頁1295∼1299平成5年11月〕

培養糸球体内皮細胞とメサンギウム細胞の相互作用

       東京女子医科大学 第四内科 ニッタ  コウサク  ウチダ  ケイコ   ユムラ  ワ コ   ニヘイ   ヒロシ

新田 孝作・内田 啓子・湯村 和子・二瓶  宏

(受付平成5年6月3日) Cell・Cell Interactions of Glomerular Endothelial Cells and Mesangial Cells In Vitro Kosaku NITTA, Keiko UCHIDA, Wako YUMURA and Hiroshi NmEl    Department of Medicine, Kidney Center, Tokyo Women’s Medical College   Glomerular endothelial cells(GEN)neighboring mesangial cells(GMC)Iine glomerular capillary wall. It is suspected that there is active cell−cell interaction between GEN and GMC. However, few studies have done concerning interactions of GEN and GMC. This is due to the difficulty of culturing GEN. We cloned bovine GEN in culture and established a co−culture system of GEN and GMC. Here, we have focused on the role of soluble mediators in the regulation of cell−cell interactions between GEN and GMC in vitro.          はじめに  糸球体内皮細胞は糸球体毛細血管係蹄の内側を 被覆する単層の細胞であり,細胞間にslitsを形成 し濾過機能の一端を担っている.一方,メサンギ ウム細胞は平滑筋細胞類似のミオシンやアクチン に富む細胞で,その収縮弛緩により糸球体濾過率 を調節していると考えられている.これらの細胞 関係は血管内皮細胞と平滑筋細胞のアナログと推 定される.図1に示すように,糸球体内皮細胞と メサンギウム細胞の間には基底膜様構造がなく, 隔壁なしに接している.よって,両細胞間には活 発な相互作用が存在すると想定される.しかし腎 生検で得られた組織からの形態学的アプローチで 両細胞の関連性を検討するのは困難で,細胞培養 という非生理的条件下での検討の結果より類推せ ざるを得ないのが実状である.Ballermannによ り糸球体内皮細胞の培養法が報告され1),その再 現性も確認されてきた2}.今回は,腎糸球体内皮細

胞とメサンギウム細胞の相互作用についてin

vitroの結果を中心に概説する. 轟』: 餐 望1、

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図1 腎糸球体内皮細胞とメサンギウム細胞の位置関  係  透過型電顕写真×2,000,E:内皮細胞, M:メサン  ギウム細胞.(bar=10μm)    糸球体内皮細胞の生物学的特徴 培養メサンギウム細胞の特性に関しては,既に

(2)

すぐれた総説3)4)があるので,今回は培養糸球体内 皮細胞の生物学的特徴についてふれる.Baller− mannが報告したように,糸球体内皮細胞は第Viil 因子関連抗原が陽性で,アセチル化10w density lipoproteinを取り込み, angiotensin−converting enzyme活性を有し,大血管や毛細血管系から分 離した内皮細胞と同様のマーカーを細胞の同定に 用いることができる5).大血管系の内皮細胞と比 べて異なる点は,血清依存度が高くその生物活性 の維持のため丘broblast growth factor(FGF)の 添加が必要であること.また,培養皿にあらかじ めコラーゲンやフィブロネクチンを塗布する必要 があり,トリプシンに対する感受性が高く,凍結 保存した細胞は解凍後に生物活性を維持すること

が困難であることなどである.形態学的には

Weibel−Palade小体を認めず,生理活性物質の一

つであるプ白スタグランディン(PG)として

PGE2を最も多く産生するなどの特徴をもつ6).       Co・culture法の実際

 糸球体内皮細胞とメサンギウム細胞をco−

cultureするにあたっていくつかの問題点がある. まず,同一のウシ腎より細胞活性のよい糸球体内 皮細胞とメサンギウム細胞をクローニングするこ とが困難であることである.特にメサンギウム細 胞の生物活性が低いと,継代するにしたがって増 殖率が悪くなる傾向がある.実際,Uchldaら7)は co−culture実験にラット腎由来のメサソギウム細 胞を用いている.最近,同一のウシ腎よりクロー ニングした両細胞をco−cultureすることに成功 した8).また,両細胞の増殖率が異・なるため,・CO− cultureするタイミングが難しいことである.一般 には,FGFを使用しているため糸球体内皮細胞の 増殖が速く,先にメサソギウム細胞を培養してお くことが望ましい.さらに,co・cultureの方法に は,両細胞が接着する場合と接着しない場合の2 つの方法がある.前者の場合には形態学的変化を 観察するには問題ないが,液性因子の作用を検討 する場合,どの細胞から分泌された因子の効果な のか判断できないので工夫が必要である.例えば, 一方の細胞をマイトマイシンで処理することによ

りgrowth arrestingの状態にしてからco・

cultureする必要がある.また,後者の場合,つり 下げ型のco−culture系を用いると,細胞どうしが 接することによる変化,特に細胞外基質の影響を 観察できず,液性因子の作用しか観察できないと いう限界がある.さらに,糸球体内皮細胞は市販 のculture insertに接着しにくいという欠点があ る.よって,co−cultureする場合,メサンギウム細 胞をculture insertに培養することが望ましい. これらの問題点を考慮の上,目的に応じてco− cultureの方法を選択することが肝要である.    糸球体内皮細胞とメサンギウム細胞    の相互作用  この領域ではthymidirleの取り込み率や細胞 数の変化などを指標にして,細胞増殖能の変化に ついて検討されている.Castellotらはラット腎か ら分離した糸球体内皮細胞とメサンギウム細胞を 用いて,後者の増殖性に対する前者の役割を検討 している9).糸球体内皮細胞の培養上清から得た conditioned medium(CM)を通常の増殖用培養 液と1:1の割合で混合すると,メサンギウム細 胞の増殖は60∼70%抑制され,1:9の割合で希 80 60

6

3

歪4。 § ≡ 岩  20 0 OGEN only ●GEN co−cultured with GMC      0     2     4     8          Time(days) 図2 糸球体内皮細胞の増殖におよぼすメサンギウム  細胞の影響一両細胞が接着した系でのco・culture  の作用一  GEN:糸球体内皮細胞, GMC:メサンギウム細胞.  (一〇一):糸球体内皮細胞のみ,(一●一):メサンギウ  ム細胞と糸球体内皮細胞のco−culture.

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箆 隻 葦 邑 一●一CM 一(〉一PDGF(10ng/m建) A c.nditbnedmedium(%) Bo 5 A.,、P島,,μ9、。。20  図3 培養メサンギウム細胞に対する糸球体内皮細胞の培養上清(CM)の作用と抗  PDGF抗体による阻害効果  A:CMの濃度依存曲線, B:CMに対する抗PDGF抗体の作用. C●一):CM,  (一〇一):PDGF(10ng/ml). 釈すると増殖は刺激されると報告している.この 作用ぽヘパリナーゼの添加で阻害されることよ り,糸球体内皮細胞が分泌するヘパリン様物質に よるものであると考えられた.また,Ballermann

はメサソギウム細胞の培養上清から得たCMは

糸球体内皮細胞の増殖活性に影響しないと報告し ている1).両細胞を短時間co−cultureした場合に は,糸球体内皮細胞の増殖性に有意な変化を認め ないが,6日間培養すると抑制されることを示し た.この場合,co−culture実験に用いた細胞密度が 問題である.我々は,同一のウシ腎より得た糸球 体内皮細胞とメサンギウム細胞を直接,接触しな い状態でco−cultureし,両細胞のthymidineの取 り込み率を測定したところ,内皮細胞の増殖は 15%抑制され,メサソギウム細胞のそれは20%促 進されることを報告した8).また,両細胞が接着し ている場合,マイトマイシンで処理したメサンギ ウム細胞と同じ密度でco−cultureすると内皮細 胞の増殖性は有意に抑欄された(図2).我々は, メサンギウム細胞による糸球体内皮細胞の増殖抑 制効果に,両細胞のco−cultureによるtransform− ing growth factor(TGF)一βの活性化が関与して いることを見出した10).一方,糸球体内皮の培養上 L5 奮雪瀞 ざ § 函 ま1}・5  0.0.   0      21}         40         60       「19iI1篭e {111in., 図4 メサンギウム細胞のプロスタグランディン  (PG)E2産生に及ぼす糸球体内皮細胞とのco−  cultureの影響  *p<0.01.(一●一):メサンギウム細胞のみ,(一〇  一):糸球体内皮細胞とco・cultureしたメサンギウ  ム細胞. 清にはメサンギウム細胞の増殖を刺激する因子が 含まれており(図3A),その作用は抗platelet− derived growth factor(PDGF)抗体により.抑制 されることから(図3B), co−cultureによるメサン ギウム細胞の増殖促進効果は糸球体内皮細胞由来

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PDGF様物質を含むいくつかの液性因子により

制御されていることは確実である.一方,増殖活 性以外の検討ではUchidaらの報告7)がある.ウシ 糸球体内皮細胞とラット腎由来メサンギウム細胞 を用いてco−culture系を確立し,メサンギウム細 胞のPGE2産生におよぼすco−cultureの影響につ いて検討している.両細胞を24時間co−cultureし

た場合,単独培養に比しメサンギウム細炮の

PGE2産生量は時間依存性に増加することを見出 した(図4).また,この作用はエンドテリン・ 1(ET−1)に対する抗血清で阻害されることによ り,糸球体内皮細胞由来のET−1によることを示 した.さらに,co−culture後にET−1で刺激した場 合のメサンギウム細胞のPGE2産生量は低下して いることを報告した(図5).Co−cultureによるメ サソギウム細胞のPGE2産生低下は, ET−1のメサ ンギウム細胞に対する結合実験の結果,ET−1受容 体数の低下によるものと判明した.今後,受容体 以後のsignal transduction pathwayの変化に関 する研究が望ま1れる.図6に糸球体内皮細胞とメ サソギウム細胞の増殖制御に関する相互作用につ いてまとめた.両細胞から分泌される種々の液性 因子を介してその増殖が制御されていると考えら れ,このバランスの破綻が糸球体腎炎の際の増殖 TGF一β

GBM

妻雛…・… ∈∋

  PDGF一娚

  蒔ke substance

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〔 図6 糸球体内皮細胞とメサンギウム細胞の増殖制御  に関する相互作用  E:糸球体内皮細胞,M:メサンギウム細胞.  GBM:糸球体基底膜, PDGF:platelet−derived  growth factor, TGF一β:tranSforming growth  factor・β. 性変化を促進しているのであろう.          おわりに  現在,糸球体内皮細胞とメサンギウム細胞の相 互作用に関する研究は始まったぽかりであり, 種々の側面からの検討が期待される.Satoら11)は 平滑筋細胞あるいはpericytesとco−cultureする と,内皮細胞の増殖は抑制されると報告している.

この作用の一部にプラスミンによる潜在型

TGF一βの活性化が関与することを見出した.糸球 体内皮細胞とメサンギウム細胞の相互作用におい ても同様の現象を確認しており,TGF一βの活性化

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のメカニズムに関する新しい事実が明らかになる ことを願ってやまない.        文  献   1)Banermann BJ: Regulation of bov玉ne      glomerular endothelial cells in vitro. Am J      Physio1256:C182−C188, 1989   2)Nitta K, Simonson MS, Dunn MJ:The regu−      lation and role of prostaglandin biosynthesis in      bovine g玉omerular endothellal cells. J Am Soc      Nephro12:156−163,1991   3)K:reisberg JI, Karnovsky MJ:Glomerular      cells in culture. Kidney Int 23:439−448,1983   4)StrH{er GE, Striker LJ: BioIogy of disease;      910rnerular cell culture. Lab Invest 63:      122−131, 1985   5)Striker GE, Soderland C, Bowen−Pope DF et      ai: Isolation, characterizat量on, and.propaga・      tion of human glomerular endothelial ce11s in      vitro. J Exp Med 160:323−328,1984   6)新田孝作,内田啓子:実験講座;ウシ腎糸球体内    皮細胞の培養法,血管と内皮 3:78−80,1993 7)Uckida K, Ballermann BJ:Sustained activa−    tion of PGE2 synthesis in mesangia}cells    cocultured with glomerular endothelial cells.    Am J Physiol.258:C200−C209,1992 8)内田啓子,新田孝作,大図弘之ほか:ウシ腎糸球    体内皮細胞の生物学的特徴.医のあゆみ 163:    151−152, 1992 9)Castellot JJ, Hoover RL, Karnovsky M[」:    Glomerular endothelial cells secrete a heparin・    like inhibitor and a peptide stimulator of    mesangial cell proliferation. Am J Patho1125:    493−500, 1986 10)新田孝作,内田啓子,村井克尚ほか:腎糸球体内    皮細胞の増殖制御におけるメサンギウム細胞の役    割. 日腎誌  35:663−6691 1993 11)Sato Y, Rifkin DB:Inhibition of endothelia豆    cell movement by pericytes and smooth muscle    cells:Activation of latent transforming grQwth    factor・beta like molecule by plasmin during    co−culture. J Cell Biol 109:309−316,1989

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