今日の話題
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化学と生物 Vol. 52, No. 1, 2014
ろ胞型ヘルパー T 細胞( T FH 細胞)による抗体産生制御
IL-4 による抗体産生制御
リンパ節や脾臓は免疫反応が営まれる器官として知ら れている.抗体産生は2次リンパ組織内に存在するリン パろ胞に局在する成熟型B細胞が,抗原とT細胞と出会 うことによってプラズマ細胞へと変化することによって 起動する.抗体は成熟型B細胞がプラズマ細胞になるこ とによって産生される.成熟型のB細胞は抗原と出会う 静止期には膜型のIgM抗体を細胞表面にもち,この細 胞は2次リンパ組織内の白脾髄にリンパろ胞を形成す る.抗原に活性化されると抗原提示に必要とされる MHC分子を発現することで,T細胞と会合することが 可能となる.T細胞と会合したB細胞は,胚中心を形成 することで,抗体産生に必要とされるサイトカインをT 細胞より受け取ることができるようになる.この抗体産 生に必要とされるサイトカインとして知られるのが IL- 4, IL-21, IFN
γ
である.B細胞にこれらサイトカインが 働くことにより,免疫グロブリン遺伝子はIgMクラス からIgGなど別のクラスの抗体へとスイッチする.マウ スでは,IL-4はIgG1とIgEへのクラススイッチを,IFNγ
はIgG2のクラススイッチを,TGFβ
はIgAのクラスス イッチを制御することが知られている(1〜3).IL-21は単 独での機能としては,IgG1の抗体産生に働くのに対し,IgEに対しては抑制的に働き,B細胞自身の増殖にも働 くサイトカインである.一方,IL-4とIL-21の両方を欠 くマウスは,すべてのクラスのクラススイッチが起こら ないことから,抗体産生においてこの2つのサイトカイ ンはキーとなるサイトカインと考えられる(4).したがっ て,T細胞はこれらサイトカインの産生源として働くこ とで,抗体産生を制御すると考えられている.そのた め,IL-4を産生するT細胞として,抗体産生を制御する T細胞はTH2細胞と考えられてきた.ところが,最近の 研究から抗体産生に働くIL-4はTH2細胞ではなくリン パろ胞に局在するリンパろ胞型ヘルパー T細胞:TFH 細胞に由来することが明らかになった(5, 6).
TFH はリンパろ胞に分布してB細胞におけるクラスス イッチを制御するとともに,胚中心の形成にかかわると ともに,記憶B細胞における affinity maturation の構築 を制御するヘルパー T細胞サブセットとして働き,主 にIL-4とIL-21を産生することがその特徴と考えられて
い る(7).機 能 解 析 と 細 胞 表 面 マ ー カ ー の 解 析 か ら CD62Llo, CD44hi, PD-1+, ICOS+, CXCR5+ がTFH の特徴 的なマーカーとされた(8).このようにケモカイン受容体 であるCXCR5の発現は,T細胞がB細胞ろ胞へと移行 するうえで,また重要な機能分子ともなる.B細胞とと もに胚中心の形成にかかわる.BCL6はTFH 細胞特異的 に発現が見られる転写因子として知られ,T細胞にこの 転写因子を強制発現させるとCXCR5の発現が誘導さ れ,GCに 集 積 し てTFH と し て 働 く.BCL6に よ り CXCR5を発現するようになったT細胞は,TFH として B細胞ろ胞へと移行し,B細胞とともに胚中心を形成する.
BCL6はTFH 細胞やリンパろ胞に局在するB細胞に発 現する転写因子で,エフェクター活性を規定する転写因 子Blimpと拮抗的に働くことで,その機能が規定されて いる(9).最近のBCL6-GFP融合タンパク質をトレーサー とする2光子励起顕微鏡による生体深部イメージング解 析から,胚中心に移行するためにはT細胞とB細胞とも にBCL6の発現が上昇する必要があることが示され た(10).SAPはBCL6同様,抗体産生に重要な働きをもつ シグナル分子である.SAP欠損マウス ( −/−) は,
TFH と胚中心を欠き,その結果としてウイルス感染に伴 うIgG抗体の産生を欠損していた(11).このことから,
SAPシグナルは,TFH と胚中心の形成に重要な働きをも つことが報告されている.この −/− で観察され た抗体産生の障害は,Ly108欠損マウス (Slam6−/−) と の交配により,正常状態に戻せることから,Ly108は SAPシグナルを抑制的に制御していることが明らかにさ れた(12).以上のことから,BCL6とSAPシグナルは,
TFH と胚中心の形成に必須の分子であり,これらいずれ を欠いても,TFH と胚中心が形成されないのとともに,
抗原特異的に起こる抗体産生は強く障害を受ける.この ことから,TFH 細胞の存在は胚中心の形成のみならず,
外来抗原に対して抗体を作るという液性の免疫反応にお いて重要な働きをもつことが示されている.
遺伝子の転写制御は遺伝子座内に点在する非転写 制御領域によってその転写発現がコントロールされてい る. 遺伝子に存在する非転写制御領域には,プロモ ター領域に加え,HS2, 3′UTR, HS4, CNS2 などが同定さ
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れており,それぞれ異なる細胞で異なる制御領域が使わ
れている(13〜15).そのなかでもHS2は幅広いIL-4産生細
胞の転写制御にかかわっており,HS2を欠失させたマウ スでは,TH2細胞とTFH 細胞いずれのT細胞からのIL-4 産生が抑制される.一方,CNS2を欠失させたマウスで は,TFH 細胞からのIL-4産生は抑制されるが,TH2細胞 からのIL-4産生は抑制されない.また,CNS2欠損マウ スではIL-4依存的にB細胞で作られるIgG1とIgEクラ スの抗体が低下していた(6).しかしながら,このマウス ではTH2細胞によって起こる喘息反応などのアレル ギー反応は正常に見られた.このことからCNS2は,抗 体産生に関与するIL-4の産生を制御するエンハンサー 領域であり,アレルギー反応に関与するIL-4は異なる制 御メカニズムおそらくHS2による制御によることを示 していた.これまで,T細胞から産生されるIL-4によっ て制御されるIgG1とIgE抗体は,TH2細胞より産生さ れるIL-4によって制御されると考えられていた.しか しながら,われわれの知見はこれら抗体の産生はTFH 細胞由来のIL-4により制御されていることを示していた.
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15) S. Tanaka : , 12, 77 (2011).
(久保允人,東京理科大学生命医科学研究所,理化学 研究所統合生命医科学研究センター)
プロフィル
久保 允人(Masato KUBO)
<略歴>日本大学農獣医学部畜産学科卒 業/1991年東京大学大学院医学系研究科 にて医学博士を取得後,トロント大学に続 き Syntex Research 研究所に留学/日本 シンテックス新治リサーチセンター免疫研 究所にて研究員を経て,1995年より東京 理科大学生命科学研究所/2000年同助教 授/2003年理研横浜研究所免疫・アレル ギー科学総合研究センター/2009年東京 理科大学生命科学研究所分子病態部門教 授/2013年理化学研究所統合生命医科学 研究センターサイトカイン制御研究チーム 兼務<研究テーマと抱負>アレルギー,イ ンフルエンザ感染症.インフルエンザウイ ルスに対する効率のより抗体を誘導する技 術を確立することにより,T細胞を使った 新しいワクチンの開発を目指す<趣味>プ ロ野球選手になりたかった免疫学者(日本 ハム・西武のプロテストを受けるが落選). 現在でもバッティングセンターに通って調 整中.阪神タイガース/柏レイソルファン 図1■2次リンパ組織におけるろ胞 型ヘルパーT細胞の役割とその制 御
抗原によって刺激されたナイーブT 細 胞 は,ろ 胞 型 ヘ ル パ ー T細 胞
(TFH) へと分化し,B細胞とともに 胚中心へと移行する.その際, 遺 伝 子 座 上 に あ る 制 御 領 域CNS2は,
TFHからのIL-4産生を制御する.T 細胞は抗原を介してB細胞からと会 合するとともに,産生したIL-4によ り抗体の産生を誘導する.