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子どもたちが協働で取り組む科学的探究学習2 自作 野草マップから課題を作り,探究活動を通して,自然 観を広げる(中1年理科)

著者 竹澤 宏保

雑誌名 福井大学教育実践研究

巻 33

ページ 85‑92

発行年 2009‑01‑31

URL http://hdl.handle.net/10098/1947

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Ⅰ 学びのストーリー

1.植物の世界に誘う 花のつくり を調べる

附属中学校の校地にはツツジやフジの樹木が多数植え られており,毎年ゴールデンウィークの頃に,満開の頃 を迎える。それらは身近に自然を感じさせ,自分の手で 自然を調べる格好の観察の対象である。また,校地に生 えているものを調べるという学習は入学して間もなく,

中学校そのものに関心の高い時期の1年生にとっては,

興味ある素材である。子どもたちはそれまでの理科の学 習の中でスケッチの仕方や顕微鏡の基本操作方法などを 習得してきた。その技能を活かした調査活動になると,

鏡下での発見に様々な声が上がる。

悠仁:(ツツジの子房にメスを入れて)ツツジの中から,い っぱい種みたいなのが出てきた。

泰造:それは胚珠や。

教師:そう。ツツジはたくさんの胚珠があって,それらが種 子になるんだね。

雛子:(フジの子房にもメスを入れて)フジにも,胚珠がい っぱい並んでいる。

花本来の役割は,次世代を作り出すための生殖器官で あり,植物は種を維持させるために花弁を様々な形に進 化させてきた。したがって,花のつくりには多様性があ り,その形状によってはたらきも異なってくる。そんな 多様性を実感するためにマツの観察を行う。一通りりん 片の観察や空気袋の付いた花粉の観察を行う。

教師:マツの花粉にはどうして,空気袋があるのかな?

里奈:花粉を風で運ぶためです。

教師:なるほど。花粉を風で飛びやすくして,広い範囲に散 らばり,受粉させるんだね。花粉を待っているマツの 胚珠はどこにありましたか?

生徒:(教師の持つマツの小枝の先端を指差し)雌花。

悠仁:地味やね。

教師:確かに。マツってツツジやフジに比べて,雄花も雌花 も地味だよね。どうしてかな。

泰造:ツツジはハチに花粉を運んでもらうために,ハチを誘 き寄せるためにきれいな花をしているけれど,マツは 風によって花粉を運ぶので,ハチを引き寄せる花が必

要ないからです。

教師:マツにはきれいな花が必要ないから,ないんだね。

(虫媒花,風媒花の説明が続く)

泰造は科学的な好奇心が旺盛で,知識も豊富である。授 業中なども積極的に既有の知識を活かした発言が多い。

また,このような発言は他者にとっても刺激となり,ク ラス全体の学習が膨らんでいく。

教師:じゃ。マツみたいに地味で目立たない花を咲かせる 植物どんなの知っている?

生徒:・・・

唯子:コケがそうだと思います。

生徒:あ〜。

泰造:コケは種じゃなくて,胞子で増えるんだよ。

イネ科やカヤツリグサ科など,風媒花で目立たぬ花を つける種子植物は通学路の脇やグランドの隅々にはいっ ぱい存在する。イネやタケを紹介したが,多くの子ども たちにとって意識化にある植物とは,自分自身が生活や 学習の中で働きかけた経験のある鮮やかな花弁を付けた 草花であることは当然である。その中で,目立たない花 は?という教師の問いかけにコケが挙がった。泰造の言 うとおり,コケは胞子植物なので,地味な花どころか,

花そのものがない。この発問は目立たない花の植物と花 を咲かせない植物を混同させる発問であった。植物には,

種子植物以外にも,胞子で仲間を増やす仲間がいること を指摘し,実際にグランドに出ていろいろな植物を見て みることにした。

2.探究のための予備調査「野草マップ作り」

まずは,外に出てどのような植物が生えているのかを 観察した。5月の頃,校地にはシロツメクサ,コメツブ ツメクサ,ハルジオン,ナズナなど小さな花を付けてい る植物も多いが,花の目立たないスズメノカタビラはあ らゆるところに生えている。これら典型的な野草を子ど もたちに示してグループごとの野草マップ作りを持ちか

子どもたちが協働で取り組む科学的探究学習2

自作野草マップから課題を作り 探究活動を通して 自然観を広げる 中1年 理科

福井大学教育地域科学部附属中学校 竹 澤 宏 保 教育実践報告

1年生の春。これまで,附属中学校での探究的な学習を進める手始めとして,植物の分布を調査し,

そこかで発見できた気づきや疑問をクラスで合意形成し,探究する単元展開を実践してきた。今春もそ の展開例を実践するとともに,新学習指導要領の内容を加味し,子どもたちが植物の生存のための巧み な営みを探究しながら学ぶことをねらって実践を行った。しかし,実践をすすめ,省察するなかで,昨 年とは異なる探究の構造に問題があったことにも気づいていく。

キーワード:探究するコミュニティ 植物 科学的探究 協働学習

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(3)

けた。

調査の対象は自然に生えている野草とし,グループ内 で手分けして,校地全域を調査した。その際,出来上が ったマップにはどのようなことを表現するとよいのかを 予め子どもたちと確認し,調査を行った。確認した表現 すべきことは,「どんな植物が生えているか」「どこに生 えているのか」が分かるマップである。マップの作成で は昨年から,色シールによって植物を表現している。昨 年は出来上がったマップに子どもたち自身が愛着を持て ないと振り返ったが,制作時間の短縮は,後の探究の時 間を確保するという理由でやむを得ない。

マップや黒板の一覧を見て,どのようなことを気づいた かを話し合った。

唯子:カタバミやコケはコンクリートの隙間などにも生えて いますが,シロツメクサはその様なところには生えず,

決まって土の上に生えています。

正輝:根の生え方が違うからではないの。(そうかもしれな いという意見多数)

沙紀:生えている場所も植物によって,土とか樹木の上とか コンクリートとか違っているのはどうしてですか。

紀子:唯子さんの意見はすごいと思います。植物って,自分 にとって一番住みやすい場所を選んで生えているのだ と思います。

雛子:日陰と日向では違う植物が生えているので,その植物 もその温度に合う体をしていないといけないと思いま す。

悠仁:でも,ほとんどの植物が日向に生えています。植物っ て成長するのに日光が必要だから。

柚子:種子植物はけっこう日向に生えていたけど,コケのよ うな植物はじめじめした場所に生えている。(同調す 図1 マップに調査結果を貼る

表1 1年C組がとらえた植物の生え方

色シールの種類に限りがあるので,共通に調べる植物 を絞った。

教師:この 1 年 C 組だからできるマップにしたいのだけれ ど,アイディアない?

里奈:これまでの授業で出てきた植物を調べるといいと思い ます。

教師:いい考えだね。じゃどんな植物になるかな。

この問いかけに,真っ先に出てきたのが,コケである。

このほかにタンポポなども挙げられた。これらを共通の 調査植物とし,他にも班独自で調べる植物を決めて,マ ップ作りを行った。

調べる植物を限定しているために,調査にそんなに時 間はかからない。男女でエリアを分けて調査し,その結 果を,シールを使ってマップ(A3版)の用紙に表現し ていく(図1)。班の中には,分布の様子を表現するた めに,デジタルカメラで撮影した写真をマップ内に貼っ たり,言葉で気づいたことを書き込んでいったりする班 もあった。

3.課題作りと合意形成

出来上がったマップをみて,どのようなことがわかる か各自が書き,班の中でそれぞれの植物の生え方を黒板 に書き上げた。表1はそれを表にまとめたものである。

竹澤 宏保

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るつぶやきが多い)

教師:植物が生きていくために必要なものって何だろう。

この教師の問いかけに子どもたちは口々に,水,日光,

土などを挙げる。また,水や日光についてはその理由を 尋ねると,泰造は光合成と結びつけて説明した。唯子は 光合成との関係から二酸化炭素も生存のために必要な物 質として挙げた。

そこで,子どもたちに,植物はどうやってそれらを獲 得しているのか調べてみようと課題を投げかけた。雛子 の言葉のように植物は発芽しても,条件が悪ければ枯死 してしまう。種が落ちた環境に適応できるものだけが,

生き抜いていける。この適応の仕方はそれぞれの植物に よって異なるだろう。この生き抜くための巧みな営みを 子どもたちの手で解き明かしていこうとした。

はじめに,子どもたちの関心の高い,コケについては 全員で調べ,次に班ごとに植物を選択してその生き抜く ための営みに迫ろうとした。

4.コケって不思議

附属中学校の校地にも,局地的にではあるが,樹木の 根元やコンクリートの隙間などにコケが生えている。し かし,どの子どもも手にとってそのつくりなどを観察し た経験はない。そこで,校地に生えているミズゴケを理 科室に持ち込み,簡易顕微鏡などを使って観察した。た だ,コケ類については子どもたちにとっても余りに知識 がない。そこで,観察と併せて,資料集や用語集を使っ てその特徴なども調べた。この資料集や用語集をつかい こなす力は、探求をすすめる上で、ぜひともつけたい力 である。そして観察したことを,班ごとに黒板に書いた。

1班:しめっていて,さわるとコケの水分が手に付いた。

4班:先っちょが半透明。湿っている(触ってみればわか る)

6班:葉の先から根にいくにしたがって色が黒くなっている。

トゲトゲ,フサフサで,茎の周りに葉がたくさん生え ている。

7班:先になればなるほど黄緑色

9班:緑色と黒色の部分がある。根・茎・葉の区別がない。

手ざわりによって湿り具合を確かめたり,色に着目した りしている班が多い。

教師:どうして,上のほうは緑色なのかな。

悠仁:緑色をしているのは,葉緑体が含まれているからです。

そこで光合成をして養分を作っている。

泰造:9 班の「根・茎・葉の区別がない」と書いてあるので すが,こっちには「はっきりしない」と書いてありま す。

教師:どっちかな。もう一度よく見てみよう。

どの資料集にも,コケ植物の根・茎・葉の区別について は,言及してある。わずかな表現の違いであるが,鋭い 指摘である。このことで再度ミズゴケを観察するが,先 ほどとは視点が明確であるため,踏み込んだ観察となる。

ミズゴケは確かに樹木状で,中央の幹を包むように多数 の葉が出ており,基部にもコケを固定するための根のよ うなもの(=仮根)がある。一見根も茎も葉もあるよう に見えるのだ。子どもたちも疑問に思っているようであ る。そこで,機能面に着目させた。

教師:根って何のためにあるのかな。

悠仁:水分を吸収するためです。

正輝:コケって,体全体で水分を吸収するって書いてある。

悠仁:じゃ。根以外でも水を吸っているということか。全体 も湿っていたし。

教師:確かに,根らしいのはあるけれど,全体で水分を吸収 しているとすると,全体が根ということになるね。だ から,はっきりしないという書き方のほうがいいみた いだね。

コケの観察で,部分によって色が異なることに注目し たことを深めることはできなかった。色の違いは,密集 して生えているというコケの生え方と深い関係がある。

光の当たらないその下部には葉緑体が不要のため緑色で はないのだが,この子どもの気づきから植物はその状況 に応じて変化するという考えに発展できるのではないか と思った。そうすることで,次の種子植物の生態を探る ときに考えを広げることができる視点になると考えたが,

根,茎,葉の区別のほうに子どもたちの話題が広がり,

植物のつくりを明らかにすることが中心となってしまっ た。そのため元来ねらっていたコケが生きていくための 工夫を探るという課題がぶれてしまったようだ。

5.植物が生きていくための工夫を探究する

コケの学習を終え、次に被子植物について探る。子ど もたちが野草マップを作る時に,その分布を調べてきた 植物のうち,シロツメクサ,オオバコ,ヒメジオンの3 つの植物から,班ごとに1つの植物を選択し,その植物 が生存するためにどのような工夫をしているのかを探っ ていくことにした。

輝夫の1班では,シロツメクサを選んだ。1班は輝夫 の他に,武志と鮎香,香織の4人である。このシロツメ クサを選んだ理由は,シロツメクサが密集して生えてい ること,また,分布しているところが人に踏まれやすい 場所であり,そのためにどんなつくりをしているのか2 つの疑問を持ったからである。

図2 コケを調べる

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同じ班の鮎香は,密集して生えている理由を,密集し て生えているほうが,花塊と花塊の距離が短く,虫によ って花粉を運搬する際,受粉しやすくなり,子孫を残し やすいからだと考えた。班のワークシートに書き,班の 仮説としたものの,その検証方法として花に来る虫を調 べることも考えたが,実際には検証しようがない。

そこで,武志は密集している利点を更に考え,密集し ていると地下で根がつながっていて,栄養を分け合える からではないかという第二の仮説を考えた。この仮説は,

実際に掘ってみる事でつながっているのかどうかを確か めることができる。検証の時間には土ごと持ち込まれた 鉢植えのシロツメクサを一本の茎を手繰り寄せながら,

掘り起こしていった。しかし,複雑に絡み合った茎のす べてを掘り起こすことは大変手間がかかり,結局,つな がっているのかどうかを確かめることはできなかった。

次に,シロツメクサが踏みつけに強いという仮説を考 えた。これには香織がこだわっていた。香織はきっと根 と茎が強いため,多少踏みつけられても大丈夫なのだと 考えたのだ。この仮説を検証するために,香織らはシロ ツメクサと同じところに生えていたスズメノカタビラを 図3のように環状にして互いを引っ張り,その切れやす さで,強弱を判断しようとした。

そこに教師が関わり,検証方法を尋ねた。

香織:こうやって(図3),両方を引っ張って,どっちが強 いか確かめるんです。

教師:へぇ。力学的やね。

稚拙な方法でも,有効な検証方法になることは多い。

力の入れ具合などにも関係するかもしれないが,この方 法は,植物の切れやすさを確かめるには簡単でよい方法 だと思った。実際に,シロツメクサとスズメノカタビラ を交差させ,引っ張ってみると,強いと思ったシロツメ クサはすぐに切れてしまう。「あれっ?」「おぉ。」「駄 目じゃん。」お互いに顔を見合わせる,香織ら。自分た ちの予想とは全く逆の結果に驚き,同じ実験を繰り返し てみる。香織は武志に「ちゃんと引っ張ってよ。」と引 き方の注意を促す。それでもシロツメクサは切れてしま う。今度は香織と鮎香で引く向きを変えてやってみるが,

結果は同じ。

武志:あれ。もう訳分からん。

鮎香:シロツメクサのほうが弱い。

武志:(武志も輝夫と同じ実験をやっていた) 駄目だね。

やっぱり,茎が強いわけじゃないんだ。やっぱり強い のは根なんだよ。

香織:(シロツメクサの地下茎を拾い上げて) これやって,

強いのは。(地下茎から伸びている部分が)切れても また,ここから生えてくるから。

香織は地下茎の部分で試してみる。すると,今度はス ズメノカタビラのほうが切れてしまった。

香織:ほら,今度は勝った。

武志:茎とか密集していて,クッションみたいになっている

からじゃないかな。さわると柔らかいも。

その後,部分を変えて,何度も同じ実験を行っている。

鮎香:根が強いの?

香織:根が強くても意味ないよ。根って地面の中なので踏ま れないよ。

自分たちの予想と全く逆の結果に驚いた香織ら1班で あったが,「踏みつけに強い≠切れにくい」ということ に気づいた。自分たちの考えを覆す事実が見つかれば,

その事実を踏まえて,考えを変えていっている。これは 科学的なものの考え方として大切にしていきたい。しか し,1班ではなぜ踏みつけに強いのかまでは明らかにし ていない。香織は地下茎と地面の位置関係に気づき,鮎 香の質問に対応しているが,輝夫や武志とは合意形成が されないままだった。

6.課題が浮き彫りになる中間発表

同じシロツメクサを調査している班の探究の概要 次に,同じ植物を調べたもの同士が,小グループをつ くり,ジグソー班で成果を表明しあった。同じ植物を扱 いっていたとしても,仮説にも違いがあり,当然導き出 される結論も異なる。1班と同じく,シロツメクサを調 査したのは,2班,7班,8班である。

2班は密集して生えているメリットは養分を往来でき ると考え,葉や茎,根にデンプンがあるかを調べた。洗 った葉や茎を細かくして,乳鉢ですり潰し,それにヨウ 素液を垂らしてみる実験である。しかし結果は葉では,

多少のヨウ素反応が見られたけれど,茎や根には全く反 応は見られなかった。

8班では,シロツメクサは光合成をするために,光を 求めて,横へ横へと茎を伸ばしているのではないかとい う仮説を検証するために,群生するシロツメクサの土を すべて取り除き,そのつながりを見ようとしたのだ。そ の結果,根の広がりからシロツメクサは光を求めて,横 へ横へと複雑に,密集して生えているのではないかとか んがえたのだ。

ジグソー班で,他班の情報を収集する

1班の輝夫は,2班の陽介,7班の円香,8班の雅美で 新しいグループを構成する。輝夫は自分から積極的に発 言し,班の活動に参画するタイプではなく,観察から輝

図3 強さを調べる(香織のレポートから)

竹澤 宏保

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夫の考えを見取ることは困難な子どもである。しかし,

個人のワークシートなどには,自分の言葉を用いて,自 分の考えなどをしっかり表現できる。この中間発表の場 で,積極的な円香に後押しされ,最初に口火を切った。

輝夫:シロツメクサの丈夫さを,スズメノカタビラとそれぞ れ引っ張って調べて,スズメノカタビラのほうが強か った。その後,シロツメクサだけで引っ張ったりして みたら,ここに書いてあるようになりました。(女子 二人からは何で言わないのとの声が上がるが,二人は 輝夫のカードを黙読する)

円香:シロツメクサの茎の柔らかさを調べたのですが,

陽介:何と比べたのですか?他の植物とか。

輝夫:基準は?

円香:えっ。他とは比べていません。シロツメクサの茎は曲 げても折れないし,つぶしても折れない。また,ここ のところ(図4中○)は柔らかいけど,ここのところ は(図4中○)硬い。

雅美:シロツメクサは根は案外短くて,茎で横に広がってい くの。・・・

陽介:まず根に養分かがあるかを調べました。それと関連し て,茎や葉にも養分があるのか調べました。葉には少 し反応があったのだけど,茎,根は反応がなかったの で養分がないことがわかりました。(草を)採った日 が晴れてなかったので,デンプンが少ないのかもしれ ません。

中間発表は淡々と終わってしまった。情報の交換は受 けて側のニーズがないところでは成立しない。同じシロ ツメクサを調べているとは言え,班によっては明らかに しようとしている内容とのかかわりが薄い班も出てきて しまう。ただ,1班(輝夫)と7班(円香)はシロツメ クサの耐久度を調べている点では一致している。一通り の説明が終わってから,円香と雅美は輝夫ら1班の茎を かけて引っ張りながら強さを確かめる方法をもう一度問 い直した。輝夫はもう一度二人に方法を説明すると,二 人は引っ張り加減の影響を口にしながらも,目の前のシ ロツメクサで自分たちも確かめ始めた。

雅美:輝夫君の言うのは,こっちの部分(図4中○)のこと を言っているんでしょ。

円香:輝夫君。○なの○なの。どっちのことを言っているの。

根か茎かどっちなの。

円香:(そこへやってきた教師へ説明) 今,○は柔らかく て,○は硬いと言ったら,輝夫君は「根の話だ」と言 うのです。

教師:輝夫君と円香さんはそれぞれどこの部分を言っている の?(二人は同じような部分指摘する)

円香:えっ。輝夫君は○のことをなんて言っているの。(輝 夫答えに詰まる)

教師:同じ部分でもどのように言うかで違ってくるね。今は 疑問のままだね。(ここで時間切れ)

同じ班内では4人の少人数のために,そのときの雰囲 気で,言葉が定義されていく。円香の言う茎や葉,根は 明らかに輝夫ら1班の示す部分とは異なる。実際にシロ ツメクサの○Bの部分は地下茎であるが,ジグソー班では,

それまで自分たちの班で使ってきた言葉をそのまま場に 持ち込むので,互いの話を聞いても,それぞれがイメー ジするものが異なってくる。1班の香織や鮎香らも地下 茎を 根 と判断しそれまでの記録に記している。探究 がどのような方向性を持つのか,はじめの段階では不透 明なものの,活動の大筋を見取っていく中で,教師はブ レを修正する情報を提供していかなくてはならないだろ う。

次時では,シロツメクサだけでなく,オオバコやヒメ ジオンを調べている全班で,シロツメクサの根,茎,葉 の区別を考えた。やはりコケのときと同じように,機能 面から根と茎を区別し,○Aは葉の一部(葉柄)であるこ とを確認した。

7.踏みつけへの強さの真相に迫る2次調査

1班では,シロツメクサの踏みつけへの強さの秘密は 踏まれても切れない点だと予想していた。しかし,実際 は葉柄の部分はすぐに切れる。香織は地下茎こそ強靭で そうそう切れるものではないことを明らかにしたが,地 下茎は地中にあり,踏まれ切られるようなことはないこ とも指摘している。そこで,1班が注目したのが,7班 から示された葉柄の柔らかさである。輝夫はレポートの 中で,「シロツメクサをさわっていて気が付きました。

柔らかいということは折れにくいという事でもあります。

シロツメクサの強さがだいぶ見えてきました。しかし,

(このことを確かめるために)もう一つの実験をする必 要があることがわかりました。」

そこで,1班では密集しているシロツメクサの葉柄や 単独のシロツメクサの葉柄を手で押してみて,ぐにゃり と曲がった葉柄の変化を調べてみることにした。その結 果,いずれもしばらくすると,元のように直立するが,

密集して生えているシロツメクサのほうが,回復が早い ことを突き止めた。そのことから,密集して生えている と力が加わってもクッションのようになり,力が分散さ れるので,早く立ち直ることができるというメリットを 持っていると結論にたどり着いた。

8.全体発表と成果の共有

最後にこれまで調査してわかったことを小ホワイトボ ードに図解する形でかき,それをもとに発表した(図

5)。小ボードを利用したのは図5の背後にあるよう,

教室のそのまま掲示できるためである。

ただ,このような発表会は発表されている内容へのか かわりが薄く,一方的な発表で終わることが多い。そこ で,明らかになったことを最後に,自分たちの野草マッ

図4 円香のシロツメクサの模式図 ― 89 ―

(7)

!!!!!!!!!!!

プに盛り込むこととし,発表を受け,教師が検証によっ て明らかになったものとまだ予想の域を出ていないもの に区別しながら,内容を整理していった。

しかし,少し時間が空いたこともあり,なかなか他班 の内容と絡んだ展開にはならなかった。時間以上に調べ る植物の種類の違いなども大きいと考えられる。個々の 探究が分化すればするほど,他者の内容とのかかわりが 難しくなってくる。最後の発表会のあり方とそこに至る までのプロセスなど,今後も検討していかなくてはなら ない。

発表会後,子どもたちは各班で,選択して調べた植物 の営みの工夫について,レポートを書いてふり返ってい る。

省察

野外観察をベースにした1年生の探究学習を今年も実 践した。今年度の実践にどんな意味があったのか。子ど もたちの学びや授業者の手ごたえなどから省察してみた い。

1.子どもたちは何を学んだのか

(1) 内容面での学び

〜核となる学びの面から〜

次の文章は輝夫とジグソー班で同じ班になった陽介

(2班)のシロツメクサについてのまとめである。

シロツメクサが自然の中で生きていける理由にはいく つかあります。(これより先の文は予想も含む)

まず,「背が低いことと広い範囲に生えることの関係 について」です。普通,太陽に近く(背が高いという意 味),さえぎるものがない方が光合成には有利です。し かし,シロツメクサは背が低く,光合成を行うには不利 です。なので,生えている面積を増やすことで日光の当 たる合計面積を増やして必要な養分を補っているのです。

次に「どのようにして生える面積を広くするのか」で す。地下茎を延ばして,そこから細い茎(葉柄)が伸び,

葉ができる。これを繰り返していくと面積が広がってい

きます。そしてここでもシロツメクサは工夫している。

地下茎を延ばすときに「水分が多い」「日当たりが良い」

ところに向かって延ばしていくのではないでしょうか。

・・・(中略)・・・

このように植物には無駄な特徴はないと思います。そ の真相がわからなくても,それは意味のあることだと思 います。何らかの形で生き抜いていく力を持っているの だと思います。

陽介は何気なく生えているシロツメクサを自分たちの 班の取り組みだけでなく,他班の成果も盛り込みながら,

シロツメクサに対するイメージを膨らませている。また,

シロツメクサの探究を通し,植物全体のその巧みで強か な生き様をとらえていることが,本人のレポート下線部 などからも読み取ることができる。

理科の授業では何を学ぶのか。それを自分たちは 核 となる学び という短い言葉にまとめ,自覚化させてい る。理科において核となる学びは『しくみを解明し,自 然観を広げる』である。探究という手法を用いて,子ど もたち一人一人が持っている自然観をより豊かにするこ とを目的としている。探究は目的ではなく,あくまで自 然観を拓くため,豊かな経験をする場ととらえている。

陽介はこの実践を通して様々な視点からシロツメクサを とらえ,そこから植物に対するイメージを拡げている。

その広げた経験とは,課題を意識化し,対象物(=シロ ツメクサ)にはたらきかけた活動や,その成果を話し合 い今まで知らなかった事実にふれたり,自分にはなかっ た視点を獲得したりした経験であろう。この単元を実践 するにあたっての授業者のねがいもそこにある。

(2) 探究面での学び 〜3年間の位置づけから〜

1年生は3年間学びの中で,科学に挑戦する時期とと らえている。今実践でも,自分たちの持っている知識や 経験を生かして,課題解決に挑戦した。実践例の中での 香織らの植物どうしの引っ張り合いなどもその好例であ ろう。理科の観察や実験は決して,決まった器具で,決 まった方法だけで行うことができるものばかりではない。

香織の例のように切れやすさを比較する場合,過去の遊 び(オオバコ相撲)が手頃で有効な手段であった。ジグ ソー班での活動のときに円香(7班)の発表内容に対し て,輝夫は「基準は?」と問い返している。自分たちが 何より切れやすい切れにくいを議論してきたからこそそ のような視点が鋭くなっているのだろう。

科学に挑戦するとは,自分の知っている知識や経験を 積極的に生かして課題に取り組むことであり,無駄もあ るけれど,その有効性を実感できることである。この実 感する場面にまで高まることは難しいが,この挑戦する 姿勢は1年間だけでなく,3年間の理科学習の中で育て ていくべき姿である。

図5 小ボードを使った発表

竹澤 宏保

― 90 ―

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2.しっくりこない授業者の手ごたえ

昨年度まで,本実践と同じように野草マップから課題 を拾い上げ,それをクラス全体で解明していく探究活動 を実践してきた。その探究の素材はスズメノカタビラで ある(研究紀要36号参照)。今年度は,新しい学習指 導要領で花の咲かない植物も復活するに当たって,その ような植物も扱ってみたかった。また,これまでのスズ メノカタビラでの実践を他の植物にも活かしていけるの ではないかと考え,本実践に取り組んだ。その結果,先 述の陽介のような豊かな学びが行われている一方で,授 業者自身どうもしっくりいかない手ごたえのようなもの を感じている。次に,探究の構造や教材について授業者 の立場から省察したい。

(1) 単元の構造に関する問題点

コケ植物の学習は一連の展開の中で必要だったか 図6は本単元の構造図である。探究の下地となる野草マ ップ作りから最後の発表に至るまで,複雑なプロセスを 辿っていることがわかる。プロセスが複雑になると,所 要時間も必要ばかりか,子どもたち自身が活動の見通し を立てることができない。本単元でも,コケ植物の調査 活動まではどちらかと言うと,小さな活動に小分けされ た時間が続き,植物3種の探究活動になって,子どもた ち自身の手で,活動が進められている感が否めない。こ の実践レポートを書いていても,教師自身前半は教師主 体に授業が展開しているように感じるのである。

はじめに野草マップを作り,それをずっと引きずるよ うな展開だった。果たしてこの一連の展開の中にコケ植 物を扱うことが妥当だったのか。コケ植物の観察は思っ ていた以上に子どもたちの意欲を掻き立てるものがあっ た。コケ植物の観察が,今後の植物3種の探究に活かさ れるという期待もあったが,実践例での根や茎の区別の ように,はっきりとしたつながりを感じさせるものがな かった。この単元でしくみを解明する対象がコケ植物だ ったのか,シロツメクサら種子植物だったのか,あるい は両方だったのか,授業者の迷いが構造に現れる形とな ってしまった。

(2) 探究活動「植物3種」のジレンマ

後半の探究活動で,シロツメクサ,オオバコ,ヒメジ オンの3つから選んで班ごとにそこに生き抜いていく植 物の巧みな営みを探った。植物には多様性があり,種が 落ちた場所で生き抜いていくために種ごとの工夫がある。

シロツメクサら3種はそれぞれ生息場所や形状はまるで 異なる。それらを調査することで「なるほど」植物は様々 な生存のための工夫があることを感じて欲しいと考えて いた。

自分の調べた植物(またはその工夫点)については議 論がかみ合うが,それ以外ではそうはいかないことが多 い。それを最終的に,植物マップに他班の成果も書き込 むという作業課題によって3種の植物の探究を結びつけ ようと考えた。しかし,それは子どもたちにとって必然 性のある課題にはなりえなかった。子どもたちにとって みれば,やはり,植物の生きていくうえでの工夫を探る ことが課題の中心であった。図7は,昨年のスズメノカ タビラの強さを探る探究と本年度の探究を比較した図で ある。昨年の取り組みは,取り組むべき課題がはっきり しており,それをクラス全体で明らかにしてから,個人 レベルで他の植物を調査できるようオープンエンドで終 了する単元を構想している。一方,今年度の実践が植物 の多様性にまで踏み込むために,『植物の生き抜く工夫 を探る』という課題も広い範囲の課題であり,早い段階 で,クラス内で3つのグループが探究活動を進めること になり,クラス全体でのコミュニティの意味あいが希薄 なものになってしまった。

(3) 課題の妥当性について

物事を判断する場合,白黒をはっきりさせるために客 観的なデータが必要である。しかし,植物の強かで巧み な生き方は,数値でそれを検証できるものとできないも のがある。むしろ香織らが取り組んでいた,引き合って 切れなかったほうが強いという客観的な手法はそう多く 図6 本単元の構造図

図7 昨年と今年の探究活動の比較

― 91 ―

(9)

ない。このほかにもヒメジオンの葉の大きさを比較する ために,定規でその長さを測定したり,茎の丈夫さを確 かめるために,その直径を測定したりする班があった程 度だ。だから,子どもたちも他班の導き出した考えに反 論する根拠を持ちにくく,結果を深く吟味するコミュニ ティ集団までに至らなかったのではないかと思う。

ただ発表の場では,発表の内容を事実として確かめら れたことと,まだ事実を見つけていないけれどそのよう に考えられることの2つに区別した。もちろん,科学は 事実の積み上げによって議論するものであること示すた めである。

3.子どもの学びを見取る視点で

授業中はなかなか子どもたちからのニーズに追われ,

何を学んでいるのかを広くとらえることは困難である。

そこで,授業後に各班の展開をつかむためのツールとし て,班ごとのファイルが機能していた。各班の記録から グループの展開をつかむ。その中で,更に探究がすすめ

られるよう,コメントなどを書き入れる。気になれば,

直接子どもたちのところへ行って,更に詳しく議論もで きた。

ただ,これと同じように,子どもたちの探究の筋を線 や面でつかむために,教師自身の記録(ノート)も必要 になってくる。子どもたちの記録と合わせて,子どもた ちの学びを見取り,生かすための記録である。班ごとの 探究なので,班ごとに活動が書き溜められていく。その ような班の記録は活動を班内の因果関係の中でとらえる ことができた。今後,他班とのかかわりを子どもたちに どう認知させ,それを見取っていくのかについても探っ ていきたい。

《参考文献》

福井大学教育地域科学部附属中学校「探究するコミュニ ティの創造」第35号2007 別冊「理科」

福井大学教育地域科学部附属中学校「学びを拓く《探究 するコミュニティ》」第36号2008

An ideal method of the scientific research that children wrestle with by collaboration PartTo expanded students’ view of nature

Hiroyasu TAKEZAWA

Key words :Learning community, a plant, scientific research, collaborationlearning to research 竹澤 宏保

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参照

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