木工活動を通して感情をコントロールする力を伸ば した生徒の実践事例
著者 柳澤 秀樹
雑誌名 福井大学教育実践研究
巻 32
ページ 191‑201
発行年 2008‑01‑31
URL http://hdl.handle.net/10098/1661
1.研究テーマについて
本校では,平成14年度から平成17年度までの4年次計 画で,「スペシャルニーズに応える教育システムの研 究」をメインテーマに研究を進めてきた。そのために,
個別教育計画の見直しと新たな形式の作成,データベー スの構築と教育内容の組織化,指導形態の見直しの3本 柱を通じて,実践の共有財産化を図ってきた。
昨年度(平成18年度)からは,生活を中心とした教育 実践の流れと評価,前回4年間の研究の経緯と成果,本 校の個別教育計画(個別プランと基礎資料)を踏まえて,
「事例に基づいて創る子ども主体の生活教育」をメイン テーマに新たな研究を始めた。昨年度は,「個別プラン に沿った授業づくり」をサブテーマに,小学部は「あそ び」,中・高等部は「仕事」を中心に,個別プランに基 づいた事例研究を進めてきた。
本実践は,中・高等部の「仕事・木工」の時間を通じ て,自分の感情をコントロールする力を高めていった生
徒の事例研究である。
2.対象生徒について
生徒(平成18年度当時 中学部1年生)の様子につい て述べてみたいと思う。以後は,生徒本人と保護者から 了解を得ているので,生徒の実名と写真を使わせていた だく。また,本文に掲載してある方の実名や写真の使用 については,事前に了承済みである。小林君は,昨年度 本校に入学している。小林君の主な性格や行動面につい て,下の表にまとめてみた。(表1)
小林君は感情のコントロールが苦手で,それが望まし い人間関係を損なうことにつながっている。(表2・3)
感情をコントロールする力は,家庭生活,学校生活だけ でなく,将来職場での望ましい人間関係を作る上でも大 切なものなので,個別プランでは最重点課題として取り 上げた。
入学前の学校体験のときに,小林君は中学部のログハ
木工活動を通して感情をコントロール する力を伸ばした生徒の実践事例
福井大学教育地域科学部附属特別支援学校 柳 澤 秀 樹 教育実践報告
表1 小林君の主な性格や行動
・指先を使うことが好きで,手先が器用である。
・責任感が強く,一人で最後まで活動に取り組む。
・自分で創意工夫して問題を解決しようとする。
・掃除や片づけが大好きで,すみからすみまできれいに掃除をする。
・正義感が強く,ルールやマナーをしっかりと守ろうとする。
・自分の思い通りにやろうとする傾向があり,思い通りにならないときには,かんしゃくを起こし,大きな声を出 したり,乱暴な言葉遣いをしたりすることがある。
・人とかかわるときに,人の嫌がることをしたり,余計な世話をやいたりする。
○入学した頃の小林君の様子 表2 エピソード①:ゆうゆうタイム
5月8日の第1回目の「ゆうゆうタイム・ログハウスグループ」の活動で,同じクラスの!橋君と丸太の上で遊 んでいた。その後,教師からログハウスの話が始まった。小林君が乱暴な言葉遣いをしていた。そのとき,同じク ラスの!橋君が教師の頭をたたいた。それを見た小林君が注意しようとして,!橋君の頭をたたいたり,体を押し たりした。
◎気になる点
・常に相手に乱暴な言葉遣いをして,必要以上にまわりを威圧するような態度をとっている点。
・自分の価値判断だけで,相手に対して考える余裕も与えず,攻撃的な行動をとっている点。
本研究は,作業工程が明確に分かれていて見通しがもちやすい木工活動で,作品を作ることを通して 必要に応じて自分の感情をコントロールできるようになっていく過程をまとめたものである。
キーワード:木工活動 感情 コントロール
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ウス作りの丸太切りを体験した。そのときに喜んで木工 に取り組んでいたので,保護者からも,活動の中に木工 を取り入れてほしいという希望があった。また,小林君 が指先を使うことが好きで,手先が器用であるという点 にも着目して,「仕事・木工」の活動を設定した。
木工は,「ものさしで測る」「のこぎりで切る」「サン ドペーパーで磨く」「金づちで釘ぎを打つ」「ドリルで穴 をあける」など,作業工程がはっきりと分かれており,
しかも良否の判断がしやすい活動である。また,自分の 取り組んでいる作業の見通しがもちやすく,準備がしや すいことがあげられる。作り方にも柔軟性があり,その 場でやり直しが何度でもできたり,小さい作品であれば
できあがるまでにあまり時間がかからなかったりすると いう利点がある。また,小林君にとって自分の活動の成 果が目に見えてわかり,作品ができあがっていく喜びや 自信にもつながると考えられる。そのため,一つ一つの 作業工程にしっかりと取り組ませることも重要である。
さらに,木工では,のこぎり,金づち,のみ,ドリル 等の危険を伴う道具類を使用するので,これらを安全に 使う方法を身につけるための助言等を素直に受け入れる ことによって,結果として,自分で感情をコントロール することにつながっていくことを期待している。
以下に個別プランの抜粋を掲載する。(表4)
表3 エピソード②:ゆうゆうタイムスペシャルデー
1学期のゆうゆうタイムスペシャルデー(6月22日)の昼食準備のとき,和室の長机を出す活動を手伝っていた。
そのとき,教師に持って行くように言われた長机があるにもかかわらず,わざわざ他の生徒が運んでいる長机を横 取りして持って行こうとしたり,言われた場所に長机を置かなかったりした。
◎気になる点
・自分のやりたいようにやらせてもらえないことを素直に受け入れられず,不適切な行動で迷惑をかけている点。
表4 小林君の個別プラン
○スペシャルニーズ:おだやかな気持ちで学校生活を送る。
○重点課題Ⅰ:自分で集中して取り組める作業的な課題を増やす。
○教師の思い
小林君は,いろいろな事ができる可能性を持っています。その可能性を引き出すために,スペシャルニーズ(自 立と社会参加を達成するために必要な事柄)を設定しました。特に,おだやかな気持ちで生活するために作業的な 活動に取り組んでいくことが大きな自信につながると考えられます。今年度は,見通しがもちやすい木工を中心に して作業的な課題を組み立てながら,その中で小林君の意欲や積極性がみんなから評価されるような理にかなった やり方,仲間と協力する姿勢が身についてくれればと思っています。
○支援方針(重点課題Ⅰ)
「仕事・木工」では,いろいろな作品作りに取り組んでいきます。木工は,作業工程がはっきりとしていて見通 しがもちやすく,自分の成果が目に見えてわかるので,木工の好きな小林君には,最適の活動だと考えています。
いろいろな作業工程の中で,むずかしい作業では,他の人からの意見や助言を素直に受け止めて取り入れたり,友 達と協力して取り組んだりすることを経験することができます。この積み重ねを通して,自分で感情のコントロー ルがうまくできるようになると考えています。「ゆうゆうタイム・ログハウスグループ」でも,丸太のノッチ作り 等で道具を使った作業にがんばって取り組んでもらいたいと思います。木工では,危険を伴う道具を使用するので,
安全面を意識した使い方の指導や補助具の製作もしていきたいと考えています。特にうまくできたときには,道具 の使い方の良かった点をわかりやすく説明し,繰り返しほめたいと思います。また,うまくできなかったときには,
道具を使うときに補助具を利用して練習するように助言したいと思います。
○生活の設定 「仕事・木工」 作品作り(鉛筆立て,鍋敷き,ネームプレート,ベンチ,プランター入れ)
○期待する姿
①目印の線に沿って,まっすぐにのこぎりで材料の木を切る。
②切った材料を丁寧にペーパーがけする。
③材料の目印の位置に金づちで正確に釘を打ち込む。
④材料にドリルでまっすぐに穴をあける。
⑤ネームプレートの所定の位置に藤づるを正確に貼り付ける。
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「仕事・木工」の他に,「ゆうゆうタイム・ログハウスグループ」の活動も設定した。(表5)小林君は,自信が あることなら,責任をもって最後まで取り組むことができる。木工というもの作りに毎日長時間じっくりと取り組み,
自分のできる作業が少しずつ増えるにしたがい,小林君の感情の出し方に影響を与えていくのではないかと考えた。
表5 平成18年度 小林瑞希君の時間割
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3.研究の進め方
この研究は,仕事木工班での活動を中心に,小林瑞希 君の平成18年度の個別プラン(生活の設定:仕事木工班), おたよりに書かれた教師や保護者のコメント,活動場面 の写真を整理しながら,まとめる形をとらせていただく ことにする。
○1学期
○1学期の生活
重点課題Ⅰ:自分で集中して取り組める作業的な課題を増やす。
・仕事・木工
①のこぎりで切る時に鉛筆の線に沿って,まずゆっくりと溝をつけてから体の中心にのこぎりを持ってくるように助 言した。のこぎりを両手で持つ時と片手で持つ時の切り方を見本を見せて教えた。いろいろな作品作りを通じて,
のこぎりの使い方にも慣れ,材料の切り口もほぼ真っ直ぐに切れるようになってきた。
②切った材料やネームプレートの板の角のささくれや平面をペーパーの持ち方を工夫しながら,丁寧に磨いていた。
ペーパーの目の粗さは,材料の表面の状態に応じて渡すように心掛けた。
③鍋敷き作りでは,釘を打つ目印も自分で考えてつけることができていた。材料の板を固定する補助具を作って,釘 打ちがしやすいように支援した。金づちの柄をしっかりと持って,斜めから振り下ろす傾向にあり,1つの鍋敷き に20本ずつ釘を打ち込んだが,5本前後曲げてしまった。釘抜きで抜くのは,なかなかうまくできなかった。
④鉛筆立て作りでは,穴の目印にドリルを真っ直ぐ立てて固定した後,はじめは回転の軸が一定しなかったが,だん だんと安定してだいたい真っ直ぐ穴が開けられるようになってきた。ドリルを抜く時の力の入れ方がわかりにくか ったので,引っぱりながら抜くやり方の見本を見せた。
⑤自分で見本の字の線に藤づるを合わせて1画ずつ目印を付けることができたが,藤づるが切りにくそうだったので,
藤づるを挟むための補助具で固定して切る方法をとった。慣れてくると,藤づるを切っていくのも手早くなってき た。木工ボンドで貼る時には,字全体に木工ボンドを塗ってから藤づるを1本ずつ貼り付けていたが,ボンドの量
小林瑞希君の活動の様子と保護者の方のコメント
(平成18年度 1学期おたよりから)
4月17日(月)
きょうは,初めて体育館で朝のランニングをしまし た。小林君は,曲に合わせて走っていましたが,途中 で友だちにちょっかいを出したり,休んだりしていま した。しばらく走ってから暑くなって上着のジャージ をぬいで首にかけて走っていたので,とるように注意 したのですが,ジャージを振り回してふてくされてし まい,後から話をしてやらないように言いました。
4月27日(木)
きょうの朝のくらしで,家から持ってきたメモ帳を さわっていたので,勉強している時にさわらないよう に注意しました。そのあとも,ランニングの時にさわ っていたので,こちらであずかったのですが,かんし ゃくを起こして,体育館に座り込んで大声をあげてい ました。あとから2人になってもう一度話しました。
泣いていましたが,納得してくれました。
家に帰ると,すぐ連絡帳を私に持ってきて,中身を 読む前に,メモ帳の話をしました。ふてくされて,ズ ックをぬいで投げたと言っていました。今朝も,カバ ンをのぞくと,メモ帳がまた入っていました。また持 って行くのかと聞くと,持って行くと言うので,先生 の話聞いたのなら,おいていくんじゃないかと言うの に持って行くと言い張りました。
5月9日(火)
午後の運動では,グラウンドで80m走の競走をしま した。自分の走る速さを考えて並ぶのですが,小林君 は,走るのが速い高等部の先輩たちと走ってしまい,
力の差がはっきりしてしまいました。そのせいか,少 し機嫌が悪くて,友だちにいたずらをしたり,場所の 移動も座り込んだりしてしまいました。
今日の学校での事を自分で話し出しました。「連絡 帳にいたずらって書いてある」「草を投げた」と,い つも連絡帳に書いてある事を聞くと,していない,知 らないと言っていましたが,その時にかくしたり,嘘 をついたりすると,もっと怒られるので,今日は,先 手を打って来たようです。
5月12日(金)
仕事の木工では,鍋敷きの板を同じ間隔で置く補助 具を作って,板をはめてみました。釘打ちまではでき ませんでした。仕事の時間に勝手に木工室から出て行 ってふざけていたので,反省してもらいました。あと から自分でごめんなさいと言いに来ました。
7月13日(木)
午後の運動はプールに入りました。後半,勝手にプ ールの中で泳いでいて何度注意しても上がってこなか ったので,残りのプールの時間入れませんでした。そ の間,ずっとプールサイドで泣いて反省していたよう です。
7月18日(火)
午後の野球では,バッターで三振して機嫌が悪くな り,バットを投げ捨ててしまいました。その場できつ く注意して,バットをもとの箱に入れさせましたが,
しばらくムッとした顔をしていました。
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を加減するのが難しかったので,藤づる1本ずつに木工ボンドを塗ってから貼り付けていくように変更した。短い 藤づるを貼る時には,一緒に貼り付けるようにした。
○1学期の考察(活動状況・支援の仕方)
活動がうまくいかなかった時等に大声を出す傾向があり,注意してからは納得して自分で意識するようになってき た。友達にいやなことをした時には,自分がされたらどういう気持ちになるのかを考えさせるように心掛けた。着替 えの時や昼休みに遊んでいる時にいたずらをすることが多かった。納得がいかない時にはなかなか謝らない時も何度 かあった。自分がいやな事をされた時には,相手にはっきりといやだという自分の気持ちを伝えているが,時々その まま相手にやり返してしまうことも何度かあった。
○2学期
○2学期の生活
重点課題Ⅰ:自分で集中して取り組める作業的な課題を増やす。
・仕事・木工
①補助具を使うようになってから,意識してまっすぐ切るようになってきた。ベンチ作りでは,補助具なしで落ち着 いて脚の材料をまっすぐに切ることができるようになってきた。
小林瑞希君の活動の様子と保護者の方のコメント
(平成18年度 2学期おたよりから)
9月12日(火)
昼休みには,写真立て作りの土台の部分を作りまし た。昨日切った部品をボンドでくっつけました。その 後,野球がしたいと体育館へ行きましたが,「表現の 時間,たいこ。」と,残念そうに戻ってきました。明 日しようと気持ちを自分で切り替えていました。
9月22日(金)
仕事の木工では,ベンチの天板を切ったのですが,
勝手に切ってしまい,ちがう所を切って天板が短くな ってしまいました。あとから,自分で何でもやりたい のはわかるけど,しっかりと話を聞いて,勝手に自分 でやらないようにと話をしました。天板が使えなくな ったのがこたえたのか泣きながら,聞いていました。
10月11日(水)
きょうは,朝から学校祭のあとかたづけをしました。
中学部は,カレーハウスあらじんのかたづけをしまし た。小林君は,パイプいすや長机を体育館へ片付けて くれました。はじめる前は,メロディーブックで遊ん でいて,注意されて機嫌が悪かったです。
10月13日(金)
きょうは,仕事の時間に小林君がベンチの天板で,
!橋君の頭をたたいているところを見つけたので,き つく注意しました。ベンチを作ってみんなに座っても らうための板なのに,たたくために切った板ではない という話をして,!橋君に謝ってもらいました。かな り泣いて反省したようでした。
10月16日(月)
ゆうゆうタイムのログハウスグループの活動が始ま る前,中3組の出口君が玄関でくつを履き替えている 時に,ちょっかいを出して担任の政井先生から注意さ れ,かぶっていた帽子を怒って地面にたたきつけてし
まったそうです。政井先生から,帽子をちゃんと使う ように言われたようです。以前から出口君には,ちょ っかいを出していて,政井先生から何度も言われてい たようです。小林君は,出口君と政井先生のところへ 行ってちゃんと謝っていました。
10月20日(金)
午後の運動では,中学部だけで野球をしました。ピ ッチャーになりたがっていましたが,はじめは,他の 子に譲っていました。
10月31日(火)
午後は,天気がよかったので,グラウンドで野球を しました。新しいボールだったので,みんな楽しそう にやっていました。小林君は,三振した時に,友達の ピッチャーの子に「バカ。」と言って,他の先生から 注意され,1回打席が休みになってしまいました。あと からしっかりと謝っていました。
11月13日(火)
今日は,!橋君の残りの版画の印刷をしました。小 林君が版画板を所定の場所にセットして紙をのせる役 をしました。紙をめくって台車の上にのせるのも上手 にやっていました。!橋君が休みながらやっていると,
がんばって続けるように声をかけていました。
11月14日(火)
野球では,1塁を平田君が守っていて,そのあと,
「ぼくも守りたい。」と言って,中1組の酒井先生か ら,「平田君にも守らせて。」と言われて,ふてくされ ていましたが,譲ってくれました。
11月16日(水)
今日は,くらしの時間にカレンダーの和綴じの練習 をしました。針を通す穴をまちがえたり,たこひもが からまったりしてうまくできず,泣きながらやりまし た。それでも,何回かやるうちに,1人で何とかできる ようになりました。
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②切った材料の指示された部分を丁寧にサンドペーパーで磨くことができていた。自分でサンドペーパーの目の粗さ を意識して,使い分けるようになってきた。
③釘の長さに応じて,金づちの大きさを使い分けるように助言してから,釘打ちがかなり正確にできるようになって きた。釘を打ち終わってからも材料の表面をたたいて金づちのあとがついてしまうことがあり,仕上げを意識する ように声かけした。プランター入れとベンチの釘打ちでは,材料が動かないように固定する補助具を作って使用し た。
④特に作品作りでドリルを使う機会はなかった。ドリルでの穴あけを練習した時には,補助具なしで,回転軸をずら すこともほとんどなく穴をあけることができた。
⑤ネームプレートの藤づるの太さをそろえようと意識しながら,藤づるを木工ボンドで貼り付けていた。教育実習生 へプレゼントするネームプレートを自分一人で仕上げることできた。
○2学期の考察(活動状況・支援の仕方)
ゆうゆうタイムログハウスや仕事木工班の活動では,思い通りにできなかった時でも,自分で感情をコントロール して,かなり我慢できるようになってきた。友達などに嫌なことをした時には,自分がやったことがよくないという ことを納得して,素直に謝ることができるようになってきた。すぐに謝ることは,なかなかできなかったが,少し落 ち着いてから,相手の所へ行って謝る姿が見られた。自分が嫌なことをされた時には,はっきりと相手に意思表示を して伝えることができた。相手にやり返すことはほとんど見られなかった。
○3学期
小林瑞希君の活動の様子と保護者の方のコメント
(平成18年度 3学期おたよりから)
1月12日(金)
きのうは,県立武道館の前の道路を横断歩道を渡ら ず,斜め横断をしていたそうです。そのことを聞いた 時も,やっていないと,うそをついていました。安全 にかかわることなので,きびしく注意しました。
1月16日(火)
きのうは,新春茶会のリハーサルがありました。10 時少し前に,のぞみの家の控室で待ってから和室へ行 きました。お辞儀や正座など,小林君は,なれないこ とばかりで,みんなの動きを見ながらやっていました。
正座は40分くらい続き,途中で何度も足を触ったり,
体を立てたりして,波岡先生や私から何度も注意され ました。
1月18日(木)
今日は,新春茶会の本番でした。朝からずっと緊張 していて,テレビ局の取材が来ていたのも気にしてい ました。和室で待っている時は,あぐらでしたが,本 番では,リハーサルよりも,正座をしっかりとするこ とができました。時々渡しの顔を見て,しびれたとい うサインを送っていましたが,我慢していました。お 辞儀もしっかりと,みんなに合わせてやっていました。
おそばは,とてもおいしそうに食べていました。自分 なりにうまくできたと言っていたので,小林君はも満 足したようです。
1月22日(月)
今日は,高等部が新春茶会のあとかたづけで,仕事 はありませんでした。ゆうゆうタイムを午前中ずっと しました。ログハウスの屋根のけたになる柱のほぞ穴 をあけたり,屋根にはる板を1.5mの長さに切ったり
しました。板の長さを1.5mに切る作業では,板の長 さを測ったり,!橋君と交代で切ったりしました。そ のあと,休んでいた杉田さんのほぞ穴をあける作業を 手伝いました。明日は,3本の丸太をけたとしてつけ ることができると思います。
2月1日(木)
仕事木工では,4脚目のベンチ作りをしました。同じ さ作業工程を繰り返しているので,1人でできることが 多くなってきました。釘打ちでは,65㎜や75㎜の長い 釘を曲げずに打つことができるようになってきました。
釘を打つ速度も速く正確になってきました。
2月7日(水)
今日は,保健で性教育の話がありました。人の前で のマナーをクイズ形式で,保健の前田先生が出題して,
青と赤のふだで手を挙げました。小林君もいつもの自 分の行動を思い出しながら,取り組んでいました。
2月14日(水)
着替えの時に山下君のお尻を!橋君がたたいたと言 いに来ましたが,あとから小林君も山下君に「おデブ」
と言ったということがわかり,結局2人とも山下君に 謝りに行きました。小林君には,自分のしたことは黙 っていて,人のことばかり言っていることについて,
注意しました。
3月7日(水)
今日は,朝保健指導があり,「心の成長」をテーマ に,お話がありました。小林君は,この1年間の成長 が,自分で少しは感じられたのではないかと思います。
3月16日(金)
午後は,中学部の最後の運動で,ローラーホッケー をやらずに,野球をしました。久しぶりでしたが,小 林君は,ピッチャーをして5,6点とられてふくれて,1 人で怒っていました。結果は,18対4の大負けでした。
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4.研究経過
①アセスメント
小林君が感情のコントロールをうまくできない状況に ついて,整理して考えてみると,同じように見える状況 でも,下記のようにそれぞれ異なる要因のあることがわ かってきた。
ア 自分の思い通りにやろうとしたとき
イ 人の言動のまちがいを指摘したり修正したりしよ うとしたとき
ウ いたずら心が芽生えたとき
小林君は,責任感が強いという特長があり,特にア,
イの状況のときには,この性格が小林君の行動に強く反 映していると考えられる。小林君が感情をコントロール できない要因は何であるかを意識し,小林君の気持ちを 受け止めつつ,より適切に対応することで小林君がより よく過ごしていけるようになるのではないかと考えた。
②支援の仕方と評価 A 集団の活用
小林君が,活動中に感情のコントロールをうまくでき ない状況を避け,一定時間,同じ働きかけができるよう にするために,仕事の時間の人的環境をできるだけ組と 同じにした。!橋君は同じ組の2年生である。2人だけ の男子ということもあり,年度当初から一緒に行動する ことが多かった。同じ活動をしている時には,お互いに 強いライバル意識をもっていた。そこで,お互いに相手 に負けたくないという気持ちが強いが,お互いに認め合 う部分もあるので,2人で木工に取り組むことによって,
小林君が競争的な言動から協力的な言動になっていくこ とをめざした。一緒に活動している!橋君のやり方を参 考にしながら,取り組むように指導し,まわりの人の言 動を意識して動いたり,影響されたりすることに小林君
が慣れるようにした。「仕事・木工」の時間は,木工室 2で小林君,!橋君,教師の3人で活動をしている。
1学期始めは,まだ!橋君との人間関係もしっかりと できていなかった。同じ作品(鉛筆立て,鍋敷き,ネー ムプレート)を同時進行で作ってきた。(図6・7・8)
1学期の前半は,お互いの活動を意識して見合うという より,ただ競争しているという印象が強かった。鉛筆立 て作りで,ドリルで穴をあける時間や数を競ったり,鍋 敷き作りで,作った鍋敷きの数を競ったりする姿が見ら れた。鍋敷き作りのときに,小林君が釘を曲げてばかり いたので,!橋君の釘打ちの作業の良い点を意識して見 るように助言したことがあった。そのときは,負けたく ないという気持ちからなのか,!橋君の金づちの持ち方 等を真剣に見ていて,自分の金づちの持ち方を修正して 取り入れていた。
2学期は,ベンチとプランター入れを作ることにした。
(図12・15)!橋君の活動を意識して見ることで,同じ ように自分も作ることになっている作品の作業工程を,
小林君に把握してもらおうと考えた。そこで,まず小林 君にはベンチ,!橋君にはプランター入れを作る活動か ら取り組ませることにした。始めは,!橋君は,どんな 物を作るのかというイメージをもつことができなかった。
その後,!橋君は,教師と一緒にベンチやプランター入 れの見本を作ることで,少しずつ自分が作るベンチやプ ランター入れのイメージがもてるようになってきた。そ の後,小林君と!橋君が1つ目のベンチやプランター入 れを自分たちで作るときに,お互いに材料を協力して運 んだり,切った材料の組み立てを手伝ったりする姿が見 られた。
3学期には,1学期のネームプレート作り,2学期の ベンチ作りとプランター入れ作りに取り組んだ。ネーム プレート作りでは,!橋君と協力しながら,板を磨いた
○3学期の生活 重点課題Ⅰ
・仕事・木工:自分で集中して取り組める作業的な課題を増やす。
①のこぎりで材料を切り始める時に,目印の線を確かめてからゆっくりと溝を深くする作業をしっかりしているので,
確実にまっすぐ切れるようになってきた。
②ベンチやプランター入れの材料の平面や角をサンドペーパーをしっかりと当てて磨いていた。時々,仕上がり具合 を自分から見せに来て確認していた。
③釘の長さに合わせて,金づちを打つ力を自分で調整して,釘打ちの作業がかなり速くできるようになってきた。ま た,金づちで斜め打ちしないように,材料の高さを調整して打ちやすい位置に固定した。
④ネームプレートを自分一人で作れるようになったが,藤づるを短く切れなくて,手助けを求めることがあった。適 量の木工ボンドを藤づるにつけて,はみ出さないように貼りつけるのはまだむずかしい。
○3学期の考察(活動状況・支援の仕方)
活動を途中でやめるように言われた時に,自分の思い通りにしようとすることが何度か見られたが,指示を理解し て受け入れられるようになってきた。友だちにいたずらをした時に,その場では自分から謝ることはなかなかできな かったが,冷静になってから,自分から謝りに行くことができた。嫌なことをされた時には,自分からはっきりと相 手に伝えていたが,自分から相手を押すようなことも何度かあった。
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り,自分で藤づるに木工ボンドをつけて仕上げたりする ことができた。ベンチ作りとプランター入れ作りでは,
!橋君と協力して補助具に材料を取りつけたり,釘打ち をしたりする姿が見られた。
B 補助具の使用
小林君が少しでも落ち着いて,友達のやり方や教師の 指示・支援に耳を傾ける中で,ドリル,金づち,のこぎ り等の道具の使い方を上達させたり,作業をスムーズに 進めたりすることができるように,教師が補助具作りに 取り組んだ。また,小林君が補助具を使うことによって,
作品の完成度を高め,丁寧に作品を作ることを意識した り,作品を大切に思う気持ちが出てきたりすることで集 中力が増すのではないかと考えた。
1学期に作った補助具は,ドリルで切る材料を固定し てドリルで穴をあける台,切った材料を組み立てて金づ ちで釘打ちをする枠,藤づるをのこぎりで切る枠の3種 類である。(図9・10・11)
鉛筆立て作りでは,ドリルで穴をあけるときにドリル の回転軸がなかなか安定しなかった。補助具を使って作 品を固定することによって,ドリルの回転軸がしっかり と固定され,穴をあける作業にも,集中して取り組める ようになってきた。(図1)
小林君は,自分の家で使う鉛筆立てを作りたいと言っ ていたので,鉛筆立てができあがると,とても大事そう に自分の家に持って帰っていた。
鍋敷き作りでは,補助具の枠に切った材料をはめ込ん で,釘打ちの目印を鉛筆でつけ,釘打ちをする一連の作 業を自分でできるようになってきた。(図2)それに伴 って作業も速く進み,落ち着いて活動する様子が見られ るようになってきた。
鍋敷きは,自分の家に持って帰る物と学校の中で使う 物を作った。小林君が自分の家に持って帰る鍋敷きは2 個であったが,小林君は,学校で使うために作った3個 も自分の家に持って帰ってしまった。
それほど自分の作品に愛着があり,とても大切に思っ ていることがよくわかった。小林君には,持って帰った
3個の鍋敷きが学校でみんなに使ってもらうために作っ たものであることを話して,学校にもどしてもらった。
小林君は,学校で使う鍋敷きに,1個ずつ自分の名前,
使う場所,作った日を丁寧に書いて1個ずつ大事そうに 配っていた。
ネームプレート作りでは,短い藤づるを切るときに,
小林君は,のこぎりで指先を切るのではないかという不 安があり,怖々持っていた。補助具を使うようになって からは,短い藤づるや細い藤づるでも怖がらずに,太さ や長さに応じて藤づるを差し込む溝を選び,切ることが できるようになってきた。
小林君が作ったのは,「ゆうゆうタイム」「料理グルー プ」,小林君の家族のネームプレートの3枚である。特 に小林君の家族のネームプレートでは,補助具に藤づる をにはさんで,刻み目を入れてから折る一連の作業を丁 寧に続けていた。(図3)家族のネームプレートができ あがってくると,うれしそうに!橋君や教師に見せてく れた。授業参観の時に,それを母親に自慢気に見せてい る姿が印象的だった。
2学期には,ベンチ作りとプランター入れ作りで,材 料を正確に組み立てるための補助具を作り使用した。ベ ンチ作りの補助具は,脚の材料を簡単に直角に並べるこ 図1 鉛筆立て作りでの活動の様子
図2 鍋敷き作りでの活動の様子
図3 ネームプレート作りでの活動の様子
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とができるようにした。(図12・13・14)また,プラン ター入れ作りの補助具は,切った材料をはめ込んで固定 できるようにした。補助具を使うようになってから,材 料のずれを気にすることなく,釘打ちに集中して取り組 んでいる小林君の姿が見られるようになってきた。
(図15・16・17)
3学期には,補助具の使い方にも慣れて,スムーズに 作業を進める姿が見られるようになってきた。また,! 橋君と協力していろいろな活動に取り組み,落ち着いて 活動できるようになってきていた。(図4・図5)
図4 ベンチ作りでの活動の様子
○1学期に作った作品と補助具
図6 鉛筆立て
図9 鉛筆立てを固定する補助具
○2学期に作った作品と補助具
図12 ベンチ
図7 鍋敷き
図10 鍋敷きに釘を打つ補助具
図13 脚の部分の組み立て
図5 プランター入れ作りでの活動の様子
図8 ネームプレート
図11 藤づるを切る補助具
図14 筋交いの部分の組み立て
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C 教師のかかわり
小林君の行動面や性格面を考慮して,活動が良い方向 に向くように支援することを基本に考えながら,その場 面に応じた声かけを工夫していくように心がけた。
ア 自分の思い通りにやろうとしたとき
小林君のやっているやり方がなかなかうまくいかなか ったり,教師から正しいやり方を指摘されたりしたとき に,いらいらすることが多かった。1学期の初めは,教 師からの声かけをあまり意識しないで,自分の思い通り に作業を進めようとしていた。小林君が困っているとき には,教師から何に困っているのかを聞くような声かけ を心がけた。1学期には,まだ,小林君ののこぎりや金 づち等の道具の使い方が,安定していなかった。のこぎ りで材料を斜めに切ったり,金づちでまっすぐに釘が打 てなかったりしたときに,自分から,「できない。」と言 って,いらいらすることが多く,指にけがをして保健室 へ行くことも何度かあった。
小林君の道具の使い方が理にかなったものでないとき や安全面で困るときには,教師が正しい手本を身振り手 振りで見せたり,!橋君が上手にやっているのを見せた りした。教師からの声かけとしては,「常に体の中心に のこぎりを持ってきて,引くときに力を入れて切るとい いよ。」「金づちは,端を持ってまっすぐに釘の頭に振り 下ろして打つとうまく打てるよ。」と言って,見本を示 した。となりの!橋君が上手にのこぎりや金づちを使っ ているときには,「!橋君はのこぎりをまっすぐに使っ ているね。」「!橋君の金づちの持ち方いいね。」などと 言って,!橋君の作業に小林君の意識が向くように心が けた。
小林君が道具を上手に使っているときには,繰り返し ほめるようにした。鍋敷き作りでは,のこぎりや金づち をうまく使うことができるようになってきたので,ほめ ることが多くなった。声かけとしては,「まっすぐにの こぎりで切れているね。」「金づちがしっかりと釘に当た っているね。」と言って,切った材料や釘を打った材料 を!橋君と見ながら,ほめるようにした。1学期の終わ りから2学期の始めにかけて,道具の使い方も安定して きて,助言の回数も減り,他の人のやり方もかなり素直 に受け入れられるようになってきた。また,!橋君が金 づちで釘を上手に打っているのを,小林君が逆にほめる
場面も見られた。
小林君に創意工夫の良い点が見られた時には,教師が 具体的にその点を説明し,認めた上で,その作業を継続 させた。1学期の後半から,道具の使い方が上達したり,
補助具を使って作業が速くできるようになったりしてく ると,さらに創意工夫して取り組むようになってきた。
鍋敷き作りで,ほぼすべての作業工程ができるようにな ると,自分の作業が速くなるように,材料を作業台の上 に取りやすいようにまとめて置いたり,切り終わった材 料を違う場所に置いて作業台を広く使ったりする工夫が 見られるようになってきた。
2学期には,1つの作業工程をすべて自分で責任をも って最後までやり通すことができるようになってきた。
その過程でできなかったことがあると,小林君から「で きないので,教えてください。」と言ってくるようにな った。自分で最後までやろうとする中にも,少し立ち止 まって他の人の話も聞こうとする小林君なりの心の余裕 が出てきたように感じた。また,最後の後片づけや掃除 のときには,小林君が率先してするので,教師側からは,
掃除をする場所だけを伝えて,最後まで任せるように心 がけた。
3学期には,1,2学期に取り組んだネームプレート 作り,ベンチ作り,プランター入れ作りの作業を小林君 に任せるようにした。始めに作業工程の確認をした後は,
小林君の意見をできるだけ取り入れるようにして進めた。
小林君は,自分が作業を任されたという意識をしっかり ともって取り組むことができた。
イ 人の言動のまちがいを指摘したり修正したりしよう としたとき
小林君が正義感からまちがいを指摘したり,修正した りしようとしたときには,やろうとした行為を認めた上 で,その場に合った言い方や態度について助言するよう に心がけた。乱暴なやり方をした場合には,自分がされ たらどういう気持ちになるかを小林君に考えさせるよう にした。
1学期の初めには,教師が!橋君の態度を注意したり,
道具の使い方がまちがっていることを指摘したりしたと きに,後から小林君が同じことを!橋君に繰り返すこと が何度もあった。また,自分から!橋君のまちがいを指 図15 プランター入れ 図16 側面部分の補助具 図17 底面部分の補助具
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摘するときに,大きな声で乱暴な言い方をしたり,体を 押したりする様子が見られた。何回も注意するうちに,2 学期には,教師が注意した後で同じことを指摘すること はほとんどなくなってきた。3学期には,!橋君のまち がいを小林君が自分で指摘するときにも,穏やかな態度 で接することができるようになってきた。
ウ いたずら心が芽生えたとき
教師が活動場所を離れたときに,いたずら心が芽生え て人に嫌がることをすることが多かった。基本的には,
その場できびしく注意することを原則とした。乱暴なや り方で嫌がることをした場合には,それをされた人の気 持ちを小林君にその場で考えさせてから,直接自分から 謝って,相手が納得してくれるまでは,取り組んでいる 作業を中止するようにした。作業については,小林君自 身の気持ちの切り替えができてから,再開するように配 慮した。
1学期には,!橋君とふざけていて,相手を押したり,
たたいたりするときが何度もあった。あまり何度も続い たときには,小林君にきびしく指導したこともあった。
その後,小林君は,泣きはらした目で,!橋君に謝まっ た。それからは,小林君自身が意識するようになり,悪 ふざけすることもあまりなくなった。悪ふざけをしたと きでも,小林君から「ごめんなさい。」と言って,謝っ てくることが多くなってきた。2学期には,人の嫌がる ことをする回数も,1学期に比べて減ってきた。
5.まとめと今後の課題
小林君が感情のコントロールがうまくできるようにな った理由として,4つの点が挙げられる。
第1の理由は,小林君の好きな木工に着目して「仕事
・木工」と「ゆうゆうタイム・ログハウスグループ」と いう生活の設定をしたことである。!橋君と一緒に木工 に取り組んできたことが,小林君にとってとても良い励 みになったのではないかと考えられる。
第2の理由は,教師や一緒に活動する生徒をできるだ け固定するという人的環境の設定である。!橋君と過ご す環境の中で,小林君が落ち着いて活動するようになっ たり,!橋君に対してやさしい声かけや協力的な態度を
したりできるようになってきたと言える。
第3の理由は,補助具の使用である。補助具を使用す ることによって,木工で使用する危険を伴う道具の使い 方が安定し,補助具で作業が速くできるようになったこ とが,小林君の感情のコントロールを後押ししたと考え られる。また,作品を丁寧に作るようになり,作品に対 する愛着も見られるようになってきたことも重要な要素 としてとらえている。
第4の理由は,話を聞いて受け止める声かけをしたこ とである。小林君の行動面や性格面から,感情のコント ロールがうまくいかなくなる状況を把握して,それぞれ の場合に対応した声かけを実施した結果,1学期に比べ て,感情のコントロール面でかなりの改善が見られた。
特に,自分で創意工夫をしたり,責任をもって最後まで やり通したりする場合については,小林君のよい面と考 えて認めるようにしたことが,効果的であったと考えら れる。
仕事とゆうゆうタイムの時間以外の学校生活全般でも,
小林君が自分で感情の出し方をうまくコントロールして いる場面が多く見られるようになってきた。また,友だ ちや教師にも,穏やかな気持ちで話しかけることができ るようになってきた。
今後は,一人一人に応じた本校の生活教育に見られる 柔軟な教育課程の中に,仕事での取り組みを活用しなが ら,感情をコントロールする小林君の力を伸ばしていき たいと考えている。さらには,みんなから信頼される中 学部のリーダーとして,小林君の活躍できる場面をたく さん作っていきたいと考えている。
【引用・参考文献】
福井大学教育地域科学部附属養護学校年報(2004)
№29 P145〜P146
福井大学教育地域科学部附属養護学校年報(2005)
№30 P93〜p94
福井大学教育地域科学部附属養護学校年報(2006)
№31 P128〜P129
福井大学教育地域科学部附属養護学校年報(2007)
№32 P128〜P129
A Case Study of Student’s Learning in Woodwork Rising the Ability to Control his emotion
Hideki YANAGISAWA
Key words: Woodwork, Emotionn, Control
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