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雑誌名 福井大学教育実践研究

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Academic year: 2021

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メディアリテラシーを育む協働のプロジェクト :  制作者の立場で映像を紐解いてみよう(1学年)

著者 森阪 康昌

雑誌名 福井大学教育実践研究

巻 32

ページ 27‑35

発行年 2008‑01‑31

URL http://hdl.handle.net/10098/1663

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1.はじめに

子どもとのかかわりの中で,映像教育の必要性を感じる

「映画」ってすごいメディアだなあと強く感じた。兼 ねてからデザインとか視覚的効果に興味があった僕に,

附中の音楽という聴覚の文化が加わり,そこにさらに『映 画道』が更に大きな影響力をもってやって来た。メディ アの持つ重要性,メッセージの大切さ,団結力の重要性 とか様々な種類,多方面にわたる「力」を僕は『映画道』

から学んだと思う。今改めて附中で,『映画道』に一人 の人間として携わることができて本当によかったと思う。

僕にとって『映画道』は,「かけがえの無い青春の一頁」

である。 (裕太の自分史より)

これは,平成18年度に卒業した裕太が,3年間の学年プ ロジェクト(総合的な学習の時間)の活動を振り返って 自分史に書き残したものである。平成18年度に卒業した 子どもの3年間を貫く学年プロジェクトのテーマは『映 画道』。私は担当者の一人として,この子どもに寄り添 って活動を進めてきた。その3年間のかかわりの中で,1 番感じたことが『映画道』の魅力や学びの価値である。

裕太だけではなく,多くの子どもが自分史の中で,自身 の『映画道』に対する熱い思いを述べている。「またや

ってみたい。」と子どもだけでなく,私自身そのような 思いを抱いた実践だった。この思いは,単に楽しさなど の情意的なものだけではなく,映像教育の重要性を感じ たからである。私たちは,さまざまなメディアに囲まれ て,その影響を多大に受けながら生活を営んでいる。し かし,現在の学校教育のカリキュラムには,映像教育と いう視点がない。

テレビという映像メディアだけを考えても,現在コン ピュータや携帯電話にまで広がり,2011年にはアナログ 放送から地上波デジタル放送に切り替わる。今後益々映 像の多様化,個別化が進むのである。また,映像のデジ タル化やコンピュータの高性能化は,よりリアルな映像 を実現し,映像制作もそれほど特殊な仕事ではなくなっ てきている。誰もがよりリアルな虚像をつくり出すこと も可能なのである。映像のリアルさと虚像は,現実との 境界を見失ってしまう可能性があり,近年の青少年犯罪 もその例外ではない。

情報教育の中でメディアリテラシーを育む

私はこの実践から,「映像教育をこの学年だけで閉じ てしまうのではなく,教科の題材として位置づけ,すべ ての子どもに学ばせ,メディアリテラシーを育む必要が ある。」と強く感じたのである。

私が担当している技術・家庭科<技術分野>(以下

メディアリテラシーを育む協働のプロジェクト

〜制作者の立場で映像を紐解いてみよう(1学年)〜

福井大学教育地域科学部附属中学校 森 阪 康 昌 教育実践報告

高度情報通信社会の中で,私たちはさまざまなメディアに取り囲まれて生活を送っている。メディア は,もはや私たちの生活に欠くことのできない存在である反面,溢れる情報に振り回されたり,情報格 差を生み出したりという新たな問題まで生じている。そのため,中学校では,主として技術・家庭科<

技術分野>で情報教育が行われ,コンピュータを中心に活動が行われている。しかし,メディアは必ず しもコンピュータだけではない。また,使い方など技術的な事柄を学ぶだけでは,メディアを知ること にならないと考える。コンピュータが一般化した現在,今一度情報教育の内容を見直す必要がある。

テレビという映像メディアは,現在コンピュータや携帯電話にまで広がり,2011年に地上波デジタル 放送に切り替わる。今後益々映像の多様化,個別化が進むのである。また,映像のデジタル化やコンピ ュータの高性能化は,よりリアルな映像を実現し,映像制作もそれほど特殊な仕事ではなくなってきて いる。誰もがよりリアルな虚像をつくり出すこともできるため,現実との境界を見失ってしまう可能性 がある。しかし,映像について学ぶ機会がない。

この実践は,現在の情報教育の問題を考え,映像教育を本教科の題材として位置づけたものである。

子どもは,「映像クリエイターに挑戦」という看板を掲げて,チームで創造的・協働的に映像制作に取 り組んでいく。そして,その探究活動の中で必要なスキルを学び,つくる側の視点に立って,メディア の情報は,どのような意図で,撮られ,加工され,発信されたものなのかという映像の背景を紐解き,

情報を見極められるメディアリテラシーを育んでいく。

キーワード:高度情報通信社会,映像,探究,創造,協働,メディアリテラシー

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技術科)は,情報教育が明確に位置づけられている。こ れまでの情報教育は,新しいメディアであるコンピュー タをどのように活用していくかが中心であった。しかし,

情報源であるメディアはコンピュータだけではない。ま た,操作技能や知識の習得がメディアを知ることにはな らないと考える。コンピュータが一般化した現在,情報 教育の内容を見直す必要がある。

今後は,コンピュータ教育もさることながら,わずか 1%といえども,関東地区だけでも39万6000人に相当す るといわれる視聴率が物語るように,多大な影響力を持 つテレビを始め,映像についても取り扱っていく必要が ある。実際に映像制作を行い,つくる側の視点に立って,

ものづくりの流れをつかんだり,必要なスキルを身につ けたりする。その経験によって初めて,普段目にするメ ディアからの情報を,つくる側の視点に立って見ること ができ,このような情報は,どのような意図で,撮られ,

加工され,発信されたものなのかという映像の背景を紐 解き,情報を見極められるメディアリテラシーを育むこ とができるのではないだろうか。

2.映画制作での出来事

! 構造をつかみながら物話をつくる脚本制作

(第1時〜第8時)

先輩の作品から活動のイメージを持つ

真由:技術で映画をつくると思わなかった。

悠一:でも,とてもおもしろそうだね。

朱美:中学の技術って本格的!

美奈:ホント本格的だよね。楽しみ〜。

祐香:映画をつくるって附属はやっぱりすごいね。

4月,技術科の授業で,最初のものづくりとして,映 画をつくることを告げられ,子どもは一様に驚きと関心 を抱いている。子どもにとって本教科は,中学校で初め て経験するものであり,3年間でどのような活動を行うの かとても興味がある様子である。また,「本格的」とい う言葉を使う子どもの会話からも,小学校の活動との違 いを感じ,中学生になったのだという実感を持って,活 動に向かっていこうとする意欲が感じられる。その後,

「その映画は,25秒のショート・ショート・ムービーで す。」と時間のことを告げられると,様子は大きく変わ り,「短〜い。」や「25秒だとすぐに終わってしまう。」,

「短い時間でどうまとめればいいの。」,「難しそう。」と いうつぶやきになる。つぶやきが収まるのを待って,過 去に先輩たちが1年生の時に30秒の映画を制作しコンテ ストに出展したという事実を告げ,その作品を鑑賞する。

(図1参照)子どもは,これから自分たちが制作してい くとあって,真剣なまなざしで,18本の作品を鑑賞して いる。教師は,要所でその作品の解説を加えていく。作 品を鑑賞し終わると,子どもは,自分たちにも本当にで

きるのかという不安をまだ持ちつつも,子どもなりに構 成が見えたようで,「映画をつくってみたい。」という気 持ちが高まったようである。

本教科の特徴は,子どもの活動の成果が「もの」で現 れることにある。「もの」を残せるからこそ,活動の意 義や内容を過去の作品から具体的に提示することができ る。中学校に入学して初めてかかわり3年間で完結しな ければならない本教科にとって,3年間を「もの」で語 れることは大きな強みである。子どもは作品を直に触れ ることによって,時にはまねて試してみたり,時にはそ の作品の問題点を考え,それを超えるようなものを生み 出したりすることができる。今後も過去の作品を積極的 に活用して,直接対話することを大切にしなければなら ないと感じた場面である。

「大切なもの」から連想するものを考える

作品のイメージが持てたところで,5W1Hを個々に 分担してカードに書き,それをつなぎ合わせるゲームを 行う。これは,いきなり映画のシナリオを考えるよりも,

遊びの中からシナリオを考える上で必要な要素を理解し ていく方がよいと考えたからである。子どもは,時には いたずら的な笑みを浮かべながら,思い思いカードに書 いている。子どもが書き終わるのを待って,カードを集 め,「この物語は,フィクションです。」と告げる。この 言葉に触発され,一斉に笑いが起こる。できあがった物 語は,笑いをとるようなものであったり,ちょっと感動 するようなものであったり,話がつながらないものであ ったりとそれぞれで,内容によって表情を変えながら鑑 賞している。映画は,5W1Hを,文字ばかりでなく,

映像・音声・文字のいずれかの方法で表現していること を告げた後,「一人一人の意見をつなぎ合わせてみると,

一人では考えもし得ないような思わぬ物語が生まれるこ とがあります。そこに新しい発見が生まれますよ。」と 述べてその時間を終える。

次の週,出展するコンテストのテーマである「大切な もの」を個々に考えることから始まる。子どもは,自由 に「大切なもの」を考え,次々と付箋紙に書いていく。

考えが出尽くすのを待って,今度は5名で構成されてい 図1 過去の作品を鑑賞する

森阪 康昌

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る生活班毎に,付箋紙に書いたものを一枚の大きな用紙 に貼り,それぞれを線でつないで仲間分けや絞り込みを 行うウェッビングマップをつくろうと提案する。これは,

友情など抽象的なものでは話が多様に存在するため,よ り具体的なものへと絞り込みを行い,物語を考える意図 があった。しかし,子どもはなかなかつなげられない。

子どもが書いたものは,夢や友情など抽象的なものばか りである。教師自身ウェッビングマップをつくることに 意味があるのか疑問を感じる。そのような迷いが生じる 中,2班の子どもが,付箋紙を一本の帯状につなげている 姿を見かける。(図2参照)それを見た瞬間,まさに映 画のライン構成そのものであると感じる。そこで,2班の 取り組みを紹介した後,それぞれが考えたものをつなぎ 合わせて,足らなければ必要な言葉を補い,1つの物語を つくってみようと修正案を出す。2班が先に行っている ことも手伝って,それぞれの班で動きが見られる。そし て,班毎に1つずつ完成した物語の発表を行う。

それぞれの物語は,話としては成立しているのだが,

「いじめ」など話が似通っており,月並みな物語ばかり である。しかも,「あなたはどうですか?」というよう な質問で物語を締めくくっている。祐香の班も,例外で はない。この発表を聞いているうちに,水戸黄門の監督 や演出を手がけている矢田監督が,平成18年度に卒業し た子どもの作品の講評をして下さったとき,「人にどう かと聞く前に,あなたがどう思うか映像で伝えなさい。」 とおっしゃっていた言葉を思い出す。そこで,当初は予 定してなかったのであるが,高校生が制作した映画を鑑 賞することになる。

この映画は,子どもが多く取り上げた「友情」をテー マにしたもので,学校を舞台に高校生の友だち3人の物 語を描いたものである。しかし,テーマを伝えるための 物語の中で起こる出来事の取り上げ方が,非常に個性的 でおもしろい作品である。映画の鑑賞を終え,専門家に よる講評の前でVTRと止めると,「講評もしっかりと 聞きたい。」と多数の子どもから声が上がり,最後まで 鑑賞する。授業後の振り返りで祐香は,「本物の映画だ と思いました。私たちの班もこういう映画をつくりたい です。」という感想を残し,ひとつの基準を定めている。

教師は,授業の最後に,禁止事項として,「あなたはど うですか?」と聞かないことと,文字やセリフで直接い わないことを付け加える。

映画のテーマは具体的,物語にはうそを織り交ぜる 5月,前回鑑賞した映画を振り返り,個々にプロット を作成することから始まる。教師は,前時の反省から,

映画のテーマの考え方と,個人で考えたプロットの活用 のしかたについて述べる。「映画におけるテーマは,『友 情』などの抽象的な単語ではなく,物語の内容を意識し た文章で表現するといいと思います。よく映画の予告編 で語るセリフが,まさに映画におけるテーマです。前回 見た映画でいえば,友情は友情なのだけれども,もっと 具体的に,『お互いの違いを認め合い,共感し合えるよ うな友情を大切にしましょう』ということになると思い ます。今日は,未完成でもいいから精一杯個人で考えて,

今回制作する映画のプロットをつくってみて下さい。そ れを映画制作班になったとき,お互い提案し合って,よ りよいシナリオづくりにつながればいいと思います。」 と伝え,用紙を配布する。この用紙は,テーマと構成要 素,登場人物,起承転結に分かれて物語を書く欄がある。

前回の映画鑑賞を通して,数多くの子どもが,「あの ような映画をつくりたい。」と意気込んでいたのである が,いざオリジナルの物語を考える場面に入ると,とて も難しいことに気づく。普段楽しい映像を見慣れている はずなのに,いざ物語をつくる立場に立つと思い浮かば ない。祐香は,いろいろな他のストーリーが頭に浮かび すぎて,主張が1つにまとまらず難しさを感じているよ うである。また,「普通じゃつまらないですよねっ先生。」 といいながらも書いてみると普通の話になってしまう子 どももいたり,全く手つかずになってしまう子どももい たりする。子どもは,つくり手の悩みを実感しながら,

次第に仲間と相談したいという気持ちになる。そのよう な子どもに対して個別に対応して,質問しながら,話を 膨らませていったりもしたが,全体的に普通の話から脱 却する視点を設ける必要性を感じ,もう1本映画を鑑賞 することになる。

この映画も,高校生が制作した作品であり,この映画 の特徴は,現実にありそうで,あり得ない場面が数多く 盛り込まれている作品である。ただ普通に見てしまえば,

笑って見過ごしてしまう場面を取り上げて,「こういう ことがあったら普通,どういう行動に出ますか。」とい う質問を投げかけ,現実と映画の違いをどんどん明らか にしていく。そして,最後に,放送中止になった番組を 例にすべて許されるわけではないことを理解させた上で,

ドラマには印象を強く持たせるためのうそがあることを 知らせ,うそを盛り込む必要があることを伝える。映画 を鑑賞したことで,新たな視点を得て再び物語を考え直 そうと動き始め,大きく書き換える子どもも見られる。

しかし,なかなかまとまらない子どもも見られたため,

家庭でテレビ番組をつくり手の視点で見ながら物語を考 えるのもいいと考え,次回までに班内で発表できるよう にしておくことを約束して活動を終える。

通常,情報教育では,うそはいけないという指導をす

図2 個々に考えた「大切なもの」をつなげて物語をつくる

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る。しかし,現実には,本当らしく見せたうその情報が あることも事実である。本当を伝えるドキュメンタリー においても時間の操作が行われている。高度情報通信社 会において,本当を見極める力はとても重要である。そ して,その力を育むためには,実際にうそを本当らしく 見せる映像を制作することが必要である。うそをつくっ たという経験が,逆に本当を見極める力となり,現実と の境界を見失わない子どもを育むのではないだろうか。

映画制作班での活動が始まる

僕は将来映画監督になりたいと考えています。

私は脚本を書く仕事に就きたいと思っています。

(生活の記録より)

本校には,子どもが毎日その日の出来事を記録する生 活の記録がある。活動が進むにつれて,この2名に代表 されるように,将来映画制作にかかわる仕事に就きたい と考える子どもが見られる。また,今回の映画制作でこ ういう役割をしたいと考える子どもも見られる。子ども の取り組みや記述を見ていると,この活動が,子どもに 夢を与えたり,夢への第一歩を踏み出すきっかけになっ たりしていることを実感し,喜びを感じると同時に,今 後の活動を見ていく楽しみが一段と増した。

一人一人提案できる素材があることを確認して,今回 の映画制作を行う班と映画制作に必要な役割の説明に入 る。班は,学級の生活班を2つ合体させた10名で編成し,

各学級4グループずつである。役割は,制作,監督,演 出,脚本,撮影,音響,道具,照明,編集,効果を1名 ずつ担当し,活動を進めていく。しかし,この役割は固 定的なものではなく,キャストやエキストラとして出演 すると,その役割を担当する人がいなくなるので,必要 に応じて交代しながら流動的に進めていく。このことに よって,子どもは,ひとつの得意な役割を追究しながら も,映画制作にかかわるさまざまな役割を経験し,総合 的に映画を理解していくことになる。

祐香は,監督になりたいと考えている。映画制作班の 活動が始まり,役割決めの話し合いに入る。(図3参照)

祐香はさっそく監督に立候補したが,悠一と重なる。結 局ジャンケンで負けてしまい,監督を断念せざる終えな くなる。役割が次々と決まっていく中で,祐香は監督の 次にやってみたかった撮影を担当することになり,新た な意欲を燃やしている。話し合いは,役割決めから映画 制作班の名前を決める活動に移る。そして,さまざまな 意見を出し合う中で,「スター☆the movieプロダクショ ン」と決定し,通常は「スタプロ」と略称で呼び合うこ とが確認される。最後に監督になった悠一から,「次回 までに,それぞれのプロットを発表できるようにしてお くこと」と宿題を出され,その日の活動を終える。

協働でプロットを作成しシナリオを書く

悠一:今日は映画のストーリーを考えたいと思います。

一人一人発表してください。

5月中旬,「スタプロ」では,悠一を中心に,今回制 作する映画のプロットを立て,物語をつくる話し合いに 入る。悠一は,一人一人の意見を活かして映画を制作し ようと,メンバー全員の発表を促している。

祐香は,これまで悩んだ末,「一人一人が持っている 夢を尊重し,夢に向かってみんなで助け合う姿」をテー マに,夢がまだ見つからない中学生の女の子を主人公に 仲間とかかわりの中で夢を見つけていくという物語を発 表している。真由は,学校を舞台に,3人の登場人物で,

「個性の大切さ」を伝えるような映画がつくりたいと発 表し,美奈は,「友だちを助ける」をテーマに,いじめ を行う主人公が,いじめを受けている仲間とかかわって いく中で考えを改めていくといういじめる側を主人公に した物語を発表している。朱美は,「自分の意見を持つ こと」と「夢を持つこと」の2つをテーマに,気の弱い 主人公と優しい女の子,明るくよくしゃべる男の子,主 人公を責める友人を登場させ,夢に関するアンケートを きっかけに,仲間とのかかわりの中でなかなか自分の本 当の夢を打ち明けられない主人公が,最後に自分の本当 の夢を書き表すという物語を発表している。このような 発表が続き,最後に悠一が,「環境が変わっても変わら ない友情」をテーマに,家庭が貧しい2人の子どもを登 場させ,友だちの親の事業の成功をきっかけに距離をお くようになるが,母親の一言で主人公の心は変わり再び 友情を取り戻すという物語を発表している。

全員のプロットが発表された後の話し合いで,「スタ プロ」では,祐香や朱美が提案した「夢」をテーマの主 軸に,物語は朱美の筋を中心にして,悠一の親の登場や 美奈の友とのかかわり,真由の個性を活かすことを加味 してつくっていくことが確認される。そして,脚本担当 の真由を中心に,シナリオの作成に入っていく。テーマ は祐香や朱美,物語の筋は朱美が考えたものであるにも

図3 映画制作班の話し合い 森阪 康昌

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かかわらず,考えた子どもに任せることなく,悠一は,

シナリオを脚本担当の真由に委ねている。他者の提案を,

担当者が責任を持って解釈し,シナリオをつくっていく 姿がおもしろく,協働の姿を感じた場面だった。

次の週,プロットの完成と共に,登場する人物も明ら かになり,シナリオの作成と並行して,キャストの募集 が始まる。祐香は,ここでもキャストに立候補しており,

積極的な姿がうかがえる。しかし,立候補が重なってし まい,今回はジャンケンではなく,オーディションで決 めようということになる。演技力は映画の重要な要素だ と考えているようである。オーディション前の様子を見 ていると,グループ内の仲間同士のものであるにもかか わらず,真面目に緊張している男の子がいたり,その子 を応援し,演技指導をしている男の子がいたりして,映 画制作に対する真剣さが伝わってくる。オーディション では,祐香もがんばって演技をしたのであるが,演技力 抜群の友美を前に涙を呑むことになる。

5月末,祐香と共にオーディションに落ちてしまった 朱美だったが,別の活躍の場を求めて,映画のエンディ ングで使用する曲に使おうと,家でテーマ曲をつくって くる。グループの半分は前回に引き続きシナリオを作成 していたため,キャストに立候補していた関係でそれに かかわっていない祐香や美奈に紹介する。祐香も美奈も 詞や曲に感動し,教師にそのことを伝えに来る。そして,

「先生。ぜひ聞いてください。」と自ら3人で歌ってみ せたのである。「一般の曲は著作権があるし,曲も手づ くりの方が味があっていいからぜひ映画で使うといい よ。」と伝えると,「忘れないうちに録音しておかなき ゃ。」と新たな動きを見せる。映画制作は,さまざまな 形で参加できることを,子どもを通して実感した場面で あった。

シナリオを基に絵コンテを描き画角を考える

6月に入り,ようやく真由と悠一を中心に考えたシナ リオができあがり,「スタプロ」のスタッフ全員に配布 される。教師は,ここで全員でシナリオを共有する時間 を与えればよかったのだが,先を急いでしまったため,

撮影に必要な設計書である絵コンテの説明を行う。「映 画は,テーマやあらすじを示すプロットと具体的に情景 やキャストのセリフなど内容を示すシナリオだけではつ くれません。シナリオに書かれた内容をどう撮っていく か考える必要があります。それを示したものが絵コンテ です。今日は,できあがったシナリオをどう撮っていく か考えてみましょう。」と伝える。そして,過去の作品 を鑑賞し,その絵コンテを紹介した後,教師が中心とな り,子どもからスタッフを募集して撮影の実演を行う。

キャストとして3名の女子を募集すると,しばらく時 間をおいて,「スタプロ」の友美と祐香,朱美が立候補 する。友美は既に自身の映画のキャスト出演が決まって おり,祐香と朱美は,友美と争ってキャストになれなか

った子どもである。教師は,その3人が仲良く手を挙げ たところに安心するだけでなく,友美の演技を全員に見 せられることや,祐香と朱美がキャストをやってみるチ ャンスを再び活かしたことに拍手を贈りたい気持ちにな る。その他のスタッフも順次決まり,いよいよ撮影が始 まる。(図4参照)

撮影シーンを見ていた子どもがまず驚いたのが,友美 の演技である。「うま〜い。」というささやきが至ると ころで起きている。友美の演技を見て,「自分たちもが んばらなくては…。」と決意を新たにしたようである。

次に驚いたのが,1つのシーンをフルショットやバストシ ョット,クローズアップなどに分けて,細かく撮ってい くことである。NGの量や一人のセリフが終わる毎に,

カメラの位置を変えカットを刻んで撮っていく姿は,子 どもが想像し得なかったような撮影シーンだったようで ある。この活動によって,カットという概念が強く印象 づけられると同時に,もはや絵コンテの作成どころでは なくなり,シナリオの再検討へと気持ちは移っていく。

実演に触発されシナリオを見直す

祐香:シーンが多すぎて25秒で収まらないよ。

美奈:それに今の脚本は,一部の人で決めたものだし,

みんなの意見を聞いた方がいいと思う。

宗典:え〜。ハッピーエンドで終わらないの〜。

(完全にグループが割れてしまっている)

悠一:もう一回検討してみんなの意見を聞こう。

3名の子どもが直接撮影シーンの実演にかかわったの も手伝って,「スタプロ」では,シナリオに対する問題 点をぶつけ合う姿が見られる。それはシーンの数による 時間的なことだったり,「あなたの本当の夢はなんです か?」という終わり方だったりしている。これでいいと 思っている子どもとみんなの意見を聞いて修正しなけれ ばいけないという子どもと完全にグループが分かれてし まっている。悠一は,監督としてシナリオの作成にかか わり提案したものであるにもかかわらず,決して強く押 し通すことはせずに,これもまた監督らしく気持ちをひ

図4 教師による撮影シーンの実演

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とつに整えることを第一に考え,絵コンテの作成を先送 りにして,シナリオの話し合いの時間を設けている。

話し合いでは,通常5人で使用する机に10人が顔を付 け合わせるように座り,問題点となっているところをひ とつひとつ確認し合意を取りながら進めていく姿がある。

(図5参照)全員参加の話し合いによって,ファースト カットの部分とエンドカットの部分が大幅に見直される。

特にエンドカットは,視聴者への質問で終わるものから,

親が勝手にアンケートに書いた主人公の夢を,自ら消し ゴムで消して自分の本当の夢に書き換えるというシーン になり,ずいぶんと映画的な終わり方になっている。授 業後の振り返りで,祐香は,「みんなの意見がまとまっ て,前よりもいい作品がつくれそうです。がんばります

…。」と,朱美は,「今日は脚本かき直しになりました。

ねってねって,もっともっといい作品にしたいです。」 と記録している。話し合いによって少しずつグループが まとまり,こだわりをもって取り組んでいる様子がうか がえる。

シナリオの見直しから1週間が経ち,「スタプロ」で は,先送りになった絵コンテの作成に入る。画角は,ア ングル,ポジション,フレームに加えて,カメラを動か すパンやティルト,ドリー,ズームなど多様にある。そ れを制作者が意図的に使い分けて,組み合わせていかな ければならない。当然ここでもスムーズに話し合いが進 んだわけではなく,悠一と意見が対立した場面も見られ たが,授業の終わりには映画制作に必要なすべての設計 書が完成する。(図6参照)祐香の振り返りには,「絵 コンテをかくことによって,イメージがふくらみ,いい ものがつくれそうです。」と絵コンテの価値を感じ,自 信を持って今後の撮影に臨む様子がうかがえる。

! 一人一人が役割を担い協働で進める撮影

(第9時〜第13時)

思うように進まない

6月の終わり,教師が考えていた予定よりもやや時間 はかかったが,撮影に入っていく。ビデオカメラ,撮影 専用のライト,レフ板,マイク,カチンコなど子どもに とって初めて見るものばかりである。もちろん操作する のも初めてである。「先生。ビデオテープは,どうやっ て入れればいいのですか。」という質問からのスタート である。しかし,機材にそれほど難しい操作が必要なも のはなく,撮影を心待ちにしていたことと撮影シーンの 実演を事前に見た経験が重なって,簡単な講習会だけで 子どもは理解してしまう。

グループによっては,「今日は撮影練習の日」と定め て,キャストはシナリオを持ってセリフ練習を,撮影や 音響,照明はキャストの姿を被写体にして撮影練習を,

監督はスタートのかけ声と撮影の録画ボタンを押すタイ ミングを合わせる練習をしている。一方,「スタプロ」

は,練習なしで機材をロケ地に運び,教室のシーンから 始める。結果的にNGの連続で,1つのシーンを何度も何 度も撮り直すことになる。

祐香:今日はおもしろいものがとれたけれど,2カットし か撮れなかった。これから大丈夫かなあ。

祐香は,授業後に思うように進まなくて不安を感じて つぶやいている。この頃になると,シーンであるとかカ ットであるとか専門用語が,子どもの会話や振り返りに 頻繁に現れるようになっている。映像をシーンやカット で見ようとしている証拠ではないかと考える。また,映 画制作の進め方については,統一するよりも,子どもが 活動を進めていく中で,実践し,省察し,修正する方が よいと考え,監督や制作を中心に段取りを任せることに する。

図5 ひとつの机で顔を付け合わせて話し合う

図6 完成した「スタプロ」のシナリオ 森阪 康昌

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時間を操作する

朱美:先生。撮影は,シナリオの順番に取らなければい けないのですか。

教師:コンピュータで編集するときに順番を入れかえる ことができるよ。もし,ひとつのロケ地を複数の シーンで使うのなら,すべて撮ってしまった方が 効率がいいよ。

1回目の撮影の時間を終えた7月,撮影の段取りをつ ける制作の朱美から撮影順についての質問を受ける。朱 美も何となくわかってはいたのであるが,不安だったの である。この質問をきっかけに,教師は全体に,「実際 の映画のロケは,役者さんやスタッフの宿泊代や交通費,

弁当代,機材のレンタル費など非常にお金がかかります。

映画は,編集で時間を操作することができるから,効率 よく計画的に撮影するのも大切です。」と告げる。

「スタプロ」では,教師の発言や前回の失敗を活かし,

最初にどのシーンを撮るか検討してから撮影をスタート している。授業後,美奈は,もっともっときちんと計画 を立てなければいけないと反省しながらも,「今日は3 シーン撮れました。前よりもたくさん撮れて順調です。」 と振り返っている。(図7参照)

少しずつ様になってくる

悠一:このシーンは,まずフルショットで入れてほしい。

祐香:5人全員入らない。無理だよ。

悠一:この机の上にのせて少し上から撮ればいいよ。

祐香:この場所でみんな入りそう。

(悠一カメラを確認する)

祐香:あっ照明が映っている。朱美がかぶって,友美が 映らない。もう少し右。」

泰典:ここでマイクは映らない?大丈夫?

悠一:よーし。じゃあいくよ。早く撮らないと時間なく なっちゃうから。用意!

(監督,祐香を見てカメラがまわったことを目線で確 認。)

悠一:スタート!

(演技が始まる)

悠一:カット!

7月中旬,夏休み前の最後の活動を迎える。「スタプ ロ」では,3回目の撮影に入る。

悠一から,「今日は,生徒玄関で下校のシーンの撮り 直しと保健室で部屋に友だちが集まって夢を話し合うシ ーンを撮ります。」という指示が入る。そして,撮影が 始まったのだが,下校のシーンの撮り直しを先にするか,

部屋のシーンを先に撮るかでもめる。もめた原因は,別 の映画撮影班である「中プロ」が家から衣装を持ち込み 撮影しているのに触発され,その日は家から衣装を持っ てきたからである。せっかく衣装を持ってきたのだから 部屋のシーンを先に撮ってしまいたいという気持ちが働 いている。一方で,祐香は,下校のシーンを先に撮ると 思い,ちょい役ではあるがやりたかったキャストで出演 できることも手伝って,すでにヘルメットをかぶり,自 転車に乗ってスタンバイしている。悠一は決断を迫られ,

結局着替える時間を考え,下校のシーンを先に撮ってし まおうということになる。このシーンでは,祐香がキャ ストで出演するため,撮影を担当する者がいない。そこ で,悠一が撮影を担当する。悠一に代わって,友美が監 督の代理を務め,中心となって指示する。キャストとし て順に出演することで,役割が循環している。まだまだ 撮影に入るまでにもたつきはあるが,少しずつ様になっ ている様子がうかがえる。

また,部屋のシーンでは,画角をどうするかが問題に なる。その解決の様子を見ていると,監督である悠一は 主に画角を中心に指示し,演技が上手で演出でもある友 美はセリフのいい方や演技のしかたを1回1回意見交換 をしながら指示している。なかなか思うように撮影が進 まないと子ども自身感じながらも,それぞれの役割を確 立して,さまざまな用語や技法を覚えたり,取り入れた りしながら撮影を進めている。(図8参照)

図7 教室での撮影

図8 衣装を持ち込んでの撮影

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3.題材を通しての省察

! 子どもの学びのプロセス

映画制作にかかわり学びを深める祐香

祐香は,映画を制作すると聞いて,「附属はやっぱり すごい。」と本校を入学したことを喜びに感じ,この題 材に対する関心を高めている。そして,過去に制作した 作品を見ていく中で,「本物の映画だ。こういう映画を つくりたい。」と自身の映画の基準を設定している。し かし,いざ物語を想像していく活動では,話がまとまら ず難しさを感じる。一度,家庭に持ち帰り,冷静に考え る。そこで,以前から大切なものとして取り上げていた

「夢」をテーマにひとつの物語を完成させる。

自分自身で納得のいく物語ができたことによって,監 督になりたいという気持ちを持つ。しかし,ジャンケン で負けてしまう。普通であれば気持ちが沈むところであ るが,映画制作への興味からか撮影の担当となり,「よ かった。」と述べている。映画のプロットができあがり,

今度はキャストになりたいという気持ちを持つ。しかし,

今度はオーディションで友美に敗れ,キャストの夢が実 現しない。

この2度の挫折を味わいながら,朱美と美奈のかかわ りの中で,テーマ曲という新たな興味を得る。著作権を 理解し,3人で楽しそうに歌い教師に紹介する姿が見ら れる。また,教師による撮影シーンの実演によって,キ ャストをやってみるチャンスを得る。そこで,キャスト のおもしろさを実感し,もっとやってみたいという気持 ちになる。その積極的な気持ちが,シナリオの修正の場 面でも表れ,机をひとつにして,グループ全員の参加を 促したり,時間に関する意見を述べたりする姿が見られ る。「みんなの意見がまとまって前よりいい作品がつく れそうです。がんばります。」という振り返りからも映 画制作に対する気持ちが如実に表れている。

シナリオが完成し,絵コンテを作成する場面では,自 分自身が今後撮影担当としてカメラを回さなければいけ ないこととキャストとして参加した経験が重なり,相当 カットを意識して考えようとしている。そのために,画 角の知識を熱心に取り入れて,自分なりの撮影イメージ をつくり上げている。また,「いいものをつくれそうで す。」という記述から撮影に自信を深めている様子がう かがえる。

撮影の場面では,1回目の失敗から,計画的に撮影を していかなければならないことを学ぶ。そして,三脚で きちんとカメラを固定して,監督の専門用語を使った指 示も理解し撮影を進める姿が見られる。また,再びキャ ストとして出演することができ,友美の指示を聞きなが らキャストとしての学びも深めているようである。

このようにして,祐香はさまざまな活動に積極的に参 加し実践していくことを通して,新たな興味を広げたり,

知識や技能を深めていった。祐香の様子を見ていると,

映像の見方も,以前に比べて変化していると思われる。

" 実践を支えてきたもの

関心が高く多様な探究でき協働の必然がある題材設定

寛司:この編集ソフト何に使うのですか。放送部ですか。

教師:今年から1年生の技術で映画をつくっている。

寛司:いいなあ。うらやましい。

教師:自分ら映像編集できるんじゃないの。

寛司:授業でやりたいんです。やっぱりうらやましい。

もう一回1年生やってもいいですか。

教師:それは無理なんじゃないの。

優子:えっ1年生が映画つくっているって本当だったの ですか。私たちの時にはなかったのに…。

珠美:(うなずく)

教師:それほどやってみたかったの。

優子:やってみたかったです。先輩たちも楽しそうにや っていたし,映画はおもしろそう。

教師:インターネットのこともやるよ。インターネット はとても重要なことだし。

優子:それはそうですけれど…。じゃあ,時間的に厳し いんじゃないですか。<痛いところをつかれる>

寛司:先生。1年生がつくった映画をぜひ見てみたいで す。文化祭で流したらどうですか?技家委員会企 画で取り組んでいいですか。

これは,休み時間に3年生と交わした会話である。3 年生たちは,半ば教師を責めるような気持ちで,映画制 作に取り組む1年生をうらやましがっている。これは,

昨年度まで楽しそうに映画を制作していた先輩たちの姿 を見ていたことも手伝っていると思われる。前技家委員 長で,現在も技家委員として活躍している寛司は,本教 科の委員らしく最後は制作した映画の活かし方を提案し ている。現在,映画制作に取り組んでいる子どもだけで なく,子どもとって,映像制作はとても魅力を感じるも のということがこの会話からもわかる。

また,映画制作は,さまざまな活動が盛り込まれ,活 躍の場が多様にある。コンテストで成果を確かめること もできる。脚本制作の過程においても,撮影の過程にお いても,編集の過程においても探究が可能で,その過程 におけるひとつひとつの役割においても探究が可能であ る。祐香も監督になれなかったり,キャストになれなか ったりして100%希望通りにはならなかったが,それぞ れの過程で,課題を設定して充実した探究を進めている。

つまり,充実した探究を巻き起こすためには,興味が持 続し,多様な探究が可能な題材の設定が重要なのである。

さらに,今回10名という比較的大きなグループで活動 を展開していった。しかし,グループの探究とはいえ,

一人一人の探究も成立していったと思われる。それは,

比較的高い課題設定であり,多様な探究が含まれている 題材であり,一人一人に不可欠な役割が明確にあったか らだと考える。一人一人が役割を担わなければ成立しな 森阪 康昌

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い。しかし,任せっきりではなく,流動的に交代して役 割を理解し合える活動が,絶えず仲間とのかかわりを生 み,高め合うことを可能にする。つまり,協働の必然が ある題材の設定が重要なのである。

自身のドキュメンタリー描く活動履歴

今回,映画制作とも絡めて,「実際に映画は制作しな いけれども,NHKの『プロジェクトX』っぽく,自分 自身の映画制作ドキュメンタリー映画のシナリオをつく るつもりで,日々の記録を取っていってほしい。」と伝 えて毎時間の記録を促した。

記録は,教師の筋でいえば,子どもの活動を見取り,

適切な支援を与えて活動を高めるために,授業中の見取 りもさることながら,日々の一人一人の活動をまとめた ものが重要である。

また,子どもの筋でいえば,協働で創り上げる活動に おいて,個人が課題に対して考えたことや学んだことな どを,記録に残すことで自身の探究の振り返りが可能と なる。完成された作品にも子どもの活動プロセスが込め られており,そこから振り返ることも可能であるが,そ の都度振り返り,次の活動につなげたり,3年間の成長 を実感したりできる言葉の記録も探究の成長には欠かす ことができない。この振り返りの成長が,探究さらには 作品の成長につながっていると考える。

さらに,ものづくりにおいては,時間の見通しを持つ ことも重要である。時間の見通しを持たないまま進めて いくと,どうしても遅れ気味になる。後輩の参考にもな る記録であり,自身が3年間を振り返ることが可能な記 録が必要である。子ども自身が活動を見通していけるよ うなプランニングする力と先に説明した振り返る力が今 後,社会生活を営む上で益々重要になってくる。

! 技術科の探究と今後の課題

技術科の探究のひとつとして映像教育を

映像を取り扱う活動は,教科の学習指導要領の『情報 とコンピュータ』で,選択として取り扱っている。しか し,子どもの関心の高さや取り組みやすさ,今求められ ている教科の探究力やコミュニケーション力を育むため には,最初に取り扱うべき題材であると考える。

メディアが多様化・個別化し,映像がリアル化して現 実との境界が見分けにくくなる現在,情報教育の中に,

映像教育を明確に位置づけて活動を進めていく必要があ

る。メディアリテラシーは,単に映像編集のみに重点が 置かれているのでは育むことはできない。伝えたいテー マを考え,脚本を作成し,撮影,編集を行って他者に伝 え評価してもらう。この一連の制作過程を総合的に経験 して初めて映像の背景がわかり,育むことができるので はないかと考える。

技術科は,社会生活や家庭生活に役立つことと,機能 面や安全面で責任を負うことを意識して,創造的,協働 的にものづくりを行う教科である。そして,そのことを 通して,ものを技術的に捉える目を養い,自分の生活と の関係をつかみ,社会生活の中でものと向き合って生活 を営む子どもを育てることがねらいである。映像も,社 会に対してメッセージを発信する表現手段であり,その 制作過程はものづくりそのものである。

ただ,今回実践に取り組んで問題点も見えてきた。そ れは,先の優子の発言でもあったように時間である。映 画の制作過程をすべて経験させようとすると時間がかか る。そしてさらに,その活動の定着を図ろうと思うと,1 度目の活動を省察し,再度活動を展開できるような2回 以上のサイクルが必要である。しかし,コンピュータ教 育も必要であり,その時間が捻出できない。限られた時 間の中で,どこまでを与えて,どこまでを経験的に学ば せるかは今後さらに精選を図る必要がある。

参考文献

東京大学情報学環メルプロジェクト・日本民間放送連盟,

『メディアリテラシーの道 具 箱』,東 京 大 学 出 版 会,2005

水越敏行・生田孝至,『これからの情報とメディアの教 育』,図書文化,2005

佐伯胖,『マルチメディアと教育』,太郎次郎社,1999 稲垣忠彦・佐藤学,『授業研究入門』,岩波書店,1996 美馬のゆり・山内祐平,『「未来の学び」をデザインする』,

東京大学出版会,2005

福井大学教育地域科学部附属中学校研究会,『中学校を 創る:探究するコミュニティ』,東洋館,2004 福井大学教育地域科学部附属中学校,研究紀要 第35

号,2007

国立教育政策研究所,『教科等の構成と開発に関する調 査研究』,http : //www.nier.go.jp/kiso/kyouka/

A Project with the Student’s Collaboration to Bring up Media Literacy

〜Producitng a Video Work as a Producer〜

Yasumasa MORISAKA

Key words: high imformation communication society,audio−visual media,inquiry,creation,collaboration,media literacy

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参照

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