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「伝えあいひびきあう」関係を育む協同的な学びの 実践 (5歳児「恐竜ランドを作ろう」)

著者 林 幸恵

雑誌名 福井大学教育実践研究

巻 33

ページ 117‑122

発行年 2009‑01‑31

URL http://hdl.handle.net/10098/1951

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1.はじめに

本園では,「思いっきり遊ぶ子」を育てるため,幼児 の自発的な活動を重視して保育を行っている。その際,

「好きな遊び」のなかでの学びと,「みんなの時間」(学 年や学級の活動)での学びを関連づけ,それぞれの学び を共有化していくことで,より豊かな学びが生まれると 考えて保育に取り組んできた。

これまでの研究と新教育要領で重視されている幼児期 における協同的な学びの体験から,本園において育みた い力を「感動や思い,考えを表現し伝えあえる力」とし,

なかまとかかわりながら遊ぶことで,伝えあい,ひびき あう関係を育むことが協同性を育てることにつながって いくと考え,教師の支援の仕方を探っている。

◎伝えあう ひびきあうとは・・・

○心揺り動かされる体験,感動を生む体験を考える 幼児の学びが豊かになるのは,体験が幼児の心にひび く場合である。つまり,幼児が出来事により,楽しい,

嬉しい,面白い,不思議だなどと心を動かされる時であ る。しかし,今日幼児の直接経験の不足が問題視される ように,幼児が心揺り動かされる体験・感動を生む体験 の機会が減少している。

では,幼児が心揺り動かされる体験,感動を生む体験 とはどんなものか。様々な人と出会う体験,命の尊さに 気付く体験,満足がいくまで追求し工夫できる遊びの体 験,体を十分に動かす体験,友達と一緒に何かをやり遂 げる体験などが,考えられる。

これは,たくさんの行事を行い特別な体験をすること でも,数多くの体験を意味するのでもない。日常の幼稚 園生活の中で,諸感覚で感じ取りかかわった体験が,感 動を生み,意味ある体験となるように,一つ一つの体験 を充実させるということである。

幼児が心揺り動かされる体験・感動を生む体験ができ るようにするために,まずは,幼児が教師や友達との信

頼関係を築く土台作りをし,安心して自己を発揮できる 雰囲気を作りたい。そして,教師は幼児のつぶやきや心 の動きをなどを捉えながら発達に応じた環境構成や,興 味や欲求に応じた環境の構成を考えていく必要がある。

○言葉にできない思いを大切にする

(イメージの共有)

幼児期は,コミュニケーションの仕方が,身体表現に よる伝えあいから,言語表現による伝え合いへと大きく 変化していく時期である。幼児は,心揺り動かされる体 験・感動する体験をすると,周りの人にそれを伝えよう とする。伝える方法は,非言語による表現(泣く,怒る,

笑うなどの感情表現,ものに残す,遊びに誘うなど)と,

言語による表現(言葉で教える)がある。

幼児は,伝えることで経験を再構成し,イメージを共 有する。教師は,幼児一人一人の言葉にできない思いを 大切にしながら,幼児がだれに対し,何を,どのように 伝えたいかを見取る必要がある。そして,教師は,誉め る,認める,自信を持たせる,安心感を持たせる,励ま す,受け止めるなどの援助をし,イメージを共有してい きたい。

○言葉で伝えあう力の基礎を作る

幼児が言葉でうまく伝えられない部分を,教師が代わ りに言葉で表現していくことで言葉による伝え方を具体 的に理解していく体験も大切である。教師は,幼児と活 動を共にしながら,その活動の意味や内容,一人一人の 意図や発想を対話という形態をとりながら,言葉で表し て伝えていく。そのことにより,幼児は自分の経験した ことがどのように言葉で表現できるかを理解するだろう。

そのためには,教師自身も「すごかったね」「楽しかっ たね」「よかったね」など感動を言葉で表したり,幼児 の思いに共感しながら,感動する心を育て,幼児から出 る表現を大切にする必要がある。それが,幼児が言葉を 交わす喜びへとつながっていくと思われる。

「伝えあい ひびきあう」関係を育む協同的な学びの実践

(5歳児「恐竜ランドを作ろう」

福井大学教育地域科学部附属幼稚園 林 幸 恵 教育実践報告

幼児は,遊びを通して様々なことを学んでいる。特に5歳児の幼児は,共通の目的に向かって,友達 と協力しながら一つの活動に取り組む中で,協同性が育っていく。

「好きな遊び」と「みんなの時間」(学年や学級で取り組む時間)を関連づけ,学年全体で「恐竜ラ ンドを作ろう」という共通の目的を持って活動し,幼児同士で意見や考えを出し合いながら,協力して 遊びが深まった事例を検討する。

キーワード:協同的な学び,主体性,葛藤場面

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また,幼稚園生活では,「聞く」場面がたくさんある。

遊びのなかで友達の要求や考えを聞いたり,教師の説明 を聞いたり,絵本の読み聞かせを聞いたりする。このよ うな様々な聞く体験を通して,次第に相手の話を理解し て聞くようになる。つまり耳だけで聞くのではなく,関 心を持って相手の話を聞き,理解しようとするようにな るだろう。

相手が何を伝えようとしているのか理解しようとする 体験や,言葉による伝えあう体験をすることで,幼児は,

自分の思いを主張するだけでなく,しっかりと友達の思 いを聞き,理解しようとするようになると考える。友達 や教師に自分の思いを受けとめ,認められることにより,

幼児は自ら考えたことを言葉で積極的に表現することや,

友達とお互いに考え工夫したことを言葉で伝えあうこと ができるようになっていく。これは,人と積極的にかか わり学んでいく力の基礎となるといえるだろう。

このような体験を通して幼児も自分なりに言葉で伝え られるようになることが,幼児同士でも言葉による伝え 合いができることにつながっていく。

○新たな体験を生むために体験の関連性を考える 幼児が心揺り動かされる体験・感動を生む体験をする ことで,活動に支えられた言葉で伝えあう活動につなが り,次の新たな体験へと,相互に結びつきながらつなが っていく。一つ一つの体験を充実させた上で,その体験 と次の体験,更に,その先の体験とのつながりができる ように,教師は,活動がどんな意味を持っているのか,

どのように行われていたのかを,理解し援助していく必 要がある。

2.「恐竜ランドを作ろう」の展開の概要

(1)ラップくんと友達になりたいな

「きょうは,どんな紙芝居かな。」と,せっちゃんお ばちゃんの紙芝居を楽しみにしていた子どもたち。附属 幼稚園では,外部講師による紙芝居を「みんなの時間」

に定期的に行っている。5歳児は,恐竜キングごっこか 盛んに行われていたため,5回にわたって,恐竜に関す る紙芝居を読んで頂いた。中には,福井にまつわるオリ ジナル紙芝居「ラップくん物語」もあり,幼児は恐竜に

大変興味を示しだした。

「ラップくんに会いたいな。」

「ラップくんとお友達になりたいな。」 幼児からこんな声が聞かれるようになった。

そこで,年長児だけで行くわくわく遠足の行き先を

「恐竜博物館」とした。

(2)「ぼくがリーダーする」 わくわく遠足

わくわく遠足に先立ち,「みんなの時間」に,遠足に ついての話し合いをした。グループ編成やリーダー決め,

班活動内容,見てきたい事などを学年で話し合った。

「フクイラプトルを見てきたいね,せっちゃんおばち ゃんの紙芝居に出てきたもん 。」

「恐竜の卵をみたいな。ラップくんの卵だからね。」

「幼稚園で段ボールを使って恐竜作ってみたいな 。」

「恐竜博物館できないかな,恐竜もいるし,卵も置く よ 。」

グループでの話し合いになった。

A男「ぼくがリーダーする!」

B男「ぼくがリーダーになるんだって!」

A男「ぼくだって!」

C子「ジャンケンで決めるといいよ 。」

教師「ジャンケンで決めていいの?」

A男「いいよ。」 B男「・・・・・」

B男は不満そうである。

A男「ジャンケンでいいんだって 。」

B男「・・・」B男は,膝を抱え込んでうつむく。

教 師「ほ ん と に ジ ャ ン ケ ン で い い の か な,B男 く ん?」

C子「ジャンケンにして,お願い 。」

みんなが頼みだす。

D男「負けたら,クイズの紙を書く係になればいいこ とにしたら。」

B男は,少し考えるが,ようやく納得して,ジャンケン 林 幸恵

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をする。ジャンケンで,B男は負けるが,C子にクイズ の紙を渡されて,にこにこ顔のB男だった。教師が,仲 立ちとなり,思いを交互に伝えることで,お互いが納得 していた。

わくわく遠足当日は, 各グループに大学生がつき,

グループ行動を主にして活動した。恐竜博物館の館内で は,

「わあ,恐竜の卵だ,すご〜い。」

「フクイラプトル見つけたよ。」

「ティラノザウルスって大きいね。」

など興奮しながらも,それぞれの幼児が思い思い楽しむ ことができた。また,

「○○ちゃんこっちだよ。」

「みんなで相談してクイズ解けばいいんだ。」 などグループ活動を取り入れたことで,普段あまりかか わりのなかった幼児同士が仲良く遊ぶ姿が見られた。

(3)みんなで恐竜ランドを作ろう

わくわく遠足をきっかけに,好きな遊びの時間に,恐 竜をイメージしながらの遊びが広がっていった。教師が,

遊戯室や保育室に大きな紙や段ボールを用意したところ,

墨や絵の具で恐竜の絵を描いて遊んだり,段ボールを使 って何人かで協力しながら大きな恐竜を製作したりして 遊ぶ幼児が増えていった。

「先生,恐竜ランドできないかな。」

「恐竜を使った遊びをしたいな。」

こんな声が聞かれるようになったため,「みんなの時 間」にどんなことをしたいか,年長児全員で相談するこ とにした。

「恐竜レストランをやりたいな。恐竜博物館みたい に大きなバルーンの中にレストランを開きたい な。」

「恐竜のジェットコースターを間の部屋に作りたい な。」

「恐竜のボウリングとか,恐竜ゴルフをやりたい

な。」

それぞれやってみたいことが決まり,小グループに分か れて話し合ううちに,遊びのイメージがどんどん広がっ ていった。

「恐竜レストラン」「恐竜のゲーム」「恐竜の乗り物」

という意見を基に,年長児全員で恐竜ランドを開いて下 学年の子を招待することにもなった。

この後,好きな遊びでは,それぞれのグループが,遊 びながら,うまくいかないことが出てくると,幼児同士 で相談し,思いを出し合って恐竜ランドを作っていった。

好きな遊びということで,グループ全員が常に遊びに参 加していた訳ではないが,入れ替わり立ち替わりしなが らも,自分たちが,恐竜ランドを作りながら遊びを楽し み,だんだん恐竜ランドができあがっていった。

「恐竜レストラン」では,初めはアイスクリーム屋さ んをやろうとしていたが,売る品物を増やしたいという 声があり,麺類やアクセサリーも作るようになった。つ き組の一角をレストランコーナーにして,常にレストラ ンの品物を作ることができるようにしたため,レストラ ングループ以外の幼児も一緒に品物を作る姿が見られた。

「恐竜の乗り物」は,ジェットコースター作りを試行 錯誤していたが,段ボールではなかなかうまくいかない ことがわかり,トロッコ作りにかわっていった。ほし・

つきの間の部屋は,いつでもトロッコ作りができるよう にしたため,遊びながらトロッコや,周りの洞窟の中の 様子が,どんどん変化していった。

「恐竜ゲーム」は,ゴルフが思うようにできなかった ため,「恐竜の卵転がし」にかわっていった。卵転がし をやる前にショーをするといいなどの意見が出たため,

ミルク缶や箱で太鼓を作り,幼児同士が話し合って踊り も考えていった。

また,遊びが広がっていくと,必ず様々な葛藤場面が 出てくる。

A男は,サッカーや,店屋さんごっこ,ショーごっこ など,いつも中心になって遊びを進めることが多い。そ んなA男は,恐竜ゲームのグループになった。

好きな遊びの時間に,恐竜ゲームのグループは,「恐 竜マッスル」の曲で踊りながらショーをすることになっ た。しかし,いつもはりきって遊び出すA男が,みんな が踊る隅の方で,しゃがみ込んでいた。

教師「どうしたの。」 A男「・・・」

B男「何でA男くんは踊らないの。」

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(5)

A男「・・・・」

教師「A男くんは,踊り大好きだよね。一緒に踊ろう よ。」

A男は,うつむいたままである。

教師「踊りでなくても,太鼓ならすのでもいいよ。」 A男「ぼく,恐竜マッスルの踊り知らないの。」 教師「そうか,A男くんは本当は踊りたいんだよね。」 A男「でも,踊れないもん。」

教師「じゃあ,音楽に合わせて,楽器をならして,踊 り見ながら覚えたら。」

A男は,うなずくと,後ろの方で太鼓を鳴らし出す。

しばらくすると,その場で太鼓をやめて,踊り出した。

その日のみんなの時間に,恐竜ランドの進み具合が話 し合われた。A男の踊りが上手だったとC男が発言した。

満足そうなA男の顔が見られた。

次の日,好きな遊びの時間に最前列で踊りを踊るA男 の姿が見られた。

数日後。

恐竜たまころがしは,好きな遊びの時間に玉を転がす コースができあがる。A男はスタートの所から何度も玉 を転がしてみて,転がり具合を確かめている。そこへB 男がやってきて,コースの途中にペットボトルをたて出 す。A男はそれが不満らしく言い合いとなる。その日の みんなの時間に恐竜ランドの話題が出る。

A男「せっかく作ったのに,じゃまする人がいて困り ました。」

B男「じゃましたんじゃないよ。」

A男「だって,ペットボトルがじゃまするから,途中 で横に落ちちゃうもん。」

教師「みんなどうしたらいいと思う。」

C男「ペットボトルにあたったら10点で,あたらなか ったら100点にしたら。」

教師「じゃあ,みんなでもう一度やってみて直そう よ。」

ゲームグループは,全員で玉転がしをやってみた。初 めは,不満そうだったA男も,ペットボトルが障害にな りゲームが面白くなることがわかり,コースの途中に玉 が落ちる所を作り出す。落ちるところに点数を書く幼児 や,牛乳パックでコースを延ばす幼児も出てきた。

年長児全員の意識が恐竜ランドに向くように,みんな の時間では,遊びの紹介をする時に,恐竜ランドをやっ た幼児に,様子を伝えさせ,参加しなかった幼児にも,

今どんなすすみ具合か,自分も次回参加してみようとい う,意識がもてるようにした。また,各グループ毎に,

相談や製作をしたり,年長児同士で,恐竜ランドをやっ てみて,なおした方がよいところを話し合ったりして,

次の好きな遊びやみんなの時間につなげるようにした。

(4)恐竜ランド開店

恐竜ランド開店当日は,登園してくると,早々に朝の 身支度をすませ,自分たちのコーナーに行って準備をす る幼児がほとんどだった。中には,違う遊びに行こうと する友達を見て

「今日は,恐竜ランドをするんだからね,一緒に用 意するよ。」

と声をかけ,友達をコーナーに連れて行く幼児も見られ た。好きな遊びの時間の開店だったが,ほとんどの幼児 が参加して恐竜ランドを開くことができた。

年中児や年少児を誘って,自分たちのお店につれて行 く年長児の顔は,とても満足そうだった。自分たちで役 割分担したり,下学年に対する優しい言葉がけやしぐさ が見られたりと,それぞれの幼児が,目的に向かって主 体的に活動していた。

ほし組保育室では,「恐竜マッスル」の踊りが始まっ た。前日までは,サッカー広場で踊ろうと話し合ってい たが,やはり保育室の方が落ち着いて踊れるのか,この 日は朝から,保育室でショーの準備が始まった。

B男「A男くん,もう少し前で,踊ってよ。」 A男「うん。」

B男に言われると,素直に前に進んで踊り出すA男。

ショーは,たくさんのお客さんが来て大成功だった。

A男「ね,サッカー広場でもう一度,踊ろうよ。」 D男「えー,ここで,もう一度踊りたいな。」

E男「じゃ,ここでもう一度踊って,サッカー広場で,

また踊れば。」

F男「サッカー広場には,お客さんがたくさんいるみ 林 幸恵

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たいだよ。」

サッカー広場で,恐竜レストランを見てきたF男が言っ た。

A男「じゃ,ここで踊るのやめて,サッカー広場に行 こうよ。」

D男「小さいお客さんがいるのに,どうするの。」 B男「じゃあ,パレードして,サッカー広場に行こう

よ。小さい子も一緒にパレードしたら。」 A男「それがいいや。」

D男「お客さんがいっぱいのところがいいかもね。」 A男「皆さん,ここに並んでください,今から,サッ

カー広場にパレードします。」

D男「サッカー広場まで,トリケラトプスも動きま す。」

D男の大きな声につられて,年少児達は段ボールのトリ ケラトプスの後ろに並びだした。

B男「ゆっくり行かないと,小さい子はこれないよ。」 A男「サッカー広場には,レストランもありますよ。」 年少児に優しく説明するA男だった。

サッカー広場では,恐竜レストランの所に行列ができて いた。

A男達「今からショーが始まります。来てください。」 D男「ねえ,ショーが終わったら,またお客さんをほ

し組に連れて行こうね,今度は玉転がしをやっ てもらうんだ!」

(5)恐竜ランドその後

かなり,長期間にわたって行われた恐竜ランドだった が,自然に消滅していった後,次の活動に遊びが生かさ れていた。レストランやゲームは,その後の幼稚園全体 の活動である店やごっこの中で発展が見られた。また,

ショーごっこは,発表活動で生かされていった。また,

異学年での学び合いへも広がっていった。年少児は,で きあがった段ボールの恐竜で春頃まで遊び,また,年中 児は,4月に年長になると,さっそく恐竜ランドを真似

て自分たちなりの恐竜ランドを作っていた。

3.考察

この時期に協同的な活動として,共通の目的に向かっ て学年全体で活動することを取り入れている理由は,友 達と力を合わせて一つの活動に取り組む中で,幼児一人 一人が自分の持てる力を十分に発揮し,友達と関わって 活動することや,関わりあって学ぶことの喜び実感する ことである。その為に教師は,幼児一人一人の理解を深 め,幼児が持てる力を十分発揮できる場を作っていくこ とが求められる。

紙芝居の読み聞かせや,わくわく遠足をきっかけに,

恐竜ランドをつくろうということになった。恐竜を使っ た遊びをしたいという思いを好きな遊びの時間に,それ ぞれの幼児が,思い思いに表現した。しかし,ここで終 われば作って遊んで楽しかったという経験しか残らない だろう。ここで私達が求めるのは,幼児達の遊びがさら に広がり,役割分担などが入った協同的な遊びに展開し ていくことである。そこで教師は,「みんなの時間」と

「好きな遊びの時間」を交互に組み合わせながら,幼児 達の思いをつなげ広げ,幼児たちが自主的に活動したく なるような援助をしてきた。

好きな遊びでは,それぞれのグループが遊びながら,

うまくいかないことが出てくると,幼児同士で相談し,

思いを出し合って遊びを作っていった。好きな遊びとい うことで,グループ全員が常に遊びに参加していた訳で はないが,入れ替わり立ち替わりしながらも,自分たち が作りながら遊びを楽しみ,また違うグループの遊びを することで,だんだん恐竜ランドができあがっていった。

また,年長児全員の意識が恐竜ランドに向くように,

みんなの時間では,好きな遊びの紹介をする中で,恐竜 ランドをやった幼児に様子を伝えさせ,参加しなかった 幼児にも今どんなすすみ具合か,自分も次回参加してみ ようという意識がもてるように話し合わせた。また,全 員で各グループ毎に相談や製作をしたりする時間を設け た。また,年長児同士で恐竜ランドをやってみて,修正 した方がよいところを全員で話し合い,次の好きな遊び やみんなの時間に直すようにしていった。更に,この楽 しさを年下の幼児や教師にも伝えたいという思いが出て きたため,チケットを作ったり,看板を作ったりして役 割分担が次々に決まっていき,よりよい恐竜ランドにな るように,幼児同士で相談して活動が進んでいった。

また,遊びが広がっていくと必ず様々な葛藤場面が出 てくる。友達との葛藤,自分の中のジレンマなど協同的 な活動であるからこそ出てくる葛藤である。その機会を

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教師は一つ一つ大切に捉えていった。事例では,A男が 思うように踊りができない自分の中のジレンマを教師が 捉え,援助している。そして,みんなの時間にC男をは じめ,友達にうまく踊れるようになったことを認められ ることで,自信が持て,次の日の遊びにつながっていっ た。また,恐竜の玉転がしでは,ペットボトルをたてる かどうかで,友達同士のいざこざが起きるが,みんなの 時間に,全員の問題として捉えて,みんなで試行錯誤し ながらも,よりよい玉転がしにしようと友達と相談しな がら遊びを進めている。協同的な活動を通して育てたい のは,幼児が友達のよさを受け止め友達と関わり合って 学ぶ楽しさを実感することだと思う。

この事例を通して,好きな遊びとみんなの時間のバラ ンスを幼児の主体性を持続させながら関連づけることが 遊びを広げ学びを深めていく上で大切であると感じた。

この時期の幼児は,なかまと何かを作り上げていくこと に充実感を感じている。教師が,遊びの前面に出て引っ 張っていくよりも,幼児を見守り今何をしたいのかを見 取り,援助していくことが大切であると思う。一人一人 の幼児の発想を教師がいかに全体のものにしてつないで いくかを考えることが大切である。

4.おわりに

伝えあい,ひびきあう関係を育む視点

(協同性を育てる視点)

○なかまを意識した援助と環境構成により,よりよいな かま関係を築く。

幼児の興味を引き,多くの幼児が群れることができ,

そこで伝えあうことが必要な場面が生まれてくるよう に環境を構成する。

また,少人数での遊びも大切にしていく。

○学び合いや話し合いを援助し,学級全体での活動へ広 げていく。

「好きな遊び」と「みんなの時間」を関連づけた保育 をすることで,友達と関わり合って学ぶ楽しさや,学 級全体で共通の目的を持って活動する楽しさを実感さ せる。特に年長児では,幼児同士で意見や考えを出し 合いながら,友達の考えに共感したり,友達を思いや ったりする経験を豊かにすることが大切である。

○異年齢との学び合いを大切にする。

上の学年の幼児は,他者とのかかわりの新たな喜びや 自信が持てるように援助していく。

下の学年の幼児には,あこがれや,同年齢での活動に 生かせるような援助をしていく。

異年齢との活動がその後の同年齢の協同的な活動の質 を高める。

引用文献

幼稚園教育要領 文部科学省(平成20年3月)

平成20年度新教育課程説明会資料(幼稚園)文科省 福井大学教育地域科学部附属幼稚園研究紀要第19集

(平成19年11月)

Talk and sounds Practice of cooperative learning to bring up relations.(Let’s make a dinosaur land.)

Yukie HAYASHI

Key words :Cooperative Learning Independence of will A tangle scene 林 幸恵

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参照

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