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雑誌名 福井大学教育実践研究

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Academic year: 2021

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歴史的な科学研究を調査し,実際に授業で再現する 探究活動II : 『プリンキピア2007』づくりにおけ る授業実践

著者 木本 茂

雑誌名 福井大学教育実践研究

巻 32

ページ 97‑103

発行年 2008‑01‑31

URL http://hdl.handle.net/10098/1651

(2)

1.学びの姿

「何も分からない状態から調べていくのは難しかったで す。1つ1つの実験で少しの変化も見落とさないように 実験に取り組みました。たくさんの実験方法がある中,

その1つ1つを選ぶのには,実験の特徴を良く理解して おかないといけないと思いました。」

2年時の探究「化学カイロ制作プロジェクト」では,

カイロの成分を分析して,実際にその成分を使って子ど もたちでカイロをつくった。普段何気なく使ってきたカ イロを自分たちでつくれたことに充実感を得られている 一方で,自分たちで行う探究そのものに対しても,その 進め方を着実に身につけてきている。

この探究活動を行ってきた子どもたちが,3学年では,

ニュートンの刊行本『プリンキピア』を題材に運動の規 則性を実験で示していくプロジェクトを経験した。

(1)科学の発展と生活との関わりを探る(第1章)

「プリンキピア」って何 (Ⅰ−1時)

教師:「台車を斜面で運動させます。」

斜面をつくって力学台車を滑らせた。台車は斜面を下 るにしたがって,加速していくことが分かる。

教師:「もう一度同じことするとどうなるかな?」

弘樹:「それは,同じ結果になるでしょう」

何度同じことをしても,この運動の様子は変わらない。

条件を同じにすれば,そこには規則が存在している。今 回の授業は,いろいろな運動でこの規則を探ることが課 題になることを子どもたちに伝えた。

2学年では生活と科学を結びつける「ものづくり」の 探究を行った。前期のエジソン電球では,電球づくりか ら電気の概念を学び,また,後期では化学カイロづくり から化学変化のしくみを学んできている。エジソン電球

ではエジソンと同じく竹からフィラメントをつくる経験 をし,また,化学カイロでは,科学が広く生活に使われ ていることを知った。

今回は,ニュートンの功績を探り,その著書『プリン キピア』をリニューアルしたい。2007年度附中版のプリ ンキピア(図1)をつくることを子どもたちに伝えた。

弘樹:「プリンキピアって何ですか?」

教師:「ニュートンの著書だよ。ニュートンって知って る?」

育子:「力の単位!」

智宏:「リンゴが落ちる法則???」

公平:「ああ,塔の上から落下させた人?」

教師:「それ,ガリレオじゃない」

「いつ頃の人なの?」

一同:「・・・・」

言葉の意味を探るプリンキピア調査(Ⅰ−2〜4時)

ガリレオ,ニュートンは有名で,子どもたちもその存 在を知っている。ただ曖昧な点があるので,17世紀の科 学史について,さらにプリンキピアとはどういう書物な のかを調べていくことになった。

歴史的な科学研究を調査し,実際に授業で再現する探究活動Ⅱ

『プリンキピア2 7』づくりにおける授業実践

福井大学教育地域科学部附属中学校 木 本 茂 教育実践報告

科学革命が起きた17世紀。ニュートンによって力学の基礎が築かれ,科学史上革命的な著作『プリン キピア』が刊行された。科学技術が発達したわたしたちの豊かな生活の原点に,ニュートンの偉大なる 功績が存在していることは明らかである。このニュートンの功績を調査しさらにこのプリンキピアを 2007年中学生版で作り直す活動を授業で行った。グループ実験で見つかった規則性を写真や記録テープ

を使ってスケッチブックに残し,自分たちの学びの履歴を人に伝える授業を目指した。

キーワード:科学史,プリンキピア,グループ探究,スケッチブック

図1 17世紀の科学者(プリンキピア2007)

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グループ4人,ニュートンの『プリンキピア』を調べ るもの,17世紀の科学者の功績を調べるもの,そして17 世紀という時代についてその社会のようすや生活の様子 を調べるものとに課題を分けた。同じ課題のものはやは り,グループを超えて調査内容を確認したり,意味につ いて語り合う姿が見られた。

公平:「運動方程式ってF=maのこと?」

弘樹:「Fは力で,mは質量,aは加速度だよ」

公平:「加速度って?」

弘樹:「速くなっていくスピード?」

公平:「速くなっていく速さ????なんかよく分から んな・・・でこの式どういう意味?」

弘樹:「加速度と質量をかけると力になるってこと」

公平:「何で力が出てくるんだよ・・意味わからんな。」

調査学習ではどうしても文言を解釈しようとして意味 を捉える。インターネットなどでの調査では,初めて目 にする言葉や数式は理解が難しい。(それで理解できて いれば,授業はいらない。)自分たちの解釈でその意味 をつかもうとするが,経験や知識が少ないと誤った捉え 方も起こる。子どもたちは自分たちで納得できる部分に 対しては,教師に対して質問することはないが,友達と 意見が食い違ったりすると,やはり教師の確認を求めた。

公平:「先生,質量と加速度?なぜかけるんですか。」

教師:「うーん,物体の運動する速さの変化は加わる力 の大きさに関係している・・・。簡単に言葉で説 明できないな。」

この時点で,運動方程式を詳しく教える必要がなかっ たのもあり,また,子どもたちの理解へ混乱を招くこと もあると考え,曖昧に答えた。(運動方程式は高校物理 で履修)

その他,第1,第3法則である慣性の法則,作用反作 用の法則については,公平は自分で理解しその解釈も友 達と一致していたようだ。この2つは,教科書にも文章 で説明されていて,しかも資料集にその事例も掲載され ている。

プリンキピアとは何か調べていた敦子はインターネッ トで検索しながら情報を集めていた。

敦子:プリンキピアって世界を動かした人類共通の宝物 と載っていたけど・・・そんなに凄い本?

智宏:自然哲学の数学的諸原理って書いてあるけど・・

・凄いのかな

柚 :数学で表したということらしいけど,数式ではな く,作図らしいよ。

敦子:作図で?

プリンキピアを調べていた子どもたちは,運動する物 体について,ニュートンがそれまでの方法ではなく,数 学を使って説明している本だと分かった。

さらに,アリストテレスの頃には,物体の落下は重い 物が速く落ちると考えられていたことを,ガリレオによ ってくつがえされ,ニュートンがまとめたということも つかんだ。

科学者の功績と科学の発展について語り合う報告会

(Ⅰ−5時)

個人の調査が終わったところで,グループ内で調べた ことを発表し,情報を共有することになった。(図2)

やはり,グループ内で質問されても,なかなか上手く 答えられいないところもあったが,同じ課題同志で話し 合っているところは,自分の言葉で話せるものもいる。

グループによって話し合いの質に差が見られたので,

クラス全体で発表して,調べたことを確認する方法をと った。

プリンキピアについては,数学(作図)で表した革命 的な書物だと言うことを柚は語ってくれた。また,ニュ ートンの漫画本(偉人書)を持っていた泉美は,ニュー トンは造幣局長で,錬金術に晩年関わっていたことを述 べる。

泉美:「造幣局長で錬金術師。」

教師:「錬金術ってわかる。」

弘樹:「金をつくる。」

教師:「つくれないけどね・・・。」

修平:「この時代,17世紀の危機と呼ばれる混乱があっ て,しかも不況で戦争がヨーロッパでは相次いだ そうです。」

弘樹:「科学の力でお金を生みだそうとしたのかな」

ニュートンの生きた時代を調べることで,貧困な生活 から豊かな生活を手に入れるために科学の発展が望まれ ていたことが分かった。

図2 グループ内報告会Ⅰ 木本 茂

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修平:「17世紀はルネッサンスが起こり,美術の革新が あったんだけど,なぜその後,科学革命も起きた のだろう。」

智宏:「科学が,宗教的な部分からニュートンのように きちんと数学で証明されたことが発展への大きな 道へとなった?」

科学革命と呼ばれる急速な科学の発展は,ニュートン の功績がその基盤となっていることを智宏は掴んでいた。

科学史を調べると,有名な科学者たちがこの時代以降に 登場する。この子どもたちが2学年で学んだ白熱灯のエ ジソンはわずか100年前である。この科学革命の後,産 業革命が起こっていることを伝え,科学の発展が人々の 生活に大きな影響を与えたことを,子どもたちは理解し た。

(2)プリンキピアづくりへの挑戦

実験をして人に伝わるように記録に残す(第2章)

速さをどのように記録しまとめるか(探究前事前学習)

(Ⅱ−1〜3時)

調査学習を経て,ニュートンのようにプリンキピアを つくる活動を子どもたちに経験させたい。

まず,クラスで同じ実験を一斉に行うことにした。実 験は,板で斜面をつくり,台車を滑らせる。1時間目に,

規則性が存在すると話した時の運動である。グループ探 究に入る前に,どのように結果をまとめるのか,そして 結果が意味することは何かを全体でまずおさえることが この活動の意義である。また,速さには2種類あり,平 均の速さと瞬間の速さの違いを学び,さらに今後子ども たちが使うと予想される記録タイマーもその使い方を練 習できると考えた。

記録タイマーの使い方と記録テープの打点の切り方を 教師が説明し,各グループで実験が始まった。同じ実験 をしているものの,実は斜面の角度はグループ様々にな っている。各グループで6打点分の長さが異なる結果に なる。教師の説明不足もあったたためか,同じ実験をし ているので,記録タイマーの使い方やテープの切り方は 友達同士で聞き合っているところもある。台車を滑らせ るだけなので難しいことはないが,結果的にそれぞれの グループの実験で1枚のテープの長さが違うことが,子 どもたちも分かり,原因となることが斜面の角度である ことも理解できた。(図3)

記録テープの結果を紙に貼り付けて,1枚の長さがが一 定の割合で増えていることがわかった。この1枚の長さ が0.1秒間の平均の速さと伝えると,今度はこの結果を グラフ化することにした。

グラフ化すると比例のグラフになる。このグラフは横 軸時間,縦軸速さとなるが,このグラフは瞬間の速さを 表しており,瞬間の速さと平均の速さの違いをここで教

えた。また,なぜ速さが時間と共に一定の割合で増える のかについても,力が斜面方向に働いていることで説明 した。

ガリレオ,ニュートンに挑戦!

実験の構築(Ⅱ−4〜5時)

この経験を生かして,自分たちで実験をしてプリンキ ピア2007としてまとめる活動に入る。子どもたちの思い つく運動を記録に残していくと,規則性が見えにくい複 雑な実験も考えられる。結果をきちんと出して分析する ことが理科として大きな力となるので,曖昧なことにな ることは避けたかった。そこで,どのような結果になる のか,規則性がある程度予測できる課題を用意し,子ど もたちが選択することにした。

グループ課題を見てみると,第1章の科学史の影響も あるのか,ガリレオの落下の実験を選択するグループが 多い。質量が変わっても速さの変化の様子は変わらない ことを証明したいのである。同じ課題でも,実験の方法

(斜面か,落下か)や記録の取り方(記録タイマーか,

デジカメ連続写真か)に違いがあるので,グループ独特 の結果を導ける。また,前時に斜面での運動をしたこと もあり,斜面の角度が大きくなるに従って,テープが長 くなることを証明するグループも多い。

今回の実験では,プリンキピアとして人に伝える資料 集をつくることを,大きな目標としている。そこで,運 動の様子を視覚的に示していくことが,人に伝えるため の有効な手法といえる。子どもたちに,そのことが浸透 していて,視覚的に表せる記録テープやデジカメ連続写 真を用いる実験がほとんどであった。

記録テープや連続写真で結果の分析 (Ⅱ−6〜7時)

育子のグループは台車に乗せるおもりの量を変化させ て斜面を滑らせるときの速さの変化の様子を課題に選ん だ。(図4)

修平:「斜面の傾きは30°

穂花:「速さはどうやって記録する?」

育子:「記録テープで前回上手くできたから,まずは,

図3 斜面の運動の記録テープ

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記録テープでしよう。その後デジカメの写真もや りたいな。」

記録タイマーを使って前回と同様の実験装置をつくり,

修平が早速台車(450g)を滑らせた。穂花は記録テー プを6打点で切り取って台紙に貼り付けた。

育子:「これが基準になるんだね。」

卓也:「前より長さ(テープ)の伸び大きいよ。」

修平:「それは角度が急だったってこと。」

卓也:「おもりを乗せても伸びるような気がするけど・

・・」

次に台車におもり(250g)を乗せて,同じ角度で実 験を再開する。台車が手を離れて,床に着くと

修平:「なんかよく分からんけど,どうなってるんだろ う?」

テープを切り取り,1枚づつ台紙にテープを貼り付け ていく。育子は,2枚目を貼り付けたところで,基準と なる前回の結果と比べた。

育子:「うあ,前とおなじ結果。ほとんどぴったりだ!」

教師:「一目瞭然だね!」

テープを全部貼り付け,結果をまとめていく。

育子:「伸びはほとんど3.1㎝。きれい比例している ね。」

教師:「もっとおもりをのせてみたら!倍の重さにして も変わらんと,真実味がでるね」

一同:「やろう!」

修平たちは,さらに台車におもりを1枚(250g)を 乗せ,2倍の質量で実験を行った。記録テープを切り取 り紙に貼り付けてみると,

修平:「ほら・・・やっぱり同じ長さ。うわ凄いな同じ 長さ!」

育子:「証明ばっちりだね!」

記録テープでの実験は,長さが速さを表し,視覚的に 人に伝えるためにはとても有効であることが,とてもよ く分かる。(図5)速さとして数値で表してきた昨年ま での3年生の活動より,とても分かりやすい。このよう にして,育子たちは,おもりを増やしても,結果が変わ らないことをつかんだ。

育子たちのように結果から学んでいるグループも多い が,自由落下に挑戦していた涼太のグループは実験結果 に惑わされていた。涼太のグループは,最初質量の違う 小さな球体(鉄球,プラスチック球,木球,いずれも直

径1.5㎝ほど)を使って実験していたが,デジカメの写 真では小さすぎてわかりにくいのもあって,大きなコル クのボール(直径7㎝ほど)やレンガなどを使って実験 をした。連続写真も撮れ,結果の考察にはいるが,この グループは,重い物ほど加速していく割合が大きいと捉 えていた。

涼太:「重い物ほど速く落ちるね」

床に落ちるまでの時間が,重い物体が速く落ちていた。

このことからグループ内で写真の分析も重いものが変化 の割合が大きいように捉えた。実際,物体を落下させれ ば,空気抵抗もあり軽い物と重い物では落ちるまでの時 間に差が出る。修平のグループの記録テープのように区 間の速さの変化量を出せば,それほど差がないことが分 かるはずだが,重い物ほど速く落ちるという結果が考察 の障害となった。

図4 育子たちの実験(斜面での運動)

図5 育子のグループの記録テープ (速さの変化の割合が同じ)

木本 茂

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その他,弘樹のグループは斜面の角度を大きくして速 さの変化する割合の増加量を調べていた。斜面の角度を 12°,24°,36°と大きくしていきながら,記録テープの 1枚の長さがどれくらいずつ長くなっていくのかを分析 した。実験は1時間で終わったが,その後の分析で テープをグラフ化,比例式にまで発展し,2時間をかけ た。

結果の吟味!速さの変化の割合が変わらないのはなぜ?

報告会(Ⅱ−8時)

この探究では,実験を人に伝えるという目標もあるが,

実験を通して速さの変化には力が関係していることを説 明できることが理科としての学びである。視覚的伝える

「結果」については各グループでこれまで十分に工夫し てきた。しかし,なぜそうなるのかという考察の部分が 弱かったり,涼太のグループのように間違った考え方を していることもある。そこで,グループを2人ペアにし て,他グループの前で発表することを行った。

ここで,きちんと結果を導き出せた育子のグループと,

涼太のグループは意図的に発表の場を同じにすることに した。文博は涼太のグループである。またこの2つのグ ループの他グループの柚が加わっている。

育子:「うちらは重くても斜面で速さの変化の割合は変 わらなかった。」

文博:「おれらと違うな」

育子:「斜面を滑らせる力は,台車の重さが変わっても 斜面の角度によってその大きさが決まるのかな,

だから,斜面の角度が同じだと,はたらく力も同 じ・・・落下はもろ質量で重力の大きさが違うか ら・・・だから結果が違う。?」

涼太:「いや,変わったらだめなんじゃ?」

文博:「ガリレオ ガリレイ?」

涼太:「重い物の方が加速していくのおかしいよな」

文博:「かわらんやろ」

すると他のグループの柚が自分の実験を説明した。

柚 :「私のグループはペットボトルに記録テープをつ けて落としたけど,変化の割合は変わらなかっ た。」

涼太:「そうかそうすればいい結果が出たのか・・」

変化の割合に目をつけていた柚の結果が,斜面と落下 も変わらないことを証明していた。ただ,涼太たちも,

連続写真をトレーシングペーパーで写し取って,時間ご との移動距離を示せていたので,方法が悪かったわけで はない。思いこみから,実験を正しく見られていないこ とが考察の甘さにつながっていた。

また,育子の考えも,涼太のグループの結果と自分の のグループ結果を踏まえている。落下と斜面の結果が違 うとすれば,斜面を加速させる力は,質量とは別物だと

判断している。しかし,涼太のグループの結果がおかし いので,この考えは自分で違うと気づいた。

育子:「斜面で物体を加速させる力も,質量が違うと,

変わるの?・・じゃあなぜ同じ変化をするの?」

育子の中で,考え方が分からなくなっていた。斜面の 角度を大きくすると速さの変化が大きくなることは,ク ラスで最初に行った実験である。そのとき,斜面の角度 が大きくなると,滑らせる力も大きくなることが分かっ た。だが,質量と力の関係が見出されない。速さの変化 が変わらない以上,台車の質量が変わっても加わる力は 同じでないといけないと疑問に思っていたのである。

力と運動の関係を捉えるクラス考察 (Ⅱ−9時)

この疑問を解決するために,授業でとり上げることに した。斜面においての力の大きさが必要なため,力の合 成・分解をまずおさえた。これは,平行四辺形の法則(四 角形の対角線が合力となる法則)で,作図で説明した。

また,重い物体に加わる力は,落下でも斜面でも大きい ことを理解するため,電車と自転車を走らせるときの力 の大きさを考えてみることにした。

涼太:「それは電車の方が大きい力が必要でしょう。」

教師:「大きい物体を動かすにはやはり大きい力が必要 だね。」

教師:「速さを速くさせる力も大きくないといけないん じゃないかな。」

涼太:「なるほど,重いから大きな力が必要なんだ。も し同じ力なら,重い方は軽い方と同じように加速 できないよ。」

教師:「そうだね軽い物体を動かす力と同じでは速くな っていく力とならないだろうね。」

この説明で育子のグループも納得した表情を見せた。

育子:「ガリレオってすごいなあ」

教師:「ニュートンは数学でそれを証明させた。」

柚 :「平行四辺形の法則ってニュートンだよね。」

この後,ニュートンの3法則についても子どもたちに 話した。

教師:「F=ma,だけど弘樹君,これ君たちがやって いた実験で説明できるんだけど・・・」

弘樹:「力は質量かける加速度ですか?」

教師:「加速度って難しいから,みんなが使ってきた速 さの変化の割合ってことで考えようか。力が大き くなると,どうなる?」

弘樹:「ああそうか,力に比例して大きくなるって意味

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か・・・」

教師:「質量が変わらないなら,力が大きくなれば,こ の式から,速さの変化の割合も大きくなるね。し かもそれらは比例しているという意味だね。」

一同:「ニュートン凄すぎ!」

グループ探究の捉え直しと整理 (Ⅱ−10〜12時)

こうして,授業で力と運動の考察を行った。この後,

子どもたちは,自分たちの実験の考察を深めた。育子の グループは,力との関係を明確に示し,文博のグループ は,質量と速さの変化の割合に変化ないことを前提に分 析を見直した。また,角度と速さの変化について2時間 の考察を行っていった弘樹のグループは,斜面での台車 の運動方向の力を実際に測定し,力の大きさと変化の割 合(紙テープの長くなっていく長さ)が比例するのか,

(F=maは成立するのかということ)電卓をはじいた。

弘樹:「うーんきれいに値は出ないな」

瑞穂:「もう一度実験してみようか・・?」

弘樹:「・・・・え?最初から・・・?」

実験から考察が始まり,さらに実験に戻って分析する。

科学者のような経験を,この探究で子どもたちはしてい る。この後,実験をスケッチブックにまとめ,いよいよ プリンキピア2007が完成する。

省察

(1)17世紀の挑戦を再現することで,科学者の功績 を理解する。

授業では,ニュートンの生きた時代である17世紀を中 心に,科学の発展を捉えてきた。17世紀をとりあげるの は,科学革命がその発展の始まりと考えられるからであ る。この時代から多くの科学者が発展に貢献し,現代に その功績が受け継がれている。この事実に目を向け科学 の果たす役割を学んでいくことが,理科を学ぶ意義につ ながり,子どもたち自身がそれを感じとることができる のではないだろうか。

今回の授業では,特にガリレオやニュートンの功績が 子どもたちの行いたい活動と一致し,彼らについて実験 の前に調べていたことを,検証する形となったグループ が多かった。試行錯誤しながら実験結果を見出し,さら にその意味が理解できたとき,17世紀のニュートンやガ リレオの努力が実感として子どもたちに伝わっていた。

ガリレオやニュートンが凄い!という発言ができるのも,

自分がそのこと理解できたからこそ,当時の科学者の功 績が偉大に感じられたのだと思う。単なる歴史調査だけ でなく,子どもたちは実際に彼らの功績を再現したこと で,その法則や内容の意味を自分のものにできた。

涼太のガリレオの実験では,ガリレオの行ったピザの

斜塔での実験は知っていたが,自分たちの実験ではその 結果が曖昧になった。しかし,この曖昧なことが育子ら のグループとの話し合いや,その後の考察で確かになっ ていくことで,改めてガリレオの功績が自分たちの中に 理解された。

また,弘樹のF=maの式の意味についても,調査当 初はその意味を理解できなかったが,実際に実験をして みて結果を出したことで,力と加速度の比例の意味を知 ることができた。

(2)プリンキピアという人に伝える資料集づくりが,

自分たちの実験を捉えやすくする。

これまでの3年生でも同じように実験を構築し,結果 を考察してきた。しかし,数値ばかりにこだわりすぎて,

実験全体の把握やその結果を上手く処理できない場面が 数多く見られた。

今回は人に伝えるために,視覚的に運動を捉えていか なければならない。そのため,速度測定器といった,単 なる数値が出る結果となる器具は子どもたちも選ばなか った。そのため,記録テープ,連続記録写真がほとんど であったが,この視覚的に表すことによって,話し合い にも記載内容を見せ合う場面が見られた。育子が見せた 貼り付けたテープは,疑う余地を与えず,涼太をはじめ まわりのみんなが納得するものだった。また,話しなが ら順を追って自分たちの実験がどういうものだったのか,

そのストーリーを紙面上で確認していくことで,実験者 自身が理解していく上でもとても活用されていた。人に 伝えるということが実際には,自分に伝えるというもの になっていて,それがグループ考察を助けていた。

(3)記録用と保存用に分けたスケッチブック

これまで,実験の記録にはスケッチブックを使い,グ ループの実験がどのように展開したのかを書いてきた。

この単元では,スケッチブックを2冊にし,1冊はプリン キピア2007として最終的な捉え直しをした後の保存用ス ケッチブックである。レポートを最終課題として個人が 書いてきたが,今回は,その前にグループの最終課題と してこのスケッチブックにまとめる。このまとめる段階 で,話し合いが持たれ,実験の意味や結果をグループ全 員で共通理解できると考えた。

単元最初のニュートンや17世紀の調査は各自このスケ ッチブックにまとめ直して載せてある。これを使って子 どもたちはグループ内の報告会を行い,自分の調査を述 べた。人に伝える資料集という意識があり,まとめ方も 丁寧に仕上げている。グループ10班分に目を通すことで,

ニュートンや17世紀のようすが細かく分かるようになっ た。

また,もう1冊の記録用のスケッチブックだが,記録 テープや連続写真なども保管できるように,クリアファ イルにした。綴じてある紙に書くのではなく,紙を綴じ 木本 茂

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る発想で,これまで,一人しか書けなかったものが,グ ループで分担し,それぞれがまとめたものを綴じれると メリットがあった。

今後このスケッチブックを元に個人が個人の実践を振 り返るレポートづくりを行う。

参考文献

橋本 浩 (2004) 早わかり科学史 日本実業出版社 福井大学教育地域科学部附属中学校研究会(2004)

中学校を創る 探究するコミュニティへ 東洋館出版社

Search activityⅡ, where the historical scientific inquiry is investigated, and reproduced by actual class

Shigeru KIMOTO

Key words: History of science, PRINCIPIA, Group search, Record with Sketchbooks

― 103 ―

参照

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