コミュニケーションによって「伝わる文章」を探る 授業の実践 (中学校国語科第1学年「調べたことを 正確に伝えよう」) 新聞作成の過程を通して,文章 表現を磨き合う
著者 高橋 和代
雑誌名 福井大学教育実践研究
巻 32
ページ 105‑112
発行年 2008‑01‑31
URL http://hdl.handle.net/10098/1652
1 学びの姿
!小学6年生に,附属中学校を紹介する新聞を作ろう。
①附属中ってどんなところだろう。
附属中について知らせたいことは……(第1時)
附属中学校に入学して約2ヶ月。子どもたちは少しず つ学校のことがわかりかけてきた。だが,日々学校では,
いろいろなことが行われ,自分たちが主体的に動かなけ ればならない。ものごとを行おうとすると,疑問が湧き 出てくる。毎日が新しい発見でいっぱいである。入試に 合格した喜びも加わって,附属中に対する誇らしい思い と,もっと学校について知りたいという欲求が強いこの 時期,附属中を紹介する新聞の発行を子どもたちに提案 した。
教師:附属中を紹介する新聞を作らない?
附属小の子や,あなたたちの後輩の6年生に知 って欲しいことを記事にするの。
文化祭の学校公開の時に掲示してみんなに読ん でもらうというのはどうかしら?
生徒:やりたい。やりたい。一人で1つですか?
国語の時間の提案にもかかわらず,「やりたい」と叫 ぶ子どもの言葉からは,「書く」ということよりも「調 査する」ということに力点が置かれていることがわかる。
小グループで4切り大のケント紙片面の新聞を作ること を告げた。
まず,「附属中について知らせたいこと」「附属中につ いて自分が知りたいこと」を表出させることから始めた。
付箋紙を一人100枚渡し,単語でも文でもいいので思い ついたことを書き込んでみようと言った。それを,子ど もたちは,B4サイズのわら半紙に貼っていく。わら半
紙の真ん中には「附中」と書かれている。付箋を貼るう ちにアイディアがつながって浮かび,みるみるうちに紙 が埋まっていく子,5枚ほど書いて手が止まっている子,
様子は様々である。たくさん書けた子は誇らしいようで,
書けたことを周囲にアピールしている。席が近くの子と 見せ合いながら,アイディアを交流している。
教師:共通することはないか考えて付箋紙をグループ にまとめてみよう。(図1)
生徒:わー,僕,部活のことばっかだ。
生徒:今からでも,付箋に思いついたこと書いてもい いですか。
自分が興味を持っていることがなんなのか,グループ化 することを通して子どもたちは認識でき,あまり書けな かった子は,気づきを見つけることができたようだった。
そして,調べたいことを1つから2つ選ぶよう告げた。
教師:調べたいことが同じ子で,グループを作ります。
コミュニケーションによって「伝わる文章」を探る授業の実践
(中学校 国語科 第1学年 「調べたことを正確に伝えよう」 ) 新聞作成の過程を通して,文章表現を磨き合う
福井大学教育地域科学部附属中学校
!
橋 和 代 教育実践報告1−B編集局,新聞発行なるか?!
新聞という伝達手段を使い,小学生に,今過ごしている附属中学校を紹 介したい。既存の新聞を分析し,どんな記事が必要か,どんな書き方が有 効なのか,正確な記事を書くためにはどんな調査が必要なのか,編集会議 を開く。思いと事実が伝わる新聞発行をめざして,子どもたちは表現を探 る。
キーワード:自分の思い,伝わる表現,発想,コミュニケーション
図1.「附中」についてのウエビングマップ例
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!編集局,新聞発行に向け,活動中。
①編集局を立ち上げる。(第2時)
子どもたちは,編集長を決め,新聞を発行するにあた っての「思いや主張」をメンバー内で確認する。「知ら せたいこと,知りたいこと」が同じなので,新聞発行に 大切なこの部分の共通理解があっさりと終わってしまう。
「思いや主張」を意識した新聞社名もあれば,メンバー の個性からくるものもあり,聞いていてこちらが楽しく なってくる。勝手にイメージキャラクターを考えている グループもある。
校訓「自主・協同」や,学校文化として附属中に根付 いている「音楽」について発信したいという思いを持っ た子どもたちが多いため,グルーピングが難航した。こ こからは,多くの子どもたちが調査したかった「音楽」
に一番関わる「歌」に焦点を当てた,『ブラボー新聞社』
の学びの姿を中心に記録していく。
②編集会議,どんなことを調査する?(第3時)
『ブラボー新聞社』の子どもたちは,自分たちのウエ ビングマップを見せ合い,調べたい内容やどういう方法 で調べるかを,話し合った。
朱美:先輩にインタビューしたい。
光 :どんなこと聞くの?
知宏:後で考えよう。
博 :わからないこと出てきたら先生に聞けばいいさ。
朱美:NHKコンクールのこと聞きたい。
夏子:合唱部の先輩に,指揮者,伴奏者,歌う人のこ 興味が同じだと新聞づくりが進むと思うので。
子どもたちのウエビングマップを回収し,グループ分 けをすると,私の予想と大きく違った事実があった。そ れは,5月に行われた宿泊学習についての付箋紙がほと んどないということだ。入学してきてすぐに実行委員会 を立ち上げ,今やりとげたばかりの思い出深いこの行事
について,記事にしようという子がいないのである。私 は6年生には,是非紹介したかったし,体験を伴った具 体的な記事が書けると思ったのだが,子どもたちの興味 は,やはり新たに調べることに向いているようだった。
宿泊学習を新聞という形でまとめ終えていることも影響 しているかも知れないが,未知のものへの子どもたちの 探求心の一片を見たようだった。(表1 参照)
表1.「附属中について知らせたいこと」,「附属中について自分が知りたいこと」と,グループ分け
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と聞けばいい。
( 注 1 )
光 :修学旅行でする音ドラに関すること,調べよう。
朱美:感想とか。
光 :合唱祭の練習は?
知宏:合唱部についても調べたい
(注1,生徒が創る音楽を中心に据えた創作ドラマ)
この後,調査内容についての話し合いの途中の状況 を,9つのグループが全体で報告し合った。朱美の班は,
『河童新聞社』が部活の部長にアンケートをとる予定だ ということを知り,自分たちもインタービューだけでな くアンケートも作ってみようと調査方法を修正した。ま た,この報告会での具体的な報告内容は,音楽ドラマに 興味のある光のインタビュー内容にも影響を与えた。新 聞記事に必要な5W1Hについて聞く,音楽ドラマを披 露する前と披露した後の気持ちを分けて聞く等,読み手 の興味を意識したインタビュー内容に修正していた。
探究学習を進めていく上で,この途中での報告会の重 要性をいつも感じる。まず,自分たちの考えを整理する ことができる。また,各々違う視点で新聞を書くのだが,
新たな気づきをもたらし,参考になることが多い。それ ゆえ,報告会の後の編集会議は具体的内容が話されるこ ととなる。学びの質の高まりのためには欠かせないもの なのだ。
NHKコンクールに興味を持っていた朱美が「NHK コンクール〜昨年の振り返りと今年の目標〜」の担当に なり,インタビュー項目を考えた光は夏子と共に「音楽 ドラマ〜昨年の音楽ドラマの内容と感想〜」の記事を担 当することとなった。知宏と博は「合唱部〜活動内容と その理由〜」の担当と決まった。
③編集会議,どんなことを記事にする?
(第4時〜第5時)
各自が,休み時間,放課後,休日を利用して,聞きた い相手にアポイントメントをとり,調査活動を行った。
朱美は,早速,合唱部部長にインタビューを行い,ノー ト1ページのメモを取り,満足して班員に報告した。合 唱部部長にインタビューしたかった知宏と博は,何度も 部長に聞くのは悪いと考え,知宏はアンケート形式の質 問状を作成し,博は,合唱部の活動場所に行き,自分の 目で見てリポートするという形を取った。子どもたちの 工夫が,記 事内容に幅 を持たせる 結果を生み 出した。
各自,調 査してきた 情報を,少 し大きめの
付箋に細かく分けて書き込んでいった。1カードに1情 報書くと,情報を整理することになり,書き込みながら,
情報を取捨選択することにもなる。また,並び替えも簡 単にできる利点もある。調べてきた情報カードを,班内 で報告し合い,共通項をグルーピングした。自分の担当 記事に役立つ情報を班員からもらい喜んだり,誇らしそ うな様子がうかがえた。もっと調査するといい内容がな いか意見を出し合ったり,情報が少ない項目はないか班 内でチェックし合った。不足した情報はどうやって調査 しようか話し合っていた。しかし,この時,夏子は調査 活動をまだ行っておらず,肩身の狭い思いをしていた。
④編集会議,トップ記事どうする?
(第6時〜第8時)
グルーピングした情報カードのまとまりに小見出しを 付け,トップ記事の構成に編集会議は進んでいく。すべ ての記事を念入りに練ることは難しいので,トップ記事 を吟味する過程から記事を書くことを学んで欲しいと考 えた。発行されている本物の新聞を参考にしたり,附属 中の先輩の作った新聞を参考にしたり,記事作成資料と して借りてきた『附属中学校創立50周年記念誌』の見出 しまでもが,子どもたちの参考資料となっていた。
こうして,新聞のメインであるトップ記事を,班員み んなで考えていった。
まず,小見出しを付けた情報カードを,どんな風に並 べると,思いが読者に伝わるか考えた。『ブラボー新聞 社』のトップ記事は,編集長朱美が書く「NHKコンクー ル〜昨年の振り返りと今年の目標〜」の記事だ。小見出 しは,「練習のこと」「コンクールの時のこと」「今年の 目標」の3つだ。
光 :NHKコンクールについて知らない子,いるか も知れないよ。
朱美:去年,文化祭の学校公開の時,合唱部,歌った じゃない!
知宏:僕,学校来てない。
博 :歌は聞いても,どんなすごいコンクールか,知
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らない人だっているよ。
夏子:小学6年生だし……。
でも,福井のどっかの小学校もでたって言って た。森山直太朗もいたって聞いた。司会が,モ ー娘だった子じゃなかったっけ?
博 :まあ,新聞なんだから,みんながわかるように 記事を作ろう。
こうやって,小見出しに「NHK全国学校音楽コンクー ルについて」が加わった。そして,わかりやすくするた めに,時間の経過に従い,読み手が興味をもてるように,
疑問系の小見出しを付け,トップ記事を作ることになっ た。この日,朱美は1400字ほどで,家で記事の下書きを 書いてくることとなった。
次の日,朱美の書いてきた記事は,「附中音楽!全国 へ」という大見出しが付けられ,5つの小見出しで構成さ れていた。
「NHK全国学校音楽コンクールとは?」
「全国コンクールには,どうすれば出場できるのか」
「練習は……!?」
「コンクールで学んだことは?」
「今後の目標!!」
である。調査したことや情報カードの内容が,文によっ て実に見事に繋がり綴られ,記事となっていた。
この『ブラボー新聞社』のトップ記事を推敲する編集 会議を,他の班のみんなはモニタリングし,そこでの気 づきを自分たちの編集会議に活かしていった。
私は,推敲の観点として,次の5つを提示した。
モニタリング中の『ブラボー新聞社』の記事推敲では,
次のような意見が出ていた。
「写真とか絵とかがないね。」
「調査方法も書いてあるし,どうすれば全国コンクー ルに出場できるかも付け加えて書いてあるね。」
「自分の感想を入れるといい。」
「一緒な内容のところがある。」
「サブ記事を少なくして,トップ記事を大きくしよ う。」
「始めにNHKコンクールのことが書いてある。知ら ない人がいるからとてもいい。」
「文末の統一をしたらいい。『です』か『である』か。」
「練習から学んだことが順番に書いてあってわかりや すい。」
「うん!『練習』→『本番』→『学んだこと』」
「書く順を考えるって大切だ。」
そして,この推敲の編集会議を見ていた子どもたちは,
次のような気づきを話した。
「班員の人の考えをよく聞いていた。」
「理由を具体的に話していた。」
「よい点,悪い点両方言っているからいい。」
「みんなが話し合いに,参加しているからいい。」
「文の繋がりが考えられてある。」
「いらないところは合わせるか消すかするといい。」
「読む人のことを考えて書いているからいい。」
「記事にストーリーがある。」
これらの気づきから,子どもたちは,コミュニティづく りの視点と,文章推敲の視点の2方向からこの編集会議 を見ていたことがわかる。この後,各班のトップ記事推 敲を各々の班で行った。おもしろいことに,推敲の途中 で,朱美の記事を別の班がみんなでもう一度読みあい,
自分たちの疑問を解決していた。(図2)
私は,朱美の記事について,ストーリーがある,見出 しが効果的,記事の調査相手が明確,相手意識が伝わる 点がよいと思った。そして,5W1Hの「いつ」「どこに
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ある」が書かれていないことと,ぱっと小学6年生の目 を引くようなエピソードが書いてあるとよいと思った。
遠慮しながらも,夏子が昨日話していた,芸能人に関す る子どもらしい感想を,上手く記事にいれるとよいと思 ったのだ。また,苦労話や取材したエピソードを入れた り,リード文を付け加えることにより記事量を増やすと よいと思っていた。「いつ」「どこにある」を書くこと については,この後の机間支援のときアドバイスし,子 どもたちは「あー,入れなきゃ」といっていたが,出来 上がってきた新聞を見ると,清書の時にまた書くのを忘 れてしまったようだ。芸能人のことをいれたらどうだろ うということもアドバイスしたが,合唱部部長さんの話 の雰囲気に合わないということで,子どもたちに却下さ
れてしまった。
推敲された朱美の記事は,「困難を乗り越え勝ち抜い た」という気持ちと「すごい」という気持ちを表すため に,リード文が新たに加わった。
平成18年度,附中合唱部。この附中合唱部は,福 井県大会,東海北陸ブロック大会で金賞を受賞し,
あのNHKホールで全国コンクールに出場すること ができたのである。
そして,このリード文とよく似たことが記載されていた
「全国コンクールには,どうすれば出場できるのか」の 小見出し内の記事は,重複内容が削除され,「夢が叶っ
図2.朱美の書いた推敲前の記事
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図3.ブラボー新聞社発行の新聞
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た」とみんなの思いを記載する表現に書き換えられてい た。また,助詞の活用効果もみられた。これらのことか ら,推敲の編集会議を行うことにより記事に「思い」を 伝える表現が加わり,文章表現が磨かれているのを感じ た。
⑤編集会議,
見出しどうする?サブ記事の相談にものってよ。
いよいよ新聞完成! (第9時〜第10時)
なかなか調査活動のできない夏子は,他の4人が調査 してきたことを読み,NHKコンクールに向けてがんば って練習している合唱部の姿を,書き手の視点を変えて 記事に仕上げた。朱美が,合唱部の,あるいは部長の立 場から記事を書き上げたのに対して,夏子は,生徒の立 場から,合唱部へエールを送るという視点で記事を書い た。夏子の記事が書き込まれ,無事『ブラボー新聞社』
発行の「音楽・歌」に関する附中紹介新聞が無事完成し たのである。(図3)
(3)僕らの新聞への読者の反応を,今後にいかす。
①他社の新聞を読んで,振りかえる。 (第11時)
1年生,各新聞社発行の新聞が出そろう9月上旬,新 聞を読みあう会を行った。先に述べた推敲の観点も意識 しながら読むことは,他社の新聞を読みながら,自分の 新聞の評価をしていることにもなる。
他の班の新聞に,2色の付箋を貼っていく。一つは感心 した点やいいと思ったところが記入されているもの,も う一つは改善するといいと思うところが記入されている ものだ。各新聞社内で自然に意見交流が行われ,他の班 が書き込んだ付箋についての意見交流も行われていた。
しかし,あまりにたくさんの付箋が貼られたため,後に 読む班は付箋をいったん取らなければ記事を読むことが できなくなってしまった。すると,小見出しやレイアウ トなどに対する意見が多くなってしまい,記事内容に対 するコメントが減ってしまった。記事につながりを持た せたり,様々な工夫がなされていたのに気づけなかった ことは残念だった。
その後,付箋が貼られてもどってきた自分たちの新聞 を読み合った。良いところや改善点の書かれた付箋を興 味深く,うれしそうに読んでいた。「各自記事を工夫す ればいいと思っていたが,いろいろなメモを見て,全体 や他の記事とのバランスを考えることも大切だとわかっ た」と振り返りに書いている生徒もいて,班で発行して いる1作品としての新聞という意識の向上を感じた。
付箋のアドバイスから,簡単な手直しはその後できた が,墨入れをすませているため,文章そのものを書き直 すことはできず,振り返りの紙に思いを記入するにとど まった。
②読者の反応から学ぶ。 (第12時)
予定していた文化祭に新聞を展示し,来場者に読んで もらう。感想を自由に書き込める用紙を用意し,新聞の 下に感想を貼ってもらう。それを文化祭終了後,皆で読 み,来場者に伝えることができたことはどんなことか,
不足していたことはどんなことか,読み手を意識した振 り返りをさせたい。ここでの学びは,自己満足にとどま らない,発信するという役目を伴った新聞作成にきっと 役立つことと思う。
2 省察
「書く」活動を通して表現を探究する
調べたり体験したりしたことを,人に報告する機会は 多い。それらを正確にわかりやすく伝えるためにはどう すればいいのだろう。
私たちは,多くの場面で「書く」という活動を行って いる。それは,考えをまとめるためのものであり,思い を伝えるためのものであり,学んだことを残し広めるた めのものであり,自分の学びを振り返るためのものであ る。ただ単に「書く」だけでもそこには学びがあるのだ が,書く目的を明確にし,何をどのように書くかを考え,
工夫すると「書く」ことによる学びの質が高まり,思考 の深まりをももたらすと思う。
昨年の1年生の子どもたちは,空の写真を媒体に,「私 の大切にしたいもの」が伝わる文章を書く学習を行った。
マッピングという手法を用い,じっくり対象を見ること から生じる独創的で多面的な発想を活かし,その中から 自分の思いを探り,「どう表現すると,他の人に『思い』
を伝えることができるのだろう」という学習を行ったの である。しかし,表現するものが「思い」であるが故に,
コミュニティで推敲することが難しかった。それは,入 学して2ヶ月足らずのこの時期に,自分の思いを他の人 に開示したり,書き手の思いに寄り添ったりすることが 難しかったからだ。そこで,今回は,「小学6年生に附 属中学校を紹介する新聞を作ろう」という伝える実態が 明確で,思いも込めることができる主題を設定した。新 聞を作成する過程での子どもたちの学びを丁寧に残し,
文章が作られていく精密さにも着眼させたいと考え実践 した。どんな記事が必要か,どんな書き方が有効なのか,
正確な記事を書くためにはどんな調査が必要なのか,編 集会議で意見交流をする中で,思いと事実が伝わる新聞 発行を目指して,表現を練り合えたと思う。
今回問題だったのは,推敲の編集会議の時,子どもた ちは熱中して話すのだが,話題がたくさん出て,それを 覚えておくことができない。話題が出た部分の文章を読 み直す速さに,個人差があるということだ。メモを取る ようにいうと,話し合いが停滞する。停滞しない程度の 簡単なメモだと,ぐちゃぐちゃに書かれていて何が書い てあるか解読するのは大変そうであった。その時間内の 話し合いをまとめる,小さな振り返りのような時間が持
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てるといいのだろうが,益々時間が必要になってくる。
3年間のカリキュラムの中での単元を考える
本校では,各自のテーマに基づいて研究したことを,
国語研究録にまとめる学習を,国語科のカリキュラムの 中心に置いている。テーマに基づいて研究していく中で,
アンケートを採り,インタビューを行い,参考資料から の読み取りをまとめ,分析を行い,考察としてまとめる。
これらの継続した学びは,学年ごとの3回のサイクルを 通して,徐々に深まっていくことを目指すものだ。
その国語研究録作成の中で,私は,主に4つの学びを 目指している。それは「追究するテーマそのものについ ての学び」「追究した成果を論理的に書くという学び」
「探究方法や探究する力についての学び」「学び合いに よって自らの学びを高めていくという学習方法について の学び」である。
本単元は,このロングスパンの学びの出発点に位置す るものである。調査内容を選択し,調査方法を考え,調 べたことを正確にわかりやすく伝えるために,編集局の 仲間や学級のみんなで意見を交流し,文章を磨き合う。
子どもたちは,これらの学習から,これからの学びのス タイルを知り,そして,学びの方法を,気づきの視点を,
習得し始めたのである。
習得を巻き込んだ探究学習とは,このような学びの繰 り返しを,カリキュラムとしてデザインしていくことに より,子どもたちが体得していく学習なのではないだろ うか。今回の単元の中に組み込まれた手法の習得は,実 に様々である。マッピング,モニタリング,インタビュー,
アンケート,グループ化,情報の細分化,1カード1情 報,班での話し合い,見出しの列挙,振り返り等である。
子どもたちがこれから主体的に学んでいくときに,「今 の学びに役立つ効果的な方法を自分で選べること」は,
大切な習得すべき内容のひとつであると思う。ただし,
私が最も大切な習得すべき内容だと思うのは「気づきの 視点」だ。ひとつのものを見たとき,どれだけのことを そこから気付けるか,国語科においては,この「気づき」
こそが,学びを広げ深めるための核であると思う。この 気づきを習得するために,コミュニケーションを行い,
じっくり考え,自分自身を振り返りることが必要なのだ と思う。国語科の習得は,漢字を覚えたり,表現技法を 理解したりすることのみを指すのではない。
「コミュニティは,コミュニケーション活動を通して はじめて形成されていく。しかし,コミュニケーション 活動は,コミュニティなしには成立し得ない。」入学間 もないこの時期,コミュニティはまだ出来ておらず,コ
ミュニケーション活動を通して学ぶことは困難を伴うも のである。でも,気づきの視点はコミュニケーション活 動を通して磨かれていく。だからこそ,このサイクルの 形を繰り返し学んでいくことが大切なのだ。協働探究で 体得したこと,気づきを,個人探究の中で生かしたり,
個人探究の中での疑問を,協働探究の中で解決したりす ると思う。それゆえ,協働探究と個人探究の二つの学び がカリキュラムの中に並行して描かれ,影響し合いなが ら子どもの学びを深く確実なものにしていけるようにし たい。
また,今回の1年生での『附中紹介新聞』作成の時,3 年生が書いた『握手』(井上ひさし著)を使った『ルロ イさん追悼新聞』の見出しが大変役に立った。少数では あるが1年生の興味を持った子は,じっくり見て考えて いた。この二つの新聞の見出しを比べるだけでも学びを 認識できるのではないかと思う。子どもたちの学習物,
学んだ事柄を教材として使うことも考えていきたい。
モニタリングによって推敲する
子どもたちが,昨年,空の写真を媒体に「私の大切に したいもの」が伝わる文章を書く学習を行ったとき,文 章推敲の場面で,ひとつの班の推敲のための意見交流会 をモニタリングするということを行った。それは,班内 の文章推敲のための意見交流を活発にするためであり,
省察するためであった。その結果,文章表現にこだわる 大切さや,何を追加し何を削除するといいかを考える必 要性に気づくことができた。ぴったりくる適した言葉を 探す姿も見られるようになった。しかし,意見交流が活 発になされるほど,多くの考えが表出し,どのように直 していいのか分からなくなってしまった子もいた。また,
自分の考えとは違う方向に話が進みとまどっていた子も いた。
これらの反省を活かし,今回の新聞作成の実践におい ても,トップ記事を推敲する場面での,モニタリングを 行ってみようと思った。モニタリングされる班がなるべ く平常心で意見交流できるようにと思ったが,やはり場 の設定は難題である。学びの質を高めるための工夫を,
考え続けたい。
参考文献
秋田喜代美 『読む心・書く心』北大路書房,2002
『福井大学教育地域科学部附属中学校 研究紀要 第35 号別冊』,2007
Leading Classroom Dialogue About Creating Clear Japanese Writing
Improving Students Abilities of Essay Expression Through Producing Newspaper Kazuyo TAKAHASHI
Key words: emotion , clear phrases and sentences , communication of ideas and opinions
!橋 和代
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