博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 陳 栄 輝
学位論文題名
IVIanupulation and Application of ChainFlexibilityofChitOSan
(キトサン分子鎖の柔軟性制御とその応用に関する研究)
学位論文内容の要旨
本 論 文 は 、 近 年 東 南 ア ジ ア 地 域 で 増 え つ っ あ る 食 品 廃 棄 物 の 中 で も 特 に 多 い 甲 殻 類 の 殻 を 資 源 と し て 再 利 用 す る 際 に 必 要 な 基 礎 情 報 を 克 明 に 調 べ た も の で あ る 。 食 品 廃 棄 物 中 の 甲 殻 類 の 殻 に 含 ま れ る 天 然 ム コ 多 糖 類 の キ チ ン と そ の 脱 ア セ チ ル 化 誘 導 体 の キ ト サ ン は 動 物 へ の 生 体 親 和 性 が 高 い 有 機 化 合 物 と 言 わ れ て い る 。 し か し , こ れ ら の 有 機 化 合 物 を 資 源 と し て 再 利 用 す る た め に は 、 結 晶 構 造 、 溶 解 性 、 融 点 や 軟 化 点 等 の 熱 特 性 更 に は 化 学 反 応 特 性 等 に つ い ての 基 礎 研 究 が 必 要 不 可 欠 であ る 。
本 論 文 はintroductionを 含 む 六 章 か ら 成 り 、先 ず 第 一 章 で は 有 機 酸と 塩を 形 成 し て 水 溶 性 に な る 直 鎖 状 多 糖 キ ト サ ン の 溶 液 物 性 を 知 る た め の 基 礎 的 数 式 の 誘 導 根 拠 に つ い て 詳 し く 述 べ て い る 。 中 で も 、 キ ト サ ン 分 子 の 回 転 半 径 や 拡 が り を 知 る 上 で 最 も 重 要 な キ ト サ ン 塩 水 溶 液 の 粘 度 挙 動 に つ い て の 予 備 考 察 を 詳 し く行 っ て い る 。
第 二 章 で は 、 鎖 状 分 子 の 柔 軟 性 を 制 御 す る 因 子 に つ い て 粘 度 測 定 を 中 心 に 調 べ 、 脱 ア セ チ ル 化 度 、 分 子 量 の よ う な 内 因 的 な 因 子 と イ オ ン 強 度 やp Hの よ う な 外 因 的 因 子 と 鎖 状 分 子 の 柔 軟 性 と の 関 係 に つ い て 詳 し く 考 察 し た 。
第 三 章 で は 、 キ ト サ ン キ ャ ス ト フ イ ル ム の 分 子 柔 軟 性 と 物 理 的 な 因 子 と の 関 係 に つ い て 調 ベ 、 分 子 鎖 の 柔 軟 性 が 脱 ア セ チ ル 化 度 や 溶 液 のpHと 密 接 に 関 連 し て い る こ と を 見 い だ し た 。 ま た 、 キ ト サ ン 糸 状 体 を 作 り そ の 湿 乾 強 度 特 性 に つ い ても 調 べ た 。
第 四 章 で は 、 種 々 の キ ャ ス ト 法 で 作 っ た キ ト サ ン フ イ ル ム の 分 子 鎖 柔 軟 性 と 物 質 透 過 性 に つ い て 詳 し く 調 べ 、 柔 軟 性 の 高 い フ イ ル ム の 方 が 物 質 透
過性に優れていることを見いだした。
第五章では、前章で明らかとなったキトサンフイルムの物質透過特性を 応用した例として、薬物徐放性を持つ種々のキトサンカプセル化法につい て研究した。本研究での薬物徐放性は、キトサンフイルムの薬物透過特性 とキトサンの低毒性及び動物生体内消化性を利用したもので、他の天然高 分子化合物でも余り例を見ない特異的な応用例として注目されている。こ の研究結果から、キトサンカプセル調製に際して脱アセチル化度、分子量、
キトサ ン溶液のイオン強度と
pH
を組み合わせることにより薬物の徐放速 度及ぴ徐放薬物の分子構造依存性を制御できることを見出した。これまで キトサンを化学修飾してカプセルの薬物担持特性を変えた研究はあるが、物理的手段で薬物担持特性や薬物徐放速度を制御した研究は未だ見当たら ない。この研究を更に進めることにより、複数種の薬物を担持したキトサ ンカプセルを作り出し、選択的薬物徐放の画期的な技術へ発展させること が出来ると考えている。また、化学修飾を一切加えない系なので、免疫能 の活性化にっながる毒性や副作用の発現を警戒する必要もない全く安全な 投薬形態に発展することが期待される。
学 位 論 文 審 査 の 要旨 主査
副査 副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授 助教授
戸 倉 清 一 西 則 雄
西 村 紳 一 郎 ( 理 学 研 究科 ) 覚 知 豊 次
坂 入 信 夫
学位論文題名
rvIanupulation and Application of Chain Flexibility of Chitosan
( キ ト サ ン 分 子 鎖 の 柔 軟 性 制 御 と そ の 応 用 に 関 す る 研 究 )
申請者は、近年東南アジア地域で増えつっある食品廃棄物の中でも特に多 い甲殻類の殻を資源として再利用する際に必要な基礎情報を克明に研究調 査した。食品廃棄物中の甲殻類の殻に含まれる天然ムコ多糖類のキチンと その脱アセチル化誘導体のキトサンは動物への生体親和性が高い有機化合 物と言われている。しかし,これらの有機化合物を資源として再利用する ためには、結晶構造、溶解性、融点や軟化点等の熱特性更には化学反応特 性 等 に つ い て の 基 礎 研 究 が 必 要 不 可 欠 で あ る と 考 え た 。
論文はintr oductionを合む六章から成り、先ず第一章では有機酸と塩を形 成して水溶性になる直鎖状多糖キトサンの溶液物性を知るための基礎的数 式の誘導根拠について詳しく述べている。中でも、キトサン分子の回転半 径や拡がりを知る上で最も重要なキトサン塩水溶液の粘度挙動についての 予備考察を詳しく行っている。
第二章では、鎖状分子の柔軟性を制御する因子について粘度測定を中心 に調ベ、脱アセチル化度、分子量のような内因的な因子とイオン強度やp
H
のような外因的因子と鎖状分子の柔軟性との関係について詳しく考察し た。第三章では、キトサンキャストフイルムの分子柔軟性と物理的な因子と の関係について調ベ、分子鎖の柔軟性が脱アセチル化度や溶液のpHと密
接に関連していることを見いだしている。また、キトサン糸状体を作りそ の湿乾強度特性についても調べている。
第四章では、種々のキャスト法で作ったキトサンフイルムの分子鎖柔軟 性と物質透過性について詳しく調ベ、柔軟性の高いフイルムの方が物質透 過性に優れていることを始めて見いだしている。
第五章では、前章で明らかとなったキトサンフィルムの物質透過特性を 応用した例として、薬物徐放性を持つ種々のキトサンカプセル化法につい て研究した。本研究での薬物徐放性は、キトサンフイルムの薬物透過特性 とキトサンの低毒性及び動物生体内消化性を利用したもので、他の天然高 分子化合物でも余り例を見ない特異的な応用例として注目されている。こ の研究結果から、キトサンカプセル調製に際して脱アセチル化度、分子量、
キ トサン溶液のイオン強度と
pH
を組み合わせることにより薬物の徐放速 度及び徐放薬物の分子構造依存性を制御できることを見出した。これまで キトサンを化学修飾してカプセルの薬物担持特性を変えた研究はあるが、物理的手段で薬物担持特性や薬物徐放速度を制御した研究は未だ見当たら ない。この研究を更に進めることにより、複数種の薬物を担持したキトサ ンカプセルを作り出し、選択的薬物徐放の画期的な技術ヘ発展させること が出来るとしている。また、化学修飾を一切加えない系なので、免疫能の 活性化にっながる毒性や、副作用の発現を警戒する必要もない全く安全な 投薬形態に発展することが期待されている。