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レトルト殺菌魚肉ソーセージのケーシングと      肉質の密着に関する研究

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 水 産 学 ) 西 野 学 位 論 文 題 名

レトルト殺菌魚肉ソーセージのケーシングと      肉質の密着に関する研究

学位論文内容の要旨

  魚肉ソーセージはわが国で開発された保存性に優れたプラスチックフィルム包装食品である。

現在のように長期間常温流通が可能であるのはプラスチックフィルムとレトルト殺菌技術の開発 に負うところが大きい。特に内容物を充填する包材のプラスチックケーシング(以下単にケーシ ング)は耐熱性と水蒸気およびガスバリヤー性に優れていること,さらに製造基準に定められて いるケーシングと肉質が遊離しない特性を有していること(肉密着性)が重要な条件である。

  レトルト殺菌法が導入されるまで(昭和49年以前)のボイル殺菌魚肉ソーセージにっいても肉 密着性に関する研究が行われてきたが,十分な肉密着機構の解明に至る前にレトルト殺菌法に移 行してしまヮた。しかし,殺菌方式が変わっても,ケーシングと肉質の密着がレトルト殺菌魚肉 ソ―セージにとって必要条件であることに変わりはなく,特に今後,原料や消費者二ーズの多様 化 に 対 応 す る た め に も , 密 着 機 構 を 明 ら か に す る こ と は 重 要 で あ る 。   本論文は3章からなり,第1章においては高温下で使用可能なソ―セージ内部圧力測定装置の 改良を行い,殺菌温度および内部圧カと肉密着性との関連性を明らかにし,第2章ではボイル殺 菌魚肉ソーセージの肉密着性に関連するケーシング内容物の面からの基本的因子がレトルト殺菌 の場合にはどう関係しているかにっいて,また第3章では接着界面での接着強度の発現因子を明 ら か に す る た め に ケ ー シ ン グ 表 面 の 特 性 と 肉 密 着 性 の 関 係 を 検 討 し た 。   第1章では,従来のボイル殺菌魚肉ソーセージの内密着(肉接着力及び肉付着量)は加熱によ る内部圧カと強く関連していると考えられていたので,先ずこの点を明らかにするために100℃ 以上の温度でも使用できるように圧力測定器の改良を試み,実用性のあることを確認した。この 装置を利用して実際にレトルト殺菌過程中の内部圧カと肉接着カの関係を検討した。100〜130℃ の加圧レトルト殺菌で圧カを変化させて実験した結果,肉接着カは加熱殺菌温度と相関していた が,レトルト圧カとは相関していないことが明らかであった。また一定レトルト殺菌温度で加熱

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過 程中の魚肉`ノー セージのゼリ―強 度 破断強度,肉付 着量および肉接着 カは相互によく対応し て お り, 肉密 着 性は タン パ ケ質同士の網状 構造の形成に影響す る加熱履歴と強く 関連しているこ と がわかヮたー

  こ のこ とを 従 来か ら知 ら れているかまぼ こ製造におけるゼリ ー強度と網状構造 の分散状態(密 で あ るか 粗で あ るか )お よ び高分子接着剤 の剥離理論を参考に ,肉接着カと肉付 着量にっいて次 の ように説明できる ことがわかった。 すナょわち,ゼリ― 強度が弱く網状構 造の分散状態に粗密が あ る 場合 には 肉 接着 カが 小 さく,このよう な時には緻密な網状 構造層が薄いので ケーシングに近 い 部 分で 剥離 が 起こ るた め に肉付着量は少 ない。これに対して ,ゼリ―強度の強 い場合には均…

で 徹 密な 網状 構 造の 層が 厚 いので肉接着カ は大きく,ケーシン グから離れた内部 で剥離が起こる た め肉付着量は多く なる。

  こ のよ うに 内 密着 性は ゼ リ―強度あるい は破断強度で示され る弾カと強い関連 性が認められた の で,次に弾カに影 響する要因の面か ら検討した。

  第2章 で は, ケー シ ング と肉 質 の密 着性 に っい て,特に弾カ との関係から倹討 するために,澱 粉 , 脂肪 ,食 塩 ,pHおよ び 原料 すり 身 の影 響を 調 べた 。澱 粉 の添 加量 と肉密着 の関係は,ある 一 定 割合(外割 りで10()o)までは両者は相 関していたが,それ 以上の場合(01剖 り1500)にはゼ リ 一強度および破断 強度は増大したが ,肉密着性は低下した。耳旨肪の添訂口量にっいては.外剖り 2000以上 の場 合 ゼリ ー強 度 および破断強度 はわずかな減少が児 られただけである のに対して,肉 密 着 性は 著し く 減少 した 。 これは一定量以 上の脂肪を加えた時 には油滴が気泡あ るいはキズと同 じ よ うな 欠陥 部 分と なっ て その周辺の応力 集中により剥離し易 くなヮたためと推 定した。このよ う に ゼリ ー強 度 およ び破 断 強度 と肉 密 着が 必ず しも 相関しなか1たことは,搬粉 や脂肪の過剰添 加 が ケ ー シ ン グ と 肉 質 の 接着 界面 で の接 着に 対 して 阻害 的 に作 用し て いる こと を 示唆 した 。   食 塩お よびpHのよ うに 塩 溶性夕ンパク質 の溶出やタンパク質 の性質そのものに 景彡響する場合 に は ,肉 質の 特 性( 夕ン パ ク質分子の凝集 性)を反映したゼリ ー強度は肉密着性 とよく対応して い た。

  第3章 で は, ケー シ ング 表面 特 性と 肉密 着 の関 係,さらに接 着界面での接着強 度あるいは接着 カ の発現にっいて検 討した。

  表 面特 性の 異 なる ケー シ ングを用いて肉 密着性を比較した結 果,分子構造中に 電気陰性度が大 き いF,0,N,Clが 存 在し ,そ の 電気 陰性 度 と表 面ぬ れ 性の 大き い もの ほど 肉 密着 性が 良 かっ た こ とか ら, 肉 密着 には 水 素結合の結合工 ネルギーの大きさが 関与していること を指摘した。良 好 な 肉密 着性 を 示さ ない フ アルムも,コ口 ナ放電や紫外線照射 などの表面活性化 処理で表面ぬれ

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性をj曽すことで,内密着性の増大が認められた。また,カルボキシル基を導入した場合には表面 ぬれ性は増加しなかったが,肉密着性の増加は認められた。

  これらのことからケーシング表面に存在する極性基が化学的投錨点となりタンパク質を構成し ているアミノ酸の極性基およびぺプチド基などと作用し,化学的結合カを発揮しており,肉密着 には水素結合とイオン結合が関与している可能性を認めた。

  低密度ポリエチレンやポリプ口ピレンを用いたり,前者の表面粗さを機械的方法で増やす処理 を行った実験結果から,分子間に働くファンデルワールスカや機械的な投錨効果は接着カの発現 に寄与していないことが明らかであった。

同一条件のケーシング内容物がケーシングの表面特性によって肉密着性に違いが認められたこと から,肉付着量が多くなった理由は,接着強度の大きいほど,接着界面に接近した肉質の周辺部 では,塩溶性の繊維状夕ンパク質分子の強い配向によって緻密な網状構造が形成され,気泡など の欠陥部分も減少するためと判断した。また,接着界面での接着強度は水素結合の強さの他に化 学的投錨点で実際に結合している有効投錨点の密度を考慮することによヮて,第2章の結果もよ く説明できることがわかった。

  総合考察では第3章で示した化学的投錨点および有効投錨点という考え方の導入に基づいて,

第2章の澱粉および脂肪の過剰添加時に弾カと肉密着性が相関しなかった理由,およびケーシン グと肉質との密着機構にっいて考察した。

  過剰の澱粉や脂肪を添加したときに製品の弾カと肉密着が相関しなかったことは,ケーシング とタンパヶ質の間に膨潤・糊化澱粉や脂肪が入り込んで化学的投錨点での正常な結合を阻害し,

有 効 投 錨 点 を 減 少 さ せ る と い う 考 え 方 で 説 明 で き る こ と が わ か っ た 。   以上の結果に基づいて,レトルト殺菌魚肉ソーセージの肉密着機構を網状構造の分散状態と接 着界面における接着強度(界面接着強度)から次のように説明できることを明らかにした。すな わち,界面接着強度はケーシングと肉質の極性基間の水素結合あるいはイオン結合によって决ま り,結合カが大きく有効投錨点が多い場合でtま,肉接着カは大きく,網状構造の均一で緻密な層 が厚いのでケーシングから離れた内部で剥離が起こるため肉付着量が多くなる。同様の剥離現象 は界面接着強度が十分であって,内容物組成の配合や加熱履歴がゼリ一強度を増強するような条 件下で網状構造が緻密となるような時にも当てはまる。一方,結合カが小さく有効投錨点が少な い場合には,肉接着カは小さく,網状構造の分散状態に粗密があるためケーシングに近い箇所で 剥離が起こり肉付着量は少なくなる。このような剥離現象は界面接着強度が十分であっても,内 容物組成の配合や加熱履歴によってゼリ一強度を十分に増強できないような網状構造の分散に粗

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密が 生じる 条件 下でも 起こることがわか1た。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    信 濃 晴 雄 副 査    教 授    鈴 木    翼 副査    助教授    猪上徳雄

  魚肉 `/― セー ジは我 が国で 開発さ れ, 保存性 に優れた包装食品である。現在のように長期の常 温流通 が可 能であ るのは 包材と しての プラ スチッ クフィ ルムと レト ルト殺菌技術の開発に負うと ころが 大き い。特 に内容 物を充 填する包材のプラスチックケーシング(以下,ケーシングとする)

は耐熱 性お よび水 蒸気な らびに ガスバ ルヤ ー性に 優れて いるこ と, さらに製造基準に定められて い る ケ ー シ ン グ とI勺 容 物 が 密 着 す る 特 性 を 有 し てい る こ と が 重要 な 条 件 と なっ て い る 。   本石 幵究で は高温 下で使 用可 能なソーセージ内部圧の測定装置を独自に改良し,殺菌温度および 内部圧 カと 肉密着 性との 関連を ,またボイル殺菌魚肉゛ノーセージの肉密着性に関連するケーシン グ内容 物の 基本的 因子が レトル ト殺菌 の場 合には どのよ うに関 連し ているか,さらに密着界而で の接着 強度 の発現 因子を 明らか にする ため にケー シング 表面の 特性 と肉密着性の関係などにっい て検討 を行 い,以 下に要 約され る成果 を得 た。

  1. 従来の ボイ ル殺菌 魚肉゛/一 セージ の内密 着は 加熱による内部圧′Jと強く関連していると考 えられ てい るので ,この 点を明 らかに する ために ,圧力 測定器 を利 用して実際にレトルト殺菌過 程中の ソー セージ 内部圧 カと肉 密着カ の関 係を検 討した 結果, 内密 着は加熱殺菌温度と相関して いたが 内部 圧カと は相関 してい ないこ とを 確認し た。ま た一定 レト ルト温度で加熱殺菌した魚肉 ソーセ ージ の内密 着性は 肉のゼ ルー強 度お よび破 断強度 のよう な弾 力性と対応しており,肉密着 性 は肉 夕 ン パ ク 質相 互 の網 状構造 の形成 に影響 する 加熱履 歴に強 く関連 して いるこ とを明 示し た。そ の結 果はソ ーセー ジの肉 密着性 がボ イル殺 菌時に は圧カ がそ の主要因であるのに対し,レ トルト 殺菌 時には 温度に 依存す ること を認 めた新 知見で ある。

  2. ケーシ ング とソー セージ の肉密 着性 を特に 弾カと の関係 で検討 する ために ,ソー セージ の 弾 力性 に 関 与 す る澱 粉 , 脂 肪 ,食 塩 , お よ びpHな ど の 影響 を 調 べ た結 果,澱 粉では10%(W/

W)程 度 の 添 加 量ま で は ゼリ一 強度お よび 破断強 度など の弾力 性と肉 密着 性との 間に相 関がみ ら

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れ た が, それ 以 上の 添加 量 の場合には弾力性 の増加にも拘わらず 内密着性は低下し ,相関は認め ら れ なか1た。 また , 脂肪 の場 合 にも 添加 量170t程度以上ではそ の弾力性と肉密着 性との問には 相関 がみられなかった 。このように肉に 一定量以上の澱粉および脂肪を添加した場ムロの弾力性は,

ケ ー シン グと 肉 との 密着 性 に必ずしも相関せ ず,逆に阻害的に作 用することを明ら かにした。こ のこ とは過剰な澱粉お よび月旨肪がケー シングと肉の間に入 り込み,両者の結 合カを弱めたことを 示 唆 する 結果 で あっ た。 な お, 食塩 やpHの よう に 塩溶 性夕 ン パク 質の 溶出やタン パク質の性質 そ の もの に影 響 する 因子 の 場合には,肉質の 特性(夕ンパク質分 子の凝集性)を反 映した弾力性 は肉 密着性と対応する ことを確認した。

  3.  表 面特 性の 異 なる ケー シ ング を用 い て肉 密着性を比較し た結果,ケーシン グの分子中に 分 子 内 の 結 合 に 関 与 す る 原 子 と し て 電 気 陰 性 度の 大 きいF,O,N,Clを有 し, そ の電 気陰 性 度 の 大き いケ ー シン グ程 高 い肉密着性を示す ことを明らかにする と共に肉密着性を 示さないケー シ ン グに カル ボ キシ ル基 の 如き極性基を導入 することにより良好 な肉密着性を得る ことを確認し た 。 これ らの 結 果は 肉夕 ン パク質の構成アミ ノ酸の極性基および ぺプチド基などが ,ケーシング 表面 で化学的投錨点と して存在する極性 基と共に水素結ムロ あるいはイオン結 合のような化学的結 合 カ を生 し, そ れが 肉密 着 性に関与している ことを示唆するもの であった。さらに これらの結果 は 過 剰の 澱粉 あ るい は脂 肪 がケーシングと内 容物の問に入り込ん だ場合に密着カが 低下すること の 間 接的 な証 明 とも なっ て おり,ソーセージ の肉密着性は,ケー シング表面と内容 物表面両者の 化学 的特性に依存する ことを確認した。

  以 ヒの 結果 は ソー セー ジ のみならず,一般 の包装食品の加工, 保蔵の面に貢献す る新知見であ り 高 く評 価さ れ る。 よっ て ,審査員一同は本 論文が博士(水産学 )学位請求論文と して十分な内 容を 宵するものと半lJ定した。

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