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乳酸菌Carnobacteri2t771 7naltaroTnaticu7n Sur 602 の      産 生 す る 抗 リ ス テ リ ア 物 質 に 関 す る 研 究

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Academic year: 2021

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     博士(水産科学)山本竜彦      学位論文題名

乳酸菌Carnobacteri2t771 7naltaroTnaticu7n Sur 602 の      産 生 す る 抗 リ ス テ リ ア 物 質 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

  低 温食品流 通システム は,非加 熱または 過度の加 熱を行っ ていない 調理済み食 品を,微 生 物の増殖 を抑えっつ 流通させ るのには 有効な方 法である 。しかし ,このよう な食品では 一 旦微生物 に汚染され た場合, 食品流通 ・保蔵時 に細菌が 増殖また は長期生残 し,食中毒 を 引 き起 こ す 可能 性 が 考え ら れる 。 実 際に 平 成10年 には,イ クラ醤油 涜けを原 因食材と す る ,大 腸 菌0157によ る 集団 食 中 毒事 例 も 報告 さ れて おり,加 工後の低 温流通の みでは 食品の安全性を確保できないのが現状である。

  Listeria monocytogenesは,低温増殖能を有し,発症率は低いが重篤な症状を引き起こす 食中毒原因菌である。工. monocytogenesは,.様々な環境ストレスに対して耐陸を持っため,

自 然環境中 で長く生残 でき,工 場での製 造工程や 従事者の 手指を介 して,食品 を汚染する 可 能 性が あ る 。我 が 国 における 食中毒事 例はこれ までに1事 例のみで あるが, 食品汚染率 は 欧米と大 差ないこと が報告さ れて茄り ,非加熱 状態で水 産食品を 喫食する習 慣を有する 我 が国では ,本菌によ る食中毒事件が今後増加するものと考えられる。そこで本研究では,

水産食品中での工, monocyto.ぴ門甜の挙動にっいて調べるとともに,水産食品から分離した 抗 リステリ ア物質産生 菌の微生 物学的特 徴,産生 される抗 菌物質の 特性および 食品への利 用にっいて検討した。

  第 一章では ,市販の水 産発酵食品に工.mD門Dヴr轡門Psを接種後,種カの温度で貯蔵し,

その挙動を観察した。ニシン切り込みでは,貯蔵中工,mD門Dヴ幻靜門¢ぷは変動せず,静菌状 態を保って船り,イカ塩辛では,低温での貯蔵中工.所D門DグfD.靜門¢ぷの著しい減少が確認さ れ た 。ま た 乳 酸菌 が 多 数検出さ れたいず しでは, 試験開始 から急激 なn眦′面 菌数の減少 が観察された。しかし,工.閉D門Dc.)′細ぴ門PざはpH3.4でも生残可能なことから,この減少が 乳 酸 菌に よ る 有機 酸 産 生のみの 影響と考 えられな いため, 新たに3種 類の異な る市販いず し において 乳酸菌との 拮抗作用 を調べた 。いずれ のいず、 しにおい てもpHに差は なかった

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が,工 . monocytogenes菌数の 減少程度 は製品によって異なっていた。すなわち,サケいず しでは工, monocytD.〆門館菌数の減少が顕著であり,その分離株には,工.mD門D馴り〆靜館の発 育抑制能の高いものが多かった。

  第 二 章 では,市 販水産食 品からの抗 リステリ ア性物質 産生乳酸 菌の分離 を試み, 魚肉す り 身か ら 分離で きたので ,既知の微 生物と比 較検討し 同定を行 った。こ の分離株 (Sur602 株)は 生態学的 ・生化学的性状からCむ門D6卯胞′轟朋属であると判断され,さらに類縁菌と の16SrDNA塩 基 配 列の 相 同性 お よ ぴ系 統 学的 位 置 から (b所 ぬ切 り 職鹹 を 腕Sur602と 同 定された。

  第 三 章 では ,C缸mむ 伽mロ 庇甜 聊Sur602に よ って 産 生さ れ る 抗菌 物 質の 精 製 を試 み , そ の特 性 に つい て 検討 し た 。本 抗 菌物 質 の 産生 は , 培地 組 成, 初 発pHお よび培養 温度に よ って 大 きく影 響を受け ,酵母エキ ス加TSB,30°C,pH7.Oでの 培養が抗 菌物質産 生の至 適 条件 で あると 判断した 。この条件 で培養し た培養液 から抗菌 物質を硫 酸アンモ ニウム沈 殿 ,疎 水 性相互 作用クロ マトグラフ イー,高 速液体ク ロマトグ ラフイー によって 精製し,

SDS‐PA(亜 に供した ところ, 銀染色法 によって もバンドは 検出され なかったが,寒天重層 法 を用 い た抗菌 活性直接 検出法で活 性の認め られる部 分がゲル 上にーカ 所見られ た。本抗 菌 ペプ チ ド は,23ア ミ ノ 酸残 基 か らな り ,ウ シp‐ カ ゼイ ンN末 端の69〜91残基 の一次配 列 と完 全 に一致 するもの であった。 このよう な抗菌ペ プチドは これまで になく, 本研究で 初 めて 報 告する ものであ る。そこで カゼイン を培地に 添加し, その産生 能の変化 を調べた と ころ , 濃度依 存的に最 大抗菌活性 値も大き くなった 。本抗菌 ペプチド はタンパ ク質分解 酵 素, 熱 お よびpHに 対 し て, バ ク テリ オ シン と 同 様の 感 受性 を 示 したが ,脂質分 解酵素 に よっ て 部分的 に失活し た。また, 本抗菌ペ プチドの 抗菌性は 瓜舵′面 属菌に対 して非常 に高い 特異性を 有してお り,aろDf甜 ぬ釘所に 対してもわ ずかに抗 菌カを有していた。さら に 本ペ プ チドの 抗菌活性 は低温,長 期保存に おいても 安定であ った。し たがって ,低温増 殖 能を 有 す る細 菌 に対 し て も, 非 常に 有 効 な抗 菌 剤 とな り 得る 可 能性 があると 言える。

  ま た ,Sur602株 の産 生 す る抗 菌 ペ プチド は,感受 性菌であ るn卿′ぬ 属菌に対 してのみ 吸着さ れた。そ こで膜表 面を各種 酵素およ び界面活性剤で処理 したところ,リパーゼやト リ トンX‐100の 処理 で 吸着 率 の 大幅 な 低下 が 認 めら れ た。 こ の こと は,本 抗菌ペプ チド の 吸着 に 関与す るタンパ ク質性レセ プターの 存在を否 定するも のであっ た。また ,感受性 菌 に対 す る作用 メカニズ ムは,短時 間での殺 菌作用,K十漏洩お よぴ細胞 内部ATPの消 費・

枯 渇 を 引 き 起 こ す な ど , ク ラ スIIaバ ク テ リ オ シ ン と 類 似 し た も の で あ っ た 。   第 四 章 では ,Sw602株 を 用い て カゼ イ ン を発 酵 させ , そ の発 酵 粉 末に よ る食 品 の 安全 性 向上 へ の応用 可能性に っいて検討 した。カ ゼインの みでは菌 が増殖せ ず,抗菌 物質の産     ―1541−

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生も 全く認 めら れな かっ たが ,グ ルコ ース や酵 母エキスの添加によって,菌の増殖および 抗菌 ベプチ ド産 生は 大幅 に向 上し ,0.5%酵 母エ キス 添加 で高 力価 の抗 菌活 性を有する発 酵粉末を得ることができた。カゼイン発酵粉末溶液中では工. monocytogenesは急激に減少 し ,4お よ び12°Cの 両 温 度 に お い て 貯 蔵1日 目 お よび7日目 まで に検 出限 界未 満( く300 CFU/ml)と なっ た。 また ,発 酵粉 末を添 加し たひ き肉 でも ,Listeria菌 数は 急激に検出限 界 以下 ま で 減 少 し た。 畜肉 製品 中に おけ るpH低下 や変 敗の 原因 菌と して 乳酸菌 の関 与が 報 告さ れ て お り , 本実 験に おい ても 乳酸 菌の 増殖 によ るpH低下 とカ ゼイ ン発酵 粉末 との 相乗効果によって,工. monocytogenesが死滅すると推察される。よってカゼイン発酵物は,

非加熱食品中の工. monocytogenesの増殖を抑制し,より安全性の高い食品の流通に寄与で きるものと考えられる。

  以上,本研究では,水産発酵食品中での工. monoLytogenesの挙動を調べ,そこに存在す る乳 酸菌が 大き く影 響す るこ とを 見い だし た。 さらに,我が国で市販されている水産食品 か ら も 多 数 の 抗 菌 物 質 産 生 菌 が 分 離 で き る こ と を 明 ら か と し た。 そ の 中 か ら , 工 , monocytogenesに対して高い抗菌活性を有する物質を産生する株としてCar. maltaromaticum Sur 602株 が得 られ ,本 菌株 によ って培 地中 に産 生さ れる 抗菌 物質 が, これ までに報告の ない 非常に 新奇 性の 高い ベプ チド であ るこ とを 示し た。 また ,Sur 602株は 酵母エキス添 加カ ゼイン 溶液 中で 抗菌 ペプ チド を産 生し ,Sur 602株に よる カゼ イン 発酵 粉末が新しい 天然 の抗菌 物質 とし て応 用で きる 可能 性を 示し た。このことは,今後バクテリオシンやそ の他抗菌物質産生菌をスターターカルチャーとして用いる場合の知見となりうると考える。

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学 位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授   猪 教 授   吉 教 授   川 助 教 授  山

上 徳 雄 水    守 合 祐 史 崎 浩 司

     学位論文題名

乳酸菌Carnobacteri 勿所7naltaroTnatic 銘絖Sur 602 の 産生す る抗リス テリア物 質に関する研究

  低 温流通 シス テム は,非加熱または穏和な加熱調理済み食品の微生物増殖を抑制させな がら 流通さ せる 有効 な方法であるが,このような環境では低温増殖能を有する細菌が増殖 また は長期 生残 する 機会を与え,食中毒を引き起こす可能性が考えられる。実際,大腸菌 0157による 低温 流通 食品 での 集団 食中 毒事 例も 報告 され てお り,加 工後 の低 温処理だけ では食品の安全性を確保できないのが現状である。

  Lister ia monocytogenes(リステリア菌)は,低温増殖能を有する食中毒原因菌であり,

様々 な環境 中に 分布 するため食品を汚染する機会も多い。我が国における食中毒事例はこ れま でに1事例 のみ であ るが ,食 品汚染 率は 欧米 と大差ないことから,非加熱状態で水産 食品を喫食する習慣を有する我が国では,本菌による食中毒事件の発生が懸念されている。

  そ こで本 論文 では ,水産食品中でのりステリア菌の挙動について調べるとともに,水産 食品 から分 離し た抗 リステリア物質産生菌の微生物学的特徴,産生される抗菌物質の特性 および食品への利用について検討している。

  第 一章で は, 市販 の水産発酵食品にりステリア菌を接種し,その挙動を観察し,リステ リア 菌の挙 動に 乳酸 菌の存在が大きく関与しており,乳酸菌が検出されなかったものより も多 数検出 され たも のでりステリア菌の死滅の著しいことを見出している。しかし,リス テリ ア菌は 低pH下で も生 残可 能な こと から ,こ の減 少が 乳酸 菌によ る産 生さ れる有機酸 の みの 影 響 と 考 え ら れな いた め, 乳酸 菌を 含む3種類 の市 販い ずし での りステ リア 菌の 動態 を詳細 に調 べ, リステリア菌の減少程度が製品中に存在する乳酸菌相の相違によって 異なることを明らかにしている。

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   第二章では,水産食品から抗リステリア性物質産生菌の分離を試み,魚肉すり身から強 い活性を持つSur 602 株の分離に成功し,形態学的およぴ生理・生化学的性状検査結果な らびに16SrDNA 塩基配列の相同性からSur602 株がC 缸所ロぬ′D 所ロf を甜m と同定している。

   第三章では,C 缸m ロ;舷rDm ロ灯c 甜mSur602 株によって産生される抗菌性物質の精製とそ の特性にっいて検討している。至適培養条件で培養した培養液から抗菌性物質を硫酸アン モニウム沈殿,疎水性相互作用クロマトグラフイーおよぴ高速液体クロマトグラフイーに よって精製し,プロテインシークエンサーで本抗菌性物質が 23 アミノ酸残基からなるベ プチドであることを明らかにしている。またこの抗菌ペプチドが,ウシD ‐カゼインのN 末端 69 〜91 残基の一次配列と完全に一致することを見出し,この配列を有するペプチド に抗菌性のあることを世界で初めて証明している。さらに,本抗菌ペプチドが脂質分解酵 素の作用によって部分失活すること,また,その抗菌スペクトルが非常に狭くりステリア 属菌に対して特異的に効果を発揮すること,さらに耐熱性,耐pH 性を保有するとともに 低温・長期保存にも耐えることを示し,食品の加工・製造およぴ低温流通システム下でも 有効に利用できる可能性を示唆する結果を得ている。

   次に,Sur602 株の産生する抗菌ペプチドの抗菌メカニズムにっいて検討し,感受性菌 であるりステリア菌に対してのみ吸着し,その吸着がりパーゼやトリトンX ‐100 の処理 によって大幅に低下することを認め,抗菌ベプチドの吸着にタンパク質性レセプターが関 与のないことを推察している。また,本抗菌ベプチド物質が感受性菌の細胞表層に微少ぬ 孔を開けることで KI 漏洩と細胞内A1T の消費・枯渇を誘引し,短時間で殺菌的に死滅さ せることを明らかにし,このメカニズムが乳酸菌の産生するクラスIIa バクテリオシンと 類似したものであることを示す結果を得ている。

   第四章では,Sur602 株を用いてカゼインを基質とした発酵粉末を調製し,これによる 食品の安全性向上技術の開発を検討している。すなわち,カゼインに食品用酵母エキスを 微量添加することで高力価の抗菌活性を有するカゼイン発酵粉末を得られること明らかに している。また,この発酵粉末をひき肉に添加することで,食品中のりステリア菌の発育 を抑制するだけでなく検出限界未満まで急速に死滅させられ,さらにその抗菌性が長期間 にわたって保持されることを示している。

   以上本論文では,我が国で発生が懸念されているりステリア菌による食中毒の発生を未

然に防止するための新しい制御法構築に有益な知見を明示している。よって,審査員一同

は ,本 論 文 が 博 士 (水 産科学 )の 学位 を授 与され る資 格の ある ものと 判定 した 。

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