Title
Further upregulation of β-catenin/Tcf transcription is involved in
the development of macroscopic tumors in the colon of
Apc^<min/+> mice( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
尾山, 武
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第749号
Issue Date
2008-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23116
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目
【32】
尾 山 武(富山県) 博 士(医学) 甲第 749 号 平成20年3月 25 日 学位規則第4条第1項該当Further upregulation ofβ-Catenin/Tcf transcriptionisinvoJvedin the development of macroscopic tumors jn the colon of Apdnin/+mice
審査委員 (主査)教授 森 秀 樹 (副査)教授 吉 田 和 弘 教授 柴 田 敏 之 論文内容の要旨 【背景】 大腸発がんは多段階で起こり,ヒトではその各段階においてdPC,左凡4ぶ,〆j遺伝子変異が関与 していると考えられている。大腸がんのモデルマウスの一つであるApcMin/+マウスは一方のApc遺 伝子のコドン850に点突然変異を有し,生後数週より腸管に多数の腫瘍を形成する。当教室ではこ のマウスの大腸に30から100個程度の粘膜内微小病変を発見し報告してきた。この病変の存在及び ヒトの多段階発がんのモデルにより,ApcMin/+マウスの大腸腫瘍形成過程には少なくとも2段階存在 することが示唆される。粘膜内微小病変にはそのすべてにおいてβカテニン蛋白の蓄積を認め,高 頻度にApc遺伝子のlossofheterozygosity(LOH)を認める。以上のことから正常粘膜から粘膜内微小 病変への移行は4pcLOHによることが示唆される。しかし粘膜内微小病変から腫瘍への移行に関与 する変化は未だ明らかではない。 【方法】 1)5,20,35週齢のApcMin/'マウスから得た大腸をホルマリン固定後,粘膜と水平に切断した切 片のH.E腰本を観察し,粘膜内微小病変の最大径及び発生数を検索した。続いてApcMin/'マウ ス8匹を2群に分け一方の群に,強力な大腸発がんプロモーターである2%dextran sodium sulfate(DSS)を生後5週齢より一週間飲水投与した。DSS投与後マウスを屠殺し,同様に粘膜 内微小病変の最大径及び発生数を検索した。 2)粘膜内微小病変及び腫瘍に対して抗βカテニン抗体,抗Myc抗体,抗CyclinD抗体を用いて 免疫染色を行った。抗βカテニン抗体による染色については蛍光免疫染色を行い,粘膜内微 小病変及び腫瘍に対して画像解析ソフトウェアを使用し,同一の組織切片上で蛍光強度を比 較した。 3)βカテニン/取fレポーターマウスを作成し,牌細胞をFACS解析することにより生体内でレ ポーターが機能することを確認した。さらにApcMin′+マウスとこのレポーターマウスを交配す ることによりレポーターが導入されたApcMin/+マウスを得た。このマウスでの粘膜内微小病変 及び腫瘍に対して抗GFP抗体による蛍光免疫染色を行い,βカテニン同様に蛍光強度を比較 した。 4)Wntantagonist遺伝子(旗1,S6p2,勒3,SPp4,Dkkl,Dkk2,Dkk3,Dkk4)の発現をreal-time RIPCR法により腫瘍及び正常粘膜に対して比較した。 5)粘膜内微小病変及び腫瘍に対して抗Dkkl抗体により免疫染色を行った。 6)Dkkl及びS6p4遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化状態をbisulntesequence法により腫
-63-瘍及び正常粘膜に対して比較,検討した。 【結果】 1)5,20,35週齢のいずれにおいても粘膜内微小病変のほとんどが腫瘍へと成長せず,その大き さはほぼ一定であった。しかしDSSを投与すると粘膜内微小病変が大きな病変に成長するこ とが観察された。 2)βカテニン蛋白及びβカテニン/Ttf経路の標的遺伝子であるMyc,Cyclin Dは粘膜内微小病 変と比較して腫瘍で発現が上昇していることが観察された。さらにβカテニン蛋白は粘膜内 微小病変(n=7)と比較して腫瘍(n=17)で有意に増加していた(p<0.005)。 3)βカテニン/Tbfレポーターが導入されたApcMin/'マウスにおいて粘膜内微小病変,腫瘍,及び 正常粘膜でのGFPの発現を比較したところ,正常粘膜と比較して粘膜内微小病変(n=7)ではす でにGFPの発現が高く,腫瘍(n=17)ではさらにその発現が高かった(p<0.005)。 4)Dkkl(P<0.001),Dkk4(p<0.001),物4(P<0.05)の発現は,正常粘膜(n=8)と比較して腫瘍(n=12) で有意に低下していた。 5)Dkklの発現は,粘膜内微小病変では正常粘膜に比べてむしろ発現が上昇していたのに対して, 腫瘍では低下していた。 6)ApcMin/'マウスの大腸腫瘍で遺伝子のサイレンシングが確認されたDkkl及び勒4遺伝子のプ ロモーター領域のDNAメチル化状態に変化はなく,DNAメチル化が関与しないサイレンシ ングであることが示唆された。 【考察】 本研究では,粘膜内微小病変は一定の大きさに留まる一方,腫瘍に成長する潜在能力を有するこ とを示し,ApcMin/'マウスの大腸腫瘍形成過程には少なくとも2段階あることを確認した。粘膜内微 小病変から腫瘍への移行には,βカテニン蛋白のさらなる蓄積を伴うβカテニン/耽f転写活性の増 強が関与していることが示唆された。さらに,腫瘍でのβカテニン/取f転写活性の増強にはWnt antagonist遺伝子に属するDkklの発現低下が関与する可能性が示唆された。以上の結果は.βカテ ニン/Rr転写活性が,大腸発がんのイニシエーション期のみならずプロモーション期にも関与して いることを示唆するものと考えられる。 論文審査の結果の要旨 申請者 尾山 武は,ApcMin/'マウスの大腸において粘膜内微小病変から腫瘍への移行には,βカ テニン蛋白の蓄積を伴うβカテニン/恥f転写活性の増強が関与していることを報告した。本研究に より,大腸腫瘍形成プロモーション期においてもβカテニン/取f転写活性化が関わっていることが 示唆され,大腸における腫瘍形成メカニズムの基礎的研究に新しい知見を加えるものと認める。 [主論文公表誌] FurtherupregulationofP-Catenin/TcftranscriptionisinvoIvedinthedevelopmentofmacroscopictumorsin thecolonofApcMin/+mice・ Carcinogenesis(inpress).