347 接合体s♂o/+ではチャネル密度は正常型の半分とな る.またもしICFチャネルの同形サブユニットをコー ドしているとすれば,slo/+ではサブユニットの組み 合わぜによってモザイク型のチャネルが生じるはずで ある.したがって異型接合体を調べることによって sloがチャネル蛋白をコードしているか否かを確かめ ることができる.実際にsZo/+を用いて電圧固定法で 膜電流を測定したところ電流密度やkineticsは正常 型と変わらなかった.またパッチ・クランプ法を用い て単一チャネル電流を測定しても電流一電圧特性, kinetics, Ca感受性のいずれも正常型と区別できな かった.これらの結果は∫10遺伝子がICFチャネル蛋 白を直接コードしていると考えるよりはその調節系に 関与していることを示唆する. 3.心筋のイオン輸送とリズム形成 (循環器内科)萩原 誠久 心筋のリズム形成を司る主要な部位は洞結節である が,洞結節細胞における自発性興奮のメカニズムは未 だに明確にされていない.その原因の一つは,洞結節 細胞の自動能を司る拡張期脱分極相(ペースメーカー 電位)が,種々の複雑な膜電流系の関与により形成さ れているためである.今回は洞結節細胞のペースメー カー電位における膜電流,特にCa電流の役割につい て述べる. 最近,作業心筋には二種類のCa電流が存在するこ とが報告されている,すなわち,持続時間の長いlong lasting type:ICaLと,一過性のTransient type: ICaTである,これまで洞結節細胞のCa電流について は二者を分離した研究はなく,その生理的意義も明か
でなかった.我々は,whole−cell voltage clamp法を 用いて,ウサギ単一洞結節細胞より二種類のCa電流 を分離し,その生理的意義を検討した.実験結果より, 洞結節細胞における二種類のCa電流の中で,特に ICaTは,その活性化領域がペースメーカー電位の領 域と一致することなどから,ペースメーカー電位の形 成にICaTが重要な役割を果たしていることが解明さ れた. 4.培養滑膜細胞の興奮性とイオンチャネル (滋賀医科大学第2生理)村山 公一 全ての細胞に記録される膜電位およびその膜電位変 化は,細胞の膜輸送や細胞機能発現に重要な役割を 担っている,しかし従来は,技術上の問題もあり,細 胞膜の電気生理の研究(静止膜電位,興奮性,膜電位 固定下でのマクロおよび単一チャネル電流の記録・解 析)は,ある限られた細胞で行われてきた。しかし,
1976年Neher&Sakmannによってパッチクランプ
法が開発されて以来,従来大型細胞の独壇場であった 膜のイオン透過性の研究が,電気生理学的に手付かず であった小型の細胞においても可能となった. 慢性関節リウマチならびに多発性関節炎を生じる 種々の膠原病の関節病変は滑膜より生ずる.その滑膜 表層細胞は,分泌や貧食作用によって関節液の性状を 調節する重要な細胞であるが,従来この分野の研究は, 主に形態学的,生化学的ならびに免疫学的方法によっ てなされており,電気生理的特性に関する研究は皆無 であった,そこで我々は,慢性関節リウマチの基礎的 研究の一環として,パッチクランプ法を培養下(4∼5 日)におけるウシ中手八節間関節由来の滑膜表層細胞 に適用し,その興奮性およびイオンチャネルを検討し たところ,1)Fibroblast−like ce11(B細胞)では,静 止膜電位が深く,活動電位を発生し,静止時に開口す るKチャネルの密度が高く,脱分極で開口するKチャ ネルの密度が低く,一方,2)Macrophage−like ce11(A 細胞)では,静止電位が浅く,興奮性を示さず,静止 時に開口するKチャネルの密度が低く,脱分極で開口 するKチャネルの密度が高いという,形態に対応した 電気生理的特性の差異を認めた,この研究を発展させ るためには,細胞種の確定が必要である.そこで次に, 表層細胞をクローン化し,透過型および走査型電顕に よってB細胞とA細胞を同定し,同定されたクローン にパッチクランプを行った.培養1∼5ヵ月のクロー ンでは,A・B細胞は各々の主な特徴を維持しながら も,B細胞が興奮性を失うといったように,何故か, お互いに性質が似てくる傾向を示す.しかし,同一ク ローン内の全ての細胞は,同定された5種類のKチャ ネルの分布・密度に関し,同じ特徴を示す. 5.腎尿細管におけるイオン輸送異常の臨床 (第4内科)安藤 明利 腎疾患の臨床に際して種々の尿細管障害に基づいた 疾患に遭遇する.その多くは後天的に腎間質あるいは 髄質の障害を受けて生じたものであり,一般的に間質 性腎炎と呼称される範時に入る.その代表的疾患は腎 虚腎炎であり髄質の広範な機能障害が引き起こされ る.このようにいわぽ非選択的な腎間質,尿細管障害 に対して比較的選択的な尿細管障害の一典型例として 腎尿細管性アシドーシスがある.この疾患も決して単 一の機能障害からなるわけでなく,遠位尿細管細胞, あるいは近位尿細管細胞のイオン転送障害が多彩な形 一805一348 で表現される.近位尿細管障害に基づく場合は主とし てその部での炭酸水素イオンの再吸収障害によるもの であり,遠位尿細管障害に起因する場合は,水素イオ ン排泄障害が主因であるが,その機序は現在提唱され ているだけでも数種類にのぼる.そのうち低K血症を 呈する場合は,遠位尿細管での水素イオンポンプの障 害,ないしは管腔内に排泄された水素イオンあるいは, 炭酸の逆拡散の機序による尿酸性化障害であるが,高 K血症を伴う場合は主としてアルドステロンの分泌障 害ないしこのホルモンに対する腎尿細管細胞の反応性 の低下に起因し,尿中への水素イオンならびにカリウ ムの排泄低下が認められる.我々は臨床例において上 記の尿細管性アシドーシスの発症機序を数種の負荷試 験により検索した.そのうち基礎疾患ないし糸球体炉 過値との関連につき得られた若干の知見を発表する. 一方低K血症が代謝性アルカローシスを伴うことが 知られているが,2週間K欠乏食で飼育されたラット の尿酸性化能を酸の急性負荷前後につき対照と比較検 討した.その結果低K血症ラットにおいて腎重量の増 大,アンモニア生成の増加,腎循環の変化を認めた. この実験結果についても言及し考察を加える. 一806一