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平成 30 年度青臨技細胞診精度管理調査報告書 八戸市立市民病院臨床検査科病理 須藤安史 はじめに 今年度の青臨技細胞診精度管理調査では フォトサーベイを実施した 評価対象問題では 各施設において細胞診業務を行う上で 日常遭遇する基本的な細胞像を適確に判定するための一定の水準と精度が保たれていること

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平成 30 年度 青臨技 細胞診 精度管理調査 報告書

八戸市立市民病院 臨床検査科病理 須藤 安史 【はじめに】 今年度の青臨技細胞診精度管理調査では、フォトサーベイを実施した。評価対象問題では、各施設にお いて細胞診業務を行う上で、日常遭遇する基本的な細胞像を適確に判定するための一定の水準と精度が 保たれていることの確認を目的とし、全部で10 問出題した。教育症例では、非評価対象問題を 1 問出題し、 比較的発生頻度が低いものの、特徴的な細胞像により、鑑別疾患を推定する上で、有用であると思われる症 例を出題した。回答方式は「推定病変」5 項目、「わからない」1 項目を併せた 6 項目から選択する形式とした。 また、今回のサーベイの出題数、難易度等についてのアンケートも併せて実施した。 【参加施設数】 14 施設 【フォトサーベイの設問数】 ・評価対象問題 10 題 婦人科頸部1 問、婦人科体部 1 問、呼吸器 2 問、体腔液 1 問、泌尿器 1 問、 甲状腺1 問、乳腺 1 問、消化器 1 問、リンパ節 1 問 ・非評価対象問題(教育症例) 1 題 体腔液1 問 【評価の方法】 日臨技の臨床検査精度管理調査フォトサーベイ評価法に関する日臨技指針を参考とし、設問に対する回 答の評価を、評価A(○正解)、評価 D(×不正解)のみとし、各施設の正解率を算出した。また評価対象問題 として出題した設問で正解率 80%以上のものを評価対象とし、80%未満のものは非評価とした。なお、コメ ント欄に記載された内容に関しては評価に含めていない。 【評価対象問題の正解率】

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年齢・性別 70 歳代 女性

検体 子宮頸部(サーベックス) 直接塗抹法

臨床所見 子宮頸癌の疑い

写真 左上図Pap×20→右上図 Pap×40 左下図 Pap×20→右下図 Pap×40

選択肢 件数 % 1.NILM 2 14.3 2.L-SIL/CIN1 1 7.1 3.H-SIL/CIS 1 7.1 4.上皮内腺癌 2 14.3 5.腺癌 (○正解) 8 57.1 6.わからない 0 0 正解5.腺癌 乳頭状~柵状配列を示す核密度の高い大型集塊が出現している。まず集塊内にはエオジン好染の粘液 物質が観察されること、集塊辺縁には円柱状細胞もみられることより、腺系由来の細胞集塊と考えられる。細 胞個々の形態を観察すると、核の大小不同、核形不整、核クロマチン増量がみられ、核間距離も不均一であ り、悪性が疑われる像である。上皮内腺癌の場合は、高円柱状細胞が柵状、ロゼット状、羽毛状構造を示し 出現するが、本症例に比較すると核密度、細胞の重積性は軽度である。以上の細胞所見より腺癌が考えら れる像である。右下に示す本症例の子宮頸部手術材料のHE標本では、楕円形核を有する円柱状腫瘍細 胞が、癒合腺管を形成し出現している。頸部由来の高分化腺癌と する像であり、通常型内頸部腺癌と考えられる像である。 WHO分類(2014)において、子宮頸部の腺系浸潤性悪性病変 は、通常型内頸部腺癌、粘液性腺癌(胃型、腸型、印環細胞型)、 絨毛腺管癌、類内膜腺癌、明細胞腺癌、漿液性腺癌、中腎性腺 癌、神経内分泌癌を伴う腺癌がある。本症例で提示した通常型内 頸部腺癌はこれらの中で約90%を占め、他の組織型はいずれも 稀とされている。 子宮頸部HE 染色

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年齢・性別 50 歳代 女性

検体 子宮内膜(ソフトサイト) 生食処理法

臨床所見 子宮内膜の肥厚

写真 左上図Pap×20→右上図 Pap×40 左下図 Pap×20→右下図 Pap×40

選択肢 件数 % 1.分泌期子宮内膜 0 0 2.萎縮子宮内膜 0 0 3.子宮内膜増殖症 0 0 4.類内膜腺癌 (○正解) 14 100 5.子宮内膜間質肉腫 0 0 6.わからない 0 0 正解4.類内膜腺癌 左上、右上のスライドでは、血管間質を伴う大型重積性集塊が出現している。強拡大では、核形不整、核 クロマチン増量、核の大小不同がみられ、血管間質を軸に細胞が柵状配列を示している。細胞の核密度も 高く、集塊辺縁が核突出により不整であり、類内膜腺癌に出現する樹枝状集塊と考えられる像である。分泌 期子宮内膜、萎縮子宮内膜、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫とは、出現パターン、細胞異型ともに異 なるため否定できると考える。左下、右下のスライドでは、軽度核異型、N/Cが低く、一部細胞質にエオジン 好染の粘液物質を含有する細胞が軽度重積性を伴う大型集塊で認められている。こちらは細胞形態的に悪 性とする程の異型ではなく、子宮内膜の細胞質変化である粘液性変 化(化生)と考えられる。この所見は、類内膜腺癌のみならず、子宮内 膜増殖症などの良性病変の上皮にも出現するため、これらの変化を 過剰に判定しないよう日常業務では注意が必要である。 右に示す本症例の子宮体部手術材料のHE標本では、腫大した 不整形核を持つ異型細胞が癒合を伴う腺管構造を形成しながら増 殖しており、Grade 1相当の類内膜腺癌と診断された。 子宮体部HE 染色

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年齢・性別 80 歳代 女性 検体 気管支洗浄液 臨床所見 肺炎 写真 左図Pap×20→右図 Pap×40 選択肢 件数 % 1.気管支線毛円柱上皮細胞 0 0 2.肺結核症 0 0 3.ウイルス感染細胞 (○正解) 13 92.9 4.腺癌 1 7.1 5.大細胞神経内分泌癌 0 0 6.わからない 0 0 正解3.ウイルス感染細胞 炎症細胞を背景に、上皮様結合を示す細胞集塊が認められる。集塊を構成する細胞は類円形核、核縁肥 厚、すりガラス状の特徴的な核所見を示しており、一部には大型核小体様の核内封入体も観察される。これ らの所見はウイルス感染細胞を考える細胞像である。腺癌細胞との鑑別が最も必要と考えられるが、腺癌細 胞に比較すると本症例は核形不整が弱く、相互異型も乏しい像であり、強拡大にて細胞個々の核所見を詳 細に観察することで鑑別は可能と考える。 右下に示す本症例の肺TBLBの組織標本では、扁平上皮化生を認める粘膜とともに、壊死物質、肉芽組 織が認められる。化生上皮の一部は、明瞭な大型核小体様の構造を有している。免疫染色では、単純ヘル ペスウイルスが散在性に壊死周囲の組織に陽性像を示しており、感染が考えられる組織像であった。 肺のヘルペスウイルス感染は比較的まれではあるが、核および細胞質の大型化、多核化、すりガラス様の 核所見(オパーク状)、核内封入体などが細胞像の特徴とされている。 肺TBLB HE 染色 HSV 免疫染色

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年齢・性別 70 歳代 男性 検体 気管支洗浄液 臨床所見 肺野異常陰影 写真 左図Pap×20→右図 Pap×40 選択肢 件数 % 1.気管支喘息 1 7.1 2.過誤腫 0 0 3.硬化性血管腫 0 0 4.腺癌 (○正解) 13 92.9 5.小細胞癌 0 0 6.わからない 0 0 正解4.腺癌 好中球、組織球を背景に、やや小型の細胞を主体とする細胞集塊が認められる。集塊を形成する細胞の 核所見は核形不整、小型核小体がみられ偏在傾向を示している。一部には集塊辺縁に粘液物質を含有す る細胞も認められる。これらの所見より、出現しているのは腺系の異型細胞集塊であり、核異型は全体として 軽度ながらも相互異型は明らかであるため、粘液産生性の腺癌を第一に考える像である。気管支喘息でも 核密度の高い線毛円柱上皮の集塊が出現するが、本症例では明らかな線毛を有さないため、鑑別可能と考 える。 右下に示す本症例の肺TBLBの組織標本では、異型の目立つ粘液産生性の上皮が肺胞置換性、腺房状、 乳頭状に認められた。所見から浸潤性粘液性腺癌と診断された。 浸潤性粘液性腺癌は、発生頻度は肺腺癌の5~10%程度との報告があり、喫煙による影響や男女差に ついては明らかになっていない。K-RAS遺伝子経変異が高頻度に認められ、通常の肺腺癌に陽性と なるTTF-1やNapsinAは陰性となることが多いとされる。 細胞像では、平面状~重積性のある集塊で出現し、極性は比較的保たれており、亀甲状や蜂巣状を 示すとされる。高円柱状の細胞、明瞭な細胞境界、細胞質内の粘液、核の切れ込みないし「しわ」が 認められるが、小型の細胞が小集塊で出現する傾向があるため、スクリーニング時には、誤陰性に注 意が必要である。 肺TBLB HE 染色

(6)

5

年齢・性別 80 歳代 女性 検体 腹水

臨床所見 腹水貯留

写真 左上図Pap×20→右上図 Pap×40 左下図 PAS×20→右下図 PAS×40

選択肢 件数 % 1.反応性中皮細胞 4 28.6 2.組織球 0 0 3.腺癌 (○正解) 10 71.4 4.扁平上皮癌 0 0 5.悪性中皮腫 0 0 6.わからない 0 0 正解3.腺癌 軽度重積性を示す小型細胞の集塊が認められる。集塊を形成する細胞の所見は、類円形~不整形核、 小型核小体がみられ、集塊辺縁の一部には細胞境界は不明瞭ながらも柵状配列を考える像も観察される。 PAS染色では、集塊辺縁側の細胞質内に滴状の陽性所見が認められており、粘液物質を含有する所見と 考えられる。以上の所見から、出現しているのは粘液物質を含有する小型腺系異型細胞と推測され、腺癌を 第一に考える像である。本症例は臨床所見上から肝胆膵由来の腺癌と考えられた。鑑別疾患では、反応性 中皮細胞が挙げられるが、本症例では核異型がみられること、柵状配列を示すこと、PAS染色の細胞質の陽 性像が顆粒状ではないことより鑑別は可能と考える。しかしながら、実際のスクリーニングでは、小型細胞から なる小集塊で出現した場合、弱拡大のみでの観察では、反応性中皮細胞との鑑別は難しいと思われる。そ のため、PAS染色を積極的に併用することにより、粘液物質を含有する小型の腺癌細胞の検出が容易にな ると考える。

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年齢・性別 80 歳代 男性

検体 自然尿 LBC(SurePath 法) 臨床所見 膀胱癌の疑い

写真 左上図Pap×20→右上図 Pap×40 左下図 Pap×20→右下図 Pap×40

選択肢 件数 % 1.正常尿路上皮細胞 0 0 2.ウイルス感染細胞 0 0 3.低異型度尿路上皮癌 0 0 4.高異型度尿路上皮癌 (○正解) 14 100 5.扁平上皮癌 0 0 6.わからない 0 0 正解4.高異型度尿路上皮癌 核密度の高い上皮細胞集塊が認められる。この集塊を形成する細胞は、N/Cが高く、核の大小不同、核形 不整、核クロマチン増量、一部には細胞質内小腺腔(ICL)の像も観察される。多核の異型細胞も認められる。 これらの細胞所見より悪性が疑われる像であり、高異型度尿路上皮癌が考えられる。異型が高度であること より、選択肢の中では扁平上皮癌との鑑別が必要となるが、尿路系に発生する扁平上皮癌の場合、高分化 な場合が多く、核中心性の核、比較的豊富な細胞質は角化したオレンジGやライトグリーンに均質に染色さ れ、かつ光沢を有するとされるため、本症例とは異なる像と考える。 右下に示す本症例の膀胱生検HE標本では、核クロマチン増 加、極性の乱れを伴う尿路上皮細胞が乳頭状の構造を形成して おり、papillary urothelial carcinoma, high grade (G2)と診断 された。 細胞質内小腺腔(ICL)は、乳癌における重要な細胞学的指標 である。一方の尿細胞診検体においては、内腔に分泌物を認め るA型ICLは、非腫瘍性病変症例より尿路上皮癌に有意に多く出 現し、更に低異型度尿路上皮癌より高異型度尿路上皮癌に出現 率が高いとの報告がある。 膀胱生検HE 染色

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年齢・性別 50 歳代 男性

検体 甲状腺穿刺吸引 LBC(SurePath 法) 臨床所見 甲状腺腫瘍

写真 左上図Pap×40 右上図 Pap×40 左下図 Pap×20→右下図 Pap×40

選択肢 件数 % 1.嚢胞液 1 7.1 2.慢性甲状腺炎 0 0 3.乳頭癌 (○正解) 13 92.9 4.髄様癌 0 0 5.未分化癌 0 0 6.わからない 0 0 正解3.乳頭癌 好中球、リンパ球、foam cellを背景に、細胞質に空胞を有する細胞が乳頭状集塊で認められる。核は類 円形が主体で軽度の大小不同を示し、核小体やや明瞭、核偏在傾向がみられる。一部には、核内細胞質封 入体を考える像も観察される。これらの所見より、cyst病変とする像であるが、良性病変であるならば、上皮 細胞は異型を伴わない濾胞上皮細胞、好酸性細胞が出現するため、本症例の像とは異なる。そのため、嚢 胞液中に剥離した乳頭癌細胞が第一に考えられる。 右に示す本症例の甲状腺手術材料のHE標本では、乳頭癌 が主として囊胞腔内に増生して認められ、乳頭癌と診断された。 嚢胞液中に剥離した乳頭癌細胞は、細胞診上では、変性の ために空胞を伴う像として観察される。また隔壁性細胞質内空 胞と呼ばれる小空胞の集蔟も出現するとされるが、本症例では 明らかではなかった。嚢胞内に乳頭癌が発生するのは、乳頭癌 のうち約 5%と比較的稀ではあるが、上記の細胞学的特徴を踏 まえ、見落とさないよう注意が必要である。 甲状腺手術材料 HE 染色

(9)

年齢・性別 50 歳代 女性

検体 乳腺穿刺吸引

臨床所見 左乳腺腫瘍

写真 左上図Pap×20→右上図 Pap×40 左下図 Pap×20→右下図 Pap×40

選択肢 件数 % 1.葉状腫瘍 0 0 2.乳管腺腫 0 0 3.腺筋上皮腫 0 0 4.浸潤性乳管癌 腺管形成型 0 0 5.浸潤性乳管癌 硬性型 (○正解) 14 100 6.わからない 0 0 正解5.浸潤性乳管癌 硬性型 N/C高い細胞が、索状配列、集塊辺縁が楔状配列を示す集塊で出現している。細胞の核は圧排傾向があ り、強拡大では、核形不整、核クロマチン増量、小型核小体、細胞質内小腺腔(ICL)も観察される。以上の所 見より、浸潤性乳管癌、typeは硬性型を考える。 右下に示す本症例の乳腺手術材料のHE標本では、核が腫大した異型細胞が索状に増生してみられる。 免疫染色ではE-cadherin, p120 cateninはいずれも細胞膜への染色性を示しており、浸潤性乳管癌、硬 性型と診断された。 2018 年 5 月に発刊された乳癌取扱い規約第 18 版では、浸 潤性乳管癌の亜分類が、浸潤癌胞巣の形態に基づいて、腺管 形成型、充実型、硬性型、その他の 4 型に分類されている。 そのため、ルーチンの現場においても細胞診の診断名をこ れに準じて報告することが望ましいと考える。 乳腺手術材料 HE 染色

(10)

年齢・性別 80 歳代 女性 検体 胆管擦過 LBC(SurePath 法) 臨床所見 胆管癌疑い 写真 左図Pap×40→右図 Pap×100 選択肢 件数 % 1.正常胆管上皮細胞 0 0 2.再生上皮細胞 2 14.3 3.腺癌 0 0 4.扁平上皮癌 (○正解) 12 85.7 5.神経内分泌癌 0 0 6.わからない 0 0 正解4.扁平上皮癌 ライトグリーンの胞体を有する重積性細胞集塊と、その周囲にオレンジG好染の細胞が観察される。集塊を 形成する細胞は核形不整、核縁肥厚、核小体明瞭で胞体に厚みがある。オレンジG好染の細胞は核異型が みられ細胞質の形状が多彩であり、全体にbizarreな像である。以上の所見より、悪性とする像であり、角化 型の扁平上皮癌を考える。選択肢の中で鑑別に挙がるのは、集塊を形成する細胞の核小体が明瞭なことよ り、再生上皮細胞だが、再生上皮細胞とするには重積性が強く、核間距離が不均一、相互異型がみられるこ とより、否定できると考える。 右下に示す本症例の胆管擦過材料のセルブロックHE標本では、核が腫大した多辺形細胞が観察され、 細胞間橋を伴っており、扁平上皮癌と診断された。 胆嚢癌や肝内および肝外の胆管癌の多くは腺癌であり、稀にその一部に扁平上皮癌の成分を有する腺扁 平上皮癌がみられることがあるが、胆道系の扁平上皮癌は極めて稀な疾患である。そのためルーチン業務 で遭遇する機会は低いが、他臓器に発生する扁平上皮癌の細胞像の捉え方を把握しておけば、充分に細 胞診断は可能と考える。 胆管擦過セルブロック HE 染色

(11)

年齢・性別 80 歳代 女性

検体 リンパ節捺印

臨床所見 左腋窩腫瘤

写真 左上図Pap×40→右上図 Pap×100 左下図 Giemsa×40→右下図 Giemsa×100

選択肢 件数 % 1.壊死性リンパ節炎 1 7.1 2.サルコイドーシス 0 0 3.非ホジキンリンパ腫 (○正解) 12 85.7 4.ホジキンリンパ腫 0 0 5.癌の転移 1 7.1 6.わからない 0 0 正解3.非ホジキンリンパ腫 変性物質を背景に、N/C高い裸核状細胞が散在性に多数認められる。これらの細胞は、大小不同、核形 不整、一部核小体明瞭な像が認められる。Giemsa染色では、細胞質は好塩基性で、形質細胞様の像も部 分的に見られる。以上の所見より異型を伴う中型リンパ球のモノトーナスな増生と考えられ、非ホジキンリンパ 腫を考える。選択肢の壊死性リンパ節炎は、小型ないし大型のリンパ球の他に、赤血球や細胞の破砕物を 貪食した組織球(tingible body macrophage)が出現するとされるが、本症例では明らかではない。癌の転 移では、N/Cが高いことより、小細胞癌が鑑別に挙がるが、木目 込み細工状配列などの結合性が明らかではないため否定できる と考える。 右に示す本症例の左頚部リンパ節の組織標本では、既存のリ ンパ節構築は消失しており、核小体を1~数個有する異型を示す リンパ球様細胞がびまん性に増生してみられた。各種免疫染色 を行った結果、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された。 左頚部リンパ節 HE 染色

(12)

年齢・性別 70 歳代 男性

検体 胸水

臨床所見 胸水貯留

写真 左上図Pap×40 右上図 Pap×100 左下図 PAS×40→右下図 PAS×100

選択肢 件数 % 1.反応性中皮細胞 1 7.1 2.組織球 0 0 3.腺癌 4 28.6 4.扁平上皮癌 0 0 5.悪性中皮腫 (○正解) 9 64.3 6.わからない 0 0 正解5.悪性中皮腫 球状の集塊が観察される。細胞は濾胞構造様に配列し、集塊内にはライトグリーンで半透明状に染まる球 状物質がみられる。このような特徴的な細胞配列を示す疾患としては、球状集塊の中心部にcollagenous stromaを有する反応性中皮、悪性中皮腫、卵巣明細胞腺癌等が挙げられる。次に個々の細胞の核所見は 類円形が主体ながらも核形不整を伴い、核クロマチン増量、相互異型もみられる。PAS染色では、細胞質内 に滴状に陽性所見が認められる。これらの所見より悪性中皮腫を第一に考える。 右に示す本症例の胸水セルブロックHE標本では、多数の異 型細胞が胞巣状に認められた。胞巣内部は漿液様の物質ないし は硝子化した間質様であった。各種免疫染色を行った結果、こ れらの異型細胞は中皮の形質を示していることが明らかとなり、 上皮型悪性中皮腫と診断された。 PAS 染色では、細胞質内に滴状の陽性像が観察されたが、悪 性中皮腫では多くみられる所見とされている。これはジアスター ゼ処理で消失することから、グリコーゲンと考えられている。 胸水セルブロック HE 染色

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評価対象問題として出題した設問のうち正解率が80%未満の設問 1 と設問 5 は非評価とし、それ以外の 8 問で各施設の正解率を算出した。 施設 正解率(評価 A の割合) 05 100% 33 75% 92 100% 01 100% 79 100% 43 87.5% 54 100% 91 100% 26 100% 34 87.5% 89 100% 32 75% 66 100% 90 87.5% 【アンケート回答結果】 サーベイ参加14 施設のうち 11 施設よりアンケートの回答を頂いた。アンケート各設問への回答結果を下 記に示す。 1) 評価対象問題の設問数はどうでしたか? ・適当:10 施設 ・やや少ない:1 施設 2) 日臨技サーベイと比較し、評価対象問題の難易度はどうでしたか? ・同程度:5 施設 ・やや高い:5 施設 ・高い:1 施設 3) 次回の評価対象問題の難易度は、今回と比較しどの程度が望ましいと思いますか? ・同程度:7 施設 ・今回よりやや低くする:4 施設 4) 日臨技サーベイと比較し、教育症例の難易度はどうでしたか? ・同程度:10 施設 ・高い:1 施設 5) 教育症例で取り上げて欲しいのはどのような症例でしょうか?(複数回答可) ・比較的身近な症例だが、何らかの細胞像の捉え方を再認識できるような症例:10 施設 ・普段経験することが出来ないような稀少症例:5 施設 ・新たな採取部位または採取法により標本作製がなされた症例:3 施設 ・その他(規約変更などで分類が変わり話題になっている症例):1 施設 6) その他の意見 ・核も胞体も濃い。LBC 処理による影響か? ・重積する細胞が多く、細胞が見にくい。 ・写真の枚数を多くしてもらいたい。

(14)

今回のフォトサーベイでは、日臨技の臨床検査精度管理調査フォトサーベイ評価法に関する日臨技指針 を参考とし、出題形式、難易度、評価方法をそれに準じて行った。評価対象問題の出題は10 題とし、いずれ の設問に対しても正解率 80%以上を想定していたが、設問 1(57.1%)と設問 5(71.4%)は正解率がそれに 達しなかった。その要因としては、設問1 の場合は、選択肢の中で各施設の回答が分散していることから、出 題者側の出題意図がうまく伝わらなかったことが第一と考えられる。重積性を伴う集塊の低倍率、高倍率の 画像を使用したが、散在性または平面状細胞集塊の画像とは異なり、撮影条件が芳しくなかったことにより、 観察が難しかったことが予想された。このことはアンケートにおいて、「重積する細胞が多く、細胞が見にく い。」、「写真の枚数を多くしてもらいたい。」との意見があったことからも憶測される。次回このような観察が難 しいような症例を取り上げる場合には、より多くの視野で低倍率、高倍率では焦点を微妙に変えながら可能 な限り画像の枚数を増やし出題したい。設問 5 については、各施設の回答は正解の腺癌(71.4%)、反応性 中皮細胞(28.6%)に二分された。この設問に関しても、出題者側の画像の撮影条件が芳しくなかった可能性 もある。そのため、反応性中皮細胞を選択した各施設が今回の使用した画像から所見を読み取るのが困難 だったのか、あるいは単純に細胞像から鑑別が出来なかったのか、についての詳細は今回の結果からは明 らかではなかったため、次回のフォトサーベイでもこれに準じるような設問を出題してみたい。 それ以外の評価対象問題 8 問はいずれも正解率が高く、基本的な細胞像の捉え方が出来ていると思わ れた。設問2 では、類内膜腺癌の特徴でもある樹枝状集塊の他に粘液性変化(化生)の画像も併せて出題し たが、それに惑わされることなく各施設が回答し、正解率が100%であった。設問 3 ではウイルス感染細胞の 特徴的な核所見、設問4 では異型の弱い粘液物質を含有した腺癌細胞、設問 7 では嚢胞内乳頭癌の細胞 質内空胞像の各所見の読み取りが出来ており、日頃から各施設において細胞診の研鑽を積んでいる結果と 思われた。 アンケート調査結果では、評価対象問題の出題数は今回の10 問が適当であると回答した施設が多かった。 評価対象問題の難易度は日臨技臨床検査精度管理調査と同レベルのものを想定して出題したが、実際に は「やや高い」、次回の難易度も「今回よりやや低くする」を選択した施設も多かった。教育症例で取り上げる 症例については、「比較的身近な症例だが、何らかの細胞像の捉え方を再認識できるような症例」、「普段経 験することが出来ないような稀少症例」、の回答が多く、他に「規約変更などで分類が変わり話題になってい る症例」との貴重なご意見も頂いた。 今回の精度管理調査及びアンケート結果、意見を参考に、来年度のフォトサーベイの画像を含めた出題 形式について再考してみようと思う。ご協力ありがとうございました。 問い合わせ先 須藤 安史 〒031-8555 八戸市田向三丁目 1 番 1 号 八戸市立市民病院 臨床検査科 Tel:0178-72-5111(内線 2440) FAX:0178-72-5245 E-mail: byori8nohe@hospital.hachinohe.aomori.jp

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