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Fe-Mn-Si-Nb 系合金中における脱酸生成物の熱処理による組成および形態の変化

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Academic year: 2021

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(1)

Fe-Mn-Si-Nb

系合金中における脱酸生成物の

熱処理による組成および形態の変化

原田晃史

*1

,柴田浩幸

*2

,北村信也

*2

Change in Chemical Composition and Morphology of De-oxidation

Products in Fe-Mn-Si-Nb Alloy by Heat Treatment

By Akifumi Harada

Hiroyuki Shibata and Shin-ya Kitamura

Four kinds of Fe-Mn-Si-Nb alloy with different Si content were manufactured at 1873 K under argon atmosphere. Spherical deoxidation products with about 1µm diameter formed in the alloys as non-metallic inclusions. Then, the obtained alloys were heated at 1473 K to investigate stability of oxide inclusions. After the heat treatment, morphology of the inclusions was changed from spherical to faceted shape. Size of the inclusions was not changed for the all alloys. On the other hand, in the case of Fe-0.95 mass% Mn-0.03 mass% Si-0.71 mass% Nb alloy, MnO and SiO2content in the inclusions decreased and Nb2O5content increased after heat treatment. The change in

the chemical compositions of the inclusions in the investigated alloys by heat treatment has a relation with the concentration of Si in the alloys.

(Received on February 15th,2011)

Keywords: oxide, inclusion, heat treatment, deoxidation products, Fe-Mn-Si-Nb alloy

1

緒言

金属材料において結晶粒径は冷間加工性や強度など材料の特性に大きな影響を与える因子である. 一般に鋼の結晶粒径は加工熱処理時の相変態や再結晶およびその後の結晶粒の成長挙動を制御するこ とで調整されている.結晶粒の微細化には炭化物や窒化物をマトリックス中に分散させて,結晶粒界 の移動を抑制する粒界ピン止め効果が利用されている.しかしオーステナイト系ステンレス鋼に代表 される高合金鋼は炭素鋼に比べ炭素含有量が低く,しかも加工性や耐食性に悪影響を与えないように 高温での溶体化処理により炭窒化物を完全に固溶させるため,結晶粒径の調整に炭窒化物は利用でき ない.そこで溶体化温度域でも熱力学的に安定で,かつ材質に悪影響を与えないような酸化物等の微 細な鋼中介在物を利用した組織制御が期待される.溶体化温度域でも固溶しない酸化物を分散させて 組織制御する手段として,製鋼段階で生成する脱酸生成物の利用が考えられる.しかし,熱処理で析 出させる炭窒化物に比べると,凝固時に晶出した酸化物は粗大で,かつ存在密度が疎であるため組織 制御への利用には限界がある.高野ら[1]はSi-Mn脱酸したオーステナイト系ステンレス鋼について,

as-cast材中に存在するマンガンシリケート(以下MnO・SiO2)がその後の加工・熱処理により分解

し,粒界ピン止め効果の高い微細なマンガンクロマイト(以下MnO・Cr2O3)が再析出することによ り結晶粒が微細化することを報告した.これは脱酸生成物を利用して組織制御に有効な微細酸化物を 再析出させる新たな可能性を示したものである.また,高村と溝口[2, 3]は鋼中酸化物の組成・分布等 を制御し析出物の核として利用することで,材質を向上させようとする酸化物制御技術(オキサイド メタラジーと称す)を提案している.最近,田中[4],木村[5],Shibataら[6]は18Cr-8Niステンレ ス鋼あるいはFe-Cr合金をSi,Mn脱酸した試料において,as cast材および1473Kでの熱処理後の 試料中の介在物の組成を調査し,Si濃度が低く,Cr濃度がある程度高い場合には,as cast材中に存 在するMnO・SiO2系酸化物が熱処理後にはMnO・Cr2O3系酸化物に変化することを報告している.

1873Kでステンレス鋼中のSi,Mn濃度によっては安定に存在するMnO・SiO2は温度低下とともに

*1東北大学大学院工学研究科 *2東北大学多元物質科学研究所

(2)

不安定になり,1473KではMnO・Cr2O3に変化する可能性があるといえる.そこで,これまで検討

されてきた鋼種以外への展開を目的とし,他の成分系でも介在物の変化が発現するかどうかを調べた.

Si,Mn,Crに近い,酸素との親和力を示す元素としてはNb,Vが考えられる.そこで,本実験では,

Nb,Si,Mnを脱酸剤として用いたときの脱酸生成物を調査した.

Fig.1 Oxide morphology and mean com-position (mol%) of the inclusion in sample (i) as cast and after heat treatment.

Fig.2 Oxide morphology and mean com-position (mol%) of the inclusion in sample (ii) as cast. And after heat treatment.

2

実験方法

所定量のSi,Mn,Nb(ニラコ,99.9%)と電解鉄の 合計約100gをアーク溶解炉にて予備溶融したものを 約30gに切り出し,高純度アルミナタンマン管(内径 20mm・外径25mm×高さ125mm,*試料の量に応じ て適宜高さを調節して使用した)に装入した.それを 室温で炉内にセットし,Arガスで1時間程雰囲気置換 した後,1873Kまで昇温した.1873 Kに達した時点 から15min溶解し,その後素早く試料を取り出して水 中で急冷した.こうして以下の4試料を得た.その組 成を以下に示す. (i) Fe-1.61mass%Mn-0.37mass%Nb (ii) Fe-0.95mass%Mn-0.03mass%Si-0.71mass%Nb (iii) Fe-0.71mass%Mn-0.19mass%Si-0.25mass%Nb (iv) Fe-0.75mass%Mn-1.68mass%Si-0.65mass%Nb 試料をさらに7mm×10 mm×3mm程度に切り出し た後,大気中で1473Kの電気炉に挿入し,60min保持 した後水中で急冷する熱処理を行った. as cast材および熱処理後の試料は断面を鏡面に仕上 げた後観察に供した.そして1つの試料につき5個以 上の介在物をFE-SEM(HITACHI,S4800)によって 観察し,組成をEDSによって分析した.

3

実験結果

3.1

Mn-Si-Nb

脱酸鋼における熱処理時間と

介在物組成の関係

試料(i)∼(iv)のas cast材および1473Kで60min

熱処理を行った試料中で観察された介在物のSEM画 像およびEDS分析の結果をFig.1∼Fig.4に示す.ま た,介在物のサイズが小さく分析にメタルの影響を無

視できないため,Fe濃度と地鉄組成比で分析値のNb,Si,Mnの濃度を補正して地鉄の影響を排除し た.またNbについてはNbO,NbO2,Nb2O5の酸化物を形成する可能性があるが,すべてNb2O5

(3)

3.1.1 試料(i) Fe-1.61 mass% Mn-0.37 mass% Nb

as cast材では球状で直径約0.5µm1µmの介在物がFig.1のI,IIのように観察された.この介在 物は分析よりMnOとNb2O5の比がほぼ1:1のMnO・Nb2O5系酸化物であることが分かる.1473K

で60minの熱処理を行った試料からは直径約0.5µm1.2µmで球状の介在物IIIと角形の介在物IV

が観察された.それらの介在物の組成はNb2O5の濃度が37mol%∼52mol%のMnO・Nb2O5系酸

化物であった.以上より,介在物の組成変化は起こっていないが,一部の介在物でその形態が球形か ら角形へと変化したことが分かった.

3.1.2 試料(ii) Fe-0.95mass% Mn-0.03mass% Si-071mass% Nb

介在物のSEM像をFig.2に示す.as cast材では球状で直径0.7µm前後の介在物I,IIが観察さ れた.これらの介在物はSiO2を4mol%前後含むMnO・Nb2O5 系酸化物であることが分かった.

Fig.2のSEM写真から,介在物の周囲に別の相が存在しているように見える.しかし,これも領域 が小さく分析機器の分解能では組成分析が困難であった.1473Kで60min.の熱処理を行った試料か らは直径約1.0µm前後の角形介在物III∼Vが観察された.これらの介在物の組成はMnO濃度が

28mol%程度,Nb2O5濃度が70mol%程度のMnO・Nb2O5系酸化物であった.また,Fig.2III∼V

では介在物の周辺に薄く他の相が見られるが,その部分の組成はMnO濃度が約10mol%,Nb2O5濃

度が約90mol%の相であることが分かった.以上より,熱処理前後で介在物はMnO・Nb2O5系酸化

物であったが,熱処理によってMnO濃度とSiO2濃度が減少し,Nb2O5濃度は増加しており,形状

は球形から角形に変化している様子が観察された.

Fig.3 Oxide morphology and mean compo-sition (mol%) of the inclusion in sample (iii) after heat treatment.

Fig.4 Oxide morphology and mean composition (mol%) of the inclusion in sample (ii) as cast and after heat treatment.

(4)

3.1.3 試料(iii) Fe-0.71mass% Mn-0.19mass% Si-0.25mass% Nb

介在物のSEM像をFig.3に示す.as cast材では球状で直径が約0.2∼0.8µmの介在物I,IIが 観察され,これらの介在物は,MnO濃度が約65mol%,SiO2濃度が約22mol%,Nb2O5濃度が約

13mol%のMnO-SiO2-Nb2O5系複合型介在物であった.I,IIで見られるように,外周に明るく見

える相があり,Nb2O5 濃度がやや高かった.1473Kで60minの熱処理を行った試料では直径が約

0.5µm前後の角形介在物III,IVが多く見られ,直径約3.5µm程の粗大なものも見られた.これらの 熱処理後試料中の介在物組成はMnO濃度が約65mol%,SiO2濃度が約25mol%,Nb2O5濃度が約

10mol%のMnO-SiO2-Nb2O5系介在物であった.以上より,試料(i)と同様に介在物組成の変化は

あまり見られなかったが,熱処理により球形の介在物が角形に変化した.

3.1.4 試料(iv) Fe-0.75mass% Mn-1.68mass% Si-0.65mass% Nb

as cast材では球状で直径約0.3µm1µmの介在物がFig.4のI,IIのように観察された.これら の介在物はSiO2の濃度が39 mol%∼46mol%のMnO・SiO2系酸化物であることが分かったFig.4

では介在物の周囲に別の相が析出しているように見える.この微小領域の組成分析は使用した分析機 器の分解能では不可能であったため、その組成は不明である.1473Kで60minの熱処理を行った試料 からは直径約0.5µm1.5µmで角型の介在物IIIと球状の介在物IVが観察された.それらの介在物 はSiO2の濃度が42mol%∼48mol%のMnO・SiO2系酸化物であった.以上より、試料(i),(iii)と

同様に介在物の組成変化は起こっていないが,一部の介在物でその形態が球形から角形へと変化した ことが分かった.

4

考察

試料(i)のFe-Mn-Nb合金からはMnO・Nb2O5系酸化物が観察され,試料(iv)のFe-Mn-Si-Nb

合金からはMnO・SiO2系酸化物が観察されたことから,試料(iv)のSi濃度を下げていくことで

MnO・SiO2系酸化物が不安定となりMnO・Nb2O5系酸化物が出現する可能性があると考えられる.

Si濃度が0.03mass%と低い試料(ii)では,as cast材では介在物のNb2O5濃度は50mol%程度であ

るが,熱処理後では70mol%程度に増加しており,SiO2濃度は逆に微量ながら減少している.形状 はas cast材では球形が多く見られたのに対し,1473Kで60minの熱処理後は角形の介在物が多く見 られ,このため熱処理中に介在物と固体鉄が反応したことでNb2O5濃度が増加したと考えられる.Si 濃度を0.03mass%よりわずかに高く,Nb濃度を1.0mass%程度の高い水準に保った試料ならば,凝 固ままでSiO2濃度の高い介在物が生成し熱処理でNb2O5濃度の高い介在物へ組成変化する可能性は ある. 一方,形状についてはas cast材ではガラス状であったものが熱処理により結晶化したと考えら れる.

5

結言

Fe-Mn-Si-Nb合金において,Si濃度が0.03%程度の場合には,1473Kの熱処理により介在物の組 成と形態が変化する場合があることが明らかとなった.合金中のSi濃度が,1473 Kでの脱酸素生成 物の安定性に大きな影響を与えているとことが分かった.

(5)

文 献

[1] 高野光司,中尾隆二,福本成雄,土山聡宏,高木節雄: 鉄と鋼, 89 (2003), 616. [2] 高村仁一,溝口庄三: 材料とプロセス, 3 (1990), 276. [3] 溝口庄三,高村仁一: 材料とプロセス, 3 (1990), 277. [4] 田中智子: 平成18年度 東北大学修士学位論文 [5] 木村光一郎:平成20年度 東北大学修士学位論文

[6] H.Shibata, T.Tanaka, K.Kimura and S.-Y. Kitamura: Ironmaking and Steelmaking, 37 (2010), 522.

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