先 天 性 赤 芽 球 癆 ( J o s e p h s - B l a c k f a n - D i a m o n d t y p e ) の た め ,
副腎皮質 ホル モン剤 を長期服用 してい る免疫不 全症候群 の一例
小 笠 原 正 笠 原 浩 渡 辺 達 夫
伊
沢
正
彦
高
木
伸
治
広
瀬
伊佐夫
要 旨 : 先 天 性 赤 芽 球 癆 ( J o s e p h s - B l a c k f a n - D i a m o n d t y p e ) と 免 疫 不 全 症 候 群 と を 合 併 し た き わ め て 稀 な 症 例 に 対 し て , 齲 蝕 治 療 と そ の 後 の 歯 科 的 健 康 管 理 を 行 っ た 。 初 診 時 は8歳 で,生 後3ヵ 月以 降,現 在 まで 切 れ 目な く副 腎 皮 質 ホ ル モ ン剤 を 服 用 して お り,精 神発 達 遅 滞 と著 しい発 育 障 害 が認 め られ た。 1(ll.液血 液 検 査 で は , 血 色 素 量 1 3 . 6 g / d l , ヘ マ ト ク リ ッ ト 4 1 % で , 貧 血 状 態 は 改 善 さ れ て い た が , 免 疫 グ ロ ブ リ ン は 全 ク ラ ス と も 測 定 可 能 量 を 認 め な か っ た 。 O K T 3 は 9 0 % , O K T 4 は35.4%,OKT8は52.2%で,cytotoxic/suppressor T cellが優位であった。 初 診 時 の 主 訴 は , 下 顎 右 側 第 一 大 臼 歯 の 感 染 に 起 因 す る 自 発 痛 で , 他 に も 治 療 を 要 す る 齲 蝕 が 6 歯 あ っ た 。 口 腔 清 掃 状 態 は 不 良 で あ っ た が , 歯 肉 お よ び 口 腔 粘 膜 に は 著 し い 病 変 は 認 め ら れ な か っ た 。 精 神 発 達 遅 滞 に よ る 不 協 力 が 著 し か っ た の で , 全 身 麻 酔 下 に て 齲 蝕 治 療 を 行 った。 そ の後 は,リ コール ・システ ム に よ り歯 科 的 健 康管 理 を行 い,良 好 な経 過 をみ て い る。 1年5ヵ 月 後(9歳10ヵ 月)の 側 貌頭 部X線 規 格 写 真 で は,上 下 顎 前 歯 の歯 軸傾 斜 に関 しては,異常が認められなかったが,骨格的には上下顎の劣成長が認められた。手および 手根骨X線写真では,骨成熟度の著しい遅れを認めた。1年8ヵ月後(10歳1ヵ月)に行 った模型分析の結果,上下顎とも歯列弓幅径は小さい値を示していた。上下顎の劣成長と 骨成 熟 度 の遅 延 に は,副 腎 皮 質 ホ ルモ ン剤 の副 作用 も関 与 してい る もの と考 え られ た。 Key words:先天性赤芽球癆,免疫不全症候群,副腎皮質ホルモン剤,歯科治療 緒 言 免 疫 不 全症 候 群 とは,な ん らか の原 因 に よ り免 疫 機能 が 低 下 す るた め に,感 染 が 反復 ・遷 延 す る病 的状 態 で, 原 因 が 多 彩 な の で症 候 群 と して ま とめ られ て い る。 ア メ リカのBruton1)が,先 天 性 無 γ一グ ロブ リン血 症 の 男 児 を報 告 した のが1952年 で,以 来35年 を経 過 して い る。 しか しな が ら,歯 科 領域 に おけ る報 告 例 は きわ め て少 な く,特 に わ が 国 では,著 者 らが 検 索 した範 囲 で は 1例2)の み であ った。 著 者 ら は,生 後2ヵ 月 時 に 先 天 性 赤 芽 球 携(cOllsti-tutionalerythroidhypoplasia,Josephs-Blackfa籍 一Dia-mo嶽dtype:以 下CEHと 略 す)と 診 断 さ れ,現 在 ま で 切 れ 目 な く副 腎 皮 質 ホ ル モ ン 剤 を 投 与 さ れ て い る 免 疫 不 全 症 候 群 の 女 児 に 対 し て,翻 蝕 治 療 な らび に そ の 後 の 歯 科 的 健 康 管 理 を 経 験 し た の で,若 干 の 考 察 を 加 え て 報 告 す る。 症 例患児:-8歳
女児
初 診:昭 和60年1月9日 主 訴:下 顎 右 側 臼歯 部 自発 痛 家 族歴:両 親 は と もに健 康 で,現 在 まで 特 記 すべ き疾 患 はな い。 同胞 は 兄2人 健 康 で,患 児 は 第3子 。 問診 の 範 囲で は家 系 内に 患児 と同様 の症 状 また は 奇 形 を有 した 者 は認 め な か った ◎ 既 往 歴 お よび現 病歴:在 胎 中 の 異 常 は な く,満 期 正 常 長 野 県塩 尻 市 広 丘 郷 原1780 松 本 歯科 大 学 障 害 者 歯 科学 講 座 (主 任:笠 原 浩 教 授) *松 本 歯 科 大学 歯 科 矯 正 学 講 座 (主任:出 口敏 雄 教 授) **松 本 歯科 大学 歯科 麻 酔 学 講 座 (主任:広 瀬伊 佐 夫 教 授) (1986年12月24日 受 付)分 娩 に て 出 生 し た 。 生 下 時 体1食3,0009で あ っ た 。 生 後 1ヵ 月 検 診 に て 顔 色 不 良 を 指 摘 さ れ0某 病 院 に て 約2週 間 加 療 さ れ る も 改 善 され ず,生 後2ヵ 月 時 某 大 学 付 属 病 院 小 児 科 に 転 医 し,先 天 性 赤 芽 球 疹(Josephs-Blackfan-Diamondtype)と 診 断 さ れ,輸ditを 受 け た 。 生 後3カ 月 時 よ り副 腎 皮 質 ホ ル モ ン剤 を 投 与 さ れ,徐 々 に 貧1血 状 態 は 改 善 さ れ た 。 しか し0あ る 程 度 減 量 す る と 再 増 悪 が み られ る た め,ス テ ロ イ ドホ ル モ ソ剤 は 現 在 ま で 切 れ1」 な く投 与 さ れ て い る 。(現 在 プ レ ドニ ゾRン7.5mg/El, 最 大60mg/日) 生 後8ヵ 月 時,全 身 強 直 を 伴 う痙 鱗 発 作 が 頻 発 し た 。 脳 波 検 査 で は 異 常 所 見 が 認 め られ な か っ た と の こ と で あ る 。 以 後 抗 て ん か ん 薬 を 現 在 も連 用 し て い る が,発 熱 時 な ど に は 発f乍 を 起 こ す こ と が あ る 。 こ の 頃 よ り,発 達 の 遅 れ が 著 明 に な り,精 神 発 達 遅 滞 と診 断 さ れ た 。 1歳6ヵ 月 時 麻 疹 に 罹 患 し,回 復 期 よ り1[∫び 貧ll【L傾向 を 認 め,ス テ ロ イ ドホ ル モ ン 剤 を 増 量 され た 。1歳8カ 月 頃 検 査 に お い て 無 γ一グ ロ ブ リ ソ血 症 を 指 摘 さ れ,免 疫 不 全 症 候 群(commonvariableimmunodeficiency,以 一ド CVIと 略 す)と 診 断 さ れ た 。 3歳 時 水 痘 に 罹 患 し た 際 に,静 注 川 γ一グ ロ ブ リ ソ 製 剤 の 静 注 に よ り ア ナ フ ィ ラ キ シ ー シ ョ ッ ク を 起 こ し,意 識 不 明,呼 吸 困 難0顔 面 浮 腫 等 を き た した こ と が あ る 。 そ の 後 も,年 に 幾 度 か は 呼 吸 器 感 染 症 に よ る40。C以 上 の 発 熱 や 一ド痢 を 繰 り返 し て い る。 8歳4ヵ 月 時 に 下 顎 右 側 臼 歯 剖1の 自 発 痛 を 訴 え,某 病 院 歯 科 を 受 診 し,本 学 病 院 特 殊 診 療 科 を 紹 介 さ れ 来 院 し た 。 初 診 時 の 現 症; 全 身 的 所 見=身 長 は112cmと 一zS.D.を 超 え 小 さ く0体1愈 ま18kgと 一1S. D.を 超 え 少 な く,著 り]な 発 育 の 遅 れ を 認 め た 。 栄 養 状 態 はR6hrer指 数128.12と 標 準 で あ っ た 。 体 温36.4。C,脈 拍92,意 識 清 明,顔 貌 は 左 右 対 称 で, ム ー ン フ ェ ー ス 様 を 呈 して い た 。 顎 下 リ ンパ 節 左 右 小 指 頭 大,可 動 性,右 の み 圧 痛 を 認 め た 。 貧 血,黄 疸,皮 疹0 皮 膚 の 化 膿 巣 等 の 外 見 的 な 異 常 を 認 め な か っ た 。 理 学 的 検 査 お よ び 心 電 図 に お い て も 異 常 所 見 を 認 め な か っ た 。 四 肢 の 機 能 障 害 は 認 め な か っ た が,遠 城 寺 式 ・乳 幼 児 分 析 的 発 達 検 査 で は,運 動 発 達 と基 本 的 習 慣 は4歳 レベ ル,言 語 理 解 は3歳 レベ ル0発 語 は2歳 レベ ル と い ず れ も 著 し い 遅 れ を 認 め た 。(図1,2) 局 所 的 所 見:開rl障 害 な く,開 口度3横 指 径 。
萌出齢
、Eび 訓
一il4E3℃
歯・
蛉IIIB…
・ ちE--114、.はC…DlはC・ ・1旦 はC・ で あ っ た 。 歯 列 弓 形 態 は,上 顎 で はU字 型,下 顎 で は 放 物 型 を 示 し,左 右 と もAngleIH級 の 不 正 咬 合 を 呈 して い た 。 PCRは66.3%と,ri腔 清 掃 状 態 は 不 良 で あ っ た が0 歯 肉 の 状 態 に 関 し て は,潜1nl反 応 は 陰 性,Periotron5 で 視 診,触 診 に お い て 著 明 な 炎 症 所 見 は 認 め ら れ な か っ た 。 パ ノ ラ マX線 所 見=第2大 臼 歯 ま で の 永 久 歯 胚 は す べ て 確 認 で き,一 ド顎 右 側 第1大 臼 歯 の 根 尖 に は 病 巣 を 認 め た 。 そ の 他0特 に 異 常 所 見 は 認 め ら れ な か っ た 。(図3) 臨 床 検 査 成 績:dit色 素 量13.6g/dl,ヘ マ ト ク リ ッ ト 41%で,貧 【llL状態 は 改 善 さ れ て い た 。 白 血 球 数 は10,500 図1初 診 時 の顔 貌 図2胸 部X線 写 真
図3初 診 時 パ ノ ラマX線 写 真 /mm3と 増 加 を 認 め,白 」狛巳球 分 類 で は,桿 状 核 球28%, 分 葉 核 球47%,リ ン パ 球24%と,好 中 球 増 加 と核 型 ∠1{ 方 移 動 を 認 め た 。 赤 血 球 数,1血 小 板 数,1面 青総 蛋 白 に 関 す る も の 以 外 の 」血腋 生 化 学 検 査 値,血 清 電 解 質 は い ず れ も 正 常 範 囲 内 で あ っ た 。 し か し,1血L清 総 蛋 白 は5.57g/dZと 低 値 で あ り,A/G 比1.31,ア ル ブ ミ ソ74.9%,α1一 グ ロ ブ リ ン3.8%,rじ2一 グ ロ ブ リ ン12.6%,β 一グ ロ ブ リ ン8.7%,γ 一グ ロ ブ リ ン 0%で あ り,こ の 低 蛋 白 血 症 は γ一グ ロ ブ リ ン の 減 少 に よ る もの で あ っ た 。 ま た 免 疫 グ ロ ブ リ ン の 定 量 で は, IgG132mg/dZ以 下,IgA29mg/d∠ 以 下,IgM19mg/ ⊂M以 下,IgD2mg/dJ以 下,IgE-RIA25単 位/m'以 下 と全 ク ラ ス で 測 定 可 能 量 を 認 め な か っ た 。 」血L液型 に 関 して は0型 で あ っ た が,ウ ラ検 査 で は 凝 集 せ ず に,オ モ テ 検 査 と ウ ラ 検 査 が 不 一 致 で あ っ た 。 表1検 査 成 績 ()内 は 正 常 値
モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 用 い たT細 胞 の 表 而 抗 原 の 検 索 で は,OKT3抗 体 に よ っ て 検 出 さ れ る 全 リ ン パ 球 は90 %と 著 し く高 い 値 で,OKT4に よ っ て 検 出 さ れ るhelper Tcellは35.4%と 正 常 範 囲 内 で,cytotoxic/sし1PPressor Tcellを 識 別 す るOKT8は52.2%と 高 く,OKT4/8 比 は0.68で 低 値 で あ っ た 。B細 胞 の 検 索 で は,B16.0 %と 正 常 範 囲 内 で あ っ た 。 リ ン パ 球 幼 若 化 反 応 で あ るPHAは3.14S.1.で 正 常 範 囲 内 で あ っ た 。 出ln峙 問2分 と正 常 で あ っ た が,血 液 凝 固 時 問13分, プ ロ トロ ン ビ ン時 間15秒 と や や 延 長 し て い た 。 尿 検 査 に お い て は 異 常 が 認 め られ な か っ た 。(表1) 常 用 薬:ル ミナ ー ル0。06g,ア レ ビ ア チ ン0.03g,シ ナ ー ル0.5g,セ ル シ ン2.5mg,デ パ ケ γ500mg,イ ム ラ ン15mg,エ ン テ ロ ノ ンR1.Ogな ど は1日2回 (朝 夕),副 腎 皮 質 ホ ル モ ン剤 と し て プ レ ドニ ゾ ロ ン7.5 mgを1日2回(朝5mg,昼2.5mg)を 投 薬 さ れ て い た 。 処 置 お よ び 経 過 多 数 菌 に わ た る 鶴 蝕 で,す で に 急 性 症 状 が あ り,早 急 に 処 置 を 要 す る に も か か わ らず,精 神 発 達 遅 滞 に よ る 理 解 力 の 不 足,医 療 行 為 に 対 す る 強 い 恐 怖 心,遠 隔 地 か ら の 通 院 な ど,通 常 の 力 法 で の 歯 科 治 療 に は 困 難 な 問 題 が 少 な くな か っ た の で,全 身 麻 酔 下 に て 既 存 の 爾 蝕 の 集 中 治 療 を 行 う こ と と し た 。 2月12日 入 院 。 前 日 よ り右 下 臼 歯 部 自発 痛 を 訴 え,入 院 時 右 側 頬 部 軽 度 腫 脹 を 認 め た 。 体 温36.8度,そ の 後 体 温37.3度 に 上 昇 し,右 側 頬 部 腫 脹 も著 明 に な り,原 因 歯 で あ る 右 下 第1大 臼 歯 の 根 管 開 放 を 行 っ た と こ ろ,36.4 度 に..ド降 し た 。 な お,抗 生 物 質 はL一 ケ フ レ ッ ク ス800 mg(1日2回)を 入 院 直 後 よ り投 与 し た 。 2月13日 に 全 身 麻 酔 下 集 中 治 療 の 予 定 で あ っ た が, 当 日 朝 に 体 温38.2度 と発 熱 が み られ た た め,延 期 と し た 。 ・月15日G・ ・ 糊 贈 下 ・・て,÷ … レガ・充 填,Eロ レ ジ ン充 填,百1根 管充 填,支 台築 造 ・既製
冠蝋
諾
囎
を行 旋14日
か ・・
鞭,15日
・
・水
様 便 の た め,抗 生 物 質 を サ ワ シ リ ン600mg(1日3回) に 変 更 した 。 翌16日 は 全 身 的 に も 局 所 的 に も問 題 が な か っ た の で 退 院 と し た 。(図4,5) 集 中 治 療 完 了 後 は,リ コ ー ル シ ス テ ム に よ り3ヵ 月 毎 に 来 院 さ せ,歯 科 的 健 康 管 理 を 行 っ た 。 経 過 は 良 好 で, 編 蝕 の 再 発 な ど の 異 常 は み られ て い な いQま た,ト レー 図4処 置 後 の ・・ノ ラ マX線 写 真 図5処 置 後 のrl腔 内 写 真 図6側 貌頭 部X線 厚邑格 写 真(9歳10ヵ 月)ROENTGENCEPHALOMETRICANALYSISuliBl匙 …[.6・・1・G.岡
図7側
貌頭 部X線 規格写真分析
図8手 お よび手 根 骨 のX真 写 真 ニ ン グの反 覆 に よ り,患 児 の 協 力状 態 も次第 に改善 され て ぎた。 1年5カ 月後(9歳10カ 月)の 定 期 検 診 時 には,歯 科 治療 に対 す る協 力状 態 もか な り良好 とな り,咬 合 誘 導 の 可 能 性 も考 え られ た の で,側 貌 頭 部X線 規 格 写真 撮 影 を 行 い,分 析 して み た。 また,骨 成熟 度 を調 べ るた め に, 手 お よび手 根 骨 のX線 写真 も撮 影 して み た。 さ らに,1 年8ヵ 月後(10歳1ヵ 月)の 口腔 内 模型 をf/F製し,模 型 分 析 を行 った 。 側 貌 頭 部X線 規 格 写 真所 見:〔9歳10ヵ 月時 〕 図91]腔 内 模 型(10歳1カ 月) 飯塚3)の 皿Bf直(平 均 年 齢9.6歳)と 比 較 す る と, ま ず 頭 蓋 底 に 対 す る 上 下顎 骨 の前 後 的位 置 で あ るが,図10模 型分 析 所 見 ∠SNA78.5),∠ δNb76.ovで,∠biNAは 予 羽1阻 と ∫じ べ や や 小 さ く,ま た 上 顎 骨 前 後 径 を 示 すPtmたAノ も 一1S .D.を 越 え て 小 さ い 値 を 示 し た 。 さ ら に 下 顎 で は 下 顎 骨 体 前 後 径 を 示 すG-Mも 小 さ く,ま た 下 顎 枝 高 径 G-Arも 一1S.D.を 越 え て 小 さ い 傭 を 示 し た 。 こ れ ら よ り,上 下 顎 骨 の 相 対 的 な 関 係 を 示 す ∠ANB で は+2.5◎ と ほ ぼ 平 均 的 な 値 を 示 し て い る も の の,骨 格 的 に は 上 下 顎 の 劣 成 長 が 認 め ら れ た 。 den加repatternに 関 し て は,上 下 顎 前 歯 歯 軸 傾 斜 は, 特 に 異 常 は 認 め ら れ な か っ た(図6,7)。 手 お よび 手 根 骨X線 写 真 所 見:9歳10カ 月 時 の 左 側 手 お よ び 手 根 骨X線 写 真 を 用 い,杉 浦,中 沢4)に よ る骨 成 熟 段 階(bonematirationstage)を 調 べ,出 口5)に よ る 暦 年 齢10歳 の 平 均 値 と比 較 し た と こ ろ,-2S.D.を 越 え て小 さい値 を 示 し,骨 成 熟 度 の 遅 延 が 認 め ら れ た。 (図8) 模 型 分 析所 見:10歳1ヵ 月 時(昭 和61年9月29日 の定 期 検 診 時)の 口腔 内模 型 を も とに,大 坪6)の 日本 人女 子 平均 値 と比較 す る と,歯 冠 近遠 心 幅 径 は上 顎 中 切 歯及 び 犬 歯 と 下 顎 中 切歯 及 び 小 臼歯 が わ ず か に+1S.D。 を越 えた 以 外 は,上 下 顎 と もほぼ ±1S.D.内 で あ った 。 幅 径 に 関 しては 上 下 顎 と も小 さい値 を 示 し,特 に上 顎 に おい て 歯 列 弓 の 狭窄 が 強 か っ た。 逆 に 長 径 に 関 して は,上 顎 の方 が 大 きな 値 を示 し,V字 型 の 歯 列 弓形 態 を 示 してい た 。(図9,10) そ の後,全 身 的 には 呼 吸 器 感 染 等 に よる高 熱 を繰 り返 して い る もの の,口 腔 内 に 関 して は特 に 自 ・他 覚症 状 を 認 めず,良 好 な歯 科 的 健康 が 維 持 され て い る。
考 察 1.先 天 性 赤 芽 球 虜(CEH)に つ い て CEHは,1936年Josephs7),1938年Diamonda簸d Blackfan8)な ど に よ っ て,赤 芽 球 産 生 の み が 障 害 され る 先 天 性 低 形 成 貧 血 と し て 報 告 さ れ た 。 有 瀧 ら3)に よ る と 1979年 ま で に 本 邦 で は42例 の 報 告 が あ る の み で,ま れ な 疾 患 と さ れ て お り,発 病 機 序 に つ い て は 現 在 の と こ ろ 不 明 で あ る 。 しか し な が ら,こ の 貧 血 症 状 に 対 し て は 副 腎 皮 質 ホ ル モ ン剤 が 比 較 的 有 効 と さ れ て お り9・1。),本症 例 に お い て も現 在 ま で 切 れ 目 な く副 腎 皮 質 ホ ル モ ソ 剤 を 服 用 中 で,貧 血 傾 向 は 改 善 さ れ て い る 。 2.commonvariableimmumde丘ciemy(CVI)に つ い て CVIは,1979年 のWHO11)の 分 類 で は 分 類 不 能 な 免 疫 不 全 症 と し て 一 括 さ れ,遺 伝 性 が は っ き りせ ず 散 発 性 の もの が 多 く12),細 胞 性 免 疫 不 全 を 伴 っ て い る もの も あ り1詞5>,γ 一グ ロ ブ リ ソ も す べ て 欠 損 す る と は 限 らず, … 部 の み が 選 択 的 に 欠 損 す る も の も あ る13) 。 臨 床 症 状 と し て も,乳 児 期 よ り細 菌 感 染 を 頻 回 に 繰 り 返 す も の か ら ほ と ん ど 感 染 を 認 め な い も の ま で 鵬 が あ る13)。 一 般 に 感 染 は 呼 吸 器 系 に 著 し く,ま た 下 痢,吸 収 不 全 な ど を 伴 う 胃 腸 合 併 症 も頻 度 が 高 い と 言 わ れ て い る1阿8)。 発 症 年 齢 も0歳 台 か ら成 人 ま で あ りユ5・・6),そ の 病 態 は 様 々 で あ る 。 早 川16)に よ る と,本 邦 で は1983年 時 点 で95例 が 集 計 さ れ て い る 。CVIの 機 序 は,Bcell異 常 三9・20),suppressorTcellの 過 剰21),及 び 血 清 中 の 細 胞 抑 制 因 子 の 存 在22)な ど が 報 告 さ れ て い る。 ま た 小 林23) に よ る と,CVIは 低 γ一グ ロ ブ リ ン血 症 が 主 な 症 状 で, helperTcellの 機i能 低 下suppressorTcellの 機}能 尤 進,さ ら にT,Bcellの 協 同 機 能 の 障 害 に よ る病 型 と 考 え て い る 。 3.本 症 例 に つ い て の 検 討 (1)CVIの 病 態 本 症 例 で は,IgG,A.M,D.Eの 全 ク ラ ス で 測 定 可 能 量 が 認 め られ な か っ た こ と,OKT4/8が0.68と 低 下 し て お り,cytotoxic/suppressorTcellの 過 剰 を 認 め た こ と,helperTcellの 機 能 を 示 すPHAは 正 常 で あ っ た こ と,さ ら にB1抗 体 に よ っ て 検 出 さ れ るBce11は 6.0%と 低 億 で あ っ た が,正 常 範 囲 内 で あ っ た こ と な ど か ら,無 γ一グ ロ ブ リ ソ血 症 は,supPressorTcel1の 機 能 尤 進 あ る い はBce11自 身 の 欠 陥 に よ る 分 化 障 害 が 疑 わ れ た 。 (2)CVIとCEHと の 関 連 本 症 例 で は 生 後3ヵ 月 よ り副 腎 皮 質 ホ ル モ ン 剤 を 投 与 され,1年5ヵ 月 服用 後,無 γ一グ ロブ リソ血1症を指 摘 され て い るが,副 腎皮 質 ホル モ ン剤 投 与 と免疫 不 全 との 関 係 は必 ず し も明確 では な い。 プ レ ドニ ゾ ロ ンな どの 副 腎 皮 質 ホ ルモ ン剤 は抗 体 産 生抑 制 作 用 は そ れ ほ ど強 くな く,1倉腋 中 のTcel1を 減 少 させ る23)と して い る もの も あ れ ば,機 序 は不 明だ が,長 期 大 量 投 与 に よ り抗 体 産 生 が 抑制 され る24・25)として い る もの もあ る。1979年 まで に わ が国 で 報 告 され てい るCEHは,42例 のす べ てが 乳幼 児期 か ら副 腎皮 質 ホ ル モ ソ剤 を 投 与 され て い るに もか か わ らず,免 疫 不 全症 候 群 を合 併 して い る者 は 認 め られ て い ない9)。 著者 らが 検 索 した範 囲 内で は,本 症 例 が 初 め てで あ る。 50歳 以 上 の 高齢 者 に発 症 す る とい う胸 腺腫 を伴 う赤 芽 球 疹 で は,し ば しば 免 疫 不全 症 を合 併 す るが26∼27),この タ イ プの もの は,幼 小 児 で は 見 られ な い。 (3)本 症 例 で の臨 床 上 の問 題 点 本症 例 で の臨 床 上 の 問題 点 は 次 の よ うに ま と め られ た◎ a.易 感 染性 無 γ一グ ロブ リソ血症 な ど の 抗 体 免疫 不 全 を 中 心 とす る病 型 で は,グ ラ ム陽性 菌 な どの 化膿 菌 に対 す る易 感 染 性 が み られ2脚),ま た 副腎 皮 質 ホ ル モ ン剤 の 副作 用 で感 染 を 増悪 させ や す い24β1)等の問題 が あ る。 本症 例 で は, 言1の 根 尖 性歯 周 炎 に 対 す る処 置 と して,再 感 染 の機 会 を作 らせ ない た め に,抜 歯 も考 え たが,抗 生物 質 を投 与 し,通 法 に従 い 感 染根 管 治 療 と 根 管充 愼 を 行 っ た と こ ろ,現 在 まで 自 ・他 覚 症 状 を認 めず,良 好 に経 過 して い る。 歯 肉 に関 して は,本 症 例 で は現 在 まで著 明 な炎 症所 見 を 認 め て い な い が,武 井 ら2)は 穎 粒球 減 少 症 を 伴 っ た Dys-gammaglobulinemiaの3歳 の 男児 に発 症 した 壊 死 性潰 瘍 性 口内炎 を 報 告 して い る。武 井 ら2)の症 例 で は 白 血球 数2800/mm3,桿 状 核 球及 び 分 葉 核 球0%で あ った の に対 し,本 症 例 では,白 血 球 数10500/mm3,桿 状 核 球28%,分 葉 核 球47%で,穎 粒 球 の減 少 を 認 め なか っ た こ とが,重 篤 な 口腔 内 感 染 症 を発 症 させ て い な い原 因 のひ とつ であ る と思 わ れ た 。 b.発 育 障 害 CEH(J◎sephs-Blackfan-Diamondtype)で は,発 育 障 害 の み られ る こ とが 多 く9),Diamondら32)は 約 半 数 の 者 に身 長,体 重 の著 しい発 育 障 害 を 認 め た。 こ の発 育 障 害 の 原 因は,副 腎 皮 質 ホ ル モ ン剤 療 法 が原 因 の ひ とつ と して挙 げ られ て い る33β4)。ス テ ロイ ドホ ル モ ン剤 は 蛋 白 異 化促 進 作 用 に よ って,骨 の マ トリッ クス形 成 が 不 十 分
とな った り,骨 芽 細 胞 を抑 制 す る た め,小 児 の場 合,発 育 が 抑 制 され る と してお り,Allen34)に よ る と1年 以 上 副 腎 皮 質 ホ ル モ ン剤 を 続 け た 例 で は,数 ヵ月 後 か ら全 例 で 身 長 の発 育 の遅 れ を 認 め,1年 以 内 には 著 しい遅 れ に な った と述 べ て い る。 本症 例 に お い て も,身 長,体 重 に著 しい 発 育 の遅 れ を 認 め た。 ま た,歯 牙 萌 出 状 態,個 々 の歯 牙 の歯 冠 幡 径 に 関 して は,著 明 な異 常 所 見 が 認 め られ なか った が,歯 列 弓 の 幅 径 に 関 して は小 さい値 を示 し,ま た 側貌 頭 部X線 規 格 写 真 で も,骨 格 的 に 上下 顎 の劣 成 長 が 認 め られ,手 お よび 手根 骨X線 写 真 で も骨 成 熟 度 の遅 れ を認 めた 。 こ れ らに つ い て も,身 長,体 重 と同様 に副 腎 皮質 ホ ルモ ソ 剤 の 副作 用 が 関 与 して い る もの と推 察 され た。 c.知 能 障 害 本 症 例 で は知 能 障 害 が認 め られ たが,有 瀧 ら9>の 調 査 に よ る と,CEH(Josephs-Blackfa魏 一Diamo塗dtype)の 知 能 障害 合 併 頻 度 は7.1%で,そ れ ほ ど高 い頻 度 では な か っ た。 歯 科 治 療 に お い て,こ の知 能 障 害 の有 無 や 程 度 は 治療 方 針 を決 め る うえ で 重要 で あ り,本 症例 に おい て は知 能障 害 を認 め,発 達 レベ ル も低 く,全 身麻 酔 下 集 中 治療 とい う治 療 方 針 を 決定 した要 因 のひ とつ とな った 。 結 語 先天 性 赤 芽 球 疹(Josephs-Blackfan-Diamondtype) の た め,副 腎 皮 質 ホル モ ソ剤 を長 期 服 用 して い る免 疫不 全 症候 群(commonvariableimmu擁odenciency)の 女 児 に対 して,爾 蝕 治療 な らび に そ の後 の 歯科 的 健 康 管理 を 行 い,良 好 な 経 過 を 得 た。 本 症 例 の 特 徴 は次 の よ うに ま とめ られ た 。 1)先 天 性 赤 芽 球 瘍 と免疫 不 全 症 候 群 との合 併 は,著 者 らが検 索 した 範 囲 内 で は本 症 例 が 初 め て で あ る。 ∫血色 素 量13.69/dZ,ヘ マ トク リ ッ ト41%で,貧 血 状 態 は 改 善 され て い た が,免 疫 グ ロブ リソは 全 クラ ス と も測 定 可 能 量 を 認 め な か った。 2)CVIの 病 態 と して は,無 γ一グ ロ ブ リ ソ.血 症,cyto-toxic/suppressorTceUの 過 剰 が認 め られ た。 3)精 神 発 達 遅 滞 と著 しい発 育 障 害 が 認 め られ た。 4)放 置 され て い た煽 蝕 に よる もの 以 外 は,特 別 な 口腔 症 状 は 認 め られ な か っ た。 口腔 清 掃不 良 であ った に も か か わ らず,著 明 な歯 周 病 変 は 認 め られ なか った 。 5)側 貌 頭 部X線 規 格 写 真 で は,骨 格 的 に上 下 顎 と も劣 成 長 が 認 め られ,さ らに手 お よび 手根 骨X線 写 真 に お い て も骨 成熟 度 の遅 延 が 認 め られ,副 腎皮 質 ホル モ ソ 剤 の副 作 用 に よる もの と推 察 され た。 稿 を終 わ るに あ た り,御 助 言 と本 患 児 に 関す る資 料 の 提供 を頂 い た 伊 那 中 央総 合病 院 小 児 科,原 敏 博先 生 に 深 く感 謝 い た します。 文 献
1 ) Bruton, 0. C.: Agammaglobulinemia, Pediatrics,
9 : 722-728, 1952.
2)武 井 謙 司,山 田 博,松 本好 政,高 梨 登,小 倉 孝 夫,前 田隆 秀,深 田英 朗:免 疫 不 全 症 候 群 と穎 粒 球 減 少症 に伴 う壊 死 性 潰瘍 性 口 内炎 の 治療 の一 例,小 児歯 誌20(1):188-194,1982. 3)飯 塚 哲 夫,石 川 富 士 郎:頭 部X線 規 格 写 真 に よる 症 例 分 析 法 の基 準 値 に つ い て,日 矯 歯 誌,16:4-12,1957. 4)杉 浦 保 夫,中 沢 修:骨 年 齢 一 骨 格 発 育 のX線 診 断,中 外 医 学 社,1968,p.17-54. 5)出 口敏 雄:日 本人(長 野 県塩 尻 市)に お け る発育 年 齢 の 評価,日 矯 歯 誌,43(3):346-355,1984. 6)大 坪 淳 造:日 本 人 成 人 正 常 咬 合者 の歯 冠1隔径 と歯 列 弓 お よ びBasalArchと の 関 係 に つ い て,日 矯 歯 誌,16:36-46,1957.7 ) Josephs, H. W.: Anemia of Infancy and Early Childhood. Medicine, 15 : 401, 1936. 8) Diamond, L. K., and Blackfan, K. D.:
Plastic Anemia. Amer. J. Dis. child., 56 : 464,
1938. 9)有 瀧 世 界爺,安 坐 問 薫,石 神 喜 久:先 天 性 赤 並L球 磐(Jose◎hs-Blackfan-DiamondAnemia)一 一 自 験 例 と本 邦 報 告 例 の 文 献 的 観 察 一,小 児 科 誌, 20(2):213-224,1979. 10)高 橋 隆 幸,梁 野 隆,編 集 遠 藤 武 雄:purered cellaplasia,症 候 群1982,日 本 臨 床,40巻 ・臨 時 土曽干"憂}:566-567,1982.