HPLCによる生体試料中New Quinolone系抗菌剤の測
定法の開発とその臨床応用に関する研究
著者
工藤 正純
号
3
発行年
2005
URL
http://hdl.handle.net/10097/15001
氏
名(本
籍)
学 位
の 種 類
学 位
記 番 号
学 位 授:与 年 月 日
学 位 授 与 の 要 件
く 工博
8
藤
謎
正
よ屯 き 玄 小士(医
療 薬 学)
薬(医
療薬学)第3号
平
成17年9月2日
学位 規 則 第4条 第2項 該 当
学 位 論 文 題
目
HPLCに
よ る 生 体 試 料 中NewQuinolone系
抗 菌 剤 の 測 定 法 の 開
発 とそ の 臨 床 応 用 に 関 す る研 究
論 文 審 査 委 員
藤
齋
野
後
安
眞
授
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教
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助
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住
順
一
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成
康
論 文 内 容 要 旨
NewQuinolone系 抗 菌剤(以 下NQs)は 抗 菌 スペ ク トル が 広 範 囲 で,か つ 組 織 移 行 性 が 良好 で あ る と い う特 徴 を 有 す る こ とか ら種 々 の感 染 症 に対 し汎 用 され て お り,こ れ まで に抗 菌 活 性 ま た は作 用 時 間 の 異 な る数 種 類 の 薬 剤 が 開発 され て い る。NQsの 臨床 使 用 の増 大 に伴 い様 々 な相 互 作 用 が報 告 され る よ う に な り,中 で も金 属 カチ オ ン含 有 製剤 との相 互作 用 に 関 して は,血 中濃 度 低 下 に基 づ く感 染 症 の悪 化 や 治 療 期 間 の 延長 が 問題 点 と して 挙 げ られ て い る 。 この よ うな 臨 床 にお け る相 互 作 用 の程 度 とそ の体 内動 態 を迅 速 に把 握 す る た め に は,NQsの 簡 便 ・迅 速 な 測 定 法 の 開発 が必 要 とな る。 従 来 のNQsの 測 定 法 は, 生 体 試 料 の 前 処 理 に 固相 抽 出 法 を用 い,イ オ ンペ ア ー 試 薬 を添 加 した移 動 相 に て行 われ て い た が,こ れ らの測 定 法 は 抽 出操 作 の煩 雑 さ,測 定 に時 間 を 要す る こ と,カ ラム 洗 浄 な どの メ ンテ ナ ンス が必 要 で あ る こ と,ま た 再 現 性 が必 ず し も良 好 で は な い こ とな どの 課 題 が 残 され て い た。 一 方,測 定 系 に抽 出操 作 過 程 を組 み 込 ん だ カ ラ ム ス イ ッチ ン グ法 は プ レカ ラム と分 析 カ ラ ム を装 着 した も の で あ り,前 者 は直 接 HPLCに 付 した 生 体 試 料 中 の 爽 雑 物 の 除 去 に,後 者 は測 定 対 象 化 合 物 の 分離 とい った そ れ ぞ れ の役 割 を 果 た す こ とに よ りオ ンライ ンで の 固 相 抽 出 が 可能 で あ り,生 体試 料 の 前 処 理 操 作 が 除 タ ンパ ク のみ と非 常 に簡 便 とな る利 点 を有 して い る。 そ こで 著 者 は,先 ずNQsの ヒ ト生 体 試 料 中の 薬 物 動 態 を簡 便 に モ ニ タ リン グす る こ とを 目的 と したHPLCに よ る測 定 法 を 確 立 した 。 次 い で 本 測 定 法 を用 い て,NQsと 金 属 カ チ オ ン含 有 製 剤 を 同時 併 用 した 際 の健 常 人 にお け るNQsの 体 内動 態 を解 析,評 価 した 。 一 方 ,NQsは そ の優 れ た 組 織 移 行 性 の た め,外 科 領 域 な ど にお い て手 術 時 の二 次感 染 予 防 の 目的 に投 与 され て い るが,皮 膚 組 織 中 濃 度 と血 中濃 度 との相 関性 に 関 す る検 討 は これ まで な され て い な か っ た 。 そ こで 著 者 は,NQsの 代 表 的 な薬 剤 で あ る 面oxacinを 例 に 取 り上 げ,ヒ ト皮膚 組 織 へ の移 行 性 を 明 らか に し,血 中濃 度 と皮 膚 組織 中濃 度 との 関係 を検 討 した 。 は じめ にNQsの ヒ ト生 体 試 料 中 の薬 物 動 態 を簡 便 にモ ニ タ リン グす るた めのHPLCに よ る測 定 法 の 開 発 を試 み,oHoxacinを は じめ とす る9種 類 のNQsを 測 定 対 象 ま た は内 部 標 準 物 質 と して検 討 した。NQs の 測 定 法 を 開 発 す る 際 の 基 礎 検 討 項 目は,1)移 動 相 の組 成 お よ びpH,2)移 動 相 の比 率,3)プ レカ ラ ム お よび 分析 カ ラ ム,4)UV検 出 器 の検 出波 長,5)内 部 標 準 物 質 の5項 目 と した。 生 体 試 料,特 に血 液 試 料 をHPLCに よ り分 析 す る に は,除 タ ン パ ク と抽 出 とい う前 処 理 操 作 が必 要 で あ る が,本 測 定 法 で は 簡 便 な 前 処 理 操 作 の み で分 子 量10,000以 上 の タ ンパ ク質 を除 去 し う るMolcutH⑪ メ ンブ ラ ンフ ィル タ ー を用 い た簡 便 な前 処理 法 に よ り遂 行 し,HPLCに 直 接 注 入 し測 定 した。 この操 作 方 法 に よ り,前 処 理 に 要 す る時 間 はお よそ10分 程 度 で あ っ た。 次 に本 測 定 法 の精 度 ・正 確 度 の検 証 を 目的 と して 添 加 回 収 試 験 を行 い,い ず れ のNQsに 関 して も相 対 的 な 回収 率 は96.1∼101.4%の 範 囲 で あ った 。 ま た,日 内 で の 6回 繰 り返 し測 定 に お け る 変 動 係 数 に 関 して も2%前 後 と良好 な 結 果 が 得 られ,本 測 定 法 の高 い精 度, 正 確 度 お よ び 良好 な 再 現 性 を証 明 した 。 以 上 の 結 果 か ら,本 測 定 法 は汎 用 され る 臨床 用 量 でNQsを 経 口投 与 した 際 の 血 中濃 度 測 定 が 可 能 で あ り,後 述 す る 薬 物 相 互 作 用 を検 討 す る上 で有 用 で あ る と思 わ れ る。続 い て,NQsと 金 属 カ チ オ ン との 相 互 作 用 に つ い て 検 討 を加 え た 。NQsは,抗 菌 活 性 を 発 揮 す る 上 で 必 須 で あ る と さ れ る3位 のcarboxyl基 お よ び4位 のcarbony1基 を 有 し て い る 。 しか し な が ら,制 酸 剤 や 鉄 剤 な ど の 金 属 カ チ オ ン含 有 製 剤 と併 用 し た 場 合,こ の2つ の 必 須 部 位 と金 属 カ チ オ ン と の 問 で 難 溶 性 の キ レ ー トが 形 成 さ れ,NQsの 腸 管 か ら の 吸 収 が 著 し く 阻 害 さ れ る こ と が 報 告 され て い る 。 ま た,抗 菌 剤 の 効 果 と関 係 す る パ ラ メ ー タ に は 最 高 血 中 濃 度(Cmax),最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)以 上 を 維 持 す る 時 間(time aboveMlc),血 中 薬 物 濃 度 一 時 間 曲 線 下 面 積(Auc)な ど が あ る が,NQsに 関 し て は 濃 度 依 存 的 に 抗 菌 力 を 発 揮 す る こ と が 知 られ て お り,Cm。、とMICの 比(Cm、x1MIC)あ る い はAUCとMICと の 比(AUC!MIC) が 効 果 を 予 測 す る 良 い パ ラ メ ー タ に な る 。 そ こ で,前 述 した 測 定 法 をNQsと 金 属 カ チ オ ン 含 有 製 剤 と の 薬 物 相 互 作 用 の 解 析 に 応 用 し,そ の 両 者 を 同 時 服 用 し た 際 のNQsの 体 内 動 態 に 関 し て,AUCお よ び Cm朕 の 薬 物 動 態 パ ラ メ ー ダ に 及 ぼ す 金 属 カ チ オ ン の 影 響 を 検 討 し た 。 金 属 カ チ オ ン 含 有 製 剤 と の 相 互 作 用 はlomenoxacin,tosuBoxacin,sparHoxacinお よ びHeroxacinの4剤 に つ い て 検 討 し,こ れ ま で の 報 告 で 相 互 作 用 の 程 度 が 大 き い と され るA13+,Mg2+,Fe2+の3種 類 の 金 属 カ チ オ ン を 含 有 す る 薬 剤 を 選 択 し た 。 本 研 究 に 同 意 の 得 られ た 健 常 成 人 男 性6名 を 対 象 に,(1)NQs単 独(control),(2)sucralfate併 用,(3) magnesiumoxide併 用 お よ び(4)sodiumferrouscitrate併 用 の4群 に よ り検 討 した 。測 定 お よ び 解 析 結 果 よ り, NQsと 金 属 カ チ オ ン と の キ レ ー ト形 成 に よ る 吸 収 阻 害 の 程 度 に は,NQsや 金 属 カ チ オ ン の 種 類 に よ っ て 大 き な 差 異 が 認 め られ る こ と が 明 ら か と な り,NQsに 関 し て は 概 ねTFLx>LFLx>SPFX>FLRXの 順 で 吸 収 阻 害 の 程 度 が 大 き か っ た 。 こ の 差 異 の 要 因 と して はNQsの 化 学 構 造 上 の 差 異 が 影 響 して い る と 考 え ら れ る 。 一 方,最 高 血 中 濃 度 到 達 時 間(Tm、 、)お よ び 消 失 半 減 期(T1!2)な ど,そ の 他 の 薬 物 動 態 パ ラ メ ー タ に は 有 意 な 影 響 を 及 ぼ さ な か っ た 。 引 き 続 き,NQsの 皮 膚 組 織 と血 中 濃 度 と の 相 関 性 に っ い て 検 討 を 加 え た 。 一 般 的 に 表 在 性 二 次 感 染 の 原 因 菌 と し て グ ラ ム 陽 性 菌 の 黄 色 ブ ドウ 球 菌 や 表 皮 ブ ドウ 球 菌 力弐挙 げ られ,消 化 器 外 科 領 域 で の 手 術 時 に は グ ラ ム 陰 性 菌 の 緑 膿 菌 な どが 二 次 感 染 の 原 因 菌 と し て 考 え られ る 。NQsは 抗 菌 ス ペ ク トル が 広 範 囲 で あ る た め,こ れ ら の 原 因 菌 に 対 し て も 治 療 効 果 が 大 き く,経 口投 与 に よ り手 術 創 部 の 各 組 織 へ 速 や か に 移 行 す る た め,外 科 領 域 な ど に お け る 手 術 時 の 二 次 感 染 予 防 目 的 に 投 与 さ れ て い る 。 しか し な が ら, NQsの 各 組 織 へ の 移 行 性 が 良 好 で あ る と い う事 実 は 広 く知 られ て い る も の の,皮 膚 組 織 中 濃 度 と血 中 濃 度 と の 相 関 性 に 関 す る 研 究 は,こ れ ま で ラ ッ トの 他 に ヒ トで 報 告 され て は い る が,症 例 数 が 少 数 で あ る こ とか ら皮 膚 組 織 中 濃 度 と血 中 濃 度 と の 相 関 性 に 関 す る デ ー タ の 統 計 学 的 解 析 は な さ れ て い な か っ た 。 そ こ で 前 述 し たHPLCを 用 い,皮 膚 組 織 中 のoHoxacln濃 度 を 迅 速 か つ 簡 便 に 測 定 す る 方 法 を 確 立 し,当 院 形 成 外 科 と の 共 同 研 究 に よ り,手 術 時 の 二 次 感 染 予:防 目 的 にoHoxacinが 投 与 され た 患 者30名 を 対 象 と し て,onoxacinの 皮 膚 組 織 中 濃 度 と 血 中 濃 度 を 測 定 す る こ と に よ り,両 者 の 相 関 性 に つ い て 統 計 学 的 に 解 析 し,治 療 効 果 に 応 用 した 。 ヒ ト皮 膚 組 織 中oHoxacin濃 度 の 測 定 条 件 を 種 々 検 討 し た 結 果,次 の 条 件 が 得 られ た ・ す な わ ち ・1)移 動 相:05%CH3COONa(pH25):CH3CN=87:13,2)カ ラ ム:プ レ カ ラ ム; DevelosilPh-5(5μm・50mm×4.6mmI.D.),分 析 カ ラ ム;DevelosilODS-5(5μm,150mm×4.6mm I.D.),3)検 出 波 長:300nmに て 測 定 し た 。 ま た,ヒ ト皮 膚 切 片 か ら のoHoxacinの 抽 出 方 法 と測 定 時 に
必 要 と な る 前 処 理 方 法 と し て は,先 ず ヒ ト皮 膚 切 片 を2∼3mm2(約0.2g)の 大 き さ に カ ッ ト し,移 動 相 お よ び 内 部 標 準 物 質 を 添 加 後,POLYTRON⑪ ホ モ ジ ナ イ ザ ー に て ホ モ ジ ナ イ ズ し,遠 心 分 離 に ℃ 得 ら れ た 上 清 を 前 述 し た 血 漿 試 料 と 同 様 の 方 法 で 処 理 し,HPLCに 直 接 注 入 して 測 定 し た 。 本 測 定 法 に お け る 絶 対 回 収 率 は743±1.6%以 上 で あ り,変 動 係 数 は4.6%以 下 と高 い 精 度 お よ び 再 現1生 が 示 され た 。 ま た 皮 膚 組 織 中 の 検 出 限 界 は100nglgで あ り,実 際 の 臨 床 投 与 量 で の 測 定 に 充 分 対 応 可 能 な 感 度 で あ っ た 。 当 院 形 成 外 科 に て 手 術 を 実 施 し た 患 者 の う ち 本 研 究 に 同 意 の 得 られ た30名 の 患 者 に は,二 次 感 染 予 防 目 的 にoHoxacinが 手 術 開 始 前 に 経 口投 与 さ れ た 。 サ ン プ ル の 採 取 時 間 は,血 液,皮 膚 組 織 と も にonoxacin 投 与 後05∼3時 間 で あ っ た 。 皮 膚 組 織 サ ン プ ル は,癒 痕 組 織,ヘ マ ン ジ オ ー マ(血 管 腫:),肉 芽 組 織, 熱 傷 皮 膚 お よ び 腫 瘍 周 囲 の 正 常 皮 膚 か ら成 り,手 術 の 際 に 切 除 し た 皮 膚 の 一 部 を サ ン プ ル と し た 。 皮 膚 組 織 中oHoxacln濃 度 と血 清 中oHoxacln濃 度 と の 相 関 係 数rは0.8407,p〈0.001で あ り,皮 膚 組 織 中 濃 度 と 血 中 濃 度 と の 間 に は 有 意 な 相 関 性 が 得 られ,`皮 膚 組 織 中 濃 度 が 治 療 効 果 に 寄 与 す る こ と が 示 さ れ た 。 以 上 の 結 果 よ り,次 の 結 論 を 得 た 。 各NQsに 関 し て,本 測 定 法 に よ り血 漿 中 濃 度 を 測 定 し た 結 果,血 漿 由 来 の 妨 害 物 ピー ク の 影 響 を 全 く受 け る こ と な く,前 処 理 が 簡 便 で,か つ 精 度 お よ び 正 確 度 に お い て も 信 頼 性 の あ る 測 定 法 の 開 発 が 可 能 と な っ た 。 NQsと 金 属 カ チ オ ン 含 有 製 剤 と の 相 互 作 用 の 解 析 に 本 測 定 法 を 応 用 し た と こ ろ,NQsの 構 造 学 上 の 違 い に よ っ て 金 属 カ チ オ ン の 影 響 の 受 け 易 さ に 差 異 が 見 ら れ,sparHoxacinお よ びHeroxacinが 比 較 的 金 属 カ チ オ ン の 影 響 を 受 け に く い こ とが 明 らか と な っ た 。 ま た,金 属 カ チ オ ン に よ っ て もNQsと キ レー トを 形 成 し や す い 種 類 が あ る こ とが 認 め ら れ,相 互 作 用 の 強 度 はAl3+>Mg2+≧Fe2+の 順 で あ っ た 。NQsと 金 属 カ チ オ ン と の 相 互 作 用 に 関 す る こ れ ら の 結 果 は 臨 床 的 に 有 用 で あ り,こ れ ら併 用 時 は 臨 床 に 即 し た 総 合 的 な 判 断 を し,か つ 予 想 す る こ と が 重 要 で あ る 。 ま た,本 測 定 法 をonoxacinの ヒ ト皮 膚 組 織 中 濃 度 に 応 用 し,血 中 濃 度 と の 相 関 性 を 検 討 し た と こ ろ 有 意 な 相 関 性 が 得 られ,oHoxacinの 良 好 な 皮 膚 組 織 移 行 性 が 証 明 さ れ た 。 こ の こ と は,手 術 時 の 二 次 感 染 予 防 と し て のoHoxacin経 口投 与 が 有 効 で あ る こ と を 証 明 し,さ ら に 血 中 濃 度 測 定 に よ り皮 膚 へ の 浸 透 度 が 予 測 可 能 で あ る こ と を 示 し た 。