確率微分方程式とその線形フィルターへの応用
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(2) 弧 轟「m. ,. ■9. 脚■■匿」. 自然現象や社会現象をモデル化しようとするとき,ランダムな要素が無視できないものが 多数存在する.例えば水中のBrown粒子のジグザグな運動や化学反応過程であり,また株価 の不規則な変動などがそうである.これらの現象を数学的に記述する場合,常微分方程式に ランダムな確率過程を介在させることが必要となる. 具体的に次のような生物の増殖を記述するモデルを考える. dN(の. =α(オ)N(の,!>(0)=ハら. …(1). 砒 ただしN(のは時刻孟における個体数であり,α㊥は時刻孟における相対変動率とする.こ れは孤立した集団の個体数増殖を記述する微分方程式で,Malthusの人口法則として知られ るものである。この{N(の}オ≧oを体系だった一つのシステムと捉え,系過程と呼ぶ.. (1)の係数α(のが完全には確定せず,例えば何らかのランダムな環境の影響のために, α(の=γの十”ノイズ(雑音)”. という形をしていると考えるのが本論文の立場である.ここに関数喰)は確定的であるが, ノイズ項の正確な挙動は分からず,その確率分布だけが分かっているとする.一般に,確率過 程を含む微分方程式を確率微分方程式と呼んでいる.そして本論文において”ノイズ”の役 割を担う確率過程が,数学的に定義されたBrown運動である. 不規則な現象の時間発展には,それを一つの標本ととらえたとき,その軌道がジグザグで あるという顕著な特徴があり,常微分方程式の解のなめらかな軌道とは様相を異にする.日 本人数学者伊藤清は,この不規則性を表すジグザグな標本路の力学を記述するため,Brown 運動による確率積分および確率微分方程式の概念を導入した.そしてそれを解析する基本的 手段を与え,不規則な系の微分積分学を厳密な数学的理論として構築した.その業績はしば しばIt6 Calculusの名を冠して称えられる.. 確率解析の分野ではさらに日本人数学者の貢献が続くが,中でも國田寛,渡辺信三両氏が, 確率積分をより一般的なマルチンゲールの理論として美しく整備したことが,後の発展に決 定的な役割を果たした.. その後,確率微分方程式はその優れた汎用性故に物理学・集団遺伝学・工学・経済学など 様々な分野に広く応用されることになった.中でも有名な結果に,Kalman−Bucyフィルター の理論がある.. あるシステムを観測するときに,刻一刻とノイズが加わって観測が不正確になる場合を考 える.システムを制御したりその将来を予測したりするためには,加わるノイズを考慮しな がらシステムの現状をできるだけ正確に推定せねばならない.例えば(1)の解に関する情報 を得るために,時刻5≦オにおいてN(8)の観察Z(8)を行ったとする.しかし,測定機器の 不確定さのためにN(8)を正確に計測することができず, Z(8)=N(8)十”ノイズ” …(2).
(3) という観測しか得られなかったとする.この{Z(8)}o≦。≦¢を観測過程と呼ぶ.. 「この観測過程{Z(8)}o≦。≦オに基づく(1)を満たすN(のの最良の推定をどのように求め. ればよいか?」これを「フィルターの問題」という.直感的には,これは観測から最良の方法 でノイズを”ろ過(フィルタリング)”することを意味する.. 1961年にKalmanとBucyが今日Kalman−Bucyフィルターとして知られるフィルター理 論を構築した.この理論は,基本的には”ノイズ”項を持つ線形確率微分方程式に従うシス テムの状態を”ノイズ”を含む一連の観測に基づいて推定する方法を与えている. 確率微分方程式は,極めて現実的な問題を扱うことのできる数学的手段といえるであろう. 私は現職の高校教員である.教室で生徒と向かい合うときに心がけるのは,自分が好きな数 学をいかに彼らに魅力的に伝えるかということである.数学に好感を持つことによって生徒 の学習意欲は高まるだろうし,さらに生涯にわたって科学に関心を持ち続けることにもつな がると信ずるからである.昨今の統計を見る限り,残念ながら日本の子供たちは世界でも指 折りの”数学が嫌いな”子供たちである.ちまたでは「数学は現実と乖離した学問であるか ら勉強する価値はない」という定説がまかり通っているように思う.そんな逆風の中にあっ て,この確率微分方程式の理論は,私自身にとっても数学の奥深い魅力と存在価値を改めて 実感するに足るものであった.. 1.学部時代から興味を持っている確率論に関わり,かつ近年特に注目を集めている理論で ある.. 2.厳密な数学であると同時に,実社会において直接しかも広範囲にわたって応用されている. 3.日本人数学者が世界に先駆けて,その創始から細部の整備,一般化に大きく貢献している.. 以上3点がこのテーマを選んだ大きな理由である.教える者が数学の魅力を再確認しその 有用性に自信を持つことは,生徒に語る言葉に大きなカを与えるであろう. 本論文の目的は,第一にマルチンゲールの理論に基づき確率積分の概念を明らかにするこ と,第二にその確率積分を用いて確率微分方程式を定義し,適当な条件のもとで解の存在と 一意性を示すこと,第三に方程式が線形の場合に具体的に解の導出を行い,その応用例とし てKalman−Bucyフィルターの理論を考察することである.本論文は,5章で構成されている.. 第1章 本論文を構成するのに必要な言葉の定義と,測度論及び確率論における基本的 な結果について簡潔に述べる.文献[2],[8],[9],[10],[12],[13]に基づいて述べ,証明. は原則として参考文献を示すにとどめる.. 1.確率を全測度が1の測度として捉え確率空間を構成し,独立性の概念について述べる. 2。確率変数と平均値をそれぞれ可測関数とLebesgue積分に関連させて導入する.次に,二 重積分における積分の順序交換に関するFubiniの定理,確率測度をFourier変換により 特徴づける特性関数について述べる.最後に特性関数を用いてGauss型確率変数の定義 を与える.. 3.確率変数列の収束の概念と事象列に関するBore1−Cantelliの補題そして,確率変数列の 極限操作と積分演算との順序交換に関するLebesgueの収束定理について述べる.. ii.
(4) 4.有限な符号付き測度に関するRadon−Nikodymの定理について述べ,その定理を用いて 条件付き平均値を定義し,その性質をまとめる.さらにHilbert空間における射影との関 係について言及する.. 第2章 連続な道を持つ確率過程の典型であるBrOWH運動は,不規則な運動を数学的に 理想化したものである.Brown運動はマルチンゲール性を持つ確率過程として捉 えることができ,そのマルチンゲールの概念を用いて確率積分が定義されること になる.マルチンゲールの語源は賭け事に由来する.離散パラメータのマルチン ゲールを表す等式珂Xη+11鑑]=X:ηは「次回の勝負後の所持金Xπ+1を現在ま でのデータみによって推定すれば,ちょうど現在の所持金Xπと一致する.」と 解釈できる.これがマルチンゲールが「公平な賭け」を表現したものと言われる 所以である.本論文の土台となるこの二つの概念について述べる.主に文献[12] に基づいて述べ,証明は略しているものもある.. 1.最も基本的な”ノイズ”の数学的表現であるBrown運動を定義し,その典型的な性質を いくつか述べる.次に,σ一加法族の増大系(フィルトレーション)および停止時刻につい て述べる.. 2.確率積分の基礎となる概念であるマルチンゲールを定義する.そして,Brown運動のマ ルチンゲール性について論及する.さらにマルチンゲールに関する重要な定理である, Doobの不等式と任意抽出定理について述べる. 3・2乗可積分連続マルチンゲールMに対して,M2一くM>が再び連続マルチンゲールとな るような連続増加過程〈.M>が一意的に存在することを示す.この連続増加過程は,マル チンゲールMの二次変分という意味を持つ.この〈M>は後に確率積分の被積分関数を 制限する基準となる.次にマルチンゲールの一般化である局所マルチンゲールを定義し, 上の議論を拡張する.. 第3章 2乗可積分連続マルチンゲール全体の空間のHilbert構造に基づいて確率積分 を定義する.さらにその定義を局所マルチンゲールに一般化し,本論文全体を通 して大きな威力を発揮する伊藤の公式について述べる.. 1.確率積分は,2乗可積分連続マルチンゲールMの,分割△に対するRiemann和の極限 として定義される.その際被積分関数八8,ω)はMの二次変分増加過程〈M>によっ て規定される.確率積分{躍!(5,ω)dM議≧oは再びマルチンゲールとなる.すなわち連. 続マルチンゲールMの!(5,ω)による変換という意味付けを与えることができよう.こ. の変換によりMを用いた確率微分方程式の数学的定式化が可能となる. 2確率積分を,Lebesgue−Stieltjes積分によって特徴:づける.このことにより,”確率微分”. の記号による形式的演算の正当性が保障され,確率微分方程式の記述や計算がより簡便 となる.さらにその考えを用いて,確率積分の定義を局所マルチンゲールへと拡張する.. 111.
(5) 3.局所マルチンゲールと有界変動過程の和の形で表わされる確率過程をセミマルチンゲー ルという.連続なセミマルチンゲールに対し,微分積分学における合成関数の微分公式 (連鎖律)に相当する公式が与えられる.これが有名な伊藤の公式である.さらにこの公 式を用いて,Brown運動の判定条件を与えるL6vyの定理を示す.. 第4章 確率微分方程式を定式化し,いくつかの条件のもとで解の存在および一意性を 示す.さらに係数が線形の場合に具体的に解を導出する方法を紹介し,それを用 いて具体的なモデルを考察する.. 1.確率微分方程式を定式化し,解の存在と一意性に関する基本定理について述べる. 2.線形確率微分方程式を具体的に解く方法を考察する.例として,Brown粒子のジグザグ運 動のモデルとして有名なOrnstein−Uhlenbeck過程,および経済学においてBlack−Scholes. の株価変動モデルとしても知られている幾何学的Brown運動を取り上げる. 3.線形確率微分方程式を用いて生物の個体数の増殖モデルを記述し,解析を試みる.. 第5章 系過程および観測過程がともに線形確率微分方程式で記述される場合のフィ ルターを線形フィルターという.特に1次元の場合に,線形フィルターに関する KalmanとBucyの理論を考察する. Lフィルターの問題を定式化し,系過程の時刻孟における値瓦の,観測{z8}o≦。≦オに基づ. く最良の推定濁が瓦の条件付き平均値で表されることを,Hilbert空間における射影 との関係に基づいて示す.. 2.1次元の場合に瓦を具体的に求める方法を考察する.まず{乙}を2乗可積分マルチン ゲール{現}(イノベーション過程と呼ぶ)で置き換える.このとき最良のZ一可測推定 は,最良の1>’一線形推定と一致することが示される.さらに{瓦}とBrown運動{Rt}と. の関係を求め,島を利用して瓦の満たすべき確率微分方程式を求める. 3.濁および易が定数係数線形確率微分方程式で記述される場合に,XtをKalman−Bucy フィルターを用いて具体的に求めてみる.. 最後に,二年間懇切丁寧にご指導頂きました兵庫教育大学大学院数学教室藤原司先生に 衷心より感謝の意を表します.未知の数学を学ぶことは決して楽なことではありませんでし た.しかし,その苦しみがあってこそ理解も深まり,納得したときの喜びが忘れられないもの になることを身をもって体験することができました.. また,後になりましたが,修士課程在学中お世話になりました兵庫教育大学の諸臣生方に 心よりお礼申し上げます.そして,今回,研究の機会を与えて頂きました山梨県教育委員会, 山梨県立富士河口湖高等学校長ならびに教職員の皆様にも厚くお礼申し上げます..
(6) 目次 第1章 1.1. 12 1.3 1.4. 第2章 2.1. 2。2 2.3. 1. 基礎概念 確率空間と確率分布 確率変数と平均値.. 確率変数列の収束.. 条件付き平均値.。.. 1. 2 8 9. Brown運動とマルチンゲール Brown運動とフィルトレーション. 12. マルチンゲール......_.. 二次変分..。. 17. 12 18. 24. 第3章 確率積分と伊藤の公式 3.1. 確率積分..,,.. 24. 3.2. 確率積分の特徴づけ 伊藤の公式. 31. 3.3. 36. 43. 第4章 確率微分方程式 解の存在と一意性.. 線形確率微分方程式 個体数変動モデル... 43 48 52. 線形フィルター. 56. 5.1. フィルターの問題.... 56. 5.2. 1次元線形フィルター. 定数係数過程への応用. 57 76. 4.1 4.2 4.3. 第5章. 5.3. 79. 参考文献. V.
(7) 第1章 基礎概念 偶然現象を数学的に記述するために確率空間を用いる.具体的には標本空間Ω事象の族 ∫およびその上の確率Pの三つ組のことをいう.一般的な議論をするためにはΩを非可算 集合とする必要があるが,その結果各点ごとに確率を与えその和として事象の確率を定義す るようなことはできなくなる.そこで確率を測度として理解することが必要となる. 標本空間上に定義された可測関数を確率変数という.確率変数は偶然現象を量的に表す関 数といえる.この章では,本論文の構成に必要な確率空間と確率変数に関する基本的事項を 述べる.. 1.1 確率空間と確率分布 Ωを空でない集合とする.Ωの部分集合族∫が,次の三つの条件:. i)Ω∈∫ ii) 五∈∫ならば.4c∈∫ iii) 4π∈∫,π∈N(:={1,2,_})ならばU雛1.4π∈∫ を満たすとき,σ一加法族という.ただし,.4cは五の補集合である. {斜}オ∈T,T≠のをΩ上のσ一加法族とするとき,∩古∈T£は再びσ一加法族になる.今,Ω. の任意の部分集合族Cに対しCを含むσ一加法族を{£}古∈Tとする.このとき,Cを含む最 小のσ一加法族σ(C)が唯一っ存在し,σ(C)=傷∈T∫をである.. ある性質が共通部分をとる操作で閉じている集合族について成り立っているとする.次の 結果は,同じ性質がその集合族により生成されるσ一加法族についても成り立つための条件を 与えている.. 定義1.1.1集合Ωの部分集合族Dが次の条件を満たすとき,Dynkin系であるという.. i)Ω∈の ii) 孟, B∈の,B⊂みならば.4\B∈つ iii) .4π∈D,.4π⊂.4π+1,η∈NならばU陰1.4π∈つ. 定理1.1.2(Dynkin系定理)CはΩの部分集合族で,.4, B∈Cならば五∩B∈Cなる ものとする.このときDがCを含むDynkin系であるならばσ(C)⊂のである. 証明は文献[1,p447]を参照.. 全体集合Ωを標本空間,σ一加法族∫の要素を∫一可測集合または事象,それらの組(Ω,∫). を可測空間という.また,距離空間Eに対し,ヨのすべての開部分集合を含む最小のσ一加法 族をBorel集合族といい,昭(一一一)、と書く.. 1.
(8) 2. 1.基礎概念 可測空間(Ω,∫)上の実数値集合関数μが次の二つの条件:. i)任意の.4∈∫に対し,μ(紛≧o. ii)塩∈∫,η∈N,ん∩ん=の¢≠の ならばμ(U雛1ん)=Σ陰1μ(塩) を満たすとき,μを(Ω,∫)上の測度といい,三つ組み(Ω,∫,μ)を測度空間という.. 測度μがさらに条件: iii)μ(Ω)=1. を満たすときμを特にPと書き(Ω,∫)上の確率測度という.三つ組み(Ω,∫,P)を確率 空間,P(み)を4の確率という.可測空間(E,%(E))上の確率測度を特に確率分布または単 に分布という.. 確率空間を考えるとき,最も基本的な概念は独立性である。有限個の事象.A1,...,.4πが独. 立であるとは,臆の部分列馬,…,且毎に対しP(∩1。、んゴ)〒H亨.、P(んゴ)が成り立つ ことをいう.. 無限個の事象の系{.4λ},λ∈Aが与えられたとき,その任意有限個が独立であれば系 {.Aλ},λ∈Aは独立であるという,. 有限個の∫の部分σ一加法族の列フ㍉_,鑑が独立であるとは,各㊨から任意の元ん を選んで得られる事象の列.41,...,.4ηが独立であるときをいう.. 無限個の∫の部分σ功口法族の系{み},λ∈Aが独立であるとは,その任意有限個のみ が独立であるときをいう.. 1.2 確率変数と平均値 (Ω,∫)を可測空間,日を距離空間とする.写像!:(Ω,∫)→(E,瑠(E))が∫一可測関数で. あるとは,任意の.4∈瑠(E)に対し,次を満たすときをいう. !一1(且)・一{ω∈Ω;!(ω)d}∈∫. ただし,!:(Ω,∫)ト〉(E,昭(E))とは,!はΩト>Eなる写像でしかも∫の元を瑠(E)の. 元に写すという意味である.尚,!が実数値の場合は,上の条件は任意の有理数γに対し アー1((一〇〇,γ))∈∫であることと同値である.. 特に,IRN(!V次元Euclid空間)上の瑠(RN)一可測な関数をN次元Borel関数という. 例1.2.1(可測関数の例)(Ω,∫)を可測空間とする..4∈∫に対して,. 細一 o濃銘塞1 と定義すると,恥は匹可測である.今後IAと書けば上の関数を意味するものとする. 定理1.2.2Ω上の実数値可測関数については次の1生質がある. i)!(ω),g(ω)が有限な値をとる可測関数ならば,任意の実数α,βに対してα!(ω)+βg(ω). は可測関数である.また積!(ω)g(ω)も可測関数である..
(9) 3. 1,基礎概念 ii) ん(ω),η=1,2,...が可測ならば. supム(ω),iIlfム(ω),lim sup九(ω),lim infム(ω) π>1. π≧1. η→◎○. π→oO. 肩・Aマー’百fウ印1「侭殊.ス. ク¥r^rr 4Y,,、_ 1{_ ’ん,、弘ミ.≠デ血ナ・}っPギ ’ん,、浄、百rウ印【「尽〕鳳ス. 冨ぴ工、一」1;糊、αノ・ゾ・囚;ノ、JkWノ『且且三」πkWノ”『1丁1⊥フ刈レ『d・JkW/U「−JL悶、しxノσ・. π→∞. 証明は文献[8,pp.63−64]を参照.. 直積空間上の関数の可測性についての次の定理は有用である.. 定理1.2.3(X,紹(X))を任意の可測空間とし,XとRNとの直積空間Z;X×RNにおい て直積σ一加法族瑠(Z)=留(X)×招(RN)を定義する. Z上の関数!@,ッ),z∈X,㌢∈RN. について次の性質が成り立っているとする. i) 〃を固定すればωの関数として昭(x)一可測であり,. ii) 欝を固定すればッの関数として連続である. このとき!@,〃)は@,〃)∈Zの関数として昭(Z)一可測である. 証明は文献[8,pp.68−70]を参照.. 定義1.2.4確率空間(Ω,∫,P)上で定義された写像X:(Ω,∫)吟(E,瑠(E))が∫一可測のと. き,Xを三値確率変数という.. 本論文ではEとしてEuclid空間を考えることが多い。従って以後本論文において,単に 確率変数といえば実数値とする.. 有限個の確率変数の組X=(X1,...,XN)をN次元確率変数あるいはN次元確率ベク トルという。. ∫の部分集合族{X−1(孟);.4∈瑠(RN)}はσ一加法族をなす.これをXにより生成され るσ一加法族といい,σ(X)で表す.σ(X)はXを可測にする最小のσ一加法族となる. 次に確率ベクトルの独立性について述べる. 有限個の確率ベクトルX1,_,Xπが独立であるとは,σ(X∂,②=1,_,πが独立である ことをいう.このことは,任意のん(瓦の値域の開部分集合)に対し,. れ P(x・∈A,…,x。∈且。)一Hp(x・∈ん) 乞=1 となることと同値である.. 確率ベクトル系{Xλ},λ∈Aが独立であるとは,σ(Xλ),λ∈Aが独立であることをいう. このことは,任意有限個の.4λ、(Xλ、の値域の開部分集合)乞=1,_,πに対し,. れ. P(Xλ1∈ノ1λP_.,Xλη∈ノ1λη)一rIp(X・、∈へ). 盛=1 となることと同値である. 確率ベクトル系{Xλ},λ∈Aが与えられたとき,集合族Uλ∈Aσ(Xλ)を含む最小のσ一加法 族をσ(Xλ;λ∈A)で表す.二つの確率ベクトル系{Xλ},λ∈Aと{若},ツ∈rが独立である とは,σ(Xλ;λ∈A)とσ(}勾7∈r)が独立であることをいう..
(10) 4. 1.基礎概念. X,yを確率ベクトル,φ,ψをBorel関数とするとき, Xとyが独立であればφ(X)と ψ(y)も独立である.. さて,測度空間(Ω,∫,μ)上の非負可測関数!(ω)に対して,測度μによる積分. ゐ!(ω)燗あるいは馳かω)卿) を定義することができる.さらに一般の可測関数!(ω)が 孟げ(ω)1μ@)<一. を満たすとき,!は可積分であるといい,この∫についても積分を定義できる.. 定義1.2.5Xを確率空間(Ω,∫,P)上の確率変数とする.XのPに関する積分が定義でき るとき, E[x]・一. 薰?iω)P(伽). をXの平均値という.またy(X):=一E[(X一珂XD2ユを分散という. さらに.4∈∫に対して, 珂x;刈・一珂x・・(ω)]一. ミx(ω)P(dω). と定義する.. N次元確率ベクトルX=(X1,_,XN)に対して,N次元ベクトル.M:=(珂X1],_,E[XN]: を平均ベクトル,Cov(&,Xの:=E[(Xr E[X乞])(XゴーE[Xゴ])]を凡とXゴの共分散,1>×N. 行列V:=(Cov(X信,X)・))をXの共分散行列という.. 確率空間(Ω,∫,P)上の確率変数Xが可積分であるとき,X∈.L1(Ω,∫,P)(または L1(Ω),五1(P)または単に五1)と書く.さらにX∈.LP(Ω,∫, P)(または〃(Ω),〃(P),五P) とは,. 耶1・]一. 薰撃?iω)1・即ω)<・・. であるときをいう.五2(Ω,∫,P)に特有な性質を一つ挙げておく. 定理1.2.6X∈五2(Ω,∫,P)に対し. llXll《ゐIX(ω)蘭)巷一E[IX(ω)P]圭. と定義すると,五2(Ω,∫,P)はll・llをノルムとするHilbert空間である. 証明は文献[8,p.163]を参照.. 本論文において次の平均値に関する不等式は重要である.証明は文献[13,pp.91−93,p98] を参照..
(11) 5. 1.基礎概念 定理1・2・7X, yは確率空間(Ω,∫,P)上の可積分な確率変数とする.. i)(Hδlderの不等式) p>1,1一ト1=1のとき, p q しl. ユ ユ .E「lxy[<E「囲p1づE「lylq1す Ll l 」 Ll l 」 9. l」 一. 特にp=2のときはSchwarzの不等式である. ii)(Minkowskiの不等式)p≧1のとき, ユ 一E[IX十ylP]万≦E[lxiP]万十E[lylp]で ユ. ユ. iii)(Chebyshevの不等式) ψをR上の非:負偶関数で(0,00)上で正かっ増大とする.こ. のときω>0に対し, E[ψ(x)] 曽@). P({ω∈Ω;ix(ω)1≧ω})≦. iv)(Jensenの不等式)ψはR上の実数値凸関数とする.ψ(X)が可積分ならば, ψ(E[x])≦E[ψ(x)].. 次の定理およびその系は,二重積分における積分の順序交換に関するものである.ただし,証 明は文献[8,pp.100−105]を参照.. 定理1.2.8(Fubiniの定理)直積測度空間(3,5,μ)=(31×5’2,81×52,μ1×μ2)上の非負 可測関数!(の=!@,ッ)に対し,次が成り立つ.. i)為翻幽)は・の岬り関数であり,. ム翻ゆ)は画一測関数である・ ii)ゐ!綱一ム醐々(ω,〃)μ2(吻)か(吻)惹!儲)醐 系1.2.9(5’,8,μ)上の可測関数∫(z)=!@,〃)に対し. ム侮(噌!(鋤1μ・(吻),ム劇惹M醐,ゐ1ル)1μ(伽) のうちでどれか一つが有限ならば,他の二つも有限であって三つとも等しく,しかも上のi),ii) が成り立つ.. Fubiniの定理を用いて独立な確率変数の平均値に関する次の有用な性質が導かれる. 定理1.2.10(乗法定理)X1,...,Xπを独立なN次元確率ベクトルとし,!1,...,九を]RN. からR(または複素数の空間C)への可測関数とする,国学(Xた)が可積分であれば,積 H鴛=1!ん(xのも可積分で,次が成り立つ.. E愈鯛]一息E[脚.
(12) 6. 1.基礎概念 証明は文献[13,p.88]を参照.. N次元確率ベクトルXに対し, μx(且)・一P({ω∈Ω;x(ω)∈孟})1且∈紹(RN). とするとき,μxは(RN,瑠(RN))上の確率測度すなわち確率分布となる.これをXの分布と いう.. g(勾をN次元Borel関数とする.可積分なN次元確率ベクトルXに対し, g(X)もまた 確率ベクトルとなり珂g(X)]が定義される.上で見たようにXによりPはXの分布μx に写されるから,珂g(x)]が存在すればそれはμxの積分としても表される.すなわち. E[9(x)]イ=…鵡9(銑・…廟(伽,…伽)・ ここに右辺の積分はLebesgue−Stieltjes積分(定義については文献[8, pp.146−149]を参照)で ある.. この議論の詳細については文献[13,p.83]を参照.. 次に,確率変数の特性関数をその分布を用いて定義する.. 定義1.2.11XをN次元確率変数,μxをXの分布とする.. ψ(ξ)畔爵x]イニ…鷹’Σ隔幅μx(伽,…・伽),ξ∈RN をXの特性関数という.ここで,ξ*はξの転置行列(ベクトル)を表し,ξ*XはRN、におけ. るξとXとの内積を表す. μxが確率密度関数∫を持つとき. ψ(ξ)一E[・例一ニ…隠・百Σ趨徳!(銑,…,覇・・伽 が成り立つ.すなわち,ψは可積分関数!のFourier変換に他ならない.. 特性関数は確率変数の分布だけに依存する.従ってXとyが同じ分布を持てば,定義さ れている確率空間が異なっている場合でも特性関数は等しい.. 定理1.2.12(一意性定理)R!v一頃確率変数X,yの分布をμx,μy,特性関数をψx,ψy とする.このとき,ψx=ψyならばμx=μyとなる. 証明は文献[13,p.116]を参照.. 定理12.12により,特性関数は分布を特徴づける有用な量であることが分かる. 定理1.2.13確率変数X1,X2,...,Xπが独立であるための必要十分条件は,. れ. ψX(ξ1,… ,ξの==rl(ρXん(ξた),ξ1,一・,ξπ∈]R. た=1 が成り立つことである.ただし,ψxはX=(X1,_,Xη)の特性関数を表す..
(13) 7. 1.基礎概念 証明は文献[13,p.116]を参照.. 例1・2・14(特性関数の例)1次元正規分布N(m,η)はP(A)=ム詣e一(9じ覗)2/2”d亀A∈ 紹(R1)で定義される.その特性関数は次で与えられる.. ψ(ξ)イ:β噛溜㌔一’・一争 この例を一般化して,次のGauss型確率変数の定義を与える.. 定義1.2.15 i)確率変数xの特性関数ψ(ξ)があるm∈R1,”∈R+によって ψ(ξ):=E[e>⊂丁ξX]=e∼/=了ξm一二u,ξ∈R1. と表されるとき,Xを平均m,分散”の1次元Gauss型確率変数という. ii)N次元確率変数x=(x1,...,XN)の特性関数妖ξ)があるM∈RNとあるN×N非 負定値対称行列yによって 望)(ξ):=、醒[e∼仁丁ξ*x]=e∼/=Tξ*ハ4一圭ξ*vξ,ξ∈RN. と表されるとき,Xを平均ベクトルM,共分散行列γのN次元Gauss型確率変数と いう.. Gauss型確率変数には次のような性質がある.これらは主に第5章で有効に働く. 定理1.2.16確率ベクトルX=(X1,...,XN)がGauss型であるための必要十分条件は,各 成分の任意の一次結合Σ能1偏XたがGauss型確率変数であることである. 証明は,[9,pp.25−261を参照.. 系1.2.17定理の条件は,Xo=0として,「各成分の階差の一次結合Σ離1 b三一X鳶.1) がGauss型確率変数である」としてもよい. 【証明】必要性については任意の(α1,...,αN)∈RNに対し. ガ b・一Σ・・沸一1,…,N 唇=た とおけばよく,十分性については任意の(b1,..。,∼)1v)∈RNに対し. α鳶=わた一δ鳶+1,κ=1,_,1V一1,αN=わN. とおけばよい.. ■. 定理1.2.18{Xe,鳶=1,2,...はΩ上のGauss型確率変数列でE[lXr Xi2]→0,ん→○○. が成り立っているとする.このときXはGauss型確率変数である. 定理1.2.19%,巧,..。,琉をΩ上の実確率変数とする.さらにX=(%,yi,...,yのは. Gauss型確率変数であり,%と巧,ゴ=1,_,πは相関がない,すなわち 珂(y6−E[%])(}り一E[巧])]=0,ゴ=1,…,π. が成り立つとする.このとき玲は{巧,...,琉}と独立である。 以上証明は文献[4,p349]を参照..
(14) 8. 1.基礎概念. 1.3 確率変数列の収束 確率空間(Ω,∫,P)において, P(Ωo)=1を満たすΩo∈∫があって,ある事柄が任意の ω∈Ωoに対して成り立つとき,ほとんど確実(almost sure)に成り立つといい, a.s.と書く。 ゲア ユ. も マや. ル みみ ノノ. ヤァ. ロ ロ. ロリ. ャ ヒ. も つ. 1列え.ほ,時弊∼倒叙入,}!について,ノ(=γa.s.どほ,. P({ω∈Ω;X(ω)=y(ω)});1. のときにいう.また一般の測度μに対し,ある事柄が測度0の集合を除いて成り立つときは, ほとんどいたるところ(almost everywhere)成り立つといいμ一a.e.と書く. 定義1.3.1{&}π∈N,Xを確率空間(Ω,∫,P)上の確率変数とする.. i) xηがxに概収束するとは, P({ω・Ω;無脇(ω)一x(ω)})一・. が成り立つときにいい,Xπ→Xa.s.と書く. ii) xηがxに確率収束するとは,任意のε>oに対して, lim P({ω∈Ω;lXπ(ω)一X(ω)1>ε})=0. π→oo. が成り立つときにいい,X篇→Xinpr.と書く. iii)p≧1とする.xπがxにp次平均収束(L,P収束)するとは, lim E[lxゼXlp]=0 7L→oO が成り立つときにいい,x。→Xin:LPと書く. まず事象列に関する重要な補題を一つあげておく.. 補題1.3.2(Borel−Cantelliの補題)事象列Aπ∈∫,η∈Nに対し,. 翁忌<・・ならばP(聾戸・ 【証明】確率測度の劣加法性と,Uん〉.塩がηに関して減少列であることから P(∞. ◎○∩UA・π=1た篇π)一蝋郎)≦盛P(塩)一・・. ■ それぞれの収束の関係については,次の定理が成り立つ.証明は文献[13,p.73, p.93]を参照. 定理1.3.3{Xπ}π∈N,X, Xを確率空間(Ω,∫,P)上の確率変数とするとき,次が成り立つ.. i) Xπ→Xa.s.ならば Xπ→Xinpr.. ii)Xπ→XinLP ならばXπ→XiIlpr. iii)Xπ→Xinpr.かっXπ→Xinpr.ならば X=Xa.s..
(15) 9. 1.基礎概念. iv) Xπ→Xinpr. ならば その適当な部分列はXに概収束する. 最後に極限操作と積分との順序交換を保障する定理をいくつか述べる.これらは本論文に おいて極めて重要である.. 定理1.3.4確率変数列{X諺π∈Nと確率変数Xに対し,次が成り立つ. i)(単調収束定理)0≦Xη/X(単調増加)a.s.ならば lim E[X司;E[X]. れ. ii)(Fat・uの補題)瓦≧・なら1まE[1欄f&]≦1囎f恥].. 証明は文献[13,pp.8r82]を参照.. 次に確率変数列{Xπ}π∈Nに対して一様可積分性を定義し,その性質から導かれるLebesgue. の収束定理について述べる.以下X,yは確率変数とする. 定義1.3.5{Xπ}が条件:. 認・呈pE凶;{ω∈Ω;1脇(ω)1≧・}]一〇 を満たすとき,一様可積分であるという.. 補題1.3.6y∈L1(P)が存在して任意のη∈Nに対して1&1≦ya.s.ならば{Xπ}は一 様可積分である.. 補題1.3.7{ぎ諺とXが可積分のとき,次の条件は同値である.. i){xπ}が一様可積分かつxに確率収束する. ii)lim珂X司=E[X]. π→OQ. 定理1.3.8(Lebesgueの収束定理)X.→Xa.s.であり,さらにy∈五1(P)が存在して任 意のη∈Nに対しIXη1≦ya.s.ならば1imE[X司=E[X]が成り立つ. れ シ. 特に区π1が任意のω,ηについて有界,すなわちyを定数としてとれる場合は,有界収束 定理と呼ぶ. 以上の証明は文献[13,pp.95−97]を参照.. 1.4 条件付き平均値 条件付き平均値を定義するために,Radon−Nikodymの定理について述べる. (Ω,∫,P)を確率空間とする.集合関数Q:∫ト>Rが次の二つの条件: i)任意の.4∈∫に対して,IQ(4)1〈○O. ii)・4π∈∫,η∈N,ん∩ん=の(乞≠の ならばQ(U譲1塩)=Σ雛1 Q(ん) を満たすとき,有限な符号付き測度という.. 有限な符号付き測度Qが確率測度Pに関して絶対連続とは,P(A)=0となる任意の A∈∫に対してQ(A)=0が成り立つときにいい,Q《Pと書く..
(16) 10. 1.基礎概念 定理1.4.1(Radon−Nikodymの定理)Qは(Ω,∫, P)上の有限な符号付き測度で, Q《P. とする.このとき,可積分な∫一可測関数yが一意に存在し,任意のA∈∫に対して,. Q(A)イy(ω)P(dω). (…). ●ノA. と表現できる.ただし,一意に存在するとは,yとyが共に(1.1)を満たせばy=ya.s.が. 成り立つことを意味する.このyを(Ω,∫)上のPに関するQのRadon−Nikodym導関 数といい,y一璽と書く. dP 証明は文献[13,pp.165467]を参照.. 今,X∈五1(Ω,∫,P)と∫の部分σ一加法族9(9はΩのσ一加法族で9⊂∫)が与えら れているとする. Q(A)・一E[x;A]一. sx(ω)P(dω)海9. とおけば,Qは(Ω,9)上の有限な符号付き測度で, Q《一Pとなる.よって,Radon−Nikodym の定理により,可積分な9一可測関数yが存在し,次のように書ける. Q(孟)一. y(ω)P(4ω),孟∈9. 定義1.4.2上記のyを珂x19]と書き,9の下でのxの条件付き平均値という. ここで,条件付き平均値の1生質をまとめておく.証明は文献[9,pp.18−20]を参照. 定理1.4.3X,}!∈L1(Ω,∫,.P),9,究を∫の部分σ一加法族とする.次のことが成り立つ. i). ii). 任意のα,δ∈Rに対し 珂αx+δy19]=α珂X19]+わ珂y19]a.s.. X≦ya,S.ならば珂Xlg]≦珂ylg]a。S。. iii). Xが9一可測関数で,yおよび積xyが可積分ならばE[xyig]=XE[y[9]a.s.. iv). 冗⊂9ならば E[珂X19]碑]=珂x岡a・s・ 特に冗={の,Ω}ととることにより E[E[X19]]=E[X]a.s.. v). vi). lE[X19封≦E[IXIIg]・.・.. (Jensenの不等式)ψはR上の実数値凸関数とする.ψ(X)が可積分ならば, ψ(E[XlgD≦E[ψ(X)lg】a.s.. vii). !はR上のBorel関数で,ア(X)は可積分とする. Xと9が独立ならば, E[!(X)lg]一E[!(X)]a.s.. viii). (Fat・uの補題)脇≧・,π∈Nなら1畑[1鴨邸]≦1魍fE[凋9L.
(17) 11. 1。基礎概念. ix) (Lebesgueの収束定理) IXπ1≦y∼π∈Na.s.かっ珂y]<Ooなるyが存在し, しかもXπ→X,π→○Oa.s.ならば, 1im E[Xπ191=E[Xlg]a.s. ・. π→○○. 最後に条件付き平均値とHilbert空間における射影との関係について述べる.これらは第5 章で必要となる.. 定理1.4.4(射影定理)廻をHilbert空間冗の閉部分空間とするとき,究の任意の要素u は況の要素とル1⊥の要素との和に一意的に分解される.すなわち 鴛=賜、+賜2,U、∈ル{,U、∈ル1⊥.. ただし(,)を内積としてル1⊥={u∈π;(u,u)=0,∀”∈ル1}である. u1をuの廻の 上への正射影といい,記号ではu1=りP規(%)と表す.. 定理1.4.5ル1,冠を定理1.4.4のものとする.IHIを鴛のノルムとするとき,”∈.Mに 対して次が成り立つ. 【lu−1ワll=. illf lltあ一γ・ll 〈===⇒〉 ?ノ = フ=)ノレ{(u). r∈ル1 以上の証明は文献[10,pp.52−53]を参照.. 補題1.4.6Xは∫一可測かつX∈五2(P)であるとする.また∫の部分σ一加法族9に対し, κ:={y∈五2(P);yは9一可測}とする.このときんはHilbert空間L2(P)の閉部分空間 となり,さらに次の関係式が成り立つ. フ)κ(x)=珂xi9]. 【証明】定理1.2.2により,{ム}π∈Nが9一可測でlim九=!が存在すれば!は9一可測であ れ う り,また五2(P)は完備であるから!∈五2(P)である.従ってκは五2(P)の閉部分空間とな り,定理1.4.4により射影1ρκ(X)は存在する.. Radon−Nikodymの定理より,条件付き平均値E[X l 9]は次の二つの条件を満たすΩ上の R一二確率変数として,a.s.に一意的に定まる.. i) 珂X19]は9一可測である. ii) ∫λE[Xlg}(オP=∫λx’(オP,∀ノ1∈9・. 従って7)κ(x)がi),ii)を満たすことを示せばよい.. 7)κ(X)∈んであるから7)κ(X)は9一可測である.またX−7)κ(X)∈κ⊥であるから. ゐy(x一アκ(x))dP一戦∈κ が成り立つ.任意の.4∈9に対してIA(ω)∈んであるから 云(X一ア・(X))4P一ゐ・・(X一アκ(X))4P一・. が成り立つ.従って. か・(x)dP一心x4P,∀み∈9 が分かるので,条件付き平均値の一意性からアκ(X)=珂X[9]となる.. ■.
(18) 第2章Brown運動とマルチンゲール 1828年にスコシトランド人植物学者Robert Brownは,液体中に浮遊する花粉から出てく る微粒子が不規則な運動をする事を観測した.後に,その動きは液体分子とのランダムな衝 突によることが判明した.Brown運動{B孟(ω)}f∈Tの厳密な数学的記述は, N.Wienerが1923. 年に最初の存在証明を与えたことに始まった.数学的に定義されたBrown運動は,その軌道 を見るとき,各時点ごとに次の瞬間どの方向に動くか予測できないという不規則性を理想化 したものといえる.そして,Brown運動の持つマルチンゲールという性質が,本論文の展開に 大きく関わることになる.. 本章では,Brown運動やマルチンゲールに関連する定義や性質,定理を述べた後,2乗可積 分連続マルチンゲールMに対し.M2一〈M>が再び連続マルチシゲールとなるような連続増 加過程〈M>が存在することを示す.. 2.1 Brown運動とフィルトレーション ENをN次元距離空間とする.確率空間(Ω,∫, P)上で定義されたEN値確率変数の族 X={Xオ(ω)}オ∈T={瓦}t∈TをN次元E:一値確率過程という.ただし,Tはパラメータ空間 で,本論文ではT=[0,00)またはT=[0,T]をとる.確率過程を{茜(ω)},{濁}のように. オ∈Tを略して書く場合もある. {X孟(ω)}古∈Tがa.s.に舌の連続関数であるとき,連続確率過程という.また,{X議∈Tが与 えられたとき,{X、}、≦オを可測にする最小のσ一加法族をσ(X。;8≦のと書く.. 本論文では基本的にEとしてEuclid空間を考える.従って,以後単に確率過程といえば実 数値とする.. まず,Brown運動の定義を与える. 定義2.1.1(Brown運動)確率空間(Ω,∫, P)で定義されたRN一値確率過程{.a}t∈Tが. N次元Brown運動であるとは,以下の条件を満たすときにいう.. i)任意の。≦5〈オに対して,β一B,は平均ベクトル。,共分散行列(卜8)EのN次 元Gauss型確率変数である.ただしEは1>×1V単位行列を表す. ii)任意の。≦8<診に対して, Br B、はσ(Bu;u≦8)と独立である. iii) {B診}は連続確率過程である.. また,特に注意しない限りBo=Oa.s.とする. 1次元Brown運動{B孟}には次のような顕著な性質がある.証明は文献[12, pp.5−6]およ び文献[2,pp.116−117]を参照.. 定理2.1.2Ωo:={ω;{Bε(ω)}は微分可能な点を持たない}とするとき,P(Ωo)=1である.. 12.
(19) 13. 2.Brown運動とマルチンゲール 定理2・1.3{B孟}の孟∈阻,7bl,0≦男く乃における全変動はa.s.に無限大である.. 定理2・1.4(重複対数の法則)lo9・を自然対数とするとき次の等式が成り立つ・ ムノ. 、口、__ 旦 _、。。 ニニエユよゆしムユノ. ォ→QO. 2諺109(109の. よ. ハロリ. ユエノ. mli_、。f B・ __bq. ユユよゐニュよム. オ→○0. 2孟109(lo9舌). り リ. 定理2.1.5孟>0に対して,分割△:0=あく孟1<…<らく孟く孟π+1をとり,. れ Q・(B;△)・一ΣIB・、+、〈rB・、12,Q・(B;△)一・かつ1△1・一m駐xlオ・+・一孟・1 ②=0 と定義する.ただしα〈δ:=min(α, b)である.. このとき各舌に対して,次が成り立つ,. E[(Q・(B;△)一の21→0,1△1→0. 注意2.1.6(Brown運動の実現)[0,00)で定義され, IRNに値をとる連続関数全体の空間 WN:=0([0,00)吟RN)を考える.ω1,ω2∈WNに対し, d(ω1,ω2)』歩廠1妨(の一二(オ)1〈・) π瓢0. と定義すると,WFNは4を距離とする完備距離空間となる. WNの位相的Borelσ一加法族を 瑠(レ7N)とする.. N.Wiener(1923)は,測度空山(WN,瑠(WN))上に適当な確率測度Pを用意すれば,!V. 次元Brown運動{B孟(ω)}がWN上の座標関数として実現されることを示した.すなわち ω∈WNに対し1双ω)=ω(の∈]RNとすれば{一B舌(ω)}は確率空間(WN,昭(WN),P)で定. 義されたN次元Brown運動となる.このWienerの業績を称えて, Brown運動のことを別名 Wiener過程,確率測度PをWiener測度と呼んでいる. 以上の議論の詳細については[12,pp.7−9]を参照.. 時間とともに蓄積される確率現象のデータは,増大するσ一加法族の系として表現される. このσ一加法族の増大系を確率空間に付随して定義する. 定義2.1.7(Ω,∫,P)を確率空間とする,∫の部分集合の族{£}オ∈Tが二つの条件: i). 鑑 (== 斜 (= qフ匹ア,. 0 ≦ 5 < 孟. ii)任意の孟∈Tに対して斜はσ一加法族 を満たしているとき,{£}ε∈Tをフィルトレーション(σ一加法族の増大系)といい,(Ω,∫,P;㊨). をフィルター付き確率空間という. 例2.1.8{X翫∈Tを確率空間(Ω,∫,P)で定義された確率過程とする. が・=σ(x。;8≦孟) とするとき{が}t∈Tを{X亡}の生成するフィルトレーションという.(Ω,∫,P;」弓()はフィ. ルター付き確率空間である..
(20) 2.Brown運動とマルチンゲール. 14. 以下では,フィルター付き確率空間(Ω,∫,P;£)が与えられているものとする. 定義2.1.9{xオ}重∈Tを(Ω,∫,P;斜)で定義されたE一値確率過程とする.. i)任意の孟に対して,孟が丹可測であるとき,確率過程{x右}はAに適合していると いう. ii)任意の孟に対して,写像(θ,ω)∈[o,司×Ω←>x。(ω)∈Eが,2([o,司)×斜に関して可. 測であるとき,確率過程{x古}は斜一発展的可測であるという. 補題2.1.10連続確率過程{x孟}が£に適合しているならば,{濁}は£一発展的可測である. 【証明】各孟に対し{瓦}は定理1.2.3の条件を満たすから,瑠([0,司)×£一可測である.■. 定義2.1.11(三一Brown運動)(Ω,∫, P;£)上のN次元連続確率過程{.a}が条件:. i) {B身は名に適合している. ii)−o≦8<オに対して, Bt−B、は鑑と独立で,平均ベクトル。,共分散行列¢一8)E. のN次元Gauss型確率変数である. を満たすときN次元£一Brown運動であるという. 命題2.1.12定義2.1.11の条件ii)の必要十分条件は. E[・岳*(島一団イ蜘),亡〉・,ξ∈RN (2・・) である.. 【証明】必要性は明らかなので,十分性のみ証明する. (2・・)の両辺の平均値をとると,E[・勘一)]一・一呼(・一)となるカ・らB一疎はN. 次元Gauss型確率変数である.. 任意のゐ一可測関数Xに対し,. Y一(劉,ξ一(亀)軸∈副 とすれば,. E[・・畷*Y船引E[e∼/=了ξ歪(B一一B3)+三綱. 一・隙E[・癩(馴乙]一・》譲峯X・一呼囲 が成り立つ.両辺の平均値を計算すると,. E[・・肩鯛一・」ξちρ(吻[・既判一E[e>q・歪(判E[・α判 となるから,定理1.2.13によりBrB、とXは独立である.Xは任意であったから,B一B、 と乙は独立になる. □.
(21) 15. 2.Brown運動とマルチンゲール. 定義2.1.13£_:=σ(u。<沼),斜+:=∩。>o∫i+,と定義する1{£}は£=£一,焼とな. るとき左連続,斜=∫孫,∀オとなるとき右連続であるという.. 一般に確率過程{X孟}が左連続ならばフィルトレーション{が}も左連続であるが,{濁} 流毅宙鮪ザ窄ハナレレτマー産、∫τX「しナ§士≧宙玄吉レZ・干R旦孤ナき1,、 痴1らZ・ギ ∫V『t脇弐研/Nのi苅ズ素酉閾丞←マ冬転 ノヅベニ ソい ノノ し ノしりエゾオ ノヅノらよむ ししどホにみサリびホ コ ハノしりボツエノユホ け ソア Vノノエ1巫1天」クシ∼ 、 し啄ノ. る場合は右連続ではないことが示される.証明は文献[2,p93,p126]を参照.. Brown運動{Bオ}はWNの座標関数と見ることができるから,生成するフィルトレーショ ンフヂ:=σ(B。;s≦のは右連続ではない.このことは今後の議論に不都合を生じさせる.. そこで,次のようなフィルトレーションの拡大を考える. 命題2.1.14(Ω,∫,P)で定義されたN次元Brown運動{B古}に対し,. 同一鵡;・≦オ),戸一σ(u甥亡≦0) 、v一{F⊂Ω;F⊂ヨG∈∫B,P(の一〇} ㊨=σ(:石『u〈r) とするとき,£=£+,協である. 証明は文献[12,pp.16−17]を参照.. この拡大はBrown運動の定義に何ら影響しない.したがって{B古}は右連続なフィルト レーション{㊨}についてもBrown運動である. 次に,停止時刻の概念を導入する, 定義2.1.15[0,001に値をとる(Ω,∫,P;∫の上の確率変数τ(ω)が,任意のオに対して,. {ω∈Ω;丁(ω)≦オ}∈斜. となるとき停止時刻(stopping time)であるという.. 停止時刻は賭け事に由来する言葉である.賭けをやめる時刻丁を任意の時刻孟以前にする かどうかを決めるのに使えるのは,時刻オ以前の情報のみであるということを意味している。 「持ち金が無くなったら賭けをやめる」ことは出来ても,最後に大損したとき「今の賭けはな かったことにして欲しい」と言っても通用しない. 命題2.1.16{£}が右連続ならば,ア(ω)が停止時刻であるための必要十分条件は,任意のオ に対し{ω∈Ω;ア(ω)<孟}∈㊨となることである. 【証明】{ω∈Ω;γ(ω)≦昌を簡単に{丁≦オ}と書く.. (必要性){丁く昌∈斜とすると,単調性から. {T≦孟}一∩{・<オ+一∩{・<舌+去},∀鳶∈N π=1. π=た. 任意のたに対し∩撫{7一く孟十1. π}∈ら暴だから,㊨の右連続性から. {7’<孟}・∩乙.器一㊨・略. ん=1.
(22) 16. 2.Brown運動とマルチンゲール (十分性){τ≦昌∈∫}とする・任意のηについて{丁≦ト紐∈フ弘告⊂£であるから,. 圃一〇{・≦孟一∈斜.. ・. π=1. 命題2・1・17】R一斗確率過程{瓦}は右連続で㊨に適合しているとする.{乃}が右連続のと. きRの開部分集合Gに対して,. oinf{孟≦0;Xε∈σ○○}8鑛ミ σσ一. とすると,σGは停止時刻である.また{Xオ}が連続ならばRの閉集合Fに対しても同様に σFを定義すれば停止時刻である. 【証明】(前半)Q+を非負有理数全体の集合とする. {σG≧オ}一{ω;x。(ω)∈oc,・<オ}一∩{ω;x。(ω)∈oc}. T〈ち7’∈Q十. であるから,補集合を考えれば {σσ<オ}一∪{ω;X。(ω)∈G}一U{ω;X。(ω)∈G,・〈オ} γ<ちγ’∈Q十. γ・∈Q十. となる.ここで{ω;X。(ω)∈G,γ<オ}∈斜から{σG<オ}∈五が分かるのでσGは停止 時刻である. (後半) 点と集合の距離をρ@,F):=inf{1¢一ッ1;〃∈∫}とし,(端=勧;ρ@, F)〈紐と. おくとGπは開集合.従って上よりσσ.は停止時刻となる. また,(%⊃Gη+1よりσG.≦σo叶1すなわち{σσ。}は単調増加ゆえ,1imσσ.=σとお. れ くと,{σ≦孟}=∩離1{σG.≦弓∈斜となる.従ってσも停止時刻となり,{瓦}は連続で あるからXσ=lim XσG. a.s.である.任意のπに対してF⊂(7鴨だからσG.≦σFであり, れ σ≦σFが分かる.. 一方,任意のπに対してX。∈σηだからX。∈∩窪1(㍉=一FゆえσF≦σも成り立つ. 以上からσ=σFがいえ,σが停止時刻だからσFも停止時刻となる. ■ 命題2.1.18匹:={.4∈∫;任意の孟≧0に対して且∩{ω∈Ω;τ(ω)≦昌∈£}とする と,みはσ一加法族であり,7は∫レ可測である. 【証明】以下よりみはσ一加法族である. i) の∩{7・≦オ}=の∈£.. ii) 且∈呂のとき.4 u{τ〉弓=(孟∩{T≦孟})u{ア〉オ}∈斜. 従って,.4c∩{T≦昌=(.4U{τ〉孟})c∩{丁≦昌∈斜から.4c∈」弓.. iii) .4η∈呂,η=1,2,_とすると(U陰1.4の∩{T≦オ}=U窪1(一Aπ∩{ア≦孟})∈£で. あるからU雛1.4π∈匹..
(23) 17. 2.Brown.運動とマルチンゲール また,.A={ω;γ(ω)≦α},∀α≧0とすると,任意のオ≧0について. α〈孟のとき直∩{丁≦昌=ノ[∈乃⊂㊨であり, α≧舌のとき孟∩{7≦昌={γ≦弓∈.乃である.. 従ってTは∫い可測である.. 』. ■. 停止時刻は次の性質を持つ.証明は文献[12,p14]を参照. 命題2.1.19(Ω,∫,P;㊨)上に停止時刻σ,7が与えられているとする,このとき,次のこと が成り立つ. i) σ>T:=max(σ,τ),σ〈γ:=min(σ,γ)は共に停止時刻である.. ii) σ≦τa。s.ならばん⊂匹である. iii). 」1=芝「〈7國 = 亀フ=三「 ∩ ●フ[;「. .. iv) {ω∈Ω;T(ω)<σ(ω)}∈フ㌦〈τ, {ω∈Ω;丁(ω)≦σ(ω)}∈フちくT.. 2.2 マルチンゲール 定義2.2.1(Ω,∫,P;斜)で定義された確率過程{X議∈Tが以下の条件を満たすとき,斜一マ ルチンゲール,または単に,マルチンゲールという.. i) {X身は㊨に適合している. ii)・任意の舌∈Tに対し, E[lx孟1]<○○. iii)任意の孟≧8,孟,8∈Tに対し, E[X!1∫』]=X。 a.s.. また,上の条件iii)をE[xホ1ゐ]≧x、 a.S.とした場合の{瓦}をA一劣マルチンゲールとい い,E[X司鑑]≦X, a.s.とした場合の{瓦}を危一三マルチンゲールという.. ここで,マルチンゲールの例をいくつか示す. 例2.2.2Xを(Ω,∫,P;君)で定義された可積分な確率変数とする.易:=一E[X囚とおけ. ば{Z身は乙一マルチンゲールである.実際5≦孟のとき次が成り立つ. E[Z11乙]=E[E[X岡1凋=E[Xl∫』]=z。 次の命題は本論文の今後の展開に深く関わっている. 命題2.2.3{B孟}t∈Tを(Ω,∫,P;£)で定義された£一Brown運動とする.このとき,. i){B・} ii){B・2一孟}. iii){・・峠},σは定数. はすべて£一マルチンゲールである.. 【証明】i)5≦オに対して,BrB、はみと独立だから E[B・一B。囚一E[BrB。]=0. よって,E[B・四一B、.. ii)E[B、2−B、2囚一E[(BrB,)2+2β。(Br B。)囚一E[(B・一B。)2囚 一E[(BrB,)2]一オー・..
(24) 18. 2.Brown運動とマルチンゲール よって,E[B・2一オ囚一β、2一・.. iii)E[eσ島一転]一・・島一弓亡E[・・(一)1ゐ]一・・島一毛E[・・一]. _。・瑞一穿・e穿(・一・)_。・B・一直・. ■. 次にT=[0,00)として,マルチンゲールに関する重要な定理を二つ述べる.証明は文献 [12,pp.17−27]を参照.. 定理2.2.4(Doobの不等式)確率過程{X弗∈Tを(Ω,∫, P;斜)上の右連続な非負劣マル チンゲールとし,X}=sup IX古(ω)【とおくと次が成り立つ. む オ ア i)λPP({ω∈Ω;X}≧λ})≦E[}XTr],P≧1 ii)E[IXデ【P]≦(P星、)PE[IX・lp]・P>・. {Xむ}がマルチンゲールのとき,Jensenの不等式を用いれば実凸関数!に対し{!(X∂}は劣 マルチンゲールとなる.従って{!(Xt)}が非負であれば{!(濁)}について上の不等式が使 える.. 定理2.2.5(任意抽出定理)確率過程{濁}孟∈Tを(Ω,∫,P;£)上の連続な£一劣マルチン. ゲールとする.このとき,停止時刻σ,丁がσ≦T≦K(定数)a。s.ならば,. E[X。1凋≧X。a… が成り立つ.すなわち,劣マルチンゲール{xオ}はランダムな時刻である停止時刻について も劣マルチンゲールである. {xオ}が優マルチンゲールの場合も同じことがいえるので,{蕩}がマルチンゲールならば停 止時刻についてもマルチンゲールである.. 2.3 二次変分 (Ω,∫,P;斜)をフィルター付き確率空間とする。本節を通じて{£}孟∈Tは右連続であり,. かつ次の条件を満たしているものとする. ノゾ:={五⊂Ω;ヨB∈∫s.t..4⊂B, P(B)=0}⊂フ:b. (2。2). 定義2.3.1[0,00)に値をとる確率過程.4:={.4t(ω)}剣。,。。)が連続増加過程であるとは,. i) 連続かつ£に適合している. ii) 孟1<孟2ならばん、≦ん2〈Oo a.S.. であるときをいう.連続増加過程全体を賄,.で表す.さらに 媛・一{孟1一孟2;孟1,且2∈燐,。}. とする.また,連続マルチンゲール全体を鴻とし,各p≧1に対して 轟,.:={M:={妬}オ∈T∈%;任意のオに対して珂1妬凹く○○} とする..
(25) 2.Brown運動とマルチンゲール. 19. 本節の目標は,次の定理を示すことにある.. 定理2・3・2任意の.M∈鴻,.に対して,〈M>o=0なるくM>∈燐,。が一意的に存在して, M2一〈M>はマルチンゲールとなる. 1次元Brown運動{B孟}はあ,。の元であるから,この定理は命題2.2.3の一般化でもある. 準備として,仮定を.M∈級,。に強めて示す. 補題2.3.3.M∈鴻,.とする. Q孟(ハ4;△)を定理2.1.5のものとするとき,〈M>o=0なる. くM>∈燐,.が唯一つ存在して,1△1→0のとき Qt(M;△)→〈M>孟ill L2(Ω),∀t. であり,かつハ42一〈M>はマルチンゲールとなる. この主張の証明のためにさらに補題を三つ用意する.証明は文献[12,pp.27−32]を参照.. 補題2.3.4.M∈姦とするとき,M∈矯ならば砺=輪a.s. 補題2.3.5M∈鴻,.のとき,分割△に依らない定数0があって, E[Qt(.M;△)2]≦0.. 補題2.3.6{y『@)}匠Nを£に適合した連続確率過程の列で. 識E[・upl準L準3<孟)12]一・. なるものとする.このとき,ある連続確率過程yで£に適合したものが存在して,. P(囎i穿)+・)一・かつ煙[響1準)二一・ を満たす.. 【補題2.3.3の証明】. (一意性).M2_4,.M2一.Aはともにマルチンゲールで,,A,.4∈麟,。とする.. このとき孟一.A=(.M2一.4)一(.M2一、4)はマルチンゲールとなり,しかも且一、4∈属で ある.従って補題2.3.4より,任意のオに対して.A一.4一、40一.Ao=Oa.s. (存在)(5「加p1)まず,分割△πで1△。1→0なるものをとるとき,{q(M,△の}が五2(Ω). でCauchy列であることを示す. △:オ。=0<ちd2<…<ちくkオπ+1〈…なる分割をとる.高く5<オん+1とすると, マルチンゲール性より E[(鰍+、一徳)2囚一珂(妬、+、一二)2囚+(M。一面)2・ またθ〈ちくちのときE[(1叫ゴー1喚)21∫乙]=珂1脇ゴ2−1喚21∫司だから. 珂⑦(ハ4;△)1勾一書(悔・一剛+E[書(悔一晦祠 一Q、(.M;△)+E[雌2一払2囚..
(26) 20. 2.Brown運動とマルチンゲール 従って 1ヲ[Q古(M;△)一Q8(M;△)ljl『3]=E[1レ1∼一ハ4821ゐ]. (2.3). となるから 谷戸2−Q,(M;△)囚一義晒2−Q。(M;△)一(Q,(M;△)一Q。(M;△))囚. 一E[砿2−Q。(M;△)] がいえるのでハ42−Q(M;△)はマルチンゲールである.. ムノ%=0<遊くちく…<塩く舌く塩+1<…を別の分割とすれば,.M2−Q(.M;△’) もマルチンゲールで,補題2.3.5よりQオ(、M;△),q(M;△’)∈L2(Ω)だから 五孟:;Qオ(ハ4;△)一Qオ(M;△’). とおけば{五孟}∈謁,.となる.よって(2.3)により E[Q、(L;△U△’)一Q。(五;△∪△’)囲一E[五,2一五。2【ゐ]. が成り立つが,(∼o(五;△∪△’)=0,玩コ0に注意してあらためて両辺の平均を取れば, 珂L∼]=珂Q舌(五;△uムノ)]すなわち次式を得る。 E[(Q・(M;△)一Q・(M;△’))2]一E[Q・(Q(M;△)一Q(M;△’);△U△’)] (2・4). △U△’:80〈81〈…<5i<オ<5Z+1とし,ち≦旧く亀+1≦ち+1とすると Q。、+、(ハ4・△ ,)一Q,、(M;△)一(M。、+、一砺、)2一(Mべ妬、)2. =. (・M5発+1一砿k)(・砿ん+1−1−M8k−2妬ゴ). であるから. よ. Q・(Q(M;△);△∪△’)一Σ(Q、、+、〈・(M;△)一9。、(M;△))2. んニむ ≦・upi砥、.、+砥、一2職、12Q・(M;△∪ムノ). た となる.さらに Q・(Q(M;△)一Q(M;△’);△U△’)≦2Q・(Q(.M;△);△U△’)+2Q・@(M;△’);△U△’). に注意して,(2。4)にSchwarzの不等式を用いれば E[(Q(M;△)一C(M;△’))2]≦2E[Q・(Q(M;△);△U△’)]+2E[Q・@(M;△’);△U△’)ユ. ≦2E[・呈pl蜘、+鑑矧去E[q(M;△叫ユ去 +2E[・呈pl砿 +嶋一2鰍14]㌔[q(M;△叫]去.
(27) 21. 2,Brown運動とマルチンゲール ここでsup副砿、+、+1喚、一2Mlゴ14≦44(韓)4に注意すれば, Lebesgueの収束定理により. 1△1慨→。E[・呈Pl蜘・+峨一2砥ll≦E[1△楓。s呈P隆刊+嶋一2妬・14] 妬(ω)は[0,司でa.s.に一様連続だから,右辺は0.ゆえに補題2.3.5を用いて lim −E[(Q(M;△)一Q(M;△’))2]=0. 1△【,1△’i→0. つまり,1△π1→0なる分割の列に対して{Q亡(M;△。)}はし2(Ω)のCauchy列である.. (8オep2)各孟>0に対して,分割の列△πを1△司→0,π→○○となるようにとる. {Q。(M;△π)一Q。(M;△の}o≦。≦孟はマルチンゲールなので,Doobの不等式を用い,その後. m,η→○○とすれば. E[響1轍へ)一⑦(M;△m)1・1≦4E[IQ雌)一Q・(M;△一)1・]→・・. Q(M;△π)は£に適合した連続確率過程だから,補題2.3.6より£に適合した連続確率過 程〈M>が存在して P(1im sup[Q.(M;△の一〈M>、ド0η→Oo 8<オ)一・・撃払1α(M;へ)一〈M>・1・]一・(Z5). が成り立つ.また五2(Ω)の完備性から〈M>,∈L2(Ω),∀8でもある.. あらかじめU箆、△πは[0,・司で稠密で,△π⊂△叶、,∀πととっておけば,8、<82なる 任意の81,82∈△πに対してQ。1(M;△の≦Q。2(M;△のであることから,〈M>、はU窪1△η. で単調非減少となる.従って〈M>、は[0,司で単調非減少であることが分かる.また,この 〈M>。がオについて整合的にとれていることは明らかだからくM>∈娠,.の存在がいえた. さらに.M2−Q(M;△のがマルチンゲールであることから 珂妬2一〈M>,囚一字Q、(M;△。)一〈M>,囚一E[妬しQ,(M;△。)i凋 一M、2一〈ルf>8十(〈ハ4>s−Q8(ハ4;△π)).. ここでη→Ooとすると,補題2.3.5と(2.5)から E[Q、(M;△。)一〈M>、囚→o,〈M>。一Q。(M;△。)→Oa.s.. である.従ってE[砺2一〈M>耗]=E[M。2一〈M>。]a.s.がいえるので.M2一〈M>もマルチ. ンゲールである.. ■. 【定理2.3.2の証明】ρπ=inf{ち1妬1≧η}とおくとρπは停止時刻で,ρπ/Ooとなる. {妬くρ。}:={ル磨}は有界マルチンゲールとなるから,補題2.3.3によりある.準∈媒,。が. 存在して,各ηに対して(.Mρっ2一.Aπはマルチンゲールとなる. (ρπ+1〈のくρπ=ρπ〈オであるから(1曜叶1)ρ・=!曜πが成り立ち,従って次が分かる.. ((躍π+1)2一環+1)ρ㌧(礎)2一鰐+1)ρπ.
(28) 22. 2.Brown運動とマルチンゲール. 左辺はマルチンゲールだから一意性により(理+1)ρ・=.肇となり,(.4勃ρ・=.鰹,∀m>π. が成り立つ.従って整合的に〈M>ガ=lim.響と定義できる.このとき π→◎o (ル砂)2一〈M>8π=(A4り2−lim(.4野)ρη=(ハ4π)2一・47. m→oO となる.右辺はマルチンゲールだから,任意のnに対して左辺はマルチンゲールである.従っ てE[(1曜つ2一く.M>2η]=珂!矯2一〈M>o]=0だから,単調収束定理により E[〈M>ヵ]=1im E[〈M>2π]=lim E[(ハ4倉)2].. π→oo π→Oo l躍π12≦11吟P∈五1からLebesgueの収束定理を用いればlim E[(躍つ2]=E[ルη2]<○○. π→∞ よって〈M>孟∈五1となり.Mノー〈M>孟∈五1がいえた. 一方,(114ρ・)2一〈M>ρ・はマルチンゲールだから,任意の.4∈みに対し. E[(躍つ2一〈M>fπ;刈一E[(M’つ2一〈M>8・;川. が成り立つ.ところがK1曜π)2一〈M>創≦1雌12+1〈M川∈L1からη→∞としてLebesgue の収束定理を用いればE[脇2一〈M>孟;.4]=E[1匠。2一〈M>。;.4]が成り立ち,上と併せて. .M2一〈M>がマルチンゲールとなることが分かる.. ■. 次に上の議論を.Mが,次に定義する局所マルチンゲールの場合に拡張する.. 定義2.3.7フ}に適合した連続確率過程{X身に対して㌔/○○(0≦孟≦Tで考えるとき はη、/T)なる停止時刻の列があって,各ηに対して{X丹:={全く。。}がマルチンゲール となるとき{X孟}は連続局所マルチンゲールであるという.また,連続局所マルチンゲール 全体の空間を遜,‘。、と表す.. 連続局所マルチンゲールに対して補題2.3.3を適用すれば,定理2.3.2の証明と同様の議論 により,次の系が得られる.詳しい証明は文献[12,pp.35−36】を参照. 系2.3.8.M∈%,z。。とするとき,. i) 〈M>o=oなるくM>∈広,。があって,.M2一〈M>∈鳳,z。。となる.また,このような 〈M>は一意である.. ii) 字引>oに対して[o,司の分割の列{△π}をとるとき (. lim P sup【Q,(.M;△π)一〈M>、1>ε i△司→0 5く亡. )一¢∀・〉・・. iii) 輪=oのとき,.M∈謁,,であることと,任意のオに対してE[〈M>,]<Ooであるこ とは同値であり,さらにこのとき珂1風2]=珂〈M>、]となる. 系2.3.9.M,1V∈遜,‘。。とするとき,〈ハ4,2V>o=0なるくM,1>>∈嬬が一意的に存在して i)MIV一〈M,!>>∈孤五。、.. ii) 各オ>oに対して[o,司の分割の列{△π}をとるとき 1撫。P(suplQ3(1レノ,1>『;△π)一〈ル∫,1>5≦古〉・i>・)一軌∀・〉・.
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