DV-Xα法による銀系超イオン伝導体の電子状態
109
0
0
全文
(2) 目次. 第1章緒言 第2章計算方法 2.1Xα法 2−2DVXα分子軌道法 馬3章 結果及び考察 3−11価陽イオンとハロゲン化物イオンの結合状態 3−1−1MX 4クラスターモデルと計算条件 3−1−21イオンとの結合状態 3−1−3 Ag,CUアルカリ金属イオンとハロゲン化物イオンとの結合性. 3−2銀系超イオン伝導体の電子状態 3−2−1 α一AgI結晶の電子状態 3−2−1−1Ag26130クラスターモデルと計算条件 3−2−1−2 Ag26130クラスターの結合状態 3−2−2 α一AgI中のAgイオンの移動に対するモデルクラスター. 3−2−2−1Agイオンの移動経路 3−2−2−1−1 AggIlo, Ag6110クラスターモデルと計算条件. 3−2−2−1−2移動経路の違いによる結合状態の相違 3−2−2−2移動経路上のAgイオン数. 3−2−2−2−1AgNIloクラスターモデルと計算条件 3−2−2−2−2移動経路上のAgイオンの影…響 3−2−2−3 クラスターサイズの影響. 3−2−3 α一AgIのイオン伝導性 3−2−3−1AgイオンとNaイオンの比較 3−2−3−1−1M12114クラスタ・一一・一モデルと計算条件. 3−2−3−1−2イオン移動に伴う結合状態の変化 3−2−3−1−3イオン移動に伴う周辺Mイオンの結合状態変化. 3−2−3−2 α一AgIとβ一AgIの比較 3−2−3−2−1β一AgI結晶中のAgイオンの移動に対するクラスターモデルと計算条件 3−2−3−2−2結晶構造の違いによるAg’イオンの移動に伴う結合状態の変化 3−3イオン伝導度のパラメ・・一・一タ・一一. 3−3−1M、3×14クラスターモデルと計算条件 3.3−2活1生化エネルギー、結合次数、勒道エネルギーの相関. 第4章. 結論. 参考文献.
(3) 第1章. 緒 言. 近年、パソコンや携帯電話など電化製品の小型・軽量化が進む中、電 源としての二次電池の聖なる安全性向上、小型・大容量化が望まれてい る。そのような中、より安全で、高エネルギー密度な電源として、全固 体二次電池が注目されており、固体電解質に関する研究が進んでいる。. 電気伝導は、荷電担体の種類によって、電子伝導とイオン伝導に分け ることができる。電子伝導が起こるのは、一般に原子や分子が集まるこ とによって、電子の移動に好都合な伝導帯と呼ばれる状態が形成される ことによる。原子と分子が集まるという点では、液体も固体も関係する. が、液体の場合には、形成された伝導帯は、電子が速く移動するのに適 さず移動度は小さい。原子や分子が規則的な配列をしている結晶におい. ては、移動度が大きくなり得るので、伝導に関与することのできる電子 が存在すれば、高い伝導度が保証される。金属や半導体などが、その典 型的な例である。一方、イオン伝導が生じる場合は、荷電担体となり得 るイオンが存在し、且つ、ある速さで動く必要がある。イオンは電子に. 比べてはるかに大きいサイズ(半径)と質量をもつので、一般に固体中 を移動するのは困難である。そのため、イオン伝導を必要とする分野の 多くでは、溶液が使われている。. 電子伝導は、荷電担体が電子(負の電荷をもつ)のときと、電子の抜. け穴(正の電荷をもつ)としての正孔のときの2種類に分けることがで きる。このような電子伝導が、現在のエレクトロニクスを支える基本と なっている。. 一方、陽イオンや陰イオンのようなイオンが荷電担体となる分野は、 エレクトロニクスに対してイオニクスと呼ばれる。. エレクトロニクス分野において、気体(真空管)が固体(トランジス タ)に置き換わって小型化が可能となり、信頼性が向上し、現在のエレ クトロニクス時代が実現したことは周知の通りである。これに対して、. イオニクス分野では、電解質溶液が主流であって、固体素子化はまだ進 んでいないのが現状である。これが、電解質溶液に変わり得るような、. イオン伝導性の極めて高い材料、いわゆる「超イオン伝導体」(または 一1一.
(4) 固体電解質)の探索が盛んに行われているゆえんである。 イオンは電荷をもつだけでなく、大きなサイズと質量を有するので、. ある種の特別な条件が満たされたときに、初めて固体中の移動が観測さ れることになる。. それらの条件として、次の3つがよく知られている。(1). (1)格子欠陥が存在すること(安定化ジルコニア). ジルコニアZrO2に酸化カルシウムCaOを添加すると、4価のZr の位置に2価のカルシウムが入る。このままでは、電気的中性を 満足しないので、酸素の格子欠陥を生じる。そのために、酸素イ オンが動くことができるようになる。 (2)層状構造(βアルミナ). βアルミナは、Na20・11A1203という組織を持った層状結晶で ある。その層と層の間の結合は、層内に比べて弱い結合である。Na+. イオンはそのような層間に存在するために、よく動くことができ る。イオンが動くのに適したトンネルが結晶中に存在するホーラ ンダイト構造と呼ばれるものもある。. (3)平均構造(α一AgI) d−AgIは147℃以上で存在し、 ISt S cm’iに及ぶ電解質溶 液と同等かそれ以上の導電率を持つ。しかも、このような高い導. 電率をイオン伝導だけで示すということがわかっている。Agイ オン周辺の局所的な構造を見ると、Agイオンに対して1イオンが 四配位しているという比較的単純な構造をしている。より大きな 構造として見ると、イオン半径の大きな1イオンが体心立方格子を. 形成し、単位格子中に1イオンは2個存在する。AgIという化学 量論を満足するためには、Agイオンも単位格子中に2個存在す ればよいことになる。しかし、単位格子中にはAgイオンにとつ て等価な位置が12箇所あり、Agイオンはそれら12個の位置 のどこかに固定されるのではなく、平均的、統計的に分布してい 一2一.
(5) ると考えられており、一般に平均構造と呼ばれる。このような平. 均構造をもっために、Agイオンは実質的に溶融状態と同じくら いによく動くことができ、高いイオン伝導性を示すと考えられて いる。. 上記の3つは、結晶材料で高いイオン伝導性を得る方法であり、この ような高いイオン伝導性を示すものは、「超イオン伝導体」と呼ばれる。. このように、超イオン伝導体はすでにいくつかのものが知られており、. イオン伝導という特別な物性を引き起こす要因についてもある程度の部 分が解明されている。特に、安定化ジルコニアの格子欠陥やβアルミナ の層状構造は、その結晶構造がイオン伝導性を引き起こす要因となって. いる。しかし、平均構造のα一AgIについては、 Agイオンというイ オン半径の大きく、重いイオンがイオン伝導性を示す。Agイオンは同. 程度のイオン半径を持つNaイオンやイオン半径の小さなLiイオンに 比べても、高いイオン伝導度を示すことがわかっている。Agイオンの ような比較的大きなイオンがこのような高いイオン伝導性を示すのは、. 構造上の要因だけで考えることは難しい。これらのことから、α一Ag. Iのイオン伝導性はAgイオンと1イオンの間の電子状態が要因となっ. ているのではないかと考えられる。つまり、α一AgI中のAgイオン 周辺の電子状態を検討することにより、超イオン伝導という非常に特徴. 的な物性の要因について解明できるものと考えられる。また、α一Ag Iの電子状態の特徴を知ることにより、超イオン伝導性を示す物質の探 索や、材料設計の分野での応用が可能になるものと思われる。. そこで、本研究では、α一AgIをはじめとする世系超イオン伝導体 の電子状態を解明することを目的とし、様々なモデルクラスターについ て分子軌道計算を行った。. DV−Xα分子軌道法は非経験:的分子軌道法の1つで、数値関数を用い て原子のシュレディンガ・一・一・方程式を解き、波動関数とポテンシャルを求. めるため、周期律表のすべての原子について同じ精度で扱うことができ. るという特性を持つ。また、Xαポテンシャルを用いるために、大きな 系でも比較的短時間で正確な計算ができる。そのため、遷移金属クラス 一3一.
(6) ターや金属化合物、金属錯体のクラスターの計算などで利用されている。. 本研究ではまず、周期律表上の希ガスを除く様々な原子について、1. イオンが4配位した正四面体構造のMI4クラスターを用いた計算を行 った。ここで、様々な陽イオンとハロゲン化物イオンの結合状態を比較 することで、ハロゲン化物中の様々な陽イオンの電子状態を定性的に比. 較することを目的とした。特に、Agイオンと同じ1価陽イオンになる. アルカリ金属イオンやCuイオンについては、1イオン以外にBrイオ ンやC1イオンを用いた場合についても計算を行い、ハロゲン化物イオ ンの種類による結合性の変化について検討した。結合性の評価は、ポピ ュレーション解析のより求めた結合次数と実効電荷の相関を用いた。. 続いて、α一AgI結晶学のAgイオンと1イオンの結合状態につい てより詳細な検討を行った。. α一AgI結晶のモデルとしては、α一AgIの単位格子を拡張する ことでクラスターを作成した。また、周辺のイオンのクーロンカも考慮 するために、マーデルングポテンシャルを計算に取り入れた。. 次に、Agイオンの結晶中での移動をシミュレートするために、移動 イオンの位置を変えたクラスターを用いて、移動イオンの位置の違いに よる結合状態の変化を調べ、Agイオンの高いイオン伝導性と電子状態 との関係をより定量的に検討した。. さらに、イオン伝導性とその電子状態の間の、より一般的な関係を調 べるため、分子軌道計算により得られる様々なパラメーターと、イオン 伝導の活性化エネルギS一・一d一の間の相関について検討を行った。. 一4一.
(7) 第2章. 計算方法. 2−1 Xα法 Xα法は、1951年J.C.Slaterにより提案された向山トリー・フォック・. スレーター法のことで、分子のみならず原子の電子状態や、固体のエネ ルギーバンド理論にも広く適用されている。. 一電子のシュレディンガー方程式は (一 ll Vi2 + Veff (1)]ipi (1) = Ei ¢i (1) (2.i) ’. と表せる。ここで、添字1や(1)は電子1に関する演算子およびその 座標を意味する。φiは波動関数で、原子では原子軌道、分子では分子 軌道、固体結晶では周期的なブロッホ型関数である。また、εiはその エネルギー固有値である。有効ポテンシャルVeffは F Z41i}‘V ’」1EII(ii12,2)dV2 ’Vex(1) (2.2). v,ff(1)=. と表すことができ、第1項は原子核vによる引力ポテンシャル、第2項 は注目している電子と他の電子間の反発のポテンシャル、第3項は第2 項に含まれる自分自身との間の反発を差し引くための交換ポテンシャル. である。ここで、Z。は原子vの原子番号、 r1。は電子1と核vとの距. 離、ρ(2)は位置2における電子密度、r12は電子1と2との距離で ある。この式により有効ポテンシャルVeffを求める場合、第1項と 第2項は比較的簡単に求めることができるが、第3項の交換ポテンシャ ルは多原子分子の場合、複雑な計算になる。交換ポテンシャルは、ハー トリー・フォック法では :i 」¢i*(i)¢j“(2)(i/ri,)¢j(i)¢i(2)dv2. v,x(1)=ノ ¢,“(1)¢, (1). 一5一. (2.3).
(8) と表すことができる。この式の積分は多原子分子の場合、一般に四中心 積分になるので非常に複雑であり、長時間の計算が必要になる。. Slaterは交換ポテンシャルの計算を簡単にするため、自由電子模型で 近似し、さらに統計平均をとることにより、交換ポデンシャルが電子密 度ρの約1/3乗に比例することを見いだした。次にSlaterは、この近似 を一般の原子や分子に拡張するため、パラメーターαを導入して Vex T (1) = 一3af(2ili p T (1))ii3 (2.4). と置いた。ここでρ↑は上向きスピンの電子密度で、上向きスピンの電. 子に対する交換ポテンシャルVeff↑がρ↑のみの関数になっているの は、交換相互作用が同じ向きのスピン間についてのみ起きるからである。. 下向きスピンについても同様の式が成り立つ。また、全電子密度はρ= ρ↑+ρ↓である。. Xα法では交換ポテンシャルは式(2.4)で表されるが、式(2.3)の ように複雑でなく、局所スピン密度ρ↑(1)がわかれば簡単に計算でき. る。上向きスピンの密度は ρ↑(1)=Σni↑1φ∫↑(1)12 (2.5). げ. として求まる。ここで、ni↑は上向きスピン軌道iの占有数で、電子 の入っている軌道では1、空軌道では0である。 交換ポテンシャルの物理的意味は次のように考えられる。一電子模型. では電子の運動状態は、一電子軌道φi↑で表され、その存在確率(電. 子密度)は位置1では1φi↑(1)12である。1φi↑12は全空間で積 分して1になるので、1φi↑(1)12は1より小さい。しかし、実際に は、注目している電子1がその位置に存在する瞬間は、その点での電子 の密度は1と考えられる。したがって、その電子の勢力範囲があり、そ の範囲の電子1個分に相当する電荷がその点に集中し、その分まわりで は電荷が不足すると考えられる。この電荷の不足した領域をフェルミ孔 という。電子1のまわりに電荷の不足が生じると、静電反発のポテンシ 一6一.
(9) ヤルがその分減少する。電子1に作用するポテンシャルは式(2.2)で. 表されるが、第2項が電子雲による静電反発の項なので、その電荷不足 の分だけ静電反発ポテンシャルを修正する必要がある。この項がVe、 である。. いま、簡単のため、スピンの密度が一定で、ρ↑ニp↑として、フェル ミ孔が半径rFの球と仮定する。この球の体積は(4π/3)rF3なので、こ れに戸↑をかけると電荷1すなわち(4π/3)rF3・戸↑=1になる。このよ. うな電荷の不足したフェルミ孔が存在すると、位置1の電子に作用する. 静電ポテンシャルが減少するが、その減少は一3/2rFである。すな わち. 晧÷警戸↑プ (2.6) となり、スピンの密度p↑の1/3乗に比例することがわかる。実際のフ ェルミ孔はこのように簡単な、はっきり端のある球状のものではなく、. 式(2.4)でより正確に表される。ポテンシャルはパラメーターαの値 によって変化するが、自由電子ガスの場合は、α=2/3になる。. 実際の原子の場合は、例えばハートリー・フォックス法で得られた結 果と一致するようにαを決めることができる。このようにして、Schwarz らはαの最適値を求めている。これによるとαの値は、周期律表にした. がって、H:0.978,He:0.773,Li:0.781,Be:0.798,…と変 化し、その後原子番号が大きくなると徐々に2/3に近づいていくが、 大部分の原子で0.7に近い値になる。分子軌道計算では、分子中の各原 子にこのようにして決めた値を用いてもよいが、すべての原子について α=0.7として計算しても、より厳密な密度汎関数法で得られる結果や. 実験結果とよく一致する結果が得られている。本研究では、すべての計 算でα =O.7を用いた。. 一7一.
(10) 2−2 DV−Xα法 Discrete variational(DV)一Xα法はD.EEllisや足立裕彦らが固体 のエネルギー・バンド計算のための手法を分子軌道計算法として発展さ. せた方法である。分子軌道法ではまず原子核の位置が固定していると仮 定する(断熱近似)。次に、波動関数は、分子全体に広がりを持つよう. な軌道を電子が運動することを仮定するので、複数の散乱中心を持つ波 動を表すものになる。このような関数を表すのに、分子軌道論では通常、. 原子軌道の線形結合をとって近似する。この方法はLCAO法(Linear Combination of Atomic Orbirals)と呼ばれる。この方法では、分子軌道. を表す波動関数は {il>,(1) :ZC,,・x,(1) (2.2.i). i. と表せる。ここで、Xiは原子軌道を表す波動関数でこれが基底関数と. なる。Xiにかかる係数Cilは原子軌道Xiの振幅の大きさを決めるも ので、分子軌道が異なると違う値をとる。DV−Xα法ではXiは、実際 の物質中に存在する原子に対するシュレディンガー方程式を解いて得ら れる原子軌道関数である。この方程式は、数値解法によって計算される ので、波動関数もポテンシャルの数値関数である。. 分子軌道計算は次の永年方程式と呼ばれる連立方程式を解くことによ って実行される。 Z(HiJ・ 一 £kSil・ )Cjk = O (2.2.2) ノ. この問題は行列の形で表すと. (A−gS)6 =o (2.2.3). となり、行列HとSの要素HijおよびSijの値が与えられると、固有 値εと固有ベクトルCとが得られる。この方法はシュレディンガーの 微分方程式を直接解くのではなく、代数方程式を解くことにより分子軌 道を求める。 一8一.
(11) これらの行列要素は Hi,・ = Jxi“(1)Hx」(1)dv, (2.2.4). Siノ=∫Xi“(1)・ICノ(1)dVi (2.2.5). で与えられる。ここで(2.2.4)式のHは一電子ハミルトニアンで、X α法では H(i) = 一一Sv? 一¥ftt’ +」1El;( !22)dv2 +vxc(i) (2.2.6). である。また、(2.2.4)(2.2.5)式の積分は、XiとHが与えられると計. 算できるが、実際に積分が可能な形の関数でなければならない。そのた. め、通常の分子軌道法では、Xiとして原子軌道の代わりにスレーター. 型軌道(STO)やガウス型軌道(GTO)関数を用いて計算を行う。 DV−Xα法では、この積分を数値的に行うのが特徴である。それは変 分原理が空間の任意の点で成り立つことに基づいている。通常の方法で は(2.2.4)(2.2.5)式の積分を行うのであるが、DV−Xα法では三次元. 空間にいくつかのサンプル点を選び、その各駅で変分原理が成り立つこ とから、その点での原子軌道やポテンシャルの値を求め、各国の重みを かけて全サンプルについて和をとるのである。つまり、. HiノーΣωωκ済ωHωκノω. (2.2.7). k=1. SiノーΣωωκノωκノ(rk) (2.2.8). k=1. として計算する。ここでrkはk番目のサンプル点で、計Nのサンプル 点での和とする。ω(rk)はその点の重みで積分の場合の体:三三片dv に相当する。. 以上述べたような方法で、永年方程式の行列要素を計算し、行列の三 一9一.
(12) 有値問題を解くと分子軌道1のエネルギーε1および波動関数φ1が求 まる。軌道エネルギーはそのままプロットすると、価電子のレベル構造 などが明らかになる。また、波動関数φ1を2乗して、エネルギー・・hの低 い軌道から電子をつめていくと、分子全体の電子密度ρ(r)が得られる。. これを全空間で積分すると分子の全電子数になる。これをnとすると (2.2.1)式を利用して. n一∫ρ(r)dr一Σ小(r)12dr l 一ΣガΣΣq1ら∫κノ(r)xノ(r)dr l. i ノ. 一ΣΣ2ノ ノ. Zc, i と書くことができる。ここで Ci,・ = ZfiCiiCj,Si,・. 1. をoverlap populationと呼び、原子軌道iとjの間の共有結合の強さの 尺度と考えることができる。この値が正の場合は結合性で、負の場合は. 反結合性の相互作用になる。またQiは原子軌道iの占有電子数と考え ることができ、orbital populationと呼ばれる。. このような電子密度の解析方法はマリケンが提案した方法でMulliken population analysisと呼ばれている。電子密度は波動関数の2乗という. 形で求められる。これを軌道電子数の和という形にするため、厳密な意 味の密度解析ではなく、あくまでも便宜的なものである。しかし、物質 の電子状態を分かりやすく説明するためには大変有効な方法である。. 一10一.
(13) 第3章 結果及び考察. 3−1 1価陽イオンとハロゲン化物イオンの結合状態. 3−1−1 MX4クラスターモデルと計算条件 ハロゲン化物中の様々な陽イオンの電子状態を定性的に検討するため、. 陽イオンに1イオンが4配位した正四面体構造のMX4クラスターモデ ルを用いた。そのモデルを図3.1.1.1に示す。図中、大きい球はハロゲ ン化物イオン、小さい球は陽イオンを表している。 原子間の結合距離は、Shanonの有効イオン半径(2)をもとに算出した。. 計算上では中心のイオンを1価の陽イオン、ハロゲンを1価の陰イオン とし、配位数を4とした。各原子のイオン半径を決定する際に、Shanon. の報告に+1価、4配位の値がないイオンについては、価数の一番小さ いイオンの値を使用した。また、Fや0など陽イオンの値のない元素に ついては、共有結合半径を使用した。. 計算には、陽イオンとして希ガスを除く原子番号1から53番までの 元素とすべてのアルカリ金属元素を用い、陰イオンとして1イオンを用 いた。また、すべてのアルカリ金属イオンとAgイオン、 Cuイオンに. ついては、陰イオンにBrイオン、CIイオンを用いた場合の計算も行 った。. 計算にはTdの対称性を考慮し、マリケンのポピュレーション解析を 行い、実効電荷と結合次数を算出した。. これらの結果から、結合次数と実効電荷の相関を求め、元素の分類と、 その結合性について検討を行った。. 一11一.
(14) Xイオン. Mイオン. ハロゲン化物イオン. 1価陽イオン. 図3.1.1.1MX4クラスターモデル. 一12一.
(15) 3−1−2 1イオンとの結合状態 陰イオンとして1イオンを用いて行った計算の結果を図3.1.2.1に示. す。この図は、縦軸に中心陽イオンと1イオン間の結合次数、横軸に中 心陽イオンの実効電荷をとり、陽イオンを一般的な分類法(3)により、 以下のようにグループ分けして結果を示している。. s電子元素(赤)…Hを含むアルカリ金属とアルカリ土類金属. d電子元素(青)…遷移元素を含む、3b属から2b属 金属p電子元素(緑)…3a属から7a属 非金属p電子元素(紫)…3a属から7a属 また、これらのグループの周期律表上の位置を図3.1.1.2上部に合わせ て示した。. 図より、相関の見られるグループと見られないグループがあることが わかる。相関の見られるグループのうち、s電子元素は結合次数が正の. 値をとり、結合次数と実効電荷の間には負の相関がある。また、d電子 元素についても負の相関が見られるが、s電子グループと比べると相関 が弱いことがわかる。p電子元素については、金属・非金属ともに相関. は見られなかった。この結果から、1イオンとの結合状態は、イオン性 が大きい陽イオンではほぼ同じ傾向を示すが、イオン性の小さい陽イオ ンでは一定の傾向はみられないことがわかった。. これらの中で、s電子元素に特によい相関が見られたことから、アル. カリ金属イオンとAg、CuおよびHイオンについて更に検討を行った。 その結果を図3.1.2.2に示す。図の縦軸には中心陽イオンと1イオン 間の結合次数を、横軸には中心陽イオンの実効電荷をとってある。また、. 図には、アルカリ金属イオンおよびHイオンの結果について二次関数で 最小二乗近似して求めた曲線を合わせて示している。. アルカリ金属イオンとHイオンについては、実効電荷と結合次数には 明らかに負の相関が見られ、実効電荷が大きくなると結合次数が小さく. なる傾向がある。これは、一般的に分子軌道を考える上で、共有結合性 とイオン性が、相反する性質であることと対応している。しかし、同じ. 1価のイオンであるAg及びCuイオンの結果は、アルカリ金属イオン 一13一.
(16) およびHイオンの二次曲線から大きくはずれた位置にあり、同程度の実 効電荷をもつアルカリ金属イオンおよびHイオンと比べ結合次数が低い. 値を示すことがわかった。例えば、Agイオンに注目すると、実効電荷 はリチウムイオンとほぼ同じ値だが、結合次数は0.1程度小さくなっ. ていることがわかる。また、逆に結合次数に注目するとAgイオンはH イオンと同程度の値を示すが、実効電荷は0.14小さくなっている。 Cuイオンについても、 Agイオンと同じ傾向を示すことがわかった。 結合次数は共有結合性の大きさを、また、実効電荷はイオン結合性の 大きさを示していると考えられるため、図3.1.2.2では、共有結合性と. イオン結合性の両方を考慮した場合、図の右上ほど結合が強いことを意 味しており、逆に左下ほど結合が弱いことを示すことになる。このこと. から、二次曲線の左下方向に分布するAgイオンとCuイオンはアルカ リ金属イオンおよびHイオンと比べ、1イオンとの結合がイオン結合的 にも共有結合的にも弱くなっていることがわかった。この結果は、アル. カリ金属イオンおよびHイオンに比べ、AgイオンやCuイオンがヨウ 化物中で1イオンより受ける束縛が小さいことを示しており、一般的に. AgおよびCuイオンがアルカリ金属およびHイオンに比べ、非常に高 いイオン伝導性を示すことの要因の一つではないかと思われる。. 一14一.
(17) S電子元素. p電子元素(非金属) val A. 川A 獣懲鷺魯.隊く:・. I d電子元素 1∴同期 ll B響、三罷・㌧1. lllB. 騨野・響野爆一黛”t「1曇ガ t、t ” 』_ 弓二∫織∴・illt,ス 、.. A 下・. ・ 圏’ 馳. ロれ しげ 一 iーゴー・》 t/』Lt恥り・. ・ .. 同工,_幽。晶編1 _監。二三早臥嵐、 p電子元素(金属). 各電子元素の周期律表上の位置. 1 A. 言. ロ. ・. = : 窒 : :. :. Oe4. s電子元素 d電子元素 P電子元素. ≡. (金属). 含 ;. ’. ・。・・・…甜・・鱒・・m・・,叩・・… 叩鱒・…。・・…。・…障…巳餌・。・・ゆ・・。・叫鱒…6・・・…闘・・印。・…. 言 茎 : 書 言. 言 :. : 昌 : :. ×. .. :. 匿. p電子元素 (非金属). 冨. : :. :. 0.2. : :. ●帥●●●讐●●o■腸●・鱒・9の。唇・●曜鴫髄闘■o・uの■8・・闘.o・5. i. .. .. t. 顧 暫. :. :. 器. :. ;. . .. の● ・● o. ・●●吻・●・龍.願・・.,■鱒膨・,..電.闘脚9●●.闘●・・●・. .. l l. : :. : : 零. 言. l. 超0. :. 書. ;. E. l s .. :. 暑. :. 塁. ●●噂9●■●●●曾●Ot●■電●9麿●■. ●層 e●. ■・ の・. 〈ロ. ●●師日闘●,鱒・軸・㈹・閃・.・・●●,. tfo一. : :. 蓄 : : : : : : : ! 茗. .. .. .. :. 一O.2. 富. :. ●謄 剛●曜. 一一一e一“一一一一一一一一一一“t−e−t”一一. ’ 霧 . 一一〇it一 ’. ●.,. :. 邑. i 葛 昌 :. 言 :. 冨. 鳴. 陶. ・…闘・騨・。・・帥嘩叫…輌・…鱒…闘・・・・・・・・・・…閃叫・◎’・●。髄隔’ :. 言. :. :. :. 呂. :. :. :. 言. :. 塁. :. :. 塁. r. i. 塁. 言 .. t. :. .. :. : :. : ’ :. 茎. :. 嵩. :. 豊. 一. .. 1. 昌. :. −O,4. .. :. 1. 一一”一. 匿画5■暉。. 一. .. 星 . : : : 呂 : .. 鱒鱒●●■闘■膠曾。●●喝●肺輪障㈹,幽●し,■・8舶・. ■. 貴■噂 ・臼. ・ 鱒・. 匿臨闘肺●欄・“耶,叫●●巳●昌,騨叫●・會●.巳●師■餌.哺■肺●巨陥巳噸・餌●■騨‘騨・騨・鱒 ロ 竃. 晋. 巴. 3. 蓋. =. :. 言. : .. 一d・1 一bO.5 O O.5 1 実効電荷. 図3.1.2.1 1価陽イオンと1イオンの結合性. 一15一.
(18) 0.3. Cu… i 量旧Li. __.1__L一_…. 0.2. l @. 50.2. i. i. l. i. 0.1. i. 50.1. i. @ i @. i. i. i. i一一一垂一一一…一}・…一…一・雪. 0.O. i1. ii. i. 葦鼻. ・,●,o・●・●,●o. ●,●●. i. o ,●●●■印●●● ●● 豊9」●隔噸. o・ ● ・. , 陰 ●●●●●■ ■. 堰c. i・嗜一一…・一藁_.___嗜____. l ii ii_._ i. ÷一一一一 奄. i ’璽ザ…●7……. i. l. i. i. i i. …… }……i 鼈鼈?S溢一9.1 〈ロ. i i ? i. il. ?i i…. i. ?剛. … …戦鳳_._. ………… }”…………マ…………1……電……ギ“’…. @ i @ i @. i. i. 層. i i ? i. i i. ?. ●. i.. 富. 一〇.2 O O.2 O.4 O.6 O.8 1 実効電荷. 図3.1.2.2. Ag, Cu,アルカリ金属イオンと 1イオンとの結合性. 一16一.
(19) 3−1−3 Ag・Cu・アルカリ金属イオンとハロゲン化物イオンの 結合性. 前節のように高いイオン性を示すAgおよびCuイオンに特徴的な結 合状態がみられたことから、次に、ハロゲン化物イオンの種類による結. 合状態の違いについて検討した。ここでは、1イオンのかわりにBrイ. オン、C1イオンを用いたMBr4およびMC14クラスターについて 計算を行い、その結果をMI4クラスターと比較した。その結果を図 3.1.3.1に示す。図に示している曲線はアルカリ金属のデータについて. 二次関数で最小二乗近似したもので、赤が1イオン、青がBrイオン、. 緑がC1イオンを用いた場合の結果を表している。また、 AgおよびC. uイオンと、それぞれのイオンに近いイオン半径をもつNaおよびLi イオンの結果を図中、矢印で結んで示した。Ag、 Cu、 NaおよびL iイオンの結果をそれぞれ、紫、青、オレンジ、ピンクで色分けして示 している。. まず、結合するハロゲン化物イオンの違いによる、アルカリ金属イオ. ンの結合性の変化に注目すると、1イオン、Brイオン、C1イオンと 電気陰性度が高いハロゲン化物イオンほど陽イオンとの結合性が強い。. すなわち、右上方向に最小二乗の曲線がシフトしていることがわかる。. 一方、AgイオンとCuイオンに注目すると、ハロゲン化物イオンの種 類による結合性の変化はアルカリ金属イオンと類似するが、すべてのハ ロゲン化物イオンでアルカリ金属イオンに比べて左下方向に位置するこ. とがわかった。このことから、1イオンとの結合だけでなく、他のハロ. ゲン化物イオンとの結合においてもAgイオンとCuイオンは、アルカ リ金属イオンに比べ、共有結合的にもイオン結合的にも相互作用が小さ いことがわかった。. 一17一.
(20) O.3. 回. rl■トヨウ化物 幽◆’塩化物. e. r曽一臭化物. O.2. 国・L哩▲ 圃. 〈ロ. O.1. o Lo.2 o o.2 o.4 o.6 o.s. 1. 実効電荷. 図3.1.3.1. Ag, Cu,アルカリ金属イオンと ハロゲン化物イオンとの結合性. 一18一.
(21) 3−2 銀系超イオン伝導体の電子状態. 3−2−1 α一AgI結晶の電子状態 3−2−1−1 Ag26130クラスターモデルと計算条件 超イオン伝導体であるα一AgIの電子状態を調べるために、まず、 文献(4)をもとにα一AgIの単位格子を拡張して作成した、 Ag26 130クラスターモデルを図3.2.1.3に示す。このクラスターは、α一A. gIの固体中の電子状態に近い計算を行うために、単位格子をx,y,一 z軸方向にそれぞれ一格子分拡張したものである。また、計算を行うと. きに、Agイオンや1イオンをクラスター内の位置により種類分けを行 った。それぞれの種類分けについては図3.2.1.3上で、数字で示した。. クラスター側面の1を1番、2番とし内側の1を3番とした。また、ク. ラスターの中心のAgを4番、外側面上のAgを5番、外側角のAgを 6番、内側のAgを7番とした。このクラスタ・一・一・ではさらに、マーデル. ングポテンシャルを考慮して計算を行い、特にその中心部分のAgイオ ン周辺の電子状態を解析した。. 一19一.
(22) 1イオン. Agイオン. 図3.2.1.3 Ag26130クラスターモデル. 一20一.
(23) 3−2−1−2 Ag26130クラスターの結合状態 Ag26130クラスターを用いて行った計算の結果のうち、それぞれ の種類のイオンの実効電荷と、中心Agイオンと周辺の1およびAgイ オンとの間の結合次数を表3.2.1.1に示す。それぞれの結果の横に括弧. 書きされているものが種類分けの場所を表している。Net Charge(実効 電荷)は種類分けごとに、Bond Overlap Population(結合次数)は中心. Agイオンと周囲のそれぞれのイオン間に働く結合次数の合計を示して いる。. マリケンのポピュレーションアナリシスでは、共有結合性が非常に大. きい場合、その見積もりが悪くなることがある。Ag26130クラスタ ーもその典型的な例と考えられる。そのため、クラスター中心部分のA. gイオンは実効電荷がマイナスになり、中心Agイオン周辺の1イオン は実効電荷の値がプラスになっている。. α一AgI中の中心Agイオンとその周辺1イオンの実効電荷をみる と約±0.24となっており、同じハロゲン化物であるNaClの値(9) ±0.94と比較するとかなりイオン性が小さくなっていることがわか. った。結合次数では、Agイオン同士の影響はほとんどなく、中心Ag イオンとその周辺1イオンとの間でのみ共有結合性が現れていることが. わかる。中心Agイオンとその周辺1イオン間の結合次数は約1.19 となっているが、これは周囲の4つの1イオンとの結合次数を合計した. 値になっているため、1イオン1つとの結合次数は約0.3となる。こ. れは、同じハロゲン化物であるNaClの値0.09と比べかなり大き いことがわかった。このことから、α一AgI中のAgイオンと1イオ ンの間には、かなり強い共有結合性があることがわかった。. そこで、Agイオンと1イオン間の結合性の詳細を検討するため、状態 密度図を作成した。. 図3.2.1.5に、中心Agイオンおよび周辺1イオンの外殻軌道の状態 密度を示す。図は縦軸に分子軌道のエネルギー、横軸にそれぞれのエネ. ルギーにおける状態密度をとり、Agイオンの4d軌道の成分を赤、5 s軌道を青、5p軌道を緑の曲線で示している。また、1イオンの4d 一21一.
(24) 軌道の成分を黒、5s軌道を紫、5p軌道をオレンジの曲線で示した。 簾中の点線はフェルミ準位を示す。. クラスター全体では、EF以下の占有軌道は主に、15pおよびAg4 d軌道から、空軌道はAgの5s、5pから形成されている。ここでは 特に中心のAgに関する軌道のみを拡大して示している。 HOMO付近. の占有軌道にはAg5s、5Pの成分も若干みられるが、Ag4d軌道 が中心Agイオンに関する主な成分となっている。. 1イオンの状態密度をみると、5s軌道の分布は、主に一10eV より低エネルギー側にみられる。また、Agイオンの軌道との重なりも ほとんどみられない。これに対して、5p軌道はフェルミ準位付近に分. 布しており、中心Agイオンの4d軌道との重なりが多い。このことか. ら、Ag26130クラスターにおいてAgと1の相互作用には、 Ag4 dと15pが主に関係していると思われる。. そこで、中心Agイオンと周囲の1イオンの間のより詳細な結合状態 を検討するため、それぞれの分子軌道における結合性、反結合性のエネ ルギー分布を示すOverlap Population Diagramを作成した。その図を図 3.2.1.6に示す。Overlap Population Diagramは、各分子軌道のOverlap. Populationを分布関数で幅をつけて密度曲線で表したもので、縦軸には 分子軌道のエネルギーを、横軸にはそれぞれのエネルギーにおける結合 性と反結合性の相互作用の大きさを示している。右側に赤で示している のが結合性の成分、左側に青で示しているのが反結合性の成分であり、 各分子軌道における結合性への寄与を詳細に調べることができる。. EF以下の占有軌道では、主に一5eVを中心に結合性の成分がみら れる。また、空気道では反結合性が強くなっており、いわゆる共有結合. 的な分子軌道を形成していることがわかる。しかし、一3eVからOe Vにかけては、通常の共有結合性の分子軌道では占有軌道にはみられな い反結合性の成分が存在することがわかった。そこで、この様な結合性、. 反結合性の成分がAgと1のどのような軌道から構成されているのかを 検討するために、図3.2.1.7に中心のAgイオンと周辺の1イオンの状 態密度図とOverlap Population Diagramを並べて表示した。図は、縦軸 ・一 22 一.
(25) には分子軌道のエネルギーをとり、横軸には状態密度および結合・反結 合の成分を示している。. 結合性の成分は一6eVからOeVまで広く分布しているが、特に成. 分の多い一5eV付近には、15pとAg4dの成分が多く存在するこ とがわかる。つまり、一5eV付近の結合性の成分は主に、15p−A g4d間の相互作用によるものであることがわかった。一方で、反結合. 的な成分の多い一2eV付近でも同様で15pとAg4dが多く寄与し ており、この反結合性の相互作用も15pとAg4dによるものである ことが明らかになった。つまり、Ag4dは占有軌道内で15pと結合 性、および反結合性のそれぞれの相互作用を持つ分子軌道を形成するこ. とがわかった。ここで、Ag5s、5pの成分が占有軌道に認められる が、空軌道の成分から考えて、これらの軌道は15pと結合性の相互作 用を持っており、反結合性の成分には寄与していない。. このように、α一AgI中の中心のAgイオンと周辺1イオンとの結 合状態をAg26130クラスターを用いて検討したところ、 Agと1の 間では、Ag4dと15pの間で結合性と反結合性の両方の相互作用が 起きていることがわかった。状態密度の分布から、中心Agイオンの4 d軌道の成分は、HOMO付近にも分布していることがわかる。つまり、. α一AgIの場合、中心Agイオンと周辺の1イオンとの間の結合性に. は、Ag5s、5pのみならず、形式的には内殻にあたるAg4dも大 きな影響を与えることになり、表3.2.1.3で示したようなAgイオンに. みられる特徴的な結合状態は、このような特異な電子状態によるもので あることがわかった。. 一23一.
(26) EFFECTIVE CHARGE. LO. NET CHARGE. I. 53.46271. −0.46271(外側). I. 53.05205. 一〇.05205(外側). I. 52.76852. Ag Ag Ag Ag. 0.23148(内側). 47.24849. 一〇.24849(中心Ag). 46.98655. 0.01345(外側面). 46.67745. 0.32255(外側角). 47.20806. 一〇.20806(内側). BOND OVERLAP POPULATION BETWEEN ATOMS 中心Ag一周辺1. 1.1885. 中心Ag一周辺Ag. 0.Ooo9. 中心AgTota1. 1.1894. 表3.2.1.3 Ag26130クラスターの結合次数と実効電荷. 一24一.
(27) s 層 ■ . 口 , . 噂 噂 , 眞 画 一3. 10. 書. 1 ■. ’・’9…5騨鮒騨’田岡”. C. 頓. 暉. ■. 幽. ・. 國 ,. = 噛. 嘔. ●. = 昌. .. 囎. ,= ■. 幽. rr.’r.。’’”・鱒躰”曹’●’。●’岡騨・開8隅’尋畠・響・6量ii’曹。’。’”叩○.。’巳’・畠5。”層”弓●’・層曹。5’鱒’”●. .レ>1 :. 5. 一. ●○●5■i● ■匿曹騎畢. ●●昌■●●●,,●. 竃. sl;’. 1’ i. ・一一一一一一一. 匿. −14d −15s −gsp sotal. −Ag 5P. 塁. 8. 一. 卿. ●■●●魯●■,●■■■5e8●●o●■●昌隔璽●●■匿。曜9,0●●●●■●5,●■●■9‘●開r●口夢。日■■●・重・..o顧●..・●9・,●●・8・●,・.・圏.富。暦・.,■・・■●. 3. 誉. 一Ag@Ag4d5s. 騨. 書. =. ・一一一一. 陶 麟 伽 ■ i 冒 剛 幽 鱒 摩 ■ 哩胃 ・ ■ ・ 顧 鼻 口 ぎ. _醐_、.コ__剛___剛脚_醐、噂一___i_脚.一._E ・.. i’ 1−F. D二,.二..諾.二..=..∴..二。.=榊=開=.3...二師二阻二..島..轟..二.品.=...蕊..轟。.二..累..燕。轟.轟..=..轟..轟..轟・・跳・。轟の. き. 6 ,,IEi. 一・5. ●. ●●魯尋・島。●■■■9・5●8層,・. リ. コ. ロ. ・“’甲’冒’ ? ;. 一10. ; 口. 凹. ロまロ. ロ. コ. ロ. コ. l 言. コ. ち. コ. ロ. コ. コ. コ. i = 昌. ロ ロ. コ. ロ. ロ. の. コ. ロ. 邑. ●. 雷. 隔. ロきの. ロ. ロ. ロ. ロ. ロ. 8‘■・■9■5…. 量脚。・●邑・,・・,●噸oo…. 囑。. ロ. l. ・. 富. ロ. 婁. ●. 呂. 9. ロ. l. =. 陰. コ ロ. ●■●●ρ●昌●■●■劇●●層■■oo8●●●●●「●■卿●■印●●■■,●■圃■●●t9●●●,●●■o●邑●,●●ロ●■●●●●●●爵・・5…. o.Oo騨,,.●,8・・.,噛・●99.昌量。.9. 曖. 置 9. … ‘・・■t・・9齢尋・鱒・u・・・・… ㌘●・… 鱒●・・ph,。馬■8一鱒唱」腎顧朋一鱒葡●口・9一・.一●”咀・v■■・v・・v・。■ρ・.●t,厚”・gv。・響●響… 7「σ㌘開曽胆留・・撃9●謬・・=ヤ剛■●儘:■鱒ぎ・97・.㌘●・7.6臨. o. ■. ロ. .. o. =. 願. 膨. 電. コ. の. の. 一 . . ・ 隅 ’.幽 卿 ・ 曹 属 q 曜塁皐 ・ 冒 鰯 ・ 欄 零 冒 ・ ■ 口 謄 顧 o 闘. O.5. 1. 1.5 2. 2.5. 3. DOS. 図3.2.1.5. Ag26130クラスターにおける、中心Agイオン および周辺1イオンの状態密度.
(28) 12 ,. 8. ・ ●. ● .. 8. 夢 曾. . ・ ● …. ・. 9. 塁 冒 ・. 冒. o. ●. 鱒. ・. ●. 幽. 3. 2. …5. ■. ● , …. 監. ・. .. ●. 書. 三. ■. 「. 齢. 含. 辱 君. 塁. 言. ■. ,. 鳴. ●. 嘘. ,. ・. 豊. ・. ● 瞳. .. ●. ・ ●. 隔. .. 燭. 鼻. 隅. 謄. 「. 鳴. …. 置. 昌. =. 聰. 冒. ・ 富. 躍. ,. .. ■. .. 昌. 噂. 冒. 「. .. ■. .. 匿. ・. ,. ・. ・. o. 8. 6. ■. 9. 冒. o. 口. o. …. …. ≡. ●. ●. 富. 3 8. 言. 茎 鞠. .. B. 冒 …. 幽. 5. 陰 騎 ,. o 画. 躍. ≡. 謹 ・. ●. ・ 瞳. 魯. u 胃. 陶. ●. ・. ・. ■. 欄. ・. 隅. ,. . ・. ,. ・. ・. ●. ●. o. “. ● 口 ●. o. ・. り. ・. ●. ● ●. ●. 9. 欄. ,. ・. …. .. 量. …. ≡. …. ●. ・. ・. ,. ,. ・. =. 言. 印. ■. 曜. 鳳. 書. ●. o. 書 鱒. .. o. ●. 蓄. 言. ● 暮. 匿. ●. 電. ■. .. 齢. 慮. ■. 蓄. ,. ■. 綱. 側. ■. ●. 霞 ■. ●. .. 亀. ・. の. ●. ・. ●. ■. ●. ・. ・ 豊. ・. 6. ・. 暫. ≡. ■. ●. ・. ≡. 昌. =. ∈. o. 達4. …5. …8. ,}. 電騨. ×. こ・. =. =. と. 隣. “. 奪. ・. o. ■. ●. .. 9. …. …. =. …. …. 弓. =. 3. 9. ■. , ● …. ●. …3. 書. 9. ‘ 雷. 層 =. 壽. 昌. ●. ・. 「. 昼. ≡. ≡. .. 馴. ●. 蓄. =. ● §. 昌. 6 o. 3. 窪. .. ,. 3. =. 鼻 ε. =. 書. =. 書. ■. 3. 富. 置. =. 輝. o. 曝. 脚. .. ■. 幽. 喧. ■. ●. 噂. ,. 1. ・. o. ■. 巳. EF. 雪. ・ 星. …9. ・. 山0. .. ●. ・. ‘. ・. ・. ●. ●. 嘲. 喝. , ● ■ ●. 唇. .. 吻. ●. ■. 9 8. 帽. o ●. 5. 欄. 畢. 尋 ●. ■ ■ ●. o. ■ ■. 闇. ●. 「. ・. 畠 .. .. ・. ■. 画. ●. o. ,. ,. .. .. “. 顧. ■. .. 吻. 9. 8. ・. 盟. ●. ■. 噂. ■. 繭. 鱒. ■. ●. 犀. ■ ・. ● ■. ・ 曽 巳 ・. o. ● 腰 隔 ‘ 爵. 匿. ● 鴫. , 臨. .. ●. ,. 看. 働. 電. ●. ●. ○. 臨. ・. 冒. 9. ●. ,. o. 脚 ◎. u. ●. “. ,. ●. ・. ・. ≡. …. 署 …. o. 噂. .. ●. ● 御. ・. ■. ・. ,. 殉. 冒. “. 幽. ■. 噂. 鱒. 曝. o. ■. o. ●. ■ .. ・. ●. ● 曝。噂. ≡. 3. ●. 脚 ● . ● ,. 響. ●. ●. 曜 …. ,. ・. 言. …. ■. ●. , ● ● 働. .. o. ●. ●. P. 6. ,. ● ・. ・. ●. .. ■. ,. 9. ●. ・. ・. ●. Φ. “. ‘. ●. =. =. 詔. 言. =. =. 3. 3. 冨. 亀. ●. 3. 3 3. ,. ■. …. =. 置. 臓. ●. .. 巳 =. ・. 塁. o 3. ●. 。. 噂. 胃 馳 ●. 曾. ■. 曹. ■. 3. .. ・. ,. “. ・. ,. 隣 「. o. o. .。. 5. ●. ■. o. ● ・. ・. 層. 9 賜 o. 8. .. ,. 弓. ,. 幽. 要. ●. 9. ● ●. 麿. =. ■. ●. き. 欄. ●. o. 馳. ●. 噛. 嫡. ●. 5. o. ,. ●. ●. 一4. o. ●. ㌘. =. .. 置. 2. =. 昌. ≡. ≡. 三. =. =. 霊. ・. 胴 ●. 幽. ●. 墨. ●. …. §. …. …. …. 言 言 , ≡. …. 諺 題. o. ,. 口. 隠. 昌 …. 反結合性 結合性. 図3.2.1 .6. Ag26130クラスターにおける Overlap Population Diagram.
(29) Overlap Population 9iagram. 周囲薔状態密度. Agl 轄. 一. 一. 一. @ 騨闘卜劇一〇麗一暉鴫鱒。噌纈 @ …. 10. 響胴. @. 奎. i −14d. @ =. … 匿賃。.・伽,ゆ聯頗騨. .・■曝・●. A称、1。 ■. ≡. 一. 階. 瞭 一. 脚 響闘.噂闘6軸.・・叩巴. 言. ナ層騨口學“,一唖一昌一一騨構. @@ ;. 喉細…一15s =. 5曜8Q●曾’塵●’轄”錦騨鯛. @ 毒. …. 5 =. ■ .. ・ タ一一層嗣闘隔冒凸旛周 。一一. ≡. 風. 中心Ag状態密度. A称、1、。. 欄 融5隔●■●●9●郎60●. ,o・●.o●・塵.. ホ. 曜 ,儘質冨 曜零辱, P 馴印5●●,聰. o量● 6・P. @ 喜. @茎. 6幽. 願. 唇6. ■魯塵幽●‘幽90魯畠. 星. P鯛”8師’の喀胃開閥塵●㌘’ 餌●. 。●’曜. …. @塁 呂3. 昌. 塁 ?. 茎 匿. G. 電. R. …. 巳・. 夢 璽菖馴 畢. 騨. …. 開噂・・鱒聴9. 寧,璽層匿硬鴛曾。胴8. 三. 量. 魯窟蝸鱒P9・謄岡。・欄・・5,層卿‘. @ま. @. 警. =. 題. =. … } …一一一一i一一一幽一瞥. s. = =. @. @. @. A@ 口. …. ヌ. 司・闘α朋・鱒…晒闘L…。…. @ r障叫・伽轟 =. 屋. 9・oo6薗魯唖響亀. @. 言. =. 口. 6鱒 =e’曾師●。醜D”圃闘’. ●脅幽幽 o魯. ’. .. 層. 8●D口。. @. …__■一二___. 皇. E. ミ. 3. @. 診. 1=. 言書. …. @ @. =. …. 畠舳門門‘臨闘●」’ ヘ 開.”b”・馳」m. 8静●・嗣駒鱒5. 闘争・一’鴎… 駒壱”醐…’騨…噂巳一”叫一開 牽…・・…一 ・・ 雪 ■ , 鼈齬W一一」’隔一庸噛 齔o暉一層■凹胴哩口脚螢剛鰯一一ウ隔一一・・■■鴫學絹噂藺慶哺 @ 旨 3 @ =. @. 善. =. =. =. =. 3. 題. 昌. =. 言. 匿. = =. 言 塁. 診. =. 雪 = =. 3. …鯛開.顧r欄馬櫓脚蝕.薦曜噛 …. c…. 三. .. 量. ’岬. 喜. =. …. …. 喜一 ■ 一 一 一 一 亀. @. 1. =. J 騨. 窪聰亀一■■一‘願鱒冑騨翻庸一. 1n. .. @. ,. 2. 2.5. igos. 図3.2.1.7. 書. 5. :. @. =. 墨. ………曝一・即…一・. 書. 富. 3 =・. c=. ・脚.蝿騨・・噌凹叩龍鱒騨.貫飾。. ;. =. 葦. 3. 3. 3. =. 書. 昌. 昌. 1冨. 塁. 書. ・… 鴎曙・鱒… 買. ●●・鴨曹,,,o,●. ’唱. 呂. 3. 0. ≡. 留. 2. =. =. 霊. 葦 量 = = =. = 量 言 含 二. =. 塁. =. 呂. =. 巴. 3. 屡. ;. 言. ;. =. ;. 書. 葦. …. …. 禽隠.層。畢量。・.・. ・■. ,■脚. ●●叩瞳闘・闘叩ウ…・騨・…騨・・開・ウ・…・知…. @. ∈. @蓉. @. …. 量. 、騨. 餌闘晦 騨艦闘・研・覗嘱9・髄膨・. よ. …. ;. =. @…. 叩・ 鱒尋引鱈・ … 闘魯5・●郷・・鱒◎開6・鱒‘. 8. D一一一一レー一一一三一一一一一一一…一一冒一一目凹言隅鱒一印哺一略胃一一一齢一. =. 奮’り9・8. 塁. …. =. ?. =. …・闘・・… 騨・…嗜噸… 喝賢・開鱒・・. ・. 言. 量. 叫一一一晶噸…一・・“三一. ?. 闘雪。●晒欄’.開開’」隔. =. = =卿. 言. =. @三. 鱒. ロ. … ,隔鴨脚“遭b■し4h. 喜3. ■. O.5. =. @ 葦. 2. 雪. =. ’・解酷哩●剣叩’蝸 悶亀・. =. き =. …. 茎喜…■層●」 噛 畠,鴨。. 塁 言. ‘闘口開ワ四幅●”開’蟄’的電帥”軸鱒. 8書唇幽,o暦9■聰‘●. =. =. 嘔・叩騨開・・u開開ウ・・論曹層・・5曾. 妻. 噌鱒幽幽鯛曜餌蝸.闘・9や… 曹・・6・. FE Q一虹=ゴ=コニ u一國 照曜薗 X隔一騨騨 @. 二. @毒 @書. 雪 葦 至. 書. 葦. …. 呂. =. = 冨. 靴7ご=コ @ .一一一一層圃一重. ・o 口幽. ;. ? ? ?. 3. 寄_’一鞠’曜一…舶一■一一■言. = .__’_..__..轟。.‘___. 呂. .朋.暦.86鶴6朋曾謁. @ 芸. =. 善. =___葦_齢__一品吻_._. @. 星. ・騨”●窒T.’・。闘騨 鍋. @ 導 茎 @. 轟_闘._._.. 停辱・. P. 、曹 一. ●69馳 W甜一陰‘c,. =. =. 量. ロ. o. s;. =. 含. 葦. @呂. :. i. 一. −10. 重. = 3. 言 書. LC”. 2 u−5. ‘響. 言. 竃. 昌 …. D闘轟m.......鵬.。駒. 雲. @ @ ● @一一欄鳳電曜一暉。轄嶺一乙. ・齢●・8●二二. ●. 茎2. G一一一一一創」一■瓢一■一層 ロ■一禽聯願暉1二’τ02る▽: 三一一噸=轄一一→一一一噌聯一一一ひ一一一噸噌一一一. 鱒陰’. ¢一 O. ・●. =. 冨. =. G闘岡開.....5窟聴∴.. 5. C. 塁. 雪. 3. §● 騨,■層, ■●. …“‘・脅顔鱒鱒恥“開騨gl・・… 邑・6・鳳 鱒隔。. @= @=. 嵩. 3. ≡. 一Ag 5P一一一一「τotal. 霊. ?. 5. 一Ag 4d 一Ag 5s. 2顧署鵯糟顧噛一一■◎願闇. ワ. 曹5..曾.儲。.唱....謁.鱈. …. …雲. 一一 囎. 一 騨. 扁 層. 脚下膿一凹響噂皆響一囎7盟=響盤盟一. 皇= 一 一 騨 μ 一 眉. O.5 1 1.5 3〈p一一一ny一一..一一一一)O 反結合性 結合性 DOS. Ag26130クラスターにおける中心Agと周辺1の 状態密度とOverlap Population Dlagram. 茗. 守. 言. = ヨ. 3 …. 言 3. 含 ?. =. ;. =. 3. 言. … 言 言. 竃伽一一回腫一’圏凹圃一一〇曲鱒鴫一一嗣葡膳. 2. 2.5. 3.
(30) 3−2−2α一AgI中のAgイオンの移動に対するモデルクラスター Agイオンが固体中を移動する場合、周辺のイオンとの間に相互作用 を伴いながら移動すると考えられ、その主な要因は、電子論的な化学結. 合であると考えられる。つまり、α一AgI中を移動するAgイオンの 電子状態が明らかになれば、イオン伝導のメカニズムが明らかになるこ. とが期待できる。そこで、イオン伝導体中のAgイオンの電子状態をさ らに詳しく検討するために、イオンの移動を想定した計算を行い、Ag イオン伝導体におけるAgイオンの移動に伴う電子状態の変化について 検討した。. 分子軌道計算では、ボーン・オッペンハイマー近似を取り入れているの で、動的な状態での電子状態を計算することはできない。そこで、イオ ンの移動をモデル化するために、クラスター中の陽イオンの位置を移動 経路に沿って変化させたいくつかのクラスターを用いて近似的に計算を 行い、各クラスターごとに移動イオン周辺の電子状態を解析し、その結 果を比較することにした。. 移動イオンと周辺イオンとの化学結合を評価するため、Agイオンの 電子状態を以下の点で整理した。. ・移動Agイオンと周辺のすべてのイオン間の結合次数の総計 (以降、総結合次数と呼ぶ). ・移動Agイオンの実効電荷 ・移動Agイオンと周辺1イオン間の結合次数 ・移動Agイオンと周辺Agイオン間の結合次数 計算を行った各クラスターにおいて、ポピュレ・一一・一・一ション解析を行い、こ. れらの値を算出した。また、計算には結晶場の影響を考慮するために、 マーデルングポテンシャルを用いた。. 一28一.
(31) 3−2−2−1 Agイオンの移動経路 一般に、α一AgI中のAgイオンは、1イオンが形成する四面体の 1つの面の中心を抜けて移動すると考えられている。そこで、四面体隙. 間からAgイオンが抜け出す経路の妥当性を検証するため、四面体の陵 を抜ける経路と四面体の面を抜ける経路の2通りの移動経路についてモ デルクラスターを作成し、計算を行った。. 3−2−2−1−1AggI】o, Ag7110クラスターモデルと計算条 件. 1イオンにより形成される四面体隙間の陵を抜けるクラスターモデル としてAggI、。を作成した。AggI、oクラスターモデルを図3.2.2.1 に示す。図には、1イオンを大きい球で、Agイオンを小さい球で示し、 移動経路を矢印で示した。. AggIloクラスターでは、移動Agイオンは四面体隙間の陵を抜け るた後、隣接する四面体隙間へ移動することになる。つまり、四面体隙 間から四面体隙間への移動を繰り返すことになる。. 一方、面を抜けるクラスターモデルとして作成した、Ag7110クラス ターモデルを図3.2。2.2に示す。図には、1イオンを大きい球で、Agイ. オンを小さい球で示し、移動経路を矢印でしめした。Ag7110クラス ターでは、移動Agイオンは四面体隙間の面を抜けた後、八面体隙間を 通過して隣の四面体隙間へ移動することになる。. 四面体隙間を抜けた後、Agイオンが通過する環境は、この2つのク ラスターで大きく異なっている。そこで、ここでは、いずれのクラスタ ーにも共通している、四面体隙間を抜けるまでの結合次数の変化を比較 した。. 一29一.
(32) e 冒イオン. Agイオン. 図3.2.2.1 AggI、oクラスターモデル. 一30一.
(33) 四面体隙間. 1イオン. Agイオン. 図3.2.2.2 Ag7110クラスターモデル. 一31一.
(34) 3−2−2−1−2 移動経路の違いによる結合状態の相違 図3.2.2.3に、Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと周辺1イ オン間の結合次数の変化を示す。図には、縦軸にAg−1間の結合次数 をとり、横軸に移動Agイオンの位置を四面体隙間の面上および陵上を. それぞれ1とした相対値で示した。また、Ag71、oクラスターの結果 を□のプロットで、AggIloクラスターの結果を△のプロットで示し た。. 値の変化をみると、いずれのクラスターも、Agイオンが四面体隙間 を移動するに伴い、値は減少するが、AggIloクラスターに比べ、 A g7110クラスターの値は大きく減少し、四面体隙間面・陵上では、逆. にAggIloクラスターの値が大きくなることがわかった。このことか ら、1イオンとの共有結合性のみに注目した場合、Agイオンは四面体 隙間面上にある方がより不安定になっていると言える。. 図3.2.2.4に、Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと周辺Ag イオン間の結合次数の変化を示す。図には、縦軸にAg−Ag間の結合 次数を示し、横軸および記号は図3.2.2.3と同様である。. AggIloクラスターの結果をみると、移動の始点である四面体隙間 中心でのAg−Ag間の結合次数はほぼ0であるが、 Agイオンの移動 に伴い増加している。Ag7110クラスターにおいても、四面体隙間中 心では結合次数がほぼ0であるが、Agイオンの移動に伴い、大きく増 加し、四面体隙間の面上では、AggI、oクラスターにおける陵上の3 倍近くになり、Ag−Ag間の結合により面上ではAgがより安定化す ることがわかった。つまり、AggIloクラスターは四面体の陵を抜け る際には周囲のAgイオンの影響をほとんど受けていないがAg7110 クラスターでは、隣接する人面体隙間に存在する2つのAgイオンの影 響を大きく受けることが明らかになった。このような差が生じる要因と. しては、周辺に存在するAgイオンの周りにある1イオンの影響が考え られる。四面体隙間と八面体隙間では、移動するAgイオンからみた周 辺Agイオンの位置関係が違ってくる。八面体隙間では、 Ag−Agイ. オン間に他のイオンは存在しないが、四面体隙間では常にAg−Ag間. 一32一.
(35) に1イオンが存在しているためと考えられる。. 図3.2.2.5に、Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと周辺のイ オンとの総結合次数の変化を示す。図には、縦軸に総結合次数を示し、 横軸および記号は図3.2.2.3と同様である。. AggIloクラスター、 Ag7110クラスターともに、移動Agイオ ンの総結合次数は四面体隙間中心より四面体隙間の面および陵上の方が. 小さくなっている。また、その変化量をみると、Ag7110クラスター に比べAggI、oクラスターの方が若干小さくなっている。しかし、そ の差は小さく、実質的な差はほとんどないものと考えられる。. 図3.2.2.6に、Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンの実効電荷 の変化を示す。図には縦軸に実効電荷を示し、横軸および記号は図3.2.2.3 と同様である。. AggI、oクラスターの結果をみると、 Agイオンの移動に伴い、実 効電荷は増加している。また、Ag7110クラスターにおいてもAgイ オンの移動に伴い実効電荷は増加しているが、その変化量はAggI、o クラスターに比べ大きく、イオン性の変化が大きいことがわかった。し. かし、その変化量は0.05と小さく、イオン性に大きな差はみられな い。. Ag7110クラスターとAggIloクラスタ・一一一・しについて、移動を想定. した計算を行いAgイオンの結合状態を比較したが、 Ag7110クラス ターは移動Agイオンと周辺イオンとの相互作用が大きいことがわかっ た。特に、Agイオン同士の相互作用が大きく、結合状態に大きく影響 している。そのために、八面体隙間での移動では、Ag7110クラスタ ーとAggIloクラスターでは大きな違いが現れると考えられる。しか し、四面体隙間内の移動では、両クラスターに顕著な違いはみられなか. った。このことから、四面体隙間内をAgイオンが移動する場合、四面 体隙間内の位置による共有結合性やイオン結合性の変化は少ないことに なる。つまり、Agイオンは四面体隙間内に平均的に存在しうることが 考えられる。. 一33一.
(36) 1.16 ; …. …. 1.14. 一ローAg,11。クラス. +Ag,11。クラス. 昏. ←. 亨. ?. …. …. …i. i …. 1.12. …. …. …. ≡. …. 壱. 雲. …. セ. 妻. 〈ロ. …. ・ i. 堤 1.1 …. …. 妻. … …. :. i. i. 三. … …. i. i. 1.08. …. …. … …. …. £. !. l. l. i. l. ;. i. …. …. …. ●. …. 1.06. −O.2 O 02 O.4 O.6 O.8 1 1.2 Agイオンのポイント. 図3.2.2.3. Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと 周辺1イオン問の結合次数の変化. 一34一.
(37) O.08 一一. 香[AgIクラスター む. 一蝕一AgIクラスター 9 10. O.06. O.04. o. ,. 鑑. ウ豊. 〈ロ. 纒0.02 9. o. か. ,. 藍. 二. 一〇.02. 一〇.2 O O.2 O.4 O.6 O.8 1 1.2. Agイオンのポイント. 図3.2.2.4. Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと 周辺Agイオン間の結合次数の変化. 一35一.
(38) 1.16 一ローAg,11。クラスター i. …:. …. ィFAg,11。クラスター 1.14. …. …. i. ?. @ @. 1.12. ,●●○●●r「●●. i. i. :. … ・. i. i. i. … :. …. @ ………う・………………・i…… @. ?. ;. ・ i i i. 1. 、. :l. ・. i. …・. ゥ・・……………・・宝・・……・……}一●●……・・. ・. i. 〈ロ. @. 埋 1.1 ;. ◎. ? … … … …3. 1.08. @. …. i i i ?. …. −O.2 O. i … i. る. l. i. @. 1.06. …. ?i. …. i. i i. O.2 O.4 O.6 O.8 1 1.2 Agイオンのポイント. 図3.2.2.5. Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと 周辺イオン間の総結合次数の変化. 一36一.
(39) 一〇.08. 一〇.09. Z. 1 一一. 一〇.11. 1. 曇. 1. 昏. …. r…. …. 号. 侭 鯉.O.12 −O.1 3. 一〇.14. 尋. 一〇.1 5. …昏・・…. 一ローAglクラスター @ 7 10 +Ag,11。クラスター. 一〇.1 6. −O.2 O. O.2 O.4 O.6 O.8 1 1.2 Agイオンのポイント. 図3.2.2.6. Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンの 実効電荷の変化. 一37一.
(40) 3−2−2−2 移動経路上のAgイオン数 α一AgIの単位クラスターをもとにAgイオンの移動に対するモデ ルクラスターを作成した場合、Agイオンが人面体隙間に移動した時点 で、その周辺を含む単位格子内に存在する近接Agイオン数が、平均構 造といわれる実際のα一AgIの結晶に比べかなり多い環境になる。ク ラスター内をAgイオンが移動する際に、これらの過剰に存在するAg イオンの影響がかなり強く現れると考えられ、移動するAgイオンの電 子状態を大きく変える要因となる可能性が高い。そこで、Agイオンの 移動経路上やその近辺にあるAgイオンの数を変えて計算を行い、周辺 のAgイオンの影響について調べモデルクラスター内の、移動経路上に 配置するAgイオンの数について検討した。. 3−2−2−2−1 AgNI、oクラスターモデルと計算条件 Agイオンの移動経路付近に存在するAgイオンの影響について検討 を行うために、AgNIloクラスターモデルを作成した。そのモデル図 を図3.2.2.7に示す。図中、1イオンを大きい球で、Agイオンを小さい 球で表している。. Agイオンの数(N)は5(a),6(b),7(c),8(d)の4種類について. 計算を行った。Agイオン数が5のクラスターは、移動Agイオンが八 面体隙間に位置するとき、その周辺にはAgイオンが存在しないモデル であり、Agイオン数が6のクラスターでは、移動Agイオン周辺にA gイオンが1つ存在する。このモデルの場合、移動するAgイオンを中 心に単位格子をとった場合、単位格子内のAgイオン数が2となり、完 全なα一AgI結晶における単位格子中のAgイオン数と一致する。A gイオン数が7のクラスターは単純にα一AgI結晶の構造で、移動先 の四面体隙間のAgイオンを取り除いたものであり、考えうるすべての サイトにAgイオンを配置したものがAgイオン数8のクラスターであ る。. これらのクラスターを用いて、四面体隙間のAgイオンが八面体隙間 まで移動する場合を想定した計算を行った。移動の対象としたAgイオ. 一38一.
(41) ンの位置は四面体隙間一四面体面上一人面体隙間の各位置とその中点の. 5カ所とした。これらの各位置に移動Agイオンを配置した5つのクラ スターについて計算を行い、その電子状態の比較を行った。. 一39一.
(42) (a)Ag・ll・クラスター. (b)Ag6110クラスター. (C)Ag7110クラスター. (d)Ag8110クラスター. 図3.2.2.7 AgNI、oクラスターモデル. 一40一.
(43) 3−2−2−2−2 移動経路上のAgイオンの影響 クラスターa∼dについて計算を行った結果のうち、図3.2.2.8にA. gイオンの移動に伴う、移動Agイオンと周辺1イオン間の結合次数の 変化を示す。図の縦軸にはAg−1間の結合次数、横軸には移動するA gイオンの位置を、移動し始める四面体隙間の中心を0、八面体隙間中. 心を0.5とし、相対値で示している。また、Ag5110クラスターの 結果を○、Ag6110クラスタ・・一一一の結果を□、 Ag7110クラスターの. 結果を△、Ag8110クラスターの結果を◇で示した。. Ag5110クラスターの結果をみると、移動の始点となる四面体隙間 中心において、結合次数の値は他の3つのクラスターの値より若干小さ. く1.12となっている。その後、Agイオンが移動するに伴い結合次 数は減少していくが、八面体隙間中心においては増加する傾向を示した。. 人面体隙間中心において結合次数の値が増加するのはAg5110クラス ターだけであった。. 他のクラスターの結果をみると、四面体隙間中心での結合次数の値は. 1.14付近でほぼ同じになっており、その後、Agイオンの移動に伴 い結合次数は減少するが、八面体隙間内にAgイオンが移動することに より、Agイオン数の多いクラスターの結合次数の減少がより大きくな っている。このことは、Ag−1間の結合のみに注目すると、1イオン 四配位のサイトから、より高配位数の六配位のサイトに移動することで、. Ag−1間の相互作用が小さくなることを示している。. 次に、図3.2.2。9に、Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと周. 辺Agイオン間の結合次数の変化を示す。縦軸はAg−Ag間の結合次 数を示しており、他の図の表示は前図と同じである。 Ag51、。クラスター一一一の場合、相互に作用する相手のAgイオンが存. 在しないため、結合次数はほぼ0で、まったく変化はみられないが、他 のクラスターではAgイオンの移動に伴い結合次数の増加がみられる。. その変化の様子を見ると、Agイオンが四面体隙間内を移動している間 の結合次数の増加は少ないが、四面体隙間を抜けて八面体隙間にはいる 0.17の位置をすぎると、結合次数が大きく増加している。このこと. 一41一.
(44) から、Agイオン同士の共有結合性は八面体隙間において、特に顕著に 現れることがわかった。また、結合次数の値に注目すると、移動の始点 である四面体隙間中心では、どのクラスターも値はほぼ0になっている が、終点の八面体隙間中心では、Agイオンの多いクラスターほど結合. 次数は大きく増加している。その値は、Ag6110クラスターが0.1. 56、Ag7110クラスターはその約2倍の0.317、Ag8110ク ラスタv・・一・一では約3倍の0.475になっている。これは、八面体隙間周. 辺のAgイオン数が1増えるごとに結合次数が約0.16つつ増加して いることを示している。このことから、移動経路上のAgイオン数は、 移動Agイオンの結合次数の増加に大きく影響を与え、その影響は人面 体隙間で顕著:に現れることがわかった。. 図3.2.2.8、図3.2.2.9で示した、Ag−1間およびAg−Ag間の結合. 次数を総計すると、移動する際にAgイオンが受ける相互作用のすべて を計ることができる。そこで、図3.2.2.10に、Agイオンの移動に伴う、. 移動Agイオンと周辺イオン間の総結合次数の変化を示す。縦軸が総結 合次数を示すこと以外、図の表示は前回と同じである。. Ag5110クラスターの値をみると、他のクラスターの結果と比べ、 すべてのポイントで値が最小となっている。結合次数は、Agイオンの 移動に伴い減少し、八面体隙間中心で一旦増加している。他の3つのク ラスターをみると、移動の始点である四面体隙間中心では、結合次数は どのクラスターも値はほぼ同じで差はあまりみられないが、人面体隙間. 中心ではAgイオン数の違いにより大きな差がみられる。四面体隙間中 心と八面体隙間中心の結合次数を比較すると、2つのタイプに分かれる ことがわかる。一つは、四面体隙間中心で結合次数が最大になっている もの、他方は人面体隙間中心で結合次数が最大になっているものである。. 八面体隙間中心で結合次数が最大となるのはAgイオン数が7、8のク ラスターで、四面体隙間中心が最大となっているのはAgイオン数が5、. 6のクラスターである。この違いは、Agイオン同士の結合次数が要因. となっている。このことから、Agイオンの数は移動Agイオンの結合 状態に大きな影響を与え、イオン伝導が起きる要因となっていると考え. 一42一.
関連したドキュメント
(J ETRO )のデータによると,2017年における日本の中国および米国へのFDI はそれぞれ111億ドルと496億ドルにのぼり 1)
第1報Dでは,環境汚染の場合に食品中にみられる
線遷移をおこすだけでなく、中性子を一つ放出する場合がある。この中性子が遅発中性子で ある。励起状態の Kr-87
効果的にたんを吸引できる体位か。 気管カニューレ周囲の状態(たんの吹き出し、皮膚の発
フロートの中に電極 と水銀が納められてい る。通常時(上記イメー ジ図の上側のように垂 直に近い状態)では、水
Hoekstra, Hyams and Becker (1997) はこの現象を Number 素性の未指定の結果と 捉えている。彼らの分析によると (12a) のように時制辞などの T
解析実行からの流れで遷移した場合、直前の解析を元に全ての必要なパスがセットされた状態になりま
応力腐食割れ(SCC)の発生には,使用温度と塩化物イオン濃度が影響する。温 度および塩化物イオン濃度が高いほど SCC は発生しやすい。中性条件では