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 一〇.1

一〇.2

一〇.3

Ag6iio

■■mレ圏Ag 12114

一〇.2 O O.2 O.4 O.6 O.8 1 1.2      Agイオンのポイント

図3.2.2.15

 Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンの

 実効電荷の変化

一57一

3−2−3 α一AgIのイオン伝導性

 これまで行ってきた計算では、α一AgIのクラスターを用いてイオ ンの移動を想定した計算を行うために、クラスター内の移動イオンや周 辺イオンの環境について検討を行ってきた。その結果から、イオンの移 動経路は四面体隙間の面を抜けて人面体隙間への移動、経路上のAgイ オンの数は八面体隙間上に1つという条件が適していると考えた。そこ で、この条件に沿ったクラスターモデルを用いて、実際にor 一AgI中 の各イオンの結合状態について検討を行った。

3−2−3−1 AgイオンとNaイオンの比較

 Agイオンは他の1価陽イオンと比べ、極めて高いイオン伝導性を示 す。この特性について検討するために、Agイオンとほぼ等しいイオン 半径を持ち、典型的な1価の陽イオンであるNaイオンを比較の対象と

し、α一AgIと同じクラスターを用い、 AgイオンのかわりにNaイ オンを用いることで、Agイオンに特徴的な電子状態をより明確にする

ことができる可能性があると考えた。

 Naのハロゲン化物がα一AgIと同じ構…造をとることはないが、仮

想的なモデルとして、α一AgIのモデルクラスター中のAgイオンの

かわりに、Naイオンを配置したモデルクラスターを用いて計算を行い、

両者の比較を行った。

一58一

3−2−3−1−1 M121、4クラスタ・一一一一と計算条件

  比較を行う移動のモデルとして、α一AgIの単位クラスターを拡 張したM12114クラスターを作成した。その概略図を図3.2.3.1に示す。

図には、Mイオン(Ag, Naイオン)を小さい球で、1イオンを大き

い球で表した。

 中心Mイオンの移動経路は、図に示したように、四面体隙間から人 面体隙間を抜けて隣の四面体隙間までとした。実際の計算ではイオンの 動き自体は取り入れることができないので、近似的に計算を行うため、

経路上の9ポイント(四面体隙間一四面体面上一八面体隙間一四面体面 上一四面体隙間の各ポイントとその中点)に移動Mイオンがある場合

のクラスタ・一一・・をそれぞれ用意し計算を行った。これら9つのクラスター

における移動Mイオンの電子状態を比較することにより、移動Mイオン の移動による電子状態の変化と、AgイオンとNaイオンの電子状態の 違いについて検討した。イオン伝導体中において、移動するイオンは、

移動経路周辺のイオンとの問で電子的な相互作用を伴いながら移動する と考えられる。この電子的な相互作用は化学結合となって現れ、イオン の電子状態の変化は結合状態の変化となって現れると考えられる。よっ て、移動するAgイオンと周辺イオンとのすべての相互作用、つまり化 学結合について検討することによって、移動Agイオンの電子状態を細 かく解析することができると考えた。そこで、比較に用いた項目は、以 下の4点とした。

 ・移動Agイオンと周辺1イオンとの結合次数合計  ・移動Agイオンと周辺Agイオンとの結合次数合計  ・移動Agイオンと周辺すべてのイオンとの総結合次数  ・移動Agイオンの実効電荷

b59一

1イオン

Mイオン

(Ag, Na)

図3.2.3.1M、21、4クラスターモデル

一60一

3−2−3−1−2 イオン移動に伴う結合状態の変化

 図3.2.3.2に、Mイオンの移動に伴う、移動Mイオンと周辺1イオン 間の結合次数の変化を示す。縦軸にはM−1間の結合次数をとり、横軸 には、移動するMイオンの位置を、移動を開始する四面体隙間の中心を

0、終点の八面体隙間の中心を1とし、相対値で示している。また、A gイオンの値を□で、Naイオンの値を△で示している。

 Agイオンのクラスターでは、 Agイオンが移動することにより、周 辺の1イオンとの間の結合次数は減少し、八面体隙間の中心で最小値を

とる。その後、八面体隙間の中心を抜け隣の四面体隙間の中心に近づく とともに結合次数は増加している。Naイオンのクラスターについてみ ても変化の傾向は同じである。このことから、Agイオン、 Naイオン ともに八面体隙間に向かうに従って、徐々に不安定になり、人面体隙間 中心で最も不安定な状態をとることがわかった。また、その絶対値につ いてみると、移動を始める四面体隙間の中心では、Agイオンと周辺の

1イオンとの結合次数は1.14であり、Naイオンと比べ大きな値を

とることがわかる。その後、両者の結合次数の差にあまり大きな変化は みられない。

 また、各ポイントでの変化の様子を見ると、移動しているAgイオン が四面体隙間の中にある場合、結合次数の変化は小さいが、四面体隙間 を抜けて八面体隙間にはいると結合次数の変化が大きくなる。途中の四 面体面上では、移動経路内で最も1イオンとの距離が近くなるが、結合 次数にあまり大きな変化はみられない。しかし、Naイオンについてみ ると、四面体隙間内、八面体隙間内ともに結合次数の変化は大きくなっ ている。ほぼ同じイオン半径を持つAgイオンとNaイオンだが、1イ オンとの共有結合性にはこのような差が現れた。

 図3.2.3.3に、Mイオンの移動に伴う、移動Mイオンと周辺Mイオン 問の結合次数の変化を示す。図の表示は、縦軸がM−M間の結合次数を 示す以外は前図と同じである。

 Agイオンの結合次数の変化をみると、四面体隙間から八面体隙間に 向かって結合次数は大きく増加し、八面体隙間中心で最大値をとり、再

一61一

び四面体隙間への移動に伴い減少している。また、四面体隙間中心から 八面体隙間中心までの増加量は0.15であるが、その増加のほとんど は八面体隙間内で生じている。このことから、Agイオン同士の相互作 用は八面体隙間において顕著に現れることがわかった。

 Naイオンについてみると、変化の傾向としてはAgイオンと同じで あるが、八面体隙間中心の最大値が0.05とかなり低い値になってい

る。また、四面体隙間でNa−Na問には相互作用がほとんどなく人面 体隙間に入ってから増加傾向を示しているが、その増加は大変少ない。

このために、Naイオンは全体的な結合次数の変化がAgイオンと比べ 約1/3程度と、大変少なくなっている。

 これらのことから、Ag−Ag間にはNa−Na間に比べ、八面体隙

間において、大変強い共有結合性があることがわかった。

 図3.2.3.4に、Mイオンの移動に伴う、移動Mイオンと周辺のイオン 間の総結合次数の変化を示す。図の表示は、縦軸が総結合次数を示す以 外は前図と同じである。

 Agイオンは、四面体隙間から八面体隙間に向かうに従って結合次数:

は減少しているが、八面体隙間中心付近では減少せずにやや増加してい る。つまり、四面体隙間面上付近でのみ値の変化は大きいが、他の場所 での変化は小さくなっている。全体を通しての、結合次数の値の変化の 幅は約0.08と大変小さい。

 Naイオンについてみると、四面体隙間中心から八面体隙間中心に向 かうに従って、結合次数は減少している。Naイオン同士の相互作用が ほとんどないために、周辺1イオン問との相互作用が、全体の相互作用 の大部分を占めていることがわかった。全体的な値の変化の幅は、約0.

22で、Agイオンに比べかなり大きな変動となった。 AgイオンとN aイオンの結合次数の値を比較すると、全体を通してNaイオンの値が 低くなっており、四面体隙間中心では0.04であるが、八面体隙間中 心では0.19となり、特に八面体隙間での差が大きくなった。

 結合次数の減少は、共有結合エネルギ・・…一・の減少に対応すると考えられ

ることから、このエネルギーの減少がイオン伝導の活性化エネルギーに

一62一

対応すると考えられる。つまり、結合次数の変化が大きいほど、イオン の移動に必要な活性化エネルギーが大きく、移動が困難になるものと思 われる。この様に考えると、全体を通しての結合次数の変化の少ないA gイオンは、より少ない活性化エネルギーで移動が可能であり、Naイ オンに比べAgイオンはクラスター内を移動しやすいと考えられる。ま た、この様な結合次数の変動を少なくしている要因として、人面体隙間 で顕著にみられる、Ag−Ag問の共有結合性があげられる。

 次に、図3.2.3.5に、Mイオンの移動に伴う、移動Mイオンの実効電 荷の変化を示す。図の縦軸には実効電荷をとり、他の表示は前図と同じ

である。

 Agイオンの変化をみると、四面体隙間中心から八面体隙間中心に向 かうに従って実効電荷は増加し、八面体隙間中心で最大となり、また、

四面隙間中心に向かって減少している。実効電荷の値の幅は0.14と

なっている。

 Naイオンについてみると、変化の傾向や変化の幅はAgイオンとほ ぼ同じになっている。しかし、Naイオンの実効電荷はすべての場所で プラスとなっており、Naイオンがプラスに帯電していることがわかる。

 AgイオンとNaイオンの実効電荷の値を比較すると、 Agイオンは かなり低い値となっており、その差は四面体隙間中心で0.33となっ ており、他の場所においてもこの差はほとんど変わらない。

 このことから、AgイオンはNaイオンに比べ、イオン結合性がかな り弱いことがわかる。このような差が生じる要因として、Agイオンの 電子親和力の高さが考えられ、AgイオンはNaイオンに比べ、移動経 路上でのイオン結合性がかなり弱いことがわかる。つまり、Agイオン が移動する際に、周辺のイオンとの電気的な相互作用がNaイオンに比 べ弱いということがいえる。このことも、Agイオンが移動しやすい要 因の1つになると考える。さらに、Agイオン、 Naイオンの変化がほ ぼ同じになっていることから、両者のイオン性の変化もほぼ同じと考え

られる。このことから、Agイオンの高いイオン伝導性には、イオン結 合性はほとんど寄与していないことが考えられる。

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