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O.84
−O.2 O O.2 O.4 O.6 O.8 1 1.2 Mイオンのポイント
図3.2.3.9
M、21、4クラスターにおける、Mイオンの移動に伴う
人面体隙間上Mイオンと周辺イオン間の総結合次数の変化
一75一
3−2−3−2 α一AgIとβ一AgIの比較
α一AgIは超イオン伝導性を示すが、同じ組成であるにも関わらず、
ウルツ鉱型の結晶構造を持つβ一AgIになると数桁程度イオン伝導性 が低くなる。これまで述べてきたように、Agイオンの高いイオン伝導 性には移動するAgイオン周辺の電子状態が大きな影響を与えている。
つまり、α型とβ型の結晶間のイオン伝導性の大幅な違いは、相転移に よる結晶構造の変化により、Agイオン周辺の電子状態が変化したため と考えられる。そこで、β一AgI結晶の構造をもとにして作成したク ラスターを用いてイオン移動の計算を行いα一AgIにおける結果と比
較した。
一76一
3−2−3−2−1 β一AgI結晶中のAgイオンの移動に対するク
ラスターモデルと計算条件
ウルツ三型構…造(4)を持つβ一AgI結晶の単位格子の概略図を図 3.2.3.10に示す。この単位格子の一部を切り取り、β一AgIのクラス
ターを作成した。このようにして作成したAg31、、クラスターの概略 図を図3.2.3.11に示す。1イオンを大きい球で、Agイオンを小さい球 で示した。作成に用いた格子定数は文献(4)をもとに、ao=4.58
0A、 Co=7.494Aとした。
Agイオンの移動経路についてはα一AgIの場合と同じように、四
面体隙間から八面体隙間を抜けて隣の四面体隙間までとした。また、AgIオンの移動はα一AgIと同様に、四面体隙間一四面体面上一人面 体隙間一四面体面上一四面体隙間の各ポイントとその中点の9ポイント
とした。比較のため、α一AgIのクラスターモデルは、3−2−3−
1−1のAg12114クラスター一を用いた。比較に用いた項目は、以下 の4点とした。
・移動Agイオンと周辺1イオンとの結合次数合計
・移動Agイオンと周辺Agイオンとの結合次数合計
・移動Agイオンと周辺すべてのイオンとの結合次数 ・移動Agイオンの実効電荷一77一
Iイオン Agイオン
図3.2.3.10 β一AgI結晶の単位格子
一78一
lイオン Agイオン
図3.2.3.11 Ag3111クラスターモデル
一79一
3−2−3−2−2 結晶構造の違いによるAgイオンの移動に伴う結
合状態の変化図3.2.3.12に、Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと周辺1イ オン間の結合次数の変化を示す。図には、縦軸にAg−1間の結合次数:
をとり、横軸には移動を始める四面体隙間中心を0とし、移動の終点で ある隣の四面体隙間中心を1として、移動Agイオンの位置を相対的に 示した。また、α一Aglの値をロで、β一AgIの値を△で示した。
α一AgIでは、移動Agイオンが人面体隙間に移動するに伴って結
合次数は減少し、八面体隙間中心で最小となる。その後、隣の四面体隙間に移動するに伴い、結合次数は増加している。結合次数の値をみると、
四面体隙間中心では1.15となっているが、八面体隙間中心では0.
94となり、0.2程度の減少がみられる。特に四面体隙間面上から八 面体隙間へ移動する際の減少は大きいが、八面体隙間内での結合次数の 変化は小さくなっている。
β一AgIについてみると、定性的な変化の傾向はor 一AgIの場合 とよく似ている。しかし、結合次数の値は全体的にor 一AgIより低い 値となっている。また、八面体隙間内での結合次数の減少が大きくなっ ており、特に人面体隙間中心での結合次数:の減少が大きく、1.1あっ た結合次数が0.76になる。そのために、四面体隙間中心では約0.
04だったα一AgIとβ一AgIの差が、八面体隙間中心では約0.
18と大きくなった。
これらのことから、周辺1イオンとの結合においては、八面体隙間内
のうち、特に八面体隙間中心付近において、α一AgIとβ一AgIの
違いが顕著であることがわかった。
図3.2.3.13に、移動Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと周辺
Agイオン間の結合次数の変化を示す。図の縦軸にはAg−Ag間の結
合次数をとり、他の表示は前図と同じである。
Agイオンの移動に伴うα一AgI、β一AgIの値の変化には大き
な違いがみられない。ともに四面体隙間中心での結合次数はほぼ0であ るが、八面体隙間中心に近づくにつれて結合次数は増加しており、八面
一80一
体隙間中心で最大値となっている。このことから、移動Agイオンと周 辺Agイオン間の結合状態については、人面体隙間中心において強い共 有結合性を示すことなどα一AgI、β 一一AgIの間にほとんど違いは
ないことがわかる。従って、α一AgIとβ一AgI中のAgイオンの
結合性の特徴は周辺1イオンとの間の結合にあると考えられる。
図3.2.3.14に、移動Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンと周辺 イオン間の総結合次数の変化を示す。図の表示は縦軸が総結合次数を示 す以外、前図と同じである。
β一AgIの結合次数の変化をみると、四面体隙間中心で最大値とな り、八面体隙間中心に向かうにつれて結合次数は減少し、八面体隙間中 心で極小をもつ。特に、四面体隙間から人面体隙間に移動した際の減少 が大きく、最大値は約1.1、:最小値は約0.9で、その変化の幅は約
0.2となっている。
一方、α一AgIについてみると、四面体隙間から人面体隙間へと移 動するにつれて結合次数は減少するが、人面体隙間中心では結合次数が 一旦増加している。最大値は四面体隙間中心で約1.15とβよりも若 干高いだけだが、:最小値は八面体隙間の1.08とβの最小値0.9に 比べかなり高い値になっている。そのため、結合次数の変化の幅は約0.
07とβ一AgIの場合の約1/3になっている。特に、八面体隙間に
おいてその差は大きくなっており、八面体隙間中心での差は約0.18となっている。
次に、Agイオンの移動に伴う、移動Agイオンの実効電荷の変化を 図3.2.3.15に示す。縦軸には実効電荷をとり、他の表示は前図と同じで
ある。
図より、α一Aglでは、四面体隙間中心が最小値となっており、移 動Agイオンが八面体隙間へと移動するに伴い値は増加している。八面 体隙間中心において最大値をとり0.015となった。この結果は、周 辺1イオンとの間の結合次数の変化と逆の傾向になっており、結合次数 の減少に伴い、実効電荷が増加していることがわかる。
β一AgIについてみると、四面体隙間中心の実効電荷はα一AgI
一81一
より0.04程度大きく、八面体隙間へ移動するに伴いその差は大きく なっている。βrAgIも八面体隙間中心で最大値をとるが、その値は
約0.16とα一AgIに比べ、約0.14大きくなっている。特に、
四面体隙間から八面体隙間へと移動する際の実効電荷の増加が大きく、
α一AgIとの違いが顕著に現れている。これらのことからα一AgI
に比べβ一AgIはイオン性が強くなっていることがわかる。特に八面 体隙間中心では、イオン結合性が強く現れていると考えられる。このた めに、β一AgIでは周辺1イオンとの間の結合次数が八面体隙間内で 大きく減少していると考えられる。先に示したように、移動Agイオンと周辺Agイオン間の結合次数に 大きな違いがみられないため、総結合次数に差が生じる原因は周辺1イ オン間との結合状態の違いと考えられる。四面体隙間から八面体隙間へ
Agイオンが移動するに伴い、移動Agイオンと周辺1イオンとの結合 はイオン性が強くなってくる。β一AgIに比べα一AgIはその変化
が小さくなっているために、共有結合性の減少が小さくなっている。
これらのことから、α一AgIに比べてβ一AgIが5桁も低いイオ
ン伝導性を示す理由として、Agイオンの移動に伴う共有結合性の変化 が大きく、活性化エネルギーが大きくなるためであると考えられる。一82一
1.2
1.1