山梨肺癌研究会会誌 10巻2号 1997
外来化学療法(CBDCA-VP16)施行
症例について
山梨厚生病院 呼吸器内科 池田華子 岩井和朗
呼吸器外科 虎走英樹 加賀重亜喜
有泉憲史 橋本良一
病理学 三俣昌子
1)はじめに 肺癌に対する化学療法の現状は、有効性の確率や生存期間の 劇的な延長が得られていず、長期入院、副作用など、化学療法のQ OLに対する問題点が指摘されている。それらをふまえ、近年抗腫瘍 効果のみでなく、QOLの向上を目指す化学療法を強調する考え方が 唱えられてきている1)2)3)。今回、当院で経験した外来CBDCA−VP 16療法にっき検討したので報告する。 2)対象(表1・表2) 当院で1996年2月から1997年5月現在、表1の基準を満たし、 かっ2サイクル以上施行できた症例を対象とした。総数は6例で男性 4例、女性2例、年齢は51歳から76歳で平均66.5歳であった。 Performance StatusはPS−0が4例、 PS−−1が2例であった。組織型 は腺癌2例、小細胞癌4例、臨床病期は腺癌が2例ともStage皿b、小 細胞癌はLD2例、 ED2例であった。 3)治療レジメン(表3)Hydrationの必要のないCBDCA 350mg/m2を生食500ml
でday1に1回点滴とし、 VP−16は25mg/bodyでday1∼21まで
内服とした。この際、消化器毒性軽減のため、day1で制吐剤である 5−HT3拮抗剤を点滴静注し、 day2∼6で5−HT3拮抗剤を内服と した。その後1週間休薬として、合計4週間を1サイクルとした。目標は 5サイクル以上とした1)。1サイクル目は全例入院での施行とし、副作 用の程度と出現時期を確認し、外来での対応を予測した。 一65一平成9年9月1日 4)副作用(表4) 判定基準はJapan Clinica10ncology Group4)のものを参照 とし、GradeOは副作用がなく無症状で、1・2・3・4となる程副作用も重 篤となるが、主な副作用として消化器毒性・血液毒性・腎毒性があげ られる。我々の経験した症例では、消化器毒性は5−一一HT3拮抗剤を 使用しても食事摂取不可能となったGrade3が2例で、この2例に対し ては食事摂取可能となるまで3日間の短期入院を繰り返した。他の4
例はGrade1以下の軽いものであった。血液毒性はWBC2000前後
のGrade2が3例で、 G−CSFを必要とした。また、特に輸血が必要と なる様な症例はなかった。腎毒性は認められなかった。 5)効果(表5・表6) 効果はCR1例・PR3例・MR1例・NC 1例で、奏功率は66.7% だった。生存期間中央値(MST)は8.5ヶ月、在宅期間は297.5日、 在宅率は80.5%、平均投与回数は4.6回だった。非小細胞癌のみ でみると奏功率はO%、MSTは7.6ヶ月で、小細胞癌のみでは奏功 率は100%、MSTは10.0ヶ月であった。在宅率は70.7%から 84.6%、平均80.0%であった。 6)考察 非小細胞癌では、CBDCA−VP 16療法は他の化学療法と比べ 奏功率は16%とやや劣るが、MSTは6.8ヶ月と同定度の成績である との報告がある1)。当院でも奏功率は0%であったが、MSTは7.6ヶ 月と同程度を示した。 小細胞癌では、CBDCA−VP 16療法は奏功率85.3%と他の療 法と比べても良好で、MSTも10.2ヶ月と平均的であると報告されて いる5)6)。当院では奏功率は100%と優れており、MSTも10.0ヶ月と 同程度の成績を示した。このように外来CBDCA−VP 16療法は従来 の入院化学療法と比較して奏功率はやや劣るが、生存期間中央値は 同程度の成績が得られ、かつ副作用の軽減と在宅率の向上が得られ QOLの改善が認められると思われる。 7)結語 肺癌に対する化学療法の有効性の確率や生存期間の劇的な延 一66一山梨肺癌研究会会誌 10巻2号 1997 長が得られていない現在、従来と見劣りのない生存期間中央値を示
しながら高い在宅率とQOLの向上の認められた外来CBDCA−VP
16療法は有効と考えられた。 文献 1)高橋和久,桜庭晶子,吉良枝郎:肺癌長期外来化学療法,内科総合誌1994,11(5)919∼923
2)鈴木隆二郎,野田康信,権田秀雄他:StagelV非小細胞
肺癌に対するcarboplatin 一一 etoposide療法について,化学療法 の領域,1996,12(9)77∼83 3)大道和宏,有田健一,江島剛:進行非小細胞癌に対する high dose CBDCA療法の試み,癌と化学療法,1992,19(1)123∼125
4)河原正明:抗癌剤の副作用とその予防対策,内科総合誌, 1996,13(8)1267∼1272 5)新田隆,福岡正博:肺癌治療の基本的戦略,内科総合誌, 1996,13(8)1178∼1183 6)K.matsui, et a1:小細胞肺癌高齢患者に対するCBDCA−VP16療法の第H相試験, ASCO,1996,20
一67一平成9年9月1日