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IV 外来化学療法と緩和医療・在宅療養支援

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Academic year: 2021

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187  本年4月より施行された癌基本対策法の中で,特に 強調されているのが「緩和医療」と「癌化学療法の標 準化」であると考えられます.現在腫瘍センターにお いて行われようとしている外来化学療法は,まさに時 宜にあった,というより時代を先取りした治療である と考えられます.  癌の化学療法は大きく分けて再発予防のための補助 化学療法と,再発進行癌に対する延命治療に分けられ ます(表1).この2つを区別して治療に当たることは 医療者側にも患者側にも重要なことであると考えられ ます.補助化学療法においては,以前から患者側も医 療者側も副作用を恐れるあまり不充分な化学療法を行 うことがよく見られました.再発を抑えるという本来 の補助化学療法の意義を十分に理解したなら,しっか りとした標準的な治療を行うことがいかに重要である かということが理解できると考えられます.支持療法 の発達は副作用のコントロールを容易にしました.今 後の課題としては「化学療法が必要でしかも効果があ る患者さんの選択」が問題となります.あるいは「化 学療法が必要だけれど効果がない患者さん」の治療効 果をいかに上げるかが問題になると考えられます.さ らに医療経済の面からいうと「化学療法の必要のない 患者さん」をいかに正確に見つけるかも重要な問題で あります.また,今まで目の前の再発を回避すること に気をとられて問題にされていなかった,長期生存患 者さんの QOL,心筋障害,感情障害などが問題となる と考えられます.「癌を再発させないためだから我慢し なさい,それでじゅうぶんでしょう?」では患者さん の幸福は得られないのです.今後は慢性病としても捉 えられるがん患者さんの補助化学療法後のきめ細やか なフォローアップ,ならびにさまざまな検証が必要と なってくると考えられます.大学病院の腫瘍センター を中心にこういった「癌生存学」的取り組みが必要と なると考えます.  一方進行再発癌の治療は患者さんおよび家族の QOL の向上にあります.再発した癌は多くが治癒する ことはなく大多数の患者さんはその癌により亡くなら れます.化学療法が比較的効果があるとされる乳癌に おいても,多くの新薬の開発にも関らず,再発後10年

Ⅳ 外来化学療法と

緩和医療・在宅療養支援

松 岡 順 治

岡山大学医学部・歯学部附属病院 乳腺・内分泌外科 キーワード:外来化学療法,在宅,緩和,地域連携 岡山医学会雑誌 第119巻 September 2007, pp。 187-189 平成19年6月受理 〒700ン8558 岡山市鹿田町2ン5ン1 電話:086ン235ン7257 FAX:086ン221ン8775 Eンmail:jmatsu@md。okayama-u。ac。jp

外来化学療法

表1 癌における外来化学療法 ソ補助療法  安全かつ完全な治療を行う  効果的な支持療法を行う ソ再発進行がんに対する化学療法  緩和ケア(疼痛管理,全人的ケア)を初期から考慮に入 れたチームアプローチが重要 地域との連携を図る(在宅を視野に入れる) Proportion Surviving 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0 24 48 72 96 120 144 168 192 216 240 Months From the Start of Treatment

1,581例/M。 D。 Anderson Cancer Center Cancer 85:104ン111,1999 Overall survival、 Median=21.3 months

Progression-Free Survival、 Median=11.5 months

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188 の生存率は2∼3割に過ぎません(図1).多くのメデ ィアで画期的な新薬が開発されたとの報道に接して, 大多数の患者さんが「抗がん剤は癌を治す薬だ」と考 えてしまいます.多くの患者さんは副作用を経験しな がらも「癌を治すために」いろいろなことを犠牲にし て治療に通院されます.患者さんの希望がどういった ものであるのかはさまざまですが,「癌が治る」という ことはまれであることを患者も医療者も知った上で QOL をあげる努力が必要であると考えます.こういう 考え方からすると,広い意味での緩和医療は再発した 時点,あるいは進行がんが診断された時点から始まる と考えられます(図2).緩和医療は痛みをとることの みにあるのではもちろんありません.外来化学療法を 行っている患者さんにはさまざまな状況の方がおられ ますが,前述の考え方からすると全ての方が緩和的ケ アを必要とされる方であると考えられます.多くの医 療専門職が協力しながらチームとして患者さんをサポ ートすることが緩和の本質であり,最も重要な点です (図3).  大学病院で外来化学療法を行うにあたって,患者さ んを介した地域の医療機関との連携は不可欠です.在 宅での日常を過ごせることを目的に,地域での医療機 関との情報を共有することが重要となってきます.消 化管外科では特に腸閉塞,出血などの症状が病勢の進 行とともに出現してきます.化学療法施行中の骨髄抑 制,嘔気などの副作用のコントロールとともにこれら の事態に適切に対処することが患者さんの安心につな がります.そのためにも外来治療中の早い時期から地 域の医療機関への患者さんの紹介を行うことがよいと 考えられます.在宅が必ずしも患者さんの満足につな がらない場合もあり,そのような際には地域連携病院 への入院も躊躇しないことが肝要と考えられます.大 学病院で断られたから地域の病院に入院するのではな く,地域の病院が本人と家族にとって望ましいので入 院するという姿でなくてはなりません.そのためにも 早くからの連携が必要と考えます.昨年,外来化学療 法を行いつつお亡くなりになった大腸がんの患者さん の死亡場所を示します(図4).多くの方が連携の中核 病院でお亡くなりになっています.平均の入院期間も 短く,在宅ですごす時間がある程度とれていたのでは ないかと考えています.大学病院での化学療法による, 有害事象への対処を地域中核病院にお願いすることは 地域での医療レベルを一定のものにする教育効果もあ ります.終末期の在宅医療を行うためには地域で疼痛 コントロールを適切に行うことができるような施設が 必要です.岡山県でモルヒネが使用できる医療機関は そのほとんどが100床以上の病院で,調剤薬局にモルヒ ネを備えているところは2割に過ぎません(表2).さ らに診療所で定期的にモルヒネを使っているところは 皆無といってよい状況です.このような状況を改善す ることなしに在宅治療の促進はできないと考えます. そのためにも外来治療を通じ,かつ患者さんを通じ治 療の標準化を図る必要があると考えられます.大学病 院で行っている標準治療を地域の病院で行っていただ これまでの考え方 治療期 終末期 がん治療 痛みのケア各種症状のケア 現在の考え方 がん治療 End of Life

World Health Organization。 、 Geneva: WHO; 1990。

痛みのケア 各種症状のケア 図2 がん患者の医療 薬剤師 ナース リサーチナース 病理医 内科医・家庭医 放射線診断医 外科医 患者・家族 放射線技師 形成外科医 臨床薬剤師 栄養士 精神腫瘍医 OT PT すべての人がそれぞれの立場からアプローチ 薬剤師 図3 Multidisciplinary Approach 集学的治療:チーム医療の 形態 地域関連病院 大学病院 ホスピス 自宅 図4 外来化学療法施行例における死亡場所

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189 くことでこの標準化が図れると考えます.今後はこの ような視点に立って連携機関に対する生涯教育の機会 を提供することが,今,大学病院に求められていると 考えられます.  外来化学療法では患者さんの家族との交流が必要と なります.癌が着実に進行している患者さんでも,外 来通院ができているのだから癌が進んでいないと考え る家族も多いのです.患者さんが一人で外来に来て化 学療法を受けるのではなく,家族と来院して現在の状 態を外来のチームのスタッフと話し合うことが求めら れます.癌は患者さんがひとりきりで向き合うには大 きすぎるのです.日ごろはともに過ごす機会の少ない 家族が一緒になる機会を与えるのも腫瘍センターのつ とめだと思います(図5).  患者さんの治療を通じて医療社会の構造や社会の規 範を変えていくことができ,それがさらに患者さんの 幸福につながるのが外来化学療法であると考えます.   外来化学療法と緩和医療:松岡順治   表2 岡山県におけるモルヒネ採用医療機関数 件数 採用件数 (%) 100床以上 79 73 92.4% 99床以下 1232 133 10.8% 調剤薬局 593 140 23.6% 定期的に納入のある施設 19床以下 1181 9 0.09% 図5 家族とともに

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