山梨肺癌研究会会誌 15巻2号2002
当科における肺癌の外来化学療法の現況
市立甲府病院 呼吸器内科 赤尾正樹 中村貴光 山口弘 大木善之助 小澤克良 内科外来 遠藤雄子 井上英子 向山ゆりか 保坂富子 要旨:従来手術不能進行期非小細胞肺癌あるいは小細胞肺癌に対しての化学 療法は、ほとんどの症例でプラチナ製剤であるシスプラチンを用いるため、そ の非血液毒性あるいは水分負荷の必要性等から入院加療が余儀なくされた.今 回われわれは、外来にて進行期非小細胞肺癌あるいは再発・再燃癌患者に対し てGemcitabine、 Docetaxel等の新規抗癌剤を併用あるいは単剤で投与した.血 液毒性、非血液毒性上も少なく、十分に外来でmanageableであった.近年、医 療経済面とも関連して外来化学療法の重要性が認識されるようになったが、 QOLの面からも有効であると考えられた. キーワード:進行期非小細胞肺癌、外来化学療法、新規抗癌剤 はじめに 今日、皿B期以上の進行期非小細胞 肺癌における標準的化学療法として Gemcitabine(GEM)やDocet日xel(DOC) 等の新規抗癌剤は、Cisplatin(CDDP) との併用により高い治療成績が示さ れているが1)、悪心・嘔吐、腎障害等 の非血液毒性により治療の継続が困 難になる場合も多く、水分負荷の必要 性から入院が必要となるため、抗腫瘍 効果が得られたとしても長期にわた る治療は難しい.近年、さまざまな新 薬が登場し、これらの薬剤を組み合わ せることによる、外来での治療が試み られている.また医療経済面とも関連 して外来化学療法の重要性が認識さ れるようになり、患者のQOLの面か らも外来化学療法が有効に行えるか どうかは重要な課題と考えられる.わ れわれは、外来で進行期非小細胞肺癌に対してGEM+DOC併用療法を、主
に高齢者の進行期非小細胞肺癌に対 してvinorelbine単独療法を、再発・再 燃小細胞肺癌に対してIrinotecan単独 療法を施行した.その内容を文献的な 検討を含め考察する. 対象と方法 当科では2001年3月より肺癌外来 化学療法を開始した.外来化学療法に 適した症例として、①PSO−1(外来通 院可能な健康状態)、②頻回の血液検 査が可能な症例、③定期的な連絡が可 能な症例、④症状を観察できる家族な どと同居している症例が挙げられる. まず最低1コースは入院で行い、その 効果と危険性を十分に把握し、上記の 条件をほぼクリアした症例で外来に て化学療法を施行した. (i)GEM+Doc併用療法 GEM l OOOmg/m2 days 1、8 DOC 60mg/m2 days 8一70一
平成14年10月1日 Courses repeated every 28 days Out−patient setting
For皿B−WNSCLC
(li)vinorelbine単独療法 Vinorelbine 20−25mg/m2 days l、8 Courses repeated every 21 days Out−patient settingFor皿B−IV NSCLC
(ii)Irinotecan単覆虫療法 Irinotecan 100 mg/m2 days l、8(、15) Courses repeated every 21(、 28)days Out−patient setting For recurrent SCLC 結 果 (i)GEM+Doc併用療法表]にGEM+DOC併用外来化学療
法を施行した症例の経過を示した.2001年3月から2002年4月までに8
症例(男性5例、女性3例)に施行し た.組織型は腺癌が5例、扁平上皮癌 が3例であった.最長投与数は症例2 の12コースで、8例中5例にresponse が認められた。毒性はgrade 2の好中 球減少が3例、grade 2の血小板減少が 2例、grade 2の食欲不振が1例認めら れたが、すべて外来でmanageableであ り、外来治療が十分可能であった. (ii)vinorelbine単独療法当科では2002年2月から4月まで
に4症例に対して施行した.response はまだ評価できなかったが、血液毒性 も比較的少なく、静脈炎の副作用もな く、高齢者を対象としても比較的安全 に施行し得た. (lji)Ir▲n・tecan単独療法2001年10月から2002年4月までに
再発・再燃小細胞肺癌7症例に対し、 Irinotecan単独療法を外来で施行した. 下痢の副作用は全例で認めなかった.GEM+DOC外来化学療法 隠外来化学療法
2001年. 2002年 3 4 5 6 7 8 9101112 1 2 3 4月 症例1。63歳M Adeno. IIIB 症例2.69歳M Adeno.1】[lB 症例3。63歳F A{缶no. IilB 症例4.69歳F Adeno. W 症例5.45歳F SCC IIIB 症例6.60歳M SCC IV 症例7.70歳M A〔1∋no. IIIB 症例8.67歳M SCC IV難一i麗顯個…麟掴冨丁二丁]
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,t, ,『 ttt.t, ^ 表1.GEM+DOC併用療法 症例経過一71一
山梨肺癌研究会会誌 15巻2号 2002 治療抵抗性で再入院する症例もあっ たが、原発巣あるいは肝転移巣に対し コントロール良好な症例も認められ た.シスプラチンが使いにくい超高齢 者でも副作用はなく、奏功した1例を 経験した. 考 察 近年さまざまな新薬が登場し、これ らの薬剤を組み合わせることによる、 外来での治療が試みられている.新規 抗癌剤であるGemcitabineとDocetaxel は非小細胞肺癌に対し、単剤で20%以 上の高い奏功率が報告されている2・3・4). GeorgouliasらのCDDP+DOCvs.GEM+
DOCの比較試験で有効性は同等であ
り、好中球減少と消化器毒性が有意に 少ないことが報告された5)が、そのほ とんどが外来で治療されていた.今回われわれもGEM+DOC併用療法を外
来で施行したが、その有用性と副作用が少ないことより特にGEMは今後
CDDPに取って代わる可能性を秘めて いると思われた. Vinorelbine単独療法は、Gridelliらの ELVIS試験6)とMILES試験7)において進行NSCLC高齢患者を対象に各々支
持療法、GEM+Vinorelbine併用療法と 比較検討されたが、Vinorelbine単独療 法が有用であった.このことから、進行NSCLC高齢患者の標準的治療法は
単剤化学療法であると結論づけられ ている。われわれもこの報告をもとに して高齢者にはQOLを低下させない 目的でVinorelbine単独療法を施行す るようになった. 再発小細胞肺癌に対する標準的な 化学療法は存在しないが、初回化学療法としてPE療法またはCAV/PE交替
療法を受けた症例に対しては、
CDDP+irinotecan併用療法もしくは irinotecan単剤による化学療法を行う のもひとつの方法と思われる8・9). Irinotecan単剤で、再発および治療抵抗 性小細胞肺癌に対して、47%の奏功率 が報告されている8).ただし、米国の 成績では、薬剤感受性のある再発症例 に対しては353%の奏功率が得られ ているものの、治療抵抗性の症例では 奏功率は3.7%であったと報告されて いるlo). 2002年4月に医科診療報酬が改正 され、外来化学療法加算が新設された (表2). 外来化学療法・医科診療報酬改正の要点 条件1.外来化学療法のできるスペース 2.専任の外菊ヒ学療法ナース・薬剤師 3.病院機能評価を受けている 表2.外来化学療法加算 診療報酬の面からも入院加療から外 来治療への導入を促しており、今後 の外来化学療法の重要性がみてとれ る. 結 語 医療経済面あるいは患者のQOLの 面からも、今後更に外来化学療法の重 要性が認識され、積極的に導入される と思われる. 参考文献 1)Paul AB, Karren K: New chemotherapeutic agents prolong survival and improve quality of life in一72一
平成14年10月1日 non−small cell lung cancer. Clin.Cancer Res.5:1087−1100,1998 2)工藤翔二、日野光紀、藤田昭久・