わが国の救急・救急診療
著者
高木 武
著者別名
T. Takagi
雑誌名
東洋法学
巻
13
号
3・4
ページ
1-31
発行年
1970-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00006115/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja︿論 説V
わが国の救急 救急診療
高
木
武
一 二 三 四 五 目 次 は し が き 救急搬送に関する法律規定 救急業務・搬送の対象 救急病院・診療所に関する政令規定と問題 行政事項としての救急・救急診療 救急・救急診療と診療 あ と が き は し が き ネ ゆ ﹁救急診療﹂という言葉は、一般的でもなければ、確定的でもない。むしろ﹁救急医療﹂という言葉の方が﹁救急 ヤ 診療﹂という言葉より、一層一般的であるかもしれない。・しかし、この﹁救急医療﹂という言葉も沸法的にも、医学 わが国の救急・救急診療 一東洋法 学 二 ︵1︶ 的にも確定的でない。 ﹁救急﹂とは﹁にわかの難儀を救うこと。特に急病・怪我の急場の手当﹂である︵西尾・岩渕 ﹁圏語辞典﹂︶が. ﹁救急﹂という言葉自体が.それだけで.急場のものであるが.とくに診療を意味している.と することができよう。 ここで﹁救急・救急診療﹂としたのは.このことを明らかにしてみたいと考えているからであるが、この方向から. いわゆる救急︵業務︶︵消防法第七章二.同迭秦第九項︶に焦点をあわせ.わが国の今賢の救急・救急診療体制・制度 の問題点を指摘しながら.定位することにする、 ︵2︶ 救急業務については.すでに唄孝一教授の精徴な﹁救急業務の法制的問題﹂ ︵ー﹁消防法の一部改正による新発足を前 にして﹂⋮︶や﹁救急医療と法体制﹂ ︵東京都医師会雑誌第一九巻第言響︶があ撃.最近は.昨年一二月六欝.羅本医事 法学会の創立総会に際して報告された岩本正信教授の.救急診療機関の詳細な現況を知ることのでぎる秀れた﹁﹁救 急病院﹂をめぐる法と現実﹂という報告もある.したがって.筆者のような者が.救急業務⋮ー救急診療について. 筆を執る余地は.まったくない。しかし救急業務に関する消防法の改正から.数年を経過し.その実情は一変し社会 的事情も変化し.わけても.人身的交通事故の激増などの救急の量的増加と質的変化を考えると.救急を診療から考 ︵3︶ 察し.これを定位する必要もあろうと思われるのである。もちろん.このようなテーマにおいても.先進外国の法制 や現況を比較することは.このうえない方法であるが.ここでは.それは.紙巾の関係から他日にゆずることにする。 唄教授には勝手に前掲のご労作を利用させて載き、岩本教授には、その現況を叙述するために、総会報告当日載いた 資料を罵いさせて載くことにつき.あらかじめお詫びし.謝意を示す。
救急・救急診療は、大きくは、救急搬送と搬送先すなわち救急病院・診療所の救急診療機関の作用に分けられるが、 前者は、法律︵とくに消防法︶と政令により後者は、省令︵厚生省令︶により規定され法形式においても事項的におい ても二元的であり、しかも実際上は、前者と後者については、地方公共団体︵とくに市町村︶の自主立法である条例 や規則が規定しているようである︵例・東京都・消防関係救急業務に関する条例・同施行規則・同取扱規程など︶。したがっ て、目次・順序は、さきのような破行的・非体系的なものになることを許されたい。 ︵1︶
((
32.))
とくに交通事故の激増が見立つ。昭和餌四年一月から一〇月までに、一〇〇、三〇〇の死者と七八八、OOOの負傷者が 唄孝一﹁救急業務の法制的問題﹂ ︵法律時報第三六巻第二号︶ 療を歯科診療という︵同上︶。 法律﹂二八頁以下同﹁医師の業務﹂ ︵高田利広編・﹁医家法律大事典﹂︶四二頁以下、なお歯科に関し、歯科医師が行う診 可能な言葉とする。診療と医療については、参照・拙稿﹁諸種の﹁医する行為﹂ ︵東洋法学第五巻第一号︶、岡﹁診療室の 用いるのが一般的のようであるが、ここでは、﹁診療﹂﹁医療﹂の観念を明確にするのは、目的ではないから、一応、交換 ﹁診療﹂と﹁医療﹂の言葉の区別は、筆者の主観的主張のようであり、﹁医療﹂という書葉は、法制の上でも、実際にも でて昨年同期とくらべると、それぞれ一五%、、一七%の増加である。⋮⋮この一〇年間で死傷者は、この一月で五〇〇万人 になった。今の状態がつづけば、これから一〇年間に一、OOO万人越えるかもしれない︵朝日新聞昭和四四年二月八日︶。 東京都の救急車出動件数は、昭和三四年、特別区五四、九六一二、受託地区︵三多摩地区ほか︶⋮︵受託契約なし︶、昭和三五 年、特別区六六、四六一二、受託地区三、七三八、昭和三六年、特別区七四八六六,受託地区五、六一八、昭和三八年、特別 区九三、九八五、受託地区八、六七五、昭和三九年、特別区一〇七、四九九、受託地区一〇、三八九、昭和四〇年、特別区 一一〇、一八二、.受託地区二、六八三、昭和四一年、特別地区一一七、三四二、受託地区ニニ、八一八、昭和四二年、特 別区一二七、二五二、受託地区一五、四五八、昭和四三年一三八、八三四、受託地区一八、九九八である︵昭和四三年度東 わが国の救急・救急診療 三東洋法学 四
京消防庁統計集救急第八八表区・市別救急出場件数︶。昭和四三年であるが、その患動原限は、火災二、二三六、風水害な ど七.交通四〇、二五九.労働災害五、四九三。運動競技一.二九〇、一般負傷一八、九一四、犯罪四、八五八.自傷三. 六五四.急病七五.六六七.その他五、二三六である︵同上第八七表事故別救急出場件数︵そのi︶︶.最近、高速度道路 の救急体制に.連絡不充分による不備が間題になったが、いわば、これは広域的救急または、交通特別救急の間題であると いえるであろう。なお昭和三七年特溺区八○、六五三・受託地区六・七七六を右統計集に加.える、 欄㎜救急搬送に関する法律規定
救急搬送にとくに関する法律の規定を示す煮.つぎのようである. 濾防縄織法 ︵消防の任務︺ 第一条 消防は.その施設及び人員を活用して.国民の生命.身体及び財産を火災 から保護するとともに.水・火災又は地震等の災害を防徐し.及びこれらの災害に因る被害を軽減することを以〆,、、 その任務とする、 滴防法 ︹用語例︺ 第二条 この法律の用語は.左の例による。 薯 救急業務とは.災害により生じた事故若しくは屋外若しくは公衆の立入する場所において生じた事故︵以下この 項において﹁災害による事故等﹂という。︶又は政令で定める場合における災害による事故等に準ずる事故で政令に定める ものによる傷病者で医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要があるものを.救急隊によって.医療機関︵厚生省令で定める医療機関をいう。︶その他の場所に搬送することをいう、 第七章の二 救急業務 ︹市町村の救急業務︺ 第三五条の五 消防本部を置かなければならない市町村で政令で定める基準に該当そのものは、救急業務を行なわ なければならない。 2 前項の市町村以外の市町村で同項の市町村で準ずるものは、救急業務を行なうようにつとめなければならない。 ︹都道府県知事による救急業務実施の要請︺ 第三五条の六 都道府県知事は、救急業務を行なっていない市町村の区域に係る道路の区問で交通事故の発生が頻 繁であると認められるものについて当該交通事故により必要とされる救急業務を、関係市町村の意見を聞いて、救急 業務を行なっている他の市町村に実施するよう要請することができる。この場合において、その要請を受けた市町村 は、当該要請に係る救急業務を行なうことができる。 2 都道府県は、救急業務を行なっていない市町村の区域に係る高速自動車国道又は一般国道のうち交通事故によ り必要とされる救急業務が特に必要な区間として政令で定める区間︵前項の要請により救急業務が行なわれている道路区 間を除く。︶について、当該救急業務を行なっていない市町村の意見をきいて、当該救急業務を行なうものとする。 この場合において、当該救急業務に従事する吏員その他の職員は、地方公務員法︵昭和二五年法律第壬ハ一号︶の適用 については、消防職員とする。 わが国の救急・救急診療 五
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︹救急業務の協力要求と警察官との連絡︺ 第三五条の七 救急隊員は.緊急の必要があるときは.事故の現場附近にある者に対し.救急業務に協力すること を求めることができる。 慧 救急隊員は.救急業務の実施に際しては.常に警察官と密接な連絡をとるものとする。 ︹救急隊の通行特権︶ 第三五条の七 第二七条の規定は.救急隊について準用する、この場合において. ﹁火災現場に到達する﹂とある のは. ﹁救急業務を実施する﹂と読み替えるものとする. 驚 消防組織法 第一二条︵市町村相互の応援︶の規定は.第三五条の六第二項の規定によ勢都道府県が救急業務 を行なう場合について準用する。この場合において.同法第二一条中﹁市町村﹂とあるのは﹁市町村及び都道府県﹂ と. ﹁消防﹂とあるのは﹁救急業務﹂と. ﹁市町村長﹂とあるのは﹁市町村長及び都道府県知事﹂と読みかえるもの とする。 ︹政令への委任︺ 第三五条の九 この章に規定するもののほか.救急隊の編成及び装備の基準その他救急業務の処理に関し必要な事 ︵ま︶ 項は.政令で定める。 消防組織法第一条︹消防の任務︺は、昭和三八年四月五日法律第八九号で改定された規定であり、法律による救急 ︵2︶ 搬送・業務の基礎であるとされているようであるが、このような規定が法律によるその基礎であるとするならば.消防法︹この法規の目的︺第一条 ︵この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火 災から保護するとともに、火災又は地震等の災害に因る被害を軽減し、もって安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の 増進に資する。︶ことを目的とする。の規定が、法律によるその基礎規定ということができるであろう。この規定は、 昭和二四年六月四日、法律第一九三号によって改正されたものであり、したがって救急.救急診療の基礎は、昭和二 四年にすでに存在したということができよう。しかし消防法第一条のこの規定は、一般には、救急.救急診療の法的 根拠の基礎とされなかったのである。昭和三八年、消防法が救急・救急診療について画期的にその根拠・基礎規定と される消防組織法第一条のみならず、消防法の規定く同法第二条と第七章の規定︶も追加・改正して救急・救急診療体 制を整備するに際して、その提案理由は、 ﹁最近における交通事故の激増に伴いまして、適切な救急活動が行なわれ ることが緊切と存ぜられるのでありまして、この際救急体制を確立し、その整備を図るための措置を講ずる必要があ ると認められる﹂とされ⋮、救急業務の法的整備の要望は、とくに法制化促進とこれが財源措置において、その両三 年以来され、消防組織法第一条をはじめさきの消防法の一連の追加改正の規定消防法の一部改正として行なわれたと ︵3︶ いう。これによれば、消防法第一条は同じような文言をうたいながら、救急・救急診療の根拠・基礎的規定とは認識 されていなかったとすることができよう。これも一個の問題である。 このような認識のもとでは、救急・救急診療は、各地の社会的需要に委ねられ、より素朴な自由経済的原則したっ ていたといえよう。その社会的需要は氷山の一角のように﹂部の地方公共団体の自主立法︵条例または規則、規程など︶ に現われたにすぎなかった︵昭和三七年現在において東京都をはじめ条例を制定していた市町村は五七地方公共団体、規則を制 わが国の救急・救急診療 七
東洋法学 八 定していた市町村は、一〇九地方公共団体であったという︵消防庁調査︶︶。ここでも、どのような社会的需要でもこれと、 これに対応・反射しなければならない国または地方の政策の自然的具体化・発達の間に距離と時問があり.それは主 ︵魂︶ として財源確保が困難な間題として作罵しているからであり.とくに地方政治・自治さらに地方行政の限界をうかが うことができるようであるが.この消防組織法第一条が.消防法法第二条第九号や同法第七章の規定とともに追加・ 改正されたことによって.消防法第一条がこれらの規定とともに救急・救急診療の法的根拠基礎としての意義をもっ のであるということがでぎる. 第二条︹矯語例︺は.救急・救急搬送の対象を示し.救急業務・搬送を定義するように.これを規定する.いわば. パ ゼ ゼ ゆ ゆ 本条は.救急・救急診療の実際の中心的法律による規定である。その対象について.つぎに考察するが.これ︵救急︶ について.直接法律によって事故を規定義して示し.第二に.法律に基き政令︵行政立法︶による事故等に準じる事 ︵5︶ 故を規定し.さらに限定的に特定しようとする。これは.法律によって、対象を明確にし基本的対象を示し.それに 至らない対象を行政立法にまかせている立法技術としては.普通のことであり.実情にそくした行政立法に期待しよ ︵6︶ うというのであろう。政令によることによって、その点は.技術的に確保することがでぎ.地方公共団体間のその対 ︵7︶ 象の不均衝はなくなることが考えられる.利点もあろう。しかし現実においては.これらの利点は、必ずしも実現し ないおそれがある。それは.法律に規定されることによって.救急・救急診療が法的義務になり.義務となることに ょって.その対象を明確にし、慎重に限定的規定する傾向もあり、さらに.それを政令によって、補充するとしなが らも統一的に規定することは.ーその規定の内容によるがー統一的であるだけに必ずしも.各地の実情にそくす
ることができない場合もあるからである︵対象の不均衡の解消より重大なのは、救急の対象が少なくなることであ る︶。 第三五条の五 ︹市町村の救急業務︺は、一定のすなわち消防本部の必置の市町村に救急・救急搬送の義務のあるこ とを礁認し、それ以外の市町村にも、救急・救急搬送の義務を行うように努めなければならない義務のあることを確 ︵8︶ 認する。これが創設であるか確認であるかは、案外議論が分かれるであろうが、地方公共団体の事務は、固有事務、 委任事務と行政事務に分けられ︵地方自治法第二条第一墳︶、固有事務は、地方公共団体の組織、立法、財務と住民の 福祉に関する事務がその例であり、委任事務は、国または他の公共団体からその地方公共団体に委任された事務であ ︵9︶ り、行政事務とは権技力・統制的事務である、とされている。救急・救急診療がこれらのいずれの事務に属するかは、 急救・救急診療の概念、性質などによって、しなければならないことはいうまでもない︵これについては、後でふれよう︶ が、救急・救急診療の方向に認識すれば固有事務に属し、救急搬送・救出︵救助︶の方向に理解すれば、行政事務と して考えることができる。いずれにしても地方公共団体の事務であり、また従来、都道府県または市町村の救急・救 急診療に関する自主立法が存在する事実からと、本条の規定は確認であるとすることができる。この確認は、双指向 ︵io︶ 性の意味において重要である。それは、従来、救急・救急診療が、公共団体の義務であるか、義務であっも、いかな る公共団体の事務であるは、必ずしも明白ではなかったといえるからである。これによって何人がその義務者である か明白になった。 第三五条の六︵都道府県知事による救急業務実施の要請︶は、右の市町村の救急業務の義務の履行・努力を補充する規 わが国の救急・救急診療 九
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︵難︶ 定であり、とくに都道府県が第二次的に救急業務を行うものであることを示すことが鐵立つ。前条と本条においては、 政策的な問題であるが.とくに財政と救急・診療組織の方向から消防本部設置の市町村を第一的に救急・救急診療の 義務単位地方公共団体とし.都道府県を第二次的な救急・救急診療実施地方公共団体としている点に問題があるので はないかと思われる。それは.財政的方向からは市町村の財政負担の問題があ参.救急・救急診療組織の点において ︵鴛︶ は.二元的の間題をより実質的に深刻ー複雑にすると思われるからである. 策三五条の七︵救急業務の協力要求・警察嘗との連絡︶と第三五条の八条︵救急隊の通行特権︶は.救急搬送診療の実を あげるために.作用と組織の方向から.よ塾可能にする規定である.とくに救急業務の協力︵第三五条の離第一項︶と 救急隊の通行特権︵第三五条の八第一項︶は.法律による規定であり法律による改正の効果を示す規定であろう.第三 五条の九︵政令への委任︶は.法律︵改正︶による規定の欠陥や不明の補充や明確が期待し.その業務体制の完備を期 ︵欝︶ する規定といわれであろう。 こうして.法律によっ、て救急・救急診療が制度として整備されたことは.間題があるにしても画期的であり.救急 ・救急診療の社会的需要が積極的に認められたとすることができよう。 ︵玉︶ 以上の規定の他︹特別区の読替︺第三七条などが関係規定であり、水防法.災害法などに関係規定があるように考えられ るが、必要に応じて示すことにする。 ︵2︶ 唄・前掲︵法律時報︶ ︵3︶ 唄・前掲︵法律時報︶、唄教授は、全国消防長会議第二二回総会決議︵昭和三六年︶、陳情諮問・答申などを紹介され.評 価されている︵同上︶。︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ ︵10︶ ︵U︶ 地方財政の困難は、とくに国の補助率が少いのにつきる。すなわち国の補助単価実際の事業単価より低く、補助事業に必 な人員、資料などの数量が必要量より少く、関連事業は補助対象ではないなどは、今日でも余り変化はないであろう︵参照 ・杉村章三郎﹁事務分配と財源分配﹂ ︵行政法講座第五巻︶一七六頁︶。この救急診療体制について﹁法制促進とこれが財源 措置﹂が強く要望されたことは当然である。唄・前掲︵法律時報︶。 唄・前掲︵法律時報︶ 、参照・拙稿﹁要訣行政法﹂一三二頁 この不均衛の消滅の点は、必ずしも閉らかではない。この法律改正の前にすでに存在していた地方公共団体の自主立法 ︵例・東京都の消防関係救急業務に関する条例、同施行規則など︶は、必ずしも、この法律改正を機会として廃止または法 律改正の方向に改正されたとは、いいきれず、その意味では、不均衡が消減したともいいきれない。また、実際の救急に関 する法的規定として、各地の地方公共団体の自主立法を示すのが順序であろうが、時間的にも調査も不能であったし、資料 もないから、自信もなかったし、また問題意識がなくって、これをすべて挙げることは、無意味でもあると考えられたので、 ここで、一応存在を推認することができるであろうという程度にして、言及することをやめて省略する。 消防法施行令︵救急業務を行なわなければならない市町村の基準︶第四三条 法第三五条の五第一項︹救急業務を行なわ なければならない市町村の基準︺の政令で定める基準は、人口三万以上の市であることとする。 2 前項の人矯は、地方 自治法︵昭和二二年法律第六七条︶第二五四条︹人口の定議︺の規定による人口によるものとし.地方自治法施行令︵昭和 二二年政令第一六号︶第一七七条第一項︹市町村の廃置分合等があった場合の人目︺各号に規定する場合に該当する市町村 の人口にあっては、同項の規定による都道府県知事の告示した人目によるものとする。 田中二郎︹行政法︺下1一〇〇頁以下 碧海純一﹁法哲学概論﹂九九頁 ︵都道府県が救急業務を行なう高速自動車国道等の区間︶第四三条の二 法律三五条の六第二項︹救急業務が特に必要な 区間︺に規定する政令で定める区間は、一般国道四号のうち宮城県刈田郡蔵王町大字一本松西八番の一から同県名取郡岩沼 わが園の救急・救急診療 二
︵鷺︶ ︵欝︶
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町新相ノ原一二四番の一までの区間とする。 ︵救急隊の編成及び装備の基準︶第四十四条 救急隊は.救急自動車一台及び救急隊員三人以上をもって編成しなければ ならない。 2 前項の救急自動車には、傷病者を搬送するに適した設備をするとともに、救急業務を実施するために必要 な器県及び材料を備えつけなければならない。 救急・救急診療組織の問題は.救急・救急診療を、診療に重点をおいて理解する場合には.間題としての意味をもつ。こ れは、救急・救急診療の意義から決定されよう。 二救急業務・搬送の対象
救急業務の対象は.消防法第二条第九号によれば.災害によ9生じた事故.屋外において生じた事故.公衆の出入 する場所に生じた事故︵以上﹁災害による事故等﹂というが︶と政令で定める場合における災害による事故などに準じる 事故で政令に定めるものによる傷病者である。消防法施行令第五章第四二条によれば.さいごの政令で定める場合に おける災害による事故などに準じる事故で政令で定めるのは.屋内において生じた事故とし.同項の政令で定る場合 は.当該事故による傷病者を医療機関その他に迅速に搬送するための適当な手段がない場合とする.とする。これに よれば.限定はあるが.まず事故により生じた傷病者が救急業務の対象であるとすることがでぎるが.事故によらな い傷病者は対象外であり︵例・急病人︶.事故でもなく傷病者でもない者も対象外である︵陣痛を訴える妊産婦︶。ここに問 題があるのではなかろうか。原因・事故によって、その対象を分けて考察しよう。① 災害により生じた事故による傷病者 災害とは火災、地震、水害その他のわざわいである︵参照・消防組織法、 消防法の各第一条︶。文理的には、戦争、事故などによってうける災害でもあるが、国民の生命、身体と財産を火災か ら保護するとともに、水・火災又は地震などの災害を防除し、これらの災害による被害を軽減することが、消防の任 務である︵消防法第一条︶から、このような災害により生じた事故による傷病者の救急業務は、消防の本来的業務と ︵1︶ することができる。しかし傷害の程度、種類には関係なく、災害により生じた事故による傷病者は、すぺて救急業務 の対象であるようなところに問題があろう。︵緊急診療の不要の者も含まれる︶ ② 屋外において生じた事故による傷病者 屋外とは、建物の外を指し、道路・広場・空地・公園など、一般公 衆の利用できる空問であろう。文理的には ①災害による屋外の事故を含む場合もあるが、論理的には、災害によ る事故は、この屋外に生じた事故には、含まないであろう。屋外において生じた事故による傷病者とはそのような意 ︵2︶ 味においての事故による傷病者である。ここでは、交通事故による傷病者は、典型的な例である。問題は、ωの災害 により生じた事故による傷病者と同じように、そうしたすべての傷病者が対象になることであろう。 ③ 公衆の出入する場所に生じた事故による傷病者 公衆の出入する場所とは学校、工場、各種運動競技場、各 ︵3︶ 種興行場などである、とされているが、私住所でも公共と直接接触交渉ある場所でもある劇場、映画館、寄席、食堂、 旅館、ホテル、料理屋、公衆浴場、喫茶店などの公衆の出入する場所・建物、施設内であろう。しかしこれらは公衆 ︵4︶ の出入でぎる時間・営業・公開時間でなければならないであろう。また災害により生じた事故による傷病者は、論理 的には、これに含まないであろう。ここにも、①の災害により生じた事故による傷病者と②の屋外において生じた事 わが国の救急・救急診療 =二
東 洋 法 学 一照 故による傷病者の項と同じように.このような場所に生じた事故によるすぺての傷病者がその対象となるならば間題 であろう。 鶴 災害により生じた事故などに準じる事故で政令に定めるものによる傷病者 災害により生じた事故などに準 じる事故とは.災害により生じた事故など.そのものではないがこれらのつぎぐらいに評価される事故であり。この ような事故で.政令に定めるものすなわち災害によ鯵生じた事故などに準じる事故で政令に定めるものによる傷病者 とは.そのような事故でかつ﹁屋内において生じた事故]であ鯵.これ○あ事故︶による傷病の本人を診療機関茅転 の他に迅速に搬送するための適当な手段のない場合の傷病者である.しかしその対象が﹁屋内に生じた事故﹂でなけ ︵s︶ ればならないところにとくに.はじめに指摘したような間題があるであろう、 ︵蓋︶ 唄・前掲︵法律時報︶ ︵2︶ 参照・はしがき註︵3︶ ︵3︶ 唄・前掲︵法律時報︶ ︵4︶ 拙稿餓前掲書一一三三頁 ︵5︶ 参照・本文二頁註7 このために.なお各地の地方公共団体の救急に関する自主立法の必要がある.ともいえる。しか し対象におけるもっとも闘難な聞題は、この場合の対象であろう。従来の各地の地方公共団体の霞主立法においては.この 場合の対象について闘記するところがなかったという︵唄・前掲︵法律時報︶︶。著しい例は、事故による急病怪我の場合 であろうが、明記したという点においては、積極的意味を、この法律とくに政令はもつであろう。しかし事故によらない急 病も、今臓、事故によるものと区別する理由はあるであろうか︵参照・同上︶。
三 救急病院・診療所に関する政令規定と問題
救急病院診療に関する省令の規定 救急病院・診療について、つぎのような規定がある。 消防法第二条第九項の規定に基ぎ、救急病院等を定める省令を次のように定める。 救急病院等を定める省令︵昭和三九年二月二〇臼厚生省令第八号︶ ︵医療機関︶ 第一条 消防法第二条九項に規定する救急隊により搬送される傷病者に関する医療を担当する医療機関は、次の基 準に該当する病院又は診療所であって、その開設者から都道府県知事に対して救急業務に関し協力する旨の申出のあ ヤ ヤ ったもの︵以下﹁救急病院﹂又は﹁救急診療所﹂という。︶とする。ただし、疾病又は負傷の程度が軽易であると診断さ ヤ れた傷病者及びただちに応急的な診療を受ける必要があると認められた傷病者に関する医療を担当する医療機関は、 病院又は診療所とする。 一 事故による傷病者に対する医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること。 二 手術室、麻酔器、エックス線装置、輸血及び輸液のための設備その他前号の医療を行なうために必要な施設お よび設備を有すること。 三 救急隊による傷病者の搬送に容易な場所に所在し、かつ、傷病者の搬入に適した構造設備を有すること。 四 事故による傷病者のための専用病床その他救急隊によって搬入される傷病者のために優先的に使用される病床 わが国の救急救・急診療 一五東 洋法 学 一六 を有すること。 ︵告示︶ 第二条 都道府県知事は、前条の申出のあった病院又は診療所であって.前条各号に該当すると認めたものについ て.救急病院又は救急診療所である旨並びにその名称及び所在地を告示するものとする、救急病院又は救急診療所が 前条号に該当しなくな嚇たとぎ.又は前条の申出が撤回されたときも.同様とする. 附 則 この省令は.昭和三九年四月一〇貫から施行する、 ︵王︶ これらの競定は.救急搬送先・救急診療機関.その基準.救急診療機関の申出.公示.撤鰯の手続と搬送先の選択 ・決定について規定する、 右の厚生省令にみられる主な間題点を事項に分けて指摘しながら考察すれば.つぎのようである。 ① A 搬送先の選択・決定の方法 右の厚生省令によれば.救急隊によって搬送される傷病者に関する診療を 担当する医療機関は病院または救急診療所であり.これについて間題がない。しかし負傷の程度が軽易であると診断 された傷病者とただちに応急的な診療をうける必要があると認められた傷病者に関する診療機関は.病院または診療 所であるとする.ここに間題があるようであろう。病院と診療所の区別は.主として収容施設の規模による︵医療法 第一二条︶が.救急隊は、救急自動車一台と救急隊員三人以上をもって編成されなければならない、とされるのみで あり︵消防法施行令第四四条︶.隊員の一人以上が医師であれば.問題がないがむしろ医師でない場合が普通であるか ら.医師法︵第一七条︶との間題が考えられる。それは.診断を行うものは.医師でなけばならず.ただちに応急的
な診療をうける必要があるかどうかを決めるものも医師でなければならない︵医師法第一七条︶からである。診断は、 診察または診察と治療を前提とするものであり、診察︵または診察と治療︶結果でも判断がつかない場合もある。また ただちに応急な診療をうける必要があるかどうかを決めることも、診療の一種である。省令は、この場合﹁医療﹂と ゆ ぺ はせず﹁診療﹂としているが、実質的には﹁診療﹂と﹁医療﹂の区別は、一般に同義に用いられているから、﹁診療﹂ ︵2︶ と規定してもこのような問題が生じる。 また必ずしも法的問題ではないと考えられるが、病傷の程度が軽易であると診断された傷病者と、ただちに応急的 な診療をうける必要があると認められた傷病者は、救急病院・診療所に搬送されず、むしろ一般病院・診療所に搬送 されるのであろうかという問題がある。わけても後者がそうであるとすれば、救急病院・診療所の告示、さらに救急 業務・診療制度の存在の意義すら疑しいようにするとも考えられないであろうか。 ② 救急病院・診療所の基準 これについての問題は、政策的な間題で法律的間題ではないが、救急診療の実際 的効率の問題としては重要である。わが国の診療制度は、その近代化のはじめから、資本主義体制の発展・展開につ ︵3︶ れて、開業医制度を中心にして発展、展開されて来た。今日なお診療機関・病院・診療所は、その自由経済体制下の ものであり、その設備・施設の拡充は、資本の投下的意味を必ずしも払拭するものでなく、すくなくともその需要の公 算に対応するものでなければならない。そのような経済社会体制においては法的には、診療施設のない診療所も存在 する︵医療法第五条︶。実際、一寸古いかもしれないが、資本設備などの割合大きい医療法人でも、資本金一〇〇万円 ︵4︶ 前後が最も多く、一、○○○万円をこすものは皆無でありその資本・設備は、他の企業に比較して零細である。この わが国の救急・救急診療 一七
東洋法学 一八
ような診療機関とくに診療所の実態からみれば、救急病院・診療所の基準は、いかにも現実的でないといえそうであ る。わけても事故による診療について相当の知識と経験を有する医師が常時医療に従事していること.救急病院・診︵5︶
療所の所在地点と構造設備.救急患者の優先使用病床の確保は.きわめて困難という外はない。 響,刀鷲養亀欝建・数とーむヂ』)騰!暮歪 冤護数陣湾繋廼㎜(%) (2。o) (o。2) (2.玉) (7.o) (i.7) (i。o) (!。7) G.6) 表1 全綴病院3診療所数と救急告示施設数とその 経 営 主 体 (442) 7婁(2嚢.4) 暮(3⑳ 83(30。盈) 窯72(3:置.難) §§(曝添.〔)) 3襲(婆詠.慧) 6γ(3嚢.暴) 導4(5〔).懸) 26恭 蓋脇 273 齢魂 欝雛 雛 貿春 業鱒 3欝 !β87…i 422い」2K3i⑦ 2.齢巽皿省他県村社腰体絵人人人人
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(註) 救急施設とは,救急魯示病院と診療所をさず. 昭和遺3年4月現在間題は、その水準のみでなく、都道府県知事による告示が救急病院または救急診療所として行わても、その基準の 維持について財政的援助もなければ、他の特典もないことであるが、これらが、基準・水準の維持を困難にし、告示 を無意味にしているなどの意味において、基準についての間題を、さらに提起しているともいえる。その結果、うえ の表1にみるような救急病院・診療所数の少ない事実をみる。 そして、救急病院診療所のうちで救急患者の専用処置室があるものは、前述のような数である︵表2︶。 これによってもさらに、救急病院等を定める省令の施行について︵昭和三九年三月一〇磯厚生省通知︶三は、この基準 に詳細な解釈的に規定を設けるが、ますます困難な基準であることを覚えさせる。 ③ 救急病院・診療所の申出・告示と撤回 申出と撤回は、病院・診療所の開設者が行うことであり、告示は、 都道府県知事の行うものであるが、わけても、申出、告示と撤回の法的性質に問題がある。改正前においては、 ﹁指 定﹂、﹁委嘱﹂などが用いられて、むしろ、これは、公法上の契約の一種または単独行為︵行政行為︶と考えられてい ︵6︶ た。したがって、わけても公示を公法上の契約また単独行為説とする議論があるかもしれない。しかし、つぎのよう に考えられる。 申出は、病院または診療所の開設者が、都道府県知事に対して、救急業務に病院・診療所が協力する旨を申しでる ことである。その性質は、もちろん私人の公法行為ではなく、救急業務協力の意思の通知であろう。しかし、申出は、 都道府県知事告示の原由で、その前提になるものであり、告示自体の性質によって規定されるであろう。告示は、こ れによって、格別に法律効果が生じるものでなく、むしろ事実的なものであると考えられるから、申出は、準法律行 わが国の救急・救急診療 一九
東洋法学 二〇
︵7︶ 為でもなく.事実上の通知である。なお申出は、当該病院または診療所を管轄する保健所長を経由して行われ.保健 ︵8︶ 所長は、市町村の消防機関の意見を聞いて都道府県知事に進達する。 告示は.申出の告示と撤回の告示とがあるが申出の告示から言及すると都道府県知事が救急業務協力の申出に対応 して.さきの基準︵一五頁︶に照して審査し.その結果、さきの省令第一条の各号に該当すると認められるとき.そ ︵9︶ の第二条によウ.すみゃかに行われるものであるが.告示は.なんらの法律効果をともなうものでもなく.発生する ︵韓︶ ものでないかも.事実上のものである.したがウて.もちろん行政行為でもなければ.準行政行為でもない.なお. 右の審査にあたウては.都道府県の消防主管都局.警察本部と医師会.そして学識経験者の意見を聞いて行うよう配 ︵鷹︶ 慮されている、撤鐸の告示は.さきの基準に救急病院診療所が該当しなくなったときまたは救急病院・診療所の開設 者がさぎの救急業務協力の旨の申出を撤回するとき.にその第二条によって.都道府県知事が.その撤回を告示する ものである、これも.事実上のものである。告示は.いずれの場合においても事実上の通知である. 撤回は.さぎの申出または告示の撤回である。つまり救急業務協力の旨の撤回である。これも.事実上のものであ り.法律効果は生じるものではない、しかし、この撤回は.都道府県知事が救急病院・診療所がさきの基準の維持能 力の欠如によって.当該しなくなったとぎ.告示を撤回する場合と救急病院・診療所の開設者が.救急業務協力の旨 の申出を撤回する二つの場合があむ.前者は.行政庁・都道府県知事の行うものであり.後者は.救急病院・診療所 の開設者の行うものである。 これらの申出・公示と撤回の手続について救急・救急診療に対する国の姿勢の一端が考えられる、すなわち救急・重症・中等症者の処置状況 昭和43年中 表3
収容
病院
救急
車内
現
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計 合 96。12!47』i2112。9王2126,2。疹148ぎ8712。4ヲ… 1 シ1 71
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包庖止 角 ル 血の 急 圧 オ小三救タ指止そ
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包帯止血法記小 計
攣!全身魂子
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工/心臓マッサージ そ∼ 生i P移し人工呼吸 法1用手人工呼吸 ’そ の 他 わが鼠の救急・救急診療 救急診療は、必ずしも社会的問 題として認識されず、これを自 由経済的需要と供給の原則にま かし救急病院・診療所について は、わずかに、事実的上の通知 ・インフォメイションとしての 対応を示すのみといわなければ ならない。 ︵1︶ 医療法によれば、私的な病 院の種類は、総合病院と︵普 通︶の病院である。前者は、 患者一〇〇人以上の収容施設 をもち、一定の科と一定の施 設などを備え、都道府県知事 の承認をえて総合病院と称す ることができ病院である︵医 療法第二二条︶。病院は患者 二〇人以上を収容する施設を 一二︵慮 ぬ き 鑑鑓 ゆ 叢、 救急、憲、者専屠処置室び)使牽1蓬時搾.l/
4
慕く 誉 ︵2︶東洋法学 二二
もち.診療所は、患者一九名以下の収容施設をもつものであり︵医療法第一条︶、診療所のなかには.収容施設のない診療 所もある。なお総念病院は、救急用または患者輸送用慮動車をもたなければならない︵医療法第一ご黍第一項第一号、同施 行規則第二二条︶。 酒防法改正前においては.地方公共団体のほとんどの立法・規程においては、﹁必要に応じて応急処置を施す旨しの規定がみ 、 翻使驚施設ど転)麟耀艶) i!15(郷)i6(54・5)i8i霧(鯛1蹄5・6)
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法法法 小
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卜 昭和43年4擁調査 られた︵例・神戸甫、規程第九条第一 東京都、規程第一 六条︶が︵唄.前掲︵法律時報︶︶.応急処羅の前提として. このような診察・診断の問題があった。応急処縫が、医師 法第一七条の閥題としで、論じられた すなわ辱衆 撫駕婚皿舞.㎞ ,、養 ㌔ 惜蟹 、㍗、生命に危険あリレ.認定した際に、カン糟二一ル皮下注射等 身 体に対する現在の危険をさけるためにやむを得ないと認め られる事情の下に行うものである限りは一般的に医師法第 一七条にいう﹃医業臨を行うものと解されない。個疫の行 為自体を単独にみれば医行為塔、ある場合があるが.救急車 のように緊急状態の場合における業務は祉会通念上反覆継 続しで、行う意志をもって行われたものと認められないとす る。この理由・答弁には疑閥があるのは、曝教授と周じで ある。法的にも設備的にももっとも整備された棄京都にお いても、医師が救葱隊長でもなければ隊員岬、−、もない︵救急 規程第二章︶。実際は、救急処置として、医療が行われて を行うことの可否であった。これに対する厚生省の答弁((
43
))
︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ ︵8︶ ︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ ︵10︶ ︵1 1︶ いる︵参照表3︶。 拙稿﹁医業歯科医業広告﹂︵東洋法学第六巻第一号︶、参照・川上武﹁現代概本医療史﹂三頁以下 用上武﹁β本の医者﹂六二頁、同書によると、資本全二〇万末満は︸五、法人二〇万以上は、四五、五〇万以上は九五、 一、○○○万以上は五〇であり、五、○○○万以上は皆無である︵昭和三三年度︶。 うえの表4によって、救急病院・診療所の現実がわかるであろう。 参照・拙稿﹁保険医及保険医に対する戒告︵行政措置︶の法的性質﹂ ︵東洋法学第六巻第二号︶ 参照・拙稿・前掲書︵要訣行政法︶五〇頁 救急病院等を定める省令の施行について︵昭和三九年三月一〇艮厚生省医務局長通知︶。なお告示は、行政庁の意思表示 の形式としての意味と通知行為の意味をもつ。前者は、一般処分または立法の性質をもつ告示と行政規則︵法規命令︶の性 資をもつ告示に分けられ、後者は、準法律行為としての告示と事実行為としての告示に分けられる。 ︵山内一夫︶︵﹁公示﹂ ︵現行政法講座第閥巻︶一七七頁以下︶。ここでいう告示は、その﹁事実行為﹂として公示である。 参照・拙稿五〇頁 右通知二 右通知六 摺稿・前掲書七八頁 右通知四四 行政事項としての救急・救急診療
このように、法的体制と、その問題をみてきた救急・救急診療は、行政事項として一体、いずれの事項に属するもの わが国の救急・救急診療 二三東洋法学 二四
であろうか。これを決定することは、一個の問題であり.にわかに決することは、できない。しかし救急・救急診療 を.救急搬送として認識すれば救急搬送そのものから.これを.警察的ものとすることがでぎよう。それは、救急搬 送は.傷病というにわかの難儀から.救出する一方法・過程にすぎず.積極的に治療するものでなければ.それへの 第一段階であり.消極的なものにすぎないからである。 ︵この意味では.救急救急・診療について消防法が規定する .︶とは欝首できよう︶もっとも.診療は消極的な傷病から人を治療する消極的なものでなく.さらに健康の増進や向 上の積極的面もあるが法規は.診療については繋.朔察的方向から接近Lている、防疫. ・衛生な ?.﹀ ⑤︶ どの取締は.警察的欝的・性質をもち、衛生は.行政警察の一分野でもある.そごで.いわゆる警察.消防と衛生の ︵き︶ 事項を考察し.救急・救急診療を考察する前提撫Lてみよう、 ?、︶ 警察の観念は.今縫においても.社会公共の秩序を維持するために.一般統治権に基づぎ.人民に命令・強制し. ︵5︶ その自然の自由を制限し.実力を手段とする作用とされよう。そのよ弓な警察の観念のなかには.消防.衛生などの 観念も含豪れる。しかし現行鶴、難法は.個人の生命.身体と財産の保護に任じ.犯罪の予防.鎮圧と捜査.被疑者の 逮捕.交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とすると規定し従来の警察の作用に考 えられていた衛生.産業経済などに関する行政警察の一部を排除して.反対に.従来司法警察とされていた犯罪の捜 査などの司法作用に関する作用と交通の取締という行政警察を.警・、纈察の作用に含ましめ.これを一般警察とし。警察 はこの自己の作用を整理して従来自己の作用であったそれ以外の他の事項の行政警察の部分を捨象して自己のいわゆ る警察機関.警察組織によって社会公共の安全と維持のために.専門・技術的に、固有的に.いわゆる警察作用を分担しようとしているといえるであろう。いわば、現行の一般警察に関する法律を中心にして組織と作用において、警 察作用の分離と統合が行われているのであろう。衛生についても、この一般警察作用の分離ー統合の作用に対応する 現象がみられるといえよう。それは、さきの警察法第一条の規定を採用するまでもなく、憲法は、 ﹁国はすべての生 活部門について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない﹂ ︵第二五条第二項︶と ︵6︶ し、一連の衛生に関する各種の行政法規が、この方向において新規に制定されたり、全面的に改正されたりした。消 防法も、消防は、その施設と人員を活用して国民の生命、身体と財産を火災から保護するとともに、水火災または地 震などによる被害を軽減することを任務とする、と規定し、自己の固有の機関と組織を拡充した。もっとも、これ は、さきの従来の警察の観念においては、衛生も、消防も、含まれるが、警察法を中心とする今日のいわゆる警察 ︵一般警察︶の観念には、衛生に関する警察や消防に関する警察の観念は含まれないということにすぎないかもしれ ︵7︶ ない。 こうした一般警察の観念の分離すなわち消防や衛生の観念独立によってこれらはどのように観念されるであろう か、分けて考察すれば、つぎのようにいえるであろう。 警察は公共の安全と秩序の推持を目的とし︵懲、桑法︶命令︵禁止︶を強制し実力を手段とする作用である。事項的 種類的には、保安警察として集会・結社などに関する警察、選挙などに関する警察・危険物などに関する警察などで あり、行政警察としての陸上交通に関する警察と、司法警察である。なお警察の建前は、一応、国家警察と都道府県 ︵8︶ 警察の二元的であるとされているようである。 わが国の救急・救急診療 二五
東洋法学 二六
消防は.狭義では、すでに発生した火災を鎮圧し、その被害を軽減し、広義では、火災の予防警戒を行う作用であ り、さらに水災.震災などの被害を軽減する作用も含む︵参照・消防組織法、消防法各第一条︶。このなかには救急・救急 診療︵とくに搬送︶は含まれる。事項的には.広くは.災害に関する警察として保安警察の分野に入る。種類としては. ︵9︶ 特別警察に入るが.自治法の建前によってその責任の単位は市町村とされている︵組織法第六条︶。 衛生は.人の健康の保持と増進に関するものであるが.警察的には.国民の健康の保全に対する障害を予防または 排除するための消極的な作用であ陰行政警察の一部である。その範囲は.衛生行政の大部分にわた吟.公衆衛生.予 ︵欝︶ 防衛生.環境衛生.医事衛生と薬事衛生の警察取締に関する部分である、 ((2薫 )) ︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ ︵行政法講座第六巻︶五八頁以下 衛生の観念は.必ずしも明白ではない。人の健康の保持と増進であるとされている 一頁以下︶。ここで衛 生というのは.衛生警察の観念でいう。しかし衛生は.警察的な消極的翻的はな・\縫康の保持とくに増進という積極的な 團有の領域や勝的があり.衛生行政法︵行政衛生法︶学の観念も期待で、きよう。従来は.衛生に闘する法律は、警察・取締 的なものが多く、衛生行政は、警察的分野と観念されたが.衛生行政は、積極的.独立的研究の分野もあろう︵磯崎、ぬ掲書 ・はしがき、拙稿.前掲書﹁衛生行政法﹂ ︵高照・事典二一六頁︶︶。 救急業務は.警察と消防と競合しているという︵警、照察庁外務課﹁外勤通報﹂第三巻一号︶ 田中二郎﹁行政法﹂下叢四三九頁 拙稿・前掲書二二九頁 田中、前掲書四三九ー四四〇頁 参照・磯崎辰五郎﹁衛生法﹂二頁以下。この法における警察の分離は.案外、本質的な閲題を含んでいるかもしれない。︵8︶ ︵9︶ ︵鉛︶ それは、社会公共の安全と秩序の維持が、警察の目的とされるといっても、警察違反の状態をつくる原因結果は異なり、事 項的に分けることができるからである。また、従来の学問上の警察の観念と今βの警察に関する法律実定法とくに警察法か ら考えられるこの警察の観念は、違和的になっているともいえよう。 繊中・前掲書四四七頁 災害について、水防法、地すべり等防止法、災害対策基本法、水難救護法、災害救時法などがある。この意味でも、救急 業務に要した費用は患者から微収しないとする東京都消防関係学務に関する条例第五条の規定は、うなづけよう。 参照・拙稿・前掲書︵事典︶二二〇!二一二頁
五 救急・救急診療と診療
︵−︶ ﹁救急診療﹂という言葉からは、救急業務とか救急搬送とかいう意味は、ただちには考えられないかもしれない。 それは、救急という言葉自体が一定の意味の限定のもとにおける診療を意味しているからであろうか。 ﹁救急診療﹂ という言葉は救急の意味が稀薄になるかもしれないが救急の診療・救急のための診療という意味に解することもでき る。案外﹁救急診療﹂とは、この意味の言葉であるかもしれない。診療が人の傷や病を治すための医学の応用や技能 ︵2︶ ︵3︶ による行為であることはいうまでもない。そのことは、それだけで仁愛の方法である、とくにいわなくっても社会的 に意義のある行為であることは明白である。それは、人の傷や病を対象にするからであるが、その目的とするところ ︵4︶ は、主として傷や病の治療にある。この意味においては﹁救急﹂・﹁救急診療﹂の目的も、診療の目的と同じであ わが国の救急・救急診療 二七東洋法学
二八 る。しかも.それが事故によるか否かも間題ではない.ということができる。人の﹁にわかの難儀﹂は.﹁苦しくむず かしいこと。困難.面倒な事柄。苦しみ。苦悩。貧乏﹂ ︵前掲・醐語辞典︶である。これらは.心的であり.物的であ り.また道徳的であり.経済的であり.政治的であり.社会的であり、法的でもある。場合によっては異種のいくつ かの事項と復雑に交錯関連していることもあろう。しかし.直接.人の身体について考えられる﹁にわかの難儀﹂は. 奪、..ー.怪我であろぢ。・でれら淋.にわかであ蔭深刻であれば.あるほど.菱、れに対応する適切かつ緊急な診療が必要 であ鯵. こ撫は.いらまでもない、こうした必要や切望が直ちにみたされれば.救うことの第一歩が行わ れで、閲題がないが、 レ 、、 。 である急病や怪我は. 適切な診療をうけられることはまずない、した がってーいうまでもないことであるがー医師が急患に急速に接触するか反対に忠者が医師に急速に接触するかの いずれか一つが緊急に必要である、前者の場合は.考えられないことがないが.後者の場禽は.多いであろう。この 場合においては.急速に急患を適切な診療をうけさせるために、医師のもとに搬送することが一般である。しかし. 今罠の複雑な社会生活環境とくに都市における混離する交通事情は.必ずしも経済的事情がなくっても.医師のもと に急患を搬送すること容易にはしておらず.むしろ困難にし経済的事情があれば.さらにこの困難を深刻にする。ま た辺地の交通距離は.こうした事情を複雑にし医師のもとに搬送することを困難にもする。この間題は程度の差はあ るにしても都市をとわず、もはや個人の責任をこえたものであり.この意味においては救急・救急診療は社会的間題 となる。 この急患を.適切な診療をうけさせるために医師のもとに搬送すること︵救急搬送︶は.診療そのものではない、しかし、そのような目的で医師のもとに搬送することは、まこたく診療に関係しないことではなく、診療に直結する ことであり、急患が医師に急速に、接触しなければならない場合においては、必要かつ前提的要件的でもある。この ︵5︶ 意味においては、これは、診療ではないが傷病者に対する療養上の世話または診療補助である。診療補助とは、診療 ︵6︶ のための直接間接の活動である。したがって診療ではないが医療の一種でもあり、療養上の世話と診療補助を含むい わゆる看護である。この意味においてはとくに、救急隊員・隊長の救急搬送中の救急処置︵東京都救護規程第一六条第二 号第︸七条第二項など︶が看護婦・看護土の業務権を侵略害するという問題も考えられる。 ︵1︶ ︵2︶ ︵3︶ ︵4︶ ((
65
)) 参照・舛ω磐器負9︾鐸ξvHω奨&曾簿P箪勺£q鉱αqきf↓獲冨象母9け竃&答鮮一霧9郊﹄8簿Q 。・ 拙稿・前掲書六・二九頁 参照・ω麩&g︾9ざ留奏籔嘆舞︾£毎蒔客許99マ旨ρp一鐸 塑留く&霧弓﹂簿幹沢潟久敬﹁医学概論﹂ ︵三﹁医学について﹂︶二八八頁 拙稿・前掲︵東洋法学第五巻第一号︶や判例もこの点一致している。最近、診療の目的は、傷や病の治療のみを目的とせ ず、整形・美容をも目的とすることも考えられる︵拙稿﹁優生保護法第二八条の適用の一事例﹂︵東洋法学第一巻第一号︶。 歯科診療においては、はやくから、装飾の照的をもってする行為︵歯科診療︶も歯科診療の範囲に属するという判例もあり ︵法律新聞一二〇九九号︶、学説も、これを積極的に認める︵拙稿・前褐東洋法学第五巻第一号︶。 拙稿・前掲書︵事典︶二五頁 保健婦助産婦看護婦準看護婦法第三一条同法第三二条なお療養上の世話は、看護婦・看護士が独立してできる行為である。 わが国の救急・救急診療 二九東洋法学
三〇あ と が き
こうした間題のすべてを.ここに提起したものでもなく.また充分その内容が説明されたのではないことはいうま でもない。しかし.こうした間題から帰納すれば.これらの間題以上の基本的な問題が救急・救急診療の前に横たわ っているとすることができよう.それは.救急・救急診療が救急搬送︵響終霧・ ・興蕊需︶つまり救出であろうが救急診 療であろうが︵>難羅貯糞獅・ ・霧蔚$祉会的聞題であるの瓢、行政権︵地方公共醐体わけで、も灘︶が必ずしも.これを直 視することなく. その体制を.なお自由経済的な自然的発展にまかせているというところに問題 がある、この問題の解決なくしては.こうした救急・救急診療の間題の解決は徒労である。 わが国の救急・救急診療は.その社会的の需要が自然発生的に一部の地方公共団体の自主立法︵条例・規則など︶を うながすことによって胎動し.国の.警察⋮保安警察の一部である消防法の分野からの法律!政令と.窮極的には行 政警察の一部である衛生ー診療の分野からの省令によハ.て.ようやく生誕し五ー六年を経たにすぎない。しかし.法 律・国家による救急・救急診療への積極的行動・作用は、必ずしも.それ以上のものではなかった、むしろその依然 として自然的発生を期待し.法律分野のなかにおいてはわけても責任、対象などを明確にすることによって、みてき たような問題をかかえ.実情からはなれ、法律分野のそとにおいては.とくに財政配慮も乏しく、葭由経済的需要と 供給の原則にまかせ、かえって各地の地方公共団体︵とくに市町村︶の実際の救急・救急診療活動との間に距離と時間を設けたのではなかろうか。資料の不足から推定をでないが、むしろ救急・救急診療の実際は、既存の自主立法 ︵条例.規則など︶によって運営されているのではなかろうか。救急・救急診療には国家の法律政令省令と地方公共団 体の自主立法さらに実際との断絶があるのではなかろうか。もしそうでないにしても、国の法律、政令省令などとは 関係なく、今日も救急・救急診療活動が続けられているこのことは、それだけで診療と救急・救急診療の需要はもち ろん、その社会性やその社会化の必要性を如実に物語っているものであろう。いまや救急・救急診療の体制と実際 は、社会的視野から検証、点検されなければならない。 ︵本学教授︶ わが国の救急・救急診療 三一