心の教育総合プラン 「同僚性」を基盤とした「協働的生徒指導体制」の構築-ミドルリーダーがつなぐ「元気のある学校」づくり-
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(2) 心の教育総合プラン. 「同僚性」を基盤とした協働的生徒指導体制の構築 一ミドルリーダーがつなぐ「元気のある学校」づくり一. 目次 第1章 問題の所在とプランの方向性・・・・・・ ・・・・…. 1. 1−1 問題の所在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 3. 1−1−1 現在の教育現場が抱える問題 1−1−2 協働的生徒指導体制. 1−2 「元気のある学校」づくり ・・・・・・・・・・・・…. 7. 第2章 学校づくりの視点 ・・・・・・・・・・・・・・・・…. 8. 2−1 「元気のある学校」 ・・・・・・・・・・・・・・・…. 8. 2−2 教師文化の型・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 10. 2−2’1 「同僚性」(co11egia1ity). 2・2・2 「協働性」(co11aboration). 2−3 ミドル・アップダウン・マネジメント ・・・・・・・…. 第3章 生徒指導の現状と課題 ・・・・・・・・・・・・・・… 3−1 量的検証によるアクションリサーチ ・・・・・・・・…. 16. 19 19. 3−1−1 質問紙による実態調査. 3−1−2 協同的効力感と個人効力感・集団効力感の検討 3−1−3 自己効力感と集団効力感の関連 3−1−4 量的検証からの考察. 3・2 ミドルリーダーとしての生徒指導主事 ・・・・・・・…. 33. 3・2−1 生徒指導主事への半構造化面接. 3・2−2 生徒指導主事のエスノグラフィー的フィールドワーク. 3−3 関係機関および地域と連携した積極的生徒指導の推進・… 40 3−3・1 遊び・非行型適応指導教室の取り組み 3・3・2 生徒サポータ』の活用.
(3) 第4章. 「同僚性」を基盤とした「協働的生徒指導体制」の構築を. めざした実践プログラム ・・・・・・・・・・・・・…. 43. 4・1 r同僚性」「協働性」を高める校内研修・・・・・・…. 43. 4−1・1 日常行動分析をもとにしたグル・プワーク. 4・1・2 インシデント・プロセス方式の事例研究会 4−1・3 ソーシャル・サポート的グループワーク. 4−1−4 プログラムの有効性についての考察. 4−2 r同僚性」を醸成する職場づくり ・・・・・・・・・…. 53. 4・2・1 「相補性」「冗長性」を可能にする職員室の環境 4−2・2 職員室の人間関係. 第5章. r同僚性」を基盤としたr協働的生徒指導体制」による. 心の教育の展開 ・・・・・・・・・・・・・…. 58. ’’. 58. 5−1 ミドルリ』ダーがつなぐ心の教育の推進 ・・・・・・… 5−1−1 学級経営における学級担任支援と協働体制. 5−1−2 協働的な授業研究会による道徳教育へのアプローチ 5−1−3 教師の協働によるキャリア教育 5−1−4 生徒指導部の協働体制 62. 5−2 「元気のある学校」による地域社会ネットワーク ・・…. 第6章. まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 64. 6−1. r元気のある学校」づくりによる学校改革 ・・・・・…. 64. 6−2. ミドルリーダーがつなぐ「元気のある学校」 ・・・・…. 66. 引用文献・・・・… .........、.......... 68. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 70. ApPendix. 、...
(4) 1 問題の所在とプランの方向性 生徒指導とは,一人」人の児童生徒の個性の伸長を図りながら,同時に社会的な資質や能力・態度を 育成し,さらに将来において社会的に自己実現ができるような資質・態度を育成していくための指導・ 援助であり,個々の生徒の自己指導能力の育成を日指すものである(文部省,1988)。. 学校教育は,最近の社会状況の多様な変化(表1−1)へも対応しうる子どもたちの成長を担うものであ り,なかでも生徒指導は学校が教育目標を達成するための重要な機能の」つである。しかし,社会と同 様に児童生徒の問題行動も多様化し,混沌とした状況が学校現場に渦巻くなかで,生徒指導は,その問 題行動への対応という消極的な面に追われている。文部科学省(2008)は,「社会や家庭が変わり,子ど もが現代社会の中で揺れ動く中,問題行動の発生を予防し,児童生徒の健全な成長・発達を促す学校全 体の生徒指導体制づくりが一層重要になっている。」とし,生徒指導体制の充実と強化を求めている。 新井(2010)は,分かりにくさを伴う生徒指導課題に対応するためには,多面的で柔軟な生徒理解に基 づくきめ細かな対応が必要であり,学校の内外の連携に基づく協働的な生徒指導体制を土台として,機 能的に関わることが重要である,と述べている。. 本プランは,時代の変化や社会の要言責に対応しつつ,学校教育が本来の日的を見失うことなく,内側 から活性化していくための協働的生徒指導体制の構築をめざすものである。. 1.
(5) 表1−1過去10年間の問題行動等の推移やその対応 年度. 文部科学(文部〕劣等対応. 問題行動等の動向. 平成9年. 少年非行の凶悪・粗暴化. (1997)∼. 不登校10万人超. 問題行動等報告. 神戸少年事件. 中学生等による殺傷事件. 暴力行為、不登校調査見直し. 学級崩壊論議. 学級経営の充実に関する. ケ』タイ普及. 調査研究報告書. 児童虐待問題. 社会状況等. 倒産. ひきこもり問題. 学校教育法改正. 同時テロ. 安全確保・管理の問題. 問題行動等に関する報告書. 少年法改正. 平成14年. 出会い系サイト等の問題. 地域支援システム報告書. 学校週5日制. (2002). 不登校児童生徒数減少. 不登校間題調査会議. 平成 15年. 少年の重大事件発生. 不登校報告書. イラク戦争. 問題行動対策重点プログラム. 災害多発. (2003)∼. (沖縄県の中学生による 暴行致死事件等). 教育基本法改正. 小学生による事件多発. 懲戒・体罰に関する考え方. 二』ト間題. 教育相談の充実. 中学・高校生による重大事件多発. 平成18年. いじめを苦にした自殺. 新教育基本法改正. 飲酒運転事故死. 懲戒・体罰に関する考え方. (2006). (福岡). のまとめ. 平成19年. 不登校増加. 教育三法改正. (2007)∼. ネットを介したいじめ. スクールソ』シャルワ』カ』. 少年法改正. の配置事業. 中・高校生による薬物事件. 薬物事件. (注)本表は、内閣府『青少年白書』(平成14年度版)、文部科学省「生徒指導上の諸問題の現状と文部科学省の 施策について」(平成15年)、『現代用語の基礎知識(1998年版)』(自由国民社)等を参考に生徒指導研究センター. が平成15年に作成したものに,泉が修正を行ったものである。 出所1『生徒指導上の諸問題の推移とこれからの生徒指導』r生徒指導資料第1集(改定版)」. 文部科学省国立教育政策研究所生徒指導研究センター/平成21年3月.
(6) 1’1問題の所在 1−1−1現在の教育現場が抱える問題. 教師という仕事は,子どもたちとの関わりの中で人間形成を担う創造的な職業で ある。近年,教師の役割が拡大し,その多忙感の申,教師は疲弊しつつある。 平成3年から平成20年までの文部科学省の報告によると,公立の小学校,中学校,. 高等学校,中等教育学校,特別支援学校の校長,教頭,教諭,助教諭,養護教諭, 養護助教諭,講師,実習助手および寄宿舎指導員(本務者)の病気休職者の数は,. 4,000人弱から約2倍の8,000人になり,そのうち精神性疾患による休職者は,15 年間で3割から6割と倍になっている(表1・2)。由布(2007)は,この調査の「暗数」 (例えば休職までには至らないがインターバルを伴って欠勤が続くというような例). である「休職予備軍」を考えると裾野はもっと広いと考えてよい,と指摘している。. 表1−2. 病気休職者の推移(平成3年度∼平成20年度). 年度. 1991(H.3). 在職者. 1,001,432. うち精神性疾患によ. 精神疾患休. @ る休職者. @職割合. 病気休職者. 3,795. 1129,. 1240,. 30%. 1995(H.7). 971027. ,. 3644,. 2001(H.13). 927035. ,. 5,200. 2,503. 48%. 34%. 2003(H.15). 925,007. 6,017. 3,194. 53%. 2005(H.17). 919,154. 7,017. 4,178. 60%. 915945. 8,578. 5,400. 63%. 2008(H.20). ,. (単位=人) i注)「在職者数」は,当該年度の「学校基本調査報告書」における公立の小学校,中学校,高等学校,中等教育. w校,特別支援学校の校長,教頭,教諭助教諭,養護教論,養護助教論,講師,実習助手および寄宿舎指導員 i本務者)の合計。. @. 出所1文部科学省r教育職貫に係る懲戒処分等の状況について」. 佐藤(2007)は,教師の多1亡感を強めているのが,雑多な会議と書類の処理である。. 教師の仕事が「責任」から「サービス」へと転じ, 「応答責任」から「説明責任」.
(7) へと変化した結果,教師の職業生活は子どもからも授業実践からも離れて,多数の 会議と雑務に追われることとなった。しかも,毎年のように次から次へと押し寄せ る改革の波は,それに応ずるだけで膨大な仕事量とエネルギーを消費することとな る,と指摘する。また,諏訪(2007)は,週五目制になり,授業時数が毎日増えて,. かえってきっくなったこともある。年間指導計画週案などの提出に追われている, とも聞く。また,教師査定を受けるために「自分の目指す教師像」などを文書化し,. 校長・教頭の審査を受けている。とにかく,授業以外の書類や文書(レポート)の 提出が最近,圧倒的に多くなったらしい。それ以上に,時間や手間や神経を使わさ れるのが,保護者や地域との応対である。なかには,クレーマーに近い親などもい て,教師はその対応でヘトヘトになり,ノイローゼになってしまう場合もあるらし い,と述べている。. 教師は,子どもが好き,日々の教育活動の中で子どもたちとともに自己実現をめ ざしたい,創造的な仕事をしたい,などの志望動機で教職に就き,日々の授業や部 活動などによる子どもたちとの関わりの中にやりがいを見いだしている。ところが 最近の学校現場は,雑務が増え,子どもたちと離れたところで1亡殺され,教育活動. に勤しむr情熱」やrやりがい感」を奪われる。教師は疲れ果て,心身ともにr元 気のない」状態に陥っていると言えよう。そうした子どもたちとの触れ合いを阻害 するものが,教師にとっての大きなストレスを生み出す。かつて,子どもたちとそ の保護者,地域までをも巻き込んで教育活動を展開し,社会から絶対的信頼を受け ていた学校は,その姿を変え,地域や保護者の目を気にしながら自信を失っている。. 行事や研究活動は形骸化し,教師と共に学校もまた「元気のない」状態になってい る。そのような「元気のない」学校や教師では,創造的な活動を行うことは難しく,. 生徒もまた「元気のない」状態に陥るであろうことは想像に難しくない。学校現場 は益々混沌とし,学校,教師,子どもたちは,日々の授業や行事をこなしていくだ けで精いっぱいである。. 近年,条件付き採用期間を終了し正式採用になる前に退職する教員が次第に増加. してきており,平成19年度では,全採用者のうち1%強に及ぶ300人前後がそれに 該当することが報告された。性急な結論は避けるべきであるが,「思い描いていた教. 師の仕事」と「実際の仕事」が大きく異なっているという,期待と現実の乖離(リ 4.
(8) アリティショック)はもちろんのこと,これは教職の激務の実態を反映しているも のかもしれない(由布,2009)という指摘もなされている。. 佐古(2005)は,教師にとって,教育に関わる,教職を遂行するということが,「さ. せられている活動」,あるいは「こなしている実践」,そういうものに陥りっっあ るのではないかと危惧し、内発的な改善カをもつ「元気の出る学校」こそが, 「や. らされる教育活動をこなしていく」という状況から転換していく,子どもの実態に 適合した教育活動を主体的に遂行していく内発的な改善力を持つと述べている。. 今こそ教師がr情熱」を取り戻し,rやりがい」を持って教育に当たらなければな らないときであり,心身ともに健康で「元気のある教師」による「元気のある学校」 づくりが求められているのではないだろうか。「元気のある教師」が多面的で柔軟な子 どもたちへの理解や関わりを行うことにより,教師の「元気」から生きた知識や豊かな心 を子どもたちは学ぶことができる。そこから「元気のある子どもたち」が育ち,「元気の ある教師と子どもたち」の学び合う学校は,「元気のある学校」になる。. 1−1・2 協働的生徒指導体制. 平成21年11月30目,「平成20年度児童・生徒の問題行動等生徒指導上の諸問 題に関する調査結果」が文部科学省より発表された。その中で,暴力行為の発生が 小・中学校で急激に増え,過去最高の6万件に近づいた(59,618件)ことが報告され. た。文部科学大臣は「暴力行為の低年齢化」について「ストレスが内在化してきて 爆発し,話をする前に手が出てしまっている」とコメントしている。子どもたちの 心の問題として捉えられている暴力行為等の問題行動に関わっていくためには,一 人ひとりの子どもに複数の教師が多面的に関わることが大切である。. 現在の学校は社会の急激な変化を背景に生じた,不登校・いじめ・暴力行為・虐 待,ネット犯罪・薬物乱用などの諸問題の対応に頭を抱える場面も少なくない。学 校組織は,様々な役割分担である「校務分掌」によって体系立てられているが,個 人の殺害■1だけでは対応できない状況が多々あり,教師同士の連携が強く求められて いる。. 文部省は,昭和40年に「生徒指導の手びき(生徒指導資料第1集)」,昭和56年 に同改定版を発行し,生徒指導の具体的意義について,①生徒指導は,個別的かっ 発達的な教育を基礎とするものである,②生徒指導は,一人一人の生徒の人格の価 5.
(9) 値を尊重し,個性の伸長を図りながら,同時に社会的な資質や行動を高めようとす るものである,③生徒指導は,生徒の現在の生活に即しながら,具体的,.実際的な. 活動として進められるべきである,④生徒指導は,すべての生徒を対象とするもの である,⑤生徒指導は,総合的な活動である,という点を挙げ,その冒頭には,「生 徒指導は,学校がその教育目標を達成するための重要な機能の一つである。」として いる(八並,2008)。. 教師は一人で教育活動に当たっているわけではない。学級運営や教科指導は個々 の教師が個別的に責任をもっているとはいえ,学校行事や特別活動はもちろん,学 校全体の活動レベルや雰囲気にしても,学級の活動レベルや雰囲気にしても,全教 職員の協力・協働によって支えられている。また,学級運営や教科指導にしても,. 教科担任制の中学校・高校などでは,各教科の教師が同じクラスの生徒の教育・指 導を協働的に行っている。学級担任制の小学校でも,当該年度の児童の学習・学業 態度や学級・学年の活動レベル・雰囲気などは,前年度までの教師の指導に大きく 依存している。そのように学校づくりも教育実践も,同僚間の相互信頼と協力を前 提にして,協働して取り組むべき,共同の営みである(藤田,2005)。 渕上(2005)は,「現実の学校は急激な変化に直面している。不登校,いじめ,学級. 崩壊など,様々な教育的諸問題に対応するためには,担任教師個々人だけでは十分 に対応できず,教職員やスクールカウンセラーなどのチーム援助が必要となってい る。また,教授組織の弾力化を日指したチームティーチング,総合学習,ないしは 選択1性や合同による授業形態が進められている。このような変化のさなか,必然的. に,学級の枠や学年・教科の壁を越えた連携が不可欠となっている。以上のような 変化は学級を開かれたものへと転換させ,従来はほとんど問われることのなかった,. 教育活動における他教師とのコミュニケーション,連携などの協働的関係を構築す る能力が必要とされている。」と述べる。. 学校における全ての教育活動を,機能としての生徒指導が働くものとして捉える ならば,教師の連携により,子ども一人ひとりにいろいろなタイプの教師が協働し て関わるような「協働的生徒指導体制」を整えることによって子どもたちの成長が 一層促されると考える。.
(10) 1−2 「元気のある学校」づくり. 協働体制が機能するためには,日頃から信頼的な人間関係が教職員間で築かれて いる必要がある。職場でお互いに気楽に相談したり相談されたり,励ましたり,励 まされたりというっながりの意識である(新井,2010)。教師同士が,学年や教科な. どの枠を越えて個々の専門性や個性を活かし協働していくためには,お互いを信頼 する関係づくりが必要となる。伊藤(2006)は,教師自身が自らを開き,自らのクラ. スを開くということは,決して容易なことではない,まずは職場の同僚や管理職へ の信頼感が不可欠であり,互いのミスを共有しかばい合える精神的な余裕も必要で ある,教師一人ひとりの自信と勇気は,学校全体の信頼関係と協力体制に支えられ てはじめて身につくものではないだろうか,と述べている。信頼関係を築いていく には,日頃のコミュニケーションが不可欠である。コミュニケーション能力の不足 を教師も児童・生徒も問われているが,活発なコミュニケーションを展開していく ことで,元気は生まれるのではないだろうか。 尾木は(2007)は「職員室の同僚一性を大切に育んでいくことが現在の教育現場の絶. 望的な状況の中で教師が実践していくべきことのひとつである。」とし, 「現状が 厳しくなればなるほど,どの教師も同様の苦悩を抱えた状況に陥っているだろう。. お互いに勇気をもって少しずつでも心を開いていけば,他の教師も自分と同じ思い を抱いていることがわかり,共感,共鳴することができるかもしれない。」と指摘 している。. 学校には,信頼関係に基づいた人間関係,具体的には職場でお互いが気楽に話し. 合い,助け合えるような関係であるr仲間意識」とも言える旧僚性」が必要であ る。また,学校における教育活動全般を視野におさめた生徒指導を推進していくた めには,教師同士が個々の専門性を活かし,新たなものを創造していくことを目指 し協力するような関係である「チ㎞ムワーク」とも言うべき「協働的生徒指導体制」 を確立していくことが望まれる。. 教師としてのモラール(士気:mora1e)を,同僚性によって培われる信頼関係により. 高めていくことが,失いかけている元気を取り戻すことにつながると思われる。. 「元気な学校」づくりとは,胴僚性」を基盤とした「協働的生徒指導体制」を 構築していくことにより成り立つものと考えることができる。 7.
(11) 2 学校づくりの視点 「元気のある学校」づくりのためには,「同僚性」を基盤とした「協働的生徒指導体制」の構築が望 まれる。そのために「同僚性」や「協働性」について,また,「元気のある学校」とはどのような学校で あるのかを考えていく必要がある。 教育改革や学校改善の問題に関して,「協働」性」や「同僚一性」の観点から教員集団の重要性が指摘され. ることが少なくない。欧米においては教育現場での改革・改善がなかなか進まない理由の一つに,教師 という職業がr個人主義(indiVidua1iSm)の文化に支えられているという問題がクローズアップされて きている。情報の交換や協働が行われないところでは「居心地のよさ」に安住する保守主義が台頭し,. 社会の変化や時代の移り変わりに対応できない状況が出現してくる。したがって改革や改去を念頭に置 くとき,このような個人主義の文化を克服し,協力的な文化を同僚の間で築くことが必要になるという のである(Southworth,G.&yeomens,R.,“StaffRe}ationshipinthePri㎜arySchoo1”,Casse11,エ989)。. 日本でも,教育社会学や教育心理学の分野から,教師集団の「同僚性」についての研究が進められ, 精微な定義が行われている。. そこで,r学校づくりの視点」として,教師集団の特徴を捉え,r同僚性」やr協働性」についての定義 づけを行い,生徒指導体制を整えてい<ための理論的基盤について検討する。. 2’1 「元気のある学校」. ホイら(Hoy&Sabo,1998)は,教師の視点からの健康な学校の捉え方として, ①学業を重視した学習環境,②生徒や同僚や学校への教師の愛着,③校長が支持的・. 同僚的なリーダーシップを発揮していること,④資源のサポート,⑤校長の影響,. ⑥生徒的統合性という6つの次元からなる健康的な学校組織風土尺度を開発してい る。そして,それらに同僚教師,管理職との信頼関係を加え,開放的・健康的な学 校風土と見なしている。また,最近では,学校の健康的風土をさらに進めて,学校 のたくましさ(robustness)に注目した研究が行われている(リカッタら;Licata,J.W.. &Haeper,G,W,1999)。それによると,学校の教育目標に合致するように互いに 協力し合う教師,生徒,管理職らの肯定的な対人関係は,組織の健康として記述さ 8.
(12) れるとしている。そしてこのような肯定的な対人関係が形成された結果として,絶 えず教師と生徒の共感関係や深い関わり合いが生み出されるように学校が機能して いるときに,学校はたくましい組織として捉えることができると指摘している(渕上, 2005)。. 「元気のある学校」は,望ましい人間関係があり,そこから生まれる内発的パワー. によって活発な教育活動が生み出される「たくましい学校」である。その「元気の. ある学校」を支える教師集団のr同僚性」を基盤としたr協働的生徒指導体制」が 学校づくりの核となると考える。. 教師集団は,疎結合システムとして捉えられる。r疎結合」とは,お互いに働きか. けられればそれに答えるが,通常は個々の独立性と分離性が保たれている状況をい う(オートンとウェイク[Orton&Weick,19901)。ところが,教師集団はこのように. 疎結合的な構造を持っ反面,他教師と足並みを合わせようとする強固な同調性を持っ. た集団であることも知られている。このような同調性は,特に生徒指導の場面で顕 著に見られる(渕上,1995)。渕上(2005)は,同調性の逆機能として,①異論が挟みに. くい,②創造的な活動が生まれにくいことなどが考えられ集団における同調的圧力 の強さは,多様な視点からの成員の多様な意見を封じ込める働きを持ち,結果とし て集団で議論することのメリットを封殺し,均質的・同質的な考えは生まれるもの の,創造的な営みは生じがたい,と指摘している。さらに,職務以外のこと(例え ば趣味のことやプライベートなこと)ではよく交流がなされているものの,仕事の こととなると口をっぐんでしまう教師集団は,決して活力ある集団とはいえない, と言う。. 「同僚性」を基盤とした「協働的生徒指導体制」を構築していくためには,教師 の専門能力に基づいた独自性が尊重される疎結合構造の側面と生徒指導など共通理 解に基づいた強固な同調性の側面を踏まえて考える必要がある。教師集団の「同僚 性」と「協働性」の相関を考えたとき,同僚性が強く,協働性の低い集団は,集団と. してのまとまりは強いがマイナス機能として現状維持を望み,創造性が弱い「なか よし・なれあい」集団であり,同調的な集団と言える。協働性が強く,同僚性が低 い集団は,人間関係が疎であり,教師の独自性が反映されやすい教科指導や学級王 国に見られる疎結合的な「ビジネスライク」な色彩が強い集団ととらえることがで きる。もちろん,同僚性も協働性も低い集団は,お互いに無関心であり,居心地の 9.
(13) 悪い集団であろう。r同僚性」もr協働性」も高いr元気のある」教師集団の構築が, r元気な学校」づくりの視点になる(図2−1)。. ↑ 「協働性」高い ↑. 高. ↑. ← ビジネスライク 同. 元気のある. (疎結合的). 僚 性. 同. 教師集団. ←. 僚 性 →. 低. r冒]. レ、. し、. ←. 低. 高. お互いに無関心で. なかよし・なれあい. 居心地の悪い集団. (同調的) ↓. →. 低. ↓ 「協働性」低い ↓. 注:縦軸をr協働性」,横軸をr同僚性」としたときの相関関係 図2・1 「同僚性」「協働性」の相関図. 2−2教師文化の型 教師文化を規定するものとして教師の関係性の形態に注目が集まるようになった。 ハーグリ』ブス(Hargreaves,A.)は,教師文化の形態を個人主義の文化。u1ture of individua1ism,分割主義の文化。u1ture ofcontrived ba1kanization,協働文化 。o11aborative cu1ture,企てられた同僚性㎝1ture ofcontrivedco11egia1ityの4類. 型に分類している。一見すると教師文化がどのようなものであるかにより,教師文 化の形態が分断化されたり,協働的になったりするというように,教師文化の内容 が形態を規定しているように思われるが,ハーグリーブスは教師文化の形態,つま り教師間の関係性のパターンこそが教師文化の内容を規定していると指摘している(山. 田ら,2009)。そこで,日本の教師文化に多くみられる4つの型について検討を加え る。. 10.
(14) ハーグリーブス(1994)は,教師文化の型(Forms ofteachercu1ture)(図2−2)として,. 次の5つのタイプを示している。. ①個人主義型(Fragmenteaindividua1ism):外部からの干渉が守られ,教師個々人 が孤立している関係。. ②バルカン諸国型(Balkanization):それぞれのグループが独立し不一致した型(バ ルカン諸国の状態に類似していることから命名され,由布(2007)は「諸グノレープ独. 立分割型」と意訳している)であり,特別なグループに忠誠と帰属意識(愛着)を 持ち集団の一員としてのアイデンティティを形成するが,下位集団間には溝がある 関係。. ③協働的文化型(Co11aborative cu1ture):日々の仕事中心的で,父親的干渉(家父長. 的態度)を含んだ家庭的構造を持ち信頼と支援を分かち合うが,ぬるま湯に浸って いるような関係。. ④不自然な同僚性型(Contrivedco11egia1ity):強力なリーダーシップにけん引され企. てられた目的を達成するための作為的同僚性であり,管理的処置,結果重視である 関係。. ⑤自在に動くモザイク型(Themovingmosaic)1プロジェクトのようなあり方で,そ の時々の日的や必要に応じて,力動的に集団のあり方が変化し,ときに集団同士が 重なりあったり,様々な形で互いにつながりあうような活動的で融通がきき反応が 早く流動的である,同僚性を基盤にした教師文化の関係。. ①②③のような関係集団においては,教師の成長や教育効果は期待できない。こ れに対して,教師集団の意義を踏まえたあり方として④の型は,目に見える結果を 生み出し,」定の評価が見込まれる。しかしながら,教師個々人の成長や教育現場 に根差した継続的な課題の発見という点から見ると十分ではない。一方,⑤の型は,. 臨機応変に児童・生徒に対応できることから教師が自ら主体的にその場に最もふさ わしい指導を選択し実行しなければならない。これは力量のある教師同士が互いに 切磋琢磨しながら,実践の全体の質を高めているモデルとして考えることができる(由 布,2007)。. 11.
(15) 1.個人主義型. 2.バルカン諸国 (諸グループ独立分割)型. ’………舳 A. .業. 3.協働的文化型 4.不自然な(企てられた). 同僚性型. 5.自在に動くモザイク型. 、、∼. !葦. ?㌔冊.. ㌔.、. 出所:Hargreaves,A.“CHANGINGTHEACHERS,CHANGINGTIMES一’,(1994)p.238. 図 2−2教師文化の型(foms ofteacher㎝1ture). 12.
(16) 2−2’1 「同僚性」(co11egia1ity). リトル(L1tt1e,J W,1992)によれば,「同僚性」(co11eg1a11ty)とは,教師たち. が教育実践の改善を目的に掲げて学校の中で協同する関係を意味するものである。. 彼女は,学校の成功の決定要因が教師の専門的成長の協同関係の有無にあり,教師 の専門的成長の決定要因も学校内の教師の協同関係の有無にあることを20数年前に 明らかにした。そのうえで,学校改革の成功の最大の鍵が「同僚性」にあると主張し ている(佐藤,2007)。さらに,一方的に話しかけることや相手に合わせて手伝った. り援助することから,情報や経験を共有すること,そして過程を共有して協働で何 かをつくり出していくことへと移るにつれ,同僚性の絆は強くなり,相互にうまく 頼り合う関係,援助し依存し合う関係となると指摘している(図2−3)。. 相互依存. 独 立. 言古しかける. 協働での仕事 ざっと見る 共 有. 手伝う・援助. (Litt1e工1990]をもとに秋田が作成. 因2−3 同僚性の発展形態. 13.
(17) 藤原(2007)は,同僚集団は,教師にとって「心の安定剤」,「学びの友」であり,. 具体的には,職場でお互いに語る・聴く,相談し・相談される,教える・教えられ る,助ける・助けられる,励まし・励まされるという関係のもとでビジョンを共有 し,専門性を向上させていくような関係性であると定義したうえで,今日,「多忙化」. や「現在の教育の日指す方向が分からない」という状態のもとで,話し合いたくて も話す時間が無く,教師g孤立が進み,困っている同僚がいても「傍観者」になっ ている教師も次第に増えてきているという声があることも事実だ,と指摘する。 紅林(2009)は,教師の同僚性には,第1に効果的な遂行を支える機能,’第2に力. 量形成の機能,第3は癒しの機能という3つの機能があるとし,日本の教師にとっ て,同僚との関わりは教育活動の支えとなり,力量形成の助けとなり,癒しの機能 を果たしている,と述べている。さらに,現在,教師は同僚と限定的な関係を取り. 結んでおり,プライベートな領域での交流は少なく,また,互いの実践を通しての 交流も必ずしも積極的ではない。こうした同僚関係の有り様は,教師が必要に応じ て選択的に同僚との関係を取り結ぶカを持っていることに由来するものであり,一. 概に同僚性の衰退とは言えない。教師の限定的な同僚関係は,個人主義とプライパ タイゼーション(privatization)の進展が,個々の教師に個人的で私事的な時間と活動. の領域を拡大することを必要とさせているからである。個人主義とプライパタイゼー. ションは今後一層進展していくことが予想される。その時,必要に応じて選択的に 関係を取り結ぶ同僚性を,教師たちは持ち続けているのであろうか。同僚一性の変質 は避けられないかもしれない,と危惧を表している。. 近年,サラリ』マン教師などと呼ばれ,職業よりも私生活重視傾向である「私事 化(プライパタイゼ』ション)」から,職場における人間関係の希薄さが指摘され ている。だからこそ,学校には,信頼関係に基づいた人間関係,具体的には職場で お互いが気楽に話し合い,助け合えるような関係である「仲間意識」とも言える「同 僚性」(Co11egia1ity)が必要だと考える。. 2−2・2 「協働性」(co11aboration). Hargreaves,A.によると,協働性には二つの相対する形態があり,その一つの形. 態は,協働(co11aboration)と呼ぶもので,次の5つの特徴をもっている。① spontaneous=教師それぞれに自発性があること,②vo1untary=共に一緒に働く 14.
(18) うちに生じてくるもので,その実践は義務でもなければ強制でもない,③ aeve1opment−oriented=改善や発展を志向していること,④pervasive across time. and space=教師相互のコミュニケーションが場所や時間を限定せずに十分に行わ れること,⑤unpredictab1e=協働した結果は必ずしも成果としてはあらわれない し,簡単に予期できるものでもない。もう一つの形態は,「わざとらしい同僚性」 (contrived couegiality)で,これは見かけは協働(co11aboration)に似ているけれど,. 実際は異なるものである。Contrived co11egia1ityはr教師の自発性から生まれたも. のではないこと,時にはVO!untaryではなく,そこへの帰属が義務化されること, 発展思考的ではなく,時間と空間の固定化が行われ,たいていの場合,予期される 。utCOme(成果)を前提としていること」を特徴とし,教師自らの志向によって生まれ. たものではなく,管理職の関心から生まれたものだと指摘している。前者は,教師 同士がアイデアや実践を共有していく過程と関連する概念である。それは教師が, 価値や目的や,行動したことの結果を共有していくことを意味する。またそのプロ. セスで,互いの実践やパースペクティヴや仮説にチャレンジすることが頻繁に行わ れ,同時にこのような相互交渉を通じ,互いをより高次の次元へと導いていこうと する協働の文化が形成されるのである。それに対して後者は,組織としての学校が,. ある目標に向かって機能的に成員を配置しているということと同義である。そこで は,配置された教師が期待された役割を過不足なく十分に果たすことが必要とされ る。いわば,目的合理的に編成された組織のなかでの役割を有機的に担っていると いう状態がこれに当たる。. さらにr協働(co11aboration)」の文化を形成するためのキー概念となるのは,r相. 補性」と「情報冗長性」である。相補性とは職場での人間関係を示す概念で,職場 でのさまざまな地位や職種を超えて,「参加者の平等の努力」や「複雑な課業環境に. 直面した人間の認知限界についての平等の謙虚さ」を意味している。また「情報冗 長性」とは組織が情報を階層に応じて機能的かつ効率的に分有することが大切だと されてきたのに対し,個と個の間で相互に余剰の情報を共有すること,すなわち組 織内に無駄を取り込むことの大切さを意味する(由布,1999)。 渕上(2005)は,学校においては,教育活動を含めた組織活動全般について,教師. が相互に共有しながら共通理解を深め,忌揮のない意見を交わし合いながら,開か れた学校づくりを日指して協力し合う協働関係が不可欠であり,このような協働関 15.
(19) 係を通じて,個人では見られない創造的活動が生み出される可能性がある,と述べ ている。さらに,教師の協働的効力感は,①支え合いの自覚,②学校改善への意欲,. ③積極的援助,④普段のコミュニケーション,⑤立場の違いの克服,⑥管理職との 協働,の6つの構造から成り立っており,分掌などの立場の違い(管理職も含めて). を互いに認め,克服しつつ,互いに協力し合う関係を形成できるという信念のこと であり,しかもそのような関係は,普段のコミュニケーションによる関係性の構築 を必要としていると言う。人はこのような強い信念(自己効力感)を持つことで内 発的意欲を高め,自信を持って自己決定・活動ができるようになる(渕上,1992)。. また,教師一人一人の力量を反映している個人的効力感は,職場の雰囲気にほとん ど左右されないが,協働的効力感は,協働的な職場の雰囲気の中で培われていく部 分が大きく,協働的効力の形成には,職場の雰囲気や職場内でのサポートの存在が 深く関わっている。したがって,教師の協働的効力感を育成するためには,個人の 力量を高めていくだけではなく,教師集団や人間関係の在り方について検討する必 要がある,と指摘している。. 教師は,その専門1性を活かし日々の教育活動にあたっている。しかし,一人の力. には限界があり,特に多面的な生徒理解や柔軟な問題対応においては,教師の協働 がより大きな効果を生み出すと言える。学校における教育活動全般を視野におさめ た生徒指導を推進していくためには,教師同士が個々の専門一性を活かし,新たなも. のを創造していくことを日指し協力するような関係である「チームワーク」とも言 うべきr協働性」(collaboration) を高め,協働的生徒指導体制」を確立していくこ とが重要であると考える。. 2−3 ミドル・アップダウン・マネジメント. 学校組織の改善・改革を推し進めていく上で,トップである校長など管理職のリー. ダーシップの重要性を説くものは多い。しかしながら,学校組織は,ピラミッド型 というよりもフラット型・ナベブタ型組織とよく言われるように,管理職の強力な. リーダーシップによるトップダウン方式の組織運営よりも,管理職も含めたrわい がや(わいわいがやがやと前向きな議論がなされるという意味として企業などで使 われる用語)」の集団活動が円滑な人間関係を生み出し,「元気のある学校」として. まとまっていく場面が少なくない。そこでは,職員の帰属意識や効力感が生み出さ 16.
(20) れ,それが内発的なパフ』となり,組織が活性化していくと思われる。 組織の成員が,彼ら自身の意思で,組織創造のプロセスの申にいると感じること,. と定義されるエンパワーメント(empowerment)は新しい概念で,主に組織心理学で 検討されてきた(ブロック[B1ock1.1987:ボッシットとマレル[“gt&Murre111.1990)。. 成員が自主性や自律感をもち,自分たちの力で組織を創り出していると感じること. によって,人は自分にパワー(影響力)が与えられたと感じ,そのパワー感覚を発 展させ,さらに皆のパワーが集約されるように効果的な相互作用を行われることに なる。このエンパワーメントの考え方は,「相互影響プロセス」を導く。組織内での. リーダーがフォロワーに対して一方向的に影響を及ぼしながら組織を運営していく というr一方向的影響プロセス」ではなく,上方向(フォロワーからリーダーへ), 下方向(リーダーからフォロワーへ),水平方向に,相互に影響を及ぼし合うことに. より組織は作り上げられていくという考え方である。管理職だけで目標を設定し, 計画を立てて,それらを実行しようとしても効果は期待できない。それでは,多く の教師は傍観者のままで,学校づくりは進まない。管理職だけでなく,教師も様々 な意見やアイデアを出し,話し合いながら,目標遂行のためのプロセスを進めてい く必要がある。教師自身もエンパワーメントをもって,参加・関与・協同すること が必要なのである(渕上,1995)。. 胴僚性」を基盤とした「協働的生徒指導体制」の構築は,学校の全職員の協力 体制によるr相互影響プロセス」が必要である。それには,上・下・水平方向をつ なぐ役割が不可欠となる。. 浅野(2007)は,これからの学校運営には管理職のリーダーシップと主任クラスのミ ドルが活躍する「ミドル・アップダウン・マネジメント」が求められ,ミドルリーダーと して,キーパーソンは元気な学校づくりに貢献すると述べている。これは,トップ(管理 職)と教職員の中間的立場に立つキーパーソンとしてのミドルリーダー(教務主任・学年 主任,生徒指導主事など)が,トップが掲げた学校経営方針や活動の方向性を解釈し,指 導・助言を通じて教職員に周知徹底させていくような働きかけをする。同時に,第一線に 立つ教職員の教育活動に対する考えを集約してトップに伝える。このようなミドルの効果 的活用から生まれる組織の円滑な意思疎通を核に学校の活」性化を図る手法である。これに. より,組織への参画意識が高まり,学校全体としての教育力と個々の教職員の資質能力の 向上という好循環が生まれる(図2−4)。. 17.
(21) 「学校ビジョンの修正」. トップ(管理職/校長・教頭) 抽象的な戦略方向提示. 現場情報やアクションの結果. 獲得したアイデアの提供. ミドル(主任クラス) 内外情報の意味解釈と 具体的なシナ1才明示. 現場情報の収集 と矢口恵の蓄積. 第一線(教職員). ≠長里予(2007). 図2−4. ミドル・アップダウン・マネジメント. ミドルリーダーの一人である生徒指導主事が,キーパ』ソンとして果たす役割は重要で. ある。学校における全ての教育活動には機能としての生徒指導が働いていると捉える. ならば,生徒指導主事が教務主任や学年主任などといった他のミドルリーダーと横 のつながりを持ちながらその中心となって,管理職も含めた教職員の「同僚性」や「協. 働性」を高めることにより,教師のモラ』ルや効力感も同時に高めていくことが可能 になる。そこから内発的な学校の活性化が進み,「元気のある学校」が生まれてくる。. ミドルリーダーが人間関係をつなぎ,「元気のある学校」がつくられる。そこに形成 されるものが,「同僚性」を基盤とした「協働的生徒指導体制」に他ならないと考え る。. 18.
(22) 3 生徒指導の現状と課題 第2章において,多様な生徒指導上の問題に日々追われ,疲弊し,モラールや効力感を失いつつある 学校現場には,「同僚性」を基盤とした「協働的生徒指導体制」の構築が必要であること,その学校改 革のためには,ミドルリーダ]がキーパーソンとなる「元気のある学校」づくりが求められていること を,教育心理学や教育社会学の立場から検討してきた。. 本章では,実際の教育現場においてアクションリサーチを行った結果をもとに,「元気のある学校」 づくりを進めるうえで,何が必要であるのかを明らかにするために検討を行う。 アクションリサーチについては,協働的効力感・個人効力感・集団効力感,人間関係の阻害要因につ いての尺度を用いた質問紙調査による因子分析とエスノグラフィック(ethnographic)手法(参与観察法・ 面接法・調査法・文献収集など複数の技法を組み合わせた多角的な手法)を用い,協力校において,職員の 視点から生活世界や意味世界を理解することを試みた。細部をち密に見ると同時に全体の構造や文脈も把握す ること,フィールドを熟知する」方で,常に異人としての日を持ち続けること,データ収集と収集しつつある データの分析を同時に行い,研究設問を柔軟に練り上げていくことに留意してその解釈的アプローチを行った。. 今回,アクションリサーチを行ったA県B市には,公立中学校18校(自立支援学校内分校1校含む),. 小学校36校が存在している。公立中学校18校のうち21クラス以上の大規模校3校,15クラス以下 の小規模校が10校である。自立支援施設内の分校以外の17校の生徒指導主事は,授業の軽減,ない しは授業を持たずに生徒指導主事の分掌に専念する形をとっている。各中学校とも学年団を中心とした 職員体制を形成し,各学年に生徒指導係が学年分掌として位置づけられている。生徒指導主事は,学年 主任や学年の生徒指導係と連携を取りながら,開発的・予防的・解決的な生徒指導に取り組んでいる.. 3−1 量的検証によるアクションリサーチ 「同僚性」を基盤にした「協働的生徒指導体制」を構築していくために学校にお ける教師の関係性の実態と意識に焦点をあて,学校現場は,旧僚性」や「協働性」に ついて,どのような意識を持っているのか,「同僚性」や「協働性」を構築していく必. 要性を実感として持っているのか,などのことを明らかにするために質問紙調査を 打つだ。. 3・1−1質問紙による実態調査 19.
(23) <調査対象>. A県B,C市内抽出12校の中学校教員388名対象. 表3・1質問紙調査対象校属性 No.. 学校. 在籍数. 学級数. 教員数. 規模. 回収. 市. 1. O. 350. 10. 22. ノ」・. 14. B. 2. P. 357. 12. 23. ノ」・. 10. B. 3. Q. 539. 17. 25. 申. 14. B. 4. R. 581. 16. 25. 中. 9. B. 5. S. 617. 19. 34. 中. 26. B. 6. T. 661. 19. 34. 中. 9. B. 7. U V. 726. 20. 36. 大. 23. B. 770. 21. 36. 大. 17. B. 8 9. W. 833. 23. 36. 大. 17. B. 10. X. 823. 23. 39. 大. 25. C. 11. Y. 850. 23. 39. 大. 23. C. 12. Z. 974. 25. 39. 大. 28. C. 注意=教員数は,管理職,事務職,栄養士を含まない2009年5月現在のもの. <調査期間>. 2009年11月に質問紙を配布し,回答後に回収した。 <調査対象者属性(フェイスシート)>. 性別,年代,教師歴,経験学校数,校務分掌,生徒指導主事経験 <質問紙の内容>. 質間紙は5件法により回答を得た。 ①教師の協働的効カ感尺度 渕上・西村(2004)の「教師の協働的効力感尺度」の42項目を使用した。. ②教師の個人効力感尺度 渕上・西村(2004)のr教師の個人効力感尺度」の23項目を使用した。 20.
(24) ③教師の集団効力感尺度 渕上・今井・西山・鎌田(2006)のr教師の集団効力感尺度」の44項目を使用した。. ④職場の人間関係の阻害要因に関する尺度 高橋(2008)のr職場の人間関係の阻害要因に関する尺度」の69項目を使用した。. 表3−2 質問紙調査対象者の属性 性別. 男性. 109. 女性. 106. 20歳代. 30∼34歳. 35−39歳. 40∼44歳. 50歳代. 45∼49歳. 年代. 48. 37 5年未満. 5∼9年. 34. 52 10∼14年. 15∼19年. 23. 21 25年以上. 20∼24年. 教師歴. 43. 43. 59. 1校. 2校. 3校. 32 4∼5校. 23. 15 8校以上. 6∼7校. 勤務歴. 26. 15. 校務分掌. o験年数. 76. 学級. 学級. 教務主任. 生徒指導. S任. S任外. w年主任. @主事. 91. 124 生指主事. 49. なし. 17. 11. 15. 学年生徒. 部活動. w導係. 蛹レ問. 21. 12 6∼9年. 3∼5年. 1∼2年. 185. 21. 34. 王O−14年 1. 142 15年以」二. 1. 0. 注意=勤務校歴は,講師経験も含む。. @ 生徒指導主事経験年数は,他校においての経験も含めたトータルの年数。. <調査結果>. 12校388名対象うち215名から回答を得た。(有効回答率55.4%) ①教師の協働的効力感尺度 淵上・西村(2004)の「教師の協働的効力感尺度」42項目を用いた。反応は「とて. もできる」から「全くできない」の5件法により回答を求めた。順に5点∼1点を 与え,得点が高くなるほど,各項目について協働的効力感が高いことを示している。. 平均値の高かった項目は,「手伝ってもらったり,やってもらったことに対して, 素直にありがたいと思える」「前向きに頑張っている同僚の仕事を進んで応援し,評 21.
(25) 価することができる」「自分は他の人に支えられているからこそ,自分の仕事ができ るんだと,いつも思える」であった。. 因子構造について検討するため,因子分析(主因子法・バリマックス回転)を行っ. た。その結果,解釈可能な3因子32項目が抽出された。第1因子は「仲間意識」で α=.91,第2因子は「組織形成」で早=.89,第3因子は礪係づくり」でα=.82 を示した。項目全体ではα=.94であった。因子分析結果は,表3−3二示す通りであ る。. 第1因子は,「人のいい所から積極的に学んだり,自分の言動で反省す人き点は謙 虚に反省することができる」「前向きに頑張っている同僚の仕事を進んで応援し,評 価することができる」「新しい同僚が来たとき,その人の立場になって親切にするこ. とができる」などの13項目からなり,同僚との望ましい関係,態度や意識と解釈さ れ,「仲間意識」因子と命名された。第2因子は,「管理職の立場を理解.し,協力す ることができる」「管理職にも同じ教師集団の」負として積極的に話しかけることが できる」「仕事以外での同僚同士の交流など,職場が楽しくなるようなプランを積極. 的に考えることができる」などの12項目からなり,職域,職階を越えた組織形成の 意欲と解釈され,「組織形成」因子と命名された。第3因子は,「一人ひとりの個性 を尊重し,どの人も善意的に見ることができる」「意見の対立があるような場面でも 相手の意見を尊重し,感1青的にならずに話をすることができる」「なれあいではなく,. 互いが切磋琢磨し合いながら成長できるような仲間づくりを目指すことができる」. などの7項目からなり,他者理解と友好的かつ効果的な人間関係の構築と解釈され たので,r関係づくり」因子と命名された。 このように「協働性」の意識に関する項目は,「仲間意識」「組織形成」「関係づく り」から構成されていることが明らかになった。. 22.
(26) 1 2 共通性 3. 表3−3教師の協働的効力患尺度の因子分析結果(主因子法・バリマックス回転). α・.91α・.89α・.82. 「仲間意識」. 36.人のいい所から積極的に学んだり、自分の言動で反省すべき点は謙虚に反省することができる. .75. 38.前向きに頑張っている同僚の仕事を進んで応援し、評価することができる 35.新しい同僚が来たとき、その人の立場になって親切1こすることができる. .6丁. 40.年下の同僚に対して、些細なことでも評価し、元気づけることができる. .1O. .28. .66. .22. .19. .64. .32. ,14. .57. .41. .1O. ,61. 39、相手の地位や役割1こ関係なく、どの人とも平等1こ接することができる. .64. .31. .20. 、55. 30.手伝ってもらったり、やってもらったことに対して、素直にありがたいと思える. .62. .05. .2フ. .46. 37.生徒のことなどで教科内や学年内で進んで話し合いを持つことができる. .32. .12. ,4フ. 42,目立たないところで地道に仕事をしている同僚に気づき、評価することができる. .34. .13. .48. .33. .17. .43. .10. .35. .37. .29. .35. 33.職場の多くの人と仕事上のいろいろな話をすることができる. .54. 28.自分は他の人に支えられているからこそ、自分の仕事ができるんだと、いつも思える 31.授業変更や自習監督など、他の人の仕事の空きを進んでフ才ローすることができる. 、47. .21. 32.職員会議以外の話し合いや打ち合わせなどにも積極的に参加することができる. .47. .39. .33. .48. .34. .23. .38. 12.管理職の立場を理解し、協力することができる. .25. .53. ll.管理職にも同じ教師集団の一員として積極的1こ話しかけることができる. .18. .48. 21.仕事以外での同僚同士の交流など、職場が楽しくなるようなプランを積極的に考えることができる. .25. .45. 24.自分の教育活動全般が、学校全体の教育につながっていると思うことができる. .16. .48. 25.自分の実践で良かったと思うことを進んで周りに伝えることができる. .07. .46. 2フ.自分の分掌の仕事を積極的に行い、改善すべき点を見つけ、改善するように働きがけることができる. .12. .44. lo.管理職と教師が互いに協力し合えるような職場の雰囲気づくりに努力することができる. .35. .55. 26.自分の正しいと思う意見は、辛抱強く主張することができる. .57. .09. .34. .54. .18. .46. .24. .33. 18.校内で問題が起きたときには、すぐに駆けつけることができる. .2フ. .42. 19.校内研修を積極的に計画し、実行することができる. .22. .29. 22.仕事以外のことでも多くの同僚と話すことで、普段から関係づくりに努めることができる. r繊形成」. 9.学年会の一員であることを認識し、自分から積極的に担任の先生たちをフ才ローすることができる 6、会議では疑問1こ思うことや正しいと思うことは積極的に発言し、共通理解に向け努力することができる. 「関係づくり」. 5.一人ひとりの個性を尊重し、どの人も善意的に見ることができる. .34. .58. 4.意見の対立があるような場面でも相手の意見を尊重し、感情的にならずに話をすることができる. .21. .41. 3、なれ合いではなく、互いが切瑳琢磨し合いながら成長できるような仲間づくりを目指すことができる. .20. .52. .28. .38. 2.すべての経験は無駄な経験ではないと考え、いろいろな仕事に積極的にチャレンジすることができる. .17. .43. 1.PTA行事などに積極的に参加できる. .02. .38. ,24. 、37. 23.仕事上の不満を口にすることがなく、今の状態でベストを尽くそうと努力することができる. 13,協力的でない教師にも理解しあえるように話しかけることができる. 因子寄与 5,94 5,43 3.37 14.74 寄与率 18.56 16.98 10154 46,08. 23.
(27) 教師の協働的効力感尺度の下位尺度に基づき,各下位尺度と尺度全体の合計得点 についての基本統計量として,平均値と標準偏差を(表3−4)に示す。. 表 3−4. 協働性尺度の合計及び下位尺度の平均 点及ぴ標準偏差 平均値. 協働性合計得点 一 仲間意識. さ.D.. 1−72. 組織形成. 1.97. 2.13. .49. .48. .58. ②教師の個人効力感尺度 渕上・西村(2004)の「教師の個人効力感尺度」23項目を使用した。反応は「そう. である」からrそうではない」の5件法により回答を求めた。順に5点∼1点を与 え,得点が高くなるほど,各項日について個人効力感が高いことを示している。. 平均値の高かった項目は,「もし生徒が先時の学習がわからないとき,次の時間に 分かるように授業を工夫する」「クラスでの適切な行動の仕方を生徒に伝えることが できる」などであった。. 因子分析(主因子法・バリマックス回転)を行った。その結果,解釈可能な2因 子2!項目が抽出された。第1因子は「指導能力」でα:、93,第2因子は「個人的 努力」でα=.81がしめされた。因子分析結果は表3−5に示す通りである。. 第1因子は,「授業中に生徒が騒いだり,授業の妨害をしたりしたとき,すばやく 効果的に対応できる」「もし生徒がクラスでの活動を逸脱するならば,彼らを元に戻 すことができる」「クラスでの適切な行動の仕方を生徒に伝えることができる」など. の18項目からなり,授業コントロールや学級経営における生徒への適切な指導を行 うことへの意識と解釈され,「指導能力」因子と命名された。第2因子は,「生徒の 成績が改善したとき,それは私がより効果的な授業法を見つけたからである」「生徒. がいっもよりよい成績をあげたとき,それはたいてい私が努力したからである」な ど3項目からなり,教師の努力による子どもの成績向上の意識と解釈され,「個人的 努力」因子と命名された。. このように「教師の個人効力感」の意識に関する項目は,「指導能力」「個人的努 力」から構成されていることが明らかになった。. 24.
(28) 表1−1教師の個人効力駅度の因子分析結果(主因子法・バリマックス回転). 1 2. 共通性. α・I93α・、81. 哺導籠カ」 11.授業中に生徒が騒いだり、授業の妨害をしたりしたとき、すばや/効果的に対応できる 1.もし生徒がクラスでの活動を逸脱するならば、彼らを元11戻すことができる 1.クラスでの適切な行動の仕方を生徒に伝えることカ{できる 1.もしクラスのある生徒が騒ぎ始めたら、すぐに落ち着かせる技術を持って1、る 1.1,1人の生徒がクラス全体を/ラブル1こ巻き込むことから防ぐことができる. 11.授業中の生徒の予想外の反応や質問にも的確に対応できる 1.極めて効果的なクラス経営の技術を持っている 11.教育観1指導観といった信念をしっかり1寺っている. 1.もし生徒が学習につまづいた場合、なぜできないのか、どうすればできるようllなるのかを正確11判断できる 11.生徒を引き付けるメリハりのある授業展開を行える 11.生徒が与えられた課題11ついて悩んで1、るとき、生徒のレベル11応じて課題を修正できる 11.授業を行うにあたっての十分な知識.教養を持っている 11.自分の期待を生徒にはっきり伝えることは、簡単である 11.扱い方のわからない生徒は、クラスにはほとんどいない ll.不登校の子どもに対して、なぜ登校できないのか、その子の立場で考え、話を聞/ことができる. 11,自分が本気になって当たれば、非常に難しいと思われる生徒でも指導できる 11.自分が一生駒やれば、無気力な生徒にもやる気をおこさせることができる 1.もし生徒が先時の学習がわからないとき、次の時間にわかるよう1こ授業を工夫する. 「個人的努力」. ll.生徒の成績が改善したとき、それは私がより効果的な授業法を見つ1寸たからである. 層111. 11、生徒がいつもよ1よい成髄あげたとき、それはたいてい私が努力したからである 1.もし生徒が新しい概念をすぐにマスターしたとき、それは私がその概念を教える際に必要な手続きを知っていたからだ. 因子寄与 7,20 2.86 10.06. 寄与率34.2713.62 47.89. ③教師の集団効力感尺度 渕上・今井・西山・鎌田(2006)の「教師の集団効力感尺度」44項目を使用した。 「あなたの職場の教師集団の様子についておたずねします」という質問に対して,. 反応は「そうである」から「そうではない」一の5件法により回答を求めた。順に5 点∼1点を与え,得点が高くなるほど,各項目について集団効力感が高いことを示し てし・る。. 25.
(29) 平均値の高かった項目は,r他の人が急に休んだ時など,進んでフォローすること ができる」「必要に応じて,児童生徒に対して毅然とした態度をとることができる」. r生徒について教科会議や学年会で進んで話し合いを持つことができる」r人の良い 所から積極的に学んだり,反省すべき点は謙虚に反省することができる」「前向きに 頑張っている同僚の仕事を進んで支援し,評価することができる」などであった。. 因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った。その結果,解釈可能な4因. 子36項目が抽出された。第1因子は「協力関係」でα=.93,第2因子は「授業・ 学級経営」でα=.91,第3因子は「積極的援助」でα=.94,第4因子は「生徒指 導力」でα=.90が示された。因子分析結果は表3−6に示す通りである。 第1因子は,「仲間意識がある」「みんな協力的であり,助け合っている」「充実感. を持って仕事に取り組むことができる」などの11項目からなり,同僚同士による相 互援助による取り組みへの意識や態度と解釈されたので,「協力関係」因子と命名さ. れた。第2因子は,8項目からなり,「わかりやすい授業を行うことができる」「十分 な知識・教養を持って授業を行うことができる」「多様な教授法に通じている」「生. 徒の集団を把握し,まとめていくことができる」などの授業への取り組みや学級経 営に対する意識や態度と解釈されたので,「授業・学級経営」因子と命名された。第 3因子は,「自分の分掌の仕事を積極的に行うことができる」「生徒について教科会議. や学年会で進んで話し合いを持つことができる」r他の人が急に休んだ時など,進ん. でフォローすることができる」などの10項目からなり,積極的な同僚や教育活動へ の行動や援助の意識や態度と解釈されたので,r積極的援助」と命名された。第4因 子は,「指導困難な児童生徒にも十分に対処できる」「生徒に学習習j1貫を身につけさ. せることができる」r地域の人々と連携が取れている」などの7項目からなり,問題 解決的・予防的・開発的な生徒指導への意識や態度と解釈されたので,「生徒指導力」 因子と命名された。. このように「教師の集団効力感」の意識に関する項目は,「協力関係」「授業・学 級経営」「積極的援助」「生徒指導力」から構成されていることが明らかになった。. 26.
(30) 1. 表3−6教師の集団効力感尺度の因子分析結果(主因子法・プロマックス回転). 2. 3. 4. 共通性. α=.93α=.91α:.94α=.90 「協力関係」 13.「仲間意識」がある. 5.みんな協力的であり、助けあっている 6.充実感を持って仕事に取り組むことができる. 7.人の良い所から積極的に学んだり、反省すべき点は謙虚に反省することができる 16.仕事以外のことでも多くの同僚と話をすることで、普段から関係づくりに努めることができる 31.管理職と教師が互いに協力しあえるような職場の雰囲気づくりに努力している 39.管理職とコミュニケーションがとれている. 4.学校で問題が起こったとき、一致団結して問題を解決するように動くことができる 12.研修会などによって資質の向上を図ろうと努力している. 1O.自分たちが本気になって当たれば非剃こ難しいと思われる生徒でも指導できると信じている 2.生徒の将来(進路等)に関する悩みを親身になって聞くことができる. 「授業・学級経営」 1.わかりやすい授業を行うことができる. 一.15. 8,十分な知識・教養を持って授業を行うことができる. 21.多様な教授法に通じている 3.生徒の集団を把握し、まとめていくことができる. 23.生徒に学習の意欲・関心を持たせることができる 9.しっかりした教育観を持っている. .02. .05. .18. 一.03. .02. .Ol. .18. .22. .20. .lO. .22. 一.02. 一.16. .31. η.各分掌の内容を把握している 14.生徒の学習状況、悩み、要求、生活状況などを適切に把握することができる. .05. 『積極的援助」 3ヰ.自分の分掌の仕事を積極的に行うことができる. 20.生徒について教科会議や学年会で進んで話し合いを持つことができる 43.他の人が急に休んだ時など、進んでフォローする二とができる 19.生徒の家庭(家族)との連携をとることができる. 25、教育目標をしっかりと理解している 44.意見の対立があるような場面でも、感情的にならず1こ話し合いをすることができる 30.前向きに頑張っている同僚の仕事を進んで支援し、言孕価することができる 26.他のクラスや学年のいじめ等の問題に対しても積極的1こ協力することができる 35.会議などにおいて、共通理解に向け、努力することができる 42.学校行事1こ積極的に関わることができる. 「生徒指導力」. 15.指導困難な児童生徒にも十分に対処できる. .22. .20. 3フ.生徒1こ学習習慣を身につけさせることができる. 一.23. .15. 36,地域の人々と連携がとれている. 一.04. .09. 40.教育目標の実現に向けて努力することができる. .09. 一.ω. 29.生徒の進学先や就職先についてよく知っている. 一.16. .28. 38.授業中に生徒が騒いだり、授業の妨害をしたとき、すばやく対処することができる. .00. ,08. 32.生徒の悩みや困難についてその解決のために支援することができる. .19. .06. 因子閥相関 i. 皿. 皿. w. 1 一. .56. .フ4. .68. .6フ. .68. 皿. 皿. 27. .75.
(31) ④職場の人間関係の阻害要因に関する尺度 高橋(2008)の「職場の人問関係の阻害要因に関する尺度」69項目を使用した。『職. 場の人問関係を形成しにくくしている』原因として,次のような事柄がどの程度影 響していると思われますか」という質問への反応は「とても影響している」から「全. く影響していない」の5件法により回答を求めた。順に5点∼1点を与ネ,得点が 高くなるほど,各項日について人間関係の阻害要因が高いことを示している。 平均値の高かった項目は,「日々の学級事務の多さ」「日の前の仕事を追いかける ことに精いっぱい」「作成しなければならない事務関係の書類の増加」「諸帳簿など の記入」「1クラスの定員の多さ」などであった。. 「職場の人間関係の阻害要因に関する尺度」の因子構造について検討するため,. 因子分析(主因子法・バリマックス回転)を行った。その結果,解釈可能な3因子. 44項目が抽出された。第1因子はr非連帯」でα=.94,第2因子はr指導困難」 でα=.91,第3因子は「多忙」でα=.85が示された。因子分析結果は表3−7に示 すとおりである。. 第1因子は,「職員のグル』プ化」「足並みをそろえなければならない(出る杭は. 打たれる)雰囲気」「学級担任による閉鎖性」などの23項目からなり,教師集団特 有の疎結合構造性や強固な同調一性の雰囲気,連携の難しさなどという意識と解釈さ. れ,「非連帯」因子と命名された。第2因子は,「児童生徒の校内での問題行動への 対応」「児童生徒の校外での問題行動への対応」「適応指導室など関係機関との連携」. などの13項目からなり,問題行動への対応や特に配慮を要する子への指導に対する 困難さへの意識と解釈され,「指導困難」因子と命名された。第3因子は,「日々の 学級事務の多さ」「諸帳簿などの記入」「作成しなければならない事務関係の書類の 増加」などの8項目からなり,事務作業に追われる忙しさの意識と解釈され,「多1亡」 因子と命名された。. このように「職場の人間関係の阻害要因」の意識に関する項目は,「非連帯」「指 導困難」r多忙」から構成されていることが明らかになった。. 28.
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