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直感的文脈における「いい人そうだ」の選択率 ―日本語母語話者と上級学習者を比較して―

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Academic year: 2021

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直感的文脈における「いい人そうだ」の選択率

―日本語母語話者と上級学習者を比較して―

The Selectivity of Ii Hito soo da ‘Seem to be a Nice Person’ in an Intuitive Context:

Comparing Native Speakers and Advanced Learners of Japanese

宮口 徹也

MIYAGUCHI Tetsuya

中部学院大学 Chubu Gakuin University [email protected]

Abstract: From a prescriptive viewpoint, it is incorrect to use soo da with a noun as in ii hito soo da ‘seem to be a nice person’; however, this expression cannot be rephrased with other evidential forms such as yoo da, mitai da and rashii, as these lack an intuitive meaning that soo da carries. Through a questionnaire survey, this study looked at which of these forms would actually be chosen by native speakers and advanced learners of Japanese in a context where they intuitively state that someone seems to be a nice person. The result has shown that a large majority of the native speakers chose soo da, implying that ii hito soo da is indeed an established expression; in contrast, the learners’ selectivity of soo da turned low, suggesting that they might be unaware of the same expression.

キーワード:様態、モダリティ、ソウダ、いい人そうだ 1. はじめに 様態のソウダは動詞、形容詞、形容動詞に接 続するとされているが(寺村 1984)、実際には 「あの人はいい人そうだ」というように名詞に 接続することもある注1。これは誤用とみなすこ ともできるが、証拠性判断を表す他のモダリテ ィ形式(ヨウダ、ミタイダ、ラシイ)には、ソ ウダのような直感的意味合いがなく、「いい人 そうだ」のもつ意味を他の形式で厳密に言い表 すのは不可能である。 「いい人そうだ」は筆者からすればごく自然 な表現であるが、管見の限り、同表現に対する 日本語話者の語感を調査した研究はこれまで にない。そこで本研究では、直感的に「いい人 だろう」と判断する文脈においては、実際に上 記のどの形式を選択がされるのか、日本語母語 話者を対象にアンケート調査を行った。また同 時に日本語学習者に対しても調査を行い、教科 書では未導入である同表現に対し学習者がど の程度の理解を持っているか検証した。 2. アンケート調査 2.1 調査対象 調査対象としたのは中部学院大学在籍の日 本人学生 34 名(男 18 名、女 16 名、18~19 歳) および外国人留学生 11 名(男 5 名、女 6 名、 20~29 歳)である注2注3。留学生は、各モダリ ティ形式を学習済みである上級者(日本語能力 試験 N2 合格以上)に限定した。 2.2 調査内容 アンケートでは直感的に「いい人だろう」と 判断する文脈を設定し、名詞「いい人」に続く 形式として「最も自然だと思うもの」を、ヨウ ダ、ミタイダ、ソウダ、ラシイの 4 形式から選 択させた。以下に実際の質問を引用する。 (1) 状況)あなたは友達と話しています。 友達 :そういえば、この前、妹が急に知ら ない人の写真送ってきてさ。「この 人だれ?」って聞いたら、新しい彼 氏だって。 あなた:へえー、どんな感じの人なの? 友達 :写真見る?ほら、これ。 あなた:あ、この人? へえ、なんか いい人( のようだね / みたいだね / そうだね / らしいね )。 また上記の質問とともに、各選択肢を同じ状況 で用いるとするとそれぞれどの程度自然か、1 (不自然)~4(自然)のスケールで自然度を 評価させた。母語話者と学習者のどちらも同形 式でアンケートを行った。 3. 結果と考察 3.1 日本語母語話者の場合 母語話者では圧倒的にソウダの選択が多か った。34 名のうち 1 名はラシイを選択していた が注4、他 33 名はみなソウダを選択していた。 続いて表 1 に各選択肢の自然度の平均を示す。 日本語教育方法研究会誌 Vol.26 No.2 -24-

(2)

表 1 自然度評価の平均(日本語母語話者 34 名) ヨウダ ミタイダ ソウダ ラシイ 1.91 2.41 3.88 1.59 表 1 にあるように、他の形式と比べてソウダの 平均値がとりわけ高いことがわかる。これらの 結果から上の文脈においてはやはり「いい人そ うだ」が最も自然な表現だといえそうである。 ここでソウダ以外の 3 形式を比べてみたい。 平均値を見るとミタイダが最も高く、順にヨウ ダ、ラシイが続くが、これは寺村(1984)の説 明とも一致する。寺村は、ヨウダはやや主観的 な推量であるのに対し、ラシイは他から得た情 報をもとに推量するという印象があると述べ ている(p.250)。したがって、上のように自ら の直感をもとに「いい人だろう」と述べる場合、 ラシイは適さないということになるが、実際に 平均値は最も低い。また寺村によれば、ミタイ ダはヨウダよりも口語的でくだけたものであ る(p.242)。したがってミタイダの平均がヨウ ダより高いのも採用した文脈がカジュアルな ためだと考えられる。 3.2 日本語学習者の場合 学習者の場合、最も多く選択されたのはミタ イダ(5 名)であった。ヨウダとソウダはそれ ぞれ 1 名、ラシイは 4 名が選択していた。表 2 に 11 名の回答一覧と自然度の平均を示す。 表 2 学習者の回答一覧 *ハイライトは選択された形式 自然度平均では特定の形式がとりわけ高い(あ るいは低い)ということはなかった。母数が小 さいため平均値についてはここまでに留める。 次に選択された形式をそれぞれ見ていきた い。「いい人そうだ」は教材等では導入されて いないわけだから、日本語教育文法の観点から すれば、この場合ミタイダあるいはヨウダを選 ぶのが「正しい」ということになる。その意味 で、これらの形式を選択している表中 A~E お よび J は模範的な回答をしているともいえる。 特に N1 取得者である A と B の回答は、ヨウダ とミタイダを高く、ソウダとラシイを低くはっ きりと分けている点で「教科書的」である。逆 に考えると、今回ソウダを選択したのが 1 名と 少ないのは、上級者であってもソウダについて の知識が教科書の範囲にとどまっている、つま り「いい人そうだ」という表現自体が知られて いないことを示しているのかもしれない。 また、本来不自然であるはずのラシイの選択 が多いのにも注目しておきたい。表 2 を見ると ラシイを選択した回答には F のように N1 取得 者も含まれ、C や D のようにミタイダを選択し ながらも同時にラシイを高くつけているもの も見られる。したがって上級者でもラシイその ものの理解が十分ではないのかもしれない注5 。 4. おわりに 今回の結果を見る限り、母語話者では「いい 人そうだ」が定着した表現であるといえるだろ う。しかし学習者では対照的に同表現が知られ ていないということだけでなく、一部の形式に 対する理解が十分でない可能性も示唆された。 今回示されたように「いい人そうだ」が直感 的な文脈で適切になるのだとすれば、日本語教 育においてはこれを誤用とみなし扱わないの ではなく、何らかの形で導入を試みるべきでは ないだろうか。本研究は学習者の数が不十分で あった点、彼らの自然度の評価がどの程度の理 解に基づくものなのか判断できない点で問題 も多かった注6。これらは今後の課題としたい。 注 注 1 「いい人そうだ」などのソウダの名詞接続について は宮口(2018)を参照されたい。 注 2 本研究は中部学院大学の倫理審査の承認を受けて いる。 注 3 日本人学生の出身地域は、岐阜(28 名)、愛知(2 名)、大阪・三重・福井・富山(各 1 名)である。 留学生の国籍は、中国(5 名)、ベトナム(4 名)、 フィリピン・キルギス(各 1 名)である。 注 4 この学生(岐阜出身)は、自然度の評価ではヨウダ とソウダを 1、ミタイダとラシイを 4 としていた。 注 5 ミタイダとラシイは名詞に直に接続してそれぞれ 比喩、典型の意味でよく使われることにも注意し ておきたい。ミタイダとラシイの回答が多いのは、 そうした知識から単に「いい人」という名詞につ られて選択している可能性も考えられる。 注 6 各形式に対する理解が不十分であったとすると、自 然度を評価するのは難しかったかもしれない。ソ ウダを高くつけている回答もあるが、これは「い い人そうだ」を知った上でそうしているのか、単 なる当てずっぽうなのかはその意味で判断し難い。 参考文献 寺村秀夫(1984)『日本語のシンタクスと意味 第 II 巻』 くろしお出版 宮口徹也(2018)「「いい人そうだ」の分析―統語的・ 意味的観点から―」『日本語教育』171 号, pp.1-16 取得級 ヨウダ ミタイダ ソウダ ラシイ A N1 3 4 2 1 B N1 4 4 1 1 C N2 2 4 3 3 D N2 2 4 3 4 E N2 1 4 3 1 F N1 2 3 2 4 G N2 3 2 3 4 H N2 1 3 3 4 I N2 3 2 4 4 J N2 3 2 2 3 K N2 3 3 3 3 平均 2.46 3.18 2.64 2.91 日本語教育方法研究会誌 Vol.26 No.2 -25-

表 1 自然度評価の平均(日本語母語話者 34 名)  ヨウダ  ミタイダ  ソウダ  ラシイ  1.91  2.41  3.88  1.59  表 1 にあるように、他の形式と比べてソウダの 平均値がとりわけ高いことがわかる。これらの 結果から上の文脈においてはやはり「いい人そ うだ」が最も自然な表現だといえそうである。   ここでソウダ以外の 3 形式を比べてみたい。 平均値を見るとミタイダが最も高く、順にヨウ ダ、ラシイが続くが、これは寺村(1984)の説 明とも一致する。寺村は、ヨウダはやや主観的

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