第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討第 5 章 Miller-PCCI 燃焼の運転領域拡大に関する検討
本章では,前章までに述べた
Miller-PCCI
燃焼をより負荷の高い条件において成立させ るための検討を実験と数値計算の両面から行い,この負荷域において排気後処理システム の負担を大幅に軽減する燃焼制御の方向性を明らかにする.それにより,本論文で提案した
Miller-PCCI
燃焼は,幅広いエンジン回転数,負荷率において,ディーゼルエンジンの排出ガスを低減しうることを明確にする.
5.1. 負荷の増大に伴い予混合燃焼が困難となる理由
本章では,前章までにその有用性を実証した
Miller-PCCI
燃焼をさらに負荷率の高い領 域に適用した場合について検討する.ここでは,前章において予混合型燃焼が成立した30%
程度の負荷率(燃料噴射量
20 mg/st.)から, 45%負荷率(30 mg/st.)まで燃料噴射量を徐々
に増加させることとした.このとき,エンジン回転数は乗用車用途として使用頻度の高い1800 rpm
に設定しており,多気筒機関の吸気条件を想定して,負荷の増大にあわせて過給圧を増加させ,同時に
EGR
率を低下させた.このうえで各燃料噴射量において,吸気バル30 34 38 42 45
Injection quantity mg/st.
E ff ec tiv e c o m pr e ss io n r a tio ε ef f Boost kPa(gauge) Cooled-EGR %
50 46 43 39 35
50 58 65 73 80
Engine load %
IV C deg. A T D C
-150
-130
-115 -107 -100
LI V C ( Lat e I n ta ke V a lv e C los in g)
Baseline Baseline
Lowering ε eff Lowering ε eff
1800 rpm, Inj.pres.:
160 MPa, MFB50%
=7deg.ATDC : Experimental points
図
5.1 Miller-PCCI
燃焼が成立する負荷領域拡大の検討のための実験条件第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討ブの閉弁時期を変化させて,有効圧縮比の変更を行った.横軸に負荷率(燃料噴射量),縦 軸に有効圧縮比をとって図
5.1
に実験条件を示す.圧縮行程の後期で閉弁するほど有効圧 縮比は低下するが,いずれの条件においても膨張比は一定としている.同図に示す黒色の プロットが各実験点である.いずれの条件においても燃料噴射圧は160 MPa
で一定とし,また,
MFB50%位置が上死点後 7 deg.ATDC
となるように燃料噴射時期を調整し,着火時期をそろえている.
0 2 4 6 8 10
In -cyl in de r pr ess u re M P a
0 50 100 150 200 250 300 350
R. H. R. J /d e g .
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In je ct o r cur rent
0 5 10
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
V a lv e lift m m
400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In -cyl in d e r t e m p er a tur e K
( ε
eff: lowered) LIVC
LIVC Slight
advance
1800 rpm 30 mg/st.
(45% Load)
図
5.2 負荷拡大に伴う予混合型燃焼の困難さ(1800 rpm, 45% load
(30.0 mg/st.),EGR35%,
Boost:80 kPa(gauge),P inj
:160 MPa,MFB50%:7 deg.ATDC)第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討45%負荷率(30 mg/st.)において有効圧縮比を変化させた 3
条件(図5.1
中の丸印)の燃焼特性を図
5.2
に示す.同図に示すように,LIVC
を行うと圧縮端の平均ガス温度は低下す るが,このような負荷を増加させた場合にはLIVC
によって可能となる燃料噴射時期の早 期化はわずかにとどまっていることがわかる.負荷を増加させると,過給圧および燃焼室 内壁温度が上昇するため,着火遅れの長期化が極めて困難になる.また,LIVC を行うと いったん筒内に導入したガスの一部を吸気ポートに押し戻すことになるため,燃料噴射量 が一定の本試験条件下では,有効圧縮比が低いほど空気過剰率λは減少することになる.したがって,排出ガス特性を評価する際には,
λと予混合時間τ mix
が重要な因子となること が予想される.燃料噴射量と有効圧縮比を変化させた図
5.1
の25
条件それぞれのIMEP
を図5.3
に示す.本節では,各条件における実験値をもとに,各種性能をマップ化して考察する.横軸の燃
E ff ec tiv e c o m pr e ss io n r a tio ε
effEf fe ct iv e c o m pr e ss io n r a tio ε
effBoost kPa(gauge) Cooled-EGR %
50 46 43 39 35 50 58 65 73 80
Injection quantity mg/st.
Injection quantity mg/st.
IMEP
Injection quantity mg/st.
τ
mix<0 τ
mix>0
λ IMEP kPa
Soot g/kWh
τ
mixdeg.
E ff ec tiv e c o m pr e ss io n r a tio ε
effEf fe ct iv e c o m pr e ss io n r a tio ε
effInjection quantity mg/st.
減
減 減
増 減 増
増 増
Mixing time τ mix Soot
Excess air ratio λ
図
5.3 負荷拡大に伴う Soot
の排出特性の変化(1800 rpm,P
inj
:160 MPa,MFB50%:7 deg.ATDC)第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討料噴射量の増加により,IMEPは
1100 kPa
まで増加している.同図中に等高線の向きを矢 印によって補足的に付記しており,緑の○印が図5.2
の3
条件に相当する.また,25条件 それぞれにおける空気過剰率λの変化を同図に示す.過給圧の増加とともにEGR
率を減少 させることにより,各有効圧縮比において燃料噴射量を増加させてもλはほぼ一定となり,また,いずれの燃料噴射量の場合にも有効圧縮比の低下に応じてλは
1
に近づく.さらに,予混合時間τ
mix
は,いずれの噴射量でも有効圧縮比の低下に伴い増加していくものの,負 荷の増加に伴って短くなるため,等τmix
ラインの向きは図5.3
において斜めになる傾向を示 した.なお,τmix =0
のラインを白い点線で付記している.このときの
Soot
の排出特性を図5.3
に示す.前章までに述べたように,燃料噴射量20
mg/st.付近の低負荷においては,有効圧縮比を低下させるとλは小さくなるものの,τ mix
が増加することによって予混合化が促進することが支配的な因子となり,
Soot
は減少する傾 向を示す.燃料噴射量25 mg/st.の条件では,有効圧縮比を低下させるといったん Soot
は増 加した後,低減する傾向を示すようになり,さらに燃料噴射量30 mg/st.の場合には,Soot
は終始増加傾向となった.したがって,燃料噴射量30 mg/st.の場合では有効圧縮比低減の
メリットはないことが示唆された.仮に,Sootの排出が抜本的に低減するまで有効圧縮比 を下げることを考えると,有効圧縮比を8
程度にしなくてはならない可能性があることが 予想される.燃料噴射量
30 mg/st.(45%負荷率)において,有効圧縮比を低下させても Soot
が低減し なかったメカニズムを考察する.図5.2
に示したように,負荷を増加させた場合には有効 圧縮比を低下させても,顕著に着火遅れが長期化しない.それゆえ,有効圧縮比の低下に 伴うλの低下が支配因子となって,Soot の増加につながったものと考えられる.これが,有効圧縮比を低下させても
Soot
が低減しなかった原因であると推察される.その証拠に,τ mix <0
となり拡散燃焼が主体となる領域では,Soot
の等排出量線の向きが横になっており,有効圧縮比の低下とともに
Soot
が増加していることから,Sootの排出が空気過剰率λと強 い相関があることがわかる.したがって,拡散燃焼が主体となってしまう場合(τmix <0)
では,あえて有効圧縮比を低下させずに,λを高く保つことが
Soot
を低減する上で重要と なることが示唆された.一方,各燃料噴射量に対しτ
mix >0
の予混合燃焼領域に存在する各実験点において,Soot の排出をさらに低減するためには,有効圧縮比を低下させてτmix
を増加させる必要がある.例えば,図
5.3
右上に赤丸で示した燃料噴射量25 mg/st.における 2
条件は,同じ等排出量第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討Injection quantity mg/st.
Ef fe ct iv e c o mpr e ss io n ra tio ε
effBoost kPa(gauge) Cooled-EGR %
50 46 43 39 35 50 58 65 73 80
Injection quantity mg/st.
In.O 2
In.O
2vol.%
NOx g/kWh
Ef fe ct iv e c o mpr e ss io n ra tio ε
effNOx <50 ppm
図
5.4 負荷拡大に伴う NOx
の排出特性の変化(1800 rpm,P
inj
:160 MPa,MFB50%:7 deg.ATDC)線上にあるため
Soot
の排出量は同じであるが,拡散燃焼条件(有効圧縮比14
付近の赤丸)の
Soot
排出を改善するためには有効圧縮比を高く設定してλを大きくすることがSoot
の低 減につながり,一方で予混合燃焼条件(有効圧縮比11.5
付近の赤丸)のSoot
排出を改善 するためにはさらに予混合時間を長期化する必要がある.以上のように,燃焼形態が拡散燃焼か予混合燃焼かによって
Soot
の排出を支配する因子 が大きく異なることを明らかにした.予混合型燃焼の領域,すなわちτmix >0
の領域におい ては,予混合時間を増加させることがSoot
の低減につながるが,高負荷側(例えば燃料噴射量
30 mg/st.)では,有効圧縮比を低下させてもτ mix
を得ることがそもそも困難であり,拡散燃焼条件でλが低下するため,Sootは増加したものと考えられる.
このときの各条件に対する
NOx
の排出特性と吸気酸素濃度を図5.4
に示す.NOx
に関し ては,いずれの燃料噴射量条件においても,有効圧縮比を低下させることで低減する傾向 を示す.NOx
の排出特性は,同図に示すように吸気酸素濃度と強い相関をもつことがわか る.33%負荷率と 45%負荷率それぞれの場合に対し,有効圧縮比を低下させた際の排出ガス
特性の変化を図
5.5
に示す.これまで述べたとおり,低負荷の場合には,EGRとLIVC
の 組み合わせにより着火遅れが長期化し,NOx とSoot
の大幅な同時低減が可能となった.しかしながら,負荷を増加させると,過給圧および燃焼室内壁温度が上昇するために着火 遅れの長期化が極めて困難になり,
LIVC
によるNOx
の低減効果は有するもののSoot
は逆 に大幅に増加する.これは,予混合時間の長期化によるSoot
の抑制効果よりも空気量が低第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討下する効果が支配的となり,Sootは大幅に増加したと考えられる.
ここで,45%負荷率(燃料噴射量
30 mg/st.)の低有効圧縮比の条件における筒内の燃焼
現象を明確化するため,図5.5
において有効圧縮比を10.5
とした場合にSoot
の排出が低減 した燃料噴射量21.5 mg/st.の条件と Soot
の排出が増加した30.0 mg/st.の 2
条件を比較する.それらの実験条件を表
5.1
に,燃焼特性を図5.6
に示す.図5.6
には,KIVA3Vを用いた数 値計算の予測結果も付記した.この場合においても,計算によって実験で得られた指圧,熱発生率が概ね再現できている.なお,これらの計算において使用した噴霧,燃焼モデル の定数は前章と同様に一定である.また,数値計算の開始は,吸気バルブが閉じた瞬間の クランク角度とし,吸気ガス組成および初期圧力は実験値をもとに与えた.
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
0 0.2 0.4 0.6 0.8
NOx g/kWh
Sm ok e g/ kW h
LIVC
LIVC: ε eff =10.5
30 mg/st.
1800 rpm
21.5 mg/st.
S oot g/ kW h
EGR40%
EGR35%
図
5.5 負荷の増大に伴い困難となる NOx
とSoot
の同時低減(実験結果)(1800 rpm,MFB50%:7 deg.ATDC,P
inj
:160 MPa,LIVC:εeff =10.5)
33% load(Fueling: 21.5 mg/st.,Boost: 50 kPa(gauge),EGR40%)
45% load(Fueling: 30 mg/st.,Boost: 80 kPa(gauge)
,EGR35%)第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討表
5.1 Miller-PCCI
燃焼の中負荷域への適用-9.1 -14.0
Fuel injection timing deg.ATDC (Adjust MFB50% at 7deg.ATDC)
370 35 30 (45)
80
Cylinder wall, head and cavity 550 wall temp K
Initial temperature at IVC K Initial gas
composition at IVC (Calc.start)
13.7 12.6
O
2vol.%
4.38 5.05
CO
2vol.%
Excess air ratio λ 1.2
81.9 82.4
N
2vol.%
145 Fuel spray cone angle deg.
40 Cooled-EGR rate %
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
12.5 10.5
Fuel injection duration deg.
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
363 10.5 (-100) : LIVC Effective compression ratio ε
eff(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
1800 Engine speed rpm
with VVT
b) 30 mg/st.
a) 21.5 mg/st.
-9.1 -14.0
Fuel injection timing deg.ATDC (Adjust MFB50% at 7deg.ATDC)
370 35 30 (45)
80
Cylinder wall, head and cavity 550 wall temp K
Initial temperature at IVC K Initial gas
composition at IVC (Calc.start)
13.7 12.6
O
2vol.%
4.38 5.05
CO
2vol.%
Excess air ratio λ 1.2
81.9 82.4
N
2vol.%
145 Fuel spray cone angle deg.
40 Cooled-EGR rate %
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
12.5 10.5
Fuel injection duration deg.
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
363 10.5 (-100) : LIVC Effective compression ratio ε
eff(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
1800 Engine speed rpm
with VVT
b) 30 mg/st.
a) 21.5 mg/st.
第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討0 2 4 6 8 10
In -c yl inder pr essur e M P a
0 50 100 150 200 250 300 350
R. H. R. J /d e g .
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In je ct o r cu rre n t
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
EGR: 40%
Boost: 50 kPa
EGR: 35%
Boost: 80 kPa Fueling: 30 mg/st.
(45% Load) Fueling : 21.5 mg/st.
(33% Load)
33% Load 45% Load
LIVC( ε
eff:10.5) : Calc.
図
5.6 低有効圧縮比の条件での負荷の増加が燃焼特性に及ぼす影響(MFB50%
:7deg.ATDC, P inj
:160 MPa, LIVC:εeff =10.5),33% load(Fueling:21.5 mg/st.,Boost:50 kPa
(gauge),EGR40%),45% load(Fueling:30 mg/st.,Boost:80 kPa(gauge),EGR35%)
上記の結果をもとに,各条件のシリンダ内の局所燃焼温度・当量比分布の履歴を図
5.7
に示した.前節で示した低負荷条件の場合は,EGRとLIVC
の併用により着火前に予混合 化を促進できており,φ-T
マップ上においてSoot
とNOx
の生成域をいずれも回避した燃焼 が可能となった.しかしながら,燃料噴射量30.0 mg/st.の条件では予混合時間が短く,い
まだ当量比が高い領域が燃焼室内に存在する中で着火しており,Soot
の生成域を通過して いることがわかる.Sootの酸化が期待できないEGR
条件であることから,Soot の酸化領 域を有効に利用することもできていない.これらが45%負荷率の条件において,EGR
とLIVC
を組み合わせてもSoot
の排出を抑制できなかった原因であると考えられる.第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al e nc e r a tio
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q uiv ale nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al e nc e r a tio
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q uiv ale nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q uiv ale nc e ra ti o
φSOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOToxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation 600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al e nc e r a tio
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al e nc e r a tio
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q uiv ale nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q uiv ale nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al e nc e r a tio
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al e nc e r a tio
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q uiv ale nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q uiv ale nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q uiv ale nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q uiv ale nc e ra ti o
φSOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOToxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation
3 deg.ATDC 5 deg.ATDC 7 deg.ATDC 9 deg.ATDC 15 deg.ATDC
Premixed
Low temp.
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al en ce r at io
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q ui va le nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al en ce r at io
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q ui va le nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q ui va le nc e ra ti o
φSOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOToxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation 600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al en ce r at io
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al en ce r at io
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q ui va le nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q ui va le nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al en ce r at io
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
Equiv al en ce r at io
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q ui va le nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q ui va le nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q ui va le nc e ra ti o
φ600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K
54 3 2 1 0
E q ui va le nc e ra ti o
φSOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOToxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation
混ざらずに着火(当量比が高い領域が燃焼室内に存在する中で,燃焼温度の高いセルが存在し始めている) 着火前に当量比が2.5以下まで混合(局所的にも当量比の高い領域はない)
SOOT oxidation rate dM/dt Slow Fast SOOT oxidation rate dM/dt Slow Fast
b) Fueling: 30.0 mg/st. (EGR35%+LIVC, Inj.timing: -9.1 deg.ATDC, Boost: 80 kPa(gage)) a) Fueling: 21.5 mg/st. (EGR40%+LIVC, Inj.timing: -14.0 deg.ATDC, Boost: 50 kPa(gage))
図
5.7 シリンダ内の局所燃焼温度・当量比分布の時間履歴(MFB50%:7 deg.ATDC, P inj
:160 MPa, LIVC
:ε eff =10.5)
,33% load
(Fueling:21.5 mg/st., Boost
:50 kPa
(gauge),EGR40%),
45% load(Fueling:30 mg/st.,Boost:80 kPa(gauge),EGR35%)
以上より,45%負荷率(燃料噴射量
30 mg/st.)では,LIVC
による有効圧縮比の低下に伴 いNOx
の低減は可能となるものの,Soot は逆に増加してしまうことになる.そのトレー ドオフ関係を図5.8
の赤い四角枠内に示す.ここで,その中の条件に対し,過給圧を増加 させることを試みた.図5.8
には,横軸を過給圧とし,縦軸にSoot,NOx
の排出量および 空気過剰率λと予混合時間τmix
をとって示す.過給圧を増加させると,λが増加するととも にτmix
は減少し,拡散燃焼が主体となることがわかる.これまで述べたように,拡散燃焼 条件ではSoot
の排出がλと強い相関を有するために,ここでもλの増加に伴い,Soot は減 少する傾向を示した.しかしながら,過給圧を110 kPa(gauge)まで増加させても Soot
を 抜本的に低減することはできず,一方で,過給圧の増加に伴ってNOx
は増加するため,NOx
とSoot
の大幅な同時低減には一層の高過給・高EGR
率化が求められることになる.したがって,過給圧の増加を併用し拡散燃焼条件で燃焼改善をねらうことを前提とせずに,
これまで検討してきたような多気筒機関において得られる妥当な過給圧を用いたうえで,
高負荷側において予混合型の
Miller-PCCI
燃焼を実現する方法の検討が必要である.第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
60 80 100 120
Boost kPa(gage)
Sm o ke g/ kW h
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
N O x g /kW h
1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8
60 80 100 120
Boost kPa(gage) Excess a ir r a tio λ
-3.5 -3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0
Mi xi n g ti m e τ
mixde g.
Base Base
So o t g/ kW h NO x g/ kW h E xce ss a ir ra tio λ Mi xi ng ti m e τ
mixde g.
ε
eff↓ ε
eff↓
ε
eff↓ ε
eff↓
Boost up Boost up
(gauge) (gauge)
図
5.8 過給圧の増加によって拡散燃焼を改善することによる Soot
の低減方針(1800 rpm,45% load
(Fueling: 30.0 mg/st.),EGR35%, P inj
:160 MPa, ε eff =13.4, MFB50%: 7 deg.ATDC)
そこで,これまでに検討してきた
45%負荷率(燃料噴射量 30 mg/st.)の条件を対象として,空
気量を減らさずに圧縮後のガス温度を下げ,予混合時間τ
mixを長期化する方法について検討した.ここでは,
LIVC
を行った場合(①)に加え,図5.9
に示すように,いったん吸気弁が閉弁した後 に再び開閉弁動作を加えた場合(②IVO),吸気弁が閉弁した後に排気弁を動作させた場合(③
EVO)の 3
条件の比較を行った.それら①~③の燃焼特性を図5.9
に,排出ガス特性を図5.10
にそれぞれ示す.それぞれの閉弁時期は同一であり,有効圧縮比を
10.5
にそろえた.②IVOでは,①
LIVC
に比べて圧縮行程中の筒内圧力が高いため,動作ガスの減少が少ない.そのため,空気量 を増加させたうえで予混合時間が確保され,図5.10
のようにSoot
は減少した(①→②).③EVO においては,吸気のCO 2
濃度を他の2
条件と同一に設定することでEGR
率を同等としているが,図
5.9
に示すように圧縮行程の筒内圧力が高く,燃焼に使われるガス量が他の条件に比べて多い.したがって,図
5.10
に示すようにSoot
は低減する傾向を示す(②→③).しかしながら,Soot
は一層の低減が求められるレベルであり,このときNOx
の増加も認められる.第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討-30 -20 -10 0 10 20 30 40
Crank angle deg.ATDC In je ct o r cur ren t
③EVO ②IVO
①LIVC
0 2 4 6 8 10 12
In -cyl in d e r pr essur e M P a
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
R. H. R. J /d e g .
0 5 10
V a lv e lif t m m
0 5 10
V a lv e li ft m m
0 5 10
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
V a lv e lif t m m Valv e lift
①LIVC
②IVO
Intake stroke ③EVO
Compression stroke
図
5.9 空気量を減らさずに圧縮端温度を下げる方法の検討( 1800 rpm,45% load(Fueling: 30.0 mg/st.),EGR35%, Boost: 80 kPa( gauge),P inj
:160 MPa, ε eff =10.5)
0.5 1 1.5 2
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε
effdP/ d ξ
maxM P a/ de g.
160 210 260
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε eff
IS F C g /k W h
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε
effN O x g /kW h
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε
effSmo ke g /k W h
0.5 1 1.5 2
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε
effdP/ d ♦
maxM P a/ de g.
0.5 1 1.5 2
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε
effdP/ d ♦
maxM P a/ de g.
160 210 260
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε eff
IS F C g /k W h
160 210 260
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε eff
IS F C g /k W h
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε
effN O x g /kW h
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
8 9 10 11 12 13 14 15 Effective compression ratio ε
effSmo ke g /k W h
1800 rpm 30 mg/st.
EGR35%
LIVC IVO
EVO
LIVC IVO
EVO Valve Closing
timing retard
③
②
①
④ Soo t g/ kW h dP/ d θ
max図
5.10 有効圧縮比の低下によるエミッションの低減
(1800 rpm,
45% load( Fueling: 30.0 mg/st.),EGR35%, Boost: 80 kPa(gauge),P inj
:160 MPa)
第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討LIVC
により有効圧縮比を10.5
とした条件(①)では,空気過剰率が低下しており,こ れ以上の低圧縮比化は燃費の悪化を招く.そこで,空気量が低減しにくい③EVOの条件に 対してその開弁期間を増加させることで,圧縮端温度をさらに低温化することを試みた(④).
EVO
量の増加に伴う燃焼特性の変化を図5.11
に,排出ガス特性を図5.10
にそれぞ れ示す.④EVOでは有効圧縮比の大幅な低下が実現したことにより,③に比べて空気量は 減少するものの予混合化が促進したために,Soot は減少する傾向を示した (図5.10,③
→④).しかしながら,抜本的な
Soot
の低減にはつながっておらず,さらに④では急峻な 筒内圧力上昇率を有しているため,これによって発生する燃焼騒音の低減対策が必要とな る.-30 -20 -10 0 10 20 30 40
Crank angle deg.ATDC In je ct o r cu rr e n t 0
2 4 6 8 10 12
In -c yl in d e r p re ss u re M P a
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
R. H. R. J /de g.
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
V a lv e lift m m
Intake stroke Compression stroke
③EVO
④EVO (ε
eff=10.5)
(ε
eff=8.5)
EVO
図
5.11 圧縮中排気バルブ開け(EVO during compression stroke)による低圧縮比高膨張比
燃焼(1800 rpm,45% load(Fueling: 30.0 mg/st.),EGR35%,Boost: 80 kPa(gauge),Pinj
:160 MPa)
5.2. 中負荷での Miller-PCCI 燃焼の実現
これまでの検討結果をふまえ,45%負荷率での予混合型の燃焼の成立に向けて,膨張行程中の 筒内温度低下を予混合時間の長期化に利用することを試みた.実験条件を表
5.2
に示す.前節と同第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討様の
45%負荷率(燃料噴射量 30 mg/st.)の条件において,噴射時期を遅角化し高圧噴射(HPLI: High Pressure Late Injection)した場合をベースラインに設定し,同時に噴射時期を固定したまま LIVC
を行った条件および吸気弁が閉弁した後に排気弁を動作させる(EVO)ことにより有効圧縮比を 大幅に低下させた条件をそれぞれ検討した.これら3
条件の燃焼特性を図5.12
に示す.同図に示 すように,膨張行程中の筒内温度低下および有効圧縮比の制御による圧縮端のガス温度の低減効 果により,有効圧縮比を低下させた2
条件ではベースラインと比較して熱発生率の重心位置が遅 角化した.着火時期に関しては,低圧縮比化の有無によらず大きな差異はないが,熱発生率がピ ークを示すまでの間で燃焼が緩慢となる傾向を示す.このとき,有効圧縮比を低下させた2
条件(
IMEP: 1.04 MPa)では,最大圧力上昇率は 0.66 MPa/deg.であり,燃焼騒音も大幅に抑制された.
表
5.2 Miller-PCCI
燃焼が成立する負荷領域の拡大に向けた検討13.4 (-130) with VVT
12.5 Fuel injection duration deg.
Cylinder wall, head and cavity 550 wall temp K
Initial temperature at IVC K Initial gas
composition at IVC (Calc.start)
15.1 14.9
15.5 O
2vol.%
3.75 3.8
3.46 CO
2vol.%
81.2 81.3
81.0 N
2vol.%
145 Fuel spray cone angle deg.
35 Cooled-EGR rate %
Intake and exhaust gas 80 pressure kPa(gauge)
1.75 -1.25
1.75 Fuel injection timing deg.ATDC
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
349 384
338
9.8 (-94) 14.6
(-150) Effective compression ratio ε
eff(IVC timing deg.ATDC)
30 (45) Fuel quantity mg/st.(Load %)
1800 Engine speed rpm
w/o VVT
c) LIVC b) EVO
a) Baseline
13.4 (-130) with VVT
12.5 Fuel injection duration deg.
Cylinder wall, head and cavity 550 wall temp K
Initial temperature at IVC K Initial gas
composition at IVC (Calc.start)
15.1 14.9
15.5 O
2vol.%
3.75 3.8
3.46 CO
2vol.%
81.2 81.3
81.0 N
2vol.%
145 Fuel spray cone angle deg.
35 Cooled-EGR rate %
Intake and exhaust gas 80 pressure kPa(gauge)
1.75 -1.25
1.75 Fuel injection timing deg.ATDC
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
349 384
338
9.8 (-94) 14.6
(-150) Effective compression ratio ε
eff(IVC timing deg.ATDC)
30 (45) Fuel quantity mg/st.(Load %)
1800 Engine speed rpm
w/o VVT
c) LIVC b) EVO
a) Baseline
第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討0 2 4 6 8 10
In -cyl inder pr essur e M P a
0 50 100 150 200 250 300 350
R .H .R . J/ deg.
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In je ct o r cu rre n t
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
LIVC EVO
Baseline
LIVC(ε
eff=13.5)
EVO( ε
eff=9.8) Baseline
V alv e li ft
EVO Baseline LIVC IMEP:
1.04 MPa
図
5.12 低有効圧縮比制御と燃料噴射時期の遅角化(HPLI:High Pressure Late Injection)
による着火遅れの長期化と圧力上昇率の低減(1800 rpm,
45% load
(Fueling:30.0 mg/st.),EGR35%,Boost:80 kPa(gauge),P inj
:160 MPa)これら
3
条件の諸特性を図5.13
に示す.いずれの条件においてもEGR
を行うことで燃 焼温度が低下し,NOx の大幅な低減が可能となる反面,ベースライン条件ではSoot
の排 出が顕著である.これに対し,EGR
を同様に行った上でLIVC
あるいはEVO
の低圧縮比,高膨張比制御を加えることにより,
NOx
の排出をベースラインと比較して低く抑えたうえ でSoot
の大幅な低減が可能となった.このとき,燃焼が遅角化したことにより,ベースラ インから約3.5%の図示燃費の悪化を伴ったものの,その悪化を最小限に抑制している.ま
た,EVOの場合は,LIVCと比較して排気温度が低下する傾向を示した.これは,筒内を 吹き抜ける新気により排気管のガスが希釈されるためと考えられ,EVO
の排出ガス流量は ベースラインと同等となる.第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討0.162
0.027 0.032 0
0.05 0.1 0.15 0.2
Sm ok e g/ kW h
193.0
199.7 199.9
170 180 190 200 210 220
IS F C g /k W h
405 402
437
380 400 420 440 460
E x.te m p . d e g .C
Baseline EVO LIVC Baseline EVO LIVC
0.89
0.66 0.66 0.5
0.7 0.9 1.1 1.3
dP/ d θ M P a/ de g.
1075
1041 1043
950 1000 1050 1100 1150
IM E P k P a
Baseline EVO LIVC 0.458
0.302 0.408 0
0.5 1 1.5
N O x g/ kW h
So ot g/ kW h dP /d θ
maxM P a/ de g.
図
5.13 低有効圧縮比制御と燃料噴射時期の遅角化(HPLI: High Pressure Late Injection)の組み合
わせによる排出ガス低減(1800 rpm,45% load(Fueling: 30.0 mg/st.),EGR35%, Boost:80 kPa
(
gauge),P inj
:160 MPa)ここで,これら
3
条件を対象として,KIVA3Vにより数値計算を行った際の筒内平均圧 力,熱発生率のシミュレーション結果を実験値と比較して図5.14
に示す.3条件とも,実 験で得られた着火時期およびその後の燃焼過程が概ね再現できている.このうえで,筒内 の各計算セルが有する燃焼温度・当量比のφ-Tマップ上での履歴を図5.15
に示す.この数 値解析結果をもとに,NOx
とSoot
の大幅な同時低減が可能となったMiller-PCCI
燃焼条件 の筒内現象をベースライン条件と比較した.ベースライン条件では,着火前の予混合化が 不十分であり,Sootの生成域を含む燃焼となっている.一方,LIVC
あるいはEVO
の低圧 縮比,高膨張比制御を加えたMiller-PCCI
燃焼では,EGRとの組み合わせにより燃焼温度 が低温化しNOx
の生成域を避けたうえで,着火前の予混合化の促進により,燃焼期間中の 混合気に局所的に含まれる高当量比・高温域が回避され,Sootの生成域を回避した燃焼と なっている.これにより,NOxとSoot
の排出が大幅に低減したものと考えられる.このように,
45%負荷率の条件においても,膨張行程中の筒内温度の低下を利用すると,
前章までに示した
Miller-PCCI
燃焼と同様のメカニズムによって,NOxとSoot
の排出を低 減することができることを明らかにした.第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討0 2 4 6 8 10
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In -cyl inder p ressur e M P a
0 50 100 150 200 250 300 350
R .H .R . J/ deg.
0 2 4 6 8 10
In -cyl inder pr ess u re M P a
0 50 100 150 200 250 300 350
R. H. R. J /d e g .
Exp.
Exp.+Cal.
Baseline LIVC EVO
図
5.14
実験結果とKIVA3V
による計算結果の比較(1800 rpm,45% load
(Fueling:30.0 mg/st.),
EGR35%,Boost:80 kPa(gauge),P inj
:160 MPa)第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討a) EGR35%: Baseline (Inj.timing: 1.8 deg.ATDC)
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation 600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratioφ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratioφ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
oxidationSOOT SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation 600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratioφ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratioφ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratioφ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratioφ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
oxidationSOOT SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation 600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
oxidationSOOT SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation 600 1000 1400 1800 2200 2600 3000
Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
600 1000 1400 1800 2200 2600 3000 Combustion temperature K 5
4 3 2 1 0
Equivalence ratio φ
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
SOOT NOx SOOT
NOx
oxidationSOOT SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation SOOT
oxidation
c) EGR35%+LIVC; Miller-PCCI (Inj.timing: 1.8 deg.ATDC) b) EGR35%+EVO; Miller-PCCI (Inj.timing: -1.3 deg.ATDC)
11 deg.ATDC 13 deg.ATDC 15 deg.ATDC 17 deg.ATDC 23 deg.ATDC
¾有効圧縮比の低減により,着火前に混合気の当量比がφ=2以下まで減少した後で燃焼が起こる.⇒SootとNOxの排出抑制 SOOT oxidation rate dM/dt
Slow Fast SOOT oxidation rate dM/dt Slow Fast Miller-PCCI
図
5.15 シリンダ内の局所燃焼温度・当量比分布の時間履歴(1800 rpm, 45% load
(Fueling:30.0 mg/st.)
,EGR35%,Boost:80 kPa(gauge),Pinj
:160 MPa)上記の結果をふまえ,
1800 rpm, 45%負荷率(燃料噴射量 30 mg/st.)において,多量 EGR
によって増加したSoot
を低減するための方向性を図5.16
にまとめた.同図に示すように,EGR
を用いてNOx
を低減した条件下でLIVC
とHPLI
を組み合わせることにより,燃焼の 遅角化するぶん燃費の悪化は伴うものの,NOx,Soot,燃焼騒音の同時低減が可能となる ことを明らかにした.したがって,本燃焼法Miller-PCCI
燃焼は,NOxの低減は可能とな るものの従来は適用が見送られてきた多量EGr
条件下におけるSoot
の大幅な低減法を示唆 するものである.第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討0.5 0.7 0.9 1.1 1.3
0.1 1 10
NOx g/kWh dP/ d η
maxM P a/ de g.
0.5 0.7 0.9 1.1 1.3
0.1 1 10
NOx g/kWh dP/ d ∪
maxM P a/ de g.
160 180 200 220 240
0.1 1 10
NOx g/kWh
IS F C g /k W h
160 180 200 220 240
0.1 1 10
NOx g/kWh
IS F C g /k W h
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
0.1 1 10
NOx g/kWh
S m oke g /kW h
LIVC EGR increase
10 0%
20 30 35%
40%
+HPLI Soot g/kW h dP/d θ
max図
5.16 EGR
によって増加したSoot
の低減(1800 rpm,45% load(Fueling:30.0 mg/st.),Boost:80 kPa(gauge),P
inj
:160 MPa)図
5.16
に示したHPLI
を組み合わせたMiller-PCCI
燃焼の成立範囲を調査するために,有効圧縮比と燃焼質量割合
50%(MFB50%)位置を変化させた実験を行った.その試験条
件を図5.17
にマップとして示す.同図においては,横軸にMFB50%位置をとり,縦軸には
図5.3, 5.4
と同様に有効圧縮比をとっており,黒点で表す計20
条件の実験を行った.この とき,有効圧縮比はLIVC
によって低下させている.図5.3, 5.4
における燃料噴射量30 mg/st.
の条件は
MFB50%位置をいずれも上死点後 7deg.に制御していたため,図 5.13
における左端の条件が図
5.3,5.4
の右端の条件と同じ結果となる.この条件から燃料の噴射時期のみ を遅角化することで,MFB50%位置を遅角化した.第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討Ef fe ct iv e c o m pr e ss io n r a tio ε ef f
MFB50% deg.ATDC 1800 rpm, Boost: 80 kPa(gauge) EGR: 35%, Inj. pres.:160 MPa
Baseline Baseline
Fuel injection timing: Retard Fuel injection timing: Retard
図
5.17 低圧縮比高膨張比燃焼において NOx
とSoot
が同時低減した理由を調査するための実験条件
このときの予混合時間
τ mix
と空気過剰率λを図5.18
にそれぞれ示す.MFB50%を7 deg.ATDC
とした場合には,有効圧縮比11
以上の全域で拡散燃焼(τmix <0)であったが,
MFB50%が遅角化した領域かつ有効圧縮比の低い領域でτ mix
が正の領域が現れた.λに関し
ては,図
5.3
と同様に等高線は横向きとなり,有効圧縮比の低下に伴い減少する傾向とな る.このときの
Soot
の排出特性を図5.18
に示す.これまで述べてきたように,拡散燃焼領 域でのSoot
の排出特性はλに依存する.しかしながら,この特徴はMFB50%位置が 10
deg.ATDC
までの領域で顕著に認められ,その後に関しては,MFB50%位置を遅角するにつ
れて
Soot
の等排出量線の向きが縦になり,λに依存しなくなる傾向が認められ,MFB50%位置を遅角化するほど
Soot
は低減した.また,予混合燃焼領域(τmix >0)においては,こ
れまで示したように,τmix
が長期化するほどSoot
は低減するが,MFB50%位置が10
deg.ATDC 以降では,τ mix
が長期化するほどSoot
が低減するわけではないことがわかる.すなわち,いずれの有効圧縮比においても,
MFB50%位置が遅角化するほど Soot
が低減す る傾向を示した.■
■
■
第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討MFB50% deg.ATDC τ
mix<0
τ
mix>0
Effe cti ve com p re ssio n ra tio ε
effMFB50% deg.ATDC MFB50% deg.ATDC
λ
τ
mix>0 Excess air ratio
Diffusion
Premixed
Mixing time τ mix τ
mixdeg. λ Soot g/kWh
Soot
Effe cti ve com p re ssio n ra tio ε
effEffe cti ve com p re ssio n ra tio ε
effA
C B
図
5.18 LIVC
とHPLI
による予混合型燃焼領域の拡大(1800 rpm,45% load
(Fueling:30.0 mg/st.),EGR35%,Boost:80 kPa(gauge),P inj
:160 MPa)これまでの検討から,図
5.18(A)の領域では依然として拡散燃焼条件下でλが Soot
の 生成に対し支配的な因子となっているものの,図5.18(B)の領域では拡散燃焼でありな
がらSoot
の排出がλに依存しなくなっている.さらに,図5.18(C)の領域は,予混合型
の燃焼となる領域でありながら,Soot の排出にとってτmix
が支配因子ではない領域といえ る.このことから,図5.18(B)と(C)の領域では,Soot
の生成が局所の当量比を決定し うる因子のひとつであるλやτmix
に依存していないことがわかる.したがって,MFB50%位 置が20 deg.ATDC
となる領域でSoot
が大幅に低減した理由としては,Soot
の等排出量線の 向きが縦であることから,横軸のMFB50%の遅角化に伴う燃焼温度の低下が Soot
の低減 に少なからず寄与したものと考えられる.ただし,Soot
の排出が大幅に低減する条件はτmix
>0
の領域のみに存在している.したがって,Soot
の排出を低減するためには少なくともτmix
>0
の予混合型燃焼とすることが必要で,その上で燃焼温度を低温化させることが中負荷以上の領域において
Soot
を低減するために重要な条件であることが示唆される.第
5
章Miller-PCCI
燃焼の運転領域拡大に向けた検討<50 ppm
Injection quantity mg/st.
E ffecti ve compr essi on ra tio ε
effNOx
Injection quantity mg/st.
E ffecti ve compr essi on ra tio ε
effBoost kPa(gage)
Cooled-EGR %
50 46 43 39 35
50 58 65 73 80
50 56 63 69 75
Engine load %
IV C d eg .A T DC
-150
-130
-115 -107 -100
τ
mix<0 τ
mix>0
Soot
MFB50% deg.ATDC MFB50% deg.ATDC
τ
mix>0 τ
mix<0
identical
Load Retard
Premixed
<60 ppm
図
5.19 負荷の拡大と 30 mg/st.条件での MFB50%位置の遅角化を行った際の Soot
とNOx
の排出特性(1800 rpm,Pinj
:160 MPa)上記の各条件に対する
Soot
とNOx
の排出特性を図5.19
にまるめる.同図の左側の2
つ が 横 軸 に 噴 射 量 を と っ て 負 荷 の 増 大 を 行 っ た 前 節 で 示 し た マ ッ プ (MFB50%=7 deg.ATDC:一定),右側 2
つが燃料噴射量30 mg/st.の条件で MFB50%を遅角化した前述の
マップである.これにより,燃料噴射量30 mg/st.では, MFB50%を 7 deg.ATDC
に維持して は予混合型のディーゼル燃焼とすることが極めて困難であったが,LIVC による有効圧縮 比の低下と燃料噴射時期の遅角化(HPLI)を組み合わせることにより,予混合型の燃焼と なる領域が現れたことになる.このとき,遅角側でNOx
に大きな変化は認められないが,予混合燃焼の領域(τ