渦と衝撃波の干渉によるスクラムジェット燃焼器の
混合/燃焼促進
著者
升谷 五郎
渦と衝撃波の干渉による
スクラムジェット燃焼器の混合/燃焼促進
課題番号 08455459 平成8年度∼平成10年度科学研究費補助金(基盤研究@)(2))研究成果報告書
平成11年3月研究代表者 升谷 五郎
(東北大学大学院工学研究科教授)は し が き 人工衛星や宇宙機の活動は、気象観測、通信、放送、資源探査、地球外天体探査、天文 観測などの面で日常的に利用され、また注目されている。しかし、更に広範な宇宙利用は 極めて高い宇宙空間への輸送コストにより著しく阻書されている。この状況を改善するた めに、再利用可能で安全性が高く、かつ整備・運用コストが低い宇宙輸送機の研究/開発 が各国で進められている。なかでも、空気吸い込みエンジンを利用した水平離着陸型の再 使用宇宙往還機(スペースプレーン)は、空気中の敢素を利用することによって機体に搭 載する酸化剤質量を大幅に削減でき、航空機型の安全でコストの低い整備・運用を可能に するものと期待されている。空気吸い込みエンジンの中でも最も広い飛行速度範囲で使用 可能なスクラムジェット(超音速燃焼ラムジェット)は、スペースプレーン実現の鍵とな る最も重要な技術と考えられている。 スクラムジェットで有効な推進仕事を得るために必要なエネルギーは、超音速気流中で の燃料(水素)の燃焼により発生される。燃焼を行う前提として、機体から供給される燃 料が大気から吸い込まれた空気と十分混合している必要がある。しかし、工学的に用いら れる混合の最も基本的な形態である二つの気流の速度差に基づく秀断力による乱流混合は、 エンジン作動範囲の低速側(マッハ4-10)では労断層発達に対する圧縮牲効果により、 高速側(マッハ12-16)では、水素と空気の速度差の減少により、それぞれ著しく遅くな る。現実的な長さで必要な燃焼効率を達成できる超音速燃焼器を実現するためには、燃料 と空気の混合を促進し、ひいては燃焼を促進する何らかの手段を講じる必要がある。この 混合/燃焼促進の手段として、燃料噴射孔数の増加や燃料噴射角度増加による音速距離増 大という基本的な方法の他に、共鳴現象や衝撃波入射による労断層の不安定励起、圧力場 と密度場の干渉による渦度発生、燃料流あるいは空気流への主流方向渦の導入等が提案さ れ、実験的及び数値的に調べられている。しかし、渦と衝撃波が共存する場合の混合/燃 焼促進効果について系統だった研究は行われていない。 一方、上記の混合促進方法は何らかの形で気流を乱し、損失を増大させる。スクラムジ ェットにおいては、損失の程度によっては燃焼効率の増加分を打ち消すおそれもあるが、 両者の得失を適切に評価する手法は確立されておらず、捜矢の増加と混合/燃焼促進のト レードオフの確たる指針は確立していない。 本研究は渦と衝撃波が共存する場合の混合/燃焼促進効果を系統的に調べることを目的 とし、まず促進効果の評価基準を確立し、渦と衝撃波が共存する代表的な流れ場の一つで ある非適正膨張状態の圧縮性旋回噴流の混合状態を実験的に調べた。本報告書はこれらの 研究の成果を取りまとめたもので、概要は以下の通りである。 はじめに、推進仕事に有効に活用できるエネルギーの発生と損失の評価法を確立した(研 究成果1 -4) 。研究成果1では、推力表示式に現れる形で損失を表す運動エネルギー効 率と熟発生を表す燃焼効率を結びつけた燃焼器性能パラメータを導入し、実験データから
同パラメータを求める手法を示した。また、空気取入れ口における損失が燃焼器性能パラ メータに及ぼす影響を調べた。研究成果2では、 2つの燃焼器の8種類の燃料噴射パター ンで得られた実験結果から燃焼器性能パラメータを求め噴射パターン、燃焼器長さ、ノズ ル部での反応凍結等の影響を明らかにした。研究成果引ま、上記2つの成果を取りまとめ、 最適燃焼器長さは燃焼効率のみで判定した場合に比べ半分以下になることを明らかにした。 研究成果4では、推力計算に必要な大気条件を与える際に、実験で使用した燃焼加熱空気 ではなく純空気を仮定すると、燃焼器性能評価に大きな誤差が生じる可能性を指摘した。 次に、渦と衝撃波が干渉する場合における、圧縮性噴流の混合の促進状況を実験的に調 べた(研究成果5-7) 。噴流のノズル亜音速部で旋回をかける`ことにより噴流自身に主 流方向渦を導入した。衝撃波は、噴流において最も容易に作り出されかつ頻繁に見られる ノズル出口圧力と周囲圧力が異なる非適正膨張状態で発生する波を用いた。研究成果5で は、ノズル出口マッハ数0.3, 1.0, 2.0の旋回なしの室温空気流を静止大気あるいは高温亜 音速空気流中に噴出し、混合の進行を調べた。非適正膨張状態の噴流に対して、従来の等 エントロピ膨張を仮定するのではなく噴流の推力一定として周囲圧力まで膨張させた状態 の速度、密度、マッハ数、噴流直径等を有効基準値として用いると、この場合の混合の進 行状態を適正膨張状態の噴流と同様に生理できることが分かった。研究成果6では2種類 の旋回羽根によりスワール数を0.23までの範囲で変化させた旋回噴流を静止大気中に噴出 したときの混合を調べた。スワール数の増加により混合は僅かに促進されること、渦と衝 撃波が干渉する非適正膨張状態の旋回噴流は、適正膨張状態に比べてポテンシャル・コア 領域が短縮するが発達領域では混合はむしろ緩やかになることが分かった。研究成果7で は平行に噴射された2つの超音速噴流の混合に及ぼす旋回の影響を可視化により調べた。 2つの噴流が合体し始める領域で旋回による混合促進効果が著しいこと、 2つの噴流の旋 回方向が逆の場合より同一の場合の方が混合が促進されることが分かった。 本研究を行うに当たって、種々の協力をして頂いた方々に謝意を表します。
研究組織
研究代表者:升 谷 五 郎 (東北大学大学院工学研究科教授) 研究分担者:滝 田 謙 一 (東北大学大学院工学研究科助手)研究経費
平成 8年度 平成 9年度 平成1 0年度 計 4, 800千円 1, 800千円 1, 200千円 7, 800千円研究発表
(1)学会誌等1・l G. Masuya, T. Uenolx), Y.Wakana, K. Kudo, A. Murakami,and T. Konuro,
``Performance Evaluation of Scramjet Conbustx)rs Using Khetic Energyand
Combustion EfficiencieS," Joumal afHopzLIsloD and Power,impress.
(2)口頭発表 2・1升谷五郎,上本智-,若菜好宏ユ藤賢司,村上淳郎,小室智幸, 「単一のパラメータによ るスクラムジェット燃焼器性能評価」 ,第37回航空原動機・宇宙推進講演会講演集 (1997), pp. 160・165. 2・2上本智-,若菜好宏,升谷五郎ユ藤賢司,村上淳郎,小室智幸, 「燃料噴射形態の異なる 超音速燃焼器の性能評価」 ,日本航空宇宙学会北部支部1997年講演会および第7 回ラム/スクラムジェットシンポジウム講演論文集(1997), pp. 253・258.
2・3 G. Masuya, T. Uemoto, Y.Wakana, K. Kudo, A. Muraknmi, and T. Komuro,
"Performance Evaluation of Scramjet Combustors〝 , HoceeditZgS al T2zirteen地
Zntemational Symposl'um on Air BLleath'LZg EneZ'neens, Vol. 2, Chattanooga, TN, U.S.Aリ7・12 Sep. 1997, pp. 952・959. 2-4吉田征二,若菜好宏,升谷五郎,滝田謙一, 「超音速噴流の混合に対する周囲流条件の 影響」 ,日本航空宇宙学会北部支部1998年講演会および再使用ロケット/スペー スプレーンシンポジウム講演論文集(1998), pp. 61・66. 2・5吉田征二,加藤文昭,滝田謙一,升谷五郎, 「超音速噴流の混合に対する旋回の影響」 , 第39回航空原動機・宇宙推進講演会講演集(1999), pp. 30-35. (3)出版物 な し
研 究 成 果 目 次
1.単一のパラメータによるスクラムジェット燃焼器性能評価 2.燃料噴射形態の異なる超音速燃焼器の性能評価
3. Performance Evaluation of Scra皿jet CombustDr8
4. Performance Evaluation of Scra皿jet Combu81X)rs USingKinetic Energy
and Combustion Efficiencie8
5.超音速噴流の混合に対する周囲流条件の影響 6.超音速噴流の混合に対する旋回の影響 7.二つの圧縮牲旋回噴流の混合に関する研究 21 37 43 49
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