九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
中年期女性の運動経験が更年期症状に及ぼす影響
上田, 真寿美
Graduate School of Human-Environment Studies, Kyushu University
https://doi.org/10.11501/3180795
出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(人間環境学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
平成12年度博士論文
中年期女性の運動経験が更年期症状に及ぼす影響
九州大学大学院人間環境学研究科 行動システム専攻健康科学コース
平成10年度入学(3HE98044K)
上田真寿美
目 次
第1章 序論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1
1.本研究の意義・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 2.先行研究・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 41)更年期症状と運動に関する生理学的研究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5 2)更年期症状と運動に関する心理学的研究
3.本研究の目的・
8 10
第2章 更年期症状とその関連要因 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 11
1.更年期症状とは・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 12 1)更年期症状の定義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 12 2)更年期症状の種類 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 3)更年期症状の発症機序及び発症年齢 ・ . .
4)更年期症状の検査及び治療法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 18
2.更年期症状に影響する諸要因
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 211)身体的特性 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 21
2)性機能に関する特性
・ ・3)生活環境に関する特性
4)性格などの心理的特性5)ライフスタイルに関する特性 3.更年期症状と個人的特性の関連・ .
つμ qu A生 つμ りL のム
1)研究目的 2)研究方法 3)結果 4)考察 5)要約
FU nkU 06 n6 Qd ーよ り〆ω の〆u n/ω の/臼 η/u qべυ
31
第3章 ライフステージの運動経験と更年期症状の関連 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 33
1.研究目的 ・2.研究方法・ - 3.結果・ ・ ・
d4A ハhu ハ斗d ηべu n〈υ η「U
1)ライフステージの運動経験と閉経年齢 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 40 2)ライフステージにおける運動の有無や実施程度と更年期症状の関連 ・ 40 3)運動実施程度, 運動強度, 運動時間, 運動頻度及び運動量と
更年期症状の関連
4)運動種目と更年期症状の関連 ・ . . 5)運動の継続性と更年期症状の関連 ・ 4.考察・
5.要約・
円b 1ょ にυ ηi つU Aせ FhU
「D RU ρb
第4章 更年期の運動行動, 運動に対する態度友びQOLと更年期症状・ 63
1.研究目的 ・ ・2.研究方法・ - 3.結果・ ・
1) Kupperman指数とQOLの関連 2)運動行動とQOLの関連・ .
3)運動行動と運動に対する態度の関連 4.考察・
5.要約・
AHム にυ
ハU
ハV つω nJ 4A FO ハhU FO ηi ヴi ηi ηi けi ηi
第5章 更年期症状に対する運動の介入指導 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 77
1. 3か月の運動教室による更年期症状の変化・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 78 1)研究目的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 78
2)研究方法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 78
3)結果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 84(1)介入前後の運動群と非運動群の更年期症状 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
84 (2)介入前後の運動群と非運動群のQOL' . . . . . 85 (3)介入前後の運動群と非運動群の運動に対する態度 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 86 4)考察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 87 5)要約 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 89 2. インタピューによる事例研究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 90 1)研究目的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 902)研究方法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 90 3)事例報告
4)考察
92 105
(1)インタピューによる「発症要因」の分析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 105 (2)インタピューによる「更年期症状の知識や情報」の分析 ・ ・ ・ ・ 106 (3)インタピューによる「運動に関連した知識や情報」の分析 ・ ・ ・ 106 (4)インタピューによる「更年期症状の対処法Jの分析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 108 5)要約
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・.・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
109第6章 結論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 110
1.本研究の概要(目的, 方法) 2.本研究で得られた知見・ . .
3.更年期症状に対する予防 ・軽減の指針 ・ . 4.今後の課題・ ・ .
111
112
114
117
引用・参考文献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 118
資料・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 131
1.調査票・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1321)調査票(1)女性の性機能と運動についてのアンケート
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・132
2)調査票(2)女性の更年期症状と運動の実態についてのアンケート ・ ・ 140 2.運動教室の講義資料・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 146 3.公表論文・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 161第1章 序 :;:6
a間1.本研究の意義 2.先行研究
1)更年期症状と運動に関する生理学的研究 2)更年期症状と運動に関する心理学的研究 3.本研究の目的
1
1
.本研究の意義我が国では 高齢化社会への進行ととも に, 中年期以降の Quality of Life (QOL)の 重要性に対する関心が高まっ てきている. Q OLの向上には, より良い健康管理を行なうこ とによって, 加齢による身体の諸機能の低下をできるだけ抑え, なおかつ精神的にも健康 な状態を保つことが重要となる. 特に女性では, 中年期以降の健康上の大きな悩みの一つ に閉経前後の様々な不定愁訴 , いわゆる更年期症状があり , この世代のQOLを低下させる 可能性が指摘されている.
更年期症状は, 卵巣の老化による内分泌環境の変化に, 社会的 ・ 心理的ストレスが重な りあって発症するものと考えられている. 現在, 更年期症状の治療にはホルモン補充療法 が最も有効であるとされている. しかし, 乳がんのような副作用への懸念や糖尿病などの 特定の疾患を持っている者には禁忌であるなどの問題がある. さらに, 更年期症状は急激 な社会の変化とともに変容するライフスタイルにも原因があるという考え方から, カウン セリングや栄養 ・ 運動 ・ 休養などの生活習慣の改善を基盤とする非薬物的療法の本格的な 取り組みが始まりつつある. なかでも運動は, 身体面への生理作用と同時に心理面への影 響も知られており, 運動による不安, 緊張及び抑うつなどの軽減が報告されている. この ように, 運動の心身への効果を考えると, 運動には更年期症状の非薬物的療法のーっとし て, 多大な効果が期待できる. しかしながら, 一般的な現状としては「運動は良い」と勧
めているにすぎない段階であり, 運動の有効性や適切な運動プログラムについては未だ不 明な点が多い. また, 病院に行く程の症状ではないが何らかの不定愁訴を感じている, あ るいは病院に行っても薬物療法の処方を受ける程度ではないといった, 症状があるにも関 わらず何れの対処法もとっていない者が多く, 更年期が過ぎるのをじっと耐えて待つしか ないといった声も少なくない.
以上のことから, 本研究の主題である更年 期症状に及ぼす運動の影響について明らかに することは, 更年期症状の予防や軽減が期待でき, さらに は中年期女性のQOLの向上に も
2
貢献できるものと考えられる.
2. 先行研究
閉経前の女性は男性 に比較して心疾患な どの催患率が低い(川久保ら, 1994) . しか し, 閉経に伴う内分泌環境の変化, すな わち卵胞ホルモン(estrogen, 以下エストロゲ ンとする)の減少は心疾患(Dubbert and Martin, 1988)や骨粗穏症(水口, 1998;
水沼, 1996) のリスクを増加させる. これらに対する積極的な対策として運動が有効で あること(Bovens et al , 1993:川久保ら, 1994 ; Sinaki and Offord, 1988) が 明らかにされるにしたがい, 共通の原因によって発症する不定愁訴への効果も注目され始 めた. しかしながら, この分野の研究は未だ少なく(Dennerstein et al., 1993) 症状に及ぼす因子の複雑さや様々な研究方法論上の問題から必ずしも一致した見解が得ら
れていない (Wells, 1985) . すなわち, 多くの研究は, 男性や40歳以下の若い女性あ るいは60歳以上の高齢の女性を対象に運動の効果を 検討している. しかも トレーニン
グとしての短期間の運動の効果を検討している. これらの成果をひとまとめに運動の効果 といっても, 運動に は現在実施している運動, 過去 の経験として実施した運動及び過去か らの運動の継続性などが問題となる. 例えば, 過去 に運動経験のある者はない者より閉経 後の骨塩量が高い傾向にあるこ と(渡辺ら, 1992)は, 運動をいつ, どれくらい実施し たかがいかに重要であるかを示している. このように過去から現在の運動歴は, 更年期女 性の健康問題の一つである更年期症状にも影響を及ぼす可能性が考えられる. また, 更年 期女性を対象にする際には, その他の対象者と異なり, 特に年齢や月経状態を考慮する必 要がある. すなわち月経状態や更年期症状には加齢が関係し, 加齢そのものと関わる遺伝 的資質, 身体活動レベル, 食生活, 体重, 体脂肪率などの変数の変動をつねに包含してい る. さらに, 不定愁訴は名前のごとく症状の訴えが暖昧で症状が多岐にわたることと, 症 状を引き起こす要因には生理, 心理, 社会及び文化的なものまで含まれる(木村, 1998)
ため, 研究成果を解釈する際に年齢や月経状態の問題が常に伴い, 相違が生じやすい. こ こでは, これらの問題を考慮しつつ, 更年期症状と運動に関する先行研究について生理的
側面と心理的側面から検討した.
1
)更年期症状と運動に関する生理学的研究更年期症状の主たる要因が加齢による女性ホルモンの変化であることから, これまでの 更年期症状に対する運動の影響に関した研究は, 生理学的方面からアプローチしたものが ほとんどである. Kraemer et a1. (1995)は , 20歳代の女性を対象に運動後の血中エ ストロゲン値の上昇を報告している. また, 更年期女性においても中強度の運動実施によっ て血中エストラジオール(エストロゲンの主成分)が有意に増加したことが報告されてい る(Wallace et a1., 1982). し かしながら, 一過性の運動後ではエストロゲンや黄 体化ホ ル モ ン に 変 化 が み ら れ な か っ た と す る 報 告 も あり (Chearsku 1 and Srichantaap, 1994) , 運動と女性ホルモンの動態、の関連は現在のところ不明である.
表1・1に, 更 年期症状に対する 運動の影響に関する先行研究を示した. これまで, 更年 期症状に対する運動の効果は, 生活習慣や生活行動 ・ 生活態度の改善といった非薬物療法 の一部分として捉えて検討されたもの, あるいは高血圧などの生活習慣病の運動処方の研 究に付随して行なわれたものが多い.
杉山ら(1992 )は, スポーツによる身体活 動量とめ ま い, 全身倦怠, 憂う つ及び血管 運動神経様 症 状 の聞に 有 意な負の相関関係がみら れたこ と を 報 告 し て いる . ま た , Wi lber et a1. (1990)もレジャーによるエネルギー消費量が多い者で症状が低いこ と を認めている. 同様に , 奥津ら (1981)も更 年期症状に及ぼす生活環境要因の調査で ,
運動をしている者の症状はしていない者より低い傾向にあったと報告している.
一方, 現在の状況と並んで過去の生活習慣につ いての 検討では, 河野(1998)が30歳 代にスポーツをしていなかった者の更年期指数はそうでない者より有意に高く, 更年期症 状には更年期世代に入る前の身体活動も重要であることを示唆している. このように運動 を数ある生活習慣のーっとして捉えた研究では, 運動は更年期の不定愁訴の軽減に有効で
あり, 心身のリラックスとして作用すると推測できる. 実際の臨床現場でも更年期症状の 軽減を目的とした生活習慣の改善などの健康 ・ 栄養教育に, 運動に関する項目を含んでい る(菊池ら , 1997;増田と麻生, 1997;野地, 1996;田辺と麻生, 1998) . しかし , これらは運動に主眼を置いた研究でないため, 更年期症状の軽減に必要な運動様式や運動 量及びその継続性などの効果は述べられていない.
高血圧などの生活習慣病や骨粗繋症の予防に対する運動処方に付随した研究では, 進藤 ら(1976)が 中年期女性の体力に及ぼす低強 度の運動の影響を検討した際に更年期症状 について検討して いる. そこでは更年期症状を持つ41� 52 歳の女性6名を 対象に, 50
%
VOzmax相当の強度で1時間 持続する自転車運動を週3回, 10週間実施させ, その前後で形、、, 有酸素的作業 能及びKupperman指数を用いて更 年期症状 を比較した. その結果, 有 酸素的作業能や下肢の調整力の改善及び体重や皮脂厚の減少といった生理的指標の改善と
ともにKupperman 指数 も低下し, 更年期症状が軽減される傾向が認められた. 対象者が 少ないため, 統計的な処理はなされてないが, 頭痛や睡眠障害が改善さ れた者が4名, ま た月経周期や経血量の回復などの月経状態に変化が現れた者が3名いた . また川久保と本 木(1995)は, 40�60歳の女性35名を 対象に1回20分以上のウォーキングを週に3回以 上, 12週間実施 させ, その前後 でKupperman指数を調査した. その結果 , 12週間与えら れた運動を継続できた者(以下, 継続群)は途中で脱落した者(以下, 脱落群)と比較し て, 有意差はなか ったもののKupperman指数 の改善傾向がみられた. 特に血管運動神経 系症状(顔のほてり, 発?干 , 手足の冷え, 息切れ)では, 継続群は運動後に改善されてい たが, 脱落群では変化がみられなかった. 両者の報告は更年期症状のある者に運動を介入 し, 運動の有効性が認められた結果であるが, 対象者が 少ないために女性ホルモンの変化 と密接な関係がある月経状態を考慮した分析がなされていない
Hammer et al. (1990) は, 50�58歳の女性1388名(そのうち, 継続的運動者142 名, 非運動者1246名)を対象に, のぼせや多?干などの更年期症状を調査した. その結果,
継続的運動者は非運動者と比較して症状が有意に低く, また継続的運動者の中でも週当り の運動時間の長い者がより症状が低かったことを報告している. このように運動の効果は 血管運動神経系に多く認められている(Cumming and Wheer,1987) . 血管運動神経系
の代表的な症状の紅潮(hot flush)は , 視床下部の神経伝達物 質の活性の変動に影 響
され(Schurz
et al., 1988; Tepper et al., 1987) , 規則的な運動はこれらの活
性に影響すること が知られている(Cumming and Wheeler, 1987 ) . このようなメカニズムから運動は, 更年期症状の中でも血管運動神経系の 症状を軽減すると考えられてい る. しかしながら, 運動は神経伝達物質の動態に影響を与えるものの その運動強度は中 ・ 高強度である(Daniel et al., 1992)ため, 先行研究の低強度 運動における血管運 動 神経系症状のI怪減の理由がこれによるものとも言いきれない.
表1 -1 更年期症状に対する運動の影響に関する報告
著者 年齢 人数 方法 結果
Hammer el al. 50-58 1388規則的運動者と非運動者における, のぼせや多汗等の血管 規則的運動者は非運動者より症状が有意に低く, 運動者の中でも遡
(1990)
運動神経系症状を調査. 当りの運動時間の長い者がより症状が低かった川久保 本木 40-60 35 2ω子以上のウォーキングを週3回以上, 12週間笑施 継続群は脱落群と比車交して, Kupperman指数の改善傾向にあった
(1995)
運動前後でKupperm姐指数を測定木村 40-60 139 規則的にランニングをしている者とランニングをしていない規則的ランニング者は非ランニング者より生活の満足度が高く,
(1996)
河野(1998) 奥津ら (1981) 進藤ら (1976)
一般女性を対象にKupper回目指数と生活状況を調査, 不眠, 神経質および憂うつ等の不定愁訴が低かった
40-59 309
最近1年間と30代の頃の生活習慣と更年期症状の関係を30ftの頃にスポーツをしていなかった者は更年期指数が有意に高か
調査. った
40-55 1742 更年期症状に及ぼす生活環境要因の調査.
、4J.
-52 13 50% V02max相当の強度で1時間持続する自転車運動を 遡3回, 10週間実施. 運動前後でKupperm回指数を測定.運動をしている者はしていない者より症状が低い傾向にあった.
Kupper回a目指数は10週間の運動後で低下した. 頭痛や睡眠障害が 改善された者が4名, 月経周期や経血量の回復者が3名いた
S 1 aveu占Lee 30-72 92 5ω?の有酸禁運動を実施 その前後でPOMSを測定
月経状態にかかわらず, 運動後で抑うつなどの否定的気分が有意に改 善した.杉山ら (1992)
50-60 66
日常生活活動量(仕事, スポーツ, 余暇)とKupperman余暇時の身体活動量が多い者ほど症状が低く, 神経質, めまいで有
指数の関係について調査. 意差があった
Wilber et al. 34-62 375
日常生活活動量(仕事,家事,
レジャー)と健康度を調査.レジャー活動量(METS)の多い者で症状が低かった
(1990)
2)更年期症状と運動に関する心理学的研究
運動の心理的効果については, 更年期女性以外を対象にかなり明らかになっている(竹 中, 1998) . 例えば, Blumenthal et al. (1982)は, 10週間の定期的な低強度の歩 行やジョギングによって不安や緊張が減少したと報告している. またHarris (1987)は,
うつ患者を対象にカウンセリングと低強度運動(ランニング)の併用による治療を実施し,
うつ症状が軽減したことを 認め て いる. 同様の結 果が 更年期世代を含む女性 うつ患者 (Doyne et al., 1983)や座業の女性(Long and Haney, 1988)においても報告さ れている. このように, 定期的な運動は, 日常生活の心理的対処能力を向上させたり(徳 永ら, 1995) , ストレス反応を抑制する可能性も認められている(Takenaka, 1992) .
また, 長期的にも 体力の保持 ・ 増進などの生理的効果だけでなく, ストレ スが高い時の疾 病に対する抵抗力 を強める ことも示唆され て いる(Brown, 1991) . 運動によってもた らされる心理的効果のメカニズムについては, 自律神経系の働きを介してモノアミンやエ ンドロフインなどのホルモン分泌の活性が運動によって賦活することや, 有能感の獲得や 社会的強化, 気晴らしといっ た運動が個人にとって持つ価値や意味が関与するとの推測
(杉原, 1990) , Morgan (1985)の三つの仮説 (気晴らし, モノアミ ン代謝作用, エ ンドロフイン放出)及びPlante
&
Rodin (1990)の五つの 仮説(体温増加説, 内分 泌 説, 筋活動電位低減説, 神経伝達強化説, エンドロフイン説 )があるが明確ではない.更年期女 性が対象の場合においても, Slaven
&
Lee (1994)が, 中年期女 性を対 象 に一過性の運動を実施させた結果, 月経状態に関わらず抑うつなどの否定的 気分は改善し た. Aganoff 企 Boyle(1994)も, 低強度 の規則的な運 動実施 者は集中力の欠如や否 定的感情が非運動者より低かったと報告した. このように, 運動の心理的効果が更年期症 状を軽減する 可能性は高い. 先述したように, 運動と女性ホルモンの関連は明らかでない ことから, 運動のホルモンへの影響が更年期症状を軽減するとは断言できない. 実際, すべての女性が閉経前後にホルモンの変動を経験するにも関わらず, 更年期症状の有無や程 度にかなりの個人差が認められる. そう考えると運動の心理学的効果(更年期症状の精神 神経系症状への効果)として, 運動はストレスを軽減し, QOLの向上に関与することが推 測される. これは, 木村 (1996)や木村と永井(1999)の不定愁訴が趣味, 悩み, 生 活 の満足度及び運動習慣と関連し, 規則的運動者は非運動者 よ り生活の満足度が高く, 不眠,
神経質及び憂うつなどの不定愁訴 が低いとの報告からも支持される. 更年期症状の発症に は心理及び社会 ・ 文化的因子も強く影響していることから 運動による更年期症状の軽減 は, 運動実施による心理面への効果が大きいことも十分に推察される. しかしながら , 更 年期症状に及ぼす運動の心理学的効果に関する研究は少ない上 使用されている尺度 も違
うため, 統ーした見解は得られていない.
3
.本研究の目的前述したように, これまで更年期症状は女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏症であ
るとの見方が主流であり, その対処においては常にエストロゲンの変動が注目されてきた.
しかしながら, 女性ホルモンと症状の程度が必ずしも一致しているわけ ではない. 人間は 生物として成長し, そして老化するといった自然な変化をする存在であり また同時に社 会的な存在として精神的な活動を続け , 環境からの影響も受け て生きている(女のからだ と医療を考える会, 1997) . 実際, 一般女性 を対象とした調査では, 更年期症状には女 性ホルモンの変化より環境 ・ 人格的要因が 影響していたと報告されている(Greene and Cooke, 1980) . Fedor-Freybergh (1977)も, 更年 期の内分泌の変化や老化はスト レス耐性を滅少させるが, ストレスに対する耐性の低い者の更年期症状は重くなる傾向に あることを示唆している. 運動は, 中年期女性の健康に対して, 体力の維持 ・ 増進及び生 活習慣病や骨粗懇症の予防などの身体的効果と同時に , 精神の安定, 意欲の向上及びスト レスに対する心理的対処能力の向上などの心理的効果がある. これらの運動の効果は, 更 年期症状の予防や軽減に有効 であることが期待できる. しかし, 更年期症状と運動の関連 や適切な運動プログラムについては不明な点が多い.
したがって, 本研究では更年期症状に及ぼす運動の影響を明らかにするために, 以下の ことについて研究 した. 第1に更年 期症状とその関連要因, 第2に過去から現在 までの 運 動と更年期症状の関連, 第3に更 年期の運動行動, 運動に対する態度及びQOLと更年期症 状の関連を検討することとした. そして, 第4にこれらの結果を参考に運動介入を実施し,
その有効性を検討することとした. 以上から更年期症状の予防
・
軽減における運動の意義,さらには更年期女性の健康教育におけ る運動のあり方について明らかにすることを本研究 の目的とした.
10
第2章 更年期症状とその関連要因
1.更年期症状とは
1)更年期症状の定義 2)更年期症状の種類
3)更年期症状の発症機序及び発症年齢 4)更年期症状の検査及ぴ治療法
2.更年期症状に影響する諸要因 1)身体的特性
2)性機能に関する特性
3)生活環境に関する特性 4)性格などの心理的特性
5)ライフスタイルに関する特性
3.更年期症状と個人的特性の関連 1)研究目的
2)研究方法 3)結果 4)考察 5)要約
1
. 更年期症状とは本節では, 更年期症状をその定義, 症状, 発症機序 ・ 年齢及び検査 ・ 治療法に分けて概 説する.
1
)更年期症状の定義更年期症状は更年期に出現 する不定愁訴全般をさす. 一般には更年期障害と通称され て いるが, 更年期症状と更年期障害の違いについての明確な定義はない. 日本産婦人科学会 によると, 更年期障害を「更年期に現れる多種多様の症 候群で、 器質的変化に対応しない 自律神経失調症を中心とした不定愁訴を 主訴 とする症候群をいうJ (日本産科婦人科学会,
1997b)と定義して いる. この更年期とは, I生殖期 (性成熟期)と非生殖期(老年期)
の聞の移行期をいい 卵巣機能が衰退しはじめ消失する時期にあたるJ (日本産 科婦人科
学会,1997a)をさし, 50歳前後の閉経を中心とした約5年間としている. 臨床では日常
生活に影響を与えるほどの更年期症状の程度をもって更年期障害と考え 治療の対象とし
ている (小山, 1998b) . このように 更年期症状に関する研究は主として産婦人科の臨
床現場にて扱われてきたため 多くが更年期障害の用語を使用しているが ここでは更年
期症状と更年期障害を 明確に区分するため 更年期症状を 症状の程度の低い不定愁訴全般
と定義し, 特に治療を要するものを更年期障害と
する.2)更年期症状の種類
更年期症状は多様な症状を呈する. すなわち, 症状は種々あり, 年齢や閉経後の期間に よって異なり, 単一の症状だけが認められることは少 なく複数の症状が認められる. その 理由として, 更年期症状の発症因子や背景が複雑で相互に絡み合っていることや, ときに 他疾患の関与もあるか らである( 木村, 1998) . 症状は次の三つに大別される(小山,
1994) .
第一は血管運動神 経系症状である. 主に顔のほてり, 多汗, 手足の冷え, 息切れ, 動停 などの症状からなる.
第二には, 運動神経系症状である. 主に疲労感, 肩こり, 腰痛, 関節痛, 筋肉痛などの 症状からなる.
第三には, 精神神経系症状である. 主に神経質, 不服, いらいら , 抑うつ, 不安, 頭痛,
めまいなどの症1犬からなる.
これらの症状の発症頻度は, 運動神経系症状の顔のほてり, 肩こり, 腰痛, 関節痛が高 く, 日本人には蟻走感が少ないといわれている(杉山, 1995 ;上回ら, 1997) (図2・1) また, 症状によっては人種, 気候, 年齢, 閉経状態, ストレス, 遺伝的要因, 食生活, 体
型などによってその程度や頻度に差がみられる(木村, 1998;杉 山, 1995) .
_ ,
40
•••••••••••• •• • • •••••••••••••••••..••. •• . • ... • .... • •• .• .... ••• •. •• • ...•....•• • •. • •. • ••. • •• • •••• • ••• • • • •••• .••.•••••••••• • ••••••• • •• • •• • •••••••• • ••••••••••••• • ••••
50
(渓)
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ハU 勺J
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1i
掛川町駅(も五MMR拭川守Mm
T U
血管運動神経系症状: A.熱感, B.のぼせ, c.心,[季允進, D.冷え症 運動神経系症状: P.腰痛, Q.座骨症, R.関節痛, s.脊椎痛, T.筋肉痛
u.肩こり
精神神経系症状: E.頭痛, F.めまい, G.耳鳴り, H.不眠,
J.記憶減退, K.感覚異常, L.しびれ感,
N.知覚過敏, o.疲労感
S
1.圧迫感 M.療痔感
R Q
。 P
M N L H K
G
E F
C D B A
症状の発症頻度(上回ら噂 1997) 図2-1
-ー-
3
)更年期症状の発症機序及び発症年齢図2・2には, 後山(1997)に基づいて改変した一般的な更年期症状の発症機序を示した.
更年期症状の発症 には, 第一に卵巣の機能低下による老化が考えられる. 更年期を特徴づ ける重要な変化として, まず加齢による卵巣の機能の低下による内分泌の変化, 特にエス トロゲン分泌の衰退があげられる. 性成熟期には, 月経周期は視床下部 ・ 下垂体 ・ 卵巣系 における精巧なフ ィードバ ック機構によって維持されている. しかし40歳代になると急 速に卵巣機能が衰退し, そ の結果, 視床下部-下垂体-卵巣系 のフィードバック機構が乱 れ, その上位中枢である視床下部は機能尤進状態となる. その結果, 下垂体ゴナドトロピ ン(gonadotropin ) 分 泌やプロゲス テロン( progesterone ) , 黄体 化ホルモ ン (luteinizing hormone) , 卵巣刺激ホルモン(follicle stimulating hormone)
は著しく増加する(木村 1998) . これらのホルモンの急激な増加は 更年期の特有な 症状である「のぼせ」などの血管運動神経系症状の原因であること, また視床下部の機能 允進状態は同じ視床下部にある自律神経中枢に影響を与え さまざまな自律神経失調症状 や精神症状を起こすとされている(冬城ら, 1998) .
次に, この時期の周囲の環境から孤立させるような社会 ・ 文化的因子の影響が考えられ る. すなわち, 更年期というライフステージは 劇的な内分泌変化を経験する一方で様々
な環境の変化も経 験する 時期である. Fedor-Freybergh (1977)は , 更 年期を身体,
心理及び社会的特徴から「喪失と否定の時期」と呼び, 子供の成長や独立, 近親者の死,
夫や自分の退職そして閉経により女性でなくなるなどの喪失感を持つ女性が少なくないこ とを報告している. 実際, この時期の中年の危機(mid-life crisis) 空の巣症候 群
(empty nest syndrome) , あるいは分離体験などの状況は心身に大きく影響を与え,
これらが身体化することで不定愁訴症候群や各種の精神疾患を発症 することが報告されて いる(山岡, 1995) . さ らに 失 感情症 的 妥協的 メランコリー親和性性格因子など
15
の心理的要素が複合することによって, 自律神経中枢のホメオスタシスが破綻して更年期
症状が発症するといっ た悪循環が考えられる(後山, 1997)
.
一般的には, 九帳面で真 面目な模範的社会人であり, 犠牲的精神をもって, 常に社会の秩序を重んじて, 気遣いを 怠らない, 温和な性格の女性 が更年期に不定愁訴を発症しやすいようである.一方,
Jaszmann et al.
(1969)もエストロゲン低下のない閉経前の更年期女性に ,いらいら, うつ, 頭痛及び精神失調がみられたことを報告しているように, 卵巣機能の低
下が必ずしも更年期症状の前提条件になるわけではないようである.
このように更年期症状は, 内分泌的環境の変化と社会 ・ 心理的ストレスを同時に経験す ること, さらに個体の性格構造や心理的因子が相互に作用することによって発症すると考 えられる. 抑うつ や不安などの精神神経系症状では, 更年期外来を訪れる初診患者の約
2 5
%がうつ病をはじめとする, なんらかの精神疾患 を合併している(赤松, 1998)ため, 更年期症状と精神疾患との区別が困難な場合があることも指摘されている.
ゴナドトロピン,
Ul
FSHの急激な変動内分泌因子
QOLの向上がストレ:ス反応を抑制する
f�子l門盾|
l環l
社会-文化的因子およびその修飾因子
図会2 更年期症状の発症機序(後山, 1997を改変)
図2・3に加齢に伴うエストロゲン濃度と更年期症状の関係を示した(van
Keep,
1983) 加齢により卵巣重量は40歳を境に減少し, これに伴って機能的にもエストロゲ ンが急激に低下する. エストロゲンの欠乏状態は, 閉経を含む様々な身体的変化をもたらす. 現在,
日本人の閉経年齢の中央値は50. 54歳であり(日本産科婦人科学会, 1997c) , 更年期は 閉経前後約5年間とされる(森, 1984) このため, 更年期症 状は45 � 55歳に発症する ょうであるが, その発症年齢や期間には大きな個人差が認められる.
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30 40
閉経
更年期
50
年齢
のぼせ, 熱感, 発汗充進, 寝汗, 動惇 不安, 不眠, 記憶力滅退, 物忘れ, 頭痛
|腫,尿道粘膜の委縮 | 性交障害,腫炎,勝脱炎,
. 頻尿,尿失禁
|皮膚障害|希薄化,乾燥,知覚異常,
癖痛, しびれ 閉経後骨粗懇症
|心血管系疾患のリスク増大|
60 70
(歳)
図2-3 エストロゲン濃度と更年期症状(van Keep‘ 1983)
4)更年期症状の検査及び治療法
( 1 )検査法
不定愁訴は多様性に富み, かつ変化しやす いため症状の程度を定量的に評価することは 困難である. また, 現在のところ症状や程度を客観的に示す適切な生理指標がない. この ため愁訴を的確にとらえて, 把握することが重要とされ, 様々な質問紙法が研究されてき た. なかでも更年期指数は, 多岐にわたる更年期障害の症状をそれぞれスコア化して数量 化し, 症状の度合いを能率的かつ客観的に評価することができるため, 産婦人科治療の現 場でも広く使用されて いる(目崎, 1992) . その更年期指数とし て最も用い られている のは, Kupperman et al. (1953 )のMenopausal Index (以下, Kupperman指数) である.
表2・1
a,
bにKupperman指数を示した. 各々の症状について, な しを0, 軽度を1, 中度 を2, 重度を3と回答し, それぞれの症状に相応の係数をかけた後 総和する. そして総 和が15点以上の場合は更年期障害の疑診をおくとされ(鈴木と安部, 1971) , 本研究に おいてもそれを使用した. また, これらの症状は血管運動神経系, 運動神経症状系及び精 神神経症状系に大別され(小山, 1994) , その区分についても表2・1aに示した.その他, 簡略更年期指数(小山, 1998a)も検査が簡便であり, かつ日本人特有の症状 を把握しやすいためによく使用されている.
表2-1a Kupperman指数(Kupperman et a
1.
,1953)症状 症状系 係数
(1)血管運動神経障害様症状 血管運動神経系
4
なし 係数xo(2)知覚異常 精神神経系
2
軽度 係数X1(3)不眠 精神神経系
2
中度 係数X2付)神経質 精神神経系
2
重度 係数X3(5)憂うつ 精神神経系
1
(6)めまい 精神神経系
1
(7)倦怠・疲労 精神神経系
1
(8)関節痛・筋肉痛 運動神経系
1
(9)頭痛 精神神経系
1
(10)動停 血管運動神経系
1
(11) �義走感 精神神経系
1
総 計
表2-1b Kupperman指数(安部変法)
症状 質問項目 なし 軽 中 強
(1)
1.顔が熱くなる(ほてる) . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 口 口 口 口 2.汗をかきやすい. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 口 口 口 口3.腰や手足がひえる . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
口 口 口 口 4.息切れがする. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 口 口 口 口(2)
5.手足がしびれる .. • . . . . . . . 口
口 口 口6.手足の感覚がにぶい. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 口 口 口 口
(3) 7.夜なかなかねつかれない. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 口 口 口 口
8.夜眠ってもすぐ目をさましやすい. ・ ・ ・ 口 口 口 口(4) 9.興奮しやすい. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 口
口 口 口
10.神経質である. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
口 口 口 口 (5) 11.つまらないことにくよくょする. ・ ・ ・ ・ 口 口 口 口(ゅううつになることが多い. )
(6)
12.めまいやはきけがある ..
. . • . • .
口 口 口 口(7) 13.疲れやすい. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 口 口 口 口
(8) 14.肩こり, 腰痛,
手足の節々の痛みがある. 口 口 口 口
口
…
口口
…
口口
…
口口
…
口.…る・…あ
…ヵ
…季い…動痛
…
のが…臓頭…心Fhunphu
ω…ω
(11) 17.皮膚をアリがはうような感じがする 口 口 口 口
19
(2
)治療法先述したよう に, 更年期障害の治療法には, 薬物療法と非薬物療法がある. 薬物療法 に は, 女性ホルモンの分泌の低下が更年期障害の主たる原因であることから, ホルモン補充 療法(hormone replacement therapy)が有効な治療法として確立している. その投 与法は症状によって異なるが, ホルモン補充療法は血管運動神経系症状や神経質, 頭痛,
憂うつ及び睡眠障害などに有効であるとされている. 一方, 全身倦怠や心停允進にはほと んど効果がないともいわれてい る(冬城ら , 1998) . また, ホルモン補充療法は更年期 障害以外にも閉経後の骨粗穏症, 虚血性心疾患及び高脂血症などの予防や軽減にも有効で あることが報告されて いる(雨宮, 1998)
.
しかしながら 肝機能障害などの副作用や 乳がんなどの発がんリスクの懸念から, 日本での ホルモン補充療法施行者の頻度は約 1%と欧米の20---40%に比較して低率である(若槻ら, 1998) . その他, 症状に応じて向精 神薬(冬城ら, 1998)や漢方薬による治療も検討されて いる(青山, 1998 ;永島ら,
1998) .
一方, 非薬物療法としては, 症状の発症に社会 ・ 心理的要因が大きく関与している場合 にはカウンセリングが症状の軽減に有効であること が報告されてい る() 11 野と芳川 ,
1998) . また, 日常生活習慣, いわゆるライフスタイル が更年期症状に影響することが 示唆され(河野, 1998 ;杉山ら, 1992 ;杉山, 1996a) , 医師と管理栄養士, 保健婦,
看護婦などのコ ・ メデイカルがチームを組み, 個人の症状に応じた生活, 運動及び栄養指 導を行なうといった 取り組みも始 まっている(菊池ら, 1997;増田と麻生, 1997 ;野地,
1996
;田辺と麻生, 1998 ) . その他, 銀灸(八重樫ら, 1998)や温泉療法(山際ら,2000 ) などが症状の軽減に効果をあげており , 広く臨床へ適用が試みられつつある.
20
2. 更年期症状に影響する諸要因
更年期症状は加齢に伴う内分泌の変化に環境や心理的要因が重なり合って発症するため,
内分泌だけでなく, その人を取り巻く 多くの環境 や心理 的要因についての 検討も必要であ る. なかでも現代の急激な社会の変化 とと もに変容する生活習慣や生活行動も発症原因の ひとつであるとの指摘がある. したがって, 本節では, 更年期症状に影響する要因を個人 的特性及びライフスタイルの側面から 検討した.
1
)身体的特性身体的特性については, 身長, 体重, 人種及び既往歴などが検討の対象とされてきた.
更年期症状と身長の有意な関連は報告されていないが 体重では ほてりなどの血管運
動神経系症状において体重の 重い者や肥満度の高い者 で症状の訴えが多いことが報告され ている(Erlik
et
a1.,1982). また, 血管運動神経系症状や蟻走感の症状は人種によっ て出現率や程度に差がある(杉山, 1995a) ことが知られている. しかしながら これ ら の身体的特性の差は, 生活習慣や社会 ・ 文化的背景も関与していることから, 更年期症状との関連については明らかでない.
21
2)性機能に関する特性
女性の性機能に関する特性として, 月経状態, 分娩歴及び閉経歴などが報告されている.
月経の有無, すなわち月経状態は女性ホルモンの状態を反映し, 自覚できることから更 年期症状と最も関係が深い 特 性である. 図2-4には, 更年期症状の発症時期と月経状態、を 示した(上回ら, 1997) . 軽い症 状も含めて 更年期症状を感じた 時期 は 閉経よりも 前 であった者が77.4%で最も多く, また閉経にいたる月経不順からみた場合では, 月経不 順がまだ始まっていない者が51.0%で最も多かった. このように多くの者が月経不順や
閉経よりも前に更年期症状を感じており, その後に月経不)1頂や閉経を迎えることにより初 めて自覚した不定愁訴が更年期症状だと理解するわけである. 実際 突然の不調に戸惑っ たり, 病気を疑ったりするケースも少なくないと言わ れている(読売新聞, 1996) .
分娩歴との 関係では, 木村(1998)は5634名を対象に, Kupperman指数と東邦大式抑 うつ尺度評価表(SRQ-D)を用いて不定愁訴の調査を実施し 出産経験者と未経験者の比 較をしている. そ の結果, Kupperman指数の 症状のうち, 多汗, 不眠及び神経質の症状 では出産経験者の方が出産未経験者より症状の発現頻度が有意に低かった. また, 東邦大 入抑うつ尺度評価表の質問項目では「朝のうちとくに無気力」と「自分の人生がつま らな く感じる」の項目で出産未経験者の方が出産経験者より発現頻度が有意に高かったことを 報告している. その理由については言及されていないが, 出産が可能であったということ は性機能いわゆる内分泌環境が良好であったと推測できる. また , 子供を持つことによっ て, 規則正し い生活習慣を保ちやすい環境にあること, さらに子供の存在が生きがいにつ ながる可能性もあり, それ らが更年期症状の軽減に影響したものと考えられた.
閉経以降 閉経と同時期
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一 .
一 ・.経一・一・: : ・不・ .・
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•• ••
閉経以前
40歳 60歳
@
当ー月経不順以降 月経不順と同時期
月経不}I頂以前
更年期症状の発症時期と月経状態(上回ら. 1997を改変)
3
)生活環境に関する特性図2-4
学歴及び居住地などが更年 経済状態,
職業,
結婚状況,
生活環境に関する特性 として,
期症状との間で検討されている.
夫有り) との 離婚 ・ 死別,
(未婚,
更年期症状は現在の結婚状況 結婚状況については
未婚者のKupperman指 がある. 一方,
(奥津ら,
聞に関連はなかった とする報告
(木村,
数における多汗, 神経質の発現頻度は既婚者より高かったとの報告もある
「朝のうちと
「最近気が沈んだり気が重くなるJ , 式抑うつ尺度評価表の質問でも
東邦
「自分の人生がつまらなく感じるJ及び「仕事の能率が上がらず何をする くに無気力J
1998)
これ 婚者の方が既婚者よ り発現頻度が高かった (木村,のも億劫」 の項目で
配偶者という家族を持つことで規則正しい生活を送ること, また悩み らの理由 としては,
などを話せる人が身近かにいることなどが精神神経系の症状の軽減に影響した可能性が推 測された
.
23
職業については, その有無と症状の関連はないと報告されている(木村と大野, 1994) が, 職種別では看護職 者は事務職や専業主婦より不定愁訴が多いこと(宮岡, 2000) , また専業主婦や事務職者は憂うつや神経質などの精神神経系症状が, 農業従事者では肩こ りや腰痛などの運動器官系症 状が他の職種より多い ことが報告されている (奥津ら,
1981) .
経済状態(Creene
&
Cooke, 1980 ; Hunter et a1., 1986 ;鳩野, 1999)や学歴な どの教育レベル(木村, 1998)との関係についても 有意な 関連が報告されており, いず れもそれらの高い者の方で症状が低かった.居住地については, 都市部よりも農漁村地域の方が更年期症状が低いことが報告されて いる(奥津ら, 1981)
近年, 我が国では女性の独身志向や晩婚化, また就労率の上昇など女性を取り巻く社会
・
経済的状況は急激に変化している. これらの環境的な要因は更年期症状の中でも特に精神 神経系症状に影響していることが示唆される.4
)性格などの心理的特性性格などの心理的特性については発症機序(第1節, 第3項)でも述べたとおり, 更年 期症状の発症に大きく関与している. 後山(1998)は不定愁訴をきたしやすいと考えら れる性格的特徴をあげている(表2・2). 一般的に九帳面で真面白な模範的社会人であり,
犠牲的精神をもって, 常に社会の秩序を重んじて, 気遣いを怠らない 模範的な性格の女 性が更年期症状を発症しやすいとしている. 奥津ら(1981)は更年期症状と矢田部 ・ ギ ルフオ」ド性格検査の関係を検討したところ, 更年期症状は抑うつ性, 回帰性傾向及び客 観性欠如と関連がみられ, 情緒安定や社会適応性が不安定, 不適応傾向の者が症状を呈し やすいことを報告している.
24
表2・2 不定愁訴をきたしやすいと考えられる性格特徴(後山司 1998)
ポジティブな見方 ネガテイブな見方
全般的特徴 九I隈面, まじめ, 模範的社会人 余裕がない, 神経質
j畠汗百 感情抑制的
生き方 努力 を惜しまない いい子的
世の中の秩序を重んじる 非開放的 対人関係 争いを好まない 妥協的
気遣いを怠らない 自己否定 的
生活パターン 予定に従って行動する はめをはずせない 念入りに計画をたてる 衝動的行動をしない
人間的能力 職責感が強い いい子的
職場, 家族を重んじ 犠牲的行動を する 失感情的 社会的適応力が高い
5
)ライフスタイルに関する特性奥津ら(1981)は, 40 ----55歳の女性1320名を対象に更年期症状と 生活活動との関連 を 検討している. 生活活動は , スポーツや旅行の頻度及び熱心に 行 なっ ている活動 ・ 趣味の 有力�であった. その結果, スポーツと更年期症状に 関連がみられ, スポーツ をよくす る者 の吏年期症状は低かった
.
河野(1998)は40----59歳の 女性309人を対象 に, 最近1年間と30歳代の生活 習慣と更 年期症状の関連につい て検討している. 表2-3に更年期症状と 有意 な関連がみられ た日常 生活習慣につい て示した.
30歳代の生活習慣 では, 食 生活で間食, 夜食を 摂取していた者 乳製品の摂 取 頻度の 低い者, 栄養のバランスを考えな いで食べていた者の更年期症状が有意に 高かった. また,
毎日の生活生活が不規則だった者 , 趣味のなかった者, 喫煙していた者 休養を心がけな
25
かった者, 熟睡できなかった者, 気分転 換 できなかった者, 余暇にスポーツ をしていなかっ た者の更年期症状が有意に高かった.
また最近1年 間 の 生活 習慣では, 食生活 で朝 食 を摂 取しない者, 食 事 量が少ない者, 食 事時間が不規則な者, 乳 製品の 摂 取頻度が低い者及び飲 酒する者の 更年期症状が有意に高 か った. また, 毎日の生活が不規 則な者, 熟 睡 できない者, 疲 労が残る者, 家 族 との 団 ら んや交流の少ない者, 気分 転 換ができない者, 余暇に家 で ラ ジ オ を聞いて過ごす者で症状 が高かった.これらの結果は, 現在の生活 習慣 はもちろんのこと, 更年期世代に入る前の 生活習慣も更年期症状に影響を与えることを示唆している.
表2-3 更年期症状と有意な関連のみられた日常生活習慣(河野‘ 1998)
30歳代の頃の生活習慣
〈食生活〉
-間食の摂取 -夜食の摂取 -乳製品の摂取
・栄養バランス
〈他のライフスタイル〉
.'t活の規則性 -趣味を楽しむ .喫煙
・休養の心がけ -臨[1即時間(熟睡感) .疲労の回復
・気分転換 -余暇:スポーツ
最近1年間の生活習慣
- 朝食の摂取 a食事の量
- 食事時間の規則性 .乳製品の摂取
・飲酒
-生活の規則性
・睡眠時間(熟睡感) .疲労の回復
・家族との団らんまたは交流 .気分転換
・余暇:家でラジオを聴く
杉山ら(1992)は 日常の生活活 動量と更年期の 不定愁訴の関連について報告して い
る. その結果, ス ポーツによる身体活動量 は, めまい, 全身倦怠, 憂うつ及び血管運動神 経系症状と, ま た余暇時の身体活動量は神経質と「めまい」との聞に有意 な負の相関関係
を示した. 同様に ,
Wilber et al.
(1990)もレジャーによるエネルギー消費量26
(ME T S
)が多い者で症状が低く , 労働によるエネルギー消費量(METS)が多い者で症状 が高いことを認、めている .栄養については, 中村(1998)がピタミン, ミネラルの潜在的欠乏が更年期症状に関 与していることを示唆している. また, 更年期症状と豆 類を摂取する頻度(鳩野, 1999) や血管運動神経系症 状 の 「 ほ て り」と 大豆の関連が 報 告されており( Murkies et
al.,1995)
, 大豆に含まれるリグナンやイソフラボン類に「ほてりJの症状を減少させる効果があることが示唆されている(杉山, 1996a) . このように , 栄養と更年期症状 , さらには栄養と更年期のQOLの関連は明らかにされつつあり , 介入研究においても 潜在性 の栄養欠陥状態が改善されることによってQOLも向上したこと が報告されている(杉山,
1996b)
休養に関して, 杉山(1995)が肩こり, 腰痛, 眼精疲労及び睡眠困難など の不定愁訴 は休養の不十分な者ほど高いことを報告している. 特に更年期世代の女性は家族の時間に 左右されることが休 養のとれない大きな理由であり, 家族 や周囲の協力や支援が症状の軽 減に必要であると考察している.
また, 不安 ・ 心配や生きがいの有無なども 更年期症状と関連しているとも いわれている (鳩野, 1999) .
これらのことから , ライフスタイルは生活習慣病だけでなく更年期症状とも関連してい ると考えられ, 栄養 , 運動, 休養に配慮した規則正しい生活習慣を構築することによって,
更年期症状の予防や軽減が可能であると示唆された.
27
3
. 更年期症状と個人的 特性の関連1
)研究目的本節では, 第2節の更年期症状に影響する諸要因の先行研究で明らかにされなかった個 人的特性について, 更年期症状との関連を調査, 検討した.
2 )研究方法
( 1 )調査対象
対象者は, 福岡県内に居住する45 � 5 5 歳の女性241名であった. 対象者は自然閉経で 更年 期症状についての治療を受けていない者とした.
( 2)調査方法および調査内容
質問紙法により, 個 別自記式で下記の項目を調査した.
①年齢
②現在の体型(身長, 体重)
③初経年齢
④妊娠(回数), 出産(回数, 初産及び終産年齢)及び流産(自然及び人工流産回数)
①閉経状態(閉経が自然か人工であるか)
⑤ライフステージ(10歳代, 20歳代, 30歳代, 40歳代~閉経)における月経状態(周 期と随伴症状)
月経周期については「正常(正順)Jもしくは「不順Jで あった かの2選択肢で調査 した. また, 月経痛は「なしJ, I少しあったが日常生活に支障はなかった(以下,
軽度) J, I日常生活に支障はあったが, 薬は使用しなかった(以下, 中度) Jおよ び「日常生活に支障はあり, 薬を使用した(以下 重度) Jの4選択肢で調査した.
⑦結婚年齢
③職業(有無)
①更年期症状
症状についてはKupperman指数(表2 - 1 b)を用いて調査した.
⑮更年期症状についての通院や処方歴の有無
( 3 )統計処理
現在の体型(身長, 体重,
B M 1)
, 初経 ・ 結婚 ・ 初産 ・ 終産の年齢及び妊娠 ・ 出産 ・ 流 産回数とKupperman指数との関連についてはピアソンの 相関係数を用 いて分析 した. ま た, 閉経状態, ライフステージ(10歳代, 20歳代 30歳代)における月経状態(周期と 随伴症状) , 職業の有無とKupperman指数の関連に ついては一元配置分散分析を実施し た. 有意水準は5%未満と した.3
)結果現在の体型では, 身長とKupperman指数の間に有意な相関関係がみられ, 身長が高く なるに従ってKupperman指数は高く なった.
性機能に関して, 初経年齢, 妊娠(回数), 出産(回数, 初産及び終産年齢)及び流産 回数はKupperman指数との聞には有意な関連がみら れなかった. しか しながら, 閉経に 関しては人工的に閉経 した者のKupperman指数は自然閉経の者より有意に 高かった. 一 方, 10歳代から現在までの月経状態(月経周期と随伴症状)については 10歳代及び20
29
歳代に月経不)1国だった 者のK u p p e r m a n 指 数は正)I[貢だった者より高い傾向にあった(表
、、t''' hu ηd dA1 n/hH
生活環境に関する特 性では, 結 婚 年 齢及び職 業(有無および種別)と更年期症状に有意 な関連はみられなかった.
表2-4a 個人的特性とKupperman指数の関連
個人的特性 Kupperman指数
身長
0.252*
体重
0.103
初経年齢
O. 144
結婚年齢
0.060
妊娠回数
0.097
出産回数
0.180
初産年齢
0.038
終産年齢
0.091
流産回数
0.015
* p<0.05
表2-4b 個人的特性とKupperman指数の関連
個人的特性 Eupperman指数 自然閉経 人工的閉経
有意差
閉経状態
13. 0:t9. 8 20. 7:t7. 6 *
正順 不順
10歳代の月経周期 20歳代の月経周期 30歳代の月経周期
l1.4:t8.7 15.6:t5.9 l1.6:t8.7 17.0:t5.9
11. 5土8.3 16.7:t7.7T T
なし 軽度 中度 重度
...・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ー
10歳代の月経随伴症状 12.0土7.6 13.3土9.415.1:t7.0 7. 9:t5. 8
20歳代の月経随伴症状13. 9:t 10. 4 12.
2:t8. 111.1:t7.4 10.8:t7.9
30歳代の月経随伴症状12. 7:t 8. 8 12.0 :t8. 6 8. 5:t6. 0 14. 3:t9. 0
有り 無し
職業
11.5:t7.8 13.5:t9.5
Mean:t SD, * p< 0.05, t p< O. 10
30
4
)考察本章の結果では, 身長 とKupperman指数との間に有意な相関関係がみられた . これま で体重と更年期症状との関連について は報告されている(Erlik
et
al., 1982)が, 身 長との関連について明 らかに し た報告は無い. 身長は体重と異なり, 更年期世代で大きく 変動しない. し た がって, 本研究の 結果は両者の何らかの因果関係を示すのかも し れない が, それについては 不明であり今後の課題と なった.本研究では流産について検討していないが, 人工流産経 験者の更年期症状が未経 験者よ り高いことが報告されている(上回ら,
1997) . この理由については,
手術処置などの 生体への影響が考えられるが, 心理的側面の影響も推測される.月経周期と更年 期症状の関 連で は , 10歳代 及び20歳代に月 経 不順だっ た者の
Kupperman指数が高い傾向にあった. 割田ら (1991) によると, 性周期の乱れや月経随 伴症状は, 心理的, 身体的ストレスが一連のホメオスタシスに影響を与え た結果, 生じる と推察している. し か し な がら, これまでに若年期の月経状態(月経周期や 随伴症状) と 更年期症状との関連を報告 し た研究は ない. その ため, 両者の因果関係については推測の 域を出ないが, 心理的, 身体的ストレスへの耐性域値の低い不定愁訴をおこ し やすい集団 が存在するかも し れないと考えられる.
5
)要約本節では, これまで に報告の少なかった更年期症状と個人的特性の関連について検討 し た. 対象者は, 45----55歳の自然閉経で更年期 症状につい ての治療を受けてい な い女性,
31
、�
241名とした.
更年期症状はKupperman指数を使用した. 個人的特性は, 1.現在の体型,2.初経年齢, 妊娠, 出産及び流産, 3. ライフステージにおける月経状態, 4. 結婚年齢,
5. 職業とした. その結果, 身長とKupperman指数の間に 有意な相関関係がみられ, 身長 が高くなるに従って Kupperman指数は高くなった. 初経年齢 , 妊娠(回数), 出産(回 数7 初産及び終産年齢 )及び流産回 数とKupperman 指数の聞には有意 な関 連が みられな かった. しかしながら, 閉経に関しては人工的に閉経した者のKupperman指数は自然閉 経の者より有意に 高かった . 一方, 10歳代 から現在までの月 経状態(月経周期と随伴症 状)については, 10歳代及び20歳代に月経不順 だった者のKupperman指 数は正順だった 者より高い傾向にあった. 結婚年齢及び職業と更年期症状に有意な関連 はみられなかった.
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第3章 ライフステージの運動経験と更年期症状の関連
1.研究目的 2.研究方法 3.結果
1)ライフステ)ジの運動経験と閉経年齢
2)ライフステージにおける運動の有無や実施程度と更年期症状の関連 3)運動実施程度, 運動強度, 運動時間, 運動頻度及び運動量と
更年期症状の関連
4)運動種目と更年期症状の関連
5)運動の継続性と更年期症状の関連 4.考察5.要約
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1
.研究目的女性の運動活動について検討する場合, 特に長期間にわたる際には, 女性特有のライ フ サイクルを考慮、する必要性 がある. 一般に, 学校教育における正課授業以外のスポーツ活 動への参加は, 小学生時の地域と学校が連携したスポーツ少年(少女)団も しくは中学 校 における運動部活動が多く, 運動参加への機会は男女ともほぼ同等であるため, 参加状況 も男性が運動への志向性など の点 から若干多い程度であ る( 粂 野, 1984a) . しかし, 就 学期以降, 特に20歳代後半の女性のスポーツ参加率は男性よりかなり低い(粂野, 1984b)
この理由とし て, 女性のスポーツ 参与が出産, 育児などの女性のライフステージにおけ る 役割と強く関連している(江刺, 1988)ことが考えられる.
女性の性機能と運動との関連については10歳代の運動と初経年齢 や月経障害を検討した ものが多い. これらによると, 思春期の女性の性機能は運動の実施程度によっ て影響を受 け, 特に競技レベルの高いスポーツ 選手は, 運動習慣を持たない一般女性より 初経発来が 有志に遅延し(Cohhen
et
al., 1982; Frishet
al., 1981;目崎ら, 1984;目崎ら,1988; Warren, 1980) , 体操, 新体操及び舞踊などの選手 で はその傾向が顕著であるこ
とがよく知られている(目崎ら, 1984, 目崎ら, 1990) . また, これらの競技スポー ツ
を継続してい る者 は, 無月経や月 経痛などの月経障害 の頻度も多い(目崎, 1989;目 崎
らt
1989) . 逆に, 思春期の適度な運 動は初経 年齢を早めたとの報告もあ る(上回ら,
1996)
. このように , 思春期の運動 と性機能に関する報告は多いが , 更年期の運動と 性機能に関するものは少ない. さらに女性の一生をベースとした研究, すなわち過去から 現 在の運動経験と更年期症状を検討した研究はない. しかし, 3 0歳代の余暇活動が更年期症 状に関連している こと(河野, 1998 )や, 過 去に運動経験のある者は ない者よ り閉経後 の骨塩量が高い傾 向にあること(渡辺ら, 1992)から も , 運 動は現在のものだけでなく 過去の経験も更年期症状 に関連している可能性がある. したが って, 本章で はライフステー ジの運動経験と更年期 症状の関連について, 図3 -
1に示した観点より検討することとした.
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各々のライフステージの運動経験は, 運動の実施程度, 運動量(強度, 時間, 頻度) ,
運動種目及び継続性の観点から, また更年期症状は症状の自覚程度とK upperm an指数よ り両者の関連を検討することとした.
ライフステージの運動経験 . 運動の実施程度
・ 運動量(強度, 時間, 頻度)
・ 運動種目 -継続性
回
- 閉経年齢
(早発or遅発) .更年期症状
(無変化or軽減or悪化) 1)症状の自覚程度
2)
Kupperman指数図3イ ライフステージの運動経験と更年期症状の関連