「2019 年度 博士申請論文」
論文最終版
【論文題目】
テレビ・ドキュメンタリーにおける社会的影響力の研究
~ 福祉・貧困分野における政策アジェンダ構築過程の事例分析 ~
指導教員 中村陽一 教授
21 世紀社会デザイン研究科 比較組織ネットワーク学専攻後期課程
5 年 15WM001D 淺野麻由
提出日:2020 年 1 月 30 日
I 目次
序章 本論文の目的と研究の手法 1
0-1 本論文の目的 1
0-2 本論文の意義と背景 1
0-3 研究の方法 4
0-3-1 事例研究の対象 4
0-3-2 事例研究における分析枠組み 5
0-3-3 調査方法 6
0-4 本論文の構成 6
第Ⅰ部 マス・メディアにおける「テレビ・ドキュメンタリー」の位置づけと先行研究 9 第1章 マス・メディアにおけるテレビ・ドキュメンタリーの位置づけ 9
1-1 マス・メディアの概観・用語の整理 9
1-2 マス・メディアにおけるテレビの位置づけ 15
1-3 テレビにおけるドキュメンタリーの位置づけ 18
1-4 テレビ・ドキュメンタリーの系譜 23
1-4-1 ドキュメンタリー映画時代 24
1-4-2 「テレビ・ドキュメンタリー」の誕生と放送法 27
1-4-3 表現の自由を巡る「逆流現象」 29
1-5 テレビ・ドキュメンタリーの定義と類型 31
1-6 小括 39
II
第2章 マス・メディアにおけるテレビ・ドキュメンタリーの機能研究 40
2-1 マス・メディアの機能におけるテレビ 40
2-2 ジャーナリズムにおけるテレビ・ニュースとドキュメンタリーの形式的な機能 44
2-3 テレビ・ドキュメンタリーの内容的機能 48
2-4 小括 50
第3章 マス・メディアにおけるテレビ・ドキュメンタリーの位置づけと効果研究 52
3-1 マス・メディアの効果研究の系譜 52
3-2 アジェンダ設定機能 55
3-3 アジェンダ構築機能 59
3-3-1 コブとエルダーのアジェンダ構築機能 61
3-3-2 プロテスのアジェンダ構築機能 62
3-4 政策形成者からみたテレビ・ドキュメンタリーと政策決定 68
3-5 マス・メディアと世論 72
3-6 小括 74
第Ⅱ部 事例研究の分析と結果 75
第4章 事例研究の対象と分析枠組み 75
4-1 事例研究の対象 75
4-2 分析の枠組み 78
4-2-1 アジェンダ設定機能の分析視点 79
4-2-2 アジェンダ構築機能「提携モデル」における分析視点 82
4-2-3 政策形成者が政策形成にあたって重視する6つの視点 82
III
4-3 小括 83
第5章 事例研究① ギャラクシー賞報道活動部門を受賞したテレビ・ドキュメンタリー 84
5-1 ギャラクシー賞報道活動部門を受賞した136番組の動向 84
5-1-1 放送局の体系分類 84
5-1-2 テーマの種類分類 85
5-1-3 放送メッセージの形態 87
5-2 社会に影響を与えたテレビ・ドキュメンタリー 89
5-2-1 アジェンダ設定機能 92
5-3 小括 96
第6章 事例研究② TBS『ベビーホテル』 98
6-1 ベビーホテル問題と『テレポートTBS6』の概要 98
6-2 TBS放送前のベビーホテル問題に関する社会的影響の変遷 101
6-2-1 マス・メディアにおける取り扱い 102
6-2-2 国会および東京都議会審議における取り扱い 110
6-3 TBS放送後から児童福祉法改定までのベビーホテル問題の変遷 116
6-3-1 マス・メディアの「加熱期」 116
6-3-2 国会審議の「加熱期」 120
6-4 『ベビーホテル』の放送と政策決定 122
6-5 影響の分析 125
6-5-1 アジェンダ設定機能 126
6-5-2 アジェンダ構築機能 -「提携モデル」- 136
IV
6-5-3 政策形成者が政策形成にあたって重視する6つの視点 141
6-5-4 制作者の視点による影響要因 143
6-6 『ベビーホテル』の放送がもたらした長期的な社会的効果 144
6-7 小括 147
第7章 事例研究③NNNドキュメント『ネットカフェ難民』 149
7-1 NNNドキュメント『ネットカフェ難民』の概要 149
7-1-1 貧困の表象 150
7-1-2 視聴率 151
7-1-3 放送の体制 152
7-2 『ネットカフェ難民』に関する社会的影響の変遷 155
7-2-1 マス・メディアへの影響 155
7-2-2 視聴者への影響 157
7-2-3 国会および東京都議会審議への影響 159
7-3 『ネットカフェ難民』の放送と政策決定 160
7-4 影響の分析 163
7-4-1 アジェンダ設定機能 163
7-4-2 アジェンダ構築機能 -「提携モデル」- 171
7-4-3 政策形成者が政策形成にあたって重視する6つの視点 175
7-4-4 その他の要因① - 放送のタイミング - 178
7-4-5 その他の要因② -タイトルのネーミング - 181
7-5 『ネットカフェ難民』の放送がもたらした長期的な社会的効果 182
7-6 小括 183
V
第8章 事例の分析と考察 185
8-1 社会に影響を与えるテレビ・ドキュメンタリーの動向 185
8-2 テレビ・ドキュメンタリーにおける政策アジェンダ構築 186
8-2-1 放送の強調 186
8-2-2 アジェンダ過程 188
8-2-3 政策提言者 189
8-2-4 政策形成者の視点 190
8-3 テレビ・ドキュメンタリーにおける長期的な社会的効果 191
8-4 小括 192
終章 194
9-1 まとめ -本論文の内容の概観- 194
9-2 本論文において得られた知見(1)
テレビ・ドキュメンタリーの機能と社会デザインへのつながり
196
9-3 本論文において得られた知見(2)
政策形成者が政策形成にあたって重視する6つの視点
197
9-4 本論文において得られた知見(3)
テレビ・ドキュメンタリーにおける政策アジェンダ構築モデルの可能性
198
9-5 本論文において得られた知見(4)
テレビ・ドキュメンタリーの長期的な社会的効果
200
9-6 本論文の限界と今後の課題 201
図表一覧 204
参考文献 206
謝辞
1 序章 本論文の目的と研究の手法
0-1 本論文の目的
本 論 文 の 目 的 は 、テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー1が ど の よ う な プ ロ セ ス を 経 て 、社 会 的 効 果 を 与 え る の か を 明 ら か に す る こ と で あ る 。
こ れ ま で 社 会 的 効 果 と い う 側 面 に つ い て の 研 究 は 、 新 聞 な ど マ ス ・ メ デ ィ ア 全 体 に お い て 行 わ れ て い る 。 ま た 、 テ レ ビ ・ メ デ ィ ア に 特 化 し た 社 会 的 効 果 の 研 究 は 主 に ニ ュ ー ス 番 組 で 行 わ れ て い る 。 し か し な が ら 、 本 研 究 で 焦 点 と し て い る 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に 特 化 し た 社 会 的 効 果 の 研 究 は み ら れ な い 。
一 方 で 、「 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 」の 研 究 に 、焦 点 を 当 て て み る と 、歴 史 研 究 、内 容 研 究 は 行 わ れ て い る が 、「 社 会 的 効 果 」 を 事 例 と す る 研 究 は み ら れ な い 。
し た が っ て 、 マ ス ・ メ デ ィ ア に お け る 効 果 研 究 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 研 究 に お い て も 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 「 社 会 的 効 果 」 の 研 究 が な さ れ て な い た め 、 本 研 究 を 行 う こ と と し た 。
本 研 究 の 目 的 を 達 成 す る た め に 、 リ サ ー チ ・ ク エ ス チ ョ ン を 以 下 の 3 点 を 設 け た 。 第 1 に 、テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー が ど の よ う な 位 置 づ け に あ り 、ど の よ う な 機 能 や 効 果 を 有 し て い る の か 。
第 2 に 、 一 般 的 な 評 価 指 標 に 「 視 聴 率 」 が あ る が 、 そ れ と は 別 に テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー が 社 会 に 与 え た 影 響 と は 何 か 。
第 3 に 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー は 、 ど の よ う に し て 社 会 に 影 響 を 与 え る の か 。
0-2 本論文の意義と背景
本 論 文 の 意 義 と し て は 、 ① 研 究 的 意 義 、 ② 社 会 的 意 義 、 ③ 制 作 現 場 に お け る 意 義 の 3 つ の 側 面 が あ る 。
第 1 に 研 究 的 意 義 と し て は 、テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー に 特 化 し た 社 会 的 効 果 へ の 数 少 な い 研 究 に 位 置 付 け ら れ る 点 で あ る 。 こ れ ま で 学 術 界 に お け る マ ス ・ メ デ ィ ア や マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 研 究 は 、新 聞 を 主 た る 対 象 と し た 研 究 が 多 く 、「 テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー 」 に 特 化 し た 研 究 が あ ま り な さ れ て こ な か っ た 。 国 立 情 報 学 研 究 所 が 運 営 す る 、 学 協 会
1 筆 者 は 「 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 」 と い う 用 語 を 使 用 す る が 、 第1章 の 定 義 で も 述 べ る よ う に 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー は 時 代 の 流 れ や 技 術 革 新 に よ っ て そ の 手 法 や ジ ャ ン ル が 多 岐 に 及 ぶ 。 そ こ で 、 筆 者 が 本 論 文 で 示 す テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー は 、 社 会 的 課 題 を 題 材 と し て 扱 う 「 報 道 ド キ ュ メ ン タ リ ー 」 を 意 味 す る も の と す る 。
2
刊 行 物・大 学 研 究 紀 要・国 立 国 会 図 書 館 の 雑 誌 記 事 索 引 デ ー タ ベ ー ス「CiNii Articles - 日 本 の 論 文 を さ が す 」で 、「 テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー 」と い う ワ ー ド で 学 術 論 文 情 報 を 検 索 す る と 、100 件 が 検 索 さ れ る2。 一 方 「 ド キ ュ メ ン タ リ ー 」 で の 検 索 で は 、2043 件 に も の ぼ る 。こ の よ う に「 テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー 」に 焦 点 を 当 て ら れ た 学 術 論 文 は 少 な く 、 途 上 段 階 で あ る と 言 え よ う 。ま た「 テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー 」の 100件 の 論 文 が 公 刊 さ れ た 年 代 を み て い く と 、1965年 か ら 始 ま り 、2000年 ま で に 14件 、2000年 か ら 現 在 (2019年 5 月 ま で)で 86 件 と な っ て い る 。つ ま り 、「 テ レ ビ ・ド キ ュ メ ン タ リ ー 」は 、近 年 に な っ て よ う や く 日 本 で 研 究 さ れ る 分 野 と な っ た と 言 え る だ ろ う 。
2000 年 代 ま で の 「 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 」 に つ い て の 言 及 の 多 く は 、 実 際 に テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー を 制 作 し て い る 制 作 者 の 視 点 に よ る も の だ っ た3。2000年 代 に 入 る と 、社 会 学 者 の 丹 羽 美 之 に よ っ て 、「 テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー 」の 学 術 研 究 が 本 格 化 し た の で あ る 。 丹 羽 は 、「 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 」 の 系 譜 の 整 理 を 行 い 、 特 定 の 「 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 」を 事 例 と し て 取 り 上 げ 、そ の 内 容 の 分 析 研 究 を 行 っ た 。2010年 に NHK が 研 究 者 に ア ー カ イ ブ ス4を 公 開 し て か ら は 、更 に 特 定 の「 テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー 」に お け る 内 容 分 析 研 究 が 進 ん だ の で あ る 。し か し 、「 テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー 」に 焦 点 を 当 て た 、 機 能 や 効 果 に つ い て は 、 未 だ に ほ と ん ど 研 究 さ れ て い な い 。 マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 効 果 研 究 は 1920 年 代 か ら 行 わ れ て お り 、 基 本 的 に は そ の 効 果 や 機 能 を そ の ま ま 、
「 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 」 に も 当 て は め て い る 形 と な っ て い る 。 ま た 、1950 年 代 に テ レ ビ・メ デ ィ ア が 発 足 し 、テ レ ビ に 特 化 し た 効 果 研 究 も 行 わ れ た が 、「 ニ ュ ー ス 」を 主 に 焦 点 と し て お り 、「 テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー 」に 特 化 し た 研 究 は ほ と ん ど 行 わ れ て い な い 。 本 論 文 に お い て 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 効 果 研 究 に 特 化 し 、 一 つ の 効 果 モ デ ル へ の ア プ ロ ー チ を 追 究 す る こ と は 、 マ ス ・ メ デ ィ ア や マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 研 究 に お い て も 大 き な 意 義 が あ る と 考 え る 。
第 2 に 、社 会 的 意 義 と し て 、「 社 会 的 指 標 」と 言 う 観 点 か ら 、テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー を 分 析 す る こ と で あ る 。こ れ ま で テ レ ビ・メ デ ィ ア は 、主 な 効 果 指 標 と し て 視 聴 率5を 用 い
2 「C i N i i A r t i c l e s - 日 本 の 論 文 を さ が す 」 サ イ ト は h t t p s : / / c i . n i i . a c . j p / 2 0 1 9年5月1 4日 閲 覧 ・ 検 索 実 施 。
3 テ レ ビ 創 成 期 に テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー を 制 作 し て い た 吉 田 直 哉(元N H K )、 今 野 勉(元 T B S、 テ レ ビ マ ン ユ ニ オ ン)や 牛 山 純 一 (元 日 本 テ レ ビ)な ど 。
4 「N H Kア ー カ イ ブ ス 学 術 利 用 ト ラ イ ア ル 」 は 、 研 究 目 的 用 に N H Kの ド キ ュ メ ン タ リ ー 番 組 の ア ー カ イ ブ ス を 公 開 し た 。 研 究 者 は
公 募 で 採 択 さ れ る 。
5 視 聴 率 研 究 で は 、 藤 平 芳 紀( 1 9 9 9 )、『 視 聴 率 の 謎 に せ ま る デ ジ タ ル 放 送 時 代 を 迎 え て 』、 ニ ュ ー ト ン プ レ ス 。 が あ る 。 文 献 の 中 で 視 聴 率 に は 、「 機 械 式 調 査 に よ っ て 算 出 さ れ る 視 聴 率 と 日 記 式 調 査 に よ る も の と あ る 。 機 械 式 調 査 に は 、 ニ ー ル セ ン と ビ デ オ リ サ ー チ が 実 施 し て い る 世 帯 視 聴 率 と 世 帯 内 個 人 視 聴 率 と が あ り 、 他 方 、 日 記 式 調 査 に は 、N H Kが 実 施 し て い る 直 接 個 人 抽 出 に よ る 個 人 視 聴 率 と ビ デ オ リ サ ー チ が 行 う 世 帯 内 の 日 記 式 調 査 に よ る 世 帯 視 聴 率 と 世 帯 内 個 人 視 聴 率 と が あ る 」。( p . 3 0 )本 論 文 で は テ レ ビ 各 局 が 一 般 的 に 指 標 と し て い る ビ デ オ リ サ ー チ 社 の 「 世 帯 視 聴 率 」 を 「 視 聴 率 」 と し て 用 い る 。
3
て き た 。 視 聴 率 と は 、 テ レ ビ 放 送 が な さ れ て い る と き に 、 ど の く ら い の 世 帯 が 視 聴 し て い る か を パ ー セ ン テ ー ジ で 示 し た も の で あ る 。 近 年 、 視 聴 率 至 上 主 義 の 下 、 視 聴 率 が 取 り に く い テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 放 送 枠 数 が 極 端 に 縮 小 傾 向 に あ る 。 ま た 、 現 在 数 少 な い 中 で 放 送 し て い る テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー は 視 聴 率 が 取 れ な い た め 、 早 朝 や 深 夜 に 放 送 さ れ て い る こ と が 多 い 。
視 聴 率 を 研 究 対 象 と す る 、松 井 英 光(2018) 6に よ れ ば 、視 聴 率 に は「 営 業 的 指 標 」と「 社 会 的 指 標 」と い う 2 つ の 評 価 指 標 と し て の 意 義 が あ る と し て い る 。し か し 特 に 民 放 で は「 営 業 的 指 標 」と し て の 意 義 が 強 く 、「 社 会 的 指 標 」と し て の 意 義 が 見 落 と さ れ て い る と 指 摘 し て い る 。松 井 は ま た 、「 一 方 で 視 聴 率 に は 、本 来『 社 会 的 指 標 』が 存 在 し 、『 受 け 手 』の『Public Interest』 を 刻 む 、 放 送 効 果 の 測 定 数 値 と し て 番 組 に 多 大 な 影 響 を 与 え て も い る 事 も 重 要 な 事 実 で あ る 」(松 井 英 光 2018:44)。と 述 べ て い る 。松 井 が 視 聴 率 の「 社 会 的 指 標 」と し て の 意 義 に 触 れ た こ と は 、 本 論 文 の 目 的 に 沿 う と こ ろ で あ る 。 し か し 、 視 聴 率 の 数 値 を そ の ま ま 「 社 会 的 指 標 」 と 捉 え る こ と は で き る の だ ろ う か 、 と い う 疑 問 が 残 る 。
本 論 文 に お け る 筆 者 の 視 点 は 、「 テ レ ビ 放 送 中 に 視 聴 し て い る 期 間 」と い う 短 期 的 な 指 標 で あ る 「 視 聴 率 」 に と ど ま ら ず 、 長 期 的 な 視 点 か ら の 社 会 へ の 影 響 ・ 効 果 に 注 目 す る こ と で あ る 。 長 期 的 な 影 響 と は 、 テ レ ビ ・ メ デ ィ ア が 取 り 扱 う テ ー マ が 、 政 府 行 政 ・ 企 業 ・ NPO/NGO 等 の 組 織 に お け る 相 互 作 用 が 生 じ 、 社 会 を 変 化 さ せ て い く と い う こ と で あ る 。 つ ま り 官 民 と テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 関 係 性 の 構 築 や 関 係 性 を 変 化 さ せ 、 社 会 的 課 題 の 解 決 に つ な げ る と い う 、い わ ば「 社 会 デ ザ イ ン 」7に も 繋 が る 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る と 考 え ら れ る 。
社 会 的 指 標 に お け る 「 社 会 デ ザ イ ン 」 と い う 新 た な 視 点 で の テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー へ の 効 果 を 提 示 す る こ と で 、 テ レ ビ ・ メ デ ィ ア に お け る ド キ ュ メ ン タ リ ー の 位 置 づ け が 変 容 し 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 新 た な 展 開 を 目 指 す こ と を 目 的 と し て い る 。
第 3 に 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 制 作 現 場 に お け る 意 義 で あ る 。
近 年 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 放 送 枠 数 が 減 少 す る 中 で 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー を 制 作 す る 人 材 を 育 成 す る こ と が 困 難 に な っ て い る 。 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に は 、
6 松 井 英 光( 2 0 1 8 )、「 メ デ ィ ア を 規 定 す る 「 視 聴 率 」 再 考 ― ル ー ル 変 更 を 巡 る 動 向 ・「 個 人 視 聴 率 」 導 入 時 と の 比 較 ― 」『 実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 紀 要 第1 4集 』、 実 践 女 子 大 学 人 間 社 会 学 部 。
7 立 教 大 学 社 会 デ ザ イ ン 研 究 所 の 所 長 で あ る 、 中 村 陽 一( 2 0 1 9 )に よ る 社 会 デ ザ イ ン と は 、「2 1世 紀 に 入 り 、 環 境 や 地 域 紛 争 な ど 前 世 紀 か ら の 宿 題 に 加 え て 、 新 し い 形 の 貧 困 や 社 会 的 排 除( s o c i a l e x c l u s i o n )が 世 界 と 日 本 の 大 き な 課 題 と な っ て い る 。 そ の 解 決 の た め 、 政 府 行 政 ・ 企 業 ・N P O / N G O等 の 組 織 は そ れ ぞ れ ど の よ う な 役 割 を 担 う の か 。 ま た セ ク タ ー の 垣 根 を 越 え た 「 協 働 」 は 、 ど こ ま で の 有 効 性 と 可 能 性 を 期 待 で き る の か 。 人 々 が 共 生 し て い く た め の 知 恵 や 仕 掛 け と し て の 社 会 と 、 そ こ で の 人 々 の 参 加 ・ 参 画 の 仕 方 を 、 こ れ ま で の 常 識 に と ら わ れ ず 、 根 底 的 と い う 意 味 で ラ デ ィ カ ル に 革 新(イ ノ ベ ー シ ョ ン)し て い く こ と が 、 改 め て 求 め ら れ て い る 。 そ う し た 思 考 と 実 践 の あ り よ う を 、 筆 者 は 「 社 会 デ ザ イ ン 」 と 呼 ん で き た 」。 と す る 。 筆 者 は 、 社 会 デ ザ イ ン を 、「2 1世 紀 の 社 会 的 課 題 を 解 決 す る た め に 、 政 府 行 政 ・ 企 業 ・N P O / N G O等 の 組 織 が 新 た な 関 係 性 を 構 築 し 、 そ の 新 た な 関 係 性 に よ っ て 従 来 の 関 係 性 に 変 化 を 与 え 、 そ れ に よ っ て 社 会 に 変 化 を も た ら す こ と 」 と す る 。
4
そ の 社 会 問 題 を 抽 出 し て い く 力 、 取 材 相 手 と の 信 頼 関 係 を 作 る 力 な ど 多 く の こ と が 求 め ら れ る 。 現 場 や 場 数 を こ な し て 、 そ れ ら の 力 を 磨 い て い く の だ が 、 そ の 機 会 す ら も 減 少 し 、 新 た な 人 材 を 育 て ら れ に く い 状 況 と な っ て い る 。 人 材 を 育 て る 機 会 が 減 っ て い け ば 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 質 は 下 が り 、 そ の 結 果 、 放 送 枠 数 は 更 に 減 少 す る と い う 負 の ス パ イ ラ ル に 陥 る だ ろ う 。
だ か ら こ そ 、 本 論 文 に お い て 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー が 果 た し て き た 役 割 や 意 義 、 社 会 的 効 果 を 再 検 証 し た い 。
0-3 研究の方法
本 論 文 の 研 究 方 法 と し て 、
第 1 に 、 本 論 文 で は 、 ま ず テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 定 義 の 整 理 を 行 い 、筆 者 に よ り 定 義 の 再 検 討 を 行 う 。 こ れ ま で テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に つ い て は 、 制 作 者 や 研 究 者 に よ っ て 定 義 が 行 わ れ て き た が 、 そ れ ぞ れ の 立 場 に お い て そ の 定 義 が 異 な っ て い た 。 本 論 文 で 扱 う テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 位 置 づ け を 行 い た い 。
第 2 に 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 機 能 を 研 究 す る に あ た り 、新 聞 や テ レ ビ ・ メ デ ィ ア に お け る 機 能 の 先 行 研 究 を 整 理 す る 文 献 研 究 を 行 う 。
前 項 の 本 論 文 の 意 義 で も 述 べ た よ う に 、 こ れ ま で テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に 特 化 し た 先 行 研 究 は 、 主 に 内 容 分 析 研 究 が 多 か っ た 。 そ の た め 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 機 能 や 効 果 研 究 に つ い て は あ ま り さ れ て い な か っ た 。 従 っ て 、 本 論 文 で は 、 新 聞 や テ レ ビ ・ メ デ ィ ア に お け る 機 能 の 整 理 を 行 い 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 機 能 に つ い て 考 察 す る 。 第 3 に 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 効 果 を 、 事 例 を あ げ て 研 究 す る 。 こ れ ま で 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に 特 化 し た 効 果 研 究 は あ ま り さ れ て こ な か っ た 。 そ の た め 、 実 際 の 効 果 検 証 の 蓄 積 も な い 状 態 で あ る 。 そ こ で 、 本 論 文 で は 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に お け る 事 例 研 究 を 行 う こ と で 、 社 会 に 影 響 を 与 え る 過 程 や 要 因 に つ い て 効 果 分 析 を 行 う 。
0-3-1 事例研究の対象
事 例 研 究 の 対 象 は 主 に 3点 で あ る 。
第 1に 、ギ ャ ラ ク シ ー 賞 報 道 活 動 分 門 で 受 賞 し た 番 組 136番 組 を 事 例 研 究 対 象 と す る 。 こ の 賞 は 、放 送 批 評 懇 談 会 が 、社 会 に 重 要 な 問 題 提 起 を 促 し た 番 組 に 贈 ら れ る も の で あ る 。 そ の 受 賞 番 組 に は 、 行 政 、 司 法 、 会 社 組 織 な ど に 影 響 を 与 え 、 社 会 に 影 響 を 与 え た 番 組 が あ る 。 た だ し 、 受 賞 番 組 の 情 報 公 開 に は 制 限 が あ り 、 詳 細 な 影 響 過 程 や 要 因 を 分 析 す る こ
5
と は 困 難 で あ る 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 社 会 に 影 響 を 与 え た テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 動 向 を 捉 え る こ と と す る 。
第 2 に 、1980 年 に TBS で 放 送 し た 、『 テ レ ポ ー ト TBS6 』 内 の 特 集 ド キ ュ メ ン タ リ ー 『 ベ ビ ー ホ テ ル 』(以 下 『 ベ ビ ー ホ テ ル 』)を 取 り 上 げ る 。『 ベ ビ ー ホ テ ル 』 は 、 営 利 化 す る 無 認 可 保 育 所 の 危 険 性 を 示 唆 し た 番 組 で あ る 。放 送 し た 翌 年 の 1981 年 に 児 童 福 祉 法 が 改 正 さ れ る と い う 、 大 き な 社 会 的 影 響 を 与 え た テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー で あ る 。 法 治 国 家 で あ る 日 本 に お い て 、 法 改 正 に 影 響 を 及 ぼ し た と い う こ と は 、 最 も 大 き な 社 会 的 影 響 を 与 え た も の と し て 捉 え る こ と が で き る だ ろ う 。 筆 者 が 調 査 し た 限 り 、 法 改 正 ま で 影 響 を 及 ぼ し た テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー は 『 ベ ビ ー ホ テ ル 』 し か な い 。
第 3 に 、2007年 に 日 本 テ レ ビ で 放 送 し た『NNN ド キ ュ メ ン ト ′07 ネ ッ ト カ フ ェ 難 民 』(以 下『 ネ ッ ト カ フ ェ 難 民 』)を 事 例 研 究 対 象 と す る 。こ の 番 組 は 、貧 困 問 題 を 提 示 し た 番 組 で あ る 。放 送 し て わ ず か5か 月 で 、厚 生 労 働 省 と 自 治 体 に よ っ て 実 態 調 査 が 行 わ れ た 。 そ の 調 査 結 果 か ら 行 政 措 置 と し て 、 生 活 困 窮 者 に 対 し て 新 た に 行 政 相 談 窓 口 が 設 置 さ れ る な ど の 社 会 的 影 響 を 与 え た テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー で あ る 。
0-3-2 事例研究における分析枠組み
こ れ ま で テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に 特 化 し た 効 果 研 究 は ほ と ん ど さ れ て い な い 。 そ の た め に 、 こ れ ま で 研 究 が な さ れ て き た マ ス ・ メ デ ィ ア 効 果 研 究 モ デ ル を 実 際 に 政 策 に 影 響 を 与 え た テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に 当 て は め て 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 効 果 分 析 を 行 う 。
第 1 に 、 マ ス ・ メ デ ィ ア の 効 果 モ デ ル と し て 、 マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 の 「 ア ジ ェ ン ダ(議 題)設 定 機 能 」を 用 い る 。こ れ は 、メ デ ィ ア・ア ジ ェ ン ダ を メ デ ィ ア が 強 調 す れ ば す る ほ ど 、受 け 手 も そ の 議 題 を 重 要 視 す る と い う 仮 説 で あ る 。受 け 手 と は 読 者(新 聞 の 場 合)、
聴 衆(ラ ジ オ)、視 聴 者(テ レ ビ)を 指 し 、世 論 が 喚 起 さ れ る と 政 策 形 成 者 に 影 響 を 与 え 、政 策 ア ジ ェ ン ダ と な る 過 程 で あ る 。
第 2 に 、政 治 社 会 学 の 視 点 か ら 、「 ア ジ ェ ン ダ 構 築 機 能 」を 用 い る 。第 1 に 提 示 し た「 ア ジ ェ ン ダ 設 定 機 能 」 は マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 の 視 点 、 つ ま り 「 受 け 手 」 の 視 点 か ら 政 策 ア ジ ェ ン ダ へ の 影 響 過 程 を 分 析 し て い る が 、 政 治 社 会 学 の 視 点 で は 、 政 策 ア ジ ェ ン ダ は ど の よ う に し て 構 築 さ れ る の か と い う 分 析 を 行 っ て い る 。ア ジ ェ ン ダ 構 築 機 能 に お い て 、 政 策 決 定 が さ れ る 過 程 に 、 マ ス ・ メ デ ィ ア が ど の よ う に 影 響 を 及 ぼ し て い る か の 分 析 を ア メ リ カ の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 学 者 プ ロ テ ス が 「 提 携 モ デ ル 」 と し て 提 示 し た 。 こ の 「 提 携 モ デ ル 」 は 、 メ デ ィ ア ・ ア ジ ェ ン ダ と 政 策 ア ジ ェ ン ダ は 、 制 作 者 と 政 策 形 成 者 に よ っ て 作 ら れ る と い う も の で あ っ た 。
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本 論 文 で は 、 ア ジ ェ ン ダ 構 築 機 能 に よ る 比 較 的 新 し い プ ロ テ ス の 「 提 携 モ デ ル 」 を 分 析 枠 組 み と し て 設 定 す る 。ま た 、分 析 の 枠 組 み に と ら わ れ ず 、テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー が 、 政 策 決 定 に 影 響 を 及 ぼ す 過 程 に 、 ド キ ュ メ ン タ リ ー 制 作 者 、 市 民 、 政 策 形 成 者 、 市 民 活 動 家 、NPO、専 門 家 な ど の 間 で ど の よ う な 相 互 作 用 が あ っ た の か 、そ し て ど の よ う な 構 造 性 が あ っ た の か 、 を 分 析 す る こ と と す る 。
第 3 に 、 ド キ ュ メ ン タ リ ー 制 作 者 、 政 策 形 成 者 に イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を 実 施 す る 。 イ ン タ ビ ュ ー 方 法 と し て は 、 質 問 事 項 を 事 前 に 大 筋 で 決 定 す る が 、 会 話 の 展 開 で 臨 機 応 変 に 順 序 や 内 容 を 変 更 す る ス タ イ ル の 「 半 構 造 化 イ ン タ ビ ュ ー 」 を 採 用 し た 。 ド キ ュ メ ン タ リ ー 制 作 者 に 対 し て 、 制 作 過 程 や 放 送 後 の 活 動 を 中 心 に 質 問 し 、 政 策 形 成 者 に は 、 政 策 決 定 を す る 際 に 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に 影 響 を 当 て ら れ る 点 を 質 問 事 項 と し た 。
0-3-3 調査方法
事 例 研 究 と し て 取 り 上 げ る 、『 ベ ビ ー ホ テ ル 』 と 『 ネ ッ ト カ フ ェ 難 民 』 の 放 送 に よ っ て 、 行 政 政 策 に ど の よ う に 影 響 を 及 ぼ し た の か を 分 析 す る 。 前 項 で 分 析 枠 組 み を 設 定 し た が 、 そ の 番 組 に お け る 主 軸 部 分 の 影 響 過 程 だ け の 分 析 で は 、 不 十 分 で あ る 。 な ぜ な ら 、 他 の マ ス ・ メ デ ィ ア が ど の よ う に 扱 い 、 国 会 審 議 や 都 議 会 で ど の よ う に 取 り 扱 わ れ た の か を 調 査 し な け れ ば 、 そ の 番 組 が 真 に 社 会 的 影 響 を 与 え た か ど う か が 実 証 で き な い か ら で あ る 。
第 1 の 調 査 手 法 と し て 、 こ の テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 以 外 の 主 要 マ ス ・ マ ス メ デ ィ ア で あ る 、 新 聞 ・ 大 衆 雑 誌 ・ 専 門 雑 誌 が 同 テ ー マ を ど の よ う に 扱 っ て い た の か 、 そ れ ぞ れ デ ー タ 検 索 を 使 用 し て 、 数 値 化 に よ る 変 遷 や 内 容 調 査 を 行 う 。
第 2 に 、『 ベ ビ ー ホ テ ル 』と『 ネ ッ ト カ フ ェ 難 民 』と い う 番 組 の タ イ ト ル が 、都 議 会 や 国 会 審 議 で ど う の よ う に 扱 わ れ て い た の か を 、 そ れ ぞ れ デ ー タ 検 索 を 使 用 し て 、 数 値 化 に よ る 変 遷 、 内 容 調 査 を 行 う 。
0-4 本論文の構成
本 論 文 は 、2 部 構 成 と す る 。第 Ⅰ 部 は 、「 マ ス ・ メ デ ィ ア に お け る テ レ ビ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 位 置 づ け と 先 行 研 究 」と し 、第 1 章 か ら 第 3 章 で 構 成 さ れ る 。第 Ⅱ 部 は 、「 事 例 研 究 の 結 果 と 分 析 」 と し 、 第 4 章 か ら 第 9 章 で 構 成 さ れ る 。
第 Ⅰ 部 、「 マ ス・メ デ ィ ア に お け る テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー の 位 置 づ け と 先 行 研 究 」で は 、 マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 や マ ス ・ メ デ ィ ア と 社 会 的 効 果 に 関 連 す る 学 問 領 域 か ら
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の 先 行 研 究 の 整 理 を 行 う 。 そ の 先 行 研 究 の 理 論 枠 組 み を 通 し て テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に 特 化 し た 場 合 の 考 察 を 行 う 。
第 1 章 で は 、 マ ス ・ メ デ ィ ア に お け る テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 位 置 づ け を 明 ら か に す る 。 第 1に 、 マ ス ・ メ デ ィ ア や マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 用 語 の 整 理 を 行 い 、 マ ス ・ メ デ ィ ア 全 体 を 概 観 す る 。 第 2 に 、 情 報 の 受 け 手 で あ る 市 民 の マ ス ・ メ デ ィ ア 使 用 に 関 す る 調 査 か ら 、 マ ス ・ メ デ ィ ア に お け る テ レ ビ の 位 置 づ け に 関 す る 考 察 を 行 う 。 第 3 に 、テ レ ビ に お け る ド キ ュ メ ン タ リ ー の 位 置 づ け を 行 う 。 特 に ジ ャ ー ナ リ ズ ム の 機 能 を 有 す る ニ ュ ー ス と ド キ ュ メ ン タ リ ー の 違 い を 明 ら か に す る た め に 、 形 式 的 な 差 異 、 内 容 的 な 差 異 に つ い て 分 析 検 討 す る 。
第 2 章 で は 、主 に ド キ ュ メ ン タ リ ー の 機 能 に つ い て 論 じ る 。テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 機 能 に 特 化 し た 先 行 研 究 は な い た め 、 マ ス ・ メ デ ィ ア の 機 能 、 テ レ ビ の 機 能 、 ジ ャ ー ナ リ ズ ム の 機 能 を 整 理 し 、 と く に 「 ニ ュ ー ス 」 と 「 ド キ ュ メ ン タ リ ー 」 の 機 能 の 違 い を 明 ら か に す る 。
第 3 章 で は 、 効 果 に つ い て 論 じ る 。 マ ス ・ メ デ ィ ア が 政 策 決 定 に 与 え る 効 果 に つ い て 、 マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 と 政 治 社 会 学 に お け る そ れ ぞ れ の 先 行 研 究 の 整 理 を 行 う 。 そ し て そ れ ら の 先 行 研 究 を 、テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー に 適 合 さ せ た 際 の 考 察 を 行 う 。ま た 、 筆 者 独 自 の 調 査 研 究 と し て 、 政 策 形 成 者 が テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー に よ っ て 政 策 決 定 に 影 響 を 受 け た 場 合 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 何 に 視 点 を 置 い て い た の か を 分 析 検 討 し た 。
第 4 章 で は 、 第 Ⅰ 部 で 取 り 上 げ た 先 行 研 究 の 整 理 に よ っ て 新 た な 定 義 づ け を 行 い 、 さ ら に 機 能 、 効 果 研 究 を も と に 、 事 例 研 究 に お け る 分 析 枠 組 み を 設 定 す る 。
第 5 章 で は 、 政 策 決 定 に 影 響 を 与 え た テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 番 組 を 事 例 に 取 り 上 げ て 、 そ の 影 響 過 程 の 検 証 を 行 う 。
社 会 に 影 響 を 与 え た テ レ ビ 番 組 を 表 彰 す る ギ ャ ラ ク シ ー 賞 報 道 活 動 部 門 の 受 賞 番 組 、 136番 組 を 研 究 対 象 と し 、社 会 に 影 響 を 与 え る テ レ ビ・ド キ ュ メ ン タ リ ー の 動 向 を 分 析 す る 。
第 6 章 で は 、社 会 的 効 果 を 与 え た 番 組 を 1 つ 具 体 的 に 取 り あ げ 、細 部 に ま で わ た る 質 的 研 究 を 行 う 。
本 章 で は 1980 年 に 放 送 さ れ た TBS『 ベ ビ ー ホ テ ル 』 を 事 例 と す る 。 第 4 章 の 分 析 枠
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組 み の 他 、 制 作 過 程 か ら 政 策 決 定 の 動 き を 明 ら か に す る こ と で 、 影 響 を 与 え た 要 因 を 考 察 す る 。
第 7 章 で は 、 第 6 章 同 様 に 、具 体 的 な 事 例 を 1 つ 取 り 上 げ 、 精 緻 な 質 的 研 究 を 行 う 。本 章 で は 2007 年 に 放 送 さ れ た 日 本 テ レ ビ『 ネ ッ ト カ フ ェ 難 民 』を 事 例 と す る 。前 章 と 同 じ く 、第 4 章 の 分 析 枠 組 み の 他 、制 作 過 程 か ら 政 策 決 定 の 動 き を 明 ら か に す る こ と で 、 社 会 的 影 響 を 与 え た 要 因 を 考 察 す る 。
第 8 章 で は 、第 5 章 か ら 第 7 章 の 事 例 の 分 析 の 結 果 を も と に 、比 較 研 究 を 行 う 。分 析 枠 組 み に お け る 共 通 項 、影 響 要 因 に お け る 共 通 項 を 考 察 す る 。そ れ ら の 研 究 結 果 か ら テ レ ビ・
ド キ ュ メ ン タ リ ー に お け る 政 策 ア ジ ェ ン ダ 構 築 過 程 を 考 察 す る 。
第 9 章 で は 、終 章 と し て 、本 論 文 の ま と め を 行 う 。本 論 文 の 研 究 に よ っ て 得 ら れ た 知 見 の 整 理 を 行 い 、 研 究 の 限 界 と 今 後 の 課 題 を 述 べ る 。
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第Ⅰ部 マス・メディアにおける「テレビ・ドキュメンタリー」の位置づけと先行研究 第1 章 マス・メディアにおけるテレビ・ドキュメンタリーの位置づけ
本 章 で は 、 マ ス ・ メ デ ィ ア に お け る テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー が ど の よ う に 位 置 づ け ら れ て い る の を 明 ら か に す る 。 第 1 に 、 マ ス ・ メ デ ィ ア を 概 観 し 、 用 語 の 整 理 を 行 う 。 第 2 に 、 マ ス ・ メ デ ィ ア に お け る テ レ ビ の 位 置 づ け の 論 考 を 行 う 。 第 3 に 、 テ レ ビ に お け る ド キ ュ メ ン タ リ ー の 位 置 づ け を 行 う 。 主 に 、 ニ ュ ー ス と ド キ ュ メ ン タ リ ー の 違 い を 構 造 的 、 内 容 的 に 明 ら か に す る 。 第 4 に 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 系 譜 を 概 観 す る 。 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー が 歴 史 的 背 景 の 中 で ど の よ う に 誕 生 し た の か 、 現 在 ド キ ュ メ ン タ リ ー が 置 か れ て い る 位 置 づ け を 歴 史 的 概 念 か ら 考 察 す る 。 第 5 に 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 定 義 と 類 型 を 整 理 す る 。 定 義 に つ い て は 、 ド キ ュ メ ン タ リ ー 制 作 者 と 研 究 者 の 定 義 を 整 理 し 、 本 論 文 で 新 た な 定 義 を 行 い た い 。 ま た 、 テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー の 題 材 の 類 型 化 を 行 い 、 本 論 文 の テ レ ビ ・ ド キ ュ メ ン タ リ ー 研 究 内 に お け る 位 置 づ け を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。
1-1 マス・メディアの概観・用語の整理
マ ス ・ メ デ ィ ア を 概 観 す る に あ た り 、 ま ず 現 代 に 至 る ま で マ ス ・ メ デ ィ ア の 在 り 方 が ど う 変 容 し て い っ た の か 、 簡 単 に 整 理 す る 。15 世 紀 に は じ ま る 活 版 印 刷 技 術 に よ っ て 、 書 籍 物 が 印 刷 さ れ は じ め 、19 世 紀 後 半 に 新 聞 な ど が 大 量 に 印 刷 さ れ た 。つ ま り 、19 世 紀 か ら 、 マ ス ・ メ デ ィ ア に お け る マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 過 程 が 成 立 し た と 言 っ て よ い だ ろ う 。そ し て 、20世 紀 前 半 に は 、情 報 を よ り 早 く 大 量 に 広 範 に 伝 達 す る 技 術 と し て 、ラ ジ オ や 映 画 が 生 み 出 さ れ た 。 そ れ か ら 半 世 紀 ほ ど 経 っ た 、20 世 紀 半 ば に は 、 テ レ ビ が 誕 生 し 普 及 し た の で あ る 。 そ し て 20 世 紀 後 半 か ら 現 代 に お い て 、 急 速 に 発 展 を 遂 げ て い る の は イ ン タ ー ネ ッ ト で あ る 。 イ ン タ ー ネ ッ ト は 、 不 特 定 多 数 の 「 大 衆 」 に 対 し て 個 人 が 大 量 の 情 報 発 信 を 行 う こ と を 可 能 と し た 。
し か し 、 社 会 学 の 「 マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」 の 定 義 で は 、 個 人 が 「 大 衆 」 に 向 け る イ ン タ ー ネ ッ ト の よ う な 情 報 発 信 に つ い て は 、 マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 行 為 で は な い と し て 明 確 に 否 定 し 、 定 義 を 再 設 定 し て い る 。
『 現 代 社 会 学 事 典 』(2012)8、で の 、「 マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」は 、イ ン タ ー ネ ッ ト の 誕 生 を 受 け て 、「 専 門 職 業 的 な 組 織 体 と し て の 送 り 手 が 、受 け 手 の 大 量 化 を 企 図 し な が ら 、
8 『 現 代 社 会 学 事 典 』( 2 0 1 2 )、 弘 文 堂 。(顧 問 : 三 田 宗 介 、 編 者 : 大 澤 真 幸 、 吉 見 俊 哉 、 鷲 田 清 一)。
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機 械 的 技 術 手 段 を 用 い て メ ッ セ ー ジ を 公 開 す る 活 動 で あ る 」9と 再 定 義 を 行 っ て い る 。こ こ で い う「 専 門 職 業 的 な 組 織 体 と し て の 送 り 手 」と い う の は 、従 来 の マ ス・メ デ ィ ア と し て 、 新 聞 ・ 出 版 ・ 放 送 ・ 映 画 も も ち ろ ん 含 ま れ る が 、 あ え て 、 特 定 し て 明 記 し な い の は 、 イ ン タ ー ネ ッ ト を 媒 体 と す る 新 興 メ デ ィ ア も 含 ま れ る か ら で あ ろ う 。 た だ し 、 再 定 義 に お い て も 「 専 門 職 業 的 な 組 織 体 」 と し て い る こ と は 、 個 人 の 大 量 発 信 を 含 ま な い と 明 確 化 し て い る 。 つ ま り 、 S N S や ブ ロ グ な ど は マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 定 義 に は 入 ら な い と 考 え ら れ よ う 。
さ ら に 、『 岩 波 小 辞 典 社 会 学 』(2003)1 0、に お け る 、「 マ ス・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」は 、
「 新 聞 、 雑 誌 、 ラ ジ オ 、 テ レ ビ な ど 、 マ ス ・ メ デ ィ ア を 介 し て 、 様 々 な 情 報 が 、 不 特 定 多 数 の 受 け 手 に 伝 達 さ れ る 社 会 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 過 程 」。 と し た 上 で そ の 補 足 と し て 、
「 情 報 を 生 産 す る 資 本 の 活 動 、 政 策 や 法 に よ る 規 制 、 権 力 か ら 独 立 し た 言 論 機 関 の 理 念 、 経 済 ・ 政 治 ・ 文 化 の 複 雑 な 作 用 に よ っ て 社 会 的 に 制 度 化 さ れ た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 過 程 で あ る 」と し て い る 。こ こ で の 概 念 で は 、「 公 共 性 」に 重 点 が お か れ て い る 。そ れ は 、前 出 の
『 現 代 社 会 学 事 典 』 に お い て も 「 メ ッ セ ー ジ を 公 開 す る 活 動 」 と い う 記 述 が 「 公 共 性 」 の 意 味 合 い を 含 ん で い る と 考 え ら れ る 。
し た が っ て 、本 論 文 に お い て「 マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」と は 、「 専 門 職 業 的 な 組 織 体 と し て の 送 り 手 が 、 不 特 定 多 数 の 受 け 手 に 情 報 を 発 信 す る 公 共 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 過 程 」 と 定 義 す る 。
2019 年 5 月 の 参 院 本 会 議 で 、 N H K の テ レ ビ 放 送 の イ ン タ ー ネ ッ ト へ の 常 時 同 時 配 信 を 認 め る 改 正 放 送 法 が 可 決1 1さ れ た の を 受 け 、従 来 の マ ス ・ メ デ ィ ア が 大 量 に 情 報 を 伝 達 し 公 開 し て い く 場 を「 イ ン タ ー ネ ッ ト 」に す る 動 き が あ る1 2。こ れ ま で 、 イ ン タ ー ネ ッ ト は 、 個 人 や 新 興 メ デ ィ ア の 発 信 の ツ ー ル で あ っ た が 従 来 の マ ス ・ メ デ ィ ア の マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の ツ ー ル に も な り つ つ あ る 。特 に テ レ ビ に お け る イ ン タ ー ネ ッ ト・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 過 程 に つ い て は 、放 送 法 改 正 と 共 に 重 要 な 研 究 対 象 と な る と 考 え ら れ 、 今 後 の 動 向 を 注 視 し た い 。
次 に 、 マ ス ・ メ デ ィ ア 情 報 の 「 受 け 手 」 に つ い て 考 え た い 。
ま ず 、マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 研 究 の 中 で は 、マ ス ・ メ デ ィ ア の 情 報 の 受 け 手 に つ い て 「 大 衆 」「 公 衆 」 な ど 、 様 々 な 用 語 で 表 現 し て い る 。
9 『 現 代 社 会 学 事 典 』( 2 0 1 2 )、 弘 文 堂 。p . 1 2 0 3 .
1 0 『 岩 波 小 辞 典 社 会 学 』( 2 0 0 3 )、 岩 波 書 店 。(編 集:宮 島 喬)。 1 1 「N H K N e w s W e b 」 イ ン タ ー ネ ッ ト サ イ ト
h t t p s : / / w w w 3 . n h k . o r . j p / n e w s / h t m l / 2 0 1 9 0 5 2 9 / k 1 0 0 1 1 9 3 3 5 2 1 0 0 0 . h t m l 2 0 1 9 年 6 月 2 1日 閲 覧 。 1 2 新 聞 に お い て は 、 全 国 紙 は 既 に 独 自 に イ ン タ ー ネ ッ ト で 情 報 を 公 開 し て い る 。
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マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 研 究 の 大 石 裕1 3は 、2016年 に 『 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 研 究
- 社 会 の 中 の メ デ ィ ア 第 4版 』と い う マ ス ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 の 教 科 書 的 な 文 献 を 出 版 し た 。そ こ で は マ ス ・ メ デ ィ ア の 受 け 手 を「 大 衆 」「 公 衆 」と 使 い 分 け て い る が 、そ れ ぞ れ の 定 義 は 行 っ て い な い 。更 に マ ス・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 研 究 が 専 門 の 竹 下 俊 郎 の 、『 メ デ ィ ア の 議 題 設 定 機 能 』(1998)1 4、に お い て 、そ の 表 記 を み る と「 受 け 手 」「 市 民 」「 一 般 の 人 々 」「 公 衆 」と い う 幾 つ も の 用 語 を 使 用 し て お り 、そ れ ぞ れ の 定 義 も 行 っ て い な い 。こ の よ う に 、マ ス・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 の 中 で「 受 け 手 」の 用 語 の 使 用 に は 一 貫 性 が な く 、 か つ 定 義 も さ れ ず に 記 さ れ て い る こ と が 散 見 さ れ る 。 本 論 文 に お い て は 、 マ ス ・ メ デ ィ ア 情 報 の 受 け 手 を ど う 捉 え る か は 重 要 な 要 素 で も あ る た め 、 こ こ で 用 語 の 整 理 、 ま た 概 念 の 整 理 を 行 い た い 。
『 現 代 社 会 学 事 典 』 で は 、【 大 衆 】 と 【 公 衆 】 を 以 下 の よ う に 記 述 し て い る 。
【 大 衆 】:民 主 化 と と も に 進 ん だ「 諸 条 件 の 平 等 」の も と で 登 場 し た 等 し く 豊 か な 無 数 の 個 人 が 大 衆 mass で あ る 。
【 公 衆 】:公 衆 は 、衝 動 的 な 群 衆 と の 対 比 で 理 性 的 な 個 人 、す な わ ち 市 民 社 会 の 担 い 手 と し て イ メ ー ジ さ れ て き た 。 密 集 し て 付 和 雷 同 す る 群 衆 に 対 し て 、 公 衆 を 構 成 す る 教 養 あ る 市 民 は 分 散 し て 存 在 す る か メ デ ィ ア に よ っ て 共 通 の 関 心 で 結 ば れ て い る と 考 え ら れ た 。 公 衆 と は 、 開 か れ た 場 所 で 自 由 に 議 論 を 行 う 市 民 の 理 想 型 で あ る 。 議 論 の 前 提 に は 知 識 が 不 可 欠 で あ る 。 公 衆 と は 「 教 養 と 財 産 」 を も っ た 読 書 人 を 意 味 し た 。
『 現 代 社 会 学 事 典 』で の 、「 大 衆 」は 、政 治 的 な 意 図 や 属 性 な ど 関 係 な く「 不 特 定 多 数 の 人 々 」を 指 し て い る 。し か し ス ペ イ ン の 哲 学 者 で あ る 、ホ セ・オ ル テ ガ・イ・ガ セ ー(José Ortega y Gasset)(1930)は 、19世 紀 末 か ら 20 世 紀 初 頭 に 登 場 し た 「 大 衆 」 を 批 判 的 に 扱 い 、以 下 の よ う に 定 義 し て い る 。「 大 衆 と は 、み ず か ら を 、特 別 な 理 由 に よ っ て ― ― よ い と も 悪 い と も ― ― 評 価 し よ う と せ ず 、 自 分 が ≪ み ん な と 同 じ だ ≫ と 感 じ る こ と に 、 い っ こ う に 苦 痛 を 覚 え ず 、 他 人 と 自 分 が 同 一 で あ る と 感 じ て か え っ て い い 気 持 ち に な る 、 そ の よ う な 人 々 全 部 で あ る 」(オ ル テ ガ 1930、 寺 田 2002:9)1 5。 ま た 、 オ ル テ ガ は 大 衆 を 次 の よ う に も 述 べ て い る 。「 自 分 に な ん ら 特 別 な 要 求 を し な い 人 で あ る 。( 彼 ら に と っ て 、)生 き る と は 、 い か な る 瞬 間 も 、 あ る が ま ま の 存 在 を 続 け る こ と で あ っ て 、 自 身 を 完 成 し よ う と い う 努 力 を し な い 」。1 6オ ル テ ガ は 、「 み ん な と 同 じ 」こ と で 快 感 を 受 け 満 足 す る 大 衆 は 、
1 3 2 0 1 5年 か ら 日 本 マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 学 会 会 長 。 慶 應 義 塾 大 学 法 学 部 教 授 。 1 4 竹 下 俊 郎( 1 9 9 8 )、『 メ デ ィ ア の 議 題 設 定 機 能 』、 学 文 社 。
1 5 オ ル テ ガ( 1 9 3 0 )寺 田 和 夫 訳( 2 0 0 2 )、『 大 衆 の 反 逆 』、 中 央 公 論 新 社 。 1 6 オ ル テ ガ( 1 9 3 0 )寺 田( 2 0 0 2 )、 前 掲 書1 5.
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自 分 の 行 動 に な ん ら 責 任 を 負 わ ず 、 自 ら の 欲 望 や 権 利 の み を 主 張 す る こ と を 特 徴 と し た 。 オ ル テ ガ は 、 こ の よ う な 「 大 衆 化 」 は 文 明 を 衰 退 し か ね な い と 警 告 し た の で あ る 。
し た が っ て 、『 現 代 社 会 学 事 典 』で は 、単 な る「 不 特 定 多 数 の 人 々 」と し て い る が 、オ ル テ ガ の 大 衆 の 定 義 か ら 、 個 人 と し て の 自 立 性 を 欠 い た 批 判 的 な 意 味 合 い が 含 ま れ て い る こ と が 言 え る だ ろ う 。
一 方 「 公 衆 」 は 、 マ ス ・ メ デ ィ ア の 情 報 に よ っ て 影 響 を 与 え ら れ 、 政 治 参 加 や 市 民 社 会 を 担 う 積 極 的 な 個 人 の 集 合 体 と し て 捉 え る こ と が で き る だ ろ う 。 つ ま り 、 大 衆 の 中 に 公 衆 が 含 ま れ る と い う 解 釈 す る こ と が で き る 。 上 記 の マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 研 究 者 た ち が 、「 大 衆 」 と 「 公 衆 」 を 戦 略 的 に 使 い わ け て い た の で あ ろ う 。
し か し 、「 公 衆 」に つ い て は 度 々 、学 者 た ち の 間 で 論 争 が さ れ て い た 。フ ラ ン ス の 社 会 学 者 で あ る タ ル ド ,G(Tarde, Gabriel de)が「 公 衆 」と い う 用 語 を ま ず 使 用 し た 。タ ル ド は 、
『 模 範 の 法 則 』(1890、訳 2007)で 、マ ス・メ デ ィ ア を 介 し て 情 報 を 受 け 取 り 、議 論 に 耳 を 傾 け て 世 論 の 担 い 手 に な る 人 々 を さ し て 公 衆(public)と 呼 ん だ の で あ る1 7。 タ ル ド は 、 新 聞 な ど の マ ス ・ メ デ ィ ア は 、 民 主 主 義 を 正 し く 機 能 さ せ る よ う に 、 公 共 性 の 概 念 を 持 っ た 市 民 を 生 み 出 す と し た の で あ る 。 し か し 19 世 紀 後 半 か ら タ ル ド の 「 公 衆 」 の 概 念 に 対 し 、 痛 烈 に 批 判 す る 社 会 学 者 た ち が 現 れ 、 論 争 と な っ た 。 そ の 批 判 的 論 者 の 一 人 に リ ッ プ マ ン,W.( Lippmann, Walter)が い る 。 リ ッ プ マ ン が 、 第 一 次 世 界 大 戦 後 に 執 筆 し た 『 幻 の 公 衆 』(1927)で は 、公 衆 が よ く 関 心 を も ち 、よ く 新 聞 を 読 み 、よ く 議 論 す れ ば 公 的 な 諸 問 題 を 十 分 に 処 理 で き る と い う 幻 想 的 な 市 民 参 加 モ デ ル を 痛 烈 に 否 定 し て い る1 8。
で は 、 マ ス ・ メ デ ィ ア が 伝 達 す る 情 報 の 「 受 け 手 」 を ど う 定 義 つ け る の か 。
「 公 衆 」 は 、 マ ス ・ メ デ ィ ア の 情 報 を 受 け 、 政 治 参 加 や 市 民 社 会 を 担 う 積 極 的 な 個 人 の 集 合 体 と 定 義 さ れ て い る が 、リ ッ プ マ ン が 公 衆 を 否 定 し た よ う に 、筆 者 も 受 け 手 を「 公 衆 」 に す る に は 否 定 的 で あ る 。な ぜ な ら 、現 代 大 量 に 存 在 す る マ ス・メ デ ィ ア 情 報 の 受 け 手 は 、 タ ル ド が 指 摘 す る 公 衆 、 つ ま り 政 治 参 加 や 市 民 社 会 に 参 加 す る 理 想 的 な 人 々 だ け で は な い か ら で あ る 。つ ま り 、マ ス・メ デ ィ ア 情 報 の 受 け 手 は ど ち ら か と 言 え ば「 不 特 定 多 数 の 人 々 」 で あ る 「 大 衆 」 の 意 味 合 い が 強 い と 考 え ら れ る 。 し か し 、 オ ル テ ガ が 大 衆 を 定 義 し た よ う に 、 大 衆 は 、 個 人 と し て の 自 立 性 や 責 任 を 欠 く と い う 批 判 的 な 意 味 が 含 ま れ て い る 。 従 っ て 筆 者 は 、「 受 け 手 」 を 「 大 衆 」 と 定 義 し な い 。 な ぜ な ら ば 、「 受 け 手 」 は 、 自 分 の 意 思 を 持 ち 、 マ ス ・ メ デ ィ ア の 情 報 を 獲 得 し よ う と す る 人 々 も い る か ら で あ る 。
1 7 T a r d e , G a b r i e l , 1 9 8 0, L e s l o i s d e l ' i m i t a t i o n : É t u d e s o c i o l o g i q u e , F é l i x A l c a n , P a r i s .タ ル ド 著 、 池 田 祥 英 ・ 村 澤 真 保 呂 訳 ( 2 0 0 7 )、『 模 倣 の 法 則 』、 河 出 書 房 新 社 。p p . 1 0 6 - 1 4 0 .
1 8 L i p p m a n n , W a l t e r 1 9 2 7 , T h e P h a n t o m P u b l i c, M a c m i l l i a n C o . , リ ッ プ マ ン 著 、 河 崎 吉 紀 訳( 2 0 0 7 )、『 幻 の 公 衆 』 柏 書 房 。 p p . 9 - 1 5 .
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そ こ で 筆 者 は 、「 受 け 手 」を「 市 民 」と い う 概 念 か ら 考 察 し た い 。市 民 社 会 論 の 研 究 者 で あ る 山 口 定(2004)は 、市 民 の 定 義 を「 自 立 し た 人 間 同 士 が お 互 い に 自 由・平 等・公 正 な 関 係 に た っ て 公 共 社 会 を 構 成 し 、 自 治 を そ の 社 会 の 運 営 の 基 本 と す る こ と を 目 指 す 自 発 的 人 間 型 」(山 口 定 2004:7)1 9と し て い る 。こ の 市 民 の 定 義 は 、「 大 衆 」と は 真 逆 の 自 立 性 を 持 っ た 人 々 を 指 し て い る 。 し か し こ の 市 民 の 定 義 は 、 タ ル ド が 示 し た 「 公 衆 」 と 同 様 の 意 味 を 示 唆 し て い る 。
そ の 一 方 で 、社 会 学 者 の 萩 原 な つ 子(2001)が 、「 市 民 活 動 」「 住 民 運 動 」を 考 察 す る う え で 、 市 民 と い う 用 語 は 、 あ る べ き 主 体 の 理 想 の 姿 や 理 念 を 示 す 政 治 的 ( あ る い は 社 会 科 学 的)意 味 合 い と は 別 に 、 一 般 の 人 々 の 間 で の 感 覚 と は 異 な る と 指 摘 し て い る 。 萩 原 は ま た 、 市 民 と い う 用 語 の 意 味 合 い は 、 常 に 時 代 と と も に 変 化 し て き て い る の で あ り 、 イ デ オ ロ ギ ー で 単 純 に 分 類 で き る も の で は な い と し て い る2 0。 筆 者 も 、 理 念 的 な 市 民 に と ら わ れ ず 、 近 年 の 市 民 に 関 す る 研 究 か ら 、本 論 文 に お け る「 受 け 手 」と し て の「 市 民 」を 定 義 づ け る 。 そ し て 、近 年 の 市 民 に 関 す る 研 究 の 中 に は 、「 シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 」が あ る 。政 治 哲 学 が 専 門 の 中 村 隆 志(2019)に よ る と 、現 在 の シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 で は 、政 策 決 定 に 参 加 す る 市 民 を 育 成 す る に あ た り 、「 ア ク テ ィ ブ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 」が 目 指 さ れ て い る と し て い る 。「 ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ に は 、「 能 動 的 市 民 」 と い う 訳 語 が 使 わ れ て い る2 1。
「 能 動 的 市 民 」に 対 し て 、「 受 動 的 市 民 」が 対 義 語 と し て あ る が 、こ れ ら の 用 語 は 、1789 年 の 「 フ ラ ン ス 人 権 宣 言 」 の 時 代 に お い て 、 市 民 の 政 治 参 加 を め ぐ る 議 題 で 使 用 さ れ た 。 フ ラ ン ス 人 権 宣 言 や 1791 年 憲 法 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ し た 政 治 家 の エ マ ニ ュ エ ル = ジ ョ セ フ ・ シ エ イ エ ス(Emmanuel-Joseph Sieyès)は 、 年 齢 的 に 関 係 な く 全 て の 個 人 を 「 受 動 的 市 民 」と 位 置 付 け 、「 能 動 的 市 民 」は 政 治 参 加 の 権 利 を 得 る も の と し た 。つ ま り 政 治 に 参 加 す る 権 利 が 与 え ら れ る の は 「 能 動 的 市 民 」 だ と 限 定 し た 。 そ の 理 由 と し て 、 政 治 に 参 加 す る に は 、 十 分 な 知 識 を も た な け れ ば 誤 っ た 判 断 を す る か ら だ と し た2 2。 政 治 の 市 民 参 加 が 重 要 視 さ れ る 今 日 に お い て 、「 受 動 的 市 民 」を 政 治 的 判 断 の 知 識 を 有 す る「 能 動 的 市 民 」 に 教 育 す る こ と が 、 現 在 の 「 シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 」 に つ な が っ て い る 。
こ の 「 能 動 的 市 民 」 と 「 受 動 的 市 民 」 は 、 政 治 的 判 断 へ の 知 識 、 つ ま り 政 治 的 判 断 の 情 報 を 得 よ う と す る か し な い か で 区 分 す る こ と が で き る と 考 え ら れ る 。
1 9 山 口 定 [ 著 ]( 2 0 0 4 )、『 市 民 社 会 論 歴 史 的 遺 産 と 新 展 開 』、 有 斐 閣 。
2 0 萩 原 な つ 子( 2 0 0 1 )、「 身 近 な 環 境 」 に 関 す る 市 民 研 究 活 動 と 市 民 の エ ン パ ワ ー メ ン ト : ト ヨ タ 財 団 助 成 対 象 チ ー ム の 事 例 に み ら れ る<市 民 知>の 形 成 」『 博 士 学 位 論 文 』 お 茶 の 水 女 子 大 学 。p p . 1 5 - 1 6 .
2 1 中 村 隆 志( 2 0 1 9 )、「 能 動 的 市 民 と 政 治 的 リ テ ラ シ ー - シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 の 脱 政 治 家 を め ぐ る 一 考 察 ― 」『 総 合 法 政 策 研 究 会 誌 第2号 』、 ウ ェ ス ロ ー ジ ャ パ ン 。p . 4 4 - 4 5 .
2 2 松 田 憲 忠( 2 0 0 8 )、「 市 民 参 加 と 知 識 利 用 - 政 策 分 析 者 に 期 待 さ れ る 役 割 と は 何 か ? 」『 北 九 州 市 立 大 学 法 政 論 集 第 3 6巻 第 1・ 2合 併 号 』、 北 九 州 市 立 大 学 。p p . 1 0 2-1 0 3 .
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政 治 に 参 加 す る 「 能 動 的 市 民 」 は 、 政 治 的 争 点 と な る 事 柄 に お い て 、 情 報 を 積 極 的 に 獲 得 し よ う と す る 人 々 を 指 す と し た 場 合 、現 実 に 当 て は め る と 、問 題 の 争 点 の「 当 事 者 」や 、 も と も と 政 治 参 加 に 意 欲 的 な 「 市 民 活 動 家 」 な ど が 該 当 す る で あ ろ う 。 一 方 、 政 治 参 加 の 知 識 を 得 よ う と し な い 「 受 動 的 市 民 」 に は 、 政 治 に 無 関 心 な 人 々 や 無 知 の 人 々 な ど が 該 当 す る で あ ろ う 。
筆 者 は 、 情 報 の 「 受 け 手 」 と し て の 「 市 民 」 に 、 上 記 の よ う な 「 能 動 的 市 民 」 と 「 受 動 的 市 民 」 が 存 在 す る と し 、 こ の 2つ の 概 念 を 「 受 け 手 」 の 定 義 と し た い2 3。
以 上 の 定 義 や 用 語 の 整 理 か ら 、 送 り 手 と し て の マ ス ・ メ デ ィ ア が 、 受 け 手 の 市 民 に 伝 達 す る マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 過 程 を 概 観 し 、 概 念 図 に し た の が 、【 図 表 1-1】 で あ る 。
【 図 表 1-1】 マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 過 程 の 概 念 図
筆 者 作 成 2019
図 表 左 端 「 マ ス ・ メ デ ィ ア 」 項 目 の 中 に あ る コ ン テ ン ツ 会 社 と い う の は 、 イ ン タ ー ネ ッ ト を 媒 介 し て 大 量 の 情 報 発 信 す る 会 社 を 指 し て い る 。 例 え ば 、 ア メ リ カ の 動 画 を 配 信 す る 会 社 Netflix や 独 自 の 動 画 コ ン テ ン ツ を 持 つ Amazon Prime、日 本 の イ ン タ ー ネ ッ ト 放 送 局 、Abema TV な ど が 含 ま れ る 。こ れ ら 、マ ス ・ メ デ ィ ア が 、新 聞 や 雑 誌 、ラ ジ オ 、テ レ ビ 、 イ ン タ ー ネ ッ ト と い う 媒 体 を 通 し て 、 市 民 に 大 量 に 情 報 を 伝 達 す る こ と を マ ス ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 過 程 と し て い る 。
こ こ で 特 筆 し て お き た い の が 、マ ス・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 論 の 研 究 者 た ち は 、「 受 け 手 」 に は 、 公 権 力 を も つ 政 策 形 成 者 に 関 し て は 含 め な い こ と を 前 提 と し て い る 。 こ の 視 点 に つ い て は 、 第 3章 の マ ス ・ メ デ ィ ア の 効 果 研 究 の 部 分 で 詳 述 す る 。
2 3 な お 、 本 論 文 に お い て は 、 文 献 引 用 時 に は 、 そ の 際 に 「 大 衆 」「 公 衆 」 等 の 用 語 は そ の ま ま 引 用 す る こ と と す る 。
マス・メディア 新聞社
雑誌社 ラジオ局 テレビ局 コンテンツ会社 など
伝 達
マス・コミュニケーション
新聞・雑誌・ラジオ・テレビ インターネット
能動的市民
受動的市民
・当事者
・市民活動家など 市
民
・無関心の人々
・無知の人々
15 1-2 マス・メディアにおけるテレビの位置づけ
前 節 で も 触 れ た が 、マ ス・メ デ ィ ア は 、社 会 の 流 れ 、特 に 技 術 革 新 に よ っ て 変 容 を 遂 げ 、 そ の 媒 体 を 変 え て い く 。 そ の 始 ま り は 、15 世 紀 に 始 ま る グ ー テ ン ベ ル ク の 金 属 活 字 に よ る 活 版 印 刷 技 術 に よ っ て 、 聖 書 を は じ め と し た 書 籍 物 の 印 刷 が 大 量 に な さ れ る よ う に な っ た こ と に よ る 。19 世 紀 後 半 に 新 聞 な ど が 大 量 に 印 刷 さ れ 、 こ の 時 期 か ら マ ス ・ メ デ ィ ア に お け る マ ス・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 過 程 が 成 立 し た 。そ し て 、20世 紀 前 半 に は 、情 報 を よ り 早 く 大 量 に 広 範 に 伝 達 す る 技 術 と し て 、 ラ ジ オ や 映 画 が 生 み 出 さ れ た 。20 世 紀 半 ば に 、 テ レ ビ が 誕 生 し 、 伝 達 す る 内 容 も 多 岐 に 及 ぶ よ う に な り 、20 世 紀 後 半 か ら 現 代 に お い て 、 急 速 に 発 展 を 遂 げ て い る の は イ ン タ ー ネ ッ ト で あ る 。
こ の よ う に 技 術 革 新 と 共 に 、 マ ス ・ メ デ ィ ア は 複 合 的 に な り 、 紙 媒 体 、 放 送 媒 体 、 そ し て 近 年 は イ ン タ ー ネ ッ ト 媒 体 が 登 場 し て い る 。 従 来 型 の 紙 媒 体 で あ る 新 聞 や 、 放 送 媒 体 の テ レ ビ は 、 イ ン タ ー ネ ッ ト の 目 覚 ま し い 発 展 に よ っ て 「 オ ー ル ド メ デ ィ ア 」2 4と 呼 ば れ る よ う に な っ た 。
総 務 省 が 毎 年 、1 日 の 平 均 利 用 率 の 調 査 を 行 っ て い る 。【 図 表 1-2】は 、総 務 省 の 調 査 、 主 な マ ス ・ メ デ ィ ア の 1 日 平 均 利 用 時 間 = 接 触 時 間 を 示 し た も の で あ る 。
2 4 松 波 功( 2 0 1 9 )、「 新 聞 社 は 生 き 残 れ る か デ ー タ ジ ャ ー ナ リ ズ ム の 到 達 点 と オ ー ル ド メ デ ィ ア の 明 暗 」『J o u r n a l i s m』 朝 日 新 聞 社 ジ ャ ー ナ リ ズ ム 学 校 。
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【 図 表 1-2】 主 な マ ス ・ メ デ ィ ア の 1日 平 均 利 用 時 間(平 日 ・ 全 年 代) (横 軸 は 分) 2017, n=1500
出 典: 総 務 省 『 平 成 30 年 版 情 報 通 信 白 書 』(2018)。p.267-2682 5.よ り 筆 者 作 成 。2019
【 図 表 1-2】 は 最 近 の 5年 の 主 な マ ス ・ メ デ ィ ア の 利 用 時 間 の 変 遷 で あ る 。
リ ア ル タ イ ム で 視 聴 す る テ レ ビ の 利 用 率 が 、 最 も 高 い 。 し か し 、2015 年 に テ レ ビ が 、 174.3 分 で 最 高 値 を 出 し た も の の 、2016 年 に は 168 分 へ と 減 少 へ の 一 途 を た ど る 。
一 方 で 、2015年 に は 、イ ン タ ー ネ ッ ト 利 用 時 間 が 90.4 分 だ っ た が 、翌 年 の 2016年 に は 99.8 分 へ と 飛 躍 的 に 増 加 す る 。 テ レ ビ 利 用 か ら イ ン タ ー ネ ッ ト 利 用 に 大 き く 転 移 し た 傾 向 を 示 す も の と 考 え ら れ る 。 そ の 要 因 の 一 つ に 、2015 年 に 日 本 の 携 帯 電 話 会 社 で 、 第 4 世 代 移 動 通 信 シ ス テ ム(4G)の サ ー ビ ス が 本 格 的 に ス タ ー ト し た こ と が あ げ ら れ よ う 。 こ れ に よ り 、 デ ー タ 量 の 大 き い 動 画 配 信 が ス マ ー ト フ ォ ン 上 で 視 聴 す る こ と が で き る よ う に な っ た 。 し た が っ て テ レ ビ の 動 画 も イ ン タ ー ネ ッ ト で 受 信 す る こ と も 容 易 に な り 、 そ の
2 5 東 京 経 済 大 学 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 学 部 准 教 授 北 村 智 氏 及 び 東 京 大 学 大 学 院 情 報 学 環 助 教 河 井 大 介 氏 に よ っ て 調 査 。1 3歳 か ら 6 9 歳 ま で の 男 女 1 , 5 0 0人 を 対 象 ( 性 別 ・ 年 齢 1 0歳 刻 み で 住 民 基 本 台 帳 の 実 勢 比 例 。2 0 1 7年 調 査 に は 同 年 1月 の 住 民 基 本 台 帳 を 使 用 ) に 、 ラ ン ダ ム ロ ケ ー シ ョ ン ク ォ ー タ サ ン プ リ ン グ に よ る 訪 問 留 置 調 査 で 実 施 。2 0 1 7年 調 査 に つ い て は1 1月 1 1日 ~1 7日 に 地 態 調 査 を 行 っ た 。 テ レ ビ ( リ ア ル タ イ ム ) 視 聴 と は 、 テ レ ビ 受 像 機 に お け る 視 聴 の み な ら ず 、 あ ら ゆ る 機 器 に よ る リ ア ル タ イ ム の テ レ ビ 視 聴 。 ネ ッ ト 利 用 と は 、 機 器 を 問 わ ず 、 メ ー ル 、 ウ ェ ブ サ イ ト 、 ソ ー シ ャ ル メ デ ィ ア 、 動 画 サ イ ト 、 オ ン ラ イ ン ゲ ー ム 等 、 イ ン タ ー ネ ッ ト に 接 続 す る こ と で 成 り 立 つ サ ー ビ ス の 利 用 を 指 す 。 平 日 調 査 日 1日 あ た り の 、 あ る 情 報 行 動 の 全 調 査 対 象 者 の 時 間 合 計 を 調 査 対 象 者 数 で 除 し た 数 値 。 そ の 行 動 を 1日 全 く 行 っ て い な い 人 も 含 め て 計 算 し た 平 均 時 間 。