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2007 年度  修士論文

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2007 年度  修士論文

   

株AssistantDirectorの作成  株式の完全自動売買 

   

早稲田大学大学院理工学研究科情報ネットワーク専攻  成田研究室 Multimedia 班 修士課程 2 年 

 

3606U046-2  菅谷  研司

2007年2月4日

(2)

概要

投資を行うということは不確実な世界の中で意思決定をしていかなければならない。し かし、人間は投資における合理的な判断を適切に下すことができないと行動経済学の理論 で証明されている。

人間の主観・感情をなくした売買を行うために、システム・トレーディングという株式 の自動売買を行うシステムが有効であると考えられる。従来の自動売買システムでは、情 報収集、銘柄の選定、資金管理、売買注文の自動化を行う。しかし、システムを構築する 際には、どのような銘柄を選定するか、どれくらいの規模の投資を行うかというルールが 作成者自身に委ねられている。人間は合理的な判断を下すのが難しいといわれているのに、

ルールの作成には人間の意思決定が介在することになる。

本研究では、銘柄ルールの作成、資金管理ルールを自動化することで、人間の考えを介 在させない完全株式自動売買システムを作り、その有効性を検証することが目的である。

  自動売買システムは大まかにわけて、4つの自動化の方法が考えられる。株の情報の自 動収集・銘柄分析の自動化・投資資金管理の自動化・売買注文の自動化である。株の情報 の収集・売買注文は単純作業の自動化であるために、カブロボをはじめとしたさまざまな プラットフォーム上で作成されているが、株式売買の本質は「安く買って高く売ることで ある」そのことを実現するためには、値上がりしそうな銘柄を効率よく見つけることと、

最適な投資資金を考えることを自動化することが有効になると考えられる。

システム構築の際には、従来のファイナンス理論は用いない。ファイナンス理論は株価 の予測・リスクを回避する方法をさまざまな理論で展開しているが、株式価格の日時収益 (前日から当日までにどれだけの変化があったかを表す指標)が正規分布に従っていると仮 定し展開された理論であるために実際に適用して効果が挙げられるのか効果が疑わる。

第二章では、理論と実務の差ということでファイナンス理論について説明する。

第三章では、従来から用いられている株価の分析手法であるテクニカル分析の問題点に ついて述べる

第4章では、最適な投資資金を自動化するために、投資のモデル化を行い、有効性を検 証する。第5章で、株価の変動のパターンを自動的に見つけ出すための、テクニカル分析 の拡張を行い、決定木によるパターンを効率よく発見するための銘柄分析自動化アルゴリ ズムを考える。

第 5 章において、開発したアルゴリズムを用いて完全自動売買システムを作成し十分な

(3)

利益が上がられることを検証する。

(4)

Abstract

Investing must make the decision in the uncertain world. However, the theory of behavioral economics proves that people are unable to make a reasonable judgment to the investment.

The automatic trading system, system trading, is effective to the people who lost their minds and emotions when making judgments. The functions of past automatic trading systems have gathering information, selecting stocks, money management, and automatic ordering. Trading system developers, however, make decisions of choosing the types of stocks and investing money. Even though making rational appraisal is said to be quite difficult, building rules intervene in making judgments.

The purpose of this research is verifying the effectiveness of automatic trading system.

The author automated rules of selecting stocks and money managements to intervene people's thoughts in the judgments on the trading stocks.

As for the automatic buying and selling system, four automation method is devised roughly separately. It is an automation of the automation and the buying and selling order of the automation and the investment capital management of an automatic collection and the brand analysis of information on the stock. The essence of the exchange of stocks is considered that automating finding the brand that seems to rise efficiently, and the idea of the best investment capital becomes effective to achieve

"Easily It is sold to buy it high" that though the collection and the buying and selling order of information on the stock are made on various platforms including Cabrobo because it is an automation of the mindless job.

In the system development, a past finance theory is not used. Finance theory stock prices forecast risk evade method a variety of theory develop equity price date earnings the day before thata day how much change provide show index normal distribution.

Assuming develop theory actually apply effective enumerate effect doubts.

Chapter 2 explains the finance theory by the difference between the theory and the business.

Chapter 3 models the investment to automate the best investment capital and verifies effectiveness. It thinks about the algorithm of the automation of the brand analysis to discover the pattern with the decision tree efficiently by enhancing a technical analysis to discover the pattern of fluctuations in the value of stocks automatically in Chapter 4.

It is verified that the complete automatic operation buying and selling system is made

(5)

目次 

概要... 2

ABSTRACT... 4

目次... 5

第1章  研究背景... 8

1.1  投資のリスクと取り扱い...8

1.1.1  投資家のリスクの認識...8

1.1.2投資と確率的思考とは      過程と結果の関係...8

1.1.3  「不確実性」を「リスク」かえる手法...9

1.2  投資における意思決定...10

1.2.1 プロスペクト理論...10

1.3 解決方法としてのシステムトレーディング... 11

1.3.1 システムトレーディング  メリット... 11

1.3.2 従来の自動売買システムの構築方法... 11

1.3.3 従来の自動売買システムの構築の問題点...12

1.4  本研究での研究計画...13

第2章  従来の理論と実務の差... 15

2.1 従来のファイナンス理論の問題点...15

2.1.1  従来のファイナンス理論におけるリスクの定義...15

2.1.2  株式市場は正規分布しているか...15

第3章  従来の株価分析手法... 19

3.1 従来のテクニカル分析...19

3.1.1 移動平均線...20

2.1.2 RSI(Relative Strength Index) ...22

2.1.3 VolumeRatio ...23

2.1.4 三点チャージ...24

3.2 従来のテクニカル分析の有効性実験...25

3.2.1 実験目的...25

3.2.2実験方法...25

3.2.3実験結果...27

(6)

3.2.4実験結果の考察...29

3.3 従来のテクニカル分析のまとめ...30

第4章  本研究での戦略... 32

第4章  資金・リスク管理の自動化... 33

4.1  ケリー基準  ギャンブルにおける最適な賭け率の計算...33

4.1.1 ケリー基準の導出...33

3.1.2 ケリー基準の物理的な意味...36

4.2  ケリー基準  投資への拡張...39

4.2.1 投資におけるケリー基準の導出...39

4.2.2 投資におけるケリー基準の使い方...41

4.3 ケリー基準の有効性実験...42

4.3.1実験目的...42

4.3.2実験方法...43

4.3.3実験結果...44

4.3.4実験考察...46

4.4 資金管理・リスク管理の自動化についてのまとめ...49

第5章  銘柄分析手法の自動化... 50

5.1  状況を把握するための情報の追加...50

5.1.1 意思決定が間違える状況の分析  三点チャージモデルを例にして...50

5.1.2 テクニカル分析に追加する情報の決定...51

5.2  状況依存型テクニカル分析実験...53

5.2.1実験目的...53

5.2.2実験方法...53

5.2.3実験方法...54

5.2.4実験考察...56

5.3 決定木による汎用ルールの作成...58

5.3  状況依存テクニカル分析からの汎用ルール作成...58

5.3.1実験目的...58

5.3.2実験方法...59

5.3.3実験結果...59

5.3.4実験考察...61

第6章  株ADの構築... 65

6.1 株式市場でのシミュレーション...66

6.1.1 実験目的...66

(7)

6.1.2 実験方法...66

6.1.3実験結果...67

6.1.4実験考察...68

第7章  今後の展望... 69

7.1  予測精度の高度化...69

7.2 銘柄分析ルールの自動化の高度化  遺伝的プログラミング...69

謝辞... 71

実験で使用したデータセットの銘柄...72

Data50set ...72

Data300set ...72

自動生成されたソースコードの一例...76

(8)

第 1 章  研究背景 

1.1  投資のリスクと取り扱い

1.1.1   投資家のリスクの認識

株式投資を行わない人の一番の理由は「リスク」である。一般的に、投資における「リス ク」とは自分が用意した元本が減る可能性があることをいう。ギャンブルにも「リスク」

という概念が存在する。しかし、両者の「リスク」は本質的には同じではない。

ギャンブルにおける「リスク」は結果の分布が既知である。そのため、どのような行動 をとるのが最適かという問いに対して、確率と統計を応用し、結果の分布に対して期待値 を最大化する明確な戦略を立てることができる。しかし、投資における「リスク」は結果 の分布の形状はわからない。そのために、最適な戦略はなにか?という問いに対しては明 確な戦略を打ち立てることができない。

結果の分布がわからずに最適な戦略を立てられずに損が出る可能性を否定できないこと が投資を「不確実性」という。投資を行う際には、この「不確実性」を「リスク」へとか えるだけの知識や思考を持っていなければ投資ですぐれたパフォーマンスをあげることは できない。

1.1.2 投資と確率的思考とは      過程と結果の関係

エドワード・O・ソープ著の『ビート・ザ・リーダー』では確率論を応用し、ブラック・

ジャックというカードゲームで実際に大きな利益を上げた。この著書は「リスク」のある ギャンブルの中でどのようにしてふるまえば利益を上げることができるかを説明している。

投資はギャンブルとは違うが、意思決定過程は同様なプロセスであると考えられる。意 思決定の過程と結果の関係は次のように表すことができる。

図1.3 意思決定の過程と結果の関係

(9)

多くの投資家は過程よりも利益がでたことを気にする。

人間はよい結果はよい過程に基づくものであり、悪い結果がでたのは過程が悪かったか らだと考える傾向にある。しかし、われわれが認識できる可能性は確実なものではないた めに、ときとして間違った判断が成功に結びつくことがあれば、きわめて正しい判断が失 敗に終わることもある。偶然によって優れた決断が良くない結果に結びつくこともあれば、

まずい結果が良い結果につながることがときどき起きるということである。

投資における良い意思決定とは、主観や感情をなくして機会を確率的に考えられるかと うことである。長期的に勝負を行い、良いパフォーマンスをあげるためには確率的な思考 は不可欠である。ブラック・ジャックでは、勝ったときの利益と負けたときの損は損益の 分布が既知のため比較的容易に判断できるが、投資においてはどれだけの損益があるの か?ということは予測できない。「不確実性」を「リスク」に変換し、それに基づいて売 買の意思決定をすることが重要になる

1.1.3   「不確実性」を「リスク」かえる手法

投資を行う際には、この「不確実性」を「リスク」へとかえる知識や思考を持っていな ければ投資ですぐれたパフォーマンスをあげることはできない。投資家は投資機会を確立 に変換しなければならない。ギーゲレンツァーは著書『数字に弱いあなたの驚くほど危険 な生活』の中で「不確実性」を確率の問題として把握する3つの方法について述べている。

信頼の程度  信頼の程度は、主観的な確率であり不確実性を確率へ 変換する最も大まかな手法である。一回しか起こらなかった出来事 でさえも、それらが確率の法則-すべての独立した可能性を網羅する と合計は 1 となる-を満たすのであれば、確率に変換できる。投資家 は、あらたな情報を入手すると信頼の程度が変化しやすく、頻繁に 信頼の程度は変わっていく。

傾向 傾向に基づく確率は、対象物や仕組みの特性を反映した変換手 法である。たとえば、サイコロが完全に対照的で重心が中心にあれ ばどの面が出る確率も6分の1である。

頻度  起こった出来事すべてのなかで特定の状況が何回起きるか?

ということに注目する方法。サイコロを例にあげれば、サイコロの 構造や、自分の主観である「〜がでそうなきがする」といったものを 全く考えずに、統計的にどの状況が何回おこったかを判断する方法

(10)

である。

この3つのうちで、主観や感情を排した確率の把握方法は頻度による確率の把握だけであ る。

1.2  投資における意思決定 

前章で、投資においての基本的な定義と重要な問題を述べてきたが、人間はそのような合 理的な判断に向いていないということが証明されている。

1.2.1 プロスペクト理論 

1979年にダニエル・カーネマンとエイモス・トヴァスキーが発表したプロスペクト理論は、

人間の経済的な行動が合理的な意思決定と矛盾することを示しているこの理論において指 摘されたことを簡潔にまとめると次のようになる。

人間が金銭的なリスクを伴う選択に直面したときには、金額の大小にかかわらず、過度に 損失を回避しようとする。この論文では、損失は同じ額の利益と比較して約2.5倍のイ ンパクトを与えることを発見している。

新古典主義の経済学では、人間は演繹的な処理を行う機械とみなされている。つまり、一 般的な前提から個々の正しい結論を導くことができると考えられている。しかし、三目並 べのような単純な状況下でさえ、演繹的に正しく行動するための計算機能を備えていな い。

(11)

そのために、なるべく人手を介さずに客観的に売買するようなシステム、つまり、自動売 買システムを構築することが重要になる。

1.3 解決方法としてのシステムトレーディング 

投資を確率の世界の問題へと展開していくのに重要なことは

z 頻度(ヒストグラム)を使って、個々の事例の統計を客観的に出すこと z 人間の主観・感情をなくし、ルールをしっかりと守ること

の2つが大切である。プロスペクト理論から言わせればこの2つのことを守ることは困難 である。それに対する解決手法としてシステム・トレーディングという売買手法が開発さ れた。

1.3.1 システムトレーディング  メリット

システムトレーディングのメリットは、ルールを一度決定すれば取引段階における意思決 定は自分が決定したルールに基づいて行われる。

1.3.2 従来の自動売買システムの構築方法

トレーディング・システムの構築方法は、図の1.3のような流れになっている。

③実験結果の考察

・取引対象の選択 流動性のチェック トレンドのチェック

・テクニカル分析選択 組み合わせ方法の検討

・資金配分・リスク管理手法 組み合わせ方法の検討 取引対象の分散 システムの分散

・シミュレーション方法の決定 分析期間

フォワードテスト 損益分布図

シミュレーション

・結果の考察 トータル損益 全取引回数 成功取引回数 失敗取引回数 平均損益 最大ドローダウン 平均ドローダウン Sharp Ratio 繰り返し

①銘柄選択・分析

②過去データを使って シミュレーション

図 1.3 トレーディング・システム構築手順

(12)

構築手順を詳細に説明する。

①銘柄選択・分析

投資先には、株式市場や為替、先物市場などたくさんの商品が存在する。

自分がどの取引対象を設定するかまず行う。次に、対象をどのような手法を 用いて分析するかという意思決定を行い、実際に容易する投資資金の額を決 定する。

②シミュレーション

過去のデータを容易し①で決定した分析手法の実験を行う。分析期間は長け れば長いほどいいと考えられる。データ数が少ない場合には、フォーワード テストという手法を用いて検証を行っていく。

③シミュレーションの考察

考察にはさまざまな指標が用いられる。その中でも、もっとも重要なものが SharpRatio(シャープレシオ)である。シャープレシオとは、運用して得られ た利益がどれほどのリスクにさらされて得られたものかをあらわす指標であ る。指標は次のように計算される。無リスク証券の収益率は2%とした。

1.3.3 従来の自動売買システムの構築の問題点

自動売買システムは、実際のトレーディングについては、ルールに基づいて自動的に売 買を行うために人間の感情・主観を排除することができると考えられている。しかし、実 際のところは構築の際には、いたるところで人間が意思決定を行っていかなければならな い。

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株式市場

シミュレーション 投資資金額のルール

銘柄選択のルール シミュレーションの考察

成功

人間による意思決定 人間による意思決定

失敗

本研究ではこの、人間による意思決定をなくすように完全な自動売買を行うシステム開発 することを目的とする。

1.4  本研究での研究計画

自動化には4つの自動化の方法が考えられる。

情報収集の自動化  株価や財務諸表などの株式価格分析に必要な情報 を集めること。日々の価格をあらわした株式チャートや、一年の業績 を集めた財務諸表を集める作業は単純作業であるが、株式の量が多い ために膨大な数の Web ページを閲覧し収集していかなくてはならな い。

銘柄選択・売買タイミングの自動化  株式売買においてもっとも重要 な点のひとつ。集めた情報を使って、どの株が「割安」となっているか 探し出すこと。安く買って高く売るためには売買のタイミングを計る ことも重要になる

資金管理のマネジメントの自動化  購入する銘柄を決定したあとに、

どのタイミングで売買をするか決定すること。株式価格は日ごとに変 化していっているために、このタイミングを選ぶ作業も非常に重要で ある。

(14)

売買注文の自動化  銘柄・売買タイミングが決まったときに実際に注 文を出す作業。これも単純作業

このなかで「情報収集」「売買注文」の自動化は、単純作業の自動化でありKaburoboをは じめとしたさまざまなプラットフォーム上で実現されている。しかし、株式売買の本質は

「安く買って、高く売る」ことであり、これを実現するためには「銘柄選択・売買タイミ ング」「資金管理のマネジメント」が重要になるが、この部分に関する自動化の研究は重点 的におこなわれていない。本研究では、この2つのことを重点的に研究する。

以上のようなことを受けて、第二章では従来のリスク・資金管理の手法の問題点を挙げて 説明を行う。第三章では銘柄を自動分析するための、従来の分析方法を考察し問題点をあ げ、その問題点を解決するように第三章で本研究での戦略をたてる。

第4章でギャンブルを参考に資金・リスク管理の自動化についての理論をまとめ、第5 章 では時間と状況を考慮したテクニカル分析手法を提案し、第 6 章でそのシステムを組み合 わせた場合の運用結果を示す。

第 7 章では、今後の展望についてのべシステムの更なる発展を目指すにはどうすればいい のか考える。

(15)

第 2 章  従来の理論と実務の差 

2.1 従来のファイナンス理論の問題点

資金管理や、株価の予測を考える前に従来のファイナンス理論ではどのような考えで理 論が展開されていったのかを考える。従来のファイナンス理論では、株式価格の日次収益 率は正規分布をしているものとして扱っている。この前提条件をもとに、さまざまな理論 が展開されていっている。

2.1.1   従来のファイナンス理論におけるリスクの定義

従来のファイナンス理論のリスクの定義は株価の日次収益の分散のことである。日次収 益とは、前日の株価から当日の株価の変動を百分率で表したものである。図 2 にリターン とリスクの概念図を示す。

図 2 のような分布の銘柄に投資を行ったと仮定したときには、投資金額は、平均のμ倍 になって帰ってくる可能性が高いことを示している。また可能性として分散σだけの超過 収益も見込める可能性もあるが、その分の損失が出る可能性も同様に示唆している。収益 の変化率の分布が図3のように分散が大きくなっているときには、図 2 よりも大きい収益 を得られる可能性が大きくなるがそのぶん損失がでる可能性が高くなる。このように分散 が大きい銘柄はリスクが大きいというように考えるのがファイナンス理論の基礎である。

従来のファイナンス理論は不確実性が支配する投資の世界を確率の世界へと変換する手 法として株価の分布が正規分布すると仮定している。従来のファイナンス理論の前提は正 規分布である。

2.1.2   株式市場は正規分布しているか

  正規分布は、ランダム・ウォーク、資本資産価格モデル(CAPM)、バリュー・アッ ト・リスク(VaR)、ブラックショールズ・モデルをはじめとするファイナンスの基礎であ る。たとえば、バリュー・アット・リスクは、ある確率で起こる出来事によってポートフ ォリオがどの程度の損害を被るかを推計するものである。VaRモデルにはいろいろな種類 があるが、その標準的なモデルはリスクの尺度として標準偏差を用いている。株価の日次 収益が正規分布に従うのであれば、リスクを測定するのは比較的簡単である。しかし、も しも株価変動が正規分布をしないのであれば、標準偏差をリスクの尺度として使うと誤っ

(16)

た結果を導く危険性がある。1

図2.1に、1998年1月4日の日経平均の日次収益率の分布と正規化したときに標準正規 分布に従っているかを示す。図2.2は図2.3の実際の分布の差をとったときのグラフである。

日経平均の日次リターンの分布(1998/1/4〜2008/12/28) -100

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900

-8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 standard deviation

Freaquency

日経平均 標準正規分布

正規分布と実際の分布の差 -125

-75 -25 25 75 125 175 225

-8 -7 -7 -6 -5 -4 -4 -3 -2 -1 -1 0 1 2 3 3 4 5 6 6 7 8

標準偏差

回数の

図2.1  日経平均の日次収益率の分布      図2.2  正規分布と実際の分布の差

同様の調査を、個別の銘柄に対しても成立するか確認する。対象にする銘柄はトヨタ、TDK、

ダイオーズという銘柄を用いる。銘柄選定の理由はこの3種類の分類で値動きが違うといわれてい るからである。たとえば大型株であれば、発行済み株式が多く、一部上場企業の中でも信頼のある 企業が多いために、浮動株といって企業価値を重視した株式保有者が多いために、極端な値動きを することが少ないといわれている。

株式の分類方法に従い大型株、中型株、小型株からひとつずつ選定した。大型、中型、小型株で は株価の値段の動き方には差があると考えられている。分類の定義を示す。

大型株  発行住み株式数が2億株以上

中型株  発行住み株式数が6,000万株以上〜2億株以上 小型株  発行住株式数が6000万株未満

なお実験データの分布に関しては、正規化を行い平均0,分散1の正規分布との比較を行っている。

図2.3,図2.4,図2.5にトヨタ、TDK、ダイオーズの差を示す。

1

(17)

トヨタ(実際の分布と正規分布を仮定したときの分布の差)

-40 -20 0 20 40 60 80 100 120

-8-7.25 -6.5

-5.75 -5 -4.25

-3.5

-2.75 -2-1.25 -0.5 0.25 1

1.75 2.5 3.25 4

4.75 5.5 6.25 7

7.75

標準偏差

頻度

図2.3 トヨタ  日次収益分布と正規分布の差

TDKの実際の分布と正規分布との差 -60

-40 -20 0 20 40 60 80 100

1 4 7 10 13 16 19 22 25 28 31 34 37 40 43 46 49 52 55 58 61 64

標準偏差

頻度

図2.4 TDK  日次収益分布と正規分布の差

ダイオーズ 実際の分布と正規分布の差 -40

-20 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

-8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8

標準偏差

頻度

図2.5 ダイオーズ  日次収益分布と正規分布の差

(18)

図からわかるように、大型株・中型株・小型株においても同様なグラフの概形となってい る。前提としている正規分布と実際の株価の違いは以下のことが言える。

z 小規模の変動が生じる回数が正規分布よりも多い。

z 中規模な変動(標準偏差が0.5〜2.0付近)が生じる回数が正規分布よりも少ない。

z 正規分布よりも、両端に分布するデータが多い(ファットテール)。これは大規模な変動 が予想以上に生じていることを示している。

  分布はヒストグラムで表現しているために、収益率の時間的概念はなくなっているが、

小規模な変動がなんらかの影響で変動幅が大きくなったに中規模な変動を通りすぎて大規 模な変動へと変わりやすいといえる。

このような特徴を持つシステムは複雑系であり、自己組織化臨海システムの特徴である。

自己組織化臨海システムとは、個々のエージェント(株式市場においては投資家)が相互に作 用しあいリーダーの存在しないシステムである。臨海とはシステムの中のわずかな変化が さまざまな種類の出来事を引き起こすようなことをいわれている。

(19)

第 3 章  従来の株価分析手法 

投資家によって、株価が株式の価値よりも割高に見えたり、割安に見えたりする。この ギャップが株式の流動性を決定させるが、どのようにして株価が割高・割安と判断するの か。株式の分析は大まかに分けると、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の2つに 大別することができる。本章では各分析手法の説明を行い分析の自動化で利用する分析手 法を決定する。

テクニカル分析は、株価の時系列の起こったここの事象から、一般的な事実を導き出そ うとする帰納的な分析手法である。それに対して、ファンダメンタルズ分析は、個々の会 社の業績や経済の状態などの前提条件から、起こった事象を説明する演繹的な分析手法で ある。

本研究では、テクニカル分析を応用した手法を用いるためにテクニカル分析について説 明を行う。またテクニカル分析は、短期の取引や確率的に考えるのに向く手法であるため に本研究ではテクニカル分析を用いている。

3.1 従来のテクニカル分析

テクニカル分析とは、株価、出来高、時間から相場や株価を分析・予測することである。

テクニカル分析においては、投資対象としている企業などの業績、経済状況といったファ ンダメンタルズを一切考慮に入れない。過去の株価の動きを分析することだけで、将来の 株価を予測するというものである。

抽象的にとらえると、テクニカル分析は帰納的な手法である。帰納的とは、個別的・特 殊的な事例から一般的・普遍的な規則を見出そうとする推論方法のことである。帰納的な 分析手法は個別・特殊的事実の多さから『結論がどのくらい確からしいものか』を導くた めの推論といえる。これは確証性の原理とも呼ばれ次のように定式化されている。「法則 に関連する観察が増えれば増えるほど、その法則の確からしさは増大する」という大数の 法則に従う。

テクニカル分析はその指標の動きの変化から、いまは買うタイミングなのか、売るタイミ ングなのかを簡略に説明してくれるために、売買を図るタイミングとして用いられている。

テクニカル分析ではさまざまな指標を用いて分析を行うが次のセクションからは本研究で

(20)

も用いている代表的なテクニカル分析の定義を説明していく。

3.1.1 移動平均線

移動平均線とは過去の一定期間の株価の平均値から求める。ある日時の移動平均株価

Piの移動平均の価格は次のように定義される。

N P P

Pi P

i

+

i

+ +

iN

=

1 2

L

N

は移動平均の価格を用いるときに過去何日間のデータを分析するかというパラメータで ある。Pin

n

日前の株価の終値をあらわしている。

N

の数が少ないほど、日々の終値の 動きを表している。

N

を大きくすることで日々の株価の変動(長期的に考えて、日々の価格 変動はノイズと考えられている)をフィルタリングするために、長期的にどのような変化が 起きているかを分析しやすくなる

移動平均を用いた株価の分析を示す。下図はソフトバンクの株価の週足であり、移動平均 は13週と26週の移動平均線を用いた。

図3.1  移動平均線を用いた分析

図2.1では青い線が13週の移動平均を表しており、赤い線が26週の移動平均を表してい

(21)

る。日々の株価の変動のピークに遅れて、13週、26週の移動平均価格のピークが続い ている。短所として、日々の変動に対応できないという問題点が挙げられる。

移動平均を使った売買方法は経験則として重要な経験則があり、「グランビルの8法則」

として知られている。

図3.2 グランビルの8法則

上の図は、移動平均線を使った売買のタイミングを示している。1から4までは「買いシ グナル」、5から8までを「売りシグナル」としている。

①移動平均が下降の後、横ばいか上昇しているときに株価がその移 動平均線を上に突き抜けた場合

②上昇中の移動平均線を株価が下回っても、平均線の上昇に変化が ないときは押し目買い

③移動平均が上昇する移動平均線の上にあって、移動平均線に向か って下降し、平均線を割り込まずに再び上昇した場合

④平均線が下降中でも、株価が以上にかけ離れて下落した場合

⑤移動平均が上昇の後、横ばいか下降しているときに株価がその移 動平均線を下に割り込んだ

⑥下降中の移動平均線を株価が上回っても、平均線の下落を食い止 められない場合

⑦移動平均が下降する移動平均線の下にあって、移動平均線に向か って上昇し、平均線に向かって上昇したものの、平均線を抜けずに 再び下落する場合

(22)

⑧平均線が上昇中でも、株価が以上にかけ離れて上昇した場合

この1から4をゴールデンクロスと呼び「買いシグナル」、5から8をデッドクロスと呼 び「売りシグナル」と考えられている。またこのクロスの方法は、5日と25日の移動平 均線でクロスしたかを判定したり、5日と75日で移動平均線がクロスしたかなど、過去 何日まで参照するかという時間のパラーメータを変化させることができ、この選択はユー ザーによって変化していく。

2.1.2 RSI(Relative Strength Index)

株価が10日間も上昇し続ければ、多くの投資家は心理的に「かなり買われたのではな いか・・・そろそろ下がるのではないか」(買われ過ぎ)、逆に 10 日間 売られていたので あれば「かなり売られた・・・そろそろ上昇するのではないか」(売られ過ぎ)などと考え たくなるものである。

  しかし「買われ過ぎだ」「売られ過ぎた」と言っても、どこまでが買われ過ぎでどこま でが売られ過ぎなのか明確な基準があるわけではない。 つまり、それぞれが場当たり 的な判断になっている。 そのため、何か一定の基準を設けて「買われ過ぎ」「売られ過 ぎ」を客観的に把握するために

RSI

という指標が作られた。

RSI

は今の株価が割高か 割安か(=売られすぎか、買われすぎか)という相場の加熱度の判断するときに使われる 指標である。日本語では「相対力指数」と呼ばれ、物理的な意味は「相対的に今の相場 は強弱どちらに傾いているのか?」をあらわした指標である。

RSI

の定義は次のようになっている。

直近

N

日間でA,B を次のように定義する

A

:直近

N

日間の株価の上げ幅の合計

B

:直近

N

日間の株価の下げ幅の合計 このとき、期間

N

日間の

RSI

は次のように定義される。

)

% (

×100

= + B A RSI A

"相場が上昇から下落、下落から上昇"へと転換するときには「買い」「売り」が一方的に偏 りやすく、それを見抜くことで相場の転換を図ることができるという考えで作られてい る。

(23)

RSI

は 70%超えが変われすぎ、30%以下は売られすぎの水準といえる。しかし、RSI は

30%以下や70%以上の水準で推移するケースが多く、

RSI

がその水準に達した場合でも、

すぐに逆張りをおこなわず、トレンド転換を見極めることが重要となる。

RSI

が必要とするパラメータは過去何日間のデータを参照するかという時間のパラメータ と、

RSI

がどの値になったときに、売られすぎ・買われすぎかを判定するための閾値がパ ラメータとなっている。

  日経平均株価と、

RSI

の図を示す。上の時系列が日経平均の株価を表しており、下の時 系列がそのときの

RSI

(14 日)を示したものである。

RSI

の青い丸が売られすぎの水準で あり買いシグナル、赤い丸の買われすぎの基準で売りシグナルと設定するとしっかりと利 益がとれるような売買がおこなわれている。

図3.3  日経平均とRSI(14日)

2.1.3 VolumeRatio

「ボリュームレシオ」は売買高に注目して、株価の天井圏や底値圏を判断するテクニカル 指標で、一定期間の「株価上昇日の売買高合計」と「株価下落日の売買高合計」との百分 率が「ボリュームレシオ」である。

  「株価が上がる時には売買高が多く、株価が冴えない時には売買高が少ない」という習 性を利用して判断する。「ボリュームレシオが高ければ、相場は過熱 気味」「ボリューム

(24)

レシオが低ければ、相場は低迷気味(冷え込み気味)」ということになります。一般的には、

直近25日間の売買高を使用して算出する。

直近

N

日間でU,D,S を次のように定義する

U

:直近

N

日間の株価上昇日の出来高合計

D

:直近

N

日間の株価下落日の出来高合計

S

:直近

N

日間の株価が変化しないかった日の出来高合計 このとき、期間

N

日間の

VolumeRati o

は次のように定義される。

2 100 2 ×

) S + (D

) S +

= (U o VolumeRati

株式の入門書などには「450%以上が過熱圏、70%以下が底値圏」と書いてあることが多 い。しかし実際 には700%ぐらいに達することもあれば、30%以下が続くこともよくある。

東証1部上場銘柄であれば、ボリュームレシオが400%を超えたら「そろそろ売ろう」と考 えて良いと思います。株価が底値圏にあるかどうかは、「ボリュームレシオ以 外のテクニ カル指標」と併用して判断するのが普通である。

パラメータには過去何日間のデータを参照するのかという時間のパラメータと、RSI と

同様にVolumeRatioがいくつになったときに過熱・底値圏かを判定するための閾値がパラ

メータとなっている。

2.1.4 三点チャージ

三点チャージとは、前にあげた3つの分析手法を組み合わせた指標であり、意思決定モデ ルとして示すと図2.4のようにあわらせる。

  単一の指標を用いたとき、その指標が「買いなさい」というシグナルを出したあとでも、

株価がズルズルと下がっていくことが多い。これを「ダマシ」と呼ぶが、これを防ぐため に複数の手法を組み合わせるのが有効と考えられている。移動平均は、株価の終値との乖 離率を新たなパラメータを追加している。設定するパラメータを表2.1に示す。

(25)

表3.1 三点チャージ分析  設定パラメータ

    RSI  VolumeRatio 移動平均乖離率  パラメータ 1  :集計日数  14 日  26 日  25 日  パラメータ 2  :買いシグナル閾値 25%以下 70%以下  -5%以下  パラメータ 3  :売りシグナル閾値  75  450  5%以下 

図3.4 三点チャージ  意思決定モデル

3.2 従来のテクニカル分析の有効性実験

3.2.1 実験目的

ここでは、代表的なテクニカル分析を使用し実際に利益を上げられるかどうかを確認す る。実験で使用するテクニカル分析は、3点チャージと呼ばれる手法を用いる。

3.2.2 実験方法

使用するテクニカル分析手法

今回の実験で使用するテクニカル分析手法は、前セクションで紹介した、移動平均乖離 率・RSI・Volume・Ratio を組み合わせた 3 点チャージと呼ばれる手法を使いテクニカル 分析の有効性を検証する。表3.1に今回の実験で使用するパラメータを載せる。

(26)

表3.1  実験2に用いる3点チャージ法のパラメータ

    RSI  volumeRatio 移動平均乖離率  パラメータ1:集計日数  14 日  26 日  25 日  パラメータ 2:買いシグナル閾値  25%以下 70%以下  -5%以下 

パラメータ1:売りシグナル閾値  75  450  5%以下 

対象データ 

対象となるデータは、AppendixにあるData50SetとData300Setを用いて実験を行う。

実験の手続き

(1)  初期資金は指定せずに、無限に資金を用意できるという仮定のもと、株価 データに対して売買シグナルに従って売買したとき、N 日保有した後の株価 がいくらになっているか収益率の変化を調べる。

N日後の株価のデータは次のように分類する

ルール1

Class1 10%以上の値上がりをしたデータ Class2 5〜10%以上の値上がりをしたデータ Class3 0〜5%以上の値上がりをしたデータ Class4 0〜5%以上の値下がりをしたデータ Class5 5%以下の値下がりをしたデータ

ルール2

Class1 10%以上の値上がりをしたデータ Class2 5〜10%以上の値上がりをしたデータ Class3 0〜5%以上の値上がりをしたデータ Class4 0〜5%以上の値下がりをしたデータ Class5 5〜10%以上の値下がりをしたデータ Class6 10%以下の値下がりをしたデータ

    ルール3

Class1 20%以上の値上がりをしたデータ Class2 15〜20%以上の値上がりをしたデータ Class3 10〜15%以上の値上がりをしたデータ Class4 5〜10%以上の値下がりをしたデータ

(27)

Class5 0〜5%以上の値下がりをしたデータ Class6 0〜5%以下の値下がりをしたデータ Class7 5〜10%以下の値下がりをしたデータ Class8 10%以下の値下がりをしたデータ

(2)  株式の保有期間を20日間から40日間まで10日刻みで変化させ、(1)と同様 の実験の実験を繰り返し行っていく。

3.2.3 実験結果

表3.2, 表3.3, 表3.4にルール1、ルール2、ルール3を適用したときの、収益率の分布の 頻度を示す。

表3.1  ルール1を適用した場合の収益率の頻度

  DataSet300     DataSet50       20日間保持 30日間保持 40日間保持 20日間保持 30日間保持 40日間保持 総数 60565 57565 54565 21640 21140 20640 Class1 10213 12811 14125 3677 5524 6620 Class2 6184 3530 2126 2740 2299 1885 Class3 10646 6122 3703 6356 4580 3341 Class4 6695 3863 2310 3638 2301 1634 Class5 26827 31239 32301 5229 6436 7160 買いシグナル総数 2060 1795 1567 231 226 226

Class1 523 524 503 53 69 82

Class2 227 65 23 34 26 25

Class3 261 134 53 59 53 46

Class4 111 63 38 44 28 18

Class5 938 1009 950 41 50 55

(28)

表3.2  ルール2を適用した場合の収益率の頻度

DataSet300 DataSet50   20日間保持 30日間保持 40日間保持 20日間保持 30日間保持 40日間保持

総数 60565 57565 54565 21640 21140 20640 Class1 10794 14454 16535 3758 5781 7031 Class2 7016 4849 3353 2853 2473 2140 Class3 13382 9233 6413 6938 5384 4291 Class4 12205 8841 6289 5514 4207 3499 Class5 5983 4071 2961 1471 1440 1216 Class6 11185 16117 19014 1106 1855 2463 買いシグナル総数 2060 1795 1567 231 226 226

Class1 556 596 571 57 77 92

Class2 258 102 40 40 29 27

Class3 365 252 126 64 63 57

Class4 273 211 146 57 45 35

Class5 167 90 72 7 4 7

Class6 441 544 612 6 8 8

(29)

表3.3 ルール3を適用した場合の収益率の頻度

DataSet300 DataSet50

  20日間保持 30日間保持 40日間保持

20日間保 持

30日間保 持

40日間保 持

総数 60565 57565 54565 21640 21140 20640 Class1 1021 2089 3154 605 1297 2162

Class2 1296 1458 1360 406 770 831

Class3 4420 4539 4081 1580 2016 1992 Class4 9809 8423 7078 3795 3690 3499 Class5 14239 10904 8682 7136 5739 4716 Class6 12501 9546 7224 5536 4303 3637 Class7 6058 4244 3314 1475 1451 1261 Class8 11221 16362 19672 1107 1874 2542 買いシグナル総数 2060 1795 1567 231 226 226

Class1 97 147 189 2 9 18

Class2 68 64 38 10 7 13

Class3 225 167 98 20 39 35

Class4 381 213 150 61 47 49

Class5 393 322 201 68 66 61

Class6 286 235 179 57 46 35

Class7 168 93 80 7 4 7

Class8 442 554 632 6 8 8

3.2.4 実験結果の考察

実験結果の、三点チャージモデルに従った場合の、幾何平均の比較を図3.5に示す。

(30)

0.800 0.850 0.900 0.950 1.000 1.050 1.100

20日間保持 30日間保持 40日間保持

Rule150 Rule1300 Rule250 Rule2300 Rule350 Rule3300

図3.5 各ルールに従ったときの幾何平均

投資において、幾何平均が1以下になることは長期的に考えて損が出る可能性が高いこ とを示唆している。図3.5からもわかるように幾何平均が全ての保持日で超えているのは ルール1とルール2に従った場合のみである。

また図からは、DataSet50は幾何平均が全体的に1を超えているが、DataSet300を用 いた場合は三点チャージモデルでは、まったく対応できていないためシステムトレーデ ィングで利用すると損が出る。

  また利食いと損きりについて考えると、あまり高すぎる利益を欲張って求めるとルール 3の幾何分布の平均が示すように、一回あたりの取引で投資額の 10%が損失としてでるこ とが考えられる。

  三点チャージシグナル法はDataSet50 には適用しやすいが、DataSet300 には適用が難 しいとわかった。つまり、三点チャージシグナル法は、どんなデータに対しても対応でき るような汎用的なモデルではない。システムを作るときには、過去のデータが既知である ために適合したパラメータの最適を行ってしまうということがあるが、未知のデータに適 応させるためには、DataSet50、DataSet300問わず安定した結果の分布が求められる。

3.3 従来のテクニカル分析のまとめ

実験でも示したように、三点チャージ法はどんなデータにも適合するとはいえないことが わかった。投資家はどんな株価にも対応するように意思決定モデルのパラメータを変化さ せて最適化を試みるが、今回のデータでは分析手法の日数を最適化しようしても意味のな いことを行っているという結果が出た。

(31)

結論をまとめると、従来のテクニカル分析では精度のよい予測を行うことができないこと がわかった。その原因はテクニカル分析が時間を考慮した分析手法とは言え、各指標を計 算し導出する際に時間を丸め込むことを行っているからだと考えられる。

時間を丸め込むというのは、その事象がおこった実時間を考慮するのではなく、事象が起 きた時間をパラメータとして計算の過程に組み込むことで時間の情報が欠落しているため だと考えられる。

簡単に言えば、状況に応じた売買シグナルを提示することができないということである。

(32)

第 4 章  本研究での戦略 

  前章までに従来の分析手法を説明してきたが、この章では従来の分析手法に対する本研 究での戦略を考える。前章までの結果をまとめる。

資金・リスク管理の自動化の戦略

従来のファイナンス理論が正規分布をしていないことを第二章「従来の理論と実務の差」

で示した。ファイナンス理論では、理論展開を簡単に行うために市場に参加する人間を合 理的な人間であるとし、日次収益の分布が正規分布するという前提条件を仮定していた。

つまり、正規分布するのは理想的な状況であって現実のデータに基づいていない。そのた め、ファイナンス理論で開発されたモデルは実務で使うのには実用的ではない。

本研究では、資金・リスク管理を行う手法をギャンブルや賭けを参考に発展させた理論を 提示する。

銘柄分析手法の自動化の戦略

従来のテクニカル分析手法では時間の情報が欠落しているために、状況に基づいた売買判 断が行えないということを示した。従来のテクニカル分析の指標に状況を判断するパラメ ータと時間を追加することで、分析手法の予測精度を上げることを提案する。

(33)

第 4 章  資金・リスク管理の自動化 

株式売買においては、高くなる確率が高い銘柄を選ぶことが一番重要と考えられている が資金・リスク管理をしっかりと考えることのほうが重要度は高い。たとえばどんなに、

投資の予測があたる分析手法を開発したとしても、一回の投資あたりに投資する金額が 少なければ、得られる利益もすくなくなる。一回あたりに手持ちの資金の全てをかけた としても、一回負ければ全てを失って破産になってしまう。

  つまり投資においては、上昇する可能性の高い銘柄の予測以上に資金・リスク管理が 重要になってくる。

本章では、結果が「勝つ」「負ける」の 2 通りしかなく、勝敗が決まったときの損益の 分布が決定しているギャンブルにおいてどのように、自分の資金を賭けていくことが最 適なのかを参考に、投資へと適合させていく。

4.1  ケリー基準  ギャンブルにおける最適な賭け率の計算

4.1.1 ケリー基準の導出

ギャンブルの世界での結果は「勝つ」「負ける」の 2 通りしかなく買ったときの損失や 負けたときの損失額の結果の分布は既知である。この2つを満たすときには確率的にど のように最適化を計算できる理論が存在する。これをケリー基準と呼ぶ。

ギャンブルにおける最適の賭け率の計算は、次の3つの条件を満たす場合にケリー基準 が適用できる。

1. 結果が「勝つ」「負ける」の2通り 2. 勝敗の際の、結果の分布が既知である 3. 勝率がわかっている。

2 の結果の分布が既知であるとは、買ったときの利益、負けたとき損失があらかじめ決 定されているということを示している。3 はどれくらいの確率で勝つことができること がわかっていることを示している。以上の条件を満たしているときの問題を定式化する と次のように表現できる。

【問題の定式化】

(34)

好みの金額を賭け、勝てば掛け金のR倍がもらえ、負ければ掛け金が没 収というゲームがある。一回ごとに勝つ確率をPとする。初期資金はA 円持っていて、ゲームは何回でも行うことができる。このとき、どの ような戦略で賭けるのが良いか?

【注】「勝てば賭け金のR倍がもらえ」というのは、賭けた分と賭けた 分のR倍が儲けとなる

この問題に対する最適戦略は次の通り、

f を次のように定義する

R )P +

= (R

f 1 − 1

このとき、次の戦略が最適であると考えられる。

≤0

f   賭けに参加するべきではない。

>0

f   常に手持ち資金の f 倍賭ける。つまり f × Aを賭ける。

結論から述べると

n

回賭けを行ったときの利益g(x)

p

p x

Rx x

g( ) = (1+ ) (1− )1 (4.1)

を最大化する

x

をかけていくことが一番有効な戦略となる。(4.1)式を最大化する

x

のこと をケリー基準とよび

       

R

f = ( R + 1 ) − 1

(4.2)

と定義する。(4.2)式の導出過程を以下に示す。

初期の手持ち資金を1と考えて、

n

回行った時点での資金の期待値S(n)を定義する。

xは手持ちの資金の何%を賭け利用するかという変数である。定率に賭けていくと考える と初期の資産を 1 と考えても一般性は失われない。ゲームをn回行ったときの勝ち数を

(35)

) (n

W 、負け数をL(n) 回とする。

n

回行った時点での資金の期待値S(n)

) ( )

( (1 )

) 1 ( )

(n Rx W n x L n

S = + − (4.3)

で表現できる。定率で賭ける場合、最終資金は、勝ち負けの数のみによって決定し順序は 関係しない。2勝1敗の状態を考慮すると、○○●、○●○、●○○(白丸:勝  黒丸: 負け)はどれ も最終資産は同じである。このゲームを無限回繰り返したと考えると、式(3.3)を無限大に 収束させて、一回あたりの期待利益を求めると

lim ( ) ( )

1

x g n S n

n =

(4.4)

となる。なぜならS(n)n

1

n n L n

n W

n

Rx x

n S

) ( )

( 1

) 1 ( ) 1 ( )

( = + −

とあらわすことができる。無限回の思考を行ったと仮定すると大数の法則に従い、確率の 分布が定常的になると仮定すると次の式が成立

n P n W

n

=

) lim (

n P n L

n

= −

( ) 1

lim

そのため

) 1 ( 1

) 1 ( ) 1 ( ) (

lim n P p

n S n Rx x

= + −

が成立する。つまり

n

回行った時点での資金の期待値S(n)を最大化するためには、式(4.1) を最大とするxが資産を最大化する最適な賭け率となる。問題を式(4.1)の極値問題と考え ると、自分の手持ち資金以上のお金は賭けられない条件を追加すると、xは0<x≤1とな り次が成立する。

(36)

) ) 1 ( ) 1 log((

)) (

log( g x Rx

p

x

1 p

dx

d = + −

) 1 log(

) 1 ( ) 1

log( x

dx p d dx Rx

p d + + − −

=

x P Rx

PR

− −

= +

1 ) 1 ( 1

これを解くと、式(4.1)を最小化するxは次のようになる

R ) +

= (R

x 1 − 1

次にケリー基準の物理的な意味を考える。

3.1.2 ケリー基準の物理的な意味

ここでは、第一章で導いたケリー基準を次の例題に適用し、ケリー基準の物理的な意味 を考察する。

【問題】

コインを投げて表が出たら賭けた金額だけ儲かり、裏が出たら賭けた資 金を全額没収するというゲームがある。コインに偏りがあり、表の出る 確率は70%である。

この問題はケリー基準が満たすべき条件をすべて満たしている。この例では勝ったとき の利益

R = 1

、勝負を大数の法則を満たすだけ大きい数を行ったならば、コインで表が出 る確率P=0.7となる。このときのケリー基準は 0.4 である。賭け率の変化によって式 (3.1)がどのように変化するかを図4.1に示す。

(37)

図4.1 例題における式(3.1)の変化

n回試行したときの資金は式(4.4)になる。対数をとると式(4.4)は

) 1 log(

) ( ) 1 log(

) ( ) (

log S n = W n + Rx + L nx

(4.5)

で表現できる。勝ち数、負け数は単純な二項分布に従うので、それぞれの期待値は

nP n W E [ ( )] =

) 1 ( )]

(

[ L n n P

E = −

であり、式(4.5)の期待値は

)}

1 log(

) 1 ( ) 1 log(

{ )]

(

[log S n n P Rx P x

E = + + − −

} ) 1 ( ) 1

log{( Rx

p

x

1 p

n + −

=

) ( log g x

= n

と表現できる。

例題の通り、

R = 1

,P=0.7で、仮に資金の40%をかけるとすると

g ( x ) = 0 . 0822

となる

のでn回試したときの資金は

n n

S

E [log ( )] = 0 . 0822

となる。これを図示すると図4.2 のようになる。横軸が試行回数 nを示していて、縦軸 が

log S ( n )

を示している。

(38)

図4.2   賭け率40%のときの変化(ケリー基準)

赤い線が理論値を示していて、青い線は乱数を使ってシミュレーションを行ったときの 変化である。図4.3は図4.1に示されるA点を賭け率として使った場合、図4.4は図4.1 に示されるB点を賭け率として使った場合のグラフである。

図4.3 14.8%を賭けていったとき 図4.4 61.6%を賭けていったとき

図4.2、図4.3、図4.4の共通した点は、最終的には理論値である、赤い線に収束する可 能性が高いということである。この赤い線との逸脱の割合をリスクと定義すると、図4.2 はミドルリスク、図4.3はハイリスク、図4.4はハイリスクということになる。

図4.3と図4.4を比較すると接線の傾きは同じ値なので、最終的に得られる利益の期待値 は共通である。期待値は共通であるが、結果のばらつきが多いことはリスクが大きいこ とを示している。つまり、自分の資産を不必要なリスクにさらす可能性が非常に高いと いうことを示唆している。

(39)

重要な点はケリー基準とは、この赤い接線の傾きを最大化しようとしていることである。

ケリー基準である最適な賭け率 f を超えた割合を賭けにしようすると、不必要なリスク を許容することになる。

ファイナンス理論と対比すると、この変化が正規分布しているということである。差は ファイナンス理論では理想的な分布を考えたときのリスクの回避方法を提示する理論。

ケリー基準では実際の分布からリスクを回避する方法を提示する理論である。

4.2  ケリー基準  投資への拡張

  ギャンブルと投資の違いは、簡単に言うと結果が「勝ち、負け」の 2 通りに対して、投 資では、a%の利益で勝つ、b%の利益で勝つ、c%の損失で負ける…z%の損失で負けるとい ったように勝ち負けのパターンが複数ある。この問題に適用できるようにケリー基準を拡 張していく

4.2.1 投資におけるケリー基準の導出

投資におけるケリー基準を導くのには、ギャンブルの世界におけるケリー基準の適用と同 じ条件を満たす必要が出てくる。

ギャンブルにおける最適の賭け率の計算は、次の 2 つの条件を満たすことが必要十分条 件である。

1. 勝敗の際の、結果の分布が既知である 2. 勝率がわかっている。

この条件を満たしたものとして、問題を定式かすると

【問題の定式化】

ある株を一単位売買した場合、一回ごとの結果には

k

通り のシナリオが起こりうる。

i

番目(

ik

)のシナリオが起こ

る確率は

Pi

であり、

Xi

円の損益が生じる。ここで仮定と してひとつの

Xi

円が負(損失)であると過程する。

この株に買いシグナルが発生した。一単位買うのには

A

参照

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