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因数分解 の指導法の試み

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Academic year: 2021

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(1)

因数分解 の指導法の試み

1.は じめに

数学の授 業 を実践 していて,その改善 ・開発 には何 が大事 なのか。 いつ も悩み なが ら様 々な 試み を行 ってきた。教育学,心理学 ,哲学 な ど を研 究 し教育の 目的や 目標 を研 究す るこ とも大 事 な ことである. 一方,現場 に立つ教師 と して は, 日々の授業 をいかに満 足のい くよ うにす る か課題 であ り指 導法は よ り切 実 な問題 である。

数学の授業 を考 える とや は り最 も大事な こ とは 教師が数学 を好 きであ りまた数学 の素養 も幅広 くかつできれ ば深 い ことが よい こ とは当然 であ り, ここで確認 してお きたい。 その 中で我 々教 師は,生徒 にいかに良 く理解 させ ,実感 をもっ た感動 を得 させ ることに よって,数 学 を好 きに させ た り数 学の力 をつ け ることが で きるか。 人 が人 を導 くことの本質的 な難 しさを踏 まえ 日々 努力す るのが教師の役 目であろ う。 それ はまた い くら工夫 して も最終的 に これ で完全 とい うこ とはない。 またそれ が教 育の研 究 が成 り立つ 由 縁 と思 っている。 その よ うな考 え方 か ら今 回は 中学 3年生対象 に因数分解 の指導実践 と しての

1つの試み を報告 したい。

2.授業内容 と1つの試み

私 は, 日々実践の結果か ら指導法 の工夫 と し て以 下の11個 の観 点 をま とめた。 1)それ を,以 下 ここに引用 してお く。

①数学史や数学用語 の由来 な どを知 らせ る。

沖 山 義光

②数学の実用性 ,社会性 を話題 にす る。

③数学の体系な どを教養 と しての知識 と考 えて 教 える。

庄)数学の他 の分野 との関係 を意識 して指導す る。

⑤小, 中学 での既習事項 との関連 を知 らせ る。

⑥ 一般的 な知識 ‑の欲 求,美 的,合理 的,批判 的精神 を喚起す る。

⑦数学の厳密性 ,普遍性 を意識 して指導す る。

⑧生徒 に問題作 りを させ る。

⑨作業や実験 を通 した指導 をす る。

⑩ わか りやす い授 業や難 しいが面 白い内容 を工 夫 して達成感 を与 える。

⑬数学的 な考 え方の良 さを強調す る。

いずれ も,敷術すれ ば私 が これ まで 口々積み 重ね てきた工夫 を凝縮 した ものであ り実践す れ ば大 き く広 が るもので ある。

今 回は, この 中の⑧ 問題 作 りを させ る。

を実践 してみた。

対象生徒 :中高連絡進 学の あ る私立 中学 3年生 男子 (21‑24名× 5クラス)

日時 :2010年4月27日 授 業 内容 :因数分解

1) ab+ac‑a(b+C)

2) x:+(a+b)x+ab=(Ⅹ+a)(x+b) 3) x'+2ax十aコ=(x+a)2

4) x:‑2ax+a:=(x‑a)2 5) x=‑a==(x+a)(Ⅹ‑a)

6) acx‑+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d) 7) xJ+3xITa+3xa一十a3=(x+a)3

(2)

姦)け大学 心理 .教育研 究陥集 第 30号 (20113月 31日)

8)xL3x2a+3xa2‑a3

=

(x‑a)1

9)xユ+a3

=

(x+a)(xLax+a') 10) xLa3

=

(x‑a)(x2+ax十a2)

因数分解の前に これ らの右辺 と左辺 を入れ替 えた乗法公式の指導 を行 い,その逆 と して因数 分解 を教 える。 6)はたす きがけ とい う手法 を 指導す る。

中高連絡進 学 のた め, 7)〜 10)は本 来 は高 校1年生 で学ぶ内容 である。

これ らの因数分解 を問題演習 を取 り入れ なが ら1つ1つ学習 してい く。 さらに これ らの組み 合わ さった問題や ,置 き換 えの考 え方 を教 えて 総合的に因数分解 ができるよ うに してい く。

新 しい試み と して 1)〜 5)の学習 が終 了 し た ところで, これ までの学習か ら,

「自分 で因数分解の問題 を作 ってみ よ う」 とい う課題 を出 した。 問題 を,一人最低5題作 ることとして授業 中作 らせ提 出 させ た。普段授 業の後半にま とめ として よく小テス トを実施 し ている。 その代わ りに この課題 を出 し考 えて も

らったのである。 時間は約20分程度 である。

3.反応

この よ うな試み はは じめてなので果た して生 徒は考 えて くれ るだろ うか不安であったが,ほ とん どの生徒 が 自分 な りの問題 を作成 して くれ た。 問題 作 りのね らいは,

① 問題 を作 ることに よ り,因数分解の仕組みや か らくりを知 って先 を見通す力 を身に付ける。

② 因数分解に対す る各生徒 のイメー ジを知 り, 指導に役立てる。

と考 えた。(∋,② 共に とて もよくそのね らいは 達成 された。

は じめに1つの クラス24名 の全容 を示す。

Nol x‑18x‑48 a‑48a+432 8x+3x‑108 xy1二一6x=y‑216x

(x2+3x)二一16(x2+3x)+48 No2 axし19ax+84a

a(x十y)」25a(x+y)I+66a aCb'・t+1/5abx+3/10x2 b・tx‑+23b=x+42b=

(abc)2+28abcd+147d・' No3 xLX‑12

xlyl十x5+y5十xy1 361x:+76yx‑45y2 2xL162

No4 3f1‑36fK‑324K。

lgh‑‑133hm‑1482m=

64‑12n‑∩

4t=+8t‑192 3pL24p‑2139 No5 3xJ+6x‑45x

2x1‑7xl30 2xy‑x‑4y+2 x=‑5x+6 aV‑5abx124xご No6 13m‑117m+299m a3x2118a・‑x‑63a

(xJ+x)し56(xJ+x)‑116 28‑y‑12y

3x=+33y‑240 No7 289x+22]y‑3237J

x2‑11xl60 x二十1x‑272 x‑+16xl57 a=x:‑32ax+247 No8 x'+y=‑2(xy+2)

Ⅹ‑I‑8x+12十y(x‑2) x1‑6xl+8x=十10x‑25

(x一十y+2xy)1‑(xご十4xy+y

x+xy‑2y: No9 78x+169xI‑52x

4xL2x‑T‑6 1+10xJ‑7x 6xy+15xz+9yz xy13xyz‑10Z:

(3)

NolO (alO十a5)し22(alO+aS)+121 x6十9xL52

x2十19x十84 2ab‑a‑4b十2 2xy‑xz/3+2Z‑12y No11 2x2+x‑56

4ax+8bx十12cx+16dx 2ad‑2bd+ac‑bc m2+9mn‑136ne xL11x‑60 No12 132x‑275y+341Z

60a2118abl231b:

6a2‑4ab‑2b2 x2+16x‑36 a2‑14ab+24b2 No13 2ad‑bc十ac‑2bd

(x3+x)2115(x3+x)+54 x2+1/4xl3/8 xJ+5x‑84 No14 ‑7xz2‑63xz‑98

19ab‑ax/3十2x‑114b ylT+81xy+1640x

x''+1/2xy+3/50y2 2aL16ab‑66b=

No15 x2‑4x‑21 x4+63xz+980 4‑14a‑72ao ab+ac+Clb+dc x、+2x1‑6x

N016 19(x+y)十80(x+y) (x‑13)‑〜+26(x13) 125x2‑50x‑75 xL9x2+400 240xy‑80x2y2‑180 No17 a1‑20a2十36

a‑1b:‑35ab‑114 xJ+38x+36l aL3/8a‑1/16 x2‑12x‑133 No18 (x十16)=

因数 分解 の指 導 法 の 試み

x9+31x3+256 aL25a2‑150 36a2x‑12x‑18a=+6 m4+50m2+525 No19 18x2+81/20x‑1/5

5a3十5a2b‑6ab2‑6b3

54x2+60x+14

54x2+117x+12+72xL36x‑20 No20 (x2+x)2162(x2+x)+840

4(a2b2+ab‑6x) 3a2‑3b2 a5‑25ab1

4ab‑aL4b・1十Cご No21 111x2+12221y'}+1332yx

8x2+3y三十20xy 999x2十999y2+2098xy lllx:+111y2‑1378xy (16x2‑8x+1)/64 No22 ab十2a3‑15

3aL4a+2 6xLx12 x2十6x+5 a2b・T+3ab‑10 No23 xJ十28x+115

(x=+2)+(x2‑3)+(x〇十5) 5ax‑4ay‑15bx+12by x=+x‑42

4x2‑8x‑140 No24 3xご+17x+10

x‑‑+2x‑48 (x2+2ax+a

:

)

x二十2x十1 ユ 3 Xy Xy

以上 を概観 してみ る と生徒 の実態 が鮮 明に浮 き彫 りにな る。

まず一人 と して同 じ問題 が ない こ とである。

生徒がいかに個性 を もってい るか。個性化 が叫 ばれ るなかそれ ぞれ の個性 が見事 に反映 され実 現 してい る。 生徒 一人一人 の問題 をつぶ さに見

(4)

神奈 川 大乍 心 理 ・教 育 研 究 論炎 節 30号 (2011年 3ノ」31E])

る とよ く考 えてい るこ ともわか る。 与 え られ た 因数分解 の問題 を解 くよ り, 自分 で 自発的 に考 え,自由で楽 しみなが ら作 っていることが伝わっ て くる。残 りの4クラス も同 じよ うに生 き生 き と して問題 が作 られ ている。20分程度 の指導 で あ ったが,一人 一人の考 え方や理解度 が把握 さ れ た と同時 にその後の因数分解 の指導 はほ とん ど生徒 自身 で考 えるこ とが でき手取 り足取 りと いった指導はす る必要はな くなるほ どであった。

また,因数分解 の指導後の2次方程式, 2次関 数 の指導 の際 も 自主的 に学習す る態度 がで き と て もや りやす くな った。

4.反応の分析 と考察

一人一人 の問題作 りに焦点 を合 わせれ ば,そ れ ぞれ の生徒 の個性や考 え方が把握 され何 を指 導 した らいいの か明確 にかつ的確 にな る。 その よ うな指導 のた めに, ここで生徒達の作 った問 題 を分類 して傾 向や特徴 をみ る。

因数分解の公式 1)ab+ac‑a(b+C)

2)x一十(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) 3)x‑+2ax+a:=(x+a)

4)3(・‑2ax+aご=(A‑a)2 5)x‑‑a‑=(A+a)(A‑a)

6)acx‑+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx十d) 7)x}十3x‑a+3xa‑+a'=(x+a)

8)A‑3x‑a+3xa一一a'=(x‑a)1 9)x'十al=(x十a)(x・‑ax+a:) 10)x一一al=(x‑a)(x2ax+a:) に従 って集 計す る。

問題 の型 1)のみ

組3

組2

組1

1)+2) 23

I)+5) 0

1)+6) 5

2)基本 48

2)応 用 26

802 組14日4 組215

15

2 2 1 4

0 2 4 3

55 38 47 39 22 23 20 26

3) 3

5) 6) その他 生徒数

37 2811名42

目名732 13目名0412

13目名812

5目名0312

この集計 はで きてい る問題 を因数分解 の公式 に従 って, クラス毎 に集 計 した ものであ る。 共 通 因数 で くくる形 は他 の公式 と複合 した ものが 多 いの で4つ に分 けた。 2)は多 くの生徒 が こ の形 の もの を作 っていたので,基本 的な もの と 文字 の置 き換 え等 を して因数 分解す るよ うな応 用 とに分 けた。 3)5)6)につ い ては 1)と複 合 してい るものな ども含 めて集計 しした。

最 も多 いのは,2)であ り基本 的な ものは x+14x+45,x‑150x+225,x‑」13x+36

6+5x+x, 1‑6x191xl',81+30a+al'

a・148ab+17b2,x'y1‑6xy‑27Z'',xL23xy+13y: A‑+1/12x‑1/12,aJ‑1/30a‑1/30,A‑'+3/4x+1/8 であ り,応用 と しては

2ax‑‑72ax+1400,xly‑10xZy+9y, abCx‑15abcx‑76a

な ど l)共通因数 で くくるこ とと複合 した もの。

xl‑22x:+105,xLx・'y‑12yコ,(x'十6x)コ+17(XIT+6x)+72 な ど,置 き換 えの考 えが必要 な ものがあげ られ る。 パ ター ン と しては単純 だ が,数値 の変化や ち ょっ と した変化 に とて も興 味深 い ものがあ っ た。

1)+2)の もの では, 2)応 用 に入 れ た共通 因 数 で くくるもの と重複す るが , こち らには 2‑6a‑36a2,24+2x‑2x',4x二十32x‑1536

な ど数値 の共通因数 を くくるもの も入れ てある。

1)+5)は事例 は少 ないが

2xL162,3a‑‑3b,aL25ab4,xJy‑xy) な ど基本的 な ものか ら

xL4y:+16x318x2Z,591x‑5319

な ど高度 な もの もある。 この よ うな発想 ができ る生徒 はや は り優秀 であ り逆 に優秀 な生徒 と評

(5)

価 してよい ことがわかった。

1)十6)型 は1)+2)型 の変形 と考 えられ, 4xご+390x‑1000,‑18a3‑12ab+16b2, 125x2‑50x‑75, 4xL8x‑140, 9a'+21a+12

どち らを作 ろ うと したのかわか らないもの もあ る。

20xL4xl70,

また因数分解 できない問題 を作 って しま うこと もい くつかあった。

30x‑‑76x‑187, 81yL76y'+288, 169a‑+2ab‑15b‑'

6)型 も多 く1)+6)型 を除 くとほ とん どが基 本的な ものである。

50x'‑‑35x十6, 3aJb‑'+13ab+12, 16a:+32a+15, 98xL21x‑20, 12Ⅹ:‑37x‑144,9xL45xy+56y:,

12b2+5b‑2

5)型は 基本的な もの

x・116, 4a'‑25, xL64, 3(a:‑b‑)‑12(b・‑a・r) か ら

数値の こだわ りを持 った もの

1/6x2‑24, 935089x'‑4, 1‑729xこ, x1‑60025, x一256

x1‑6x二十5, xL4y+167JL8xJz, xl十x‑+1

といった高度 の ものまであ り,や は りセ ンスの 良いものは優秀 な生徒の ものに多 い。

7)型 は

xユ+2xごy+xy‑+x:y+2xy‑+y'

であ り, (A+y)J を展 開 した もの と思われ るO これ は これ で とても良い発想 といえる。

8)型は

xL15x:+75x‑125

であ りこれ も展開公式か ら作成 した ものであろ う。

因数分解の指導は・の試み

10)型 は

2744x3‑729y3, (x二十y=十2xy)3‑(x2+4xy+y・')) であ り, これ は先 を学習 した り数 に対す る感覚 が このよ うな ところまで考 えていることに驚 く。

また,数値 に対す るイ メー ジは大部分の生徒 が多様 なイメー ジを持 っていることがわかった。

1

2

3

4組 5組 分数 を使用 12 9 9 5 7

小数 を使用

0

2 0 0 0

小数 を使 った作題 はほ とん どなか ったが,分 数 についてはそれな りの発想 があった。 これは, 問題集や教科書に も小数の問題 が少 ないか らで あろ う。

5

.終わ りに

できた問題 をパ ター ン化 して分析 してみたが, その 目的は生徒は どのよ うな問題 を作成 したか, その傾 向 と特徴 を見つ ける ことであった。 その

ことか ら生徒の一般 的な傾 向を知 ることで指導 に役立てたい と思 うか らである。生徒 の実態 を この よ うな形 で一般 的に知 ることは これは これ で とて も重要な ことである。

ただ,一方 で実際の授業 では生徒一人一人が 重要であ り,作 られ た1題1題 はた とえ稚拙で も間違 えていて もまたそれ だか らこそ指導上の デー タと して大事 なものである。

25+375 x・'‑50x+225 169‑361y= 2744x3‑729y3 3136‑3249

これ は,ある一人の生徒 の作題 であるが,大 多数の生徒 が作 る2)型 はな く,高度 な10)型 があるか と思えば,数値だけのものが2題 も入っ

(6)

神 奈川大学心理 .教育研究冷塊 30号 (20Ll3131日)

ている。 この生徒 につ いてはいつ も何 を考 えて い るのかわか らない ところがあったので,後で 少 し事情 を聞いてみた ところ内容 をよく理解 し それ以後 は授業で もよくわかるよ うになった。

他 に も何人かの生徒に この よ うな形 で交流 し生 徒 の実態 を把握す ることができた。 む しろこち らの利用の仕方が大事ではないか と考 えている。

因数分解 を作 らせてみ るとい うことは,ちょっ とした思いつ きで試みたことであったが,難 し い とされ る因数分解 を展開公式の逆 ととらえる と, この よ うに生徒 に問題 を作 らせ るとい うこ と発想 は 自然 な ことであろ う。

不定積分 を求め るのに,実は微分 を考 えて求 め るとい うのが要領 であることもその1例 であ ろ う。幾何学で逆 の研究 をす ることか ら新 しい 問題 ができることはよく知 られていることであ る。2)

また古 くは大正 中期か ら昭和の初期 にかけて 児童 中心主義思想 を背景に した算術教育実践が そのルー ツである。3)

問題作 りを させ るとい う発想 を さらに他 の領 域 でも実施 し指導法の1つの改善になれば幸い である。本文 を参考に指導法の工夫 を して行 く ことで数学科教育法の改善 をす ることができれ ば幸いである。

参考文献

1)沖山義光 :"2006年度公 開研究会 「数学 Ⅰ」"

お茶 の水 女 子大 学 附属 高 等 学校 研 究紀 要 (2006)p143‑157

2)酒宮俊雄 :"幾何学 一 発 見的研 究 ‑ ′′ 科学新興社(1988)p83‑86

3)植 田敦三 :"問題作 りのルー ツ′′

日本数学教育学会誌2010年第92巻第11号 p14‑15

参照

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