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生体組織の再生を誘導するスキャフオールドに関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 平 岡 陽 介

学 位 論 文 題 名

生体組織の再生を誘導するスキャフオールドに関する研究

一生体吸収性繊維補強コラーゲンスポンジの特性―

学位論文内容の要旨

  再生医療の分野では、今日的な話題性が高い幹細胞に注目が集まっているが、動物体のほとんど の 細胞は細 胞外マトリックス(ECM)に接着しており、欠損部では細胞のみならずECMも欠如してい る。従って、生体組織欠損部を再生するためには、バイオマテリアルによる三次元の細胞の足場(ス キャフオールド)が必要であり、状況に応じて幹細胞や細胞増殖因子を組み合わせる。スキャフオ ールドの条件としては、生体親和性があること、組織再生を妨げないために生体吸収性であること、

栄養や老廃物の交換、細胞侵入のために多孔構造であることが挙げられる。これまでに、生体吸収 性スキャフオールドとして、ポリ乳酸やポリグリコール酸、あるいはそれらの共重合体といった合 成高分子が用いられてきたが、力学的強度には優れるものの、生体吸収期間が組織再生の観点から は長すぎることと、生体親和性が天然高分子であるコラーゲンに劣るという欠点があった。一方、

動物の体タンパク質であるコラーゲンは、生体親和性や吸収性に優れており、臨床応用の歴史があ るものの、力学的強度が低いという欠点があった。そこで、本研究では、コラーゲンの特徴を活か しつつ、その欠点であるカ学的強度不足を解決するコラーゲンベースのスキャフオールドの開発を 試み、以下の知見を得た。

1.ブタ 由来酵素 可溶化 コラーゲンを用い、凍結乾燥法によルコラーゲンスポンジを作製し、in   vitroにおけ るL929マウ ス線維芽 細胞へ の細胞接 着性お よぴinvivoに おけるマ ウス背部皮下   埋 入による生体親和性を評価したところ、細胞および組織への優れた親和性を示した。また、

    コラーゲンスポンジの内部構造は、凍結速度によって気孔の大きさを制御可能であることが示     された。さらに、in vivoでの生体吸収期間は、架橋の程度によって制御が可能であることも   示 された。しかし、骨髄間葉系幹細胞を培養時のコラーゲンスポンジは、経時的に収縮し、背   部 皮下埋入時に圧縮変形することが明らかとなり、コラーゲンスポンジにカ学的強度の付与さ     え出来れば、優れたスキャフオールドになると考えられた。

2.コラーゲンスポンジをスキャフォールドとし、ラッ卜由来脂肪前駆細胞粘よぴ塩基性線維芽細   胞 増殖因子(bFGF)の組み 合わせ により、 ラット脂 肪組織 内で脂肪組織が再生誘導されるかを   検 討した結 果、ス キャフオ ールド 周囲に脂 肪前駆細 胞が存 在する場合は、bFGFの徐放による   血 管新生お よび細 胞の増殖 が必要 であるこ とが示唆 された 。また、bFGFには至適濃度が存在     し、脂肪前駆細胞は必ずしも必要ではないことが示され、I型コラーゲンのスキャフオールド   により組織再生が可能であることが示された。

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3.コラーゲンスポンジは、細胞接着性、生体親和性を持つ組織再生誘導に適したスキャフオール     ドであるが、力学的強度が不足していることが上記の如く明らかになっている。そこで、生体   吸収性 の合成 高分子で あるポ リグリコ ール酸(PGA)を繊 維状でコ ラーゲ ンスポンジに組み込   み、ス キャフ オールド のカ学 的強度を 血vitioで評価したところ、コラーゲンスポンジにPGA   繊維を 入れる ことで圧 縮弾性 率が向上 し、L929マウス線維芽細胞培養時のコラーゲンスポン   ジの収 縮が抑 制され、さらに3週間の骨髄間葉系幹細胞の培養においても収縮を抑制すること   が明ら かにな った。また、PGA繊維を組み込むことによっても、乾燥時の気孔構造には変化が   なく、細胞の接着性が低下することもなかった。

4.次に、PGA繊維補強コラーゲンスポンジをマウス背部皮下に埋入し、そのカ学的強度をin vivo   で評 価した ところ、PGA繊維により圧縮変形は抑制され、力学的強度が向上したことが明らか     となった。加えて、PGA繊維補強により、コラーゲンスポンジの気孑し構造が埋入時にも維持さ   れ、周囲に存在する細胞はスキャフォールド内により侵入しやすいことが明らかとなった。ま   た、 マウス 背部皮下 での生体 親和性 を評価し たとこ ろ、コラ ーゲン スポンジ中のPGA繊維の   量が 増える にともないカ学的強度が向上するものの、PGA繊維の量が多すぎると炎症反応を惹   起す ること が明らか となり、 コラー ゲンスポ ンジ中 のPGA繊 維の量 には、最適値があること   が判明した。

5.コラ ーゲン スポンジ 内のPGA繊維の 量が多す ぎるとマウス背部皮下埋入時に炎症反応を惹起     したことから、より少ないPGA繊維により強度を補強をするようなスキャフオーノレドの開発   を 検討 し た 。そ の た めに 、PGAと 融 点 の異 な る ポリ 乳 酸(PLLA)を用い て隣接す るPGA繊 維   同 士を結合 させる ことを考 え、ま ずPLI.Aの溶 媒とPGA繊維の カ学的 強度について検討を行     ったところ、ジオキサンが強度およぴ制御性の観点から優れたPLLーAの溶媒であることがわか   った。次に、隣接繊維間結合PGA.繊維をコラPゲンスポンジに組み込み、in vitroおよび血vivo   に おけるカ 学的強 度をPGA繊維補 強コラー ゲンス ポンジと 比較検討 したと ころ、隣接繊維を   結 合させる ことに よって、L929マウス 線維芽細 胞培養時のスキャフオールドの収縮性を抑制     し、マウス背部皮下での圧縮変形を抑制することが明らかになった。また、L929マウス線維   芽 細胞への 接着性 を血vitroで評価 したとこ ろ、隣接PGA繊維間を結合することによっても、

  細胞の接着性を低下させることはなかった。そして、マウス背部皮下ヘ埋入し、生体親和性を   評 価し たと ころ、 炎症反応 は観察さ れず、 同じPGA繊維の 量であっ たとし ても、隣 接PGA繊   維間を結合することにより、力学的強度がより高いコラーゲンスポンジとなることがわかり、

  生 体 組 織 の 再 生 誘 導 に は 最 適 な ス キ ャ フ オ ー ル ド で あ る と 考 え ら れ た 。

  生 体組織を 再生誘 導するためのスキャフオールドの検討を行い、上述した結果から、PGA繊維 補 強コラー ゲンス ポンジお よぴ隣接繊維間結合PGA繊維補強コラーゲンスポンジは、コラーゲン の特徴である細胞接着性、生体吸収性、多孔構造を維持したまま、その欠点であったカ学的強度の 低さの問題を解決したことが本研究で証明され、今後の生体組織の再生誘導への応用が期待され る。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 准教授 准教授

中村富美男 服 部 昭 仁 西 邑 隆 徳 福 永 重 治

学 位 論 文 題 名

生体 組 織 の 再生 を 誘 導する スキャ フオー ルドに 関する 研究

一生体吸収性繊維補強コラーゲンスポンジの特性ー

   本論文は7 章からなり、図46 、表8 、文献175 を含む頁数133 の和文論文で あり、別に参考論文12 編が添えられている。

   医薬で治癒できないほど大きくて非可逆的に生体組織が欠損した場合の治療 法としての再生医療が注目されているが、動物体のほとんどの細胞は細胞外マ トリックス(ECM) に接着して船り、欠損部では細胞のみならずECM も欠如してい る。従って、生体組織欠損部を再生するためには、バイオマテリアルによる三 次元の細胞の足場(スキャフオールド)が必要である。スキャフオールドの条 件としては、生体親和性があること、組織再生を妨げないために生体吸収性で あること、栄養や老廃物の交換、細胞侵入のために多孔構造であることが挙げ られる。これまでに、生体吸収性スキャフオールドとして、ポリ乳酸やポリグ リコール酸、あるいはそれらの共重合体といった合成高分子が用いられてきた が、力学的強度には優れるものの、生体吸収期間が組織再生の観点からは長す ぎることと、生体親和性が天然高分子であるコラーゲンに劣るという欠点があ った。一方、動物の体タンパク質であるコラーゲンは、生体親和性や吸収性に 優れており、臨床応用の歴史があるものの、力学的強度が低いという欠点があ った。そこで、本論文では、コラーゲンの長所を活かしつつ、その欠点である カ学的強度不足を解決するコラーゲンベースのスキャフオールドの開発を試 み、以下の知見を得ている。

1 .ブタ由来酵素可溶化コラーゲンを用い、凍結乾燥法によルコラーゲンスポン    ジを作製し、 lnvltro におけるL929 マウス線維芽細胞への細胞接着性およ    ぴinvivo におけるマウス背部皮下埋入による生体親和性を評価したところ、

   細胞および組織への優れた親和性を示した。また、コラーゲンスポンジの内

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   部構造は、凍結速度によって気孔の大きさを制御可能であることが示された。

   さらに、in vivo での生体吸収期間は、架橋の程度によって制御が可能であ    ることも示された。しかし、骨髄間葉系幹細胞を培養時のコラーゲンスポン    ジは、経時的に収縮し、背部皮下埋入時に圧縮変形することが明らかとなり、

   コラーゲンスポンジにカ学的強度の付与さえ出来れば、優れたスキャフオー    ルドになると考えられた。

2 .上記の如くコラーゲンスポンジはカ学的強度が不足しているので、生体吸収    性の 合成高分子であるポリグリコール酸 (PGA) を繊維状でコラーゲンスポ    ンジに組み込み、スキャフオールドのカ学的強度をin vitro で評価した。

   その結果、圧縮弾性率が向上し、L929 マウス線維芽細胞培養時のコラーゲ    ンスポンジの収縮が抑制され、さらに3 週間の骨髄間葉系幹細胞の培養に韜    いても収縮を抑制することが明らかになった。

3 .次に、PGA 繊維補強コラーゲンスポンジをマウス背部皮下に埋入してカ学的    強度を in vivo で評価したところ、圧縮変形は抑制され、加えて、コラーゲ    ンスポンジの気孔構造が埋入時にも維持され、周囲に存在する細胞はスキャ    フオールド内により侵入しやすいことが明らかとなった。また、マウス背部    皮下での生体親和性を評価したところ、コラーゲンスポンジ中のPGA 繊維の    量が増えるにともないカ学的強度が向上するものの、PGA 繊維の量が多すぎ    ると炎症反応を惹起することが明らかとなり、コラーゲンスポンジ中のPGA    繊維の量には、最適値があることが判明した。

4 .より少ない PGA 繊維でより強度を補強できるスキャフオールドを開発する    ため に、PGA と 融点の異な るポリ乳酸 (PLLA) を用いて隣接する PGA 繊維同    士を結合させた。隣接繊維間結合PGA 繊維をコラーゲンスポンジに組み込み、

  in vitro および in vivo に韜け るカ学的強度を PGA 繊維補強コラーゲンス    ポンジと比較検討したところ、 L929 マウス線維芽細胞培養時のスキャフオ    ールドの収縮性を抑制し、マウス背部皮下での圧縮変形を抑制することが明    らかになった。また、L929 マウス線維芽細胞への接着性を低下させること    はなく、マウス背部皮下ヘ埋入しても炎症反応は観察されず、生体組織の再    生 誘 導 に は 最 適 な ス キ ャ フ オ ー ル ド で あ る と 考 え ら れ た 。

以上のように本論文は生体組織の再生を誘導するスキャフオールドとしての

コラーゲンスポンジの長所である生体親和性、細胞接着性、生体吸収性、多孔

構造を維持したまま、その欠点であったカ学的強度の低さは隣接繊維間を結合

したPGA 繊維の組み込みによって補強可能であることを明らかにしており、こ

の研究成果は再生医療分野における新知見として、また、畜産物の機能性を活

用した新たな用途展開として高く評価される。よって、審査員一同は、平岡陽

介が博士 (農学)の 学位を受けるのに十分な資格を有するものと認めた。

参照

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