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DNA ポリ メラ ーゼ 類に対する光反応性基質 アナログの合成とその利用

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 山 口 十 四文

     学 位論 文題 名

DNA ポリ メラ ーゼ 類に対する光反応性基質 アナログの合成とその利用

学位論文内容の要旨

序諭

  真 核 細 胞DNAポ リ メ ラ ー ゼ(Polと 略 す ) は細 胞のDNA複製 を直 接担 う 酵素 であ り、5 分 子種 ( 、p、 ア、 づお よぴc) が知 られ て いる 。こ れら のう ち 、X線 結 晶解 析によっ てPoip酵 素分 子の サプ ドメ イ ン構 造や 活性 中 心の 構造 など が明 ら かに され つつ あるU。 し かし 、 他のPol各分 子種 に関 する情報は無く、 解析可能な結晶が得られない ためであろ うと考 えられる。

  構造 に 関す る情 報を 得る た めの 生化 学的 な 手段 とし て、光親和性標識法が 挙げられ、

Pol各 分子 種に 選 択的 な光 親和 性標識試薬の創出 を企画した。一方、レトロウ イルスHIV‑

1由 来 の 逆 転 写 酵 素 (以 下RTと略 す )は 構造 解析2) の進 んで い る酵 素で あり 、Poipと 構造上の共通点を有すること、2 ,3 .ジデオキシヌクレオチドアナログに対する阻害剤感 受 性がPolアと類似し ているなどの点で、真核細胞Polのモデルとなり得ると考 えられる。

本 論文 では、HIV‑1 RTおよひrPol各分子種に対す る光親和性標識試薬の開発を 目指して検 討した 結果について述べる。

1HIV−1RTお よび真核細胞Polに対する選 択的阻害剤の検索

  光親和性標 識の効率はりガンド・標的 タンバク質の親和性に大きく 依存すると考えられ る 。 光活 性 基が アリ ル(aryl)基 を有 する こと を 考慮 して 、ア リル 基 を分 子内 に有 す る dTTPアナログ の分子設計、合成およぴ評 価を行った。

  HIV‑1 RTの 阻 害 剤 と し て 知ら れる2 ,3 , ジデ オ キシ チミ ジン5 .ト りり ん 酸 (ddTTP)の5位メ チ ル基 を疎 水性 かつ 嵩 だかいスチリ ル基に置換した化合物2 ,3 .ジ デ オキ シ‑E‑5 ‑ス チリ ルウ リジ ン5 . トりりん酸(StddUTP)を合成し、HIV‑1 RTに対す る 阻害 効果 を調 べ たと ころ 、HIV‑1 RTおよびPolア に対してddTTPに匹敵する強 い阻害効 果 を示 した 。StddUTPはHIV‑l RTの 光親 和性 標 識試 薬の ため のり ード化合物と して充分 な性質を有す ることが示された。

2.HIV‐1RTに対する光親和性標識試薬 の合成とその利用

  StddUTPを母 核と して 、 その スチ リル 基に ト リフ ルオ ロメ チ ルジアジリニル 基が導入 さ れ た 化 合 物(TDSddUTP)を 合 成 し た 。TDSddUTPのHIV*1 RTに 対 す る 阻 害 定 数 (l) は0.075戸MとAZT.TPやddTTPと同 様に 小 さい 値を 示し 、 期待 通り の親 和性 を 有 することが 確認された。

  これ らの 化合 物 を用 いてHIv.lRTの 光親和性標 識実験を行った。方法は、96Pg/mlボ リA/ オリ ゴ(dT冫l6(5:1、w/w)、O.025mMま たは4.OmMMgC12`40ngH【V.lRTお よ ぴO.05PMTDSddUTPを 含 む ト リ ス 緩 衝 液 中 、25℃ で5分ま た は10分間 イン キュ ベ ー ションの後 、0℃で近紫外線を照射して 光標識反応を行い、反応生成 物をSDS.ポリアクリ ル アミ ドゲ ル電 気 泳動 によ って 分 析す ることによ り行った。この光反応時、MC12濃度に 依存して異 なる2種類の生成物を与えた 。

(1)HIV.lRTのヌクレオチド基質結合 部位の標識

(2)

  0.025 mM MgCI2存在下 、1ア‑32PlTDSddUTPで光標 識反応 を行う と、66 kDaの位置 に放 射 能 が 検 出 さ れ た 。 こ の 反 応 はdTTPの 添 加 に より 阻 害 さ れた 。 こ れ は、TDSddUTPが HIV‑1RTの ヌ ク レオ チ ド 基 質結 合 部位 に反応 したこ とを示 唆し、HIV‑1 RTは51 kDaお よ び ボ リ メラ ーゼ活 性を付 随する66 kDa(各々p51およぴp61)の サプュニ ットか ら構成 さ れ るとぃ う知見 と矛盾 がなかっ た。

(2)HIV‑1RTの プライ マー結 合部位の 標識

  4 mM MgC12存在下 、TDSddUTPは 酵素の 基質と なって プライ マー3. 末端に取り込まれ、

生 成 し た 光反 応 性 プ ライ マ ー が 近紫 外 線 照 射に よ っ て 酵素 と反応 した。 反応生 成物を DEAEセ ル ロ ー ス カ ラ ム クロ マ ト グ ラフ イ ー で 分析 し た と ころ 、 先 にRT活 性 を 有す る p66/p51画分 、次いで 活性の ほとん どない76kDa生成物/p51画分が溶出されたことから、

p66サ プ ユ ニ ッ ト に 光 標 識 反 応 が 起 こ り78kDaの 生 成 物 を 与 え る こ と が 示 さ れ た 。   以 上(2)と 同 様 の 実験 をPolpに対 して行 ったと ころ、 光標識 反応は ほとんど 進行し な か っ た の で 、TDSddUTPは ポ リメ ラ ー ゼ 分子 種 選 択 性を 示 す と 考え ら れ る 。一 方 、 StddUTPがPolア に 対し て 強 カ な阻 害 剤 で あっ た こ と を考 える と、本 酵素へ のTDSddUTP の 応用は 興味深 い。

3. 光 反 応 性 オ リ ゴ デ オ キ シ リ ボ ヌ ク レ オ チ ド (ODN) の 合 成 と そ の 利 用   鋳 型存在下 におけ る光反 応性プ ライマ ーアナログによる方法は、Polを含めて核酸と相 互作用をする様々なタンバク質の光親和´I生楞1識に用いることが可能であると考えられる。

著者は、光反応性ODNの直接的合成法の開発を検討した。

  まず、2 ,デオキシ‑E‑5 ‑スチリルウリジンのスチリル基バラ位にトリフルオロジアジ リ ニ ル 基を 有 す る 化合 物(TDSdU)を 合成 し 、 ホ スホ ロ ア ミダイ ト試薬 へと誘 導した。

こ れ を用 いてODNの 任意の 残基を 光反応 性ヌク レオチド で置換 するこ とを検 討した 。こ の試薬を用いて光反応性オリゴ(dT)lsアナログ【5 ・d(TTT TTT TTT TTT TTD)‑3 、dTi D (Dは光 反 応 性 残基 を 表 す )の 合 成 を 行っ た と こ ろ、DNA合成 機を用い た常法 による 自 動 合 成が 可能で あり、 十分に実 用的で あるこ とが判 明した 。TDSdUは相 補鎖と のアニ ー リ ン グ条 件下で も十分 な安定陸 を示し 、これ を含むODNは、二 本鎖核 酸とし て様々 な実 験に使用できると考えられる。

ポ リ(A)/dT14Dに よ る ポ リ メ ラ ー ゼ pお よ びHIV‑1 RTの 光 親 和 性 標 識   ボリ(A)を鋳型 としてdT14DによるPoip (p40)の 光親和 陸標識 を行う と45 kDaの位置 に反 応生成物 が得ら れた。HIV‑1 RTに対 して同 様の実 験を行 うと、76 kDaの主生成物が 認め られた。 この76 kDaの生成 物を分 離し、 トリプ シン消化 後のべ プチド マッブバター ン を未 反 応 のp66のバタ ーンと比 較する と、p66のアミノ 酸配列 のN末端 より224−238番 アミ 丿酸残基 の領域 が反応 を受け ている ことが 示され た。こ の結果は 、この領域が活性 中心 の近傍に 存在す ること が示さ れてお り2)、dT14Dがプラ イマー として 機能したこと を示 唆する。

まと め

  以 上のよ うに、 光反応 性dNTPアナ ログを 用いる とPol分子 種選択 的な、 一方、 光反応 性ODNを用い るとPol分 子種非 選択的 な光親 和性標識 の可能 性を示 した。今後、光反応基 の導 入位置 等の検 討によ る至適 化を行 うこと によっ て、標識 効率お よび反応位置選択性 のさ らに優 れた試 薬が得 られる であろ う。こ れらの試薬は、Pol各分子種と基質の相互作 用や 構造研 究に有 用であ ると期 待され る。

1.     Pelletier, H. et al. (1994) Science, 264, 1891‑1903.

2.       Jacobo‑Molina, A.et al (199 3) Proc. Natl. Acad. Sci.  USA,  9 0, 63 20‑6 3 24

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

松 田    彰 大 塚 栄 子 周 東    智 井 上 英 夫

゛    学位 論 文 題名

  DNA ポ リ メ ラ ーゼ 類に対す る光反 応性基質      ア ナ ロ グ の 合 成 と そ の 利 用

  真 核 細 胞DNAポ リ メ ラ ー ゼ(Polと 略 す ) は 細 胞 のDNA複 製 を 直 接 担 う 酵 素 で あ り 、5分 子 種 (a、 ロ 、 ア 、6お よ びE) が 知 ら れ て い る 。 こ れ ら の う ち 、X線 結 晶 解 析 に よ っ てPolロ 酵 素 分 子 の サ ブ ド メ イ ン 構 造 や 活 性 中 心 の 構 造 な ど が 明 ら か に さ れ つ っ あ る 。 一 方 、 レ ト 口 ウ イ ル スHIV−1由 来 の 逆 転 写 酵 素(RT)は 構 造 解 析 が 進 ん で い る 酵 素 で あ り 、Polロ と 構 造 上 の 共 通点 を有 する こと 、2. ,3.− ジデ オキ シヌ ク レオ チド アナ 口グ に対する阻害 剤 感 受 性 がPolア と 類 似 し て い る な ど の 点 で 、 真 核 細 胞Polの モ デ ル と な り 得 る と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は 、HIV―1RTお よ びPol各 分 子 種 に 対 す る 光 親 和 性標 識試 薬の 開発 を目 指し て検 討し た。

1. I‑nv− 1RTお よ び 真 核 細 胞 Polこ 対 す る 選 択 的 阻 害 剤 の 検 索   光 親 和 性 標 識 の 効 率 は り ガ ン ド 一 標 的 夕 ン パ ク 質 の 親 和 性 に 大 き く 依 存 す る 。 光 活 性 基 が ア リ ル (aryl)基 を 有 す る こ と を 考 慮 し て 、 ア リ ル 基 を 分 子 内 に 有 す る dTTPア ナ ロ グ の 分 子 設 計 、 合 成 お よ び 評 価 を 行 っ た 。   I‑nv−1RTの 阻 害 剤 と し て 知 ら れ る2. ,3:ジ デ オ キ シ チ ミ ジ ン5, − トり り ん 酸(ddTTP)の5位 メ チ ル 基 を 疎 水 性 か つ 嵩 だ か い ス チ リ ル 基 に 置 換 し た2. ,3, 一 ジ デ オ キ シ −E‑5− ス チ リ ル ウ リ ジ ン5, − ト り り ん 酸(StddUTP) を 合 成 し 、HIV−1RTに 対 す る 阻 害 効 果 を 調 べ た と こ ろ 、HIV−1RTお よ び Polア に 対 し てddTTPに 匹 敵 す る 強 い 阻 害 効 果 を 示 し 、HIV―1RTの 光 親 和 性 標 識 試 薬 の た め の り ー ド 化 合 物 と し て 充 分 な性 質を 有す るこ とが 示さ れた 。 2:HIv―1RTに 対す る 光親 和性 標識 試薬 の合 成と その 利用

  StddUTPを 母 核 と し て 、 そ の ス チ リ ル 基 に ト リ フ ル オ 口 メ チ ル ジ ア ジ リ ニ ル 基 を 導 入 し たTDSddUTPを 合 成 し た 。 TDSddUTPのHIV― 1RTに 対 す る 阻 害 定 数(Ki)は 0.075ロ Mと AZTTPや ddTTPと 同 様 に 小 さ い 値 を 示 し 、

(4)

期 待通 りの親 和性 を有 する ことを 確認 した。これらの化合物を用いて HIV −1RT の光親和性標識実験を行った。

   (1 ) HIV ―lRT のヌクレオチド基質結合部位の標識

  0.025 mM MgCl2 存在下、[アー32P]TDSddUTP で光標識反応を行うと、66 kDa の位置に放射能が検出された。この反応はd 丁rP の添加により阻害され た。従って、田つSddUTP がHW −11 汀のヌクレオチド基質結合部位に反応し たことを示唆し、HW ― 1RT は 511 (Da およびポリメラーゼ活性を付随する 66kDa (各々 p51 および p61 )のサブュニットから構成されるという知見と 合致した。

(2 )HIV ―1RT のプライマー結合部位の標識

  4mMMgC12 存 在下 、TDSddUTP は酵 素の 基質 となっ てプ ライ マー 3 | 末 端に取り込まれ、生成した光反応性プライマーが近紫外線照射によって酵素 と反応した。反応生成物をDB 壥セル□ースカラムク口マトグラフイーで分 析したところ、先に罔マ舌性を有するp66/p51 画分、次いで活性のほとんど ない76kDa 生成物/p51 画分が溶出されたことから、 p66 サプュニットに光 標識反応が起こり78kDa の生成物を与えることが示された。上記(2 )と 同様の実験をPol ロに対して行ったところ、光標識反応がほとんど進行しな かったので、田)Sdd ―UTP はポリメラーゼ分子種選択性を示すと考えられ る。一方、StddUTP がPol アに対して強カな阻害剤であったことを考えると、

本酵素への′rDSddUTP の応用は興味深い。

3 .光反応性オリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN )の合成とその利用    鋳型存在下における光反応性プライマーアナ口グの開発は、Pol を含めて 核酸と相互作用をする様々なタンパク質の光親和性標識に用いることが可能 で あ る と 考 え ら れ 、 光 反応 性 ODN の 直 接 的合 成法の 開発 を検 討し た。

   まず、2t ―デオキシ―E‑5 −スチリルウリジンのスチリル基パラ位にトリフ ルオ口ジアジリニル基を有するTDSdU を合成し、ホスホ口アミダイト試薬 へ と 誘 導 し た 。 こ の 試 薬を 用 い て 光 反 応性 オリ ゴ( 〔rr ) 15 アナ 口グ

[ 5 .―d ( TnTnTnTnTID )ー3 .、dT14D ](D は光反応性残基を表す)の合 成を行ったところ、 DNA 合成機を用いた常法による自動合成が可能であり、

十分に実用的であることが判明した。また、田) SdU は相補鎖とのア二二リ ング条件下でも十分な安定性を示した。

   ポリ(心を鋳型としてdT14D によるPol ロ(p40 )の光親和性標識を行うと

45kDa の位置に反応生成物が得られた。HIV −1RT に対して同様の実験を行

う と、 76kDa の 主生成物が認められた。この76kDa の生成物を分離し、卜

リプシン消化後のべプチドマップバターンを未反応のD66 のパ夕一ンと比較

す ると 、p66 の アミノ酸配列のN 末端より224 ― 238 番アミノ酸残基の領域

が反応を受けていることが示された。この結果は、この領域が活性中心の近

傍に存在することが示されておりdT14D がプライマーとして機能したことを

(5)

示唆する。

   以上のよ うに、光反 応性 dNTP アナログを用いるとPol 分子種選択的な、

また、光反応性ODN を用いPol 分子種非選択的な光親和性標識の可能性を示 した。

   以上のよ うに本研究 は、 DNA ポリメラーゼ類に対する新規光親和性標識

試薬に関する知見を得たものであり、博士(薬学)の学位を授与するに足る

内容を持つものと認定した。

参照

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