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博 士 ( 工 学 ) 福 田 文 彦

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 福 田 文 彦

学 位 論 文 題 名

粘 土 の 変 形 挙 動 に お よ ぼ す 載 荷 履 歴 の 影響 の 実 験 的 解 明 と そ の 定 式 化 に 関 す る研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  土 や金属な ど塑性挙動を示す材料の構成関係の定式化にあたっては主に弾塑性 流 れ理論が 用いられている.地盤材料のカ学的特性の定式化にあたりこの理論を 陽な形で適用したのはDruckerとHenkelらやケンブリッジ大学グループが初めてで あ る,特に ケンブリッジグループが発表したカムクレイと呼ばれる粘土の構成モ デ ルは,粘 土のいくっかの特徴的なカ学挙動,すなわちせん断載荷履歴のみなら ず 等方載荷 履歴によっても塑性硬化が生じることやダイレタンシー等,の定性的 な 説明が可 能であり,現在においては粘土の標準的な構成モデルとなっている.

  しかしこのモデルには,次に述べる2つの大きな問題がある.第一は,等方過圧 密 履歴を受 けた粘土について,実際の変形挙動とカムクレイから予測される変形 挙 動の違い が著しいことである.第二は,せん断履歴を受けた粘土の実際のカ学 挙 動は著し い異方性を示すのに対し,等方硬化モデルであるカムクレイはこれを 表 現できな いことである.このようにカムクレイは載荷履歴を受けた粘土の変形 挙 動を十分 に予測することができず,この問題を解決すべく研究が活発に進めら れ て は い る が , 未 だ に 十 分 な 成 果 が 得 ら れ て い な い の が 実 情 で あ る .   本 研究では ,まず粘土の降伏挙動におよばす等方過圧密履歴とせん断履歴の影 響 を解明す るための一連の実験を行い,新たに提案するひずみパラメータである 面 積ひずみ を用いて実験結果の整理を行うことにより,等方過圧密粘土の降伏挙 動 とせん断 履歴を受けた粘土の異方降伏挙動が統一的に説明できることを明らか に した.こ の知見は粘土の降伏挙動の理解に関する新たな地平を切り開くもので あ るのと同 時に,カムクレイ誘導の際の最も基本的な仮定である状態境界面の概 念 に対して 疑問を呈するものであり,また弾塑性流れ理論によって異方性を定式 化 する際に 広く用いられる移動硬化の概念に対しても,その粘土への適用の可否 について疑問を呈するものである.

  次 に本研究 ではこの知見を基本とする構成モデルの提案を行っており,モデル と 実験結果 の比較から,提案モデルが定性的のみならず定量的にも十分な精度で 載 荷 履 歴 を 受 け た 粘 土 の 応 力 〜 ひ ず み 関 係 を 予 測 で き る こ と を 示 し た , 本 論 文 は 7章 か ら な っ て お り , 以 下 に そ の 構 成 に つ い て 述 べ る .

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  第1章では 研究の背景と論文の構成について述べている,

  第2章 で は 本 研 究 に 関 連 す る 既往 の研 究の 概観 を行 い ,本 研究 の着 想に いた った 背景とその位置づけについて明らかにし ている.

  第3章 で は 粘 土 の カ 学 特 性 に およ ばす 載荷 履歴 の影 響 を調 べる ため に行 った 一連 の 実 験 に つ い て 説 明 し て い る . 試料 には 再構 成粘 土を 使用 して おり ,全 体で4つの シ゛リーズからなる三軸圧縮と中空ねじ り試験を行った,

  第4章 で は 新 た な ひ ず み パ ラ メー タで あるU3軸 を法 線 とす る面 の面 積ひ ずみ 弧の 提 案 を 行 い , こ の 也 を 用 い て 実 験 結 果 を 整 理 す る こ と に よ り, 過圧 密粘 土の 降伏 挙 動 と せ ん 断 履 歴 を 受 け た 粘 土 の 異 方 降 伏 挙 動 が 統 一 的 に 解釈 でき るこ とを 示し て い る . ま た カ ム ク レ イ の 基 礎 と な る 状 態 境 界 面 の 概 念 の 妥当 性や ,塑 性面 積ひ ず み と 塑 性 体 積 ひ ず み の 関 係 , 主 応 力 軸 と 塑 性 主 ひ ず み 増 分軸 の共 軸性 の有 無な どについても論じている.

  第5章 で は 平 均 有 効 応 力 一 定 条件 下に おけ る構 成モ デ ルを 提案 して いる .ま たモ デ ル と 実 験 結 果 の 比 較 か ら , 過 圧 密 粘 土 の 降 伏 挙 動 や ダ イ レタ ンシ ー挙 動に 現れ る過 圧密 比依 存性 ,せ ん 断履 歴を 受けた,粘土の変形挙動に現れる誘導異方性など,

既 存 の モ デ ル で は 十 分 に 表 す こ と の で き な い 粘 土 の 挙 動 を ,提 案モ デル が定 量的 にも十分な精度で表現できることを示し ている.

  第6章 で は 第5章 で 提 案 し た モ デ ル を 平 均 有 効 応 カ が 変 化 する 条件 下に おい ても 適 用 で き る よ う に 拡 張 し て い る . 拡 張 さ れ た モ デ ル は 非 排 水せ ん断 試験 の有 効応 力 径 路 や 応 力 〜 ひ ず み 関 係 な ど を 十 分 な 精 度 で 表 現 可 能 で ある ,ま たせ ん断 応カ の み な ら ず 平 均 有 効 応 カ も 変 化 す る 応 力 経 路 に 沿 っ て 載 荷 する 際の 排水 せん 断挙 動についても精度よく予測可能であるこ とを示している.

  第7章は本 研究の結論であり,得られた成果についてまとめるとともに,今後の課題と 展望について述べている,

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学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

三田地 石島 三浦 澁谷

学 位 論 文 題 名

利之 洋二 清一     啓

粘土 の変形挙動におよぼす載荷履歴の影 響の 実験 的解明とその定式化に関す る研究

   地 盤材料 のカ 学的 特性 のモデ ルの ひと っとし てケ ンブリヅジグループが提案 したカムクレイと呼ぱれる粘土の構成モデルは,粘土のいくっかの特徴的なカ学 挙動,すなわちせん断載荷履歴のみならず等方載荷履歴によっても塑性硬化が生 じることやダイレタンシー等の説明が可能であり,現時点で粘土の標準的な構成 モデルとみなされている.しかしこのモデルは載荷履歴を受けた粘土の変形挙動 を十分な精度で予測することができず,この問題を解決すべく.研究が活発に進め ら れ て は い る が , 未 だ に 十 分 な 成 果 が 得 ら れ て い な い の が 実 情 で あ る .    このような背景のもと,本研究は,まず粘土の降伏挙動におよぼす等方過圧密 履歴とせん断履歴の影響を解明するための一連の実験を行い,ひずみバラメータ として面積ひずみを用いて実験結果の整理を行うことにより,等方過圧密粘土の 降伏挙動とせん断履歴を受けた粘土の異一方降伏挙動が統二的に説明できること を明らかにするとともに,この知見を基本として著者が提案したモデルを用いれ ば,載荷履歴を受けた粘土の応力―ひずみ関係を十分な精度で予測できることを 示したもので,7 章から構成される.

   第 1 章 で は 研 究 の 背 景 と 論 文 の 構 成 に つ い て 述 べ て い る ・

   第 2 章 では 本研究 に関 連する既往の研究の概観を行い,本研究の着想に至った

背景とその位置づけについて明らかにしている.

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   第3 章では, 粘土のカ学 特性におよ ぼす載荷履歴の影響を調べるために行った 4 つの シリーズか らなる一連 の三軸圧縮 と中空ねじり試験について説明している・

   第4 章では, 新たなひずみバラメータとしてびゴ軸を法線とする面の面積ひずみ あュの提案を行い,このあュを用いて実験結果を整理することにより,過圧密粘土の 降 伏 挙動 と せん 断 履歴 を 受け た粘土の 異方降伏挙 動が統一的 に解釈でき ること を示 している. またカムク レイの基礎 となる状態境界面の概念の妥当性や,塑性 面積 ひずみと塑 性体積ひず みの関係, 主応力軸と塑性主ひずみ増分軸の共軸性の 有無などについても論じている.

   第5 章では, 平均有効応 力一定条件 下における 構成モデル を提案して いる.ま たモ デルと実験 結果の比較 から,過圧 密粘土の降伏挙動やダイレタンシー挙動に 現れ る過圧密比 依存性,せ ん断履歴を 受けた粘土の変形挙動に現れる誘導異方性 など ,既存のモ デルでは十 分に表すこ とのできない粘土の挙動を,提案モデルが 定量的にも十分な精度で表現できることを示している.

   第6 章では, 第 5 章で 提案したモ デルを平均 有効応カが変化する条件下において も適 用できるよ うに拡張し ている.拡 張されたモデルは非排水せん断試験の有効 応力 径路や応力 一ひずみ関 係などを十 分な精度で表現可能である.またせん断応 カ と 平均 有 効応 カ がと も に変 化する応 力経路に沿 って載荷す る際の排水 せん断 挙動についても精度よく予測可能であることを示している.

   第7 章は本研究の結諭であり,得られた知見を総括し今後の展望と課題を述べている・

   これを要するに著者は,粘土の降伏挙動におよぼす載荷履歴の影響を解明す・るた

めの 一連の詳細 な実験結果 を基に,新 たなひずみバラメ一夕を導入したモデルを

提案 し,載荷履 歴を受けた 粘土の応力 ―ひずみ関係を高い精度で予測できること

を 示 し て お り , 地 盤 工 学 の 発 展 に 寄 与 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る .

   よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める.

参照

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