博 士 ( 工 学 ) 福 田 文 彦
学 位 論 文 題 名
粘 土 の 変 形 挙 動 に お よ ぼ す 載 荷 履 歴 の 影響 の 実 験 的 解 明 と そ の 定 式 化 に 関 す る研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
土 や金属な ど塑性挙動を示す材料の構成関係の定式化にあたっては主に弾塑性 流 れ理論が 用いられている.地盤材料のカ学的特性の定式化にあたりこの理論を 陽な形で適用したのはDruckerとHenkelらやケンブリッジ大学グループが初めてで あ る,特に ケンブリッジグループが発表したカムクレイと呼ばれる粘土の構成モ デ ルは,粘 土のいくっかの特徴的なカ学挙動,すなわちせん断載荷履歴のみなら ず 等方載荷 履歴によっても塑性硬化が生じることやダイレタンシー等,の定性的 な 説明が可 能であり,現在においては粘土の標準的な構成モデルとなっている.
しかしこのモデルには,次に述べる2つの大きな問題がある.第一は,等方過圧 密 履歴を受 けた粘土について,実際の変形挙動とカムクレイから予測される変形 挙 動の違い が著しいことである.第二は,せん断履歴を受けた粘土の実際のカ学 挙 動は著し い異方性を示すのに対し,等方硬化モデルであるカムクレイはこれを 表 現できな いことである.このようにカムクレイは載荷履歴を受けた粘土の変形 挙 動を十分 に予測することができず,この問題を解決すべく研究が活発に進めら れ て は い る が , 未 だ に 十 分 な 成 果 が 得 ら れ て い な い の が 実 情 で あ る . 本 研究では ,まず粘土の降伏挙動におよばす等方過圧密履歴とせん断履歴の影 響 を解明す るための一連の実験を行い,新たに提案するひずみパラメータである 面 積ひずみ を用いて実験結果の整理を行うことにより,等方過圧密粘土の降伏挙 動 とせん断 履歴を受けた粘土の異方降伏挙動が統一的に説明できることを明らか に した.こ の知見は粘土の降伏挙動の理解に関する新たな地平を切り開くもので あ るのと同 時に,カムクレイ誘導の際の最も基本的な仮定である状態境界面の概 念 に対して 疑問を呈するものであり,また弾塑性流れ理論によって異方性を定式 化 する際に 広く用いられる移動硬化の概念に対しても,その粘土への適用の可否 について疑問を呈するものである.
次 に本研究 ではこの知見を基本とする構成モデルの提案を行っており,モデル と 実験結果 の比較から,提案モデルが定性的のみならず定量的にも十分な精度で 載 荷 履 歴 を 受 け た 粘 土 の 応 力 〜 ひ ず み 関 係 を 予 測 で き る こ と を 示 し た , 本 論 文 は 7章 か ら な っ て お り , 以 下 に そ の 構 成 に つ い て 述 べ る .
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第1章では 研究の背景と論文の構成について述べている,
第2章 で は 本 研 究 に 関 連 す る 既往 の研 究の 概観 を行 い ,本 研究 の着 想に いた った 背景とその位置づけについて明らかにし ている.
第3章 で は 粘 土 の カ 学 特 性 に およ ばす 載荷 履歴 の影 響 を調 べる ため に行 った 一連 の 実 験 に つ い て 説 明 し て い る . 試料 には 再構 成粘 土を 使用 して おり ,全 体で4つの シ゛リーズからなる三軸圧縮と中空ねじ り試験を行った,
第4章 で は 新 た な ひ ず み パ ラ メー タで あるU3軸 を法 線 とす る面 の面 積ひ ずみ 弧の 提 案 を 行 い , こ の 也 を 用 い て 実 験 結 果 を 整 理 す る こ と に よ り, 過圧 密粘 土の 降伏 挙 動 と せ ん 断 履 歴 を 受 け た 粘 土 の 異 方 降 伏 挙 動 が 統 一 的 に 解釈 でき るこ とを 示し て い る . ま た カ ム ク レ イ の 基 礎 と な る 状 態 境 界 面 の 概 念 の 妥当 性や ,塑 性面 積ひ ず み と 塑 性 体 積 ひ ず み の 関 係 , 主 応 力 軸 と 塑 性 主 ひ ず み 増 分軸 の共 軸性 の有 無な どについても論じている.
第5章 で は 平 均 有 効 応 力 一 定 条件 下に おけ る構 成モ デ ルを 提案 して いる .ま たモ デ ル と 実 験 結 果 の 比 較 か ら , 過 圧 密 粘 土 の 降 伏 挙 動 や ダ イ レタ ンシ ー挙 動に 現れ る過 圧密 比依 存性 ,せ ん 断履 歴を 受けた,粘土の変形挙動に現れる誘導異方性など,
既 存 の モ デ ル で は 十 分 に 表 す こ と の で き な い 粘 土 の 挙 動 を ,提 案モ デル が定 量的 にも十分な精度で表現できることを示し ている.
第6章 で は 第5章 で 提 案 し た モ デ ル を 平 均 有 効 応 カ が 変 化 する 条件 下に おい ても 適 用 で き る よ う に 拡 張 し て い る . 拡 張 さ れ た モ デ ル は 非 排 水せ ん断 試験 の有 効応 力 径 路 や 応 力 〜 ひ ず み 関 係 な ど を 十 分 な 精 度 で 表 現 可 能 で ある ,ま たせ ん断 応カ の み な ら ず 平 均 有 効 応 カ も 変 化 す る 応 力 経 路 に 沿 っ て 載 荷 する 際の 排水 せん 断挙 動についても精度よく予測可能であるこ とを示している.
第7章は本 研究の結論であり,得られた成果についてまとめるとともに,今後の課題と 展望について述べている,
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学位論 文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
三田地 石島 三浦 澁谷
学 位 論 文 題 名
利之 洋二 清一 啓