ベ ン ゾジ ア ゼ ピ ソ 系と非ベ ン ゾジア ゼ ピ ソ 系睡 眠薬の
ネ コ の海 馬律動 波な ら び に睡 眠 ・ 覚醒 周期に 対 する影響に つ い て の 比較 研 究
金沢 大 学 医 学 部神 経 精 神 医学 講 座 (主任: 山口成 良 教 授)
秋 山 典 子
従 来か ら海 鳥は注 意 ・ 記憶な どの精 神 機能に関連 すること が知られて いる. そこで, 前 向健 忘を惹起 すること が報 告さ れて いるベ ンゾ ジア ゼ ピン系 睡 眠 薬であるトリアゾラム と, 非ベ ン ゾ ジア ゼ ピソ系睡 眠 薬であるシ クロ ピロ ロ ン誘 導 体である ゾピ クロ ンと, イミダ ゾビ リジン誘 導 体である ゾル ビデム の海 馬 脳波な ら びに睡 眠・ 覚 醒周期に対 する影 響について無 麻酔 ・ 無 拘束ネコを 用いて検 討し, 海 馬 磯 能に対 する睡眠薬の影 響を解明すること と し た. 0・0 ト 0・0 2mg/kg の ト リ アゾラ ムを投 与 する と逆 説 睡眠期お よ び覚醒 期の海 馬 律動 波の徐 波 化が認め ら れ た. 他 方, ゾピ ク ロ ン (0‑4m g/kg) と ゾル ビデム(0・3mg/
kg) を投与しても∴海 馬 律動 波にほ有 意な変 化は認め られ な か った. トリ ア ゾラムを投 与 する と覚 醒 期が増 加し, 紡 錘 波・ 徐 波 睡眠期が減 少 する傾 向が認め ら れ た. ゾピ クロン (0.4m g/kg) では投 与 後4‑ 6 時 間の間, 覚 醒 期の増 加と紡錘 波 ・ 徐 波 睡 眠 期の減 少が認め ら れ た が, ゾピ クロ ン(0.8m g/kg) を投 与した時には生理食塩 水(生 食)投 与 時と比 較して睡 眠■覚 醒周期に 有 意な変 化は認め ら れ な かっ た. ゾル ビデム (0.3mg/kg) 投 与 群でほ 2 時 間にわ た り紡 錘 波・ 徐 波 睡眠 期の減 少が認め ら れ た が, その後は増 加した. 以上の結 果か ら, ベ ン ゾ ジア ゼ ピン系 睡 眠 薬は辺 縁 系に抑 制 的に作用 し て睡 眠 効 果をもた らす ものと 考え ら れ た が, 非ベ ンゾ ジア ゼ ピン系 睡 眠 薬に つい てほ辺縁 系 以外の部 位に作用するものと考え られ た・
K ey w o rds tria z ola m , Z Opiclo ne, Z Olpidem , Sle ep‑ W akefuln e s s cycIe, hip poc ampal rh y thrnic a ctl V lt y
1 9 38年,Ju ng ら‑ ) によ り家兎に感 覚 刺 激を与え ることによ り
アン モ ン角に5‑6 Hz の規 則 的な律 動 波の出 現を観 察し た.
Gr e e n ら2)によ り, こ の現 象は 入力 刺 激がいか な る場 合でも 大
脳新 皮 質の脳 波に脱 同 期 化が存 在してお れ ばこれ とほぼ 一 致し
て発 現し, こ の現 象は覚 醒と関 連し た 旧皮 質 覚醒 反 応と し て了 解し う る と結 論した. ついで, Jo u v et ら3 ) によ り逆 説 睡 眠 相 (pha s e pa r ado x ale) と名づけられ た時 期, すな わ ち逆 説 睡 眠 期 間 中にネコ の海 馬で覚 醒 期と 同様な律 動 的 徐 波が観 察さ れ た. わ が国でほ, 同じ頃に S him a z o n o ら4 )ほ, イヌでJo uvet ら3一が 認め た と同 様の律 動 波を観 察し, 海 馬 律 動 波S と名 付け てい る. その後, 動物で覚醒 期な ら びに逆 説睡 眠 期に, 海 馬で規 則 的な β帯 域の律 動波を 呈するこ の現 象は, 海 馬の電気 活 動 発生
メカ ニズムの観 点や, 注 意の集 中や学 習, 記 憶な ど との関 連よ り注目 さ れ, 研 究さ れてきた.
一 方, ベ ン ゾ ジア ゼ ピン系 薬物と して, 最 初, クロ ルジア ゼ ポ キシ ドが発 売さ れてきた が, これ ほ睡眠薬という よ りも,
マ
イナ ー ト ラ ンキライ ザ ー と して, 不安の解 消, 鎮 静に現在 も 使 用され ている. その後, ニ トラ ゼパムを始め と して, 種々 のベ
ンゾ ジア ゼ ピン系の薬 物が睡 眠 薬と して登 場してきた.
ベ ン ゾ ジア ゼ ピン系 睡 眠薬の作用機 序と し て, 本 剤は情 動と 特に関 係が深いと されている大 脳 辺 縁 系 ( 扁 桃核一 海 馬な ど) お よ び視床 下 部に抑 制 的に作 用する と同 時に , こ の系に入 る余剰
刺 激を遮 断して生理的な睡眠に導く と考え ら れて い る5 ‑. 1 9 6 8 年, 竹 島ら6‑ほ ネコ でニ ト ラ ゼパ ム注 射後 卜逆 説 睡眠期の背 側 海 馬の律 動 波を観 察 する と, 注 射 前の眼球 運 動のある時の 6 ‑ 7Hz の周波 数が 3 ‑3.5 Hz と減 少してお り, 眼球運 動や,
肢 筋の攣 縮(twitching) の発現 頻 度 も 対照と比べて少なく, そ の運動の程 度 も 軽く, そ して注 射 後の時 間が経 過 するにつれ て, 海 馬脳波の律 動波の周波数も対 照 時の億に近づいて ゆ くこ と を発 表し た. さ らに竹島7■〉ほ
,
こ ドラ ゼ パ ム 1m g/kg 投 与 後 ほ か な りの長 時 間にわ たって海 馬 律 動 波が徐 波 化 すること よ り,
ニト ラ ゼパ ムの大量 投 与ほ注 意の集 中や学 習, 記憶な どの 機 能を低 下させ る 可能性のあること を 示唆し た.
こ の示唆に応 ずる が ご と く, ベ ン ゾ ジア ゼ ピン系 薬物のジア
ゼパ ムの静脈 内 投 与が健 忘 作用 を 呈すること が1 9 7 0年 頃か ら報 告さ れ … 0\ ま た, トリア ゾラムの内 服が前向 健 忘の エ ピ ソ ー
ド を惹 起 することも1 9 7 6年頃 か ら注目 さ れてきたt t「■1 2‑
. わ が 国 でも, 1 9 飢年に挟 間に皿 によって ト リ アゾラ ム によ る短 期 記 憶
の障 害 例が最 初に報 告さ れ た.
教 室の吉 本1 4 )は, すでにベ ン ゾ ジア ゼ ピン糸 薬 物5 種(エ ス
タ ゾラム , クP ナ ゼパ ム, ニトラ ゼ パム
, ジア ゼパ ム , フ ルラ
ゼ パ ム) につい て, ネコの海 馬 律 動波な ら びに睡 眠・ 覚 醒周期
に対 する影 響につ い て検討し ている が, 最 近, 非ベ ンゾ ジア ゼ ピン系 睡 眠 薬と し て, シ クロピp ロ ン系のゾピ クP ン朋 や イミ
平 成5 年11月1 1 日受 付, 平 成5 年1 2月7 日受 理
A b br e viatio n s : C L, nu Cleus‑ Central is叶1′ateralis; D H I P P, dor sal hip po ca mpu s; M R F; mid br ain reticular form atio n;.N P T , n O Ctl l r n al pe nile tu m e s c e n c e; R E M ,r apid eye m o v e m e nt ; 生食, 生 理食塩 水
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ダ ゾビリ ジン系のゾルビ デム1 6)が登場し てきたの で, 著 者ほ,
これ らの非ベ ン ゾ ジア ゼ ピソ系睡眠薬とベ ン ゾ ジア ゼ ピン系 睡 眠 薬トリアゾラム との, ネコ の海 馬 律 動 波と睡 眠・ 覚 醒周期に 対 する影響につ い て比 較 検 討 すること を意図 して本 研 究を行っ た.
対 象お よび 方 法
Ⅰ. 実験 動 物
脳波一 頸 筋の筋 電 図, 眼 球 運動な ど を誘導 する電 極を慢 性に 植え込ん だ成 熟ネコ1 3匹, 体 重2.5‑3.5 kg を 用いた. 動 物は温 度調 節さ れ た飼 育 室で1 2時 間の明暗周期で飼 育さ れ, 毎 朝9 時
に給 餌, 給 水ほ自 由摂 取と し た.
Ⅰ. 電 極の植え 込 み方 法
電 極植え込み方 法は Ya m agu chi ら1 丁) の方 法にし た がい, 皮 質脳 波 記 録用 ネ ジ電 極を 両側 大脳 半 球の前お よ び後S 状回に 植え込み, 同心針 電 極を背 側 海 馬 (do r s aI h ip po c a mpu s,
D H I P P), 中 脳 網 様体 (mid br ain r etic ula rfo r m atio n,M R F ) な ら びに視 床の外 側 中心核 (n u cle u s c e ntr alis late r alis.C L) に植え 込ん だ. 電 極の挿入 はJa spe r ら18 }の ア トラス にし た がいょ 東 大 脳研 式 脳定 位 固定 装 置を用いて行った.
Ⅲ. ポt」グラフ記 録
ポ リ グラフ記 録はt 電 極の植え込み手 術 後2週 間 以上の期 間 を おいて か ら始め た. 】 方 向ガラス を前 面にと りつけた観 察 箱
の中に動物を 入 れ観 察を行った. ポ リ グラ フ記 録には1 4素 子イ
ンク書 き 多用途 脳 波 計 E E G 41 42 (日本 光 電, 東 京) を 用い て
1.5c m/s e c の紙 送り速 度で紙 記 録し, C L 刺激によっ て皮 質,
皮質 下に誘 発さ れ る漸 増 反 応 (r e c r uiting r e spo n s e) を ブラウン 管で観 察する と ともに, 磁 気 記 録 装置に記 録し, 後日の検 索に 供し た. 一 方, 背 側 海 馬 脳 波を, 1 ‑1 0 Hz の帯 域の披を】 1 Hz
ご とに浦波 する帯 域ス ペク トル分 析装 置に接 続して周 波 数 分 析 を行い, その債 分値を連 続イ ンク書 き 記録した.
Ⅳ. 実 験スケ ジュ
ー ル
実 験ス ケジュ ー ルは一 午 前9 時 頃に動 物に給 餌し, 午 前1 0時 頃に電極を装 着, 午 前1 0時3 0分 頃に入隠 するの で, 最 初の紡 錘
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∈V G
E(〕G
R∈S戸
柵 叫⊥〜叫 山一J巾
F ig.1. Sche m atic r epr e s e ntatio n of poly gr aph ic pa.t te r n in
W akefuln e s s a nd v a rio u s sle ep stage s. T he hip po c a m pal
rhy thmic a cti vit y du ring the pa r ado xical sle ep stage a nd
W akefuln e s sin L‑a nd R‑hip po c a m pu s le ads. L, left ; R,
right ; A S G, a nte rio r sigm oid g yr u s; M S S G, mid dle S upr a Sylvia n g yr u s; V HI P P, V e ntr al h ip po c a m pu s; D H I P P,
do r s al h ip po c a m pu s
.; C L, n u Cle u s c e ntr ali亭、Iate r alis; E M G,
ele ctr o m yogr a m ;∴E CiG. ele ctr o o c ulogr a m ; R E S P, r e SPir ati‑
O n.
波 (spind le) の出 現か ら ポ リ グラフ記 録を開 始し, 2 時 間の記 録 乳 牛後1 時3 0分頃に生 食を NaC I と して1 mg/kg ま た ほ薬 物をいずれも 伏 在 静 脈 内に投 与し た. トリアゾラムほ原 末を プ
ロ ピレ ン グ リコ ール に溶 解し, 日常 臨 床に使用する量を考慮し て,0,00 3m g/kg ‑0・0 2m g/kg を, ゾピ ク ロン について は原末を
エ チ ル ア ル コ ー ル : プロ ビレ ソ グ リコ ー ル = 1 : 4 の溶 媒に溶 解し, 0・4mg/kg ‑0.8m g/kg を, ゾル ビデム につ いて ほ原末を 生 食に溶 解して 0,3mg/kg と し て投 与し た. 注 射 後6 時 間ポリ グラムを記 録し た後, 採血 し て実 験を終了 した.
V . ネコの睡 眠 ・ 覚 醒 状 態の分 類
ネコ の睡 眠 ・ 覚 醒周期を ポリグラ ム の パタ ー ンか ら, 覚醒 期 (w akefuln e s s stage), 微睡 期(dr o w sin e s s stage), 紡 錘 波・徐 披 睡 眠 期 (spind ling a nd slo w‑W a V e Sle ep stage), 逆 説 睡 眠 期 (pa r ado xic alsle ep sta.ge) の4 期に大 別した1 9 ). 逆 説 睡 眠期はヒ
トの速い眼球 運 動(r apid eye m o v e m e nt, R E M) の認め ら れ る R E M 睡 眠期に相 当するものである. 各 期のポ リ グラ ムほ図1 に示 し た と お り である. 各 期の判 定の際は, ポ リ グラ ム以 外に 行 動 面の情 報 も利用 し 判 定し た. 睡眠薬 投与 前の睡 眠・ 覚 醒 周期には個 体差があり, ま た 同 一個 体でも 実験日によ る差 異が み ら れ る が, 通 常の実 験日において ほ紡 錘 波が出現し ほ じめて か らの2 時 間 中に, 覚醒 期か ら逆 説 睡眠期にま で至る経 過を 2 ‑ 4 回繰り返 すのが通 例である.
各 期のポリグラムの特 徴をあげる と, 覚 醒 期には動物ほ常に 開 眼し て お り, 皮 質 脳波で ほ低 振 幅 速 波が み ら れ, 背 側 海馬 脳 波では 3 Hz 前 後の∂律 動 波が ほ ぼ連 続して出現 する. 微 睡湖で ほ常に落ちついた状 態で開 眼して いる が, 時に 一過 性に開眼 す ることも ある. 皮 質 脳波上 5 ‑6 Hz の低 振 幅で不規 則な徐波が 出 現し, 海 馬 脳 波で は律 動 性が失わ れ, 高 振 幅の 3 Hz 前 後の徐 波と速 波が 入 り ま じっ た脳 波が み ら れ, 紡 錘 波 t 徐 波 睡 眠期で
は, 動 物は うず くま る か横た わ る姿 勢を と り開 眼して いる. 皮 質 脳波で は 1 3 Hz の紡 錘 波と 不規 則な徐 波が み られ, 海 馬脳 波
でほ 不規 則な高 振 幅 徐 波が出 現 する, 逆 説 睡 眠 期にほ, 動物ほ ぐった り と横 臥した状 態にある. 皮 質脳 波で は低 振 幅 速 波化,
海 馬 脳波では 4 Hz 前後の律 動 性β波の連 続,筋 電 図でほ頸筋 筋 活 動の消失が認め られる.
Ⅵ. 血中濃 度
基 礎資 料を得る た めに, ネン ブタ ー ル 3 5m g/kg 腹腔 内投 与 で麻 酔し た雑 種 成 熟ネコ1 2 匹, 体 重2.5‑3.5 kg を 用いた. 薬物 は, ト リ ア ゾラム 0.0 2m g/kg ま た は ゾピ クロ ン0.6mg/kg を大 伏 在 静 脈よ り2 0秒で静 江し, 外 頸 静 脈よ り, 注 射 後2 分, 3 分, 5分, 7 分, 1 5分, 3 0分, 1 時 間, 以後1時 間おきに 6時 間ま で採血 し, 薬 物血中濃 度の時 間 的 推 移を, 高 速 液 体クロ マ
トグラフ ィ ー 法で測 定した.
Ⅶ. 使 用薬 物
ベ ン ゾ ジア ゼ ピン系 睡 眠 薬である ト リア ゾラ ム(tria z ola m) は 日本アップ ジヨ ン( 東 京)か ら, 非ベ ン ゾ ジア ゼ ピン系 睡 眠 薬 である ゾ ピクロ ン(z opiclo □ e) は中 外 製薬 ( 東 京) か ら, ゾル ビ デム(z oIpide m) ほ藤 沢 薬 品 ( 大 阪) か ら, そ れぞ れ 原 末の提 供を 受 け∴注 射 薬を調 整し た. 対 照と して生 食を大塚 製薬 ( 鳴 門) か ら購入 し て使用 し た. 他の試 薬はすべて特 級ま た は高速 液 体ク
ロ マ ト グラ フィ ー 用 を使 用した.
Ⅷ. 統 計 処 理
4 つ の睡 眠 段 階の各 出現 率 (百分 率) お よ び注 射 後の逆 説 睡 眠の出現滞時を算 出し■, 統 計学 的に検 討した. 出 現 率ほ∴注 射