奈良教育大学学術リポジトリNEAR
小学生における各教科のやる気と好き・嫌い
著者 杉村 健
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 31
ページ 139‑150
発行年 1995‑03‑01
その他のタイトル Study Volition and Liking to Each Subject in Elementary School Children
URL http://hdl.handle.net/10105/6883
小学生における各教科のやる気と好き・嫌い}
杉村 健
(心理学教室)
要旨:体育、図工、理科、生活、家庭がより好かれ、やる気があり、音楽は男 児によって極端に嫌われ、やる気がなかった。好きよりもやる気がある者が多 く、国語や算数などでは、嫌いだがやる気があると答える者がいた。好き・嫌 いよりもやる気の有無の方が学業成績と関係があり、社会(6年)と算数(4,
6年)が好きな者、やる気のある者は、当該教科だけでなく他の教科の成績も よかった。やる気が起きるときとやる気をなくすときは、教科によってかなり 異なるが、学習内容、学習活動、子どもの認知・感情に関するものが多かった。
キーワード:教科の好き・嫌い やる気 学業成績
子どもの学習意欲(やる気)に関する研究は、例えば 勉強でわからないことがあると自分で 調べますか とか 勉強を始めたら最後まで頑張りますか というように、その殆とが 勉強 一般について調べたものであった(杉村,1985.1987)。このような質問をされたとき、殆どの 子どもは、音楽や体育の勉強ではなく、国語や算数の勉強を思い浮かべて回答するに違いない。
そうであれば、従来の研究は国語や算数についての結果であって、音楽や体育の学習意欲につい ては何の情報も提供していないことになる。
このことに関して杉村(1992a)は、 学習意欲の対象依存性 という考えを提唱した。同じ子 どもであっても、国語に対する学習意欲は強いが、体育に対する意欲は乏しいとか、算数の計算 問題には意欲的に取り組むが、文章題には意欲的に取り組まないといったように、学習意欲は教 科や学習内容(対象)に依存しているということである。そうであれば、子どもの学習意欲を的 確にとらえ、学習指導に役立てるようにするためには、単に 勉強 ではなく 国語の勉強
算数の勉強 音楽の勉強 体育の勉強 といったように、少なくとも教科別に学習意欲を査 定しなくてはならない。
そのような試みをしたものとして、次の2つの研究をあげることができる。大場(1983)は、
授業、部活動、生徒会活動、家庭学習、塾、趣味、テレビ、教養の8つの場面について中学生の 意欲を査定し、場面間の相互関係や意欲と学業成績との関係を分析した。この研究では教科別に 意欲を調べていないが、荻原(1980)は小学4年生から高校3年生について、教科別に やる気 を調べ、学年が進むにつれて殆どの教科でやる気が低下し、やる気における教科間の違いが小さ
くなることを示した。
■Study Volition and Liking to Each Subject in Elementary School Childre口
舳Takeshi SUGIMURA(Dψα〃mmfψPsツ。此。 o砂、此γαび〃{mγ∫物ψ肋肌〃{㎝.〃α畑630〕
本研究の第1の目的は、小学2,4,6年生について、各教科の やる気の有無 と 好き・
嫌い の実態を調べることである。教科の好き・嫌いについては多くの調査があるが(例えば、
上田ほか,1972)、やる気の有無と好き・嫌いを各教科について同時に調べた研究はない。そこ で本研究では、各教科のやる気の有無と好き・嫌いが、学年と男女によってどのように異なるか を検討する。
本研究の第2の目的は、やる気の有無と好き・嫌いが、学業成績とどのような関係があるかを 調べることである。2年生では国語と算数について、4年生と6年生では国語、社会、算数、理 科について、やる気の有無と学業成績との関係、好き・嫌いと学業成績との関係が、学年と教科 によってどのように異なるかを検討する。
これまでの学習動機の研究では、子どもがどのような動機で勉強しているかを明らかにしてき たが(杉村,1992a)、この場合も、学習意欲と同様に 勉強 一般に関するものであった。最近、
杉村(1992b)は小学2,4,6年生について教科別に学習動機を検討した。国語、.社会、算数、
理科の4教科に共通な学習動機として、 大人になって役に立つ 新しいことを知りたい テ ストがある ほめられる・叱られる などがあり、教科で異なる学習動機には いろいろ調べ るのが好き 教科書を読むのが好き 問題を解くのが好き などがあった。教科別にみられる 学習動機の違いは、どの教科に対して、どんなときにやる気が起きるかという 学習意欲の対象 依存性 と密接な関係がある。しかし、どんなときにやる気が起きるのか、また、どんなときに やる気がなくなるのかということを、各教科について調べた研究は見当らない。
本研究の第3の目的は、小学2,4,6年生について、各教科の勉強のやる気が起きるときと やる気がなくなるときを調べることである。
方 法 調査対象
調査対象は各学年3学級ずつで、小学2年生82名(男児40名、女児42名)、4年生83名(男児 39名、女児44名)、6年生94名(男児43名、女児51名)であった。
調査内容
(1)各教科の好き・嫌い:2年生では6教科、4年生は7教科、6年生では8教科のそれぞれ について、 好き か 嫌い かを調べる。
(2)各教科のやる気の有無:2年生では6教科、4年生では7教科、6年生では8教科のそれ ぞれについて、 やる気がある か やる気がない かを調べる。
(3〕各教科のやる気が起きるときとなくなるとき:4年生では7教科、6年生では8教科のそ れぞれについて、 やる気が起きるとき. と やる気がなくなるとき を1つずつ調べる。なお、
2年生は以前の調査からみて回答が難しいのではないかと判断し、実施しなかった。
(4)学業成績:2年生については国許と算数の2教科、4年生と6年生については国語、祉会、
算数、理科の4教科の1学期末の成績(素点)を、調査協力校の好意により提供していただいた。
調査方法
午前中にそれぞれの教室で実施した。調査用紙を配布し、2年生では6教科、4年生では7教 科、6年生では8教科について、 好きな教科 には○、 嫌いな教科 には×をつけてもらった。
次に、4年生と6年生では各教科について やる気が起きるとき と やる気がなくなるとき を、1つずつ自由に書いてもらった。最後に、3学年とも各教科について やる気がある教科 にはO、 やる気がない教科 には×をつけてもらった。
結呆と考察 各教科の好きな者とやる気のある者
表1は、各教科の好きな者の割合を示したものである。2年男児では体育、図工、生活がかな り好かれ、国語と音楽はあまり好かれていない。女児では音楽、体育、図工がかなり好かれ、算 数と国語はあまり好かれていない。4年男児では体育と理科が非常に好かれ、音楽と国語はあま
り好かれていない。女児では図工と音楽が好かれ、社会はあまり好かれていない。6年男児では 体育と図工が非常に好かれ、音楽は極端に好かれていない。女児では家庭が非常に好かれ、社会
はあまり好かれていない。全体として、体育、図工、生活、家庭、理科が好かれ、社会、国語、
音楽はあまり好かれていない。
特に好かれていない教科については、好かれている教科と対比して、学習内容、学習活動、子 どもの認知・感情などの点から、その原因を分析する必要があ糺また、調査時点での学習内容 や学習活動によって、教科の好き・嫌いが異なると考えられるので、1学期に1度ずつくらい調 査して、教科の好き・嫌いが変化するかどうかを調べる必要がある。
3学年または2学年に共通な教科については、色変換値による学年×性の分散分析を、生活と 家庭についてはκ2検定を行なった。国語では学年と性の主効果が有意であり、2年から4年に かけて増加し、男児(41%)よりも女児(58%)が高かった。社会では性の主効果が有意で、女
表1 各教科の 好きな者 の割合(%)
国語 社会 算数 理科 生活 音楽 図工 家庭 体育
2年 男 24 女 48
51
38
83 24 85 − 95 69 86 76 − 83
全体 36 45 76 55 81 89 4年 男 46 51 64 90
女66366166
39 69 − 97 75 82 − 71
全体 57 44 63 78 57 76 84
6年 男 53 58 67 72
女59375361
19 88 58 95 75 78 92 73
全体 56 48 60 67
47 83 75 84児(37%)よりも男児(55%)が高かった。算数では学年の主効果が有意で、2年から4年にか けて増加した。理科では性の主効果が有意で、女児(64%)よりも男児(81%)が高く、特に4 年生で顕著であった。音楽では性の主効果が有意で、男児(27%)よりも女児(79%)が著しく 高かった。図工では主効果も交互作用も有意でなかった。家庭では男児よりも女児か有意に高 かった。体育では性の主効果が有意で、女児(76%)よりも男児(96%)が高かった。
男児は社会、理科、体育をより好み、女児は国語と音楽をより好むという結果は、従来の研究 と一致する(例えば、上田ほか,1972)。どの学年も音楽の男女差が最も大きく、2年生からす でに男児の音楽嫌いが始まっていることは、音楽教育に何らかの問題があると考えられる。学年
と性の交互作用は有意でなかったが、国語では2年生から6年生にかけて、理科では4年生から 6年生にかけて男女差が減少している。特に2年生の国語は全体的に低く、しかも男児は極端に 低い。この原因をとらえて、好きにするような工夫が必要である。一方、体育では2年生から4 年生にかけて男女差が増加している。これは、身体的発達に起因するかもしれないが、女児に不 得意な学習内容が多くなることによるのかもしれない。
表2は、各教科のやる気のある者の割合を示したものである。2年男児では体育と生活でかな りやる気があり、音楽と国語であまりやる気がないが、女児では体育と音楽でかなりやる気があ 札4年男児では体育と理科でかなりやる気があり、音楽と国語であまりやる気がないが、女児 では社会以外はどの教科でもやる気がある。6年男児では体育と図11二でかなりやる気があり、音 楽ではあまりやる気がないが、女児では家庭が最もやる気があり、社会以外の教科でもやる気が
ある。
好きと同様に、色変換値による学年×性の分散分析またはκ2検定を行なった。国語では性の 主効果が有意で、男児(50%)よりも女児(67%)が高かった。理科では学年と性の主効果が有 意で、6年よりも4年が高く、女児(71%)よりも男児(86%)が高かった。生活では男児より
も女児が有意に高かった。音楽では性の主効果が有意であり、男児(31%)よりも女児(80%)
表2 各教科の やる気がある者 の割合(%)
国語社会 算数 理科 生活 音楽 図工 家庭 体育
2季F 5日 46 − 60
女 62 − 57 全体 54 59
85 29 76 一一 98 62 81 76 − 88 74 55 76 93
4年 男 49 54 67 92 − 33 72
女77557575−8282
全体 63 55 71 84 6年 男 54 67 65 79
女62436767
全体 58 55 66 73
95 82 58 77 89
30 93 60 100 77 80 96 78
54 87 78 88
が著しく高かった。家庭では男児よりも女児が有意に高かった。体育では性の主効果が有意で、
女児(83%)よりも男児(98%)が高かった。
以上のように、やる気の結果は好きの結果とかなり似ている。このことから、一般に言われて いるように、好きな教科はやる気があり、嫌いな教科はやる気がないということがいえそうであ る。しかし、2つの表の絶対値を比較すると、殆どの場合に表2の方が高くなっている。このこ とは、好き一やる気がある、嫌い一やる気がないという対応だけでなく、嫌いでもやる気がある 者、あるいは好きでもやる気がない者がいることを示唆する。そこで、これら4つの組合せにつ いて検討した。
表3は、各教科について男女を込みにし、好きでやる気がある者(好・有)、好きでやる気が ない者(好・無)、嫌いてやる気がある者(嫌・有)および嫌いてやる気がない者(嫌・無)の 割合を示したものである。まず、好・有と嫌・無を比較すると、2年生では国語以外で好・有が 高く、体育、図工、生活では両者の問に著しい違いがあり、算数ではほぼ同数であった。4年生 では社会以外で好・有が高く、体育、図工、理科で両者の間に著しい違いがあった。6年生では 全教科で好・有が高く、体育、図工、家庭、理科で両者の間に著しい違いがあった。全体的に嫌・
無よりも好・有が多いのは好ましいことであるが、国語、社会、算数、音楽のように、嫌・無が 3割以上もいる場合は、その原因を解明しなくてはならない。
次に、好・有と嫌・無ほどには多くないが、好きでやる気がない者と嫌でやる気がある者が存 在していることが明らかである。好・無と嫌・有の割合を比較をすると、2年生の生活、音楽、
図工以外はすべて嫌・有が高くなってい孔嫌・有の場合は、その教科は嫌いだけれども頑張ら なくてはいけないという気持ちが強いことを示し、全体的にみると、国語、祉会、算数、理科で その割合が高い。特に2年生の国語と算数では2割をこえており、嫌いであっても2年生なりに 頑張っていることを示す。好・無は少ないが、好きなのに何故やる気がないのかを調べる必要が
ある。
表3 好き・嫌い と .やる気の有無 の組合せ(%)
国語 社会 算数 理科生活 音楽 図工 家庭 体育 2年 好・有 32 − 39
好・無 5 − 5 嫌・有 23 − 20 嫌・無 40 − 36 4年 好・有 53 42 59
好・無 4 ユ 4
嫌・有 11 12 12 嫌・無 32 45 25 6年 好・有 52 44 56 好・無 5 3 3 嫌・有 7 玉1 10 嫌・無 36 42 31
一 66 47 70 − 85
− 10 9 10 − 4
− 7 9 5 0 7
− 17 35 15 − 4
76 2 8
ユ4
59 7
/4
20
川 49 72 − 81
− 8 4 − 2 一 ユ0 5 − 7
− 33 19 − 10
一 48 80 73 82
− 1 3 4 1
− 7 6 7 6
− 44 11 16 11
(注)好・有:好きで、やる気がある者 好・嫌:好きで、やる気がない者
嫌・有:嫌いで、やる気がある者 嫌・無:嫌いで、やる気がない者
各教科の好き・嫌い、やる凧の有無と学業成績
例えば、国語の好きな者は嫌いな者よりも、国語のやる気のある者はやる気のない者よりも、
国語の学業成績がよいと予想される。一般に、好きな教科、やる気のある教科の成績がよいとい うことは、常識的に予想されることである。この予想を確かめるために、各教科について好きな 者と嫌いな者、やる気のある者とやる気のない者の学業成績を比較する。それに加えて、当該教 科以外の教科の成績についても比較する。例えば、国語の好きな者と嫌いな者、あるいは国語の やる気のある者とやる気のない者が、社会、算数、理科で異なる成績を示すであろうか。
表4は、国語、社会、算数、理科の好きな者と嫌いな者について、国語、祉会、算数、理科の 成績を比較した結果である。この表には有意差があった箇所だけが示されているが、以下に示す 数値は学期末の成績の平均点である。国語の好き・嫌いでは、どの学年も教科の成績に有意差が なかった。社会の好き・嫌いでは、6年の祉会(好きな者の平均83.5、嫌いな者の平均68.8)だ けでなく、国語(85.8と78.4)、算数(82.5と76.2)、理科(82,1と75.7)で、好きな者の成績が よかった。算数の好き・嫌いでは、4年の・国語(89.2と83.1)、社会(91.2と83.2)、算数(90.4 と79.2)、理科(90.0と8216)、6年の算数(83.8と72,3)と理科(81.3と74.9)で、好きな者の 成績がよかった。理科の好き・嫌いでは4年も6年も有意差がなかった。
表5は、国語、社会、算数、理科のやる気のある者とない者について、国語、社会、算数、理 科の成績を比較した結果であ乱国語のやる気の有無では、6年の国語(やる気のある者の平均 84.3、やる気のない者の平均78,4)で、やる気のある者の成績がよかった。祉会のやる気の有無 では、6年の国語(85.8と77.2)、社会(82.2と68.0)、算数(82,6と75.0)、理科(81.4と75.5)
で、やる気のある者の成績がよかった。算数のやる気の有無では、4年の国語(88.8と82.2)、
祉会(90.2と83.2)、算数(88.8と79.7)、理科(89.2と82.4)で、やる気のある者の成績がよかっ た。6年生でも国語(84.3と77.2)、社会(78,3と70.8)、算数(83.3と71.2)、理科(81.2と73.9)
で、やる気のある者の成績がよかった。理科のやる気の有無では、6年の理科(80.7と73.4)だ けで、やる気のある 者の成績がよかった。
表4と表5を通じて2年では1つも有意差がなかった。その原因の1つとして、4年と6年に 比べて2年生の得点(成績)の分散が小さいことが考えられる。そこで、各教科について全員の 一分散を算出してみたが、最も小さな分散は4年の理科(9.9)、最も大きな分散は6年の社会と理 科(ともに15.1)であり、それ以外の教科はすべてこの範囲に入っていたので、2年生の成績の 分散が他の学年と特に異なるということはなかった。従って、このことが2年生だけに有意差が なかったことの原因であるとはいえない。他の原因があるかもしれないが、2年では、教科の好 き・嫌いおよびやる気の有無が、学業成績には影響しないと結論してよいであろう。
先に述べたように、一般に、ある教科が好きな者は嫌いな者よりも、また、やる気のある者は
やる気のない者よりも、その教科の成績がよいと考えられている。しかし、表4からわかるよう
に、好きな者が嫌いな者よりも成績がよかったのは、4年の算数および6年の社会と算数だけで
あり、その他の場合は成績の問に有意差がなかった。また表5では、やる気のある者がやる気の
ない者よりも成績がよかったのは、4年の算数と6年の国語、社会、算数、理科であった。これ
表4 教科の好き・嫌いと学業成績の関係
学業成績 好き・嫌い 学年 国語 社会 算数 理科
国語 2年 4年 6年
社会 2年 一 一 一 一 4年
6年 . 亡 } 算数 2年 一 一 4年 ^ . 6年 ‡
理科 2年 4年 6年
(注) }P<、10 叩<.05 帥叩<.01
好きな者が嫌いな者よりも成績がよいことを示す。
表5 教科のやる気の有無と学業成績の関係 学業成績 やる気の有無 学年 国語 社会 算数 理科
国語 2年
4年 6年 ‡‡
社会 2年 一 一 一 一 4年
6年 舳} . 算数 2年 一 一
4年 . 6年 舳 .}^
理科 2年
4年 6年
(注) 叩<.1O P<.05 }叩く.01
やる気のある者がやる気のない者よりも成績がよいことを示す。
らの結果から、好き・嫌いよりもやる気の有無の方が、その教科の成績と関係があること、4年 よりも6年の学業成績の方が、その教科の好き・嫌いとやる気の有無によって影響を受けること が示唆される。
興味があるのは、6年の社会、4年と6年の算数の結果である。6年の社会では、好きな者が 嫌いな者よりも(表4)、やる気のある者がやる気のない者よりも(表5)、社会の成績だけでな
く、国語、算数、理科の成績もよかった。この結果から、社会の好き・嫌いとやる気の有無が他 の3教科の成績にも波及することが明らかであり、社会を好きにさせること、社会のやる気を起
こさせることによって、社会だけでなく、国語、算数、理科の成績も向上させることが示唆され る。なお、社会が好きな者と嫌いな者の4教科の成績の差は、祉会(17.4)が国語(7.4)、算数
(6.2)、理科(6.4)よりもかなり大きく、祉会のやる気がある者とやる気がない者の成績の髪も、
社会(14.2)が国語(8,6)、算数(7.6)、理科(5.9)よりもかなり大きかった。これらの結果 から、他の教科の成績に波及するとは言うものの、当該教科の成績への影響が最も大きいことが
わかる。
算数では6年だけでなく4年でも有意差があった。好き・嫌いの場合は、6年の国語と社会の 成績で有意差はなかったが、ともに算数が好きな者の方が成績がよかった。従って、4年、6年 ともに算数の好き・嫌いとやる気の有無が、算数の成績だけでなく、国語、社会、理科の成績に 影響するという波及効果がある。この結果から、算数を好きにさせ、算数のやる気を起こさせる ような指導を行なうことによって、算数だけでなく、国語、社会、理科の成績も向上することが 期待される。なお、算数が好きな者と嫌いな者の4教科の成績の差は、4年では国語(6.1)、社 会(8.0)、算数(11.2)、理科(7.4)、6年では同じ順に、4.5,6.1,11.5,6.4であり、算数で の差が最も大きかった。
以上のように、4年では算数、6年では社会と算数の好き・嫌いおよびやる気の有無が、その 教科の成績だけでなく、他の教科の成績にも影響するのは何故だろうか。さらに研究を進めてみ ないと確かなことは言えないが、算数に関しては次のような可能性がある。この調査と同時に実 施した知能検査の結果は、4年では算数の好きな者(平均IQ=113.0)が嫌いな者(97.1)よ りも1%水準で、やる気のある者(11O.O)がやる気のない者(100.0)よりも5%水準で有意に 高かった。6年も同様に、算数の好きな者(111.0)が嫌いな者(102.0)よりも1%水準で、や
る気がある者(11O.0)がやる気のない者(102.O)よりも5%水準で有意に高かった。このこと から、知能が媒介となって他の教科の成績に有意差が生じたことが示唆される。しかし、6年の 社会では好き・嫌いでもやる気の有無でも、知能の差はそれほど大きくなかったので、知能によ
る説明はできない。
各教科のやる気が起きるときとやる気がなくなるとき
子どもに自由に書いてもらった内容は非常に変化に富んでおり、まとめにくかったが、次のよ
うな手順で整理した。まず、子どもが記述した理由をそのまま転記し、 やる気が起きるから
とか ない といったような、適切でないと考えられる理由を除外した(従って、教科によって
人数が異なる)。次に、類似した理由をまとめ、それを学習内容、学習活動、子どもの認知・感情、
テストおよび教師の対応の5つに分類した。これらは相互に関係しているが、あくまでも子ども の記述によって分類した。以下の例は、2名以上の子どもがあげた理由である。
①学習内容
(国語)漢字、熟語、ローマ字、書字、物語文、説明文、詩。
(社会)地理、歴史、人物。
(算数)計算、文章題、図形、面積、立体、割合・比例、新単元。
(理科)生物、虫、人体。
(音楽)器楽、歌唱、観賞、音符・階名。
(図工)製作、彫刻、絵画、版画。
(体育)球技、走、鉄棒、高飛び、幅跳び、マット、跳び箱、縄跳び、水泳、保健。
(家庭)調理、裁縫。
②学習活動
(国語)本読み、要約、読取り、作文、感想文、発表、ノートに写す、意味調べ。
(社会)調べる、まとめる、見学、グループ活動、発表、ノートに写す、読み書きたけ、本 読み、テレビ、覚える、同じことばかり。
(算数)問題を解く、ノートに写す、問題が多い、問題を写す、コンパス・定規の使用。
(理科)実験、観察、組み立て、説明ばかり、ノートに写す、調べる、まとめる、教科書の 授業、覚える。
(音楽)ワーク、練習、説明ばかり。
(図工)細かい作業、小刀使用、説明ばかり。
(体育)競争。
(家庭)ノートに写す、普通の授業、長い説明、まとめる。
③認知・感情
(全教科)わかる、やさしい、できる、完成する、面白い、楽しい、好き、調子(気分)が いい、わからない、難しい、できない、間違えた、失敗した、面白くない、楽しく ない、嫌い、調子(気分)が悪い、疲れた、眠たい、頭痛。
(体育)得意、目標がある、記録向上、苦手、怪我。
④テスト:テスト
⑤教師の対応:叱られた、文句を言われた、先生にやる気がない。
表6は、各教科についてやる気が起きるときを、上の基準にしたがって分類したものである。
表からわかるように、殆どの子どもが学習内容、学習活動および認知・感情に集中している。テ ストは少ないが、6年の国語と算数で1割をこえており、テストヘの関心が強いことを示す。従 来の研究のように、 勉強 一般についてやる気が起きるときを尋ねたならば、 わかる 面白い
といった認知・感情や 先生からほめられたとき といった教師の対応にかかわる理由が比較的
多いと考えられる。しかし、本研究のように各教科について尋ねた場合には、教師の対応にかか
わる理由は殆どなく、教科によっては認知・感情も少なかった。テスト以外の理由は相互に関連
しているが、教師の対応は子どもには殆ど意識されていない。それぞれの理由で50%以上を占め ている教科は、学習内容では社会(6年)音楽、図工、家庭(6年)、体育であり、全体的にみ て技能教科に偏っている。学習活動では社会(4年)と理科であり、特に理科では殆どの者が実 験をあげている。
国語の学習内容は漢字が最も多く、ローマ字(4年)、熟語(6年)、物語文も多かった。学習 活動は本読み(6年では過半数以上)が最も多く、認知・感情は面白い、楽しい、やさしい、わ かる、調子がいいも多かった。社会の学習内容は4年では地理、6年では歴史、人物が殆どであ
り、学習活動は調べる、まとめる、グループ活動、見学(4年)が多く、認知・感情は面白い、
楽しい、わかるが多かった。算数の学習内容は2年では計算が殆どで、6年では計算、図形・立 体が多かった。学習活動は6年生では問題を解くが多く、認知・感情はやさしい、わかる、でき
るが大部分であった。理科の学習活動は2学年ともに殆とが実験であった。
音楽の学習内容は2学年ともに器楽が歌唱の約2倍であった。図工の学習内容は4年の殆とが 製作であり、6年でも製作(彫刻を含む)が絵画の3倍以上であった。認知・感情は4年ではう
まくできた、面白いが多く、6年ではうまくできたが最も多かった。家庭の学習内容は殆とが調 理で、裁縫はほんの僅かであった。体育の学習内容は2学年ともに球技が過半数を占めており、
認知・感情では殆とが得意・好き、できるであった。
表7は、各教科についてやる気がなくなるときを分類したものである。表6と同様に、やる気 のなくなるときもテストと教師の対応は僅かであり、他の3つの理由に偏っている。それぞれの 理由で50%以上の教科は、学習内容では音楽、図工(6年)、体育、学習活動では理科、認知・
感情では算数(4年)であった。やる気が起きるときと類似しているが、割合の絶対値は、やる 気がなくなるときの方が小さかった。
国語の学習内容は2学年ともに漢字が多かった。学習活動は4年では本読みと作文が多く、6 年では作文・感想文とノートに写すが大部分であり、認知・感情はわからない、きらい、難しい、
表6 やる気が起きるとき(%)
国語 社会 算数 理科 音楽 図工 家庭 体育
4年 人数 77 72 72 74 73 75
学習内容 36 26 学習活動 17 51 認知・感情 38 17 テスト 9 6 教師の反応 O 0
71
38 1 77 72 − 55
6 87 3 1 − 3
47 8 ユ1 26 − 41
8 4 8 0 − O 1 O 1 1 1
6年 人数 88 78 83 93 85 87 94 88
学習内容 24 51 学習活動 31 29 認知・感情 27 17 テスト 17 3 教師の反応 1 0
33
14 41 11 12 93 79 98 65
94 1 1 0 1
4 4 20 2 33
0 2 0 0 0
0 0 0 0 1
疲れたが多かった。社会の学習内容は4年ではすべて地理であり、6年では地理よりも歴史が多 かった。学習活動は4年では調べる、ノートに写す、読み書きのみが多く、6年ではノートに写 すが最も多かった。算数の学習内容は2年では計算が過半数で、6年では計算が最も多くて、次 に文章題、図形があり、認知・感情は大部分が難しい、わからないであった。理科の学習活動は 観察が多く、ノートに写す、説明ばかり(6年)、まとめがあり、認知・感情はわからない、で
きない、難しいがあった。
音楽の学習内容は器楽よりも歌唱が多く、6年では観賞、音符・階名があり、学習活動はワー クが、認知・感情は難しいが多かった。図工の学習内容は絵画が殆どであり、認知・感情は難し い、できない、失敗する、きらいなどであった。家庭の学習内容は全員が裁縫であり、学習活動 はノートに写す、普通の授業、長い説明が多かった。体育の学習内容は4年では球技と走が、6 年では鉄棒と定が多かった。
以上の結果から、どのようなときにやる気が起こり、どのようなときにやる気がなくなるかと いうことが、各教科について明らかになった。いずれも役に立つ情報であるが、学習指導に際し ては、やる気が起きるときよりもやる気をなくすときの理由の方が役に立つ。
例えば、学習内容については、学習指導要領に定められているから、あるいは教科書にあるか ら仕方がないというのではなく、少なくとも多くの子どもがやる気をなくすと予想されるような 学習内容については、やる気をなくさないような指導方法を工夫しなくてはならない。学習活動 や認知・感情についても納得できるような理由が多く、これもまた、その殆とが指導方法にかか わるものである。教師の対応と分類した中に、 教師にやる気がない と記述した子どもがいた ことにも、注目しなくてはならない。学習指導要領の改正によって、自ら学ぶ意欲、即ちやる気 の育成が叫ばれているが、それとともに、あるいはそれよりも、子どもがやる気をなくさないよ うな学習指導や子どもへの対応の方が大切である。そのためにはまず、ひとりひとりの子どもが どのようなときにやる気をなくすかを、的確にらえることが大切である。
表7 やる気がなくなるとき(%)
国語社会 算数 理科 音楽 図工 家庭 体育
4年 人数 74 60 73 57 70 73
学習内容 23 20 学習活動 37 42 認知・感情 28 31 テスト 11 7 教師の反応 1 0
67
30 2 58 45 − 54 15 68 工6 工2 − 3
54251737−43
1 5 6 0 − O 0 0 3 6 − O
6年 人数 87 68 77 84 75 84 79 82
学習内容 18 22 学習活動 39 4ユ 認知・感情 28 31 テスト 9 6 教師の反応 6 0
42 14 40
3 113 64 57 37 57
5915 844 2 23 933 839